説明

回転窓及び回転窓の設置構造

【課題】建物の壁面に設けられた矩形の窓枠とこの窓枠に回転軸を介して支持された障子とを備える回転窓において、採光性を向上させる。
【解決手段】建物の壁面に設けられた矩形の窓枠2と、この窓枠2に回転軸2aを介して支持された障子3と、を備える回転窓1において、前記回転軸2aを中心に前記障子3を所望の角度だけ回動させるボールチェーン6、回動軸6b、回動部7、連結板8等の回動手段を備え、前記障子3は、透光性を有する矩形の複層ガラス4と、この複層ガラス4の前記回転軸2aに直交する両端部をそれぞれ保持する一対の保持材5aと、を備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁面に設けられた矩形の窓枠とこの窓枠に回転軸を介して支持された障子とを備える回転窓、及び回転窓の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回転窓の一例として、特許文献1に記載の技術が知られている。この回転窓は、窓枠と、この窓枠を構成する左右縦枠材に軸支した障子と、を備えており、障子を回転させて開閉させるものである。
【0003】
ところで、この回転窓は、窓枠の開口部を大きくすることによって、充分な換気や採光を得ることができる一方で、障子を外されたりガラスを割られて泥棒に浸入される恐れがあるため、窓枠の開口部の幅を人頭よりも小さくして泥棒の侵入を防ぐ回転窓も知られている。
【特許文献1】特開平10−18716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、窓枠の開口部の幅を小さくすると、障子枠に固定された透光性を有するパネルの面積が小さくなり、充分な採光を得ることができないという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、建物の壁面に設けられた矩形の窓枠とこの窓枠に回転軸を介して支持された障子とを備える回転窓において、採光性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば図1に示すように、建物の壁面W(図3参照)に設けられた矩形の窓枠2と、この窓枠2に回転軸2aを介して支持された障子3と、を備える回転窓1において、
前記回転軸2aを中心に前記障子3を所望の角度だけ回動させる回動手段(例えば、ボールチェーン6、回動軸6b、回動部7、連結板8等)を備え、
前記障子3は、透光性を有する矩形のパネル(例えば、複層ガラス4)と、このパネル(例えば、複層ガラス4)の前記回転軸2aに直交する両端部のみをそれぞれ保持する一対の保持材5a,5b(図3参照)と、を有することを特徴としている。
ここで、回転軸2aは、窓枠2を形成する縦枠又は横枠に平行な軸である。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、窓枠2に回転軸2aを介して支持された障子3を回動手段(例えば、ボールチェーン6、回動軸6b、回動部7、連結板8等)によって所望の角度だけ回動させることで室内と屋外とを連通させることができ、換気を行うことができる。また、パネル(例えば、複層ガラス4)は、透光性を有する上にその両端部のみ一対の保持材5a,5b(図3参照)によって保持されているため、障子枠を用いる場合に比してパネル(例えば、複層ガラス4)の面積が大きくなり、室内への採光性を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転窓において、例えば図1に示すように、前記パネルは、一対のガラスを離間させた状態で対向させた複層ガラス4であることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、パネルは一対のガラスを離間させた状態で対向させた複層ガラス4のため、障子3の強度及び遮音性を高めることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の回転窓において、例えば図1に示すように、前記複層ガラス4の室内側のガラス4a及び屋外側のガラス4bは、前記回転軸2aと直交する方向にずらした状態で前記保持材5a,5b(図3参照)に固定されており、
前記窓枠2には、閉窓時において前記室内側のガラス4a及び屋外側のガラス4bの両端部にそれぞれ当接する気密材9a,9b,9c,9dが設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、室内側のガラス4a及び屋外側のガラス4bは回転軸2aと直交する方向にずれて固定されており、窓枠2には、閉窓時において室内側のガラス4a及び屋外側のガラス4bの両端部それぞれに当接する気密材9a,9b,9c,9dが設けられているため、回転窓1の気密性を向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転窓において、例えば図1に示すように、前記回転軸2aは前記窓枠2の中心から偏心して設けられ、
前記窓枠2の室内側には開窓時において前記障子3と接触しない位置に網戸10が設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、回転軸2aは窓枠2の中心から偏心して設けられているため、室内側の網戸10をより回転窓1に近接させて設けることができる。よって、室内空間を広くすることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転窓において、例えば図1及び3で示すように、前記回動手段は、窓枠2の縦枠に取り付けられた操作部(例えば、ボールチェーン6、ハンドル16)と、
この操作部(例えば、ボールチェーン6、ハンドル16)と前記障子3とを連結し、かつ前記操作部(例えば、ボールチェーン6、ハンドル16)を操作することにより、前記障子3を前記回転軸2aを中心に回動させる連結回動手段(例えば、回動軸6b、回動部7、連結板8等)と、を備えていることを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明によれば、回動手段は、窓枠2の縦枠に取り付けられた操作部(例えば、ボールチェーン6、ハンドル16)と、この操作部(例えば、ボールチェーン6、ハンドル16)と前記障子3とを連結し、かつ前記操作部(例えば、ボールチェーン6、ハンドル16)を操作することにより、前記障子3を前記回転軸2aを中心に回動させる連結回動手段(例えば、回動軸6b、回動部7、連結板8等)と、を備えているため、障子3に直接触れることなく障子3を回動させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転窓の設置構造において、例えば図3に示すように、前記回転窓1は、前記壁面Wの高所及び低所にそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、室内で温められた空気が壁面Wの高所に設けられた回転窓1から屋外へと出され、屋外の新鮮な空気が壁面Wの低所に設けられた回転窓1から室内へと入り込むため、空気の対流を発生させることができ、室内を換気することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、障子を回動手段によって所望の角度だけ回動させることで室内と屋外とを連通させることができ、換気を行うことができる。また、パネルはその両端部のみ一対の保持材によって保持されているため、室内への採光性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図3は、回転窓1が設けられた建物の壁面Wを示すものである。これらの回転窓1は、矩形横長の形状をしており、壁面Wの高所及び低所に3つずつ連続に設けられている。また、図1に示すように、これらの回転窓1は、壁面Wに設けられた矩形の窓枠2と、この窓枠2に回転軸2aを介して支持された障子3と、を備えている。
【0020】
図1及び3に示すように、壁面Wに設けられた窓枠2は、室内側に露出した室内窓枠材2bと、屋外側に露出した屋外窓枠材2cと、を備え、室内窓枠材2bは樹脂等から成形され、屋外窓枠材2cはアルミ等の金属から成形されている。
【0021】
図1に示すように、回転軸2aは、窓枠2を形成する縦材の内側に、これら縦材の中心から上方に偏心して設けられており、後述する障子3を所定角度まで回動可能に支持している。
【0022】
図1及び3に示すように、障子3は、矩形の室内側のガラス4a及び屋外側のガラス4bからなる複層ガラス4と、この複層ガラス4の左右両端部をそれぞれ保持する保持材5a,5bと、を備えている。また、室内側のガラス4a及び屋外側のガラス4bは、離間した状態で対向しているとともに、鉛直方向にずれた状態で保持材5a,5bに保持されている。
【0023】
保持材5a,5bは、室内側のガラス4a及び屋外側のガラス4bの左右両端面と左右両端部の屋外側の表面とに当接した状態で、複層ガラス4を保持している。また、保持材5aには、室内側に突出した突出部5cが形成されており、この突出部5cの先端部には連結ピン7dを介して後述する連結板8が連結されている。
【0024】
図1に示すように、窓枠2には、閉窓時において室内側のガラス4a及び屋外側のガラス4bの上下両端部が当接する気密材9a,9b,9c,9dが設けられている。さらに詳しくは、室内窓枠材2bの上部には室内側のガラス4aの上端部に当接する気密材9aが設けられ、下部には室内側のガラス4aの下端部に当接する気密材9cが設けられ、屋外窓枠材2cの上部には屋外側のガラス4bの上端部に当接する気密材9bが設けられ、下部には屋外側のガラス4bの下端部に当接する気密材9dが設けられている。また、気密材9a,9cは閉窓時において各ガラスの屋外側表面に当接し、気密材9b,9dは各ガラスの室内側表面に当接する。なお、気密材9a,9b,9c,9dは弾性を有する樹脂等から成形されている。
【0025】
図1及び2に示すように、窓枠2の室内側には、開窓時に障子3と接触しない位置に網戸10が設けられている。この網戸10は、矩形の枠体10aを備えており、この枠体10aが止着材10bによって窓枠2に取り付けられている。
【0026】
網戸10の室内側には、回転窓1を開閉するための回動軸6bが設けられている。この回動軸6bの屋外側には回動部7の第1アーム7aが係合されており、回動軸6bを回転させることによって回動ピン7cを中心に回動部7が回転するようになっている。また、回動部7は、先端が複層ガラス4に近接した第2アーム7bを備えており、この第2アーム7bの先端に連結ピン7dを介して連結板8が接続されている。さらに、この連結板8の先端は連結ピン7dを介して保持材5a,5bの突出部5cに連結されている。なお、これらの回動軸6b、回動部7及び連結板8は、後述するボールチェーン6又はハンドル16と、障子3とを連結する連結回動手段を構成している。
【0027】
また、図3に示すように、壁面Wの高所に設置された回転窓1においては、回動軸6bの室内側に回動軸6b(図1参照)を回転させるためのボールチェーン6が窓枠2の縦枠に設けられており、壁面Wの低所に設置された回転窓1においては、ハンドル16が設けられている。なお、ボールチェーン6及びハンドル16と、連結回動手段とは、障子3を回動させる回動手段を構成している。
【0028】
次に、以上のように構成される回転窓1の開閉方法について説明する。
まず、回転窓1のボールチェーン6又はハンドル16を適宜方向に回転させる。ボールチェーン6又はハンドル16が回転すると回動軸6bが回転し、回動軸6bの屋外側に連結された第1アーム7aが回動ピン7cを中心に回転する。
【0029】
第1アーム7aが回転すると、第1アーム7aに固定された第2アーム7bも同じ方向に回転し、連結ピン7dを介して第2アーム7bに連結された連結板8を引き下げる。このとき連結板8とともに保持材5a,5bの突出部5cが引き下げられ、保持材5aに保持された複層ガラス4が回転軸2aを中心に回転し、回転窓1が開かれる。なお、この複層ガラス4は、鉛直方向から45度まで回転するようになっている。
【0030】
なお、回転窓1を閉める際は、ボールチェーン6又はハンドル16を逆回転させる。
【0031】
以上の実施形態によれば、窓枠2に回転軸2aを介して支持された障子3を、ボールチェーン6又はハンドル16を回転させることによって回動軸6b、回動部7及び連結板8を介して所望の角度だけ回動させることで、室内と屋外とを連通させることができ、換気を行うことができる。また、複層ガラス4は、透光性を有する上にその両端部のみ一対の保持材5a,5bによって保持されているため、障子枠を用いる場合に比して複層ガラス4の面積が大きくなり、室内への採光性を向上させることができる。
【0032】
また、パネルは一対のガラスを離間させた状態で対向させた複層ガラス4のため、障子3の強度及び遮音性を高めることができる。さらに、室内側のガラス4a及び屋外側のガラス4bは回転軸2aと直交する方向にずれて保持されており、窓枠2には、閉窓時において室内側のガラス4a及び屋外側のガラス4bの両端部それぞれに当接する気密材9a,9b,9c,9dが設けられているため、回転窓1の気密性を向上させることができる。
【0033】
また、回転軸2aは窓枠2の中心から偏心して設けられているため、室内側の網戸10をより回転窓1に近接させて設けることができる。よって、室内空間を広くすることができる。また、網戸10は止着材10bによって窓枠2に取り付けられているため、取り外しが容易である。
【0034】
さらに、障子3は、窓枠2の縦枠に取り付けられたボールチェーン6もしくはハンドル16と、これらと障子3とを連結し、かつボールチェーン6もしくはハンドル16を操作することにより、前記障子3を回転軸2aを中心に回動させる回動軸6b、回動部7及び連結板8からなる連結回動手段と、を備えているため、障子3に直接触れることなく障子3を回動させることができる。また、障子3はボールチェーン6又はハンドル16によって操作されるため、回転窓1が設置される位置に関わらず、該回転窓1を容易に開閉することが可能である。
【0035】
また、室内で温められた空気が壁面Wの高所に設けられた回転窓1から屋外へと出され、屋外の新鮮な空気が壁面Wの低所に設けられた回転窓1から室内へと入り込むため、空気の対流を発生させることができ、室内を換気することができる。
【0036】
なお、以上の実施形態においては、回転窓1を横長の形状としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、縦長の形状でもよい。また、回転軸2aに関しても、窓枠2の横枠に平行な水平軸ではなく、縦枠に平行な垂直軸でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る回転窓の構成を示す横断面図である。
【図2】本発明に係る回転窓の構成を示す部分断面図である。
【図3】本発明に係る回転窓を備える室内の斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 回転窓
2 窓枠
2a 回転軸
3 障子
4 複層ガラス
4a 室内側のガラス
4b 屋外側のガラス
5a,5b 保持材
6 ボールチェーン
7 回動部
8 連結板
9a〜9d 気密材
10 網戸
16 ハンドル
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁面に設けられた矩形の窓枠と、この窓枠に回転軸を介して支持された障子と、を備える回転窓において、
前記回転軸を中心に前記障子を所望の角度だけ回動させる回動手段を備え、
前記障子は、透光性を有する矩形のパネルと、このパネルの前記回転軸に直交する両端部のみをそれぞれ保持する一対の保持材と、を有することを特徴とする回転窓。
【請求項2】
前記パネルは、一対のガラスを離間させた状態で対向させた複層ガラスであることを特徴とする請求項1に記載の回転窓。
【請求項3】
前記複層ガラスの室内側のガラス及び屋外側のガラスは、前記回転軸と直交する方向にずらした状態で前記保持材に固定されており、
前記窓枠には、閉窓時において前記室内側のガラス及び屋外側のガラスの両端部にそれぞれ当接する気密材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の回転窓。
【請求項4】
前記回転軸は前記窓枠の中心から偏心して設けられ、
前記窓枠の室内側には開窓時において前記障子と接触しない位置に網戸が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転窓。
【請求項5】
前記回動手段は、窓枠の縦枠に取り付けられた操作部と、
この操作部と前記障子とを連結し、かつ前記操作部を操作することにより、前記障子を前記回転軸を中心に回動させる連結回動手段と、を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転窓。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転窓の設置構造において、
前記回転窓は、前記壁面の高所及び低所にそれぞれ設けられていることを特徴とする回転窓の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−348693(P2006−348693A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179362(P2005−179362)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000114086)ミサワホーム株式会社 (288)
【出願人】(000177302)三和シヤッター工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】