説明

固体撮像装置

【課題】 一定のルールで区分された複数の領域からなる二値画像または多値画像を撮像し解析するのに好適な固体撮像装置を提供する。
【解決手段】 固体撮像装置1は、(1) 各画素Pm,nがフォトダイオードPD1m,n,PD2m,n,PD3m,nを含む光検出部10、(2) 選択した画素Pm,nのフォトダイオードPD1m,nの発生電荷量に応じた電圧値を出力する第1信号処理部30、(3) フォトダイオードPD2m,1〜PD2m,Nで発生した電荷を蓄積して電荷蓄積量に応じた電圧値を出力する第2信号処理部40、(4) フォトダイオードPD31,n〜PD3M,nで発生した電荷を蓄積して電荷蓄積量に応じた電圧値を出力する第3信号処理部50、(5) 第2および第3信号処理部の出力電圧値分布に基づいて、フォトダイオードPD1m,nの発生電荷量に応じた電圧値を第1信号処理部から出力するべき画素Pm,nを選択する制御部20、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元画像を撮像することができる固体撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2次元画像を撮像する固体撮像装置は、各々フォトダイオードを含むM×N個の画素がM行N列に2次元配列された光検出部を備える。この光検出部の各画素において、入射光強度に応じた量の電荷がフォトダイオードで発生して蓄積され、その電荷蓄積量に応じたデータが出力される。そして、この画素毎のデータに基づいて、光検出部に入射する光の像が得られる。
【0003】
ところで、このような固体撮像装置は、様々な用途に用いられ得るが、最近では、ホログラフィック記録再生技術に基づく光ディスク媒体からの情報読み取りへの適用が検討されている(非特許文献1を参照)。この技術に基づく情報読み取りでは、ホログラムが記録された光ディスクに対し参照光が照射され、この照射に伴って発生した再生光が固体撮像装置により撮像され、この撮像により得られた画像のパターンが解析されて、光ディスクにホログラムとして記録されていた情報が読み取られる。
【0004】
また、固体撮像装置は、2次元バーコードの情報を読み取る際にも用いられ得る。この場合、2次元バーコードが固体撮像装置により撮像され、この撮像により得られた画像のパターンが解析されて、2次元バーコードとして記録されていた情報が読み取られる。
【0005】
上記のような場合、固体撮像装置により撮像されて解析されるべき画像は、或る一定のルールで区分された複数の領域それぞれが明および暗の何れかである二値画像である。
【非特許文献1】掘米秀嘉、他、「離陸間近のホログラフィック媒体 2006年に200Gバイトを実現」、日経エレクトロニクス、2005.1.17、pp.105-114
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の固体撮像装置を用いて上記のような二値画像または多値画像を撮像し解析して情報を読み取ろうとする場合、一定のルールで区分された複数の領域を画定した上で、その画定した複数の領域それぞれの輝度を判断する必要がある。すなわち、固体撮像装置の光検出部に含まれる全ての画素について電荷蓄積量に応じたデータを獲得して、これらのデータにより構成される画像をプロセッサにより解析する必要がある。
【0007】
このことから、固体撮像装置からのデータ読出や画像解析の際に長時間を要し、或いは、高速化を図ろうとすれば高性能プロセッサが必要となってシステムコストが高くなる。特に、光ディスク媒体からの情報読み取りの際に固体撮像装置が用いられる場合には、データ読出や画像解析の高速化が要求されるところであるが、従来の固体撮像装置を用いたのでは当該高速化にも限界がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、一定のルールで区分された複数の領域からなる二値画像または多値画像を撮像し解析するのに好適な固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る固体撮像装置は、(1) M×N個の画素がM行N列に2次元配列され、第m行第n列にある画素Pm,nがフォトダイオードPD1m,n,フォトダイオードPD2m,nおよびフォトダイオードPD3m,nを含み、第m行にあるN個のフォトダイオードPD2m,1〜PD2m,Nが配線L2により電気的に接続されており、第n列にあるM個のフォトダイオードPD31,n〜PD3M,nが配線L3により電気的に接続されている光検出部と、(2) 光検出部のM×N個の画素のうちから選択した1以上の画素Pm,nについて、その選択した各画素Pm,nに含まれるフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値を出力する第1信号処理部と、(3) 各配線L2に接続されたN個のフォトダイオードPD2m,1〜PD2m,Nで発生した電荷を入力し蓄積して当該電荷蓄積量に応じた電圧値を出力する第2信号処理部と、(4) 各配線L3に接続されたM個のフォトダイオードPD31,n〜PD3M,nで発生した電荷を入力し蓄積して当該電荷蓄積量に応じた電圧値を出力する第3信号処理部と、(5) 第2信号処理部および第3信号処理部それぞれから出力される電圧値の分布に基づいて、フォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値を第1信号処理部から出力するべき画素Pm,nを選択し、その選択結果に基づいて第1信号処理部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。ただし、M,Nは2以上の整数であり、mは1以上M以下の任意の整数であり、nは1以上N以下の任意の整数である。
【0010】
本発明に係る固体撮像装置では、光検出部に含まれるM×N個の画素はM行N列に2次元配列されていて、第m行第n列にある画素Pm,nはフォトダイオードPD1m,n,フォトダイオードPD2m,nおよびフォトダイオードPD3m,nを含む。
【0011】
光検出部の第m行にあるN個のフォトダイオードPD2m,1〜PD2m,Nは配線L2により電気的に接続されている。各配線L2に接続されたN個のフォトダイオードPD2m,1〜PD2m,Nで発生した電荷は第2信号処理部に入力して蓄積され、当該電荷蓄積量に応じた電圧値が第2信号処理部から出力される。この第2信号処理部から出力される電圧値の分布は、光検出部に入射する光の強度の2次元分布を列方向について加算したもの(すなわち、光検出部に入射する光の強度の行方向の1次元分布)を表す。
【0012】
光検出部の第n列にあるM個のフォトダイオードPD31,n〜PD3M,nは配線L3により電気的に接続されている。各配線L3に接続されたM個のフォトダイオードPD31,n〜PD3M,nで発生した電荷は第3信号処理部に入力して蓄積され、当該電荷蓄積量に応じた電圧値が第3信号処理部から出力される。この第3信号処理部から出力される電圧値の分布は、光検出部に入射する光の強度の2次元分布を行方向について加算したもの(すなわち、光検出部に入射する光の強度の列方向の1次元分布)を表す。
【0013】
制御部により、第2信号処理部および第3信号処理部それぞれから出力される電圧値の分布に基づいて、フォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値を第1信号処理部から出力するべき画素Pm,nが選択され、その選択結果に基づいて第1信号処理部が制御される。そして、第1信号処理部により、光検出部のM×N個の画素のうちから選択した1以上の画素Pm,nについて、その選択した各画素Pm,nに含まれるフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値が出力される。
【0014】
また、本発明に係る固体撮像装置に含まれる第1信号処理部は、(a) 光検出部のM行のうちから何れかの行を選択して、その選択した行にある各画素Pm,nに含まれるフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値を配線L1へ出力させる行選択部と、(b) 各配線L1を経て入力した電圧値を保持し、その保持したN個の電圧値のうちから、光検出部のN列のうちの何れかの列に相当する電圧値を選択して出力する列選択部と、を含むのが好適である。
【0015】
この場合には、行選択部により、光検出部のM行のうちから何れかの行が選択されて、その選択した行にある各画素Pm,nに含まれるフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値が配線L1へ出力される。そして、列選択部により、各配線L1を経て入力した電圧値が保持され、その保持されたN個の電圧値のうちから、光検出部のN列のうちの何れかの列に相当する電圧値が選択されて出力される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る固体撮像装置は、一定のルールで区分された複数の領域からなる二値画像または多値画像を撮像し解析するのに好適なものであって、データ読出を高速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る固体撮像装置1の構成図である。この図に示される固体撮像装置1は、光検出部10、制御部20、第1信号処理部30、第2信号処理部40および第3信号処理部50を備える。
【0019】
光検出部10は、M行N列に2次元配列されたM×N個の画素P1,1〜PM,Nを含む。画素Pm,nは第m行第n列に位置している。各画素Pm,nは、互いに共通の構成を有していて、各々光入射に応じて電荷を発生するフォトダイオードPD1m,n,フォトダイオードPD2m,nおよびフォトダイオードPD3m,nを含む。ここで、M,Nは2以上の整数であり、mは1以上M以下の任意の整数であり、nは1以上N以下の任意の整数である。
【0020】
第m行にあるN個の画素Pm,1〜Pm,Nは、第1信号処理部30から共通の制御信号が与えられる。第n列にあるM個の画素P1,n〜PM,nは、共通の配線L1により第1信号処理部30と接続されている。各画素Pm,nから配線L1へ出力される電圧値は、該画素Pm,nに含まれるフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値である。
【0021】
第1信号処理部30は、光検出部10のM×N個の画素のうちから選択した1以上の画素Pm,nについて、その選択した各画素Pm,nに含まれるフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値を出力する。第1信号処理部30は行選択部31および列選択部32を含む。
【0022】
行選択部31は、光検出部10のM行のうちから何れかの行を選択して、その選択した行にある各画素Pm,nに含まれるフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値を配線L1へ出力させる。列選択部32は、各配線L1を経て入力した電圧値を保持し、その保持したN個の電圧値のうちから、光検出部10のN列のうちの何れかの列に相当する電圧値を選択して出力する。
【0023】
すなわち、第1信号処理部30は、光検出部10のM行のうちから何れかの行を行選択部31により指定するとともに、光検出部10のN列のうちから何れかの列を列選択部32により指定することにより、光検出部10のM×N個の画素のうちから選択した1以上の画素Pm,nについて、その選択した各画素Pm,nに含まれるフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値を出力することができる。
【0024】
第m行にあるN個の画素Pm,1〜Pm,Nに含まれるフォトダイオードPD2m,1〜PD2m,Nは、共通の配線L2により電気的に接続され、この配線L2により第2信号処理部40と接続されている。第2信号処理部40は、各配線L2に接続されたN個のフォトダイオードPD2m,1〜PD2m,Nで発生した電荷を入力し蓄積して、当該電荷蓄積量に応じた電圧値を出力する。この第2信号処理部40から出力される電圧値の分布Vv(m)は、光検出部10に入射する光の強度の2次元分布を列方向について加算したもの(すなわち、光検出部10に入射する光の強度の行方向の1次元分布)を表す。
【0025】
第n列にあるM個の画素P1,n〜PM,nに含まれるフォトダイオードPD31,n〜PD3M,nは、共通の配線L3により電気的に接続され、この配線L3により第3信号処理部50と接続されている。第3信号処理部50は、各配線L3に接続されたM個のフォトダイオードPD31,n〜PD3M,nで発生した電荷を入力し蓄積して、当該電荷蓄積量に応じた電圧値を出力する。この第3信号処理部50から出力される電圧値の分布Vh(n)は、光検出部10に入射する光の強度の2次元分布を行方向について加算したもの(すなわち、光検出部10に入射する光の強度の列方向の1次元分布)を表す。
【0026】
制御部20は、第2信号処理部40および第3信号処理部50それぞれから出力される電圧値の分布に基づいて、フォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値を第1信号処理部30から出力するべき画素Pm,nを選択し、その選択結果に基づいて第1信号処理部30を制御する。
【0027】
図2は、本実施形態に係る固体撮像装置1の光検出部10に含まれる各画素Pm,nの回路図である。各画素Pm,nは、APS(Active PixelSensor)構成のものであって、フォトダイオードPD1m,n,フォトダイオードPD2m,n,フォトダイオードPD3m,nおよび5個のFETトランジスタM1〜M5を含む。トランジスタM1のドレイン端子は基準電圧が入力される。トランジスタM1のソース端子はトランジスタM2のドレイン端子と接続されている。トランジスタM2のソース端子はフォトダイオードPD1m,nのカソード端子と接続されている。フォトダイオードPD1m,nのアノード端子は接地されている。
【0028】
トランジスタM3のドレイン端子はトランジスタM1のソース端子およびトランジスタM2のドレイン端子と接続されている。トランジスタM3のソース端子はトランジスタM4のゲート端子と接続されている。トランジスタM4のドレイン端子は基準電圧が入力される。トランジスタM4のソース端子はトランジスタM5のドレイン端子と接続されている。トランジスタM5のソース端子は、配線L1を介して第1信号処理部30と接続されている。トランジスタM4およびトランジスタM5は、ソースフォロワ回路を構成している。
【0029】
トランジスタM1のゲート端子はVreset(m)信号が入力される。トランジスタM2のゲート端子はVtrans(m)信号が入力される。トランジスタM3のゲート端子はVhold(m)信号が入力される。また、トランジスタM5のゲート端子はVadrs(m)信号が入力される。これらVreset(m)信号,Vtrans(m)信号,Vhold(m)信号およびVadrs信号(m) は、制御部20からの指示に基づいて、行選択部31から光検出部10の第m行にあるN個の画素Pm,1〜Pm,Nに対して共通に出力される。
【0030】
Vreset(m)信号およびVtrans(m)信号がハイレベルであると、フォトダイオードPD1m,nの接合容量部は放電され、さらにVhold(m)信号もハイレベルであると、トランジスタM4のゲート端子の電位も初期化される。Vtrans(m)信号がローレベルであると、光入射に応じてフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷は接合容量部に蓄積される。Vreset(m)信号がローレベルであって、Vtrans(m)信号およびVhold(m)信号がハイレベルであると、フォトダイオードPD1m,nの接合容量部に蓄積されていた電荷はトランジスタM4のゲート端子に転送され、Vadrs信号(m)がハイレベルであると、その電荷量に応じた電圧値が配線L1へ出力される。
【0031】
第m行にあるN個のフォトダイオードPD2m,1〜PD2m,Nは、配線L2により電気的に接続されており、この配線L2を介して第2信号処理部40と接続されている。第2信号処理部40は、各配線L2を経て入力した電荷を蓄積して当該電荷蓄積量に応じた電圧値を出力する。また、第n列にあるM個のフォトダイオードPD31,n〜PD3M,nは、配線L3により電気的に接続されており、この配線L3を介して第3信号処理部50と接続されている。第3信号処理部50は、各配線L3を経て入力した電荷を蓄積して当該電荷蓄積量に応じた電圧値を出力する。
【0032】
図3は、本実施形態に係る固体撮像装置1の第1信号処理部30に含まれる列選択部32の回路図である。列選択部32は、N個のホールド回路33〜33、デコーダ回路34、減算回路35および2N個のスイッチSW31,1〜SW3N,2を含む。
【0033】
各ホールド回路33は、光検出部10の何れかの行の画素Pm,nから配線L1に出力された電圧値を入力して保持し、その保持した電圧値を出力する。各ホールド回路33は互いに異なる2つの時刻それぞれの電圧値を保持することができ、その場合、一方の電圧値はノイズ成分であり、他方の電圧値はノイズ成分が重畳された光出力成分である。なお、各配線L1には定電流源が接続されている。
【0034】
デコーダ回路34は、制御部20からの指示に基づいて、スイッチSW3n,1,SW3n,2の開閉を制御するためのHadrs(n)信号を出力する。N個のHadrs(1)信号〜Hadrs(N)信号のうちの2以上の信号が同時にハイレベルとなることはなく、N個のHadrs(1)信号〜Hadrs(N)信号のうちの何れかの信号が順次にハイレベルとなる。
【0035】
各ホールド回路33の出力側に設けられたスイッチSW3n,1,SW3n,2は、デコーダ回路34から出力されるHadrs(n)信号がハイレベルであるときに閉じて、ホールド回路33から出力される2つの電圧値を減算回路35に入力させる。減算回路35は、入力した2つの電圧値の差に応じた電圧値Videoを出力する。
【0036】
図4は、本実施形態に係る固体撮像装置1の第2信号処理部40の回路図である。第2信号処理部40は、M個のDフリップフロップ41〜41、積分回路42およびM個のスイッチSW4〜SW4を含む。M個のDフリップフロップ41〜41は、縦続接続されていて、シフトレジスタを構成している。このシフトレジスタが動作することにより、M個のDフリップフロップ41〜41それぞれのQ出力端子から出力される論理レベルは順次にハイレベルとなり、M個のスイッチSW4〜SW4は順次に閉じて、M本の配線L2〜L2は順次に積分回路42に接続される。積分回路42は、互いに並列的に接続された容量素子CおよびスイッチSWがアンプAの入力端子と出力端子との間に設けられたものである。この積分回路42は、スイッチSWが所定のタイミングで開閉することにより、入力した電荷を容量素子Cに蓄積し、その蓄積した電荷の量に応じた電圧値を出力することができる。
【0037】
この第2信号処理部40の積分回路42から出力される電圧値は、配線L2に接続される第m行のN個のフォトダイオードPD2m,1〜PD2m,Nそれぞれで発生した電荷の総和に応じたものであり、各行について順次に出力される。すなわち、この第2信号処理部40の積分回路42から出力される電圧値の分布Vv(m)は、光検出部19に入射する光の強度の2次元分布を列方向について加算したもの(すなわち、光検出部10に入射する光の強度の行方向の1次元分布)を表す。
【0038】
第3信号処理部50の構成は、第2信号処理部40の構成と同様である。第3信号処理部50から出力される電圧値は、配線L3に接続される第n列のM個のフォトダイオードPD31,n〜PD3M,nそれぞれで発生した電荷の総和に応じたものであり、各列について順次に出力される。すなわち、この第3信号処理部50から出力される電圧値の分布Vh(n)は、光検出部10に入射する光の強度の2次元分布を行方向について加算したもの(すなわち、光検出部10に入射する光の強度の列方向の1次元分布)を表す。
【0039】
次に、本実施形態に係る固体撮像装置1の読み出したい画素のみを読み出す動作を示す動作例について図5および図6を用いて説明する。以下に説明する動作は制御部20による制御の下に行われる。図5は、本実施形態に係る固体撮像装置1の光受光部10に到達する光の強度の2次元分布を示す図である。この図に示されるように、光受光部10に到達する光の像は、各々一定面積である16個の実線で示される正方形領域が4行4列に配列されていて、各々の領域が明および暗の何れかである二値の像である。図中で読み出したい領域は右上がりのハッチングで示されている。また、各2行2列を囲む形でマーカ行およびマーカ列が設けられ、これらは、例えば明領域とされ、図中では右下がりのハッチングで示されている。また、破線で囲まれた矩形領域が一つの画素に相当する。ここで、読み出したい領域は、マーカ行、マーカ列に対する位置が、外部から制御部20へ指定される。
【0040】
この場合に、第2信号処理部40から出力される電圧値分布Vv(m)は、凡そ、行範囲RvM1、RvM2およびRvM3それぞれでは値が他の行範囲に比べて大きくなり、マーカ行を特定することができる。また、第3信号処理部50から出力される電圧値分布Vh(n)は、凡そ、列範囲RhM1,RhM2およびRhM3それぞれでも値が他の列範囲に比べて大きくなり、マーカ列を特定することができる。マーカ行とマーカ列が特定できることにより、外部から制御部20へ指定される読み出すべき正方形領域が特定できることになる。
【0041】
各正方形領域は全体が明および暗の何れかであるから、各正方形領域中の1画素(例えば、各正方形領域の中心位置にある画素)に入射する光の強度を求めればよい。したがって、図中に示すように、行範囲Rv1の中心行を第m1行とし、行範囲Rv2の中心行を第m2行とし、行範囲Rv3の中心行を第m3行とし、行範囲Rv4の中心行を第m4行とし、列範囲Rh1の中心列を第n1列とし、列範囲Rh2の中心列を第n2列とし、列範囲Rh3の中心列を第n3列とし、列範囲Rh4の中心列を第n4列とすると、第m1行にある2個の画素Pm1,n3,Pm1,n4、第m2行にある2個の画素Pm2,n3,Pm2,n4、第m3行にある1個の画素Pm3,n1,および、第m4行にある1個の画素Pm4,n3の、計6個の読み出したい領域中の1画素について、入射光の強度を求めればよい。
【0042】
これら6個の画素について入射光強度を求めるに際して、第m1行,第m2行,第m3行および第m4行それぞれにある画素Pm,nについてのみフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷を同時に蓄積することとしてもよいし、M×N個の画素の全てについてフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷を同時に蓄積することとしてもよい。前者の場合、光検出部10の第m1行,第m2行,第m3行および第m4行それぞれにある画素に対して、行選択部31から、Vreset(m)信号,Vtrans(m)信号およびVhold(m)信号が共通に与えられて、これらの画素において同時にフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷が接合容量部に蓄積される。また、後者の場合、光検出部10の全画素に対して、行選択部31から、Vreset(m)信号,Vtrans(m)信号およびVhold(m)信号が共通に与えられて、全画素において同時にフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷が接合容量部に蓄積される。
【0043】
光検出部10の各画素においてフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷が接合容量部に蓄積された後、光検出部10から第1信号処理部30の列選択部32へデータ転送が行われる。このデータ転送は、第m1行,第m2行,第m3行および第m4行それぞれについてのみ行われる。すなわち、行選択部31から出力されるM個のVadrs(m)信号のうち、Vadrs(m1)信号,Vadrs(m2)信号,Vadrs(m3)信号およびVadrs(m4)信号の4つの信号が順次にハイレベルとなり、各行の画素Pm,nから出力されるデータがホールド回路33により保持される。
【0044】
また、光検出部10の何れかの行の画素Pm,nから出力されたデータがホールド回路33により保持された後、各ホールド回路33から減算回路35へデータが出力される。このデータ出力は、第m1行の場合は第n3列と第n4列についてのみ行われ、第m2行の場合は第n3列と第n4列についてのみ行われ、第m3行の場合は第n1列についてのみ行われ、また、第m4行の場合は第n3列についてのみ行われる。すなわち、デコーダ回路34から出力されるN個のHadrs(n)信号のうち、各行のデータを読み出すときにHadrs(n1)信号,Hadrs(n3)信号およびHadrs(n4)信号の3つの信号のうち読み出したい列を示す信号のみが順次にハイレベルとなり、ホールド回路33n1,ホールド回路33n3 およびホールド回路33n4 それぞれから順次に減算回路35へデータが出力される。
【0045】
図6は、本実施形態に係る固体撮像装置1の第1信号処理部30のデータ読出動作を説明するためのタイミングチャートである。この図には、行選択部31から出力されるVadrs(m1)信号,Vadrs(m2)信号,Vadrs(m3)信号およびVadrs(m4)信号、デコーダ回路34から出力されるHadrs(n1)信号,Hadrs(n2)信号,Hadrs(n3)信号およびHadrs(n4)信号、ならびに、減算回路35から出力される電圧値Video、が示されている。
【0046】
行選択部31から出力されるVadrs(m1)信号が一定期間に亘ってハイレベルとなり、その後、各行のデータを読み出すときにデコーダ回路34から出力されるHadrs(n1)信号,Hadrs(n3)信号およびHadrs(n4)信号のうち読み出したい列を示す信号それぞれが順次に一定期間に亘ってハイレベルとなる。Vadrs(m1)信号がハイレベルである期間に、Vreset(m1)信号およびVhold(m1)信号それぞれが所定のタイミングでレベル変化して、これにより、第m1行の各画素Pm1,nから配線L1へ出力された電圧値(光出力成分、ノイズ成分)が列選択部32のホールド回路33により保持される。
【0047】
また、Hadrs(n3)信号がハイレベルである期間に、ホールド回路33n3の出力側に設けられたスイッチSW3n3,1,SW3n3,2が閉じて、ホールド回路33n3から2つの電圧値が減算回路35へ出力され、これにより、画素Pm1,n3への入射光の強度に応じた電圧値(ノイズ成分が除去されたもの)Videoが減算回路35から出力される。
【0048】
また、Hadrs(n4)信号がハイレベルである期間に、ホールド回路33n4の出力側に設けられたスイッチSW3n4,1,SW3n4,2が閉じて、ホールド回路33n4から2つの電圧値が減算回路35へ出力され、これにより、画素Pm1,n4への入射光の強度に応じた電圧値(ノイズ成分が除去されたもの)Videoが減算回路35から出力される。
【0049】
その後、同様にして、行選択部31から出力されるVadrs(m2)信号が一定期間に亘ってハイレベルとなり、その後、デコーダ回路34から出力されるHadrs(n3)信号およびHadrs(n4)信号それぞれが順次に一定期間に亘ってハイレベルとなる。これにより、画素Pm2,n3 および画素Pm2,n4 それぞれへの入射光の強度に応じた電圧値(ノイズ成分が除去されたもの)Videoが減算回路35から順次に出力される。
【0050】
また、行選択部31から出力されるVadrs(m3)信号が一定期間に亘ってハイレベルとなり、その後、デコーダ回路34から出力されるHadrs(n1)信号のみが一定期間に亘ってハイレベルとなる。これにより、画素Pm3,n1への入射光の強度に応じた電圧値(ノイズ成分が除去されたもの)Videoが減算回路35から順次に出力される。
【0051】
また、行選択部31から出力されるVadrs(m4)信号が一定期間に亘ってハイレベルとなり、その後、デコーダ回路34から出力されるHadrs(n3)信号のみが一定期間に亘ってハイレベルとなる。これにより、画素Pm4,n3への入射光の強度に応じた電圧値(ノイズ成分が除去されたもの)Videoが減算回路35から順次に出力される。
【0052】
以上のようにして、第m1行にある2個の画素Pm1,n3,Pm1,n4、第m2行にある2個の画素Pm2,n3,Pm2,n4、第m3行にある1個の画素Pm3,n1,および、第m4行にある1個のPm4,n3の、計6個の画素について、入射光強度に応じた電圧値Videoが求められる。
【0053】
従来の固体撮像装置を用いた場合には、光検出部に含まれる全ての画素からデータを読み出して、その読み出した全データを解析する必要がある。これに対して、本実施形態に係る固体撮像装置1を用いた場合には、読み出したい画素を決定し、第1信号処理部30によりデータを読み出すべき6個の画素を選択すれば、その後に、これらの6個の画素からデータを読み出すだけでよく、また、その読み出した6個のデータを解析するだけでよい。このように、本実施形態に係る固体撮像装置1を用いることにより、一定のルールで区分された複数の領域からなる二値画像または多値画像を短時間に撮像することができ、また、その画像を短時間に解析することができる。すなわち、画像中でのランダムに存在する読み出したい領域の情報を、読み出したい領域の必要な部分のみ選択的に読み出すことが可能となることになる。
【0054】
次に、本実施形態に係る固体撮像装置1の読み出すべき画素を決定することも含めた動作例について図7を用いて説明する。以下に説明する動作も制御部20による制御の下に行われるもので、読み出すべき画像中に含まれるマーカを元に読み出すべき画素を決定して読み出している。図7は、本実施形態に係る固体撮像装置1の光受光部10に到達する光の強度の2次元分布、第2信号処理部40から出力される電圧値分布Vv(m)、および、第3信号処理部50から出力される電圧値分布Vh(n) を示す図である。
【0055】
この図に示されるように、光受光部10に到達する光の像は、各々一定面積の正方形領域である289個の単位領域(図中で破線で区分された領域)が17行17列に配列されていて、各々の単位領域が明および暗の何れかである二値の像である。図中で明領域はハッチングで示されている。また、この像は、各々互いに隣接する2×2個の単位領域からなる基準領域A1,1〜A2,2を有し、また、各々9つの単位領域からなる情報領域B1,1〜B3,3を有する。4個の基準領域A1,1〜A2,2は、仮想正方形の4つの頂点位置に配置され、常に明領域である。これがマーカとして働く。一方、9個の情報領域B1,1〜B3,3は、4個の基準領域A1,1〜A2,2に囲まれた範囲に3行3列に配列されており、明および暗の何れかである。
【0056】
この場合に、第2信号処理部40から出力される電圧値分布Vv(m)は、凡そ、範囲Rv1では値が4Vvとなり、範囲Rv2では値が0となり、範囲Rv3では値が2Vvとなり、範囲Rv4では値がVvとなり、範囲Rv5では値が4Vvとなる。また、第3信号処理部50から出力される電圧値分布Vh(n)は、凡そ、範囲Rh1では値が4Vhとなり、範囲Rh2では値がVhとなり、範囲Rh3では値が0となり、範囲Rh4では値が2Vhとなり、範囲Rh5では値が4Vhとなる。ここで、Vvは、或る1つの単位領域のみが明領域であるとした場合に、その単位領域に相当する行範囲における電圧値分布Vv(m)の値であり、Vhは、同様の場合に、その単位領域に相当する列範囲における電圧値分布Vh(n)の値である。
【0057】
そして、第2信号処理部40から出力される電圧値分布Vv(m)、および、第3信号処理部50から出力される電圧値分布Vh(n) に基づいて、基準領域A1,1〜A2,2に相当する行範囲Rv1,Rv5 および 列範囲Rh1,Rh5 が特定され、また、情報領域B1,1〜B3,3に相当する行範囲Rv2〜Rv4 および 列範囲Rh2〜Rh4 が特定される。
【0058】
また、各情報領域は全体が明および暗の何れかであるから、各情報領域中の1画素(例えば、各情報領域の中心位置にある画素)に入射する光の強度を求めればよい。したがって、図中に示すように、行範囲Rv2の中心行を第m2行とし、行範囲Rv3の中心行を第m3行とし、行範囲Rv4の中心行を第m4行とし、列範囲Rh2の中心列を第n2列とし、列範囲Rh3の中心列を第n3列とし、列範囲Rh4の中心列を第n4列とすると、第m2行にある3個の画素Pm2,n2,Pm2,n3,Pm2,n4、第m3行にある3個の画素Pm3,n2,Pm3,n3,Pm3,n4、および、第m4行にある3個の画素Pm4,n2,Pm4,n3,Pm4,n4 の、計9個の画素について、入射光の強度を求めればよい。
【0059】
これら9個の画素について入射光強度に応じた電圧値を第1信号処理部30により求める際の動作は、既に説明したものと同様である。この動作例においては、第2信号処理部40および第3信号処理部50から出力された電圧値Vv(m),Vh(n) に基づいて、4個の基準領域A1,1〜A2,2および9個の情報領域B1,1〜B3,3それぞれを決定し、9個の情報領域B1,1〜B3,3の情報領域が存在する行範囲および列範囲を決定して、第1信号処理部30によりデータを読み出すべき9個の画素を決定し、その後に、これらの9個の画素からデータを読み出すだけでよく、また、その読み出した9個のデータを解析するだけでよい。このように、本実施形態に係る固体撮像装置1を用いることにより、一定のルールで区分された複数の領域からなる二値画像または多値画像を短時間に撮像することができ、また、その画像を短時間に解析することができる。すなわち、この場合は画像の中の一部に存在するシーケンシャルな情報領域の情報を各情報領域で必要な部分のみを選択的に読み出すことが可能になる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、光検出部の各画素Pm,nは、上記実施形態ではAPS構造のものであったが、PPS(PassivePixel Sensor)構造のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態に係る固体撮像装置1の構成図である。
【図2】本実施形態に係る固体撮像装置1の光検出部10に含まれる各画素Pm,nの回路図である。
【図3】本実施形態に係る固体撮像装置1の第1信号処理部30に含まれる列選択部32の回路図である。
【図4】本実施形態に係る固体撮像装置1の第2信号処理部40の回路図である。
【図5】本実施形態に係る固体撮像装置1の光受光部10に到達する光の強度の2次元分布、第2信号処理部40から出力される電圧値分布Vv(m)、および、第3信号処理部50から出力される電圧値分布Vh(n) を示す図である。
【図6】本実施形態に係る固体撮像装置1の第1信号処理部30のデータ読出動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】本実施形態に係る固体撮像装置1の光受光部10に到達する光の強度の2次元分布、第2信号処理部40から出力される電圧値分布Vv(m)、および、第3信号処理部50から出力される電圧値分布Vh(n) を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1…固体撮像装置、10…光検出部、20…制御部、30…第1信号処理部、31…行選択部、32…列選択部、33…ホールド回路、34…デコーダ回路、35…減算回路36、40…第2信号処理部、41…Dフリップフロップ、42…積分回路、50…第3信号処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
M×N個の画素がM行N列に2次元配列され、第m行第n列にある画素Pm,nがフォトダイオードPD1m,n,フォトダイオードPD2m,nおよびフォトダイオードPD3m,nを含み、第m行にあるN個のフォトダイオードPD2m,1〜PD2m,Nが配線L2により電気的に接続されており、第n列にあるM個のフォトダイオードPD31,n〜PD3M,nが配線L3により電気的に接続されている光検出部と、
前記光検出部のM×N個の画素のうちから選択した1以上の画素Pm,nについて、その選択した各画素Pm,nに含まれるフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値を出力する第1信号処理部と、
各配線L2に接続されたN個のフォトダイオードPD2m,1〜PD2m,Nで発生した電荷を入力し蓄積して当該電荷蓄積量に応じた電圧値を出力する第2信号処理部と、
各配線L3に接続されたM個のフォトダイオードPD31,n〜PD3M,nで発生した電荷を入力し蓄積して当該電荷蓄積量に応じた電圧値を出力する第3信号処理部と、
前記第2信号処理部および前記第3信号処理部それぞれから出力される電圧値の分布に基づいて、フォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値を前記第1信号処理部から出力するべき画素Pm,nを選択し、その選択結果に基づいて前記第1信号処理部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする固体撮像装置(ただし、M,Nは2以上の整数、mは1以上M以下の任意の整数、nは1以上N以下の任意の整数)。
【請求項2】
前記第1信号処理部は、
前記光検出部のM行のうちから何れかの行を選択して、その選択した行にある各画素Pm,nに含まれるフォトダイオードPD1m,nで発生した電荷の量に応じた電圧値を配線L1へ出力させる行選択部と、
各配線L1を経て入力した電圧値を保持し、その保持したN個の電圧値のうちから、前記光検出部のN列のうちの何れかの列に相当する電圧値を選択して出力する列選択部と、
を含むことを特徴とする請求項1記載の固体撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−311307(P2006−311307A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132614(P2005−132614)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】