説明

回転炉

【課題】熱効率に優れ、かつヒータの消耗を抑制可能な回転炉を提供する。
【解決手段】回転炉1は、回転可能な中実の回転管3と、回転管3の回転中心軸53を含むように回転管3の内部に設けられたヒータ設置用空間15と、回転中心軸53を含むようにヒータ設置用空間15内に配置された抵抗加熱型のヒータと、回転中心軸53に沿うようにヒータ設置用空間15の周囲に設けられ、原料粒子16が投入される粒子反応用空間14を有し、熱処理の際には、ヒータから発生した熱がヒータ設置用空間15の内壁から回転管3内を伝わり、粒子反応用空間14の内壁が加熱され、粒子反応用空間14に投入された原料粒子16は、粒子反応用空間14の内壁の熱により、加熱処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転炉に関する。
【背景技術】
【0002】
回転炉は、傾斜させた回転管内にて、回転管の回転運動と、被熱処理物と回転管の間の摩擦力および重力により、被熱処理物を移動させながら熱処理を行う構造の炉である。
【0003】
回転炉は、プッシャーにより被熱処理物を搭載した台板を炉内に移動させる炉であるプッシャー炉と比較すると、連続処理が可能で、かつ均一な熱処理が可能であるという長所がある。
【0004】
回転炉を加熱部の位置により大別すると、加熱部が回転管の内部にある構造(内熱式と呼ぶ)と回転管の外部にある構造(外熱式と呼ぶ)に分けられる。
【0005】
前者の回転炉の具体的な構造としては、回転炉内部に抵抗加熱型ヒータ等の加熱部を配設し、主に輻射熱で被熱処理物を加熱する構造がある(特許文献1)。
【0006】
後者の回転炉の具体的な構造としては、回転管の外部で加熱したガスを回転管内部に流すことにより被熱処理物を加熱するというものがある(特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【0007】
また、加熱部を回転管の外側に配設する外熱式の構造も知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−72429号公報
【特許文献2】実開平02−106593号公報
【特許文献3】特開平11−193987号公報
【特許文献4】特開2001−11467号公報
【特許文献5】特開2000−161859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した構造には以下のような問題があった。
【0010】
まず、特許文献1のように、回転炉内部に抵抗加熱型ヒータを配設し、主に輻射熱で被熱処理物を加熱する構造の場合、例えば被熱処理物がAl、W、Ti、V、Cr、Zrなどの金属酸化物と炭素の混合物であるときがある。
【0011】
このような混合物に還元炭化、還元窒化や還元炭窒化を行う際には、水素や窒素などの雰囲気中で、回転炉を1200℃以上、場合によっては2000℃の高温に加熱する必要があるため、ヒータや回転管の材質をグラファイトとすることがある。
【0012】
この際、酸化物の還元により水(HO)、またはCO、COなどの炭酸ガスのような、酸素(O)を含むガスが発生する。このため、高温域ではヒータや回転管を構成するグラファイトと水やCOが安定なCOを形成し、局所的にグラファイトの消耗が発生し、安定した加熱温度での操業や加熱処理の連続操業ができなくなるという問題があった。
【0013】
一方、特許文献2〜4に記載された、反応域外で雰囲気ガスを加熱し熱したガスを流す構造では、ヒータ部の消耗を抑えることは可能であるものの、抵抗加熱型ヒータを用いた構造と比べて熱効率が劣ってしまうという問題があった。
【0014】
また、熱したガスを用いるという性質上、ガスを流す配管等にも耐熱構造が必要となるため、抵抗加熱型ヒータと比べると加熱温度を高温にするのが困難であるという問題もあった。
【0015】
さらに、特許文献5に示すような、加熱部を回転管の外側に配設する外熱式の構造においては、ヒータの消耗は抑えられるものの、熱エネルギーが回転管外壁以外にも消費される為、内熱式の構造と比較して熱効率が悪くなるという問題があった。
【0016】
また、内熱式の構造と比較して、加熱部を保護する断熱材などの外枠が大きくなり、炉が大型化するという問題があった。
【0017】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、その技術的課題は、従来よりも熱効率に優れ、かつヒータの消耗を抑制可能な回転炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記した課題を解決するために、本発明は、回転可能な中実の回転体と、前記回転体の回転中心軸を含むように前記回転体の内部に設けられた加熱用空間と、前記回転中心軸を含むように前記加熱用空間内に配置された抵抗加熱型のヒータと、前記回転中心軸に沿うように前記加熱用空間の周囲に設けられ、被熱処理物が投入される熱処理空間と、を有することを特徴とする回転炉である。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、従来よりも熱効率に優れ、かつヒータの消耗を抑制可能で連続操業が容易な回転炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の回転炉1を示す側面基本構造図であって、固定管2および断熱材7は断面図で記載している。
【図2】図1の回転管3およびその周囲の構造の詳細を示す断面図である。
【図3】従来技術に係る回転炉1aの回転管3aおよびその周囲の構造の詳細を示す断面図である。
【図4】図2の回転管3および中央ヒータ4のA−A断面図である。
【図5】図3の回転管3aおよび中央ヒータ4のB−B断面図である。
【図6】図2の原料投入口6付近の変形例を示す拡大図であって、(a)は軸方向に平行な断面図、(b)は(a)のC−C断面図である。
【図7】図2の原料投入口6付近の変形例を示す拡大図であって、(a)は軸方向に平行な断面図、(b)は(a)のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る回転炉1の概略構成について、図1、図2および図4を参照して説明する。
【0023】
図1、図2および図4に示すように、回転炉1は、回転可能に設けられ、内部に加熱用の抵抗加熱式のヒータ29が配置されるヒータ設置用空間15(加熱用空間)および被熱処理物としての原料粒子16が通過する粒子反応用空間14(熱処理空間)とを有する中実の回転管3を回転体として有している。
【0024】
図1では回転管3は、その回転中心軸53が水平面55に対して傾斜して設けられており、傾斜角度αは傾斜角度調整機構28によって所定の角度に調整されている。
【0025】
回転炉1は、また、ヒータ設置用空間15内に配置されたヒータ29、回転管3の周囲に設けられ、回転管3を保持する固定管2、固定管2の周囲に設けられ、ヒータ29から発生した熱の逃げを防止する断熱材7、回転管3を回転させるための駆動機構37、回転管3の上端側(両端面のうち、傾斜した状態で上側に位置する端面)に設けられ、原料粒子16を貯蔵・供給するための原料容器21、原料粒子16を回転管3内に投入するための原料投入口6、および、回転管3の下端側(両端面のうち、傾斜した状態で下側に位置する端面)に設けられ、熱処理された反応粒子17を回収する製品容器22を有している。
【0026】
さらに、ヒータ29の両端には電極25が設けられ、電極25は電源26に接続されている。
【0027】
また、回転炉1は、回転管3の下端側に設けられ、回転管3のヒータ設置用空間15および粒子反応用空間14内に雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給口27、回転管3の上端側に設けられ、雰囲気ガスおよび反応ガスを排気する排気口24、および回転管3の温度を測定する非接触式温度測定器9を有している。
【0028】
なお、図1では加熱処理雰囲気に置換する為の排気口を省略している。
【0029】
次に、図1〜7を参照して、回転炉1の各構成要素について、詳細に説明する。
【0030】
回転管3は原料粒子16を加熱することにより熱処理を行い、反応粒子17を生成する部材であり、中央部には、回転中心軸53を含むように回転管3を貫通して設けられたヒータ設置用空間15を有し、ヒータ設置用空間15内にヒータ29が配設されている。
【0031】
ヒータ設置用空間15の両側の端部(開放端)には、原料粒子16が反応した際に発生するガスと回転管3内部のヒータ29とが接しないようにするため、グラファイト等で構成されたヒータ空間雰囲気保護リング13が設けられている。なお、ヒータ29の両端部は抵抗加熱のため中央部に比較し低温であり加熱処理により発生するガスと反応し局所的な消耗が起き難いため、ヒータ空間雰囲気保護リング13はヒータ設置用空間15の両側の端部に配設している。
【0032】
回転管3はまた、ヒータ設置用空間15の周囲に、回転中心軸53に沿って回転管3を貫通して設けられた熱処理空間、即ち粒子反応用空間14を有している。
【0033】
詳細は後述するが、粒子反応用空間14を原料容器21から原料投入口6を通じて回転管3内に投入された原料粒子16が通過すると、ヒータ29によって加熱された回転管3の熱、また雰囲気ガス供給口27から粒子反応用空間14内に供給された雰囲気ガスとの作用等により、原料粒子16が加熱反応処理される。
【0034】
なお、図1、図2、および図4では回転管3は円筒であるため、円筒の中空部分がヒータ設置用空間15を構成し、円筒の肉厚部分に粒子反応用空間14が形成されている。
【0035】
ここで、粒子反応用空間14は、回転中心軸53からの距離が等しくなるようにヒータ設置用空間15の周囲に均等配置されるのが望ましい。
【0036】
さらに、粒子反応用空間14は、軸断面形状(軸方向に垂直な断面形状)が同一形状である方が望ましい。
【0037】
また、図4では粒子反応用空間14は軸断面形状が円形となっているが、必ずしも円形に限定されるものではなく、例えば多角形や星型の孔でもよい。
【0038】
ただし、原料粒子16と接する粒子反応用空間14の内壁が、原料粒子16と反応し、消耗する材料で構成されているときは、軸断面形状は、長時間処理しても形状が変化し難いものであるのが望ましい。
【0039】
具体的には、軸断面形状としては、被熱処理物の流れ性、滞留時間が変わり難い円形が望ましい。
【0040】
詳細は後述するが、このように、ヒータ設置用空間15と粒子反応用空間14を回転管3内に別々に設け、原料粒子16を主に粒子反応用空間14の内壁からの熱伝導にて加熱し、ヒータ29が原料粒子16、反応粒子17および反応により発生するガスと接しない構造とすることにより、熱処理中のヒータ29の消耗を防止でき、連続処理が可能となると共に、原料粒子16を均一に加熱できる。
【0041】
回転管3を構成する材料は、1200℃以上の高温で加熱する場合、例えば加工性と耐熱性に優れたグラファイトが挙げられるが、加熱温度がこれより低い場合、ステンレス等を用いてもよく、被熱処理物への不純物混入なども考慮し適宜選択すればよい。
【0042】
ヒータ29は前述のように抵抗加熱型ヒータであり、図2に示すように、中央部分が中央ヒータ4を構成し、両端は、中央ヒータ4よりも径が大きく、電極25と接続される端部ヒータ5を構成している。
【0043】
ヒータ29は回転中心軸53を含むように配設されている。なお、図4ではヒータ29(中央ヒータ4)の中心軸と回転管3の回転中心軸53が一致しているが、回転中心軸53がヒータ29内に含まれるのであれば、ヒータ29の中心軸と回転中心軸53が一致しない偏心した配置としてもよい。
【0044】
また、図2には1つの中央ヒータ4と2つの端部ヒータ5を有するヒータ29が例示されているが、3つ以上の組み合わせを有していてもよい。
【0045】
また、前述のように、ヒータ29は抵抗加熱型ヒータであるため、端部ヒータ5に接続された電極25は電源26に通じている。
【0046】
即ち、電源26を用いて、ヒータ29両端の電極25を介してヒータ29に電流を流すと、ヒータ29は抵抗により加熱される。
【0047】
この際、電源26を用いて電流、電圧を制御することにより、ヒータ29の温度を任意に設定可能である。
【0048】
なお、ヒータ29の温度、即ち反応域の温度分布は、電流、電圧を制御するだけではなく、中央ヒータ4の径によっても任意に変えることが可能である。
【0049】
具体的には、中央ヒータ4全体を同じ径とするのではなく、高温としたい範囲を、他の部分よりも小さい径に形成すればよい。
【0050】
また、ヒータ29の材料としては、加工性のよいグラファイトが挙げられるが、通電による抵抗加熱で、原料粒子16を必要な温度域まで加熱できるものであれば、必ずしもグラファイトには限定されない。
【0051】
また、電極25を構成する材料は通電が得られるものであればよく、例えばCuなどが用いられる。
【0052】
また、図2に示すように、中央ヒータ4の、回転管3の下端側の端部は、その内部にヒータ空間ガス供給孔12が設けられている。
【0053】
ヒータ空間ガス供給孔12は、ヒータ設置用空間15に、ヒータ29の消耗を防ぐための雰囲気ガスを供給するための孔であり、一端がヒータ設置用空間15内に配置された(中央ヒータ4の)側面を貫通し、他の端部がヒータ設置用空間15外に配置された(中央ヒータ4の)側面を貫通しており、中央ヒータ4に取り付けられた絶縁体リング11を介してヒータ空間ガス供給ノズル10(供給手段)と連通している。
【0054】
ヒータ空間ガス供給ノズル10はステンレスやCuなどで構成された配管であり、雰囲気ガス供給口27から雰囲気ガスが供給されるようになっている。なお、図1では雰囲気ガス供給口27は1ヶ所としているが、粒子反応用空間14へ供給する雰囲気ガス供給口27とヒータ設置用空間15へ供給するヒータ空間ガス供給ノズル10は、流量を別と出来るよう実際は複数あるようにしている。またヒータ設置用空間15へ供給するガスは被熱処理物の雰囲気と同じでもよいし、場合によってはヒータ29の消耗を防ぐものであればその他のガスであっても構わない。
【0055】
絶縁体リング11を構成する材料は、ヒータ設置用空間15へ雰囲気ガスを供給するノズルが通電加熱されたヒータ29と接する場合の導通を考慮し、絶縁性があり、かつ溶融し難い高融点のものを利用する。
【0056】
このような材料としては、例えば、融点が約2700℃である窒化ホウ素(BN)や融点が約2050℃であるアルミナ(Al)が挙げられる。
【0057】
なお、ヒータ設置用空間15に供給された雰囲気ガスはヒータ空間雰囲気保護リング13とヒータ29との隙間から排出され、排気口24から外部に排出される。
【0058】
固定管2は、回転管3を支持・固定する部材である。
【0059】
図1および図2では固定管2は円筒管状であるが、回転管3を支持・固定できればどのような形状でもよい。また固定管2は複数の部材から構成されていてもよい。
【0060】
固定管2を構成する材料としては、回転管3を1200℃以上の高温で加熱する場合、例えば加工性と耐熱性に優れたグラファイトが挙げられるが、加熱温度がこれより低い場合、ステンレス等を用いてもよい。
【0061】
断熱材7は、固定管2の周囲に配設することにより、熱の逃げを防止し、熱効率を上昇させる部材である。
【0062】
断熱材7の具体的な材料としては、アルミナを主成分とするレンガや中空粒子などが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0063】
なお、図1には記していないが、熱効率をより上昇させるためには、炉体全体にも断熱材7を配するのが望ましい。
【0064】
駆動機構37は、回転管3を回転させる部材であり、モータ39およびモータ39の図示しない回転軸に連結された第1ギヤ41とを有している。
【0065】
また、図1では回転管3の外周には第1ギヤ41と噛み合う第2ギヤ43が配設されており、第1ギヤ41と第2ギヤ43が噛み合った状態で、モータ39を所定の速度で回転させることにより、回転管3を所定の回転速度で回転させることができる。
【0066】
傾斜角度調整機構28は、回転管3の傾斜角度αを調整する油圧ジャッキ等の部材であり、傾斜角度αを調節することにより原料粒子16の回転管3内の滞留時間を任意に変えることが可能である。
【0067】
即ち、傾斜角度αを大きくすればするほど原料粒子16の滞留時間は短くなり、傾斜角度αを小さくすればするほど、原料粒子16の滞留時間は長くなる。
【0068】
非接触式温度測定器9は回転管3の温度を測定する装置であり、例えば、物体から放射される赤外線や可視光線の強度を測定して、物体の温度を測定する温度計である放射温度計を利用する。
【0069】
非接触式温度測定器9のより具体的な例としては、1000〜2000℃域の測定レンジのCHINO製型番FL2NNO3などが挙げられる。
【0070】
非接触式温度測定器9による温度測定は、回転管3の原料粒子16の入口または出口方向から直接、回転管3内の温度を測定する方法はヒータ空間雰囲気保護リング13に温度測定用の孔を設けなければ容易ではないため、図2に示すように、回転管3の外壁温度を回転炉1の炉体側面から温度測定口8を通じて測定することにより、回転管3内の温度を測定する方法が好ましい。
【0071】
なお、炉体側面から温度測定を行う場合、測定箇所はひとつであっても複数であってもよい。
【0072】
また、非接触式温度測定器9を電源26に接続し、非接触式温度測定器9が測定した温度をフィードバックすることにより、電源26が昇温または降温などの制御を行う構成にしてもよい。
【0073】
原料投入口6は、原料粒子16を粒子反応用空間14に投入するための穴であり、図2では、原料供給手段としての原料粒子供給用治具20(原料供給用治具)に設けられている。原料投入口6は、原料容器21から原料粒子16が投入されるように、原料容器21の下方に設けられている。
【0074】
より具体的に説明すると、原料粒子供給用治具20は回転管3の上端面を覆うように設けられたリング状の部材であり、原料投入口6は、一端が原料粒子供給用治具20の、粒子反応用空間14と対向する面を貫通して粒子反応用空間14と連通するように、他端が原料粒子供給用治具20の側面を貫通するように設けられた貫通孔である。原料粒子16は回転する原料粒子供給用治具20と固定された原料投入口6の孔の位置が一致したとき、粒子反応用空間14内に供給される。
【0075】
ただし、原料供給手段の構造は必ずしも図2に示す構造に限定される訳ではなく、図6および図7に示すような構造も可能である。
【0076】
例えば、図6では原料投入口6は固定管2に設けられている。
【0077】
また、図6では、回転管3の粒子反応用空間14から回転管3の側面(回転管3の固定管2との対向面)に向けて貫通して設けられた貫通孔51が設けられており、原料投入口6と貫通孔51で原料供給手段を構成している。
【0078】
この構成では、原料投入口6は、所定の回転角度で貫通孔51と重なる(対向する)ように形成されている。
【0079】
そのため、回転中の回転管3において、貫通孔51と固定管2の原料投入口6が重なった時、即ち、貫通孔51と原料投入口6が対向した時に原料粒子16が回転管3の粒子反応用空間14内に投入される。
【0080】
一方、図7に示す構造では、粒子反応用空間14の端部(外部への露出部)に設けられたC字状の原料粒子供給用治具20aが原料供給手段を構成している。
【0081】
より具体的には、原料粒子供給用治具20aは、回転管3の上端側における粒子反応用空間14の端部の周囲に設けられている。
【0082】
さらに、原料粒子供給用治具20aは、少なくとも回転管3の外周と対向する側が切り欠き形成されたC字状の形状を有しており、粒子反応用空間14に原料粒子16を、C字型の欠損部から間欠挿入させる構造となっている。
【0083】
なお、原料粒子供給用治具20、20aを構成する材料は、装置稼動時の加熱に耐えられ、かつ原料粒子16を汚染しないものであればよい。
【0084】
このような材料としては、例えば原料粒子16に炭素が含まれる場合、グラファイトが挙げられる。
【0085】
雰囲気ガス供給口27および排気口24は、雰囲気ガスの回転炉1への導入および排気を行う部材である。ただし、排気口24は、原料粒子16の反応によって生じたガスの排気も行う。
【0086】
雰囲気ガス供給口27および排気口24の材質は任意に選択すればよく、例えば、ステンレスやCuなどの配管が利用できる。
【0087】
雰囲気ガス供給口27および排気口24の位置は、図1ではそれぞれ、回転管3の下端の下方、および上端の上方に設けられている。
【0088】
ただし、雰囲気ガス供給口27および排気口24の位置は、雰囲気ガスと原料粒子16の加熱反応により発生するガスの比重を考慮して設置位置が決定されるため、必ずしも図1の位置に限定されるものではない。
【0089】
また、雰囲気ガス供給口27は、回転管3の端部まで伸ばしてもよいし、熱処理後の反応粒子17を冷却するために、粒子反応用空間14の出口(製品容器22側の端部)に雰囲気ガスを供給するような位置に設けてもよい。ヒータ空間ガス供給孔12も図2では粒子反応用空間14の出口側に記載してあるが、入口側でも構わない。
【0090】
原料容器21は原料粒子16を一時的に貯蔵し、また回転管3内へ供給する部材であり、上下端の少なくとも一部が開放された箱型(筒型)の形状を有している。
【0091】
原料容器21の内部には、原料粒子16の供給量を制御するスクリューフィーダ等の原料定量供給機構19が設けられている。
【0092】
以上が回転炉1の各構成要素の詳細の説明である。
【0093】
次に、回転炉1を用いた原料粒子16の熱処理の手順について、図1〜図7を参照して説明する。
【0094】
まず、原料粒子16を作製する。具体的には、原料を所定の割合で調合し、反応性などを考慮した所定の寸法、形状に成形する。原料粒子16は、粒子反応用空間14を滞留することなく移動できるよう例えば公知の押出装置やプレス装置を利用した造粒装置で成形し、その後乾燥することが好ましい。
【0095】
原料粒子16の形状は特に限定されないが、原料粒子16が球状の場合、回転管3内滞留時間を確保できないため、球状は避けた方が好ましい。
【0096】
なお、原料粒子16の具体的な形状としては、例えば円柱形状やボタン形状のものが挙げられる。
【0097】
次に、雰囲気ガス供給口27からヒータ設置用空間15と粒子反応用空間14に雰囲気ガスを導入し、炉内の雰囲気全体を置換した後、駆動機構37を用いて回転管3を回転させる。
【0098】
なお、ヒータ設置用空間15に導入する雰囲気ガスの量は、原料粒子16が反応する際に生じる反応ガス等が流入しない程度、即ちヒータ29が導入された雰囲気ガス以外のものと反応し消耗することを防ぐ程度の量であればよいので、粒子反応用空間14に導入する雰囲気ガスの量と比較して少なくてよい。
【0099】
逆に、ヒータ設置用空間15に雰囲気ガスを多量に供給した場合、雰囲気ガスにより中央ヒータ4にて加熱された雰囲気ガスが排気され、熱効率が悪化するため、好ましくない。
【0100】
次に、電源26を用いて、電極25を介してヒータ29に電流を流し、抵抗によりヒータ29を加熱させる。
【0101】
加熱されたヒータ29は、ヒータ設置用空間15内の雰囲気ガスを通じての熱伝導および輻射熱により回転管3のヒータ設置用空間15の内壁を加熱するため、ヒータ29から発生した熱は回転管3内を伝わり、粒子反応用空間14の内壁を加熱する。
【0102】
次に、非接触式温度測定器9で回転管3の温度を測定する。
【0103】
この温度が所定の温度に達し、かつ安定すると、原料容器21から原料粒子16が原料投入口6を介して粒子反応用空間14内に投入される。
【0104】
投入された原料粒子16は回転管3の回転により管壁に沿って巻き上がりながら、回転管3が傾斜していることによる重力の作用により回転管3内を移動する。
【0105】
この際、原料粒子16は、粒子反応用空間14の内壁によって加熱され、組成や雰囲気ガスの種類に応じて所定の反応を生じ、反応粒子17となる。
【0106】
反応粒子17が粒子反応用空間14の下端部に達すると、反応粒子17は製品容器22内に回収される。
【0107】
なお、雰囲気ガス供給口27からヒータ設置用空間15と粒子反応用空間14に導入された雰囲気ガスは、原料粒子16が加熱されることにより発生する反応ガスや、原料粒子16と雰囲気ガスとの反応による反応ガスと共に排気口24から排気される。
【0108】
ここで、図3および図5に示す従来技術に係る回転炉1aのように、ヒータ設置用空間15a内で原料粒子16を加熱する構造の場合、即ち、ヒータ設置用空間15aと粒子反応用空間14aを1つの空間で兼用する構造の場合、原料粒子16が加熱されることにより発生する反応ガスや、原料粒子16と雰囲気ガスとの反応による反応ガスが中央ヒータ4や回転管3と反応し、これらを消耗させる場合がある。このとき、より高温であり反応が起こり易い中央ヒータ4の消耗が顕著となり易い。
【0109】
中央ヒータ4が消耗した場合、連続処理するうちに、ヒータ径が細くなり、所望の温度分布から外れることになる。
【0110】
また、中央ヒータ4の消耗がさらに進行すると、中央ヒータ4が折れる可能性もある。
【0111】
一方、中央ヒータ4だけでなく、回転管3も反応により消耗して断管が発生し、連続加熱処理ができなくなる可能性もある。
【0112】
しかしながら、回転炉1においては、ヒータ設置用空間15と粒子反応用空間14が回転管3内に別々に設けられており、原料粒子16を主に回転管壁からの熱伝導にて加熱し、ヒータ29が原料粒子16や反応粒子17、即ち原料粒子16が加熱されることにより発生する反応ガスおよび原料粒子16と雰囲気ガスとの反応により発生する反応ガスと接しない構造となっている。
【0113】
そのため、原料粒子16の加熱により発生する反応ガスや、原料粒子16と雰囲気ガスとの反応による反応ガスが中央ヒータ4と反応してこれを消耗させることはない。
【0114】
また、従来の回転炉1aでは、原料粒子16は主にヒータ29からの輻射熱により直接加熱されることになるが、回転炉1においては、原料粒子16は主に粒子反応用空間14の内壁からの熱伝導にて加熱される。
【0115】
そのため、従来の回転炉1aのように主に輻射熱で直接加熱されるより穏やかな加熱が可能になり、回転管3の局所的な消耗を防止でき、かつ反応粒子17の品質を均一にできる。
【0116】
また、従来の回転炉1aは、加熱された熱エネルギーが、殆ど原料粒子16と接しない回転管3aの内壁に供給され、回転管3と接する固定管2および断熱材7へと熱伝導にて伝達する構造となっているが、回転炉1においては、中央ヒータ4で加熱された熱エネルギーは雰囲気ガスの排出によるもの以外は回転管3、即ちヒータ設置用空間15の内壁から粒子反応用空間14の内壁の間の部材へと蓄熱されるため、より効率的に加熱処理ができる。
【0117】
さらに、従来の回転炉1aの場合、時間当たりの処理量を増加させようと多量に回転管3内に原料粒子16を供給すると、原料粒子16の安息角により入口側から原料粒子16が溢れ出ることが避けられなかった。
【0118】
しかしながら、回転炉1の場合、複数の粒子反応用空間14を有するため、回転管容積を有効に利用でき、ひとつの粒子反応用空間14あたりの原料粒子16の供給量も少ない為、このような安息角の問題も発生し難くなる。
【0119】
このように、本実施形態によれば、回転炉1は、回転可能な中実の回転管3と、回転管3の回転中心軸53を含むように回転管3の内部に設けられたヒータ設置用空間15と、回転中心軸53を含むようにヒータ設置用空間15内に配置された抵抗加熱型のヒータ29と、回転中心軸53に沿うようにヒータ設置用空間15の周囲に設けられ、原料粒子16が投入される粒子反応用空間14を有しており、原料粒子16は主に粒子反応用空間14の内壁からの熱伝導にて加熱される。
【0120】
そのため、回転炉1は、熱効率がよく、また、ヒータ29からの輻射熱を直接受ける場合に比較し、穏やかに原料粒子16を反応させることが可能である。
【0121】
また、本実施形態によれば、ヒータ設置用空間15と粒子反応用空間14が別々に設けられている。
【0122】
そのため、ヒータ29が、原料粒子16の加熱により発生した反応ガスや原料粒子16と雰囲気ガスとの反応で生成した反応ガスと接することがなく、ヒータ29の消耗は避けられ、長寿命な連続運転が可能となる。
【0123】
また、ヒータ設置用空間15と粒子反応用空間14が別々に設けられているため、ヒータ29が局所的に消耗することもなく、炉内の温度分布が処理時間により変わらない。
【0124】
さらに、本実施形態によれば、粒子反応用空間14はヒータ設置用空間15の周囲に複数が均等配置されている。
【0125】
そのため、粒子反応用空間14aとヒータ設置用空間15aを1つの空間で兼用する従来構造の回転炉1aに比較して、被熱処理物が加熱された粒子反応用空間14の内壁に接する頻度が高くなり、均一な加熱が可能となり、雰囲気ガスとも均一に接することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることはない。
【0127】
当業者であれば、本発明の範囲内で各種変形例や改良例に想到するのは当然のことであり、これらも本発明の範囲に属するものと了解される。
【0128】
例えば、上記した実施形態では、ヒータ設置用空間15へ雰囲気ガスを導入する構造として、ヒータ29の内部にヒータ空間ガス供給孔12を設け、絶縁体リング11を介してヒータ空間ガス供給ノズル10と連通する構造としたが、本発明は何らこれに限定されることはない。
【0129】
即ち、雰囲気ガスを導入する構造として、例えばヒータ空間ガス供給孔12を設けずに、回転管3の入口または出口のヒータ空間雰囲気保護リング13と中央ヒータ4の隙間から雰囲気ガスを導入する構造としてもよい。
【0130】
また、雰囲気ガスを導入する構造として、ヒータ空間雰囲気保護リング13を回転させず固定し、ヒータ空間雰囲気保護リング13に孔を開けて雰囲気ガスを導入する構造としてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 回転炉
1a 回転炉
2 固定管
3 回転管
3a 回転管
4 中央ヒータ
5 端部ヒータ
6 原料投入口
7 断熱材
8 温度測定口
9 非接触式温度測定器
10 ヒータ空間ガス供給ノズル
11 絶縁体リング
12 ヒータ空間ガス供給孔
13 ヒータ空間雰囲気保護リング
14 粒子反応用空間
14a 粒子反応用空間
15 ヒータ設置用空間
15a ヒータ設置用空間
16 原料粒子
17 反応粒子
18 原料粒子投入治具
19 原料定量供給機構
20 原料粒子供給用治具
20a 原料粒子供給用治具
21 原料容器
22 製品容器
24 排気口
25 電極
26 電源
27 雰囲気ガス供給口
28 傾斜角度調整機構
29 ヒータ
37 駆動機構
39 モータ
41 第1ギヤ
43 第2ギヤ
51 貫通孔
53 回転中心軸
55 水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な中実の回転体と、
前記回転体の回転中心軸を含むように前記回転体の内部に設けられた加熱用空間と、
前記回転中心軸を含むように前記加熱用空間内に配置された抵抗加熱型のヒータと、
前記回転中心軸に沿うように前記加熱用空間の周囲に設けられ、被熱処理物が投入される熱処理空間と、
を有することを特徴とする回転炉。
【請求項2】
前記熱処理空間は、前記加熱用空間の周囲に複数個が均等配置されていることを特徴とする請求項1記載の回転炉。
【請求項3】
前記回転体は円筒であり、
前記円筒の中空部分が前記加熱用空間を構成し、
前記円筒の肉厚部分に前記熱処理空間が形成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の回転炉。
【請求項4】
前記加熱用空間および前記熱処理空間は、前記回転体を貫通するように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転炉。
【請求項5】
前記加熱用空間の端部に設けられ、前記加熱用空間の内部の雰囲気を保護するリングを有することを特徴とする請求項4に記載の回転炉。
【請求項6】
前記加熱用空間に、前記ヒータの消耗を防ぐ雰囲気ガスを供給する供給手段をさらに有し、
前記ヒータは、前記加熱用空間と外部とを連絡するヒータ空間ガス供給口を有し、
前記供給手段は、前記ヒータ空間ガス供給口を介して前記加熱用空間に前記雰囲気ガスを供給するヒータ空間ガス供給ノズルを有することを特徴とする請求項5記載の回転炉。
【請求項7】
前記熱処理空間は、前記回転中心軸に垂直な断面形状が、円形、多角形、星型のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の回転炉。
【請求項8】
前記熱処理空間に前記被熱処理物を供給する供給手段を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の回転炉。
【請求項9】
前記供給手段は、前記回転体に設けられた原料供給用治具を有し、
前記原料供給用治具は、貫通孔を有し、
前記貫通孔の一端が前記熱処理空間に連通され、他端が前記被熱処理物を供給する原料投入口を形成することを特徴とする請求項8記載の回転炉。
【請求項10】
前記回転体の周囲に設けられ、前記回転体を保持する固定部を有し、
前記供給手段は、前記回転体の前記固定部との対向面から前記熱処理空間へ貫通して設けられた貫通孔と、
前記貫通孔と対向可能に前記固定部に形成された孔状の原料投入口と、
を有し、
前記回転体の回転により、前記貫通孔と原料投入口が対向すると、前記熱処理空間に前記被熱処理物が供給されることを特徴とする請求項8記載の回転炉。
【請求項11】
前記供給手段は、前記熱処理空間の外部への露出部の周囲に設けられ、少なくとも前記回転体の外周と対向する側が切り欠き形成されたC字状の原料供給用治具を有することを特徴とする請求項8記載の回転炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−102901(P2012−102901A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249645(P2010−249645)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000220103)株式会社アライドマテリアル (192)
【Fターム(参考)】