説明

回転電機

【課題】固定子コイル端部全体の冷却性能を向上させ、電機全体の出力を高めることが可能な回転電機を提供する。
【解決手段】ケーシング1内に回転子2と固定子3とが配置され、この回転子2の端部に軸流ファン5が設けられる一方、固定子3はケーシング1の一部を構成する固定子枠8に取り付けられ、この固定子枠8には軸流ファン5に向けて通風経路形成用のエンドベル9が延設され、かつ固定子枠8と固定子3の軸流ファン側の端部との間には、軸流ファン5からの通風を固定子3の外周側に分流させるバイパス通風孔14が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に係り、特には固定子コイル端部の温度分布を均一化して電機全体の出力を高めた通風冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転電機には、図4に示す構成のものがある。この回転電機は、ケーシング1内に回転子2とこの回転子2の外側の固定子3とがギャップを介して同心状に配置されている。そして、回転子2は、その両端が図示しないベアリング等を介してケーシング1に回転自在に支承され、この回転子2の端部には軸流ファン5が設けられている。
【0003】
一方、固定子3は、ケーシング1の一部を構成する固定子枠8に取り付けられ、この固定子枠8には軸流ファン5に向けてエンドベル9が延設されて通風経路10が形成されている。なお、3aは固定子3の固定子鉄心から軸方向外方に突出した固定子コイルの線輪端である。
【0004】
この構成の回転電機において、回転子2の回転に伴い、この回転子2に設けられた軸流ファン5も回転するので、図示しない冷却器からの冷風は、図4中に破線で示すように、ケーシング1とエンドベル9との間の通風経路10を経由して冷風吹出口10aから軸流ファン5に向けて吹き出された後、軸流ファン5によって軸方向に向けて押し出される。そして、この冷風は回転子2と固定子3に流入して両者が通風冷却される。
【0005】
なお、従来、回転電機の通風冷却機構として、回転軸の軸方向に開口した吸気口と軸方向と直交する径方向に開口した排気口とを有するL字状に屈曲された通風路を有する遠心ファンを回転軸に同軸状に固定し、吸気口から軸方向に沿って吸い込まれた外気を、排気口から軸方向と直交する径方向に吹き出し、この外気を電機内部と固定子枠の外側とに分流し、固定子枠の外側に分流した外気を固定子の駆動側に導いて電機を通風冷却する構造のものが既に提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−79542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図4に示した従来構成の回転電機では、図示しない冷却器からの冷風は、ケーシング1とエンドベル9との間の通風経路10を経由して冷風吹出口10aから軸流ファン5に向けて吹き出されるが、通風経路10は、軸流ファン5に対して斜め上から斜め下に向けて傾斜している。しかも、固定子3の軸流ファン5側の端部と固定子枠8との間は、固定子枠8の内周から径方向内方に突出された円環板状の内枠板15によって全周が封鎖されている。
【0008】
このため、通風経路10から軸流ファン5に対して斜め上方から吹き出された冷風は、軸流ファン5から斜め下方に向けて押し出される。その結果、図5に示すように、冷風は固定子枠8内の径方向の下半部に多く流入するため下半部の風量は多くなるが、上半部の風量が少ないという風量のアンバランスを生じる。
【0009】
このような風量のアンバランスが生じると、特に軸方向外方に突出した固定子コイルの線輪端3aの内、上半部の風量が少ない箇所に突出している線輪端の部分は下部に比べて冷却状態が悪くなるので、その線輪端の部分が温度上昇し易く、結果的に固定子コイルへの通電電流がその箇所で制限されて、回転電機の全体の出力を高めるのが難しいという課題がある。
【0010】
また、上記の特許文献1記載の従来技術のものは、電機全体を均一冷却するための工夫が施されているものの、固定子コイルの線輪端へ冷却気を積極的に通気して冷却する構造のものではなく、固定子コイルの線輪端温度が上昇してしまい、依然として回転電機の全体の出力を高めるのが難しいという問題がある。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、軸流ファンから押し出される冷風の固定子枠内の周方向の風量分布をできるだけ均等化できるようにして、固定子コイル端部の冷却性能を向上させ、電機全体の出力を高めることが可能な回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、ケーシング内には、回転子とこの回転子の外側の固定子とが同心状に配置され、上記回転子は上記ケーシングに両端が回転自在に支承され、この回転子の端部には軸流ファンが設けられる一方、上記固定子は上記ケーシングの一部を構成する固定子枠に取り付けられ、この固定子枠には上記軸流ファンに向けて通風経路形成用のエンドベルが延設されている回転電機において、次の構成を採用している。
【0013】
すなわち、本発明では、上記固定子枠と上記固定子の上記軸流ファン側の外周端部との間には、上記軸流ファンからの冷風を上記固定子の外周側に分流させるバイパス通風孔が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軸流ファンに対して斜め上方から吹き出された冷風は、軸流ファンから斜め下方に向けて押し出されるが、固定子枠と固定子の軸流ファン側の端部との間にはバイパス通風孔が形成されているので、反駆動側の固定子枠内に流入した冷風は径方向の下半部に流入するだけでなく、その一部は分流してバイパス通風孔を通過して固定子枠と固定子との間の隙間にも流入する。これにより、軸流ファンから押し出される冷風の固定子枠内の周方向の風量分布が均等化され、固定子コイル端部の冷却性能が向上し、結果として電機全体の出力を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における回転電機の要部構成を示す断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1の回転電機における風量分布を示す説明図である。
【図4】従来の回転電機の要部構成を示す断面図である。
【図5】従来の回転電機における風量分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1における回転電機の要部構成を示す断面図、図2は図1のA−A線に沿う断面図であり、図4に示した従来のものと対応もしくは相当する構成部分には同一の符号を付す。
【0017】
この実施の形態1の回転電機は、ケーシング1内に、回転子2とこの回転子2の外側の固定子3とがギャップを介して同心状に配置されている。そして、回転子2はその両端が図示しないベアリング等を介してケーシング1に回転自在に支承され、この回転子2の端部には軸流ファン5が設けられている。
【0018】
一方、固定子3は、ケーシング1の一部を構成する固定子枠8に取り付けられ、この固定子枠8には軸流ファン5に向けてエンドベル9が延設されて通風経路10が形成されている。なお、3aは固定子3の固定子鉄心から軸方向外方に突出した固定子コイルの線輪端である。
【0019】
そして、この実施の形態1の特徴として、固定子枠8と固定子3の軸流ファン5側の外周端部との間には、軸流ファン5からの冷風を固定子3の鉛直上方向に分流させるバイパス通風孔14が形成されている。
【0020】
すなわち、固定子枠8の内周の固定子3の軸流ファン5側の外周端部に近接した位置に、径方向内方に円環板状の内枠板15が突設されており、この内枠板15の内周と固定子3との間に隙間が形成され、この隙間がバイパス通風孔14として構成されている。
【0021】
実施の形態2.
上記のバイパス通風孔14に対しては、その通風面積を調整する風量調整機構16が設けられている。すなわち、この風量調整機構16は、バイパス通風孔14の周方向の左右の下部をそれぞれ覆う略円弧状の塞ぎ板17を備え、これらの各塞ぎ板17の複数箇所には径方向に沿うスライディング機構17aが形成されており、これらのスライディング機構17aに挿通されたボルト18によって各塞ぎ板17が内枠板15に固定されて構成されている。
【0022】
上記構成の回転電機において、図示しない冷却器からの冷風は、ケーシング1とエンドベル9との間の通風経路10を経由して冷風吹出口10aから軸流ファン5に向けて吹き出されるが、通風経路10は、軸流ファン5に対して斜め上から斜め下に向けて傾斜している。このため、図1中に破線で示すように、通風経路10から軸流ファン5に対して斜め上方から吹き出された冷風は、軸流ファン5によって反駆動側の固定子枠8内に斜め下方に向けて押し出される。
【0023】
しかし、固定子枠8と固定子3の軸流ファン側の端部との間にはバイパス通風孔14が形成されているので、固定子枠8内に流入した冷風は径方向の下半部に流入するだけでなく、その一部は分流してバイパス通風孔14を通過して固定子枠8と固定子3との間の隙間にも流入する。その結果、図3に示すように、反駆動側の固定子枠8内に流入した冷風の上半部と下半部の風量の差が小さくなる。つまり、固定子枠8内の周方向の風量が均一化される。
【0024】
これにより、固定子3の軸方向外方に突出した固定子コイルの線輪端3aの冷却効率が向上するので、結果的に固定子コイルへの通電電流を大きくすることができ、回転電機の全体の出力を高めることが可能となる。
【0025】
また、風量調整機構16を構成する塞ぎ板17をスライディング機構17aに沿って出し入れすることで、バイパス通風孔14の通風面積を適宜に調整することができるため、回転電機の構造やサイズ等に応じて固定子枠8内の冷風の周方向の風量分布の均一化を一層容易に実施することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ケーシング、2 回転子、3 固定子、3a 線輪端、5 軸流ファン、
8 固定子枠、9 エンドベル、10 通風経路、10a 冷風吹出口、
14 バイパス通風孔、15 内枠板、16 風量調整機構、17 塞ぎ板、
17a スライディング機構、18 ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内には、回転子とこの回転子の外側の固定子とが同心状に配置され、上記回転子は上記ケーシングに両端が回転自在に支承され、この回転子の一端部には軸流ファンが設けられる一方、上記固定子は上記ケーシングの一部を構成する固定子枠に取り付けられ、この固定子枠には上記軸流ファンに向けて通風経路形成用のエンドベルが延設されている回転電機において、
上記固定子枠と上記固定子の上記軸流ファン側の外周端部との間には、上記軸流ファンからの冷風を上記固定子の外周側に分流させるバイパス通風孔が形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
上記バイパス通風孔には、その通風面積を調整する風量調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の回転電機。
【請求項3】
上記バイパス通風孔は、上記固定子と上記固定子枠の内周から径方向内方に突出形成された内枠板との間に形成される略円弧状の隙間からなり、上記風量調整機構は、上記バイパス通風孔の周方向の左右の下部をそれぞれ覆う略円弧状の塞ぎ板を有し、これらの各塞ぎ板が当該塞ぎ板の径方向に沿って形成されたスライディング機構に挿通されたボルトによって上記内枠板に固定されてなることを特徴とする請求項2記載の回転電機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−250566(P2011−250566A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120549(P2010−120549)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】