説明

回転電機および自動車

【課題】
回転電機のロータの温度を精度良く検出する。
【解決手段】
ステータ4と、ステータ4に所定のギャップをもって回転可能に支持されたロータ2と、ロータ2に設けられた温度センサ付RFIDタグ1と、を有する回転電機。この温度センサ付RFIDタグ1から送信された温度センシングデータは、RFIDタグ読書き端末5によって受信され、車両コントローラ6に入力される。車両コントローラ6は、当該温度情報によって、異常時の上位システムへのアラームや、運用の制限を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機および自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機、例えば永久磁石式回転電機では、ロータの永久磁石が温度により減磁する可能性があるため、ロータの温度を計測することが重要である。
【0003】
回転電機の温度を計測する方法として、サーミスタなどの温度センサによるステータ温度検出値から永久磁石の現在温度を推定することが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−212915号公報(段落0011)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータは回転体であるため、配線の制約などから有線の温度センサを取り付けることは困難である。一方、上記技術はステータの温度から永久磁石の温度を推定するものであり、運転状況によっては誤差が大きく、実用的ではないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、回転電機のロータの温度を精度良く検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ステータと、ステータに所定のギャップをもって回転可能に支持されたロータと、ロータに設けられ、温度センサを有するRFID(Radio Frequency Identification)タグと、を有する回転電機である。
【0008】
また本発明は、ステータと、ステータに所定のギャップをもって回転可能に支持されたロータと、ロータに設けられ、温度センサを有するRFIDタグと、を有する回転電機と、RFIDタグからの情報を受信する端末と、端末から温度センサのセンシング情報を入力し、当該センシング情報に基づいて車両を制御する制御装置と、を有する自動車である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転電機のロータの温度を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。本実施形態は、電気自動車,ハイブリッド自動車,燃料電池自動車に用いられる各種のモータに適用可能である。
【0011】
回転電機のロータは、許容温度に対して十分に設計余裕をもつ設計とする必要があり、また、ロータ温度の上限温度を把握しておくことが重要である。しかし、モータの使用環境、または使われ方は様々で、運用時のロータ温度を予測することは難しい。実際は、設計余裕をとりすぎて、必要以上にモータの使用制限をしてしまう場合がある。また、逆に、モータの取付け場所、使われ方は様々であるため、ロータ温度が磁石の許容温度を超えてしまい、磁石が減磁する場合がある。
【0012】
そこで、以下の実施形態では、回転機のロータに、容易に取付け可能な温度センサ付RFIDタグを装着することで、ロータ温度を適時に監視して、ロータ温度の上限まで使用可能な回転機を提供する。この構成の温度センサ付RFIDタグを用いると、配線なしで、ロータの温度を確認することができる。温度センサ無しのRFIDタグでは、データの読書きであれば、データ読書き端末からの電波による小さな電力で対応可能であるが、温度センサを使用することになると小さな電力では対応できずに、大きな電力または電池が必要となる。ここでは、ロータの磁束の変化による誘導電力を用いて、発電、または電池の充電を行い、温度センサの処理にその電力を使用する。
【0013】
以下、本発明に係わる回転機の実施形態を、ハイブリッド自動車の駆動用モータを例として、図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、温度センサ付RFIDタグ1をロータ2に装着した回転機を示す。この図は、ロータ2のエンドプレート3に温度センサ付RFIDタグ1をつけた例である。ロータ2は、ステータ4に対して所定のギャップ(空隙)をもって回転可能に支持されている。ハイブリッド自動車の駆動用モータにはステータコイル4に温度センサがついているが、回転体のロータ2には配線等の問題もあり、温度センサをつけないことが一般的である。温度センサ付RFIDタグ1を用いた本システムでは、RFIDタグ読書き端末5により、無線にてロータに装着した温度センサ付RFIDタグ1のデータを読み取り、その温度データ結果を制御装置としての車両コントローラ6に取り込んで、通常運用時の温度情報の取得、異常時の上位システムへのアラームまたは運用を制限するものである。
【0015】
図2は、温度センサ付RFIDタグを示す。このタグは、モータ回転時にロータの磁束の変化により発生する誘導電力を利用して発電する発電回路15、及びセンサに適する電圧に調整する電源回路14、及びその電力を用いて温度をセンシングする温度センサ13を有する。処理された温度情報は、RFIDタグのICチップ11に格納され、適時にアンテナ12を用いて、RFIDタグ読書き端末5に向けて発信される。
【0016】
図3は、温度センサ付RFIDタグに、電池17を搭載したときの例を示す。このタグは、モータ回転時にロータの磁束の変化により発生する誘導電力を利用して発電する発電回路15、及び電池17の充電に適する電圧に調整する充電回路16、及びその電池17の電力を用いて温度をセンシングする温度センサ13を有する。処理された温度情報は、RFIDタグのICチップ11に格納され、適時にアンテナ12を用いて、RFIDタグ読書き端末5に向けて発信される。
【0017】
図4は、温度センサ付RFIDタグ1を磁石7と一体型にした例を示す。温度センサ付RFIDタグ1は、ロータ2の発熱部、または、熱的にクリティカルな部位に取り付けられることが望ましい。永久磁石同期モータでは、ロータ2に磁石7が組み込まれている。モータ運用時には、磁石7は、磁石本体が発熱して、また磁石の許容温度の制限があることから、熱的にクリティカルな部位である。本例は、磁石7本体に磁石を取り付けた例である。タグ小型化に伴い、磁石7の製造時に、温度センサ付RFIDタグ1を組み込んで、温度センサ付RFIDタグ一体型磁石としても良い。
【0018】
図5は、温度センサ付RFIDタグをロータ鋼板8と一体型にした例を示す。温度センサ付RFIDタグをロータ2に組み込んだものである。ロータ鋼板8は、発熱部位であると共に、ロータ2全体の温度を代表する部位であるため、温度センサ付RFIDタグ1をロータ鋼板8に取り付けることは有効である。タグ小型化に伴い、ロータコア製作時に温度センサ付RFIDタグ1を組み込んで、温度センサ付RFIDタグ一体型ロータコアとして取り扱うと良い。
【0019】
温度センサも含めて、センサ全般については、現状の有線から無線化されることが予想される。また、無線でのデータ送受信の手段として、RFIDタグは普及することが予想される。温度センサ付RFIDタグを用いると無線にて多数のタグから温度データをとることができ、将来、自動車の温度センサ処理の一元管理を行うことも可能と考えられる。本実施形態では、無線でメリットがある回転体のロータに温度センサ付RFIDタグをつけるということから、今後、利用の可能性はあるものと考えられる。
【0020】
上記の実施形態によれば、回転電機のロータの温度を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態をなす、温度センサ付RFIDタグをロータに装着した回転機の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態をなす温度センサ付RFIDタグで、発電回路,電源回路を搭載した例である。
【図3】本発明の一実施形態をなす温度センサ付RFIDタグで、発電回路,充電回路,電池を搭載した例である。
【図4】本発明の一実施形態をなす温度センサ付RFIDタグを磁石と一体型にした例である。
【図5】本発明の一実施形態をなす温度センサ付RFIDタグをロータ鋼板と一体型にした例である。
【符号の説明】
【0022】
1 温度センサ付RFIDタグ
2 ロータ
3 エンドプレート
4 ステータコイル
5 RFIDタグ読書き端末
6 車両コントローラ
7 磁石
8 ロータ鋼板
11 ICチップ
12 アンテナ
13 温度センサ
14 電源回路
15 発電回路
16 充電回路
17 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに所定のギャップをもって回転可能に支持されたロータと、
前記ロータに設けられ、温度センサを有するRFIDタグと、
を有する回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記RFIDタグは、前記ロータの回転時に、前記ロータの磁束の変化により発生する誘導電力を利用した発電回路を有し、
前記温度センサは、前記発電回路の発電電力を用いて温度をセンシングする回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記RFIDタグは、前記ロータの回転時に、前記ロータの磁束の変化により発生する誘導電力を利用した発電回路と、前記発電回路の発電電力を用いて情報を発信するアンテナと、を有する回転電機。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記RFIDタグは、前記ロータの回転時に、前記ロータの磁束の変化により発生する誘導電力を利用した発電回路と、前記発電回路の発電電力を充電する電池と、当該電池を充電する充電回路と、を有する回転電機。
【請求項5】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記RFIDタグは、前記ロータに固定された磁石に取り付けられている回転電機。
【請求項6】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記RFIDタグは、前記ロータの鋼板に取り付けられている回転電機。
【請求項7】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記RFIDタグは、前記ロータのエンドプレートに取り付けられている回転電機。
【請求項8】
ステータと、前記ステータに所定のギャップをもって回転可能に支持されたロータと、前記ロータに設けられ、温度センサを有するRFIDタグと、を有する回転電機と、
前記RFIDタグからの情報を受信する端末と、
前記端末から前記温度センサのセンシング情報を入力し、当該センシング情報に基づいて車両を制御する制御装置と、
を有する自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−247084(P2009−247084A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89161(P2008−89161)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】