説明

回転電機

【課題】回転電機内部を冷却するために形成される孔を、回転電機内部を冷却する上で適切な位置に設ける際に、より容易な手順にて設けることが可能な回転電機を提供することである。
【解決手段】シャフト2と、ヨーク5と、ヨーク5の開口端に取り付けられるエンドハウジング20と、を有するファンモータ1において、エンドハウジング5はヨーク5とは別体をなしており、エンドハウジング20には、ヨーク5の内部及び外部を連通させるための通気孔29が形成され、通気孔29は、シャフト2の径方向においてエンドハウジング20の縁寄りに位置し、エンドハウジング20中、シャフト2の径方向において通気孔29を挟んで並ぶ2つの領域がシャフト2の軸方向において互いに重ならないように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に係り、特に、内部を冷却するために通気孔等の孔が形成されている回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機やモータ等の回転電機の内部を空冷にて冷却するための機構は、既に知られており、例えば、回転電機のヨークに通風孔を設け、この通気孔からヨーク内の空気を取り込むことにより回転電機の内部を冷却するものが存在する(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたモータでは、有底円筒形状のヨークの底部に通気孔(冷却風排出口)が形成されており、モータ内部を流れる冷却風は上記の通気孔を通じてモータ外に排出されるようになっている。
【0003】
一方、モータの作動中はロータが回転しているため、上記の冷却風が流れる向きは、ロータの回転による影響を受けて、ヨークの端部付近でロータの径方向外側に向かう成分を有するようになる。この事を考慮すると、上述の通気孔については、ロータの径方向においてヨークの外縁付近に設けることが好ましく、このようなヨークの構造が既に提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載されたモータでは、有底円筒状のヨークの外周壁のうち、端部近傍を径方向内側に向かって屈曲させて段差を形成し、その段差から立設した傾斜壁に通風孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−74718号公報
【特許文献2】特開2008−29168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されたモータでは、ヨークに通風孔を設けるにあたり、ヨークの径方向外縁部に対して屈曲等の複雑な加工を施す必要があるので、通風孔を形成するのに手間を要することとなる。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回転電機内部を冷却するために形成される通風孔を、回転電機内部を冷却する上で適切な位置に、より容易な手順にて設けることが可能な回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の回転電機によれば、回転する回転軸と、該回転軸の軸方向の一端に開口端を備え、前記回転軸を内部に収容したヨークと、該ヨークの前記開口端に取り付けられるカバー部材と、を有し、該カバー部材は、前記ヨークとは別体をなしており、前記カバー部材には、前記ヨークの内部と前記ヨークの外部とを連通させるための孔が形成され、該孔は、前記回転軸の径方向において前記カバー部材の外縁寄りに位置し、前記カバー部材中、前記径方向において前記孔を挟んで並ぶ2つの領域が前記軸方向において互いに重ならないように形成されていることにより解決される。
【0008】
すなわち、前述したように、回転電機の作動中、回転電機内を流れる空気流(冷却風)の向きは、ロータの回転によって、ヨークの端部付近で回転軸の径方向外側に向かう成分を有するようになる。このため、カバー部材の外縁近傍に孔(通風孔)が形成されていると、回転電機内の空気が当該孔を通ってスムーズに回転電機外に排出されるようになる。さらに、上記の孔は、カバー部材中、回転軸の径方向において孔を挟んで並ぶ2つの領域が回転軸の軸方向において互いに重ならないように形成されているので、空気が通過し易い構造となっており、回転電機内の空気をよりスムーズに排出することが可能である。
そして、上記の孔が、ヨークとは別体を成すカバー部材に形成されることになっているので、孔を形成するにあたりカバー部材のみを取り扱うことができるので、ヨークとカバー部材が一体化している構成において孔を形成する場合に比して、より容易に孔を設けることが可能になる。
【0009】
また、上記の回転電機において、前記孔は、前記2つの領域が前記径方向において互いに重ならないように形成されているとしてもよい。かかる構成であれば、回転軸の径方向に沿って流れる空気がスムーズに孔を通過するという上述の効果と相俟って、回転電機内の空気をよりスムーズに回転電機外に排出することが可能である。
【0010】
また、上記の回転電機において、前記カバー部材は、前記回転軸を回転自在に支持し、前記孔は、前記回転軸の回転方向に沿って間隔を設けながら輪状に並ぶように前記カバー部材に複数形成されていると好適である。回転電機内を流れる空気流(冷却風)の向きは、回転軸の回転の作用(具体的には、回転によって生じる遠心力)により、ヨーク端部付近において回転軸の回転方向に沿う成分を有するようになる。このため、孔が回転軸の回転方向に沿って複数形成されていれば、回転電機内の空気をより一層スムーズに回転電機外に排出することが可能になる。
【0011】
また、上記の回転電機において、前記カバー部材のうち、前記回転方向において互いに隣り合う前記孔同士の間に位置する領域には補強リブが設けられていると好適である。かかる構成であれば、回転軸の回転方向に沿って輪状に並ぶように複数の孔を設ける際、カバー部材の強度を確保しながら、当該孔を設けることが可能になる。
【0012】
また、上記の回転電機において、前記ヨークの前記軸方向の両端が開口端であり、前記軸方向において一端側にある前記開口端に前記カバー部材が取り付けられており、前記軸方向において他端側にある前記開口端に他のカバー部材が取り付けられており、該他のカバーには、前記ヨーク内に吸気するための吸気孔が形成されており、前記孔は、前記ヨーク内の空気を前記ヨーク外へ通気させるための通気孔であることとしてもよい。かかる構成であれば、回転軸の軸方向において通気孔と吸気孔とが互いに反対側に位置するようになるので、回転電機内において回転電機各部を効率よく冷却するように空気を流すことが可能になる。
【0013】
また、上記の回転電機において、前記回転軸の前記軸方向の両端部のうち、前記カバー部材が取り付けられている側の端部に冷却用ファンが回転可能に取り付けられており、前記ロータが回転することにより、前記冷却用ファンが前記回転軸と一体的に回転すると好適である。かかる構成であれば、冷却用ファンの回転により発生する気流は、回転軸の軸方向においてカバー部材が取り付けられている側(一端側)から他のカバー部材が取り付けられている側(他端側)へ向かうので、一端側が負圧になり、通気孔を通じた回転電機内の空気の排出が促進されることになる。
【0014】
また、上記の回転電機において、前記冷却用ファンは、筒状のファンボスを介して前記回転軸の前記軸方向の端部に取り付けられており、前記ファンボスは、前記回転軸の、前記カバー部材が取り付けられている側の端部を取り囲むように前記回転方向に沿って輪状に並ぶ複数のフィンリブが設けられていると好適である。かかる構成であれば、通気孔から回転電機外に排出された空気は、フィンの作用により回転電機付近から速やかに取り除かれる。この結果、回転軸の軸方向における一端側の負圧がさらに大きくなり、通気孔を通じた回転電機内の空気の排出がより一層促進されることになる。
【0015】
また、以上までに説明してきた前記回転電機は、車両用ファンモータであることとしてもよい。つまり、本発明は、回転電機の一例として車両用ファンモータに適用可能であり、車両用ファンモータの内部を冷却するための通気孔を適切な位置に、かつ、より容易な手順にて設けることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回転電機によれば、回転電機内部を冷却するために形成される孔を、回転電機内部を冷却する上で適切な位置に、より容易な手順にて設けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ファンモータの模式断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカバー部材の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るカバー部材の底面図である。
【図4】図1における通気孔付近の拡大図である。
【図5】従来の車両用ファンモータに搭載されたカバー部材を示す図である。
【図6】従来の車両用ファンモータのカバー部材に形成された通気孔を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る通気孔から冷却風が排出されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態(以下、本実施形態)について、図1乃至図7を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両用ファンモータの模式断面図である。図2は、本発明の実施形態に係るカバー部材の斜視図であり、ヨークに取り付けられた状態を示している。図3は、本発明の実施形態に係るカバー部材の底面図である。図4は、図1における通気孔付近の拡大図である。図5は、従来の車両用ファンモータに搭載されたカバー部材を示す図であり、図3に対応した図である。図6は、従来の車両用ファンモータのカバー部材に形成された通気孔を示す図であり、図4に対応した図である。図7は、本発明の実施形態に係る通気孔から冷却風が排出されている状態を示す図である。
なお、上述の各図では、説明を分かり易くするために、幾分簡略化した形で図示しており、例えば、図1及び図2において積層コア6に巻回されているコイルについては図示を省略している。
【0019】
<<本実施形態に係る車両用ファンモータについて>>
以下では、本発明の回転電機の一例として、車両用ファンモータ(以下、単にファンモータ1という)について説明する。
ファンモータ1は、例えば乗用自動車等のラジエータを冷却するために用いられ、図1に図示したシュラウド40により車両本体に固定支持されている。また、本実施形態に係るファンモータ1は、インナーロータ型のブラシレスDCモータとなっており、その構成は、後述するエンドハウジング20及びエンドカバー30を除き、公知の構成となっている。
【0020】
すなわち、ファンモータ1は、一般的なブラシレスDCモータと同様、ロータ3及びステータ4を有して構成されており、これらは略円筒状のヨーク(ヨークハウジング)5内に収容されている。ロータ3は、ヨーク5の中央部に配置されており、シャフト2と、シャフト2の中央部に配置された積層コア6とを有する。
【0021】
シャフト2は、ロータ3の回転軸であり、金属製の軸部材からなり、その両端部(軸方向における両端部)が軸受7a,7bにより回転自在に支持されている。積層コア6は、複数のコアシート6aがシャフト2の軸方向に積層されて形成されたものである。また、積層コア6には、不図示のコイルが巻回されており、各コイルに励磁電流が流れることでロータ3がシャフト2と一体的に回転するようになる。つまり、ロータ3の回転方向はシャフト2の回転方向に相当し、ロータ3の径方向はシャフト2の径方向に相当する。
なお、シャフト2の先端部には、筒状のファンボス10を介して、ラジエータを冷却するための冷却用ファン11が回転可能に取り付けられており、ロータ3が回転することにより、冷却用ファン11がシャフト2と一体的に回転する。
【0022】
ステータ4は、ロータ3の回転に必要な磁束を供給するためのものであり、ヨーク5の内周面に取り付けられたN極及びS極のマグネット片4aによって構成されている。このステータ4を構成する複数のマグネット片4aは、ロータ3の回転方向に沿って交互に磁性が切り替わるように配置され、ロータ3(より具体的には、積層コア6)を取り囲むように環状をなしている。
【0023】
ヨーク5は、前述したように、その内部にシャフト2、ロータ3及びステータ4を収容する略円筒体であり、その両端(ロータ3を収容した状態においてシャフト2の軸方向に沿う方向の両端)が開口端となっている。そして、上記軸方向においてヨーク5の一端側にある開口端には、カバー部材としてのエンドハウジング20が取り付けられている。ここで、ヨーク5の一端側にある開口端とは、ヨーク5の両端のうち、シャフト2の先端部、より具体的には、冷却用ファン11が取り付けられている側の端部に近い側の開口端である。換言すると、シャフト2の軸方向の両端部のうち、エンドハウジング20が取り付けられている側の端部に冷却用ファン11が取り付けられている。
【0024】
また、上記軸方向においてヨーク5の他端側にある開口端には、他のカバー部材としてのエンドカバー30が取り付けられている。ここで、ヨーク5の他端側にある開口端とは、当然ながらエンドハウジング20が取り付けられている側とは反対側に位置する開口端である。
以上のエンドハウジング20及びエンドカバー30は、いずれもヨーク5とは別体をなし、公知の取り付け方式(例えば、スナップフィット方式)にてヨーク5に対して着脱自在に取り付けられる。
【0025】
そして、エンドハウジング20及びエンドカバー30の各々は、ヨーク5に取り付けられることにより、ヨーク5の開口端を封止するとともに、軸受7a,7bを介してシャフト2の軸方向端部を回転自在に支持するようになる。ここで、エンドハウジング20については、シャフト2を挿通させるための挿通孔21が形成されており、シャフト2は、この挿通孔21に先端部を挿通させた状態でエンドハウジング20に支持される。このため、ファンモータ1が完成した時点で、シャフト2は、図1に示すように、その先端部がエンドハウジング20を突き抜けて外側に突出した状態となる。
【0026】
外側に突出したシャフト2の先端部には、前述したように、ファンボス10を介して冷却用ファン11が取り付けられている。ファンボス10は、有底筒状の部材であり、その外周面に上記の冷却用ファン11が取り付けられている。ヨーク5よりも幾分大径となっており、図1に示すように、その内側にヨーク5の一端側(シャフト2の軸方向においてエンドハウジング20が取り付けられている側)が位置するように配置される。
【0027】
ファンボス10は、環状の側壁部12と底壁部13とを有し、底壁部13の中央部には、裏側(エンドハウジング20と対向する側)に陥没して穴を形成している陥没部13aと、底壁部13の裏面(エンドハウジング20と対向する面)から立設し陥没部13aの外側に位置する円筒部13bと、が設けられている。陥没部13aに形成された穴は、シャフト2の先端部の径よりも幾分大きくなっている。
そして、シャフト2の先端部が上記の陥没部13a及び円筒部13bに緩挿された上で、シャフト2の先端部と陥没部13aの内周面との間の隙間に嵌合部材14が嵌合すると、シャフト2にファンボス10が締結されるようになり、この結果、シャフト2の軸方向端部(先端部)に冷却用ファン11が取り付けられるようになる。これにより、ロータ3が回転すると、シャフト2、冷却用ファン11及びファンボス10が一体的に回転することになる。
【0028】
また、ファンボス10は、側壁部12の内側に、ファンボス10の外周方向に沿って輪状に並ぶ複数のフィンリブ15を有している。複数のフィンリブ15の各々は、ファンボス10の断面を見た際に略L字状の形状となっており、具体的には、側壁部12の内周面から内側に張り出した部分15aと、底壁部13の裏面から立設した部分15bとを有している。そして、シャフト2にファンボス10が締結された状態では、複数のフィンリブ15が、シャフト2の先端部を取り囲み、ロータ3の回転方向に沿って輪状に並ぶようになる。なお、ファンボス10がシャフト2や冷却用ファン11とともに回転する際、各フィンリブ15がファンモータ1(より具体的には、ヨーク5やエンドハウジング20)と干渉しないように、フィンリブ15とファンモータ1との間には適宜なクリアランスが設けられている。
【0029】
次に、上述したエンドハウジング20及びエンドカバー30の構造について説明する。
エンドハウジング20は、図2及び3に示すように、略円盤状の部材であり、その径方向の外側から順に、外縁部22、中間部23及び内側部24を有している。これらの部位(すなわち、外縁部22、中間部23及び内側部24)は、いずれもエンドハウジング20を正面から見た際に輪状の領域となっている(図3参照)。
【0030】
外縁部22は、エンドハウジング20の中で最も外側に位置する領域である。中間部23は、エンドハウジング20の径方向において外縁部22よりも内側の位置で、外縁部22と隣り合う領域である。この中間部23は、エンドハウジング20の厚み方向(図3において紙面を貫く方向)において外縁部22と異なる位置に位置する。具体的に説明すると、ファンモータ1が完成した状態において、中間部23は、シャフト2の軸方向において外縁部22とは異なる位置(より具体的には、シャフト2の先端部により近い位置)に位置する(例えば、図4参照)。つまり、外縁部22と中間部23との間には段差が形成されている。このように外縁部22と中間部23との間に段差を形成した理由は、ファンモータ1を小型化する為にエンドハウジング20をロータ3に近づけた際に、積層コア6に巻回されたコイルによりシャフト2の軸方向に沿って盛り上がっている部位(図1中、記号Aが付された部位)との接触を避けるためである。
【0031】
なお、上記の段差に位置する部分には、連結部25が設けられている。この連結部25は、エンドハウジング20のうち、外縁部22と中間部23の間に位置して両者を連結している領域である。
【0032】
内側部24は、エンドハウジング20の径方向において中間部23よりも内側に位置する部分であり、その中央部には前述の挿通孔21が形成されている。さらに、内側部24のうち、挿通孔21の周縁部には円筒状の軸支持部26が立設されている。この軸支持部26の内側に軸受7aが嵌装され、これにより軸支持部26が軸受7aを介してシャフト2を支持するようになる。
【0033】
なお、内側部24についても、エンドハウジング20の厚み方向(図3において紙面を貫く方向)において外縁部22及び中間部23と異なる位置に位置する。具体的に説明すると、ファンモータ1が完成した状態において、内側部24は、シャフト2の軸方向において中間部23よりも幾分積層コア6に近い側に位置する(例えば、図4参照)。さらに、本実施形態では、エンドハウジング20の径方向において中間部23と内側部24との間に隔たりがある。このため、エンドハウジング20のうち、中間部23と内側部24との間には、エンドハウジング20の厚み方向に対して傾斜した傾斜連結部27が設けられ、この傾斜連結部27により中間部23と内側部24とが連結されている。
【0034】
さらに、図2及び3に示すように、本実施形態のエンドハウジング20には通気孔29が形成されている。この通気孔29は、ファンモータ1内の空気をファンモータ1外へ通気させるための孔である。換言すると、通気孔29は、ヨーク5の内部とヨーク5の外部とを連通させるために形成された孔であると言える。そして、本実施形態では、図3に示すように、エンドハウジング20の外周方向(ファンモータ1が完成した状態でのロータ3の回転方向に相当する)に沿って間隔を設けながら輪状に並ぶように、通気孔29がエンドハウジング20に複数形成されている。
【0035】
通気孔29についてより詳細に説明すると、各通気孔29は、エンドハウジング20を正面から見た際に略矩形状に形成されており、その長手方向は、エンドハウジング20の外周方向に沿っている。また、通気孔29の短手方向は、エンドハウジング20の径方向(ファンモータ1が完成した状態でのロータ3の径方向に相当する)に沿っている。
そして、各通気孔29は、上記の径方向においてエンドハウジング20の外縁寄りに位置するように形成されている。より具体的に説明すると、本実施形態において各通気孔29は、短手方向一端が上述の外縁部22に差し掛かり、短手方向他端が上述の中間部23に差し掛かるように形成されている。つまり、各通気孔29は、エンドハウジング20の径方向において外縁部22と中間部23との間の段差(換言すると、上述の連結部25)を跨ぐように形成されている。
【0036】
上記の如く通気孔29が形成されたエンドハウジング20について、その断面を見ると、図4に示すように、エンドハウジング20中、上記の径方向において通気孔29を挟んで並ぶ2つの領域(具体的には、外縁部22及び中間部23)は、エンドハウジング20の厚み方向(ファンモータ1が完成した状態でのシャフト2の軸方向に相当する)において互いに重なっていないことになる。換言すると、本実施形態において、各通気孔29は、エンドハウジング20の径方向において通気孔29を挟んで並ぶ2つの領域がエンドハウジング20の厚み方向において互いに重ならないように形成されている。このように、エンドハウジング20の径方向において通気孔29を挟んで並ぶ2つの領域がエンドハウジング20の厚み方向において互いに重なっていなければ、ファンモータ1内を流れている空気は、通気孔29を通過する際に通気孔29に向かって直進する方向に流れる。つまり、ファンモータ1内を流れている空気は、通気孔29を通過する際に流れの向きを変える必要がなく、スムーズに通気孔29を通過することが可能になる。
【0037】
また、各通気孔29は、その形成位置においてエンドハウジング20を貫通するように形成されている。したがって、図4に示すように、エンドハウジング20中、上記の径方向において通気孔29を挟んで並ぶ2つの領域(具体的には、外縁部22及び中間部23)は、上記の径方向においても互いに重なっていないことになる。換言すると、本実施形態において、各通気孔29は、エンドハウジング20の径方向において通気孔29を挟んで並ぶ2つの領域が当該径方向において互いに重ならないように形成されている。この結果、上述した効果(ロータ3の径方向に沿って流れる空気がスムーズに通気孔29を通過する効果)と相俟って、通気孔29での気流の通過がよりスムーズに行われるようになる。
【0038】
そして、本実施形態では、前述したように、エンドハウジング20の外周方向(ファンモータ1が完成した状態でのロータ3の回転方向に相当する)に沿って一定間隔毎に通気孔29が複数形成されている。さらに、本実施形態において、エンドハウジング20のうち、エンドハウジング20の外周方向において互いに隣り合う通気孔29同士の間に位置する領域には、図2及び3に示すように、補強リブ28が形成されている。このように、通気孔29同士の間に補強リブ28が立設されていることにより、エンドハウジング20に複数の通気孔29を穿つ場合であっても、エンドハウジング20の強度を確保しながら、通気孔29を設けることが可能になる。
【0039】
エンドカバー30は、有底筒状の蓋状体であり、底壁部31と外周部32とを有している(図1参照)。底壁部31は、略円盤状になっており、その中央からやや離れた部位が輪状に窪むことによって、円筒状の軸支持部33が形成されている。この軸支持部33の内側に軸受7bが嵌装され、これにより軸支持部33が軸受7bを介してシャフト2を支持するようになる。
外周部32は、その内側にヨーク5の他端側(シャフト2の軸方向においてエンドハウジング20が取り付けられている側とは反対側)が位置するように配置される。さらに、外周部32のうち、底壁部31と隣接する側とは反対側の端部は、エンドカバー30の径方向外側に張り出して鍔状部分34を形成している。この鍔状部分34がシュラウド40にボルト止めされることにより、ファンモータ1はシュラウド40を介して車両本体に固定されることになる。
【0040】
本実施形態では、上記の外周部32中、その周方向における所定領域が切り欠かれており、当該所定領域では、鍔状部分34が設けられている側から底壁部31付近に至る範囲が欠損している。このため、エンドカバー30をヨーク5に取り付けた状態では、上記の切り欠きにより、ヨーク5とエンドカバー30との間に隙間が生じる。この隙間がヨーク5内に吸気するための吸気孔35を形成している。
なお、本実施形態では、ヨーク5のうち、エンドカバー30の外周部32に設けられた切り欠きと対応している部分(具体的には、エンドカバー30がヨーク5に取り付けられた際に、ヨーク5の周方向において上記の切り欠きと同じ位置に位置する部分)が切り欠かれている。これにより、本実施形態では、エンドカバー30に形成された吸気孔35を含む、ヨーク5内への空気の取り込み口がより拡がっており、ヨーク5内に空気を取り込み易くなっている。
【0041】
次に、ファンモータ1の動作について説明する。
上記構成のファンモータ1において、ステータ4からの回転磁束がロータ3に対して供給されると、ロータ3がシャフト2と一体的に回転し、ロータ3の回転に伴ってファンボス10及び冷却用ファン11も回転する。冷却用ファン11が回転すると、図1中、矢印S1にて示す方向の気流(冷却気流)が発生し、この気流は、シャフト2の軸方向においてエンドハウジング20が取り付けられている側(一端側)からエンドカバー30が取り付けられている側(他端側)へ向かうので、ファンモータ1の一端側、特にシャフト2の先端部近傍の範囲が負圧になる。
【0042】
この結果、エンドハウジング20に設けられた通気孔29からファンモータ1内の空気がファンモータ1外へ排出される(吸い出される)ようになる。以上のように、本実施形態では、シャフト2先端部近傍に発生する負圧を利用して、通気孔29を通じたファンモータ1内の空気の排出を促進している。
【0043】
一方、通気孔29から排出された分、ファンモータ1内には、上記の吸気孔35を通じて外気が吸気される(取り込まれる)ようになる。この結果、ファンモータ1内に、吸気孔35から通気孔29に向かって流れる冷却風が発生するようになる。これにより、ヨーク5内部に収容されたファンモータ1各部(具体的には、ロータ3やステータ4)を冷却することが可能になる。なお、本実施形態では、シャフト2の軸方向において通気孔29と吸気孔35とが互いに反対側に位置するようになるので、ファンモータ1内において、冷却風は軸方向他端側(吸気孔35側)から一端側(通気孔29側)に向けて流れ、この結果、ファンモータ1各部を効率よく冷却することが可能になる。
【0044】
また、本実施形態では、ファンボス10の内側でシャフト2の先端部を取り囲むように並べられた複数のフィンリブ15によって、上記の通気孔29から排出された空気が、速やかにシャフト2の先端部近傍から排除されるように送気される。この結果、シャフト2の先端部近傍の範囲における負圧がより大きくなり、通気孔29を通じたファンモータ1内の空気の排出が更に促進されることになる。
【0045】
ところで、冷却用ファン11が回転している間、ファンモータ1内部ではロータ3が回転しており、ロータ3の回転の作用により、ファンモータ1内を流れる冷却風の向きは、エンドハウジング20付近でロータ3の径方向外側に向かう成分を有するようになる。この際、図5に示すように、上記冷却風の排出口となる孔50がエンドハウジング20の径方向中央部(具体的には、中間部23)に設けられていると、冷却風をスムーズにファンモータ1外に排出することが困難となる。つまり、孔50がエンドハウジング20の径方向中央部に設けられている構成では、図6に示すように、ロータ3の径方向外側に向かう冷却風が孔50を通り過ぎてしまう可能性がある。
【0046】
これに対して、本実施形態では、各通気孔29が上記の径方向においてエンドハウジング20の外縁寄りに位置するように形成されている。すなわち、本実施形態において各通気孔29はロータ3の径方向外側に向かって流れる冷却風に面するように形成されており、この結果、図4に示すように、冷却風がスムーズに各通気孔29から排出されるようになる。また、本実施形態において、各通気孔29は、エンドハウジング20の径方向において通気孔29を挟んで並ぶ2つの領域がエンドハウジング20の厚み方向(ファンモータ1が完成した状態でのシャフト2の軸方向に相当する)において互いに重ならないように形成されているので、上記の冷却風は、前述したように、ロータ3の径方向に沿ってスムーズに通気孔29を通過するようになる。この結果、本実施形態では、エンドハウジング20の径方向中央部に同じ大きさや形状の孔50を設けた場合に比して、ファンモータ1内を流れる冷却風を効率よくファンモータ1外に排出することが可能になる。
【0047】
さらに、本実施形態では、各通気孔29がエンドハウジング20の径方向において通気孔29を挟んで並ぶ2つの領域が当該径方向において互いに重ならないように形成されている。この結果、ロータ3の径方向に沿って冷却風がスムーズに通気孔29を通過する効果と相俟って、通気孔29を通じた冷却風の排出をよりスムーズに行うことが可能になる。すなわち、エンドハウジング20付近での冷却風の流れは、ロータ3の径方向外側に向かう成分の他、シャフト2の軸方向一端側に向かう成分を有するため、上記のように形成された通気孔29であれば、冷却風の一部がシャフト2の軸方向一端側に向かって流れていたとしても、当該冷却風をスムーズに排出することが可能になる。
【0048】
さらに、本実施形態では、通気孔29がロータ3の回転方向に沿って間隔を設けながら輪状に並ぶようにエンドハウジング20に複数形成されている。これにより、ファンモータ1内部を流れる冷却風をより一層スムーズにファンモータ1外に排出することが可能になる。すなわち、エンドハウジング20付近において冷却風の流れは、ロータ3の回転の作用(具体的には、回転によって生じる遠心力)により、ロータ3の回転方向に沿う成分をも有するようになる。このため、通気孔29がロータ3の回転方向に沿って複数形成されていれば、図7に示すように、冷却風の一部がロータ3の回転方向に沿って流れていたとしても、当該冷却風をスムーズに排出することが可能になる。
【0049】
<<本実施形態に係る車両用ファンモータの有効性について>>
本実施形態に係るファンモータ1では、エンドハウジング20がヨーク5とは別体を成しており、エンドハウジング20の径方向において外縁寄りに上述の通気孔29が形成されている。これにより、ファンモータ1内部を冷却するために形成される通気孔29を、ファンモータ1内部を冷却する上で適切な位置に、より容易な手順にて設けることが可能となる。
【0050】
すなわち、以上までに説明してきたように、本実施形態では、ファンモータ1内部を流れる冷却風をスムーズに排出する目的から、通気孔29がエンドハウジング20の外縁寄りに位置し、かつ、エンドハウジング20の径方向において通気孔29を挟んで並ぶ2つの領域がエンドハウジング20の厚み方向において互いに重ならないように通気孔29が形成されている。
【0051】
ただし、発明が解決しようとする課題の項で説明したように、エンドハウジングとヨークとが一体成形された構成では、上述の通気孔29を設けるにあたり、当該一体成形品としてのヨークに対して屈曲加工等の複雑な加工を施す必要がある。つまり、通気孔29を設けるにあたり、上記のヨークのうち、エンドハウジングに相当する部分のみを加工しようとする場合であっても、ヨーク全体を取り扱うことになるため、作業が複雑化していた。
【0052】
これに対して、本実施形態では、通気孔が形成されるエンドハウジング20と、ヨーク5とが互いに別部材となっているので、エンドハウジング20単独で加工することが可能となり、例えば、エンドハウジング20のプレス加工の際に通気孔29を形成することができるので、より容易な手順にて通気孔29を設けることが可能になる。
【0053】
なお、通気孔29の形成位置及びサイズ、形状については、ファンモータ1の仕様に基づいてファンモータ1内部を流れる冷却風の流れをシミュレーションし、その結果に応じて最適なものを設定することが望ましい。例えば、通気孔29の形成位置については、ファンモータ1作動中におけるロータ3の回転への影響を考慮して、エンドハウジング20付近における圧力分布(気圧分布)をシミュレーションし、気圧が最も高くなる位置に通気孔29の形成位置を設定すればよい。
【0054】
<<その他の実施形態について>>
上記の実施形態では、主として本発明の回転電機について説明した。しかし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0055】
例えば、上記の実施形態では、インナーロータ型のブラシレスDCモータにより構成されたファンモータ1について説明したが、これに限定されるものではなく、アウターロータ型のブラシレスDCモータにも本発明は適用可能である。すなわち、ヨーク5自体が回転軸と一体的に回転する構成であっても、本発明は適用可能である。
【0056】
また、上記の実施形態では、ブラシレスDCモータにより構成されたファンモータ1について説明したが、これに限定されるものではなく、ブラシ付きモータにも本発明は適用可能である。すなわち、ブラシ付きモータ内部を冷却するために形成される孔を適切な位置に、より容易な手順にて設ける目的のために、ブラシ付きモータに対して本発明を適用することが可能である。そして、本発明を適用したブラシ付きモータによれば、従来のブラシ付きモータに比して、モータ内部を効率よく冷却することが可能となり、ブラシの長寿命化を達成することが可能になる。
【0057】
また、上記の実施形態では、通気孔29がエンドハウジング20に形成され、吸気孔35が、シャフト2の軸方向においてエンドハウジング20とは反対側に位置しているエンドカバー30に形成されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、通気孔29及び吸気孔35の双方がエンドハウジング20側に形成されていることとしてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、回転電機の一例として、車両を冷却するための車両用ファンモータを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、他の用途のモータ(例えば、ウィンドウ等の開閉部材を開閉するために駆動するモータ)にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ファンモータ、2 シャフト、3 ロータ、
4 ステータ、4a マグネット片、5 ヨーク、
6 積層コア、6a コアシート、7a,7b 軸受、
10 ファンボス、11 冷却用ファン、12 側壁部、
13 底壁部、13a 陥没部、13b 円筒部、
14 嵌合部材、15 フィンリブ、
15a 側壁部12の内周面から内側に張り出した部分、
15b 底壁部13の裏面から立設した部分、
20 エンドハウジング、21 挿通孔、
22 外縁部、23 中間部、24 内側部、
25 連結部、26 軸支持部、27 傾斜連結部、
28 補強リブ、29 通気孔、
30 エンドカバー、31 底壁部、32 外周部、
33 軸支持部、34 鍔状部分、35 吸気孔、
40 シュラウド、50 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する回転軸と、
該回転軸の軸方向の一端に開口端を備え、前記回転軸を内部に収容したヨークと、
該ヨークの前記開口端に取り付けられるカバー部材と、を有し、
該カバー部材は、前記ヨークとは別体をなしており、
前記カバー部材には、前記ヨークの内部と前記ヨークの外部とを連通させるための孔が形成され、
該孔は、前記回転軸の径方向において前記カバー部材の外縁寄りに位置し、前記カバー部材中、前記径方向において前記孔を挟んで並ぶ2つの領域が前記軸方向において互いに重ならないように形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記孔は、前記2つの領域が前記径方向において互いに重ならないように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記回転軸を回転自在に支持し、
前記孔は、前記回転軸の回転方向に沿って間隔を設けながら輪状に並ぶように前記カバー部材に複数形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記カバー部材のうち、前記回転方向において互いに隣り合う前記孔同士の間に位置する領域には補強リブが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ヨークの前記軸方向の両端が開口端であり、
前記軸方向において一端側にある前記開口端に前記カバー部材が取り付けられており、
前記軸方向において他端側にある前記開口端に他のカバー部材が取り付けられており、
該他のカバーには、前記ヨーク内に吸気するための吸気孔が形成されており、
前記孔は、前記ヨーク内の空気を前記ヨーク外へ通気させるための通気孔であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記回転軸の前記軸方向の両端部のうち、前記カバー部材が取り付けられている側の端部に冷却用ファンが回転可能に取り付けられており、
前記回転軸が回転することにより、前記冷却用ファンが前記回転軸と一体的に回転することを特徴とする請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記冷却用ファンは、筒状のファンボスを介して前記回転軸の前記軸方向の端部に取り付けられており、
前記ファンボスは、前記回転軸の、前記カバー部材が取り付けられている側の端部を取り囲むように前記回転方向に沿って輪状に並ぶ複数のフィンリブが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
前記回転電機は、車両用ファンモータであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−106411(P2013−106411A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247758(P2011−247758)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】