説明

回転運動を振動運動に変換するための振動ブリッジ及び電気装置でのその使用

本発明は電気装置で回転運動を振動運動に変換するための振動ブリッジに関する。クランク又は偏心部分(4)を有する駆動軸(3)を備えた回転駆動式駆動装置(2)と、振動ブリッジ(7)の少なくとも一つの連結部材(15)とが電気装置のケース(1)の中に保持される。振動ブリッジ(7)は少なくとも1つの振動アーム(16)を有し、これによって連結点(15)が振動体(9)に弾性結合される。振動体(9)は振動被駆動作動手段(11)を担持し、かつ駆動軸(3)のクランク又は偏心部分(4)のためのカップリング(6)を有する。カップリング(6)は別個の部品として形成され、振動体(9)に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気装置で回転運動を振動運動に変換するための、請求項1の上位概念に基づく振動ブリッジに関する。
【発明の開示】
【0002】
上記の振動ブリッジは例えばドイツ特許DE3224223C2で周知であり、とりわけ電気かみそり器で使用される。騒音及び重量の最適化の理由から小型電気器具のこの種の振動ブリッジはたいていプラスチック製であり、さらにたいてい一体に形成されている。原則として種々のプラスチックが振動ブリッジ用材料として適しており、個々のプラスチックは寿命、吸水性、それとともに製造公差、弾性及びすべり特性に関して著しく相違する性質を有する。従って周知の振動ブリッジでは材料選択はつねに、全体として望ましい材質に関する折衷案である。ところが振動ブリッジの種々の区域が受ける負担は互いに著しく相違する。例えば振動アーム及びその継手部分にとっては弾性及び可能な交番荷重で決まる寿命が最も重要であるが、カップリング、即ち回転駆動装置と振動ブリッジの接触部の区域では特に耐摩耗性と小さな製造公差が重要である。カップリングの区域の製造公差の増大は直ちに騒音レベルの増加を招く。およそこの区域の遊びはすべて振動ブリッジの方向変換のつど改めて吸収しなければならず、こうして結局は振動ブリッジに対して駆動装置の衝撃が常に伝えられるからである。
【0003】
そこで本発明の根底にあるのは、得られる寿命に関しても、騒音の最小化に関しても最適化され、従来周知の振動ブリッジに比して大幅に改善された上記の種類の振動ブリッジを提供する課題である。
【0004】
この課題は請求項1の特徴によって解決される。
【0005】
本発明に基づく解決策によれば、カップリングを最小の製造公差で製造し、特に良好なすべり特性を有するように形成し、一方、振動ブリッジのその他の区域は弾性と寿命に関して容易に最適化することができる。また二つ割構造は個々の部分の複雑性が少ないから、成形型からの離型しやすさを促進する。
【0006】
発明の好ましい実施形態は、振動ブリッジの各区域に現れる荷重にできるだけよく適合するために、カップリングが振動体と異なる材料からなるものとする。2つの個別部分、即ちカップリングと振動体のその他の部分は材料変形させて接合した後に互いに取外し不能に結合し、特に互いに溶接することが好ましい。
【0007】
確実かつ容易な組立を促進するために、カップリング及び/又は振動体がこれらの2つの部品の結合のための固定手段を有するならば好都合である。
【0008】
また発明の有利な構成は、カップリングがポリオキシメチレン(POM)からなり、又は振動体及び振動ブリッジのカップリング以外のその他の部分がポリアミド(PA)からなるものとする。POMは例えば特に良好なすべり特性が特徴であり、これはクランク状又は偏心カム状部分及び対応する振動ブリッジ側のガイドとの間に絶えず相対運動が生じるカップリングの区域で特に有利である。さらに材料POMは非常に小さな吸水性が特徴であり、それによって特に小さな製造公差とすることが可能であり、一方、小さな製造公差は前述のように騒音の減少をもたらす。カップリングの区域では材料変形が行われないから、交番荷重に関して弾性及び寿命といった性質は基本的に重要でない。これに対して上記の性質は振動アーム又はこれに隣接する結合部又は継手部分にとって極めて重要であるから、これらの部品にはポリアミド(PA)材料が特に適している。この材料は特に優れた弾性と特に高い疲れ限度を有するからである。
【0009】
振動体、少なくとも一方の振動アーム及び少なくとも一方の連結部材は一体に形成され、それによって特に簡単に、かつその他の組立段階を経ることなく製造できる利点がある。
【0010】
本発明に基づくこのような振動ブリッジは特に電気かみそり器で使用するのに適しており、その場合作動手段はせん断装置の少なくとも1つのせん断部材である。ほかならぬ小型電気装置のこの分野では、低い製造コストで寿命及び少ない騒音発生が強く要求される。
【0011】
本発明のその他の目的、特徴、利点及び応用の可能性は下記の実施例の説明で明かである。なお記述し又は図示したすべての特徴は、請求項又はその本文該当部分に記載の要旨に関係なく、単独で又は任意の組合せとして本発明の目的をなす。
【0012】
図1に示す電気かみそり器はケース1を有し、その中に駆動軸3を備えた電気モータ2が固定されている。駆動軸3に偏心カム部分4があり、回り止めされかつ軸方向にも固定されて駆動軸3と結合されている。この偏心カム部分4は駆動軸3に対して偏心したピン5を有している。ピン5は振動ブリッジ7のカップリング6に係合する。そのためにカップリング6は図平面に沿って水平に伸びるスロット8を有している。スロット8の幅はピン5の直径に相当する。
【0013】
電気モータ2の駆動軸3が回転駆動されると、直ちに振動ブリッジによって振動運動が発生される。その振動方向は図平面に対して垂直である。振動体9はその上部区域に支持ピン10を備えており、支持ピン10の上にせん断装置の下刃11が保持される。下刃11は周知のように遂次平行に配置された多数のブレード12を有し、これらのブレードはそれを覆う刃板13とともにせん断装置を構成する。支持ピン10によって振動体9の振動運動が下刃11に伝達され、刃板に対するその相対運動が刃板を貫通する毛の断裁のために利用される。下刃11は押さえばね14によって常に刃板13に押し付けられる。
【0014】
図2に本発明に基づく振動ブリッジ7の縦断面図を示す。振動ブリッジ7は振動体9及びこれと結合されたカップリング6及び振動アーム9により振動体9と結合された連結部材15で構成される。振動体9の左右の横に配置された連結部材15は振動ブリッジ7を装置のケース1に固定するためのものである。そのために連結部材15は固定ピン17を備えている。振動アーム16は垂直に伸びる可撓条片として形成され、条片は一方ではたわみ継手18により連結部材15と、他方ではたわみ継手19により振動体9のそれぞれ下側部分と結合される。この懸垂構造により振動体9と連結部材15の間で、両矢印で示唆した振動方向Aに沿って相対変位が可能になる。振動体9は縦断面がほぼC形の形状を有し、連結部材15、固定ピン17、振動アーム16及びたわみ継手18、19とともに一体の部品として形成されている。
【0015】
カップリング6は箱形部品として形成され、4つの保持ピン20により振動体9と結合されている。振動体9と一体に形成された保持ピン20はカップリング6の固定のために、カップリングを貫いて突出する端部がかしめてある。そのために特に加熱かしめが適当である。それによってリベット状の結合が生じる。
【0016】
図3の振動ブリッジの斜視図は、カップリング6に設けられ、振動方向Aに対して垂直に延びるスロット8を改めて明瞭に示している。スロット8の側壁21の間隔は偏心カム部分4のピン5の直径に正確に整合するから、振動方向Aに関してスロット8の中のピン5の遊びのない支承が実現される。こうして騒音発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に基づく振動ブリッジを備えた電気かみそり器の断面図を示す。
【図2】本発明に基づく振動ブリッジの縦断面図を示す。
【図3】本発明に基づく振動ブリッジの斜視図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気装置で回転運動を振動運動に変換するための振動ブリッジにおいて、
クランク又は偏心部分を有する駆動軸(3)を備えた回転駆動式駆動装置(2)と、振動ブリッジ(7)の少なくとも一つの連結部材(15)とがケース(1)の中に保持され、振動ブリッジ(7)が少なくとも1つの振動アーム(16)を有し、振動アーム(16)によって連結点(15)が振動体(9)に弾性結合され、振動体(9)が振動被駆動作動手段(11)を担持し、かつ駆動軸(3)のクランク又は偏心部分(4)のためのカップリング(6)を有し、
カップリング(6)が、別個の部品として形成され、振動体(9)に結合されていることを特徴とする振動ブリッジ。
【請求項2】
カップリング(6)が振動体(9)とは異なる材料からなることを特徴とする請求項1に記載の振動ブリッジ。
【請求項3】
カップリング(6)が振動体(9)に溶接される、または鋲止めされていることを特徴とする請求項1または2に記載の振動ブリッジ。
【請求項4】
カップリング(6)及び/又は振動体(9)がこれらの2つの部材の結合のための固定手段(20)を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の振動ブリッジ。
【請求項5】
カップリング(6)がポリオキシメチレン(POM)からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の振動ブリッジ。
【請求項6】
振動体(9)がポリアミド(PA)からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の振動ブリッジ。
【請求項7】
振動体(9)、少なくとも一つの振動アーム(16)及び少なくとも一つの連結部材(15)が一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の振動ブリッジ。
【請求項8】
作動手段がせん断装置(11、13)の少なくとも1つのせん断部材(11)である電気かみそり器での使用を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の振動ブリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−538104(P2009−538104A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510302(P2009−510302)
【出願日】平成19年4月7日(2007.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003151
【国際公開番号】WO2007/131579
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(591027846)ブラウン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Braun GmbH
【Fターム(参考)】