説明

回転電機

【課題】回転電機におけるシャフトの軸方向への体格を小型化すること。
【解決手段】第1界磁コア42及び第2界磁コア52の外周部42a,52a側の厚みL1,L3が内周部42b,52b側の厚みL2,L4よりも薄くなるように、各界磁コア42,52における各界磁コイル43,44,53,54が配設される側の端面42e,52eを段付き形状にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、永久磁石をロータに配設した永久磁石同期モータは、電気自動車やハイブリッド自動車などの様々な分野で駆動源として利用されている。このような永久磁石同期モータにおいて、強め界磁制御を行うことによって大きなトルクを得る一方で、弱め界磁制御を行うことによってステータとロータとの間に生じる磁束量を低減して、最大回転数を向上させることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の回転電動機は、ロータと、界磁ヨーク(界磁極)と、界磁コイルとを備えている。そして、界磁コイルに電流を供給することで、ロータ、ステータ及び界磁ヨークにより環状の磁路が形成される。そして、界磁コイルに供給される電流量を調整して、ロータを通過する磁束量を調整することで、強め界磁制御及び弱め界磁制御を可能とし、大きなトルクを得られるとともに最大回転数を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−43099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような回転電動機では、回転電動機におけるシャフトの軸方向への体格を小型化することが望まれている。
本発明の目的は、回転電機におけるシャフトの軸方向への体格を小型化することができる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シャフトに回転可能に支持されるとともに磁気的な凸極部を有するロータと、前記ロータの凸極部の径方向外側に配置されたステータと、円環状をなすとともに内側に前記シャフトが挿通され、界磁磁束を生じさせるための界磁コアと、前記シャフトの軸方向において、前記界磁コアと前記ロータ及び前記ステータとの間に配設される界磁コイルと、前記界磁コイルの通電に伴い前記界磁コアと少なくとも前記ロータと前記ステータと共に界磁磁路を形成する磁路形成部材と、を備えた回転電機であって、前記界磁コアの外周部側の厚みが前記界磁コアの内周部側の厚みよりも薄くなるように、前記界磁コアにおける前記界磁コイルが配設される側の端面を段付き形状にしたことを要旨とする。
【0007】
この発明によれば、界磁コアにおける界磁コイルが配設される側の端面に段が無い場合に比べると、界磁コアとロータ及びステータとの間において、界磁コイルの配置スペースを増加させることができる。よって、この増加した配置スペースに界磁コイルを配置することができる分、界磁コアとロータ及びステータとを近づけることができ、回転電機全体として、シャフトの軸方向への体格を小型化することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記界磁コアの内周面と前記シャフトの外周面との間のギャップを通して前記界磁磁路が形成され、前記界磁コアにおける厚みの境目の部位の周方向の断面積が、前記界磁コアの内周面の面積以上になっていることを要旨とする。
【0009】
この発明によれば、例えば、界磁コアにおける厚みの境目の部位の周方向の断面積が、界磁コアの内周面の面積よりも小さくなっている場合に比べて、磁束が流れ易くなるため、界磁コアが磁気飽和してしまうことを抑制することができ、回転電機のトルクが低下してしまうことを抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記界磁コアにおける厚みの境目の部位の周方向の断面積が、前記界磁コアの内周面の面積と同じになっていることを要旨とする。
【0011】
この発明によれば、界磁コアが磁気飽和してしまうことを抑制しつつも、界磁コアにおける界磁コイルと対向する側の端面に、界磁コイルの配置スペースを可能な限り形成することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記界磁コアは、径方向の長さが異なる円環状の界磁コア形成体を前記シャフトの軸方向に少なくとも二つ以上重ねることで形成されていることを要旨とする。
【0013】
この発明によれば、径方向の長さが異なる界磁コア形成体をシャフトの軸方向に沿って少なくとも二つ以上重ねるだけで、界磁コイルが配設される側の端面が段付き形状となる界磁コアを形成することができるため、製作を容易なものとすることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記界磁コア形成体は、複数枚の電磁鋼板を前記シャフトの軸方向に積層して形成されていることを要旨とする。
この発明によれば、例えば、界磁コア形成体が粉末成形磁性体からなる場合に比べて、磁気特性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、回転電機におけるシャフトの軸方向への体格を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態におけるモータの側断面図。
【図2】コアバック、ステータコア、ロータコア及びシャフトの縦断面図。
【図3】モータの部分側断面図。
【図4】第2の実施形態におけるモータの部分側断面図。
【図5】別の実施形態におけるモータの部分側断面図。
【図6】別の実施形態におけるモータの部分側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明を回転電機としてのモータ(回転電動機)に具体化した第1の実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
【0018】
図1に示すように、モータ10のハウジング11は、円筒状のコアバック12と、コアバック12の一端(図1の左端)に連結された有底円筒状の第1ハウジング13と、コアバック12の他端(図1の右端)に連結された有底円筒状の第2ハウジング14とからなる。第1ハウジング13及び第2ハウジング14は非磁性材料からなる。コアバック12は磁性材料からなるとともに、本実施形態では粉末成形磁性体(SMC:Soft Magnetic Composites)から形成されている。第1ハウジング13の底壁には貫通孔13aが形成されている。
【0019】
コアバック12内にはシャフト15が収容されている。シャフト15は、軟磁性材料(例えば鉄や粉末成形磁性体等)から形成されるとともに略円柱状をなしている。シャフト15は、第1ハウジング13及び第2ハウジング14にベアリング16,17を介して回転可能に支持されている。シャフト15の一端(図1の左端)は貫通孔13aを介してハウジング11外へ突出している。
【0020】
コアバック12の内周面にはステータ20(固定子)が固定されている。ステータ20は、コアバック12の内周面に固定された円環状のステータコア21と、ステータコイル22とから構成されている。コアバック12は、ステータコア21の外周面を全周に亘って覆うとともに、ステータコア21の外周面とコアバック12の内周面とは密着されている。このため、ステータコア21とコアバック12とは磁気的に接続されている。ステータコア21は、複数枚の電磁鋼板をシャフト15の軸線Lに沿った方向(シャフト15の軸方向)に積層して構成されている。
【0021】
図2に示すように、ステータコア21には、シャフト15に向けて突出する複数のステータティース21aがステータコア21の周方向に等間隔おきで設けられている。各ステータティース21aの先端面はいずれも同一周面上に位置している。図1に示すように、各ステータティース21aには、絶縁性樹脂材料よりなるステータコイル用ボビン22bが装着されている。そして、ステータコイル22は、導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる導線がステータコイル用ボビン22bに巻回されて形成されている。なお、ステータコイル22は、U相、V相及びW相のいずれかとされており、それぞれ位相の異なる電流が供給されることにより、回転磁界を発生させるようになっている。
【0022】
ステータ20の内側にはロータ30(回転子)が設けられている。ロータ30は、シャフト15に止着されたロータコア31を有している。ロータコア31は、シャフト15の軸線L周りでシャフト15と一体的に回転可能になっている。シャフト15の外周面15aとロータコア31の内周面とは密着されている。このため、シャフト15とロータコア31とは磁気的に接続されている。ロータコア31は、軟磁性材料からなる複数枚の電磁鋼板をシャフト15の軸方向に積層して構成されている。よって、ロータコア31内において、磁束がシャフト15の軸方向よりも軸線Lに直交するロータコア31の径方向及び周方向へ流れ易くなっている。
【0023】
また、ロータコア31におけるシャフト15の軸方向の長さは、ステータコア21におけるシャフト15の軸方向の長さと同じになっている。ステータコイル22は、シャフト15の軸方向においてステータティース21aの端面からコイルエンド22eが突出している。よって、シャフト15の軸方向におけるステータコイル22のコイルエンド22eの両端は、ロータコア31の両端よりも外側に突出している。また、ハウジング11内において、一端側(第1ハウジング13側)のコイルエンド22eよりも第1ハウジング13側には、各相のステータコイル22の渡り線(図示せず)が通過する渡り線領域W(図1において二点鎖線で示す)が設けられている。
【0024】
図2に示すように、ロータコア31は、径方向外側へ向けて突出する凸極部としての複数のロータティース31aが、ロータコア31の周方向に等間隔おきで設けられている。各ロータティース31aの先端面はいずれも同一周面上に位置している。各ロータティース31aの先端面とステータティース21aの先端面との間には僅かな隙間が形成されている。そして、ロータティース31aとステータティース21aとはこの隙間を介して磁気的に接続されている。
【0025】
図1に示すように、コアバック12内におけるステータ20及びロータ30よりも一端側には、界磁磁束を発生させるための第1界磁極41が配設されている。第1界磁極41は、円環状の界磁コアとしての第1界磁コア42と、第1界磁コア42とステータ20及びロータ30との間に配設される界磁コイルとしての第1界磁コイル43及び第2界磁コイル44とから構成されている。第1界磁コア42は磁性材料からなるとともに、本実施形態では粉末成形磁性体(SMC:Soft Magnetic Composites)から形成されている。第1界磁コア42の内側にはシャフト15が挿通されており、第1界磁コア42の内周面42gとシャフト15の外周面15aとの間には僅かな隙間が形成されている。そして、第1界磁コア42とシャフト15とはこの隙間を介して磁気的に接続されている。
【0026】
図3に示すように、第1界磁コア42は、その外周部42a側の厚みL1が内周部42b側の厚みL2よりも薄くなるように、第1界磁コア42における第1界磁コイル43及び第2界磁コイル44が配設される側の端面42eが段付き形状になっている。具体的には、第1界磁コア42の端面42eにおいて、外周部42aと内周部42bとの間には、外周部42aの端面421aと内周部42bの端面421bとを繋ぐ段差部42dが周方向全周に亘って形成されている。段差部42dは、シャフト15の軸方向に沿って延びるように形成されている。なお、本実施形態の第1界磁コア42は型成形されてなる。
【0027】
第1界磁コア42における外周部42aと内周部42bとの境目K1(第1界磁コア42における厚みの境目)の部位の周方向の断面積は、第1界磁コア42の内周面42gの面積と同じになっている。すなわち、円周率を「π」、シャフト15の軸線Lから境目K1までの径方向に沿った長さを「R1」、シャフト15の軸線Lから第1界磁コア42の内周面42gまでの径方向に沿った長さを「R2」とすると、「L1×2πR1=L2×2πR2」の関係を満たすように、厚みL1,L2、長さR1,R2が設定されている。
【0028】
第1界磁コア42は、その外周部42aがコアバック12の一端開口部に凹設された圧入凹部12aに圧入されることで、コアバック12に固定されている。第1界磁コア42がコアバック12に固定された状態において、第1界磁コア42の外周部42aはコアバック12に対して密着されている。このため、第1界磁コア42とコアバック12とは磁気的に接続されている。
【0029】
図1に示すように、コアバック12内におけるステータ20及びロータ30よりも他端側には、界磁磁束を発生させるための第2界磁極51が配設されている。第2界磁極51は、円環状の界磁コアとしての第2界磁コア52と、第2界磁コア52とステータ20及びロータ30との間に配設される界磁コイルとしての第3界磁コイル53及び第4界磁コイル54とから構成されている。第2界磁コア52は磁性材料からなるとともに、本実施形態では粉末成形磁性体(SMC:Soft Magnetic Composites)から形成されている。第2界磁コア52の内側にはシャフト15が挿通されており、第2界磁コア52の内周面52gとシャフト15の外周面15aとの間には僅かな隙間が形成されている。そして、第2界磁コア52とシャフト15とはこの隙間を介して磁気的に接続されている。
【0030】
図3に示すように、第2界磁コア52は、その外周部52a側の厚みL3が内周部52b側の厚みL4よりも薄くなるように、第2界磁コア52における第3界磁コイル53及び第4界磁コイル54が配設される側の端面52eが段付き形状になっている。具体的には、第2界磁コア52の端面52eにおいて、外周部52aと内周部52bとの間には、外周部52aの端面521aと内周部52bの端面521bとを繋ぐ段差部52dが周方向全周に亘って形成されている。段差部52dは、シャフト15の軸方向に沿って延びるように形成されている。なお、本実施形態の第2界磁コア52は型成形されてなる。
【0031】
第2界磁コア52における外周部52aと内周部52bとの境目K2(第2界磁コア52における厚みの境目)の部位の周方向の断面積は、第2界磁コア52の内周面52gの面積と同じになっている。すなわち、円周率を「π」、シャフト15の軸線Lから境目K2までの径方向に沿った長さを「R3」、シャフト15の軸線Lから第2界磁コア52の内周面52gまでの径方向に沿った長さを「R4」とすると、「L3×2πR3=L4×2πR4」の関係を満たすように、厚みL3,L4、長さR3,R4が設定されている。
【0032】
第2界磁コア52は、その外周部52aがコアバック12の他端開口部に凹設された圧入凹部12bに圧入されることで、コアバック12に固定されている。第2界磁コア52がコアバック12に固定された状態において、第2界磁コア52の外周部52aはコアバック12に対して密着されている。このため、第2界磁コア52とコアバック12とは磁気的に接続されている。
【0033】
コアバック12内において、第1界磁コア42の内周部42bの端面421bからステータコア21の一端部までの距離H1は、第2界磁コア52の内周部52bの端面521bからステータコア21の他端部までの距離H2に比べて、渡り線領域Wが存在する分だけ長くなっている。
【0034】
第1界磁コア42の端面42eには第1界磁コイル用ボビン46が固着されている。第1界磁コイル用ボビン46は、第1界磁コア42の内周部42bの端面421bからロータコア31の一端面の手前までシャフト15の軸方向に沿って延びる円筒状の第1胴部46aを有している。また、第1界磁コイル用ボビン46は、第1胴部46aの一端開口部から径方向外側に向けて延びる円環状の一端側鍔部46bと、第1胴部46aの他端開口部から径方向外側に向けてステータコイル用ボビン22bにおけるシャフト15側の面の手前まで延びる円環状の他端側鍔部46cとを有している。さらに、第1界磁コイル用ボビン46は、一端側鍔部46bと他端側鍔部46cとの間に位置し、且つ第1胴部46aの外周面から径方向外側に向けて延びる円環状の仕切鍔部46dを有している。
【0035】
一端側鍔部46bは、第1界磁コア42の内周部42bの端面421bに沿って延びるとともに、段差部42dの外周面に沿って屈曲し、さらに、第1界磁コア42の外周部42aの端面421aに沿って延びるように形成されている。そして、第1胴部46aの一部、一端側鍔部46b及び仕切鍔部46dにより第1巻装部46Aが形成されている。また、第1胴部46aの一部、他端側鍔部46c及び仕切鍔部46dにより第2巻装部46Bが形成されている。
【0036】
第1界磁コイル43は、第1巻装部46Aに導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる導線がシャフト15の軸線L周りに複数回巻回されることで巻装されている。第1界磁コイル43は、第1巻装部46Aに巻装された状態において、その一部が、第1界磁コア42の内周部42bの端面421bよりも外周部42aの端面421a側に配置されている。第2界磁コイル44は、第2巻装部46Bに導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる導線がシャフト15の軸線L周りに複数回巻回されることで巻装されている。
【0037】
第2界磁コア52の端面52eには第2界磁コイル用ボビン56が固着されている。第2界磁コイル用ボビン56は、第2界磁コア52の内周部52bの端面521bからロータコア31の他端面の手前までシャフト15の軸方向に沿って延びる円筒状の第2胴部56aを有している。また、第2界磁コイル用ボビン56は、第2胴部56aの一端開口部から径方向外側に向けて延びる円環状の一端側鍔部56bと、第2胴部56aの他端開口部から径方向外側に向けてステータコイル用ボビン22bにおけるシャフト15側の面の手前まで延びる円環状の他端側鍔部56cとを有している。さらに、第2界磁コイル用ボビン56は、一端側鍔部56bと他端側鍔部56cとの間に位置し、且つ第2胴部56aの外周面から径方向外側に向けて延びる円環状の仕切鍔部56dを有している。
【0038】
一端側鍔部56bは、第2界磁コア52の内周部52bの端面521bに沿って延びるとともに、段差部52dの外周面に沿って屈曲し、さらに、第2界磁コア52の外周部52aの端面521aに沿って延びるように形成されている。そして、第2胴部56aの一部、一端側鍔部56b及び仕切鍔部56dにより第3巻装部56Aが形成されている。また、第2胴部56aの一部、他端側鍔部56c及び仕切鍔部56dにより第4巻装部56Bが形成されている。
【0039】
第3界磁コイル53は、第3巻装部56Aに導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる導線がシャフト15の軸線L周りに複数回巻回されることで巻装されている。第3界磁コイル53は、第3巻装部56Aに巻装された状態において、その一部が、第2界磁コア52の内周部52bの端面521bよりも外周部52aの端面521a側に配置されている。第4界磁コイル54は、第4巻装部56Bに導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる導線がシャフト15の軸線L周りに複数回巻回されることで巻装されている。
【0040】
次に、本実施形態のモータ10の作用について、各界磁コイル43,44,53,54に電流が供給された際に形成される磁路(界磁磁束の流れ)を中心に説明する。尚、ハウジング11の外周面には、各界磁コイル43,44,53,54に電流を供給するための端子台(図示せず)が設けられており、各界磁コイル43,44,53,54の導線の始端はハウジング11外部へ引き出されて端子台に電気的に接続されている。
【0041】
図1に示すように、各界磁コイル43,44に電流が供給されることにより第1界磁コア42に発生された界磁磁束は、矢印Y1に示すようにシャフト15に向かって流れる。そして、界磁磁束は、磁気的空隙(ギャップ)を通してシャフト15に流れる。さらに、界磁磁束は、矢印Y2に示すようにシャフト15内をシャフト15の軸方向に流れ、矢印Y3に示すようにシャフト15の軸線Lに直交する方向へ流れてロータコア31(ロータティース31a)を外径側に流れてステータコア21(ステータティース21a)を通過する。さらに、界磁磁束は、矢印Y4に示すようにコアバック12を第1界磁極41へ向かって誘導される。
【0042】
ここで、第1界磁コア42における外周部42aと内周部42bとの境目K1の部位の周方向の断面積は、第1界磁コア42の内周面42gの面積と同じになっている。これにより、例えば、第1界磁コア42における外周部42aと内周部42bとの境目K1の周方向の断面積が、第1界磁コア42の内周面42gの面積よりも小さくなっている場合に比べて、磁束が流れ易くなるため、第1界磁コア42が磁気飽和してしまうことが抑制され、モータ10のトルクが低下してしまうことが抑制されている。
【0043】
このようにして、第1界磁コア42、シャフト15、ロータ30、ステータ20及びコアバック12による界磁磁路が形成される。よって、本実施形態では、コアバック12及びシャフト15は、第1界磁コア42と、ロータ30及びステータ20と共に界磁磁路を形成する磁路形成部材として機能する。
【0044】
同様に、各界磁コイル53,54に電流が供給されることにより第2界磁コア52に発生された界磁磁束は、矢印Y11に示すようにシャフト15に向かって流れる。そして、界磁磁束は、磁気的空隙(ギャップ)を通してシャフト15に流れる。さらに、界磁磁束は、矢印Y12に示すようにシャフト15内をシャフト15の軸方向に流れ、矢印Y13に示すようにシャフト15の軸線Lに直交する方向へ流れてロータコア31(ロータティース31a)を外径側に流れてステータコア21(ステータティース21a)を通過する。さらに、界磁磁束は、矢印Y14に示すようにコアバック12を第2界磁極51へ向かって誘導される。
【0045】
ここで、第2界磁コア52における外周部52aと内周部52bとの境目K2の部位の周方向の断面積は、第2界磁コア52の内周面52gの面積と同じになっている。これにより、例えば、第2界磁コア52における外周部52aと内周部52bとの境目K2の周方向の断面積が、第2界磁コア52の内周面52gの面積よりも小さくなっている場合に比べて、磁束が流れ易くなるため、第2界磁コア52が磁気飽和してしまうことが抑制され、モータ10のトルクが低下してしまうことが抑制されている。
【0046】
このようにして、第2界磁コア52、シャフト15、ロータ30、ステータ20及びコアバック12による界磁磁路が形成される。よって、本実施形態では、コアバック12及びシャフト15は、第2界磁コア52と、ロータ30及びステータ20と共に界磁磁路を形成する磁路形成部材として機能する。
【0047】
このように、本実施形態のモータ10では、環状(ループ状)の磁路(界磁磁束の流れ)が形成され、ロータ30のロータティース31aは、界磁磁束によってN極の極性を持つことになり、ロータティース31a(界磁磁束)が、永久磁石同期モータにおけるロータに配設された永久磁石と同様の働きを持つことになる。
【0048】
また、本実施形態のモータ10では、各界磁コイル43,44,53,54に流す電流量を増加させることで界磁磁束を増加させ、より大きなトルクを得ることができる。その一方で、本実施形態のモータ10では、高速回転時において各界磁コイル43,44,53,54に流す電流量を減少させることで界磁磁束を減少させ、最大回転数を向上させることができる。
【0049】
また、第1界磁コア42及び第2界磁コア52に界磁磁束を発生させるために必要な各界磁コイル43,44,53,54のうち、各界磁コイル43,53の一部が、各界磁コア42,52の内周部42b,52bの端面421b,521bよりも外周部42a,52aの端面421a,521a側に配置されている。すなわち、各界磁コア42,52の端面42e,52eを段付き形状にしたことにより、各界磁コア42,52とステータ20及びロータ30との間において、各界磁コイル43,53の配置スペースが増加している。よって、この増加した配置スペース利用して各界磁コイル43,53の一部が配置されていることで、各界磁コア42,52とステータ20及びロータ30とが可能な限り近づけられ、その結果として、モータ10におけるシャフト15の軸方向への体格が小型化されている。
【0050】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)第1界磁コア42及び第2界磁コア52の外周部42a,52a側の厚みL1,L3が内周部42b,52b側の厚みL2,L4よりも薄くなるように、各界磁コア42,52における各界磁コイル43,44,53,54が配設される側の端面42e,52eを段付き形状にした。よって、各界磁コア42,52の端面42e,52eに段が無い場合に比べると、各界磁コア42,52とステータ20及びロータ30との間における各界磁コイル43,44,53,54の配置スペースを増加させることができる。その結果として、この増加した配置スペースに各界磁コイル43,53の一部を配置することができる分、各界磁コア42,52とステータ20及びロータ30とを近づけることができ、モータ10全体として、シャフト15の軸方向への体格を小型化することができる。
【0051】
(2)各界磁コア42,52における外周部42a,52aと内周部42b,52bとの境目K1,K2の部位の周方向の断面積は、各界磁コア42,52の内周面42g,52gの面積と同じになっている。これにより、例えば、各界磁コア42,52における外周部42a,52aと内周部42b,52bとの境目K1,K2の部位の周方向の断面積が、各界磁コア42,52の内周面42g,52gの面積よりも小さくなっている場合に比べて、磁束が流れ易くなるため、各界磁コア42,52が磁気飽和してしまうことを抑制することができる。その結果として、モータ10のトルクが低下してしまうことを抑制することができる。さらには、各界磁コア42,52の端面42e,52eに、各界磁コイル43,53の一部が配置される配置スペースを可能な限り形成することができる。
【0052】
(3)各界磁コア42,52の端面42e,52eを段付き形状にした。各界磁コア42,52とステータ20及びロータ30との間において、各界磁コイル43,44,53,54の配置スペースを増加させるために、例えば、各界磁コア42,52の端面42e,52eをテーパ形状にする場合に比べて、各界磁コア42,52の端面42e,52eの形状を容易に製作することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
以下、本発明を回転電機としてのモータ(回転電動機)に具体化した第2の実施形態を図4にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0054】
図4に示すように、モータ60において、コアバック12内におけるステータ20及びロータ30よりも一端側には、界磁磁束を発生させるための第3界磁極61が配設されている。第3界磁極61は、界磁コアとしての第3界磁コア62と、界磁コイルとしての第5界磁コイル63及び第6界磁コイル64とから構成されている。第3界磁コア62は磁性材料からなるとともに、本実施形態では粉末成形磁性体(SMC:Soft Magnetic Composites)から形成されている。第3界磁コア62の内側にはシャフト15が挿通されており、第3界磁コア62の内周面62gとシャフト15の外周面15aとの間には僅かな隙間が形成されている。そして、第3界磁コア62とシャフト15とはこの隙間を介して磁気的に接続されている。
【0055】
第3界磁コア62における第5界磁コイル63及び第6界磁コイル64が配設される側の端面62eは段付き形状になっている。具体的には、第3界磁コア62は、その外周部62a側の厚みL5が内周部62b側の厚みL6よりも薄くなっており、さらに、第3界磁コア62の中央部62cの厚みL7が、外周部62a側の厚みL5よりも厚く、且つ内周部62b側の厚みL6よりも薄くなっている。
【0056】
第3界磁コア62の端面62eにおいて、外周部62aと中央部62cとの間には、外周部62aの端面621aと中央部62cの端面621cとを繋ぐ第1段差部621dが周方向全周に亘って形成されている。第1段差部621dは、シャフト15の軸方向に沿って延びるように形成されている。また、第3界磁コア62の端面62eにおいて、中央部62cと内周部62bとの間には、中央部62cの端面621cと内周部62bの端面621bとを繋ぐ第2段差部622dが周方向全周に亘って形成されている。第2段差部622dは、シャフト15の軸方向に沿って延びるように形成されている。
【0057】
第3界磁コア62における外周部62aと中央部62cとの境目K3(第3界磁コア62における厚みの境目)の部位の周方向の断面積は、第3界磁コア62の内周面62gの面積と同じになっている。また、第3界磁コア62における中央部62cと内周部62bとの境目K4(第3界磁コア62における厚みの境目)の部位の周方向の断面積は、第3界磁コア62の内周面62gの面積と同じになっている。すなわち、円周率を「π」、シャフト15の軸線Lから境目K3までの径方向に沿った長さを「R5」、シャフト15の軸線Lから第3界磁コア62の内周面62gまでの径方向に沿った長さを「R6」、シャフト15の軸線Lから境目K4までの径方向に沿った長さを「R7」とする。すると、「L5×2πR5=L6×2πR6=L7×2πR7」の関係を満たすように、厚みL5,L6,L7、長さR5,R6,R7が設定されている。
【0058】
コアバック12内におけるステータ20及びロータ30よりも他端側には、界磁磁束を発生させるための第4界磁極71が配設されている。第4界磁極71は、界磁コアとしての第4界磁コア72と、界磁コイルとしての第7界磁コイル73及び第8界磁コイル74とから構成されている。第4界磁コア72は磁性材料からなるとともに、本実施形態では粉末成形磁性体(SMC:Soft Magnetic Composites)から形成されている。第4界磁コア72の内側にはシャフト15が挿通されており、第4界磁コア72の内周面72gとシャフト15の外周面15aとの間には僅かな隙間が形成されている。そして、第4界磁コア72とシャフト15とはこの隙間を介して磁気的に接続されている。
【0059】
第4界磁コア72における第7界磁コイル73及び第8界磁コイル74が配設される側の端面72eは段付き形状になっている。具体的には、第4界磁コア72は、その外周部72a側の厚みL8が内周部72b側の厚みL9よりも薄くなっており、さらに、第4界磁コア72の中央部72cの厚みL10が、外周部72a側の厚みL8よりも厚く、且つ内周部72b側の厚みL9よりも薄くなっている。
【0060】
第4界磁コア72の端面72eにおいて、外周部72aと中央部72cとの間には、外周部72aの端面721aと中央部72cの端面721cとを繋ぐ第1段差部721dが周方向全周に亘って形成されている。第1段差部721dは、シャフト15の軸方向に沿って延びるように形成されている。また、第4界磁コア72の端面72eにおいて、中央部72cと内周部72bとの間には、中央部72cの端面721cと内周部72bの端面721bとを繋ぐ第2段差部722dが周方向全周に亘って形成されている。第2段差部722dは、シャフト15の軸方向に沿って延びるように形成されている。
【0061】
第4界磁コア72における外周部72aと中央部72cとの境目K5(第4界磁コア72における厚みの境目)の部位の周方向の断面積は、第4界磁コア72の内周面72gの面積と同じになっている。また、第4界磁コア72における中央部72cと内周部72bとの境目K6(第4界磁コア72における厚みの境目)の部位の周方向の断面積は、第4界磁コア72の内周面72gの面積と同じになっている。すなわち、円周率を「π」、シャフト15の軸線Lから境目K5までの径方向に沿った長さを「R8」、シャフト15の軸線Lから第4界磁コア72の内周面72gまでの径方向に沿った長さを「R9」、シャフト15の軸線Lから境目K6までの径方向に沿った長さを「R10」とする。すると、「L8×2πR8=L9×2πR9=L10×2πR10」の関係を満たすように、厚みL8,L9,L10、長さR8,R9,R10が設定されている。
【0062】
コアバック12内において、第3界磁コア62の内周部62bの端面621bからステータコア21の一端部までの距離H3は、第4界磁コア72の内周部72bの端面721bからステータコア21の他端部までの距離H4に比べて、渡り線領域Wが存在する分だけ長くなっている。
【0063】
第3界磁コア62の端面62eには第3界磁コイル用ボビン66が固着されている。第3界磁コイル用ボビン66は、第3界磁コア62の内周部62bの端面621bからロータコア31の一端面の手前までシャフト15の軸方向に沿って延びる円筒状の第3胴部66aを有している。また、第3界磁コイル用ボビン66は、第3胴部66aの一端開口部から径方向外側に向けて延びる円環状の一端側鍔部66bと、第3胴部66aの他端開口部から径方向外側に向けてステータコイル用ボビン22bにおけるシャフト15側の面の手前まで延びる円環状の他端側鍔部66cとを有している。さらに、第3界磁コイル用ボビン66は、一端側鍔部66bと他端側鍔部66cとの間に位置し、且つ第3胴部66aの外周面から径方向外側に向けて延びる円環状の仕切鍔部66dを有している。
【0064】
一端側鍔部66bは、第3界磁コア62の内周部62bの端面621bに沿って延びるとともに、第2段差部622dの外周面に沿って屈曲し、さらに、第3界磁コア62の中央部62cの端面621cに沿って延びている。さらに、一端側鍔部66bは、第1段差部621dの外周面に沿って屈曲し、第3界磁コア62の外周部62aの端面621aに沿って延びるように形成されている。
【0065】
そして、第3胴部66aの一部、一端側鍔部66b及び仕切鍔部66dにより第5巻装部66Aが形成されている。また、第3胴部66aの一部、他端側鍔部66c及び仕切鍔部66dにより第6巻装部66Bが形成されている。
【0066】
第5界磁コイル63は、第5巻装部66Aに導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる導線がシャフト15の軸線L周りに複数回巻回されることで巻装されている。第5界磁コイル63は、第5巻装部66Aに巻装された状態において、その一部が、第3界磁コア62の内周部62bの端面621bよりも中央部62cの端面621c側、及び外周部62aの端面621a側に配置されている。第6界磁コイル64は、第6巻装部66Bに導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる導線がシャフト15の軸線L周りに複数回巻回されることで巻装されている。
【0067】
第4界磁コア72の端面72eには第4界磁コイル用ボビン76が固着されている。第4界磁コイル用ボビン76は、第4界磁コア72の内周部72bの端面721bからロータコア31の他端面の手前までシャフト15の軸方向に沿って延びる円筒状の第4胴部76aを有している。また、第4界磁コイル用ボビン76は、第4胴部76aの一端開口部から径方向外側に向けて延びる円環状の一端側鍔部76bと、第4胴部76aの他端開口部から径方向外側に向けてステータコイル用ボビン22bにおけるシャフト15側の面の手前まで延びる円環状の他端側鍔部76cとを有している。さらに、第4界磁コイル用ボビン76は、一端側鍔部76bと他端側鍔部76cとの間に位置し、且つ第4胴部76aの外周面から径方向外側に向けて延びる円環状の仕切鍔部76dを有している。
【0068】
一端側鍔部76bは、第4界磁コア72の内周部72bの端面721bに沿って延びるとともに、第2段差部722dの外周面に沿って屈曲し、さらに、第4界磁コア72の中央部72cの端面721cに沿って延びている。さらに、一端側鍔部76bは、第1段差部721dの外周面に沿って屈曲し、第4界磁コア72の外周部72aの端面721aに沿って延びるように形成されている。
【0069】
そして、第4胴部76aの一部、一端側鍔部76b及び仕切鍔部76dにより第7巻装部76Aが形成されている。また、第4胴部76aの一部、他端側鍔部76c及び仕切鍔部76dにより第8巻装部76Bが形成されている。
【0070】
第7界磁コイル73は、第7巻装部76Aに導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる導線がシャフト15の軸線L周りに複数回巻回されることで巻装されている。第7界磁コイル73は、第7巻装部76Aに巻装された状態において、その一部が、第4界磁コア72の内周部72bの端面721bよりも中央部72cの端面721c側、及び外周部72aの端面721a側に配置されている。第8界磁コイル74は、第8巻装部76Bに導電性の金属材料(本実施形態では銅)よりなる導線がシャフト15の軸線L周りに複数回巻回されることで巻装されている。
【0071】
これによれば、各界磁コア62,72とステータ20及びロータ30との間における各界磁コイル63,64,73,74の配置スペースをさらに増加させることが可能である。
【0072】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記各実施形態において、各界磁コア42,52,62,72を、径方向の長さが異なる円環状の界磁コア形成体をシャフト15の軸方向に少なくとも二つ以上重ねることで形成してもよい。例えば、図5に示すように、第5界磁コア82は、円環状をなす第1界磁コア形成体91及び第2界磁コア形成体92をシャフト15の軸方向に重ねることで形成されている。第1界磁コア形成体91及び第2界磁コア形成体92は磁性材料からなるとともに、本実施形態では粉末成形磁性体(SMC:Soft Magnetic Composites)から形成されている。
【0073】
第1界磁コア形成体91及び第2界磁コア形成体92の内径は同じになっている。また、第1界磁コア形成体91の外径は、第2界磁コア形成体92の外径よりも大きくなっている。
【0074】
第5界磁コア82は、第1界磁コア形成体91における各界磁コイル43,44が配設される側の端面91eの一部分と、第2界磁コア形成体92における各界磁コイル43,44が配設される側とは反対側の端面92hとが接着剤により接合されることで形成されている。
【0075】
このとき、第1界磁コア形成体91の内周面91gと第2界磁コア形成体92の内周面92gとは同一周面上に位置している。これら第1界磁コア形成体91の内周面91gと第2界磁コア形成体92の内周面92gにより、第5界磁コア82の内周面82gが形成されている。また、第1界磁コア形成体91の外周部91aは、第2界磁コア形成体92の外周面921よりも径方向外側へ突出している。すなわち、第1界磁コア形成体91の外周部91aが第5界磁コア82の外周部になっているとともに、第1界磁コア形成体91の内周部91b及び第2界磁コア形成体92が第5界磁コア82の内周部になっている。その結果、第5界磁コア82は、その外周部側の厚みL11(第1界磁コア形成体91の厚み)が内周部側の厚みL12(第1界磁コア形成体91の厚みと第2界磁コア形成体92の厚みの合計)よりも薄くなるように、第5界磁コア82における各界磁コイル43,44が配設される側の端面82eが段付き形状になっている。
【0076】
第5界磁コア82における外周部と内周部との境目K7(第5界磁コア82における厚みの境目)の部位の周方向の断面積は、第5界磁コア82の内周面82gの面積と同じになっている。すなわち、円周率を「π」、シャフト15の軸線Lから境目K7までの径方向に沿った長さを「R11」、シャフト15の軸線Lから第5界磁コア82の内周面82gまでの径方向に沿った長さを「R12」とすると、「L11×2πR11=L12×2πR12」の関係を満たすように、厚みL11,L12、長さR11,R12が設定されている。
【0077】
このように、第1界磁コア形成体91及び第2界磁コア形成体92をシャフト15の軸方向に重ねるだけで、第5界磁コア82の端面82eを段付き形状とすることができるため、製作を容易なものとすることができる。
【0078】
○ また、図6に示すように、第1界磁コア形成体91及び第2界磁コア形成体92は、複数枚の電磁鋼板91c,92cをシャフト15の軸方向に積層して形成されていてもよい。これによれば、例えば、各界磁コア形成体91,92が粉末成形磁性体からなる場合に比べて、磁気特性を向上させることができる。
【0079】
○ 第1の実施形態において、各界磁コア42,52における外周部42a,52aと内周部42b,52bとの境目K1,K2の部位の周方向の断面積が、各界磁コア42,52の内周面42g,52gの面積よりも大きくなっていてもよい。これによれば、磁束がさらに流れ易くなるため、各界磁コア42,52が磁気飽和してしまうことをさらに抑制することができ、モータ10のトルクが低下してしまうことをさらに抑制することができる。
【0080】
○ 第2の実施形態において、各界磁コア62,72における外周部62a,72aと中央部62c,72cとの境目K3,K5の部位の周方向の断面積は、各界磁コア62,72の内周面62g,72gの面積よりも大きくなっていてもよい。また、各界磁コア62,72における中央部62c,72cと内周部62b,72bとの境目K4,K6の部位の周方向の断面積は、各界磁コア62,72の内周面62g,72gの面積よりも大きくなっていてもよい。これによれば、磁束がさらに流れ易くなるため、各界磁コア62,72が磁気飽和してしまうことをさらに抑制することができ、モータ60のトルクが低下してしまうことをさらに抑制することができる。
【0081】
○ 上記各実施形態において、コアバック12は粉末成形磁性体(SMC)から形成されていたが、これに限らず、例えば、鉄塊などの磁性体から形成されていてもよい。
○ 上記各実施形態において、各界磁コア42,52,62,72は粉末成形磁性体(SMC)から形成されていたが、これに限らず、例えば、鉄塊などの磁性体から形成されていてもよい。
【0082】
○ 上記各実施形態において、ロータコア31は、電磁鋼板を複数枚積層して構成が、これに限らず、ロータコア31を粉末成形磁性体(SMC)や鉄塊などの磁性体で構成してもよい。
【0083】
○ 上記各実施形態において、各界磁極41,61のみ、あるいは、各界磁極51,71のみ設けてもよい。すなわち、軸線L方向の片側のみに界磁極を設けてもよい。
○ 上記各実施形態において、シャフト15を磁路形成部材とし、シャフト15を介して界磁磁路を形成したが、これに限らず、シャフト15を介さずに界磁磁路を形成してもよい。例えば、シャフト15の外周に、シャフト15よりも磁気抵抗の小さい磁性体(例えば粉末成形磁性体(SMC)や鉄塊などの磁性体)を磁路形成部材として設けて界磁磁路としてもよい。
【0084】
○ 上記各実施形態において、ステータ20のステータティース21aの数は適宜変更してもよい。
○ 上記各実施形態において、ロータ30のロータティース31aの数は適宜変更してもよい。
【0085】
○ 上記各実施形態において、凸極部としてのロータティース31aは形状的に凸形状であったが、この構成に限らず、磁気的に凸極性があればよい。例えば、ロータティースの先端のみが隣接するロータティースと連結されていたり、ロータティース間の凹部が非磁性体で埋められたりして、全体としてロータが円筒状でもよい。
【0086】
○ 上記各実施形態において、各界磁極41,51,61,71には、必要な磁界を発生させる界磁コイルがあればよく、例えば、各界磁コイル44,54,64,74を削除してもよい。
【0087】
○ 上記各実施形態において、各界磁コイル用ボビン46,56,66,76を削除してもよい。この場合、型成形された界磁コイルを各界磁コア42,52,62,72に直接固着する。また、界磁コイルの皮膜で絶縁が確保できる場合、界磁コイルを各界磁コア42,52,62,72に直接巻きつけてもよい。
【0088】
○ 上記各実施形態において、ステータコイル22の絶縁は、ステータコイル用ボビン22bに限定されるものではない。例えば、絶縁紙を用いてもよい。コイルの皮膜で絶縁が確保できる場合、ステータティース21aに直接巻きつけてもよい。
【0089】
○ 上記各実施形態において、各界磁コア42,52,62,72の端面42e,52e,62e,72eに形成される段の数は特に限定されるものではない。
○ 上記各実施形態では、第1ハウジング13及び第2ハウジング14それぞれにベアリング16,17を配設しているが、界磁磁束の邪魔にならない位置であれば、その他の位置に配置してもよい。
【0090】
○ 上記各実施形態では、シャフト15の一端のみがハウジング11外へ突出しているが、他端もハウジング11外へ突出していてもよい。
○ 上記各実施形態では、各界磁コア42,52,62,72は、コアバック12の開口部に凹設された圧入凹部12a,12bに圧入されることで、コアバック12に固定されていたが、この構成に限らず、コアバック12と各界磁コア42,52,62,72とが磁気的に接続されていればよい。
【0091】
○ 本発明を、モータ10(回転電動機)に具体化したが、発電機に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0092】
K1,K2,K3,K4,K5,K6,K7…境目、10,60…回転電機としてのモータ(回転電動機)、12…磁路形成部材としてのコアバック、15…シャフト、15a…外周面、20…ステータ、30…ロータ、31a…凸極部としてのロータティース、42,52,62,72,82…界磁コア、42a,52a,62a,72a…外周部、42b,52b,62b,72b…内周部、42e,52e,62e,72e,82e…端面、42g,52g,62g,72g,82g…内周面、43,44,53,54,63,64,73,74…界磁コイル、91,92…界磁コア形成体、91c,92c…電磁鋼板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに回転可能に支持されるとともに磁気的な凸極部を有するロータと、
前記ロータの凸極部の径方向外側に配置されたステータと、
円環状をなすとともに内側に前記シャフトが挿通され、界磁磁束を生じさせるための界磁コアと、
前記シャフトの軸方向において、前記界磁コアと前記ロータ及び前記ステータとの間に配設される界磁コイルと、
前記界磁コイルの通電に伴い前記界磁コアと少なくとも前記ロータと前記ステータと共に界磁磁路を形成する磁路形成部材と、を備えた回転電機であって、
前記界磁コアの外周部側の厚みが前記界磁コアの内周部側の厚みよりも薄くなるように、前記界磁コアにおける前記界磁コイルが配設される側の端面を段付き形状にしたことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記界磁コアの内周面と前記シャフトの外周面との間のギャップを通して前記界磁磁路が形成され、
前記界磁コアにおける厚みの境目の部位の周方向の断面積が、前記界磁コアの内周面の面積以上になっていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記界磁コアにおける厚みの境目の部位の周方向の断面積が、前記界磁コアの内周面の面積と同じになっていることを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記界磁コアは、径方向の長さが異なる円環状の界磁コア形成体を前記シャフトの軸方向に少なくとも二つ以上重ねることで形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記界磁コア形成体は、複数枚の電磁鋼板を前記シャフトの軸方向に積層して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−257377(P2012−257377A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128613(P2011−128613)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】