説明

回転角度検出装置及びその初期設定方法

【課題】演算負荷を抑えつつ、主動歯車と従動歯車との間のバックラッシに起因する検出誤差を低減することができる回転角度検出装置及びその初期設定方法を提供する。
【解決手段】正方向誤差(回転角度α1,β1)を求める段階(S1−2〜S1−5)、逆方向誤差(回転角度α2,β2)を求める段階(S1−6〜S1−9)、正方向誤差と逆方向誤差との平均値(回転角度αave,βave)を求める段階(S1−11)、主動歯車14の回転角度が0°となる誤差を含まない理論的な第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α0,β0と前記平均値との差(オフセット値αofs,βofs)を求める段階、被検出物の回転角度θを求める際に、実際に検出された第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βに加算される補正データとしてオフセット値αofs,βofsを記憶する段階を経て、回転角度検出装置11の初期設定を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の角度を検出する回転角度検出装置及びその初期設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、車両の高機能化に伴い、車両には車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステムが搭載されつつある。これらシステムは、ステアリングの操舵角を車両の姿勢情報の一つとして取得し、その姿勢情報に基づいて車両の姿勢が安定的な状態になるように制御する。そのため、ステアリングの操舵角を検出するための回転角度検出装置が例えば車両のステアリングコラム内に組み込まれている。この種の回転角度検出装置としては、操舵角を絶対値で検出する絶対角検出方式及び操舵角を相対値で検出する相対角検出方式がある。いずれの検出方式にするかは製品仕様等に応じて決定される。
【0003】
そうした2方式のうち絶対角検出方式の回転角度検出装置としては、例えば特許文献1に示されるような構成が知られている。この回転角度検出装置は、ステアリングシャフトと一体的に回転する主動歯車、及び当該主動歯車に歯合する2つの従動歯車を備えている。両従動歯車には磁石が一体回転可能に設けられている。また、2つの従動歯車の歯数は異なっており、これにより主動歯車の回転に伴う両従動歯車の回転角度を異ならせるようにしている。そして、回転角度検出装置の制御装置は、両従動歯車にそれぞれ対応して設けられた磁気センサにより両従動歯車の回転角度を検出し、それら検出した回転角度に基づいてステアリングシャフトの回転角度を求める。
【特許文献1】特開2004−309222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来の回転角度検出装置には、次のような問題があった。即ち、主動歯車に2つの従動歯車を噛み合わせた構成とされているため、検出される2つの従動歯車の回転角度には、主動歯車と2つの従動歯車との間のバックラッシに起因する誤差が含まれている。従って、2つの従動歯車の回転角度に基づいて求められるステアリングシャフトの回転角度にも潜在的に誤差(初期操舵誤差)が含まれている。そこで、ステアリングシャフトの各回転角度における誤差を、当該回転角度を使用する車両の前記システム側で補正することにより、ステアリングシャフトの真の回転角度を演算により求めることが考えられる。しかし、この場合には、ステアリングシャフトの各回転角度に対応する大量の補正データが必要となるとともに、その補正データを使用する補正演算量が多大なものとなる。このような補正処理を車両のシステム側で行うことも考えられるが、その場合には当該システム側での演算負荷が増大する。
【0005】
また、主動歯車と2つの従動歯車との位置関係によっては、それらの間のバックラッシの大きさは、主動歯車の左右回転方向時において異なる。この場合、前記バックラッシの偏りに起因してステアリングシャフトの回転角度の誤差(舵角誤差)も左右回転時で異なる。そして、このように回転角度の誤差がステアリングシャフトの左右回転時で異なる場合があるということをも考慮するとなると、回転角度検出装置又は車両のシステム側の演算負荷は、いっそう大きなものとなる。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、演算負荷を抑えつつ、主動歯車と従動歯車との間のバックラッシに起因する検出誤差を低減することができる回転角度検出装置及びその初期設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被検出物と一体的に回転する主動歯車に2つの従動歯車を噛合させて前記主動歯車の回転に伴う前記2つの従動歯車の回転角度をそれぞれ検出し、それら検出した回転角度に基づいて前記被検出物の回転角度を求めるようにした回転角度検出装置の初期設定方法であって、前記主動歯車を正方向へ回転させたときの、主動歯車と2つの従動歯車との間のバックラッシに起因する2つの従動歯車の回転角度の誤差である正方向誤差を求める段階と、前記主動歯車を逆方向へ回転させたときの、主動歯車と2つの従動歯車との間のバックラッシに起因する2つの従動歯車の回転角度の誤差である逆方向誤差を求める段階と、前記正方向誤差と逆方向誤差との平均値を求める段階と、前記主動歯車の回転角度が0°となる誤差を含まない理論的な2つの従動歯車の回転角度と前記平均値との差を求める段階と、前記被検出物の回転角度を求める場合に、実際に検出される2つの従動歯車の回転角度に加算される補正データとして前記差の値を記憶する段階と、を備えたことをその要旨とする。
【0008】
本発明の回転角度検出装置は、主動歯車に2つの従動歯車を噛み合わせた構成とされているため、検出される2つの従動歯車の回転角度には、主動歯車と2つの従動歯車との間のバックラッシに起因する誤差が含まれている。従って、2つの従動歯車の回転角度に基づいて求められる被検出物の回転角度にも潜在的に誤差が含まれている。また、主動歯車と2つの従動歯車との位置関係によっては、それらの間のバックラッシの大きさは、主動歯車の正逆回転方向において異なる。この場合、前記バックラッシの偏りに起因して、被検出物の回転角度に含まれる誤差も、当該被検出物の正逆回転時において異なる。
【0009】
このような背景にあって、本発明によれば、回転角度検出装置の初期設定段階において、主動歯車を正方向へ回転させたときのバックラッシに起因する正方向誤差と、主動歯車を逆方向へ回転させたときのバックラッシに起因する逆方向誤差との平均値を求めるとともに、当該平均値と、主動歯車の回転角度が0°となる誤差を含まない理論的な2つの従動歯車の回転角度との差が求められる。そして、前記差の値が、実際に検出される2つの従動歯車の回転角度の補正データとして記憶される。この補正データは、回転角度検出装置が実際に被検出物の回転角度を求める場合に、当該実際に検出される2つの従動歯車の回転角度に加算され、回転角度検出装置は前記加算された値に基づいて被検出物の回転角度を算出する。
【0010】
前記補正データが加算された2つの従動歯車の回転角度は、主動歯車及び2つの従動歯車との間のバックラッシに起因する正逆回転時における誤差が均等な状態において検出される2つの従動歯車の回転角度となる。即ち、主動歯車及び2つの従動歯車との間のバックラッシに起因する正逆回転時における誤差が均等でなく偏りがある状態において検出される2つの従動歯車の回転角度に基づいて算出された被検出物の回転角度に比べて、検出誤差は小さくなる。
【0011】
また、本発明によれば、初期設定の段階で補正データを回転角度検出装置に記憶しておくことにより、回転角度検出装置の実際の使用時には、前記補正データを実際に検出された2つの従動歯車の回転角度に加算するだけでよい。このため、被検出物の各回転角度に対応する大量の補正データを用意する必要はなく、また、被検出物の回転角度の補正のための演算量も最小限に抑えられる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転角度検出装置の初期設定方法において、前記正方向誤差を求める段階は、前記主動歯車を正方向へ所定の角度だけ回転させる段階と、前記所定の角度と同じ角度だけ前記主動歯車を逆方向へ回転させる段階と、前記逆方向へ回転させたときの2つの従動歯車の回転角度を前記正方向誤差として求める段階と、を備え、前記逆方向誤差を求める段階は、前記主動歯車を逆方向へ所定の角度だけ回転させる段階と、前記所定の角度と同じ角度だけ前記主動歯車を正方向へ回転させる段階と、前記正方向へ回転させたときの2つの従動歯車の回転角度を前記逆方向誤差として求める段階と、を備えたことをその要旨とする。
【0013】
本発明によれば、回転角度検出装置の初期設定段階において、主動歯車を正方向へ所定角度だけ回転させた後、逆方向へ所定角度だけ回転させることにより、正方向誤差が得られる。また、主動歯車を逆方向へ所定角度だけ回転させた後、正方向へ所定角度だけ回転させることにより、逆方向誤差が得られる。このため、簡単な操作により、正方向誤差及び逆方向誤差を取得することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の回転角度検出装置の初期設定方法により初期設定がなされた回転角度検出装置であって、前記補正データが記憶された記憶手段と、前記2つの従動歯車の回転角度を検出する検出手段と、前記検出手段により検出される2つの従動歯車の実際の回転角度に、前記記憶手段に記憶された補正データを加算するとともに、当該加算後の回転角度に基づいて前記被検出物の回転角度を求める制御手段と、を備えたことをその要旨とする。
【0015】
本発明によれば、回転角度検出装置の実際の使用時には、制御手段は、記憶手段に予め記憶された補正データを、検出手段により検出された2つの従動歯車の実際の回転角度に加算し、その加算した後の値(角度)に基づいて被検出物の回転角度を求める。前記補正データが加算された2つの従動歯車の回転角度は、主動歯車と2つの従動歯車との間のバックラッシに起因する正逆回転時における誤差が均等な状態において検出される2つの従動歯車の回転角度となる。即ち、主動歯車と2つの従動歯車との間のバックラッシに起因する正逆回転時における誤差が均等でなく偏りがある状態において検出される2つの従動歯車の回転角度に基づいて算出された被検出物の回転角度に比べて、検出誤差は小さくなる。従って、被検出物の回転角度は、より正確に検出される。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の回転角度検出装置において、前記制御手段は、初期設定段階において前記補正データを演算して前記記憶手段に格納する補正データ演算手段を備えたことをその要旨とする。
【0017】
本発明によれば、補正データの演算を回転角度検出装置側の補正データ演算手段で行うことが可能となる。このため、回転角度検出装置の初期設定を、例えば車両のシステム側と連係して行う必要はない。従って、回転角度検出装置の初期設定に係る処理が簡単になる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の回転角度検出装置において、前記検出手段は、前記2つの従動歯車に一体回転可能に設けられた磁石と、前記磁石に対向するように配設されるとともに、当該磁石から発せられる磁界の方向の変化又は磁界の強度の変化に応じた検出信号を出力する磁気センサと、を備えたことをその要旨とする。
【0019】
本発明によれば、2つの従動歯車の回転に伴う磁石から発せられる磁界の方向の変化又は磁界の強度の変化が前記磁気センサにより検出されるとともに、当該磁気センサは前記磁界の方向の変化又は磁界の強度の変化に応じた検出信号を出力する。そして、前記制御手段は、前記磁気センサからの検出信号、及び前記記憶手段に記憶された補正データに基づいて、被検出物の回転角度を求める。このように、2つの従動歯車の回転角度の検出を、磁気センサを通じて行うことにより、回転角度検出装置の構成の簡素化が図られる。
【0020】
即ち、2つの従動歯車の回転角度を、例えば光学式のロータリエンコーダを使用して求めることも可能である。しかし、ロータリエンコーダは、被検出物と一体回転可能に設けられるスリット円板、並びに当該円板をその厚み方向において挟み込むように配設される発光素子及び受光素子等が必要となる。このため、このようなロータリエンコーダを本発明の検出手段として採用するようにした場合には、部品点数の低減、ひいては構成の簡素化には自ずと限界がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、演算負荷を抑えつつ、主動歯車と従動歯車との間のバックラッシに起因する検出誤差を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を、例えばステアリングの操舵角を検出する回転角度検出装置に具体化した一実施の形態を図1に基づいて説明する。
図1に示すように、回転角度検出装置11は、図示しないステアリングに一体回転可能に連結されたステアリングシャフト12に装着されている。回転角度検出装置11は、ステアリングシャフト12の周囲の図示しないステアリングコラム等の構造体に固定された箱体状のハウジング13を備えている。このハウジング13内には、ステアリングシャフト12に一体回転可能に外嵌された主動歯車14が収容されるとともに、当該主動歯車14に噛合する第1及び第2の従動歯車15,16が回転可能に支持されている。第1及び第2の従動歯車15,16は歯数が異なるように設けられている。従って、ステアリングシャフト12が回転すると、主動歯車14は一体的に回転し、それに伴って第1及び第2の従動歯車15,16もそれぞれ回転する。第1及び第2の従動歯車15,16は歯数が異なっているので、主動歯車14の回転角度に対する第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度はそれぞれ異なる。また、第1及び第2の従動歯車15,16には、第1及び第2の磁石(永久磁石)17,18が一体回転可能に設けられている。
【0023】
図2に示すように、第1及び第2の磁石17,18は、第1及び第2の従動歯車15,16の下部開口部を介して下方を臨むように設けられている。また、ハウジング13の内部において、第1及び第2の従動歯車15,16の下方には、プリント基板19が第1及び第2の従動歯車15,16の回転中心軸に対して直交するように配設されている。そして、当該プリント基板19の上面には、第1及び第2の磁気センサ20,21が第1及び第2の磁石17,18に対向するように配設されている。また、ハウジング13の内部おいて、プリント基板19の下方には、他のプリント基板22がプリント基板19に対して直交するように配設されている。そして、当該プリント基板22の表面には、マイクロコンピュータ23が設けられている。
【0024】
<電気的構成>
次に、回転角度検出装置11の電気的構成を説明する。図3に示すように、回転角度検出装置11は、前述した第1及び第2の磁気センサ20,21、並びにマイクロコンピュータ23に加えて、電源回路24を備えている。電源回路24は図示しない車両のバッテリから入力される電圧を、第1及び第2の磁気センサ20,21、並びにマイクロコンピュータ23等の回転角度検出装置11の各部にそれぞれ応じた所定レベルの電圧に変換し、それら電圧を回転角度検出装置11の各部に供給する。第1及び第2の磁気センサ20,21、並びにマイクロコンピュータ23等はそれぞれ電源回路24から安定して供給される所定レベルの電圧を動作電源として動作する。
【0025】
<第1及び第2の磁気センサ>
第1及び第2の磁気センサ20,21は、それぞれ四つの異方性磁気抵抗素子(AMR素子)をブリッジ状に接続した回路を備えている。この異方性磁気抵抗素子は、異方性磁気抵抗効果を有するNi−Co等の強磁性体からなり、その抵抗値は与えられる磁界(正確には、磁束の向き)に応じて変化する。そして、第1及び第2の磁気センサ20,21は、それらに与えられる磁界の変化(正確には、磁束の向きの変化)に応じて前記ブリッジ状の回路の中点電位を磁束の検出信号として出力する。
【0026】
第1の磁気センサ20は、第1の従動歯車15の回転に伴う第1の磁石17から発せられる磁束の方向の変化を検出し、第1の従動歯車15の回転角度αに応じて連続的に変化するアナログ信号、即ち正弦関数に準ずる正弦信号及び余弦関数に準ずる余弦信号をそれぞれ出力する。この第1の磁気センサ20からのアナログ信号はマイクロコンピュータ23に送られる。また、第2の磁気センサ21は、第2の従動歯車16の回転に伴う第2の磁石18から発せられる磁束の方向の変化を検出し、第2の従動歯車16の回転角度βに応じて連続的に変化するアナログ信号、即ち正弦関数に準ずる正弦信号及び余弦関数に準ずる余弦信号をそれぞれ出力する。この第2の磁気センサ21からのアナログ信号はマイクロコンピュータ23に送られる。
【0027】
<マイクロコンピュータ>
マイクロコンピュータ23は、CPU(中央演算装置)25、EEPROM(電気的に書き換えできるROM)26及びRAM(書き込み読み出し専用メモリ)27等を備えている。
【0028】
EEPROM26には、回転角度検出装置11の全体を統括的に制御するための各種の制御プログラム及びデータが予め格納されている。RAM27はEEPROM26の制御プログラムを展開してCPU25が各種処理を実行するためのデータ記憶領域、即ち作業領域である。
【0029】
EEPROM26に格納される制御プログラムとしては、例えば補正データ算出プログラム及び回転角度算出プログラムがある。補正データ算出プログラムは、主動歯車14と第1及び第2の従動歯車15,16との間のバックラッシに起因する回転角度θの検出誤差、正確には、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを補正するための角度データを求めるためのプログラムである。当該補正データ算出プログラムは、回転角度検出装置11の組み立て初期段階において実行され、当該プログラムにより算出された補正データは、EEPROM26に格納される。この補正データの求め方については、後に詳述する。また、回転角度算出プログラムは、第1及び第2の磁気センサ20,21からの検出信号に基づいて第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを求め、当該回転角度α,βを、前記補正データを使用して補正し、その補正後の回転角度α,βの差に基づいてステアリングシャフト12の回転角度θを絶対値で求めるためのプログラムである。
【0030】
図3に示されるように、CPU25には、角度演算部28及び補正データ演算部29が設けられている。補正データ演算部29は、回転角度検出装置11の組み立て初期段階において、EEPROM26に格納された補正データ算出プログラムに従って、第1及び第2の従動歯車15,16の補正データを求める。角度演算部28は、EEPROM26に格納された回転角度算出プログラムに従って、ステアリングシャフト12の回転角度θを求める。
【0031】
ここで、前述したように、本実施の形態では、第1及び第2の従動歯車15,16の歯数は異なっていることから、主動歯車14の回転に伴う第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βも異なる値となる。このため、ステアリングが中立位置(ステアリング操作角度=0°)にある状態でステアリングが回転操作された場合、当該操作角度の変化に対して、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差は直線的に変化する。即ち、ステアリングシャフト12の回転角度θと、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差とは比例関係にあることから、当該回転角度α,βの差は主動歯車14の回転角度θに対して固有の値となる。このため、当該回転角度α,βの差に基づいて主動歯車14、即ちステアリングシャフト12の回転角度θ(絶対値)の即時検出が可能となる。
【0032】
具体的には、ステアリングシャフト12の回転角度θは、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差の関数であり、(式1)のように表される。
θ=f{(α−β)} …(式1)
CPU25の角度演算部28は、EEPROM26に格納された前記補正データを使用して、算出した第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを補正する。そして、当該角度演算部28は、前記補正後の回転角度α,βの差を使用して、(式1)に基づいて主動歯車14、即ちステアリングシャフト12の回転角度θを算出する。そして、マイクロコンピュータ23は、(式1)に基づいて算出した回転角度θを、車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステム(正確には、それらの制御装置)に送る。
【0033】
<*回転角度θの検出誤差について>
次に、回転角度検出装置11の検出誤差について説明する。前述したように、回転角度検出装置11は、主動歯車14に第1及び第2の従動歯車15,16を噛み合わせた構成とされている。このため、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βには、主動歯車14と第1及び第2の従動歯車15,16との間のバックラッシに起因する誤差s,tが含まれている。従って、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βに基づいて求められるステアリングシャフト12の回転角度θにも潜在的に誤差(舵角誤差)が存在する。
【0034】
従って、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βに含まれる誤差s,tを加味すると、ステアリングシャフト12の回転角度θは、前述の(式1)に基づいて、(式2)のように示される。
【0035】
θ=f{(α+s)−(β+t)}=f{(α−β)+(s−t)} …(式2)
そして、前記(式2)における変数部(s−t)による影響が、回転角度θの真値に対する誤差Δ(舵角誤差)となる。(式3)に示すように、この変数部(s−t)を誤差要素δとする。
【0036】
δ=s−t …(式3)
前記誤差Δは、主動歯車14、並びに第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係によって、主動歯車14が正方向(右方向)へ回転したときの値と、同じく逆方向(左方向)へ回転したときの値とが不均一となる。このため、前記(式1)に基づいて算出された回転角度θを、車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等のシステム側で使用する場合、当該システム側では、単に回転角度θの誤差Δを考慮するだけでなく、当該誤差Δはステアリングの左回転時と右回転時とで異なるということを考慮して使用する必要がある。
【0037】
ここで、ステアリングを操作した際において、主動歯車14、並びに第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係は、次の(A)〜(E)の5つの類型に分類することができる。なお、類型(A)〜(E)において、触れる又は触れないとは、主動歯車14並びに第1及び第2の従動歯車15,16の歯面間の接触状態をいう。
(A)主動歯車14並びに第1及び第2の従動歯車15,16の全てが触れていない状態
(B)第1及び第2の従動歯車15,16の両方が主動歯車14の左側に触れている状態
(C)第1及び第2の従動歯車15,16の両方が主動歯車14の右側に触れている状態
(D)第1の従動歯車15は主動歯車14の左側に、第2の従動歯車16は主動歯車14の右側に触れている状態
(E)第1の従動歯車15は主動歯車14の右側に、第2の従動歯車16は主動歯車14の左側に触れている状態
以下に、前記類型(A)〜(E)において、ステアリングシャフト12の回転角度θの真値(実際のステアリング操舵角)と、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βに基づいて求められた回転角度θの算出値との誤差Δにおける誤差要素δが、どのような値となるのかを示す。なお、以下の計算において、第1の従動歯車15の回転角度をα、第2の従動歯車16の回転角度をβ、主動歯車14と第1の従動歯車15との間のバックラッシをj、主動歯車14と第2の従動歯車16との間のバックラッシをjとする。
【0038】
また、誤差Δが、最大値又は最小値となる場合の第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係は、前記(式1)に代入する変数が、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差(α−β)であることから、次の(F),(G)の2つの類型に分類することができる。
(F)第1及び第2の従動歯車15,16が互いに近づいている位置にある場合
(G)第1及び第2の従動歯車15,16が互いに遠ざかっている位置にある場合
そして、前記5つの類型(A)〜(E)のそれぞれの状態において、第1及び第2の従動歯車15,16が前記2つの類型(F),(G)の位置関係にある場合の誤差要素δ(最大値及び最小値)は、以下のようになる。なお、図4〜図8において、主動歯車14の正回転方向(右回転方向)をプラス(+)、同じく逆回転方向(左回転方向)をマイナス(−)とする。
【0039】
<*類型(A)の状態>
図4に示されるように、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(A)の状態において、第1及び第2の従動歯車15,16が互いに近づいている前記類型(F)の位置関係にある場合は、当該第1及び第2の従動歯車15,16が前記類型(A)の状態から角度(α+j,β−j)だけ変位した場合である。また、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(A)の状態において、第1及び第2の従動歯車15,16が互いに遠ざかっている前記類型(G)の位置関係にある場合は、当該第1及び第2の従動歯車15,16が前記類型(A)の状態から角度(α−j,β+j)だけ変位した場合である。そして、前記(式1)に示されるように、ステアリングシャフト12の回転角度θは、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差の関数として表されることから、誤差要素δの値は、以下のようになる。
【0040】
(α+j)−(β−j)=(α−β)+(j+j
(α−j)−(β+j)=(α−β)−(j+j
従って、誤差要素δ=±(j+j)となる。
【0041】
<*類型(B)の状態>
図5に示されるように、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(B)の状態において、第1及び第2の従動歯車15,16が互いに近づいている前記類型(F)の位置関係にある場合は、当該第1及び第2の従動歯車15,16が前記類型(B)の状態から角度(α,β−2j)だけ変位した場合である。また、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(B)の状態において、第1及び第2の従動歯車15,16が互いに遠ざかっている前記類型(G)の位置関係にある場合は、当該第1及び第2の従動歯車15,16が前記類型(B)の状態から角度(α−2j,β)だけ変位した場合である。そして、前記(式1)に示されるように、ステアリングシャフト12の回転角度θは、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差の関数として表されることから、誤差要素δの値は、以下のようになる。
【0042】
(α−(β−2j)=(α−β)+2j
(α−2j)−β=(α−β)−2j
従って、誤差要素δ=−2j,+2jとなる。
【0043】
<*類型(C)の状態>
図6に示されるように、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(C)の状態において、第1及び第2の従動歯車15,16が互いに近づいている前記類型(F)の位置関係にある場合は、当該第1及び第2の従動歯車15,16が前記類型(C)の状態から角度(α+2j,β)だけ変位した場合である。また、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(C)の状態において、第1及び第2の従動歯車15,16が互いに遠ざかっている前記類型(G)の位置関係にある場合は、当該第1及び第2の従動歯車15,16が前記類型(C)の状態から角度(α,β+2j)だけ変位した場合である。そして、前記(式1)に示されるように、ステアリングシャフト12の回転角度θは、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差の関数として表されることから、誤差要素δの値は、以下のようになる。
【0044】
(α+2j)−β=(α−β)+2j
α−(β+2j)=(α−β)−2j
従って、誤差要素δ=+2j,−2jとなる。
【0045】
<*類型(D)の状態>
図7に示されるように、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(D)の状態において、第1及び第2の従動歯車15,16が互いに近づいている前記類型(F)の位置関係にある場合は、当該第1及び第2の従動歯車15,16が前記類型(D)の状態から角度(α+2j,β−2j)だけ変位した場合である。また、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(D)の状態において、第1及び第2の従動歯車15,16が互いに遠ざかっている前記類型(G)の位置関係にある場合は、現状の位置、即ち(α,β)にある場合である。そして、前記(式1)に示されるように、ステアリングシャフト12の回転角度θは、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差の関数として表されることから、誤差要素δの値は、以下のようになる。
【0046】
(α+2j)−(β−2j)=(α−β)+2(j+j
α−β=α−β+0
従って、誤差要素δ=+2(j+j),0となる。
【0047】
<*類型(E)の状態>
図8に示されるように、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(E)の状態において、第1及び第2の従動歯車15,16が互いに近づいている前記類型(F)の位置関係にある場合は、現状の位置、即ち(α,β)にある場合である。また、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(E)の状態において、第1及び第2の従動歯車15,16が互いに遠ざかっている前記類型(G)の位置関係にある場合は、当該第1及び第2の従動歯車15,16が前記類型(E)の状態から角度(α−2j,β+2j)だけ変位した場合である。そして、前記(式1)に示されるように、ステアリングシャフト12の回転角度θは、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差の関数として表されることから、誤差要素δの値は、以下のようになる。
【0048】
α−β=α−β+0
(α−2j)−(β+2j)=(α−β)−2(j+j
従って、誤差要素δ=0,−2(j+j)となる。
【0049】
ここで、主動歯車14と、第1及び第2の従動歯車15,16との間のバックラッシj,jの大小関係が、「j=j」、「j>j」、「j<j」の3つの関係にある場合における誤差要素δの大きさ(絶対値)を、前記類型(A)〜類型(E)毎に比較検討する。
【0050】
まず、類型(A)の状態にある場合に、「j=j」の関係が成立するときには、誤差要素δの大きさは、類型(B)及び類型(C)の状態にある場合と並んで最も小さな値となる。また、類型(A)の状態にある場合に、「j>j」又は「j<j」の関係が成立するときには、誤差要素δの大きさは、他の類型(B)〜類型(E)の状態にある場合の誤差要素δの中では、比較的小さい値をとる。そして、類型(A)の状態にある場合には、「j=j」、「j>j」、「j<j」のいずれの関係が成立するときであれ、プラス方向及びマイナス方向における誤差要素δの大きさが同じ値になる。
【0051】
次に、類型(B)の状態にある場合に、「j=j」の関係が成立するときには、誤差要素δの大きさは、類型(A)及び類型(C)の状態にある場合と並んで最も小さな値となる。また、類型(B)の状態にある場合に、「j>j」又は「j<j」の関係が成立するときには、誤差要素δの大きさは、他の類型(A)及び類型(C)〜類型(E)の状態にある場合の誤差要素δの中では、比較的小さい値をとる。しかし、類型(B)の状態にある場合には、「j=j」の関係が成立するときには、プラス方向及びマイナス方向における誤差要素δの大きさが同じ値になるものの、「j>j」又は「j<j」の関係が成立するときには、プラス方向及びマイナス方向における誤差要素δの大きさは異なる値になる。
【0052】
次に、類型(C)の状態にある場合に、「j=j」の関係が成立するときには、誤差要素δの大きさは、類型(A)及び類型(B)の状態にある場合と並んで最も小さな値となる。また、類型(C)の状態にある場合に、「j>j」又は「j<j」の関係が成立するときには、誤差要素δの大きさは、他の類型(A)、類型(B)、類型(D)及び類型(E)の状態にある場合の誤差要素δの中では、比較的小さい値をとる。しかし、類型(C)の状態にある場合には、「j=j」の関係が成立するときには、プラス方向及びマイナス方向における誤差要素δの大きさが同じ値になるものの、「j>j」又は「j<j」の関係が成立するときには、プラス方向及びマイナス方向における誤差要素δの大きさは異なる値になる。
【0053】
次に、類型(D)の状態にある場合に、「j=j」の関係が成立するときには、誤差要素δの大きさは、類型(E)の状態にある場合と並んで最も大きな値となる。また、類型(D)の状態にある場合に、「j>j」又は「j<j」の関係が成立するときには、誤差要素δの大きさは、類型(E)の状態にある場合と並んで最も大きな値となる。しかも、類型(D)の状態にある場合には、「j=j」、「j>j」、「j<j」のいずれの関係が成立するときであれ、プラス方向及びマイナス方向における誤差要素δの大きさが異なる値になる。さらに、類型(D)の状態にある場合には、プラス方向の誤差要素δとマイナス方向の誤差要素δの大きさの差が、類型(E)の状態にある場合と並んで、最も大きくなる。
【0054】
最後に、類型(E)の状態にある場合に、「j=j」の関係が成立するときには、誤差要素δの大きさは、類型(D)の状態にある場合と並んで最も大きな値となる。また、類型(E)の状態にある場合に、「j>j」又は「j<j」の関係が成立するときには、誤差要素δの大きさは、類型(D)の状態にある場合と並んで最も大きな値となる。しかも、類型(E)の状態にある場合には、「j=j」、「j>j」、「j<j」のいずれの関係が成立するときであれ、プラス方向及びマイナス方向における誤差要素δの大きさが異なる値になる。さらに、類型(E)の状態にある場合には、プラス方向の誤差要素δとマイナス方向の誤差要素δの大きさの差が、類型(D)の状態にある場合と並んで、最も大きくなる。
【0055】
以上のことから、類型(A)〜類型(E)の中では、類型(A)の場合において、誤差要素δの大きさが、より小さな値となり、且つプラス方向の誤差要素δとマイナス方向の誤差要素δ方向誤差とが常に同じ値(正確には、近似)となることが分かる。即ち、類型(A)〜類型(E)の中では、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が類型(A)の状態にある場合が、回転角度検出装置11の回転角度θに対する誤差Δが最も安定しているといえる。このため、製品としては、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(A)の状態となるように設定することが好ましい。
【0056】
しかし、回転角度検出装置11の組み立て初期段階においては、仮に回転角度検出装置11によりステアリング操作角度=0°であると検出されている場合に、主動歯車14並びに第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が類型(A)〜類型(E)のどの状態となっているかは、製品間でばらばらである。そこで、本実施の形態では、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の実際の位置関係が前記類型(A)〜類型(E)のどの類型の状態にある場合であれ、前記類型(A)の状態にあるときの回転角度θが算出されるように、回転角度検出装置11の初期設定を行う。
【0057】
<*回転角度検出装置の初期設定方法>
次に、回転角度検出装置11の初期設定方法を図9(a)に示すフローチャートに従って説明する。
【0058】
回転角度検出装置11の初期設定を行うに際しては、まずステアリングシャフト12、即ち主動歯車14をステアリング操作角度=0°となる基準位置に合わせる(ステップS1−1)。このとき、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係が前記類型(A)〜類型(E)のどの類型の状態にあるのかは、不明である。
【0059】
次に、主動歯車14を前記基準位置から正方向(右回転方向)へ、ある角度θaだけ回転させる(ステップS1−2)。
次に、主動歯車14を、ステップS1−2の位置から逆方向(左回転方向)へ、ある角度θaだけ回転させて、当該主動歯車14を前記基準位置に戻す(ステップS1−3)。
【0060】
このとき、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係は、図10に示されるような状態となる。即ち、第1及び第2の従動歯車15,16の両方が主動歯車14の左側に触れている状態となる。
【0061】
次に、この状態において、回転角度検出装置11へ検査信号等の外部的なトリガ信号(電圧)を与える(ステップS1−4)。すると、第1及び第2の磁気センサ20,21は、当該トリガ信号を動作電源として、そのときの第1及び第2の磁石17,18から発せられる磁束の方向に応じた出力信号を出力する。
【0062】
マイクロコンピュータ23の補正データ演算部29は、当該出力信号に基づいて、このときの第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α1,β1を求めるとともに、それら回転角度α1,β1をEEPROM26に記憶する(S1−5)。この回転角度α1,β1は、ステアリングシャフト12(主動歯車14)を正方向へ回転させた場合において、主動歯車14と第1及び第2の従動歯車15,16との間のバックラッシに起因する第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度の誤差(以下、「正方向誤差」という。)である。
【0063】
次に、主動歯車14をステップS1−3の位置、即ち前記基準位置から逆方向(左回転方向)へ、ある角度θbだけ回転させる(ステップS1−6)。
次に、主動歯車14を、ステップS1−6の位置から正方向(右回転方向)へ、ある角度θbだけ回転させて、当該主動歯車14を前記基準位置に戻す(ステップS1−7)。
【0064】
このとき、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係は、図11に示されるような状態となる。即ち、第1及び第2の従動歯車15,16の両方が主動歯車14の右側に触れている状態となる。
【0065】
そして、ステップS1−4と同様に、この状態において、回転角度検出装置11へトリガ信号を与える(ステップS1−8)。そして、補正データ演算部29は、このときの第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α2,β2をEEPROM26に記憶する(ステップS1−9)。この回転角度α2,β2は、ステアリングシャフト12(主動歯車14)を逆方向へ回転させた場合において、主動歯車14と第1及び第2の従動歯車15,16との間のバックラッシに起因する第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度の誤差(以下、「逆方向誤差」という。)である。
【0066】
次に、補正データ演算部29は、ステップS1−5で求めた第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α1,β1、及びステップS1−9で求めた第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α2,β2の平均値である回転角度αave,βaveを、(式4)及び(式5)に基づいて求める(ステップS1−10)。
【0067】
αave=(α1+α2)/2 …(式4)
βave=(β1+β2)/2 …(式5)
前記(式4)及び(式5)によって求められた第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度αave,βaveは、当該第1及び第2の従動歯車15,16が図12に示される位置に保持されているときの回転角度である。図12に示される位置は、主動歯車14と第1の従動歯車15との間のバックラッシ、及び主動歯車14と第2の従動歯車16との間のバックラッシが左右均等になる位置、即ち、前記正方向誤差及び前記逆方向誤差の大きさが均等になる位置である。
【0068】
次に、補正データ演算部29は、誤差Δ(誤差要素δ)が0(ゼロ)である理論的なステアリング操作角度=0°となる第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α0,β0と、ステップS1−10で求めた回転角度αave,βaveとの差を求める(ステップS1−11)。なお、誤差Δ(誤差要素δ)が0(ゼロ)である理論的なステアリング操作角度=0°となる第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α0,β0の値は予めEEPROM26に格納されている。
【0069】
そして、補正データ演算部29は、(式6)に示されるように、当該差の値(角度)を第1及び第2の従動歯車15,16の補正データとしてオフセット値αofs,βofsをEEPROM26に記憶する(ステップS1−12)。
【0070】
αofs,βofs=αave−α0,βave−β0 …(式6)
以上で、回転角度検出装置11の初期設定は完了となる。当該初期設定が完了した以降、回転角度検出装置11が起動される度に、補正データ演算部29は、EEPROM26に記憶されたオフセット値αofs,βofsを読み出し、その読み出した値を使用してステアリングシャフト12の回転角度θを求める。従って、ステップS1−1〜ステップS1−12の処理は、初期実行時(即ち、工場出荷時)にのみ行う。回転角度検出装置11の起動毎に、ステップS1−1〜ステップS1−12を実行する必要はない。
【0071】
<*回転角度θの演算処理>
次に、回転角度検出装置11によるステアリングシャフト12の回転角度θの演算処理について図9(b)に示すフローチャートに従って説明する。
【0072】
回転角度検出装置11の実際の使用時(起動時)には、マイクロコンピュータ23の角度演算部28は、EEPROM26に格納されたオフセット値αofs,βofsを読み出す。そして、角度演算部28は、当該読み出したオフセット値αofs,βofsに基づいて第1及び第2の磁気センサ20,21からの検出信号に基づいて算出した第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを補正する。そして、角度演算部28は、この補正した回転角度α,βに基づいてステアリングシャフト12の回転角度θを求める。即ち、角度演算部28は、ステアリング操作に伴って回転する第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを所定の制御周期毎に算出する(ステップS2−1)。
【0073】
そして、角度演算部28は、次の(式7)及び(式8)に示されるように、ステップ2−1において算出した回転角度α,βに、EEPROM26に記憶されているオフセット値αofs,βofsを加算することにより、回転角度θの算出に実際に使用する回転角度αrev,βrevを求める(ステップS2−2)。
【0074】
αrev=α+αofs …(式7)
βrev=β+βofs …(式8)
そして、次の(式9)に示されるように、角度演算部28は、ステップS2−2において算出した補正後の回転角度αrev,βrevを前記(式1)に代入することにより、ステアリングシャフト12の回転角度θを絶対値で求める(ステップS2−3)。
【0075】
θ=f{αrev−βrev} …(式9)
以上の処理により、誤差Δ(舵角誤差)が正回転方向及び逆回転方向で均一な状態での回転角度θが得られる。即ち、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の実際の位置関係が前記類型(A)〜類型(E)のどの類型の状態にある場合であれ、前記類型(A)の状態にあるときの回転角度θが算出される。このため、回転角度θに対する誤差Δ(誤差要素δ)がより小さくなるとともに、ステアリングの左右回転時におけるバックラッシに起因する誤差Δの均一化が図られる。従って、ステアリングシャフト12の回転角度θを、より正確に求めることができる。そして、マイクロコンピュータ23は、角度演算部28において算出された精度の確保された回転角度θを、車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステム(正確には、それらの制御装置)に送る。
【0076】
<実施の形態の効果>
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)回転角度検出装置11の初期設定方法には、正方向誤差である第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α1,β1を求める段階(S1−2〜S1−5)、及び逆方向誤差である第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α2,β2を求める段階(S1−6〜S1−9)を備えた。また、当該方法には、正方向誤差と逆方向誤差との平均値である回転角度αave,βaveを求める段階(S1−11)と、主動歯車14の回転角度が0°となる誤差を含まない理論的な第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α0,β0と回転角度αave,βaveとの差であるオフセット値αofs,βofsを求める段階とを備えた。さらに、当該方法には、被検出物であるステアリングシャフト12、即ち主動歯車14の回転角度θを求める際に、実際に検出された第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βに加算される補正データとして前記差の値であるオフセット値αofs,βofsを記憶する段階(S1−11)を備えた。
【0077】
前記補正データであるオフセット値αofs,βofsが加算された第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度αrev,βrevは、主動歯車14並びに第1及び第2の従動歯車15,16との間のバックラッシに起因する正逆回転時における誤差が均等な状態において検出される第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度となる。即ち、バックラッシに起因する誤差Δ(舵角誤差)が正逆回転方向において均等に割り付けられる。このように、誤差特性の均一化が図られることにより、前記バックラッシに起因する正逆回転時における誤差が均等でなく偏りがある状態において検出される第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βに基づいて算出されたステアリングシャフト12の回転角度θに比べて、検出誤差は小さくなる。即ち、ステアリングシャフト12の回転角度θを、より正確に検出することができる。
【0078】
(2)また、初期設定の段階で、回転角度θの補正データであるオフセット値αofs,βofsを回転角度検出装置11に記憶しておくことにより、回転角度検出装置11の実際の使用時には、オフセット値αofs,βofs実際に検出された第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βに加算するだけでよい。このため、ステアリングシャフト12の各回転角度θに対応する大量の補正データを用意する必要はなく、また、ステアリングシャフト12の回転角度θの補正のための演算量も最小限に抑えられる。
【0079】
(3)前記正方向誤差を求める段階は、主動歯車14を正方向へ所定の角度θaだけ回転させる段階(S1−2)と、前記角度θaと同じ角度だけ主動歯車14を逆方向へ回転させる段階(S1−3)とを備えた。また、当該正方向誤差を求める段階は、前記逆方向へ回転させたときの第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α1,α2を前記正方向誤差として求める段階(S1−5)を備えた。一方、前記逆方向誤差を求める段階は、主動歯車14を逆方向へ所定の角度θbだけ回転させる段階(S1−6)と、前記角度θbと同じ角度だけ主動歯車14を正方向へ回転させる段階(S1−7)と、前記正方向へ回転させたときの第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α2,β2を前記逆方向誤差として求める段階(S1−10)とを備えた。
【0080】
この初期設定方法によれば、回転角度検出装置11の初期設定段階において、主動歯車14を正方向へ所定の角度θaだけ回転させた後、逆方向へ所定の角度θaだけ回転させることにより、正方向誤差が得られる。また、主動歯車14を逆方向へ所定の角度θbだけ回転させた後、正方向へ所定の角度θbだけ回転させることにより、逆方向誤差が得られる。このため、簡単な操作により、正方向誤差及び逆方向誤差を取得することができる。
【0081】
(4)回転角度検出装置11には、前記補正データが記憶された記憶手段としてのEEPROM26と、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを検出する検出手段としての第1及び第2の磁気センサ20,21とを備えた。また、回転角度検出装置11には、第1及び第2の磁気センサ20,21により検出される第1及び第2の従動歯車15,16の実際の回転角度α,βに、EEPROM26に記憶された補正データであるオフセット値αofs,βofsを加算し、当該加算後の回転角度αrev,βrevに基づいて、回転角度θを求めるCPU25を備えた。
【0082】
オフセット値αofs,βofsが加算された第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度αrev,βrevは、主動歯車14と第1及び第2の従動歯車15,16との間のバックラッシに起因する正逆回転時における誤差が均等な状態において検出される第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度となる。即ち、主動歯車14と第1及び第2の従動歯車15,16との間のバックラッシに起因する正逆回転時における誤差が均等でなく偏りがある状態において検出される第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βに基づいて算出された回転角度θに比べて、誤差Δ(検出誤差)は小さくなる。従って、本実施の形態の回転角度検出装置11によれば、ステアリングシャフト12の回転角度θを、より正確に検出することができる。
【0083】
(5)CPU25には、初期設定段階において補正データであるオフセット値αofs,βofsを演算してEEPROM26に格納する補正データ演算手段としての補正データ演算部29を備えた。
【0084】
このため、オフセット値αofs,βofsの演算を回転角度検出装置11側の補正データ演算部29で行うことにより、回転角度検出装置11の初期設定を例えば車両のシステム側と連係して行う必要はない。ひいては、回転角度検出装置11の初期設定に係る処理が簡単になる。
【0085】
(6)第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを検出するための手段として、第1及び第2の従動歯車15,16に一体回転可能に設けられた第1及び第2の磁石17,18を備えた。また、当該検出するための手段として、第1及び第2の磁石17,18に対向するように配設されるとともに、当該第1及び第2の磁石17,18から発せられる磁界の方向の変化に応じた検出信号を出力する磁気センサとしての第1及び第2の磁気センサ20,21を備えた。
【0086】
この構成によれば、第1及び第2の従動歯車15,16の回転に伴う第1及び第2の磁石17,18から発せられる磁界の方向の変化が第1及び第2の磁気センサ20,21により検出されるとともに、当該第1及び第2の磁気センサ20,21は前記磁界の方向の変化に応じた検出信号を出力する。そして、CPU25は、第1及び第2の磁気センサ20,21からの検出信号、及びEEPROM26に記憶されたオフセット値αofs,βofsに基づいて、ステアリングシャフト12の回転角度θを求める。このように、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの検出を、第1及び第2の磁気センサ20,21を通じて行うことにより、回転角度検出装置11の構成の簡素化が図られる。
【0087】
即ち、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを、例えば光学式のロータリエンコーダを使用して求めることも可能である。しかし、ロータリエンコーダは、ステアリングシャフト12と一体回転可能に設けられるスリット円板、並びに当該円板をその厚み方向において挟み込むように配設される発光素子及び受光素子等が必要となる。このため、このようなロータリエンコーダにより第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを求めるようにした場合には、部品点数の低減、ひいては構成の簡素化には自ずと限界がある。
【0088】
(7)EEPROM26に記憶されたオフセット値αofs,βofsを使用して第1及び第2の磁気センサ20,21を通じて検出される第1及び第2の従動歯車15,16の各回転角度α,βを補正するようにした。このため、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の実際の位置関係がどうであれ、バックラッシに起因する誤差Δ(舵角誤差)が正逆回転方向において均等に割り付けられるとともに、誤差特性の均一化が図られる。即ち、主動歯車14、第1及び第2の従動歯車15,16の実際の位置関係に関わらず、回転角度θの検出誤差を低減させることができる。従って、回転角度検出装置11を工場等で組み立てる際に、主動歯車14、並びに第1及び第2の従動歯車15,16の位置関係をステアリング操作角度=0°となるときの理論位置に合わせる必要がない。換言すれば、主動歯車14、並びに第1及び第2の従動歯車15,16を全て任意位置でステアリング操作角度=0°として組み付けることができる。このため、回転角度検出装置11の組み立て作業効率を向上させることができる。
【0089】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・図9(a)に示される処理(操作)において、(ステップS1−2)〜(ステップS1−5)の処理群と、(ステップS1−6)〜(ステップS1−9)の処理群との処理順序を入れ替えるようにしてもよい。即ち、本実施の形態では、前記正方向誤差を取得した後に、前記逆方向誤差を取得するようにしたが、前記逆方向誤差を取得した後に、前記正方向誤差を取得するようにしてもよい。このようにしても、正方向誤差と逆方向誤差との平均値である回転角度αave,βaveを求めることができる。
【0090】
・本実施の形態では、第1及び第2の磁気センサ20,21として、異方性磁気抵抗素子(AMR素子)を備えたAMRセンサを使用するようにしたが、他の磁気センサを採用するようにしてもよい。例えば、ホール素子を備えたホールセンサ、及び巨大磁気抵抗素子を備えたGMRセンサ等を使用する。ホールセンサは、第1及び第2の従動歯車15,16の回転に伴い変化する第1及び第2の磁石17,18の磁界の強度(大きさ)の変化に応じた検出信号を出力する。GMRセンサは、前記AMRセンサと同様に磁界の方向の変化に応じた検出信号を出力する。第1及び第2の従動歯車15,16の回転に伴う第1及び第2の磁石17,18の磁界の変化に応じた出力信号を生成するセンサであれば、どのようなタイプの磁気センサであれ使用可能である。
【0091】
・本実施の形態では、補正データ等の各種のデータの記憶手段として、EEPROM26を使用するようにしたが、他の種類の不揮発メモリ(ROM)を使用するようにしてもよい。例えば、フラッシュメモリ、EPROM(消去及び書き込み可能なROM)等が記憶手段として採用可能である。
【0092】
・本実施の形態では、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを、第1及び第2の磁気センサ20,21を通じて検出するようにしたが、当該回転角度α,βの検出手段として、例えば光学式のロータリエンコーダを使用するようにしてもよい。この場合、ステアリングシャフト12と一体回転可能に設けられるスリット円板、並びに当該円板をその厚み方向において挟み込むように配設される発光素子及び受光素子等を設ける。
【0093】
・本実施の形態では、第1及び第2の磁石17,18を第1及び第2の従動歯車15,16に固定するとともに、第1及び第2の磁気センサ20,21をプリント基板19に固定するようにしたが、次のようにしてもよい。即ち、第1及び第2の磁石17,18をプリント基板19に固定するとともに、第1及び第2の磁気センサ20,21をプリント基板19に固定する。
【0094】
・本実施の形態では、第1及び第2の磁石17,18を永久磁石としたが、通電することにより磁力(磁界)を発生する電磁石としてもよい。
・本実施の形態では、回転角度検出装置11をステアリングシャフト12の回転角度θを検出するために使用したが、例えばエンジンのクランクシャフト、産業用ロボットのアーム部等の他の回転体(被検出物)の回転角度を求めるために使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施の形態の回転角度検出装置の平断面図。
【図2】図1の1−1線断面図。
【図3】本実施の形態の回転角度検出装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図4】同じく類型(A)の場合の主動歯車と第1及び第2の従動歯車との噛み合い状態を示す要部拡大平面図。
【図5】同じく類型(B)の場合の主動歯車と第1及び第2の従動歯車との噛み合い状態を示す要部拡大平面図。
【図6】同じく類型(C)の場合の主動歯車と第1及び第2の従動歯車との噛み合い状態を示す要部拡大平面図。
【図7】同じく類型(D)の場合の主動歯車と第1及び第2の従動歯車との噛み合い状態を示す要部拡大平面図。
【図8】同じく類型(E)の場合の主動歯車と第1及び第2の従動歯車との噛み合い状態を示す要部拡大平面図。
【図9】同じく(a)は、回転角度検出装置の初期設定の手順を示すフローチャート、(b)は、ステアリングシャフトの回転角度の演算手順を示すフローチャート。
【図10】同じく正方向誤差を求めるために主動歯車を正方向へ回転させた後に逆方向へ回転させた場合の主動歯車と第1及び第2の従動歯車との噛み合い状態を示す要部拡大平面図。
【図11】同じく逆方向誤差を求めるために主動歯車を逆方向へ回転させた後に正方向へ回転させた場合の主動歯車と第1及び第2の従動歯車との噛み合い状態を示す要部拡大平面図。
【図12】同じく正方向誤差と逆方向誤差とが均等とされた場合の主動歯車と第1及び第2の従動歯車との噛み合い状態を示す要部拡大平面図。
【符号の説明】
【0096】
11…回転角度検出装置、12…ステアリングシャフト(被検出物)、
14…主動歯車、15…第1の従動歯車、16…第2の従動歯車、
17,18…検出手段を構成する第1及び第2の磁石、
20,21…検出手段を構成する第1及び第2の磁気センサ、
25…CPU(制御手段)、26…EEPROM(記憶手段)、
29…補正データ演算部(補正データ演算手段)、α…第1の従動歯車の回転角度、
β…第2の従動歯車の回転角度、
α0,β0…誤差の無い理論的な第1及び第2の従動歯車の回転角度、
α1,β1…回転角度(正方向誤差)、α2,β2…回転角度(逆方向誤差)、
αave,βave…正逆方向誤差の平均値(補正データ)、Δ…誤差(舵角誤差)、
θ…ステアリングシャフトの回転角度、θa,θb…角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物と一体的に回転する主動歯車に2つの従動歯車を噛合させて前記主動歯車の回転に伴う前記2つの従動歯車の回転角度をそれぞれ検出し、それら検出した回転角度に基づいて前記被検出物の回転角度を求めるようにした回転角度検出装置の初期設定方法であって、
前記主動歯車を正方向へ回転させたときの、主動歯車と2つの従動歯車との間のバックラッシに起因する2つの従動歯車の回転角度の誤差である正方向誤差を求める段階と、
前記主動歯車を逆方向へ回転させたときの、主動歯車と2つの従動歯車との間のバックラッシに起因する2つの従動歯車の回転角度の誤差である逆方向誤差を求める段階と、
前記正方向誤差と逆方向誤差との平均値を求める段階と、
前記主動歯車の回転角度が0°となる誤差を含まない理論的な2つの従動歯車の回転角度と前記平均値との差を求める段階と、
前記被検出物の回転角度を求める場合に、実際に検出される2つの従動歯車の回転角度に加算される補正データとして前記差の値を記憶する段階と、を備えた回転角度検出装置の初期設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回転角度検出装置の初期設定方法において、
前記正方向誤差を求める段階は、
前記主動歯車を正方向へ所定の角度だけ回転させる段階と、
前記所定の角度と同じ角度だけ前記主動歯車を逆方向へ回転させる段階と、
前記逆方向へ回転させたときの2つの従動歯車の回転角度を前記正方向誤差として求める段階と、を備え、
前記逆方向誤差を求める段階は、
前記主動歯車を逆方向へ所定の角度だけ回転させる段階と、
前記所定の角度と同じ角度だけ前記主動歯車を正方向へ回転させる段階と、
前記正方向へ回転させたときの2つの従動歯車の回転角度を前記逆方向誤差として求める段階と、を備えた回転角度検出装置の初期設定方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転角度検出装置の初期設定方法により初期設定がなされた回転角度検出装置であって、
前記補正データが記憶された記憶手段と、
前記2つの従動歯車の回転角度を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出される2つの従動歯車の実際の回転角度に、前記記憶手段に記憶された補正データを加算するとともに、当該加算後の回転角度に基づいて前記被検出物の回転角度を求める制御手段と、を備えた回転角度検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の回転角度検出装置において、
前記制御手段は、初期設定段階において前記補正データを演算して前記記憶手段に格納する補正データ演算手段を備えた回転角度検出装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の回転角度検出装置において、
前記検出手段は、
前記2つの従動歯車に一体回転可能に設けられた磁石と、
前記磁石に対向するように配設されるとともに、当該磁石から発せられる磁界の方向の変化又は磁界の強度の変化に応じた検出信号を出力する磁気センサと、を備えた回転角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−232617(P2007−232617A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56131(P2006−56131)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】