説明

図形要素編集装置、図形要素編集装置のスクロール方法、図形要素編集プログラム、及び、その記憶媒体

【課題】画面をスクロールする場合に、図形要素の判別が容易な図形要素編集装置、図形要素編集装置のスクロール方法、図形要素編集プログラム、及び、その記憶媒体、を提供すること。
【解決手段】図形データ37の全体図を第1表示部に表示する全体表示手段31と、第2表示部に全体図を表示するサブウィンドウ表示手段33と、第2表示部を複数のセル領域に分割する画面分割手段32と、セル領域を第1表示部に拡大して表示する画面拡大手段35と、第2表示部のセル領域に、第1表示部に拡大して表示しているセル領域を明示する現在表示セル明示手段34と、を有し、入力手段27によりセル領域の切り替え指示が入力された場合、画面拡大手段は、セル領域を第1表示部に拡大して表示し、現在表示セル明示手段は拡大して表示されたセル領域を明示すると共に、過去に第1表示部に拡大して表示したセル領域を明示する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、図形データに基づいて形成される図形要素を表示装置に表示する図形要素編集装置等に関し、特に、図形データの全体をスクロールして表示可能な図形要素編集装置、図形要素編集装置のスクロール方法、図形要素編集プログラム、及び、その記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータを利用して工業製品や回路の設計などを支援するいわゆるCADでは、コンピュータ画面(以下、単に画面という)上に、被設計物を構成する種々の形状の図形要素を表示する。オペレータは所望の図形要素を確認したり編集するため、画面をスクロールしたりスクロールしながら該図形要素を眼で追いかける作業を繰り返す。
【0003】
画面のスムースなスクロールのため、表示範囲が図面端を超える場合に図面端を超えた表示領域の図面を読み込み、元の表示範囲と共に画面に表示する図形エディタが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このように図面端を超えた部分を読み込み元の表示範囲に接合して表示することで、表示範囲毎に画面全体を切り替えることなくスムースな画面表示が可能になる。しかしながら、特許文献1記載の表示方法は画面をスクロールするのと同等であるため、オペレータは次のような作業が必要である。
【0004】
図14(a)は画面に表示された図形の一例を示す。例えば、オペレータが図14(a)の太線101の接続先を確認する場合、画面の表示範囲に接続先が表示されていればよいが、画面をスクロールして表示範囲を移動する必要がある場合が多い。このスクロールの方法として、CADではマウスを操作する方法とスクロールバーを利用する方法がサポートされている。
【0005】
マウスを操作する場合、ポインタの位置にかかわらず左右のクリックボタンの真ん中にある中ボタンを押下した状態でマウスをドラッグすると、ドラッグした方向に画面がスクロールする。また、中ボタンを押下して離し、その後マウスをドラッグするとドラッグした方向にゆっくりと画面をスクロールさせることができる。中ボタンとホイールが一体となったマウスでは、ホイールを回転させることで回転方向に画面をスクロールさせることができる。
【0006】
また、図14(e)はスクロールバーの一例を示す。図14(e)は上下方向のスクロールバーを示すが水平方向も同様である。スクロールバーを使用する場合、スクロールバーの上下に設けられた矢印ボタン102,104、をマウスでクリックすれば、予め定めた所定量、矢印の方向に瞬間的に画面が移動する。また、スクロールボックス103をドラッグするとドラッグ方向に画面をスクロールすることができる。また、スクロールボックス103と矢印ボタン102、104の間の領域105、106をクリックすると、矢印ボタン102,104をクリックするよりも大きい範囲で予め定めた所定量、瞬間的に画面を移動させることができる。
【特許文献1】特開平5−151334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、マウスを操作するスクロール方法又はスクロールバーを使用する方法では、どこからでも上下方向又は水平方向にスクロールできるため、スクロール前後の図形要素の位置関係が不明確になり、スクロール中に図形要素を見失うおそれがあるという問題がある。図14(a)に示すように、太線101の接続先を確認するため画面をスクロールしていても太線101が図14(b)又は図14(d)のように非直線部分を有すると太線101の画面内の位置が変わるためこれを眼で追いかけることが困難になる。また、太線101や周囲の線の太さが徐々に変化するような場合、これらが直線のみで構成されていても図形要素の判別を誤るおそれが大きい。
【0008】
また、スクロールバーの矢印ボタン102,104又は領域105、106を利用してスクロールする場合、画面が瞬間的に切り替り、太線101の画面内の位置も瞬間的に変わるため、太線101の位置を把握することは決して容易でない。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、画面をスクロールする場合に、図形要素の判別が容易な図形要素編集装置、図形要素編集装置のスクロール方法、図形要素編集プログラム、及び、その記憶媒体、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み、本発明は、図形データに基づいて形成される図形要素を表示装置に表示する図形要素編集装置において、図形データの全体図を第1表示部に表示する全体表示手段と、第1表示部よりも小さい第2表示部に全体図を表示するサブウィンドウ表示手段と、第2表示部を複数のセル領域に分割する画面分割手段と、セル領域を第1表示部に拡大して表示する画面拡大手段と、第2表示部のセル領域に、第1表示部に拡大して表示しているセル領域を明示する現在表示セル明示手段と、第1表示部に拡大して表示されるセル領域の切り替え指示を入力するための入力手段と、を有し、入力手段によりセル領域の切り替え指示が入力された場合、画面拡大手段は、所定のセル領域を第1表示部に拡大して表示し、現在表示セル明示手段は、第1表示部に拡大して表示しているセル領域を明示すると共に、過去に第1表示部に拡大して表示したセル領域を明示する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、分割したセル領域を単位にスクロールするので常に一定のスクロール量で画面をスクロールでき、サブウィンドウに現在表示しているセル領域が明示されるので、図形要素を見失うことを防止できる。また、すでに拡大表示したセル領域が明らかなので、図形要素の見落としがなくなる。
【0012】
また、本発明は、図形データに基づいて形成される図形要素を表示装置に表示する図形要素編集装置において、図形データの全体図を第1表示部に表示する全体表示手段と、第1表示部よりも小さい第2表示部に全体図を表示するサブウィンドウ表示手段と、ポインティングデバイスにより選択された図形要素の外接矩形を生成する要素外接矩形生成手段と、外接矩形を複数のセル領域に分割する画面分割手段と、セル領域を第1表示部に拡大して表示する画面拡大手段と、第2表示部のセル領域に、第1表示部に拡大して表示しているセル領域を明示する現在表示セル明示手段と、第1表示部に拡大して表示されるセル領域の切り替え指示を入力するための入力手段と、を有し、入力手段によりセル領域の切り替え指示が入力された場合、画面拡大手段は、所定の前記セル領域を第1表示部に拡大して表示し、現在表示セル明示手段は、第1表示部に拡大して表示しているセル領域を明示すると共に、過去に第1表示部に拡大して表示したセル領域を明示する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、分割したセル領域を単位にスクロールするので常に一定のスクロール量で画面をスクロールでき、サブウィンドウに現在表示しているセル領域が明示されるので、図形要素を見失うことを防止できる。また、すでに拡大表示したセル領域が明らかなので、図形要素の見落としがなくなる。また、選択された図形要素の外接矩形をセル領域に分割するので不要なスクロールを少なくすることができる。
【0014】
また、本発明の一形態において、画面拡大手段は、セル領域を含み該セル領域よりも予め指定された領域だけ広い拡張セル領域を第1表示部に拡大して表示するオーバーラップ表示手段を有し、現在表示セル明示手段は、前記拡張セル領域を第2表示部に明示する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、オーバーラップ量を指定できるので、オペレータの好みや図形要素の特徴に応じてオーバーラップしながらセル領域単位で画面をスクロールでき、スクロール量が足りずに再度スクロールしたり、スクロールしすぎたりすることが防止できる。
【0016】
また、本発明の一形態において、画面拡大手段は、ポインティングデバイスにより選択された図形要素が存在するセル領域のみ、第1表示部に拡大して表示する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、確認したい図形要素が存在するセル領域のみを拡大表示できるので、効率よくスクロールすることができる。
【発明の効果】
【0018】
画面をスクロールする場合に、図形要素の判別が容易な図形要素編集装置、図形要素編集装置のスクロール方法、図形要素編集プログラム、及び、その記憶媒体、を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1(a)は図形要素編集装置10の斜視図の一例を示す。図形要素編集装置10は、コンピュータシステムから構成されており、コンピュータ本体11、ディスプレイ12、キーボード13、マウス14を有するように構成されている。コンピュータ本体11は、予めインストールされた図形要素編集プログラムに基づいて動作する。図形要素編集プログラムは製品の図形データをディスプレイ12に表示すると共に、ユーザの操作を入力にして画面をスクロールしながら線や円形など図形を構成する図形要素を表示する。
【0021】
図1(b)は、図形要素編集装置10のハードウェア構成図の一例を示す。コンピュータ本体11はそれぞれバスで相互に接続されているCPU21、RAM22、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置23、表示制御部24、ドライブ装置25、通信装置26及び入力装置27、を有するように構成される。
【0022】
CPU21は、OSやアプリケーションなどのプログラムを記憶装置23から読み込んで実行することで種々の機能を提供すると共に、コンピュータ本体11が行う処理を統括的に制御する。RAM22はOSやプログラム、データを一時保管する作業領域となる。記憶装置23は、OS、図形要素編集プログラム等を記憶している。表示制御部24は、プログラムが指示する画面情報に基づき所定の解像度や色数等で液晶などのディスプレイ12に描画する。例えば、GUI(Graphical User Interface)画面を形成し、図形要素編集装置10の操作に必要な各種ウィンドウやメニューボタン等をディスプレイ12に表示する。ドライブ装置25は記憶媒体28が挿入可能に構成されており、記憶媒体28に記憶されたデータを読み取って記憶装置23等に送出する。記憶媒体28には図形要素編集プログラムが記憶されていて、ドライブ装置25がロードした図形要素編集プログラムは記憶装置23にインストールされる。通信装置26は、インターネットやLANなどのネットワークに接続するためのインターフェイスであり、例えばモデム、NIC(Network Interface Card)等で構成される。入力装置27はキーボード13やマウス14など、ユーザからの様々な操作指示を入力するためのデバイスである。
【0023】
図2は、CPU21が図形編集プログラムを実行して実現される図形要素編集装置10の機能ブロック図を示す。
【0024】
全体表示手段31は、所定の図形データ38の全体(以下、全体図という)をディスプレイ12の全面又は所定の最大表示領域に表示する。図形データ38の全体図とは、例えば、チップ搭載基板の1つの回路図、1つのICパッケージの回路図、1枚のプリント基板の回路図等、一体に扱われる図形データ38の全体である。所定の図形データ38の所定範囲のみを表示するものであってもよい。
【0025】
図3は図形編集プログラムが形成するGUIに表示された最大表示領域41の一例を示す。全体表示手段31は、記憶装置23から読み込んだ図形データ38の全体図を全体図の大きさに関わらず最大表示領域41に収まるように表示する。
【0026】
画面分割手段32は、最大表示領域41及びサブウィンドウ42に表示された全体図を分割する。最大表示領域41の縦方向と横方向をそれぞれ所定数に分割する。図3では、最大表示領域41とサブウィンドウ42の分割線を点線で示した。以下、分割により区分された矩形領域をセル領域という。
【0027】
図形編集プログラムが形成したツールバー43の分割ボタン43aをオペレータがクリックすると、画面分割手段32が予め定めたm×n(図では4×4)の領域に最大表示領域41及びサブウィンドウ42を分割する。分割数m×nは、オペレータが入力することも可能である。例えば、分割ボタン43aをクリック後、分割数ボタン43bをオペレータがクリックすると分割数m、nの入力欄が表示され、所望の数字が入力されると自動的に最大表示領域41が再分割される。
【0028】
画面拡大手段35は、分割された最大表示領域41のいずれかのセル領域を最大表示領域41に拡大して表示する。図形データ38がベクトルデータであればセル領域の図形要素を最大表示領域41にそのまま拡大表示でき、ビットマップデータの場合はスムージングやアンチエイリアスなどジャギー処理を施して拡大表示する。
【0029】
拡大されるセル領域は、オペレータが所望のセル領域をマウス14でクリックして選択されてもよいし、例えば左上のセル領域又は最後に拡大表示したセル領域を画面拡大手段35が自動的に抽出して拡大表示してもよい。
【0030】
サブウィンドウ表示手段33は全体図をサブウィンドウ42に表示する。したがって、所定のセル領域が最大表示領域41に拡大して表示され、全体図はサブウィンドウ42に縮小して表示される。上記のように、サブウィンドウ42も最大表示領域41と同じ分割数m×nに分割される。
【0031】
現在表示セル明示手段34は、現在拡大表示されているセル領域が全体図のどこに当たるかをサブウィンドウ42に明示する。例えば、セル領域Sを最大表示領域41に表示している場合、現在表示セル明示手段34はセル領域Sをハイライト表示したり、分割線の色を変えたり、分割線を点滅させるなどして拡大表示しているセル領域を明示する。
【0032】
また、画面拡大手段35はオーバーラップ表示手段36を有し、セル領域を拡大して表示する際に、セル領域を所定のマージンだけ広げて拡大表示することができる。このマージンをオーバーラップ量という。例えば、オーバーラップ表示手段36が作動している場合(機能がオンの場合)、画面拡大手段35はオーバーラップ表示手段36が指示するオーバーラップ量(例えば5〜10%)だけ他のセル領域を含めて最大表示領域41に拡大表示する。図でセル領域Sを拡大表示する場合、斜線の領域がオーバーラップ量となり、オーバーラップ量を含め拡大表示される。
【0033】
オーバーラップ量は、オペレータがツールバー43のオーバーラップ量指定ボタン43dをクリックすると入力することができるようになっている。オーバーラップ表示手段36は入力された値を画面拡大手段35に指示する。オーバーラップ量を指定できるので、オペレータの好みや図形要素の特徴に応じてオーバーラップしながらセル領域単位で画面をスクロールでき、スクロール量が足りずに再度スクロールしたり、スクロールしすぎたりすることが防止できる。
【0034】
したがって、セル領域を切り替えスクロールした場合、常に一定量、表示範囲がオーバーラップするので、オペレータは図形要素を確認しやすくなる。
【0035】
オペレータは、このように最大表示領域41に表示されるセル領域と全体図の関係を把握しながら拡大図をスクロールさせることができる。例えば、サブウィンドウ42において所望のセル領域をマウス14でクリックするとクリックしたセル領域が最大表示領域41に拡大表示され、カーソルキーを押下すると押下した矢印方向に隣接したセル領域が最大表示領域41に拡大表示される。
【0036】
スクロール方向指定手段37は、最大表示領域41に拡大表示されるセル領域のスクロール方向を指定する。スクロール方向指定手段37は、例えば、カーソルキーが押下されれば押下されたカーソルキーに応じてスクロール方向を指定し、又は、予め登録されているスクロール方法に基づきスクロール方向を指定する。オペレータは、登録されている複数のスクロール方法から選択可能となっている。
【0037】
図4はスクロール方法の一例を示す。選択可能なスクロール方法は、たとえば、「右方向」、「左方向」、「水平方向」、「ジクザグ」、「指定された図形要素の多いセル領域の順」、などである。図4(a)に示すように、「右方向」では、隣接した右のセル領域が順に選択され右端まで到達すると一行下の左端のセル領域から同様にセル領域をスクロールする。図4(b)に示すように、「左方向」では、隣接した左のセル領域が順に選択され右端まで到達すると一行下の右端のセル領域から同様にセル領域をスクロールする。図4(c)に示すように、「水平方向」では右方向又は左方向に隣接したセル領域をスクロールして、右又は左の端まで到達すると、下の行に移動して上の行と反対方向に隣接したセル領域をスクロールする。図4(d)に示すように、「ジグザグ」では、下方向又は上方向に隣接したセル領域をスクロールして、上又は下の端まで到達すると、右の列に移動して左の列と反対方向に隣接したセル領域をスクロールする。図4(e)に示すように、「指定された図形要素の多いセル領域の順」では、例えば、マウス14などで選択された図形要素(図では△)が多く描画されているセル領域から順番にスクロールする。
【0038】
このようなスクロール方法は、ツールバー43のスクロール方法ボタン43cをクリックすると選択できるようになっている。また、セル領域を切り替えるタイミングは、予め定めたキーが押下された時であってもよいし、所定時間毎に自動的に切り替わってもよい。
【0039】
すでに拡大表示したセル領域は、画面拡大手段35やサブウィンドウ表示手段33にとって既知であるので、サブウィンドウ表示手段33はサブウィンドウ42に移動直前のセル領域を明示する。図では移動直前のセル領域をマーク44で示した。なお、分割線の色を変えたり、分割線を点滅させるなど、拡大表示しているセル領域と区別可能な手法で明示してもよい。また、マーク44を移動直前のセル領域だけでなく、過去に拡大表示した全てのセル領域に表示してもよく、この場合、マーク44に連番を付して表示順を明らかにすることが好ましい。
【0040】
以上の構成に基づき、図形要素編集装置10が全体図をスクロールする手順を図5のフローチャート図に基づき説明する。
(S10)
オペレータの操作により図形要素編集装置10は、図形データ38を記憶装置23から読み出す。図3のように、オペレータは図形編集プログラムが形成するGUIのメニューから「ファイル」をクリックし、所望の図形データ38を選択する。
(S20)
全体表示手段31は読み込んだ図形データ38の全体図を最大表示領域41に表示する。図形データ38を読み込んだ後、自動的に最大表示領域41に表示してもよいし、所定のコマンドが実行された場合に表示してもよい。
【0041】
図6(a)は、全体図を表示した最大表示領域41及びサブウィンドウ42の一例を示す。この時点では最大表示領域41とサブウィンドウ42には全体図が縮尺を変えてそれぞれ表示される。
(S30)
ついで、オペレータから分割ボタン43aがクリックされると、画面分割手段32が全体図を分割する。分割数m×nは例えば予め指定されている。
【0042】
図6(b)は、4×4に分割された最大表示領域41及びサブウィンドウ42の一例を示す。この時点では、最大表示領域41とサブウィンドウ42のそれぞれが同様に分割される。
【0043】
なお、多段階に分割することもできる。図7は、2段階に分割された最大表示領域41とサブウィンドウ42を示す。この場合、サブウィンドウ42には、全体図42aと全体図42aの1つのセル領域を拡大して表示するセル領域図42bが表示され、最大表示領域41には、セル領域図42bをさらに分割したセル領域が拡大表示される。したがって、元の全体図に対し、セル領域図42bは4×4倍に、最大表示領域41は16×16に拡大されている。また、ステップS50で説明するように、全体図42aとセル領域図42bには、いずれも現在、拡大表示しているセル領域が明示される。
【0044】
また、最大表示領域41に拡大表示するセル領域の倍率を自動的に決定してもよい。この場合の倍率は元の図形データの所定の大きさの領域(例えば、配線幅が所定長となるように決定したり、5〔mm〕×5〔mm〕角を取り出したりするなど予め定められた大きさに決定する)を1つのセル領域となるように決定する。
【0045】
(S40、S50)
ついで、オペレータから最初に拡大表示するセル領域が選択されると、画面拡大手段35は選択されたセル領域を拡大表示する。また、平行してサブウィンドウ表示手段33は拡大表示しているセル領域を明示する。
【0046】
図8(a)は、左端列の2行目のセル領域を拡大表示する最大表示領域41及びサブウィンドウ42の一例を示す。最大表示領域41には当該セル領域の図形要素が拡大して表示され、また、サブウィンドウ42には左端列の2行目のセル領域が明示されている。図8(a)では、オーバーラップなしの場合とオーバーラップ有りの場合のサブウィンドウ42をそれぞれ示した。
【0047】
(S60、S70、S80)
そして、図形要素編集装置10は、入力装置27を介してオペレータからスクロール操作の入力があるか否かを判定し、スクロール操作が入力された場合、次のセル領域を拡大表示する。次のセル領域はカーソルキーで選択され、又は、予め登録されたスクロール方法に基づき決定される。
【0048】
図8(b)は、左端列の3行目のセル領域にスクロールした場合の最大表示領域41及びサブウィンドウ42の一例を示す。最大表示領域41には当該セル領域の図形要素が拡大して表示され、また、サブウィンドウ42には左端列の3行目のセル領域が明示されている。また、移動直前のセル領域(左端列の2行目のセル領域)には、マーク44が表示されている。
【0049】
このように、本実施例の図形要素編集装置10は、正確に上下方向又は水平方向に表示範囲が移動するため、図形要素を見失ったり誤って判別することが防止できる。拡大表示するセル領域をオーバーラップしながらスクロールできるので、図形要素を追いかけやすくすることができる。また、すでに確認した移動直前のセル領域にマークが表示されるので、見落としなく全てのセル領域を確認することができる。
【実施例2】
【0050】
実施例1では、全体図の全体を分割したがこの方法では所望の図形要素が含まれていないセル領域が存在し、そのセル領域までスクロールすることになる。所望の図形要素が存在しないセル領域をスクロールすると作業効率が低下するため、本実施例では所定の図形要素が存在する領域のみを分割可能な図形要素編集装置10について説明する。
【0051】
図9は、CPU21が図形編集プログラムを実行して実現される図形要素編集装置10の機能ブロック図を示す。なお、図9において図2と同一構成部分には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0052】
図9の機能ブロック図は、要素外接矩形生成手段39を有する。要素外接矩形生成手段39は、選択された図形要素の外接矩形を生成する。例えば、ツールバー43の要素選択ボタン43eがマウス14でクリックされると、要素外接矩形生成手段39は、最大表示領域41からオペレータがマウス14で選択する図形要素を検出する。すると、要素外接矩形生成手段39は、選択された図形要素をトレースし、水平方向の左端座標と右端座標、上下方向の上端座標と下端座標(以下、4つの座標を最外座標という)を検出し、最外座標を含む矩形領域を生成する。また、選択された図形要素だけでなく、選択された図形要素に類似する図形要素が全体図に存在する場合、それらの外接矩形を色を変えて生成することができる。
【0053】
分割ボタン43aがクリックされると、画面分割手段32はこの外接矩形を予め定めたm×nの領域に分割する。したがって、最大表示領域41を分割するよりも1つのセル領域が狭くなる場合があるが、1つのセル領域の大きさが所定以下になる場合、画面分割手段32は分割数m、nを小さくしてセル領域の大きさを調整する。また、本実施例でも分割数ボタン43bを操作することで、分割数を指定することができる。
【0054】
また、本実施例では、スクロール方向指定手段37が、選択された図形要素が存在しないセル領域へのスクロールを禁止することができる。したがって、図4に示した登録されたスクロール方法を選択した場合、自動的に、選択された図形要素が存在するセル領域のみをスクロールする。また、オペレータが選択された図形要素が存在しないセル領域にカーソルキー等で移動しようとしてもスクロールできない。
【0055】
図形要素編集装置10が全体図の内、外接矩形をスクロールする手順を図10のフローチャート図に基づき説明する。
(S10)
オペレータの操作により図形要素編集装置10は、図形データ38を記憶装置23から読み出す。図3のように、オペレータは図形編集プログラムが形成するGUIのメニューから「ファイル」をクリックし、所望の図形データ38を選択する。
(S20)
全体表示手段31は読み込んだ図形データ38の全体図を最大表示領域41に表示する。図形データ38を読み込んだ後、自動的に最大表示領域41に表示してもよいし、所定のコマンドが実行された場合に表示してもよい。
【0056】
図11(a)は、全体図を表示した最大表示領域41及びサブウィンドウ42の一例を示す。この時点では最大表示領域41とサブウィンドウ42には全体図が縮尺を変えてそれぞれ表示される。
(S21)
ついで、オペレータから要素選択ボタン43eがクリックされ所定の図形要素が選択されると、要素外接矩形生成手段39は選択された図形要素を検出し、その最外座標から外接矩形を生成する。図11(a)において、例えば図形要素45が選択された場合、要素外接矩形生成手段39は図11(b)に示す外接矩形46を生成する。なお、最大表示領域41に外接矩形46が生成されると、サブウィンドウ表示手段33はサブウィンドウ42に同じ外接矩形46を生成する。
(S31)
ついで、オペレータから分割ボタン43aがクリックされると、画面分割手段32が外接矩形46を分割する。分割数m×nは例えば予め指定されている。
【0057】
図12(a)は、4×4に分割された最大表示領域41及びサブウィンドウ42の一例を示す。この時点では、最大表示領域41とサブウィンドウ42のそれぞれが同様に分割される。
【0058】
また、サブウィンドウ表示手段33は、選択した図形要素が存在するセル領域のみを例えばハイライト表示したり、色を変えて表示するなどしてオペレータに明示する。このような表示により、オペレータはスクロールすべきセル領域を容易に把握することができる。
【0059】
(S40、S50)
ついで、オペレータから最初に拡大表示するセル領域が選択されると、画面拡大手段35は選択されたセル領域を拡大表示する。また、平行してサブウィンドウ表示手段33は拡大表示しているセル領域を明示する。
【0060】
図12(b)は、左端列の4行目のセル領域を拡大表示する最大表示領域41及びサブウィンドウ42の一例を示す。最大表示領域41には当該セル領域の図形要素が拡大して表示され、また、サブウィンドウ42には左端列の4行目のセル領域が明示されている。図12(b)では、オーバーラップなしの場合とオーバーラップ有りの場合のサブウィンドウ42をそれぞれ示した。
【0061】
(S60、S71、S80)
そして、図形要素編集装置10は、オペレータからスクロールの操作があるか否かを判定し、スクロール操作が入力された場合、次のセル領域を拡大表示する。次のセル領域はカーソルキーで選択され、又は、予め登録されたスクロール方法から決定される。
【0062】
本実施例では、ステップS21で選択された図形要素が存在しないセル領域にはスクロールすることが禁止される。例えば、現在、最大表示領域41に左端列の4行目のセル領域が拡大表示されている場合、オペレータがカーソルキーによりその上のセル領域(左端列の3行目)を拡大表示しようとしても、サブウィンドウ42の明示枠が移動しない。また、自動的にスクロール先が決定される場合は、ステップS21で選択された図形要素が存在しないセル領域にスクロールすることがない。確認したい図形要素が存在するセル領域しか移動できないため、効率よく外接矩形46をスクロールすることができる。
【0063】
図13は、左から2列目の4行目のセル領域にスクロールした場合の最大表示領域41及びサブウィンドウ42の一例を示す。最大表示領域41には当該セル領域の図形要素が拡大して表示され、また、サブウィンドウ42には左から2列目の4行目のセル領域が明示されている。また、移動直前のセル領域(左端列の4行目のセル領域)には、マーク44が表示されている。
【0064】
本実施例の図形要素編集装置10は、実施例1の効果に加え、確認したい図形要素が存在するセル領域しか移動できないため、効率よく外接矩形46をスクロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図形要素編集装置の斜視図及びハードウェア構成図の一例である。
【図2】図形要素編集装置の機能ブロック図の一例である。
【図3】図形編集プログラムが形成するGUIに表示された最大表示領域の一例である。
【図4】スクロール方法の一例を示す図である。
【図5】図形要素編集装置が全体図をスクロールする手順を示すフローチャート図である。
【図6】全体図を表示した最大表示領域及びサブウィンドウの一例である。
【図7】2段階に分割された最大矩形表示領域とサブウィンドウの一例である。
【図8】左端列の2行目のセル領域を拡大表示する最大表示領域及びサブウィンドウの一例である。
【図9】図形要素編集装置の機能ブロック図の一例である(実施例2)。
【図10】図形要素編集装置が全体図の内、外接矩形をスクロールする手順のフローチャート図である。
【図11】全体図を表示した最大表示領域及びサブウィンドウの一例である。
【図12】4×4に分割された最大表示領域及びサブウィンドウの一例である。
【図13】左から2列目の4行目のセル領域にスクロールした場合の最大表示領域及びサブウィンドウの一例である。
【図14】従来において画面に表示された図形の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10 図形要素編集装置
11 コンピュータ本体
12 ディスプレイ
13 キーボード
14 マウス
21 CPU
22 RAM
23 記憶装置
24 表示制御部
25 ドライブ装置
26 通信装置
27 入力装置
28 記憶媒体
31 全体表示手段
32 画面分割手段
33 サブウィンドウ表示手段
34 現在表示セル明示手段
35 画面拡大手段
36 オーバーラップ表示手段
37 スクロール方向指定手段
38 図形データ
39 要素外接矩形生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図形データに基づいて形成される図形要素を表示装置に表示する図形要素編集装置において、前記図形データの全体図を第1表示部に表示する全体表示手段と、第1表示部よりも小さい第2表示部に前記全体図を表示するサブウィンドウ表示手段と、第2表示部を複数のセル領域に分割する画面分割手段と、前記セル領域を第1表示部に拡大して表示する画面拡大手段と、第2表示部の前記セル領域に、第1表示部に拡大して表示している前記セル領域を明示する現在表示セル明示手段と、第1表示部に拡大して表示される前記セル領域の切り替え指示を入力するための入力手段と、を有し、
前記入力手段により前記セル領域の切り替え指示が入力された場合、前記画面拡大手段は、所定の前記セル領域を第1表示部に拡大して表示し、
前記現在表示セル明示手段は、第1表示部に拡大して表示している前記セル領域を明示すると共に、過去に第1表示部に拡大して表示した前記セル領域を明示する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の図形要素編集装置。
【請求項2】
図形データに基づいて形成される図形要素を表示装置に表示する図形要素編集装置において、
前記図形データの全体図を第1表示部に表示する全体表示手段と、前記第1表示部よりも小さい第2表示部に前記全体図を表示するサブウィンドウ表示手段と、ポインティングデバイスにより選択された前記図形要素の外接矩形を第2表示部に生成する要素外接矩形生成手段と、前記外接矩形を複数のセル領域に分割する画面分割手段と、前記セル領域を第1表示部に拡大して表示する画面拡大手段と、第2表示部の前記セル領域に、第1表示部に拡大して表示している前記セル領域を明示する現在表示セル明示手段と、第1表示部に拡大して表示される前記セル領域の切り替え指示を入力するための入力手段と、を有し、
前記入力手段により前記セル領域の切り替え指示が入力された場合、前記画面拡大手段は、所定の前記セル領域を第1表示部に拡大して表示し、
前記現在表示セル明示手段は、第1表示部に拡大して表示している前記セル領域を明示すると共に、過去に第1表示部に拡大して表示した前記セル領域を明示する、
ことを特徴とする図形要素編集装置。
【請求項3】
前記画面拡大手段は、前記セル領域を含み該セル領域よりも指定された領域だけ広い拡張セル領域を第1表示部に拡大して表示するオーバーラップ表示手段を有し、
前記現在表示セル明示手段は、前記拡張セル領域を第2表示部に明示する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の図形要素編集装置。
【請求項4】
前記画面拡大手段は、ポインティングデバイスにより選択された前記図形要素が存在する前記セル領域のみ、第1表示部に拡大して表示する、
ことを特徴とする請求項2記載の図形要素編集装置。
【請求項5】
図形データに基づいて形成される図形要素を表示装置に表示する図形要素編集装置のスクロール方法において、
全体表示手段が、前記図形データの全体図を第1表示部に表示するステップと、
サブウィンドウ表示手段が、第1表示部よりも小さい第2表示部に前記全体図を表示するステップと、
画面分割手段が、第2表示部を複数のセル領域に分割するステップと、
画面拡大手段が、前記セル領域を第1表示部に拡大して表示するステップと、
現在表示セル明示手段が、第2表示部の前記セル領域に、第1表示部に拡大して表示している前記セル領域を明示するステップと、
入力手段により前記セル領域の切り替え指示が入力された場合、
前記画面拡大手段が、所定の前記セル領域を第1表示部に拡大して表示するステップと、前記現在表示セル明示手段が、第1表示部に拡大して表示している前記セル領域を明示すると共に、過去に第1表示部に拡大して表示した前記セル領域を明示するステップと、
を有することを特徴とする図形要素編集装置のスクロール方法。
【請求項6】
図形データに基づいて形成される図形要素を表示装置に表示する図形要素編集装置のスクロール方法において、
全体表示手段が、前記図形データの全体図を第1表示部に表示するステップと、
サブウィンドウ表示手段が、第1表示部よりも小さい第2表示部に前記全体図を表示するステップと、
要素外接矩形生成手段が、ポインティングデバイスにより選択された前記図形要素の外接矩形を第2表示部に生成するステップと、
画面分割手段が、前記外接矩形を複数のセル領域に分割するステップと、
画面拡大手段が、前記セル領域を第1表示部に拡大して表示するステップと、
現在表示セル明示手段が、第2表示部の前記セル領域に、第1表示部に拡大して表示している前記セル領域を明示するステップと、
入力手段により前記セル領域の切り替え指示が入力された場合、
前記画面拡大手段が、所定の前記セル領域を第1表示部に拡大して表示するステップと、前記現在表示セル明示手段が、第1表示部に拡大して表示している前記セル領域を明示すると共に、過去に第1表示部に拡大して表示した前記セル領域を明示するステップと、
を有することを特徴とする図形要素編集装置のスクロール方法。
【請求項7】
請求項5記載の図形要素編集装置のスクロール方法をコンピュータに実行させることを特徴とする図形要素編集プログラム。
【請求項8】
請求項6記載の図形要素編集装置のスクロール方法をコンピュータに実行させることを特徴とする図形要素編集プログラム。
【請求項9】
請求項7又は8記載の図形要素編集プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−217256(P2008−217256A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51795(P2007−51795)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】