説明

固体撮像装置

【課題】ランダムノイズを抑制し、高画質な画像を得ることができる固体撮像装置を提供する。
【解決手段】垂直走査回路300は、露光開始から次の露光開始までの期間である単位期間において、画素部200の画素100を複数に分割した分割領域毎に光信号を読み出し、分割領域のうち、一部の分割領域のみ電荷保持部をリセットし、リセットを行った電荷保持部からリセット信号を読み出し、且つリセット信号を読み出す分割領域を単位期間毎に変更する制御を行う。減算器620は、光信号と直前の単位期間で読み出した光信号もしくはリセット信号との差分をとった信号から撮像信号を生成する。列処理回路350は、画素部200から出力される光信号もしくはリセット信号を列毎に増幅する。ゲイン制御部700は、分割領域毎かつ読み出しのタイミング毎に列処理回路350における増幅のゲインを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画素が配置された固体撮像装置に関し、より詳細には、グローバルシャッター機能を有する固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MOS型固体撮像装置として、全画素の露光開始時刻と露光終了時刻を同一、すなわち全画素の露光期間を同一にするグローバルシャッター方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。図6は、グローバルシャッター方式のMOS型固体撮像装置の画素構成を示している。図6において、単一の画素100は、フォトダイオード101、転送トランジスタ102、電荷保持部(FD)103、FDリセットトランジスタ104、増幅トランジスタ105、選択トランジスタ106、及びPDリセットトランジスタ107を備えている。
【0003】
フォトダイオード101 は、入射光を信号電荷に変換して蓄積する光電変換素子である。転送トランジスタ102 は、フォトダイオード101 に蓄積された信号電荷を電荷保持部103 (FD)に転送するためのトランジスタである。電荷保持部103は、フォトダイオード101から転送トランジスタ102によって転送された信号電荷を保持する。FDリセットトランジスタ104は、電荷保持部103 内の信号電荷をリセットするためのトランジスタである。増幅トランジスタ105 は、電荷保持部103 の電圧レベルを増幅し、画素信号として出力するためのトランジスタである。選択トランジスタ106 は、信号電荷を読み出す画素として画素100が選択された場合に垂直信号線114 へ画素信号を出力するためのトランジスタである。PDリセットトランジスタ107は、フォトダイオード101内の信号電荷をリセットするためのトランジスタである。ここで、フォトダイオード101 以外は遮光されている。
【0004】
また、画素100内には、垂直信号線114のほか、画素電源線110、FDリセット線111、転送線112、選択線113、及びPDリセット線115が配置されている。画素電源線110 は、電源電圧VDDを印加するための信号線であり、増幅トランジスタ105 のドレイン側、PDリセットトランジスタ107のドレイン側、及びFDリセットトランジスタ104 のドレイン側に電気的に接続されている。FDリセット線111 は、1行分の電荷保持部103をリセットするためのFDリセットパルスφRMi(i=1〜m、mは行数)を印加するための信号線であり、1行分のFDリセットトランジスタ104 のゲートに接続されている。
【0005】
転送線112 は、1行分の画素の信号電荷をそれぞれの画素の電荷保持部103 に転送するための行転送パルスφTRi(i=1〜m)を印加するための信号線であり、1行分の画素の転送トランジスタ102 のゲートに電気的に接続されている。選択線113 は、画素信号を読み出す1行分の画素を選択するための行選択パルスφSEi(i=1〜m)を印加するための信号線であり、1行分の画素の選択トランジスタ106 のゲートに電気的に接続されている。このように5個のトランジスタを用いた画素構成により、光電変換機能、リセット機能、増幅読出し機能、一時メモリ機能、及び選択機能が実現される。
【0006】
図7は、MOS型固体撮像装置の構成を示している。図7に示す固体撮像装置は、画素部200、垂直走査回路300、水平信号読出し回路400、電流源150、列処理回路350、ADC (AD(Analog to Digital)コンバータ)500、及びノイズ抑圧回路600を備えている。
【0007】
画素部200は、図6に示した画素100を3×3の2次元状に配列した構造を有する。垂直走査回路300は行単位で画素部200の駆動制御を行う。この駆動制御を行うために、垂直走査回路300は、行数と同じ数の単位回路301-1,301-2,301-3から構成されている。また、各単位回路は、制御部302-i,303-i,304-i,305-i(i=1,2,3)から構成されている。
【0008】
制御部302-i は、1行分の電荷保持部103をリセットするためのFDリセットパルスφRMi(i=1,2,3)を行毎に独立して制御する。制御部303-i は、1行分の画素100の信号電荷をそれぞれの画素100の電荷保持部103 に転送するための行転送パルスφTRi(i=1,2,3)を行毎に独立して制御する。制御部304-i は、1行分のフォトダイオード101をリセットするためのPDリセットパルスφRPDi(i=1,2,3)を行毎に独立して制御する。制御部305-i は、信号を読み出す1行分の画素100を選択するための行選択パルスφSEi(i=1,2,3)を行毎に独立して制御する。行選択パルスφSEiにより選択された行の画素100の信号は、列毎に設けられている垂直信号線114へ出力されるようになっている。
【0009】
電流源150は垂直信号線114に接続されており、画素100内の増幅トランジスタ105とソースフォロア回路を構成する。列処理回路350は、垂直信号線114に出力される画素信号に対してクランプ動作や増幅動作を行う回路である。水平信号読出し回路400は、垂直信号線114に出力され列処理回路350によって処理された1行分の画素100の画素信号を水平方向の並びの順で時系列に出力端子410から出力する。ADC500は、出力端子410から出力された信号をA/D変換する。
【0010】
ノイズ抑圧回路600は、ADC500から出力された信号のノイズを抑圧する。このノイズ抑圧回路600は、フレームメモリ610と減算器620とで構成されている。フレームメモリ610は、ADC500でA/D変換された信号を記憶する。減算器620は、ADC500でA/D変換された信号から、フレームメモリ610に記憶されている信号を減算し、撮像信号を生成する。
【0011】
図7では、FDリセット線111、転送線112、選択線113、垂直信号線114、及びPDリセット線115は図示されているが、電源電圧VDDを供給する画素電源線110は図示されていない。
【0012】
次に、図7に示した固体撮像装置をデジタルカメラなどに適用し、静止画の撮像を行う場合のグローバルシャッター読出しの動作を、図8に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。固体撮像装置が撮像開始の信号を受け取ると、まず、全行のPDリセットパルスφRPDiが“H”レベル、FDリセットパルスφRMiが“L”レベル、行転送パルスφTRiが“L”レベル、行選択パルスφSEiが“L”レベルとなり、PDリセットトランジスタ107がオンとなることで、全画素のフォトダイオード101がリセット状態となる。PDリセットパルスφRPDi、FDリセットパルスφRMi、行転送パルスφTRi、及び行選択パルスφSEiは垂直走査回路300から出力される。
【0013】
続いて、1行目のFDリセットパルスφRM1が“H”レベルとなり、1行目のFDリセットトランジスタ104がオンとなることで、1行目の電荷保持部103がリセット状態となる。そして、1行目のFDリセットパルスφRM1が“L”レベルとなり、1行目のFDリセットトランジスタ104がオフとなった後、1行目の行選択パルスφSE1が“H”レベルとなり、1行目の選択トランジスタ106がオンとなることで、1行目の電荷保持部103のリセットレベルが、列処理回路350を介して水平信号読出し回路400に出力され、リセットレベルに応じたリセット信号が水平信号読出し回路400の出力端子410から水平方向の並びの順で時系列に出力される。出力された1行目のリセット信号は、ADC500によりA/D変換され、フレームメモリ610に保持される。リセット信号の読み出し後、1行目の行選択パルスφSE1が“L”レベルとなり、1行目の選択トランジスタ106がオフとなる。
【0014】
続いて、2行目、3行目についても1行目と同様の動作が行われ、全画素のリセット信号が読み出される。
【0015】
続いて、全行のPDリセットパルスφRPDiが“L”レベルとなり、PDリセットトランジスタ107がオフとなることで、フォトダイオード101は蓄積を開始する。所望の蓄積時間が経過すると、全行の行転送パルスφTRiが“H”レベルとなり、全画素の転送トランジスタ102がオンとなることで、全画素のフォトダイオード101に蓄積された信号電荷が電荷保持部103に転送される。フォトダイオード101が蓄積を開始してから電荷保持部103への信号電荷の転送が終了するまでの期間が蓄積期間(図8の矢印で示す露光期間)である。また、信号電荷の転送動作が終了した直後に、全行の行転送パルスφTRiが“L”レベルとなり、全画素の転送トランジスタ102がオフとなると共に、全行のPDリセットパルスφRPDiが“H”レベルとなり、全画素のフォトダイオード101がリセット状態となる。
【0016】
続いて、1行目の行選択パルスφSE1が“H”レベルとなり、1行目の画素から信号電荷に応じた光信号レベルが、列処理回路350を介して水平信号読出し回路400に出力され、光信号が水平信号読出し回路400の出力端子410から水平方向の並びの順で時系列に出力される。出力された1行目の光信号は、ADC500によりA/D変換され、減算器620に入力される。減算器620は、1行目の光信号と、フレームメモリ610に保持されている1行目の電荷保持部103のリセット信号との差分をとることで、露光期間中にフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した光信号成分のみを取り出す。この動作では、電荷保持部103のリセットノイズを除去することが可能であるので、高S/Nの信号を得ることができる。光信号の読み出し後、1行目の行選択パルスφSE1が“L”レベルとなる。
【0017】
続いて、2行目、3行目についても1行目と同様な動作が行われ、全画素の光信号が読み出され、リセット信号との差分をとることで高S/Nの光信号成分のみが取り出される。光信号成分からなる撮像信号は図示しない画像処理回路に入力されて処理され、最終的な静止画の画像を得ることができる。このように、図7に示す固体撮像装置によれば、全行の信号蓄積の開始と終了のタイミングが同時となるグローバルシャッター動作を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2005−65184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
静止画の画像を1枚取得する場合の動作は、図8のタイミングチャートに示したようになる。一方、連続撮影(連写)を行う場合は、図9に示すように、図8に示した動作を繰り返し行うことになるため、撮影毎にリセット信号の読出しと光信号の読出しをそれぞれ行わなければならず、連写の間隔は、全画素から信号を読み出すために必要な時間の2倍以上となってしまう。図9では、1フレーム目と2フレーム目、3フレーム目と4フレーム目、・・・、7フレーム目と8フレーム目の信号読出しによりそれぞれ1回の撮影が構成され、連写速度を上げることが困難である。この連写速度を向上させるために、非破壊読出しを利用してリセット信号の読出し期間を短くする方法が考えられる。以下、この方法を、図10のタイミングチャートを用いて説明する。
【0020】
図10において、1枚目の撮影動作は図9と同じであるが、2枚目以降の撮影動作とフレームメモリ610への保持動作が異なる。2フレーム目で読み出された光信号は、減算器620に入力されると共にフレームメモリ610に上書き保持される。減算器620では、2フレーム目で読み出された光信号と、1フレーム目で読み出されたリセット信号との差分がとられ、撮像信号として出力される。その後、1行目のみFDリセットパルスφRM1及び行選択パルスφSE1の駆動が行われ、電荷保持部103のリセットレベルの読出しとフレームメモリ610への上書き保持動作が行われる。続いて、全行のPDリセットパルスφRPDiが“L”レベルとなり、フォトダイオード101は蓄積を開始する。所望の蓄積時間が経過すると、全行の行転送パルスφTRiが“H”レベルとなり、全画素のフォトダイオード101に蓄積された信号電荷が電荷保持部103に転送される。
【0021】
続いて、3フレーム目では、光信号の読出し動作、光信号とフレームメモリ610に保持された信号との差分をとる動作、及びフレームメモリ610への上書き保持動作が行われる。2フレーム目で1行目の電荷保持部103がリセットされているので、3フレーム目で1行目から読み出される光信号は、2回目の露光期間でフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した信号となる。一方、2フレーム目で2行目と3行目の電荷保持部103はリセットされず、非破壊読み出し動作が行われるので、3フレーム目で2行目と3行目から読み出される光信号は、2フレーム目で読み出された光信号と、2回目の露光期間でフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した光信号との和となる。
【0022】
フレームメモリ610には、2フレーム目で読み出された1行目のリセット信号、及び2フレーム目で読み出された2行目と3行目の光信号が保持されている。このため、3フレーム目で読み出された光信号と、フレームメモリ610に上書き保持された信号との差分をとることにより、2回目の露光期間でフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した撮像信号を得ることができる。また、3フレーム目では、2行目のみ電荷保持部103がリセットされ、リセット信号の読出し動作とフレームメモリ610への上書き保持動作とが行われる。
【0023】
4フレーム目では、光信号の読出し動作、光信号とフレームメモリ610に保持された信号との差分をとる動作、フレームメモリ610への光信号の上書き保持動作、3行目のみ電荷保持部103のリセット動作、リセット信号の読出し動作、フレームメモリ610へのリセット信号の上書き保持動作が行われる。
【0024】
5フレーム以降は、同様な動作が繰り返し行われる。従って、各画素では、電荷保持部103がリセットされた後に非破壊読み出しを利用して光信号が3回読み出されることとなる。また、電荷保持部103のリセット動作を1行ずつ異なるフレームで行うことにより、各フレームの光信号読出し期間とリセット信号読出し期間を同一にしながら、リセット信号を読み出す期間を減らすことができるので、連写速度を向上させることが可能となる。なお、ここでは、行数が3行の場合を示したが、画素数が多い場合は、画素領域を複数の領域に分割し、分割した領域の画素をフレーム毎に変えて電荷保持部103のリセット動作を行うことで同様な効果が得られる。
【0025】
しかしながら、従来技術においては、減算器620が差分処理を行うことによって、フレーム間で相関のあるリセットノイズなどの画素部200で発生するランダムノイズは除去できるが、列処理回路350や水平信号読出し回路400で発生するランダムノイズはフレーム間で相関がないために、差分処理によってランダムノイズが増加してしまうという問題があった。
【0026】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、ランダムノイズを抑制し、高画質な画像を得ることができる固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、光電変換素子と、前記光電変換素子に蓄積された信号電荷をリセットする第1のリセット部と、前記光電変換素子に蓄積された信号電荷を保持する電荷保持部と、前記光電変換素子に蓄積された信号電荷を前記電荷保持部に転送する転送部と、前記電荷保持部に保持された信号電荷をリセットする第2のリセット部とを備えた画素を2次元状に配列した画素部を有し、所定領域の全画素の前記光電変換素子を一括してリセットし、当該リセットから露光期間が経過した後に、前記光電変換素子に蓄積された前記信号電荷を前記全画素で一括して前記電荷保持部に転送した後に、前記電荷保持部に転送された前記信号電荷に応じた光信号を読み出すことを連続して行う固体撮像装置であって、露光開始から次の露光開始までの期間である単位期間において、前記画素部の画素を複数に分割した分割領域毎に前記光信号を読み出し、前記分割領域のうち、一部の分割領域のみ前記電荷保持部をリセットし、当該リセットを行った前記電荷保持部からリセット信号を読み出し、且つ前記リセット信号を読み出す分割領域を前記単位期間毎に変更する制御を行う信号読出し制御部と、前記光信号と直前の前記単位期間で読み出した前記光信号もしくは前記リセット信号との差分をとった信号から撮像信号を生成する差分処理部と、前記画素部から出力される前記光信号もしくは前記リセット信号を列毎に増幅する列処理回路と、前記分割領域毎かつ読み出しのタイミング毎に前記列処理回路における増幅のゲインを制御するゲイン制御部と、を有することを特徴とする固体撮像装置である。
【0028】
また、本発明の固体撮像装置は、前記光信号のレベルを検出する検出部をさらに有し、前記ゲイン制御部は、前記検出部が検出したレベルに応じて前記ゲインを制御することを特徴とする。
【0029】
また、本発明の固体撮像装置は、前記光信号と直前の前記単位期間で読み出した前記光信号もしくは前記リセット信号とを増幅し、前記差分処理部へ出力する増幅処理部をさらに有し、前記ゲイン制御部はさらに、前記分割領域毎かつ読み出しのタイミング毎に、前記増幅処理部における増幅のゲインを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、分割領域毎かつ読み出しのタイミング毎に増幅のゲインを制御しつつ、光信号もしくはリセット信号を増幅することによって、列処理回路における増幅処理より後のアナログ処理で発生するランダムノイズの影響を抑制し、高画質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態による固体撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による固体撮像装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態による固体撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による固体撮像装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるゲインを説明するための説明図である。
【図6】固体撮像装置が有する画素の構成を示す回路図である。
【図7】従来の固体撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図8】従来の固体撮像装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図9】従来の固体撮像装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図10】リセット信号の読出し期間を短くした固体撮像装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態による固体撮像装置の構成を示している。図1に示す固体撮像装置は、画素部200、垂直走査回路300、水平信号読出し回路400、電流源150、列処理回路350、ADC500、ノイズ抑圧回路600、及びゲイン制御部700を備えている。図1に示す構成は、図7に示す構成と比べて、ゲイン制御部700及び増幅処理部630が加わっていることが異なる以外は、図7に示す構成と同様である。ゲイン制御部700及び増幅処理部630以外の構成については、前述した通りである。また、画素100の構成は、図6に示した通りである。本実施形態では、画素領域を複数に分割した分割領域が行に対応しているが、この限りではない。
【0034】
ゲイン制御部700は、列処理回路350が増幅処理を行う際のゲインを制御する。このゲインは、行毎かつ光信号の読出しのタイミング毎(フレーム毎)に変更される。さらに、列処理回路350によって増幅処理が行われた後の信号レベルが飽和レベルにできるだけ近づくようにゲインが設定される。また、ゲイン制御部700は、ノイズ抑圧回路600に設けられた増幅処理部630のゲインを制御する。このゲインも、行毎かつ光信号の読出しのタイミング毎(フレーム毎)に変更される。本実施形態では、増幅処理部630のゲインは、列処理回路350のゲインと一定の対応関係を有する値(一例として、列処理回路350のゲインの逆数)に設定される。増幅処理部630は、フレームメモリ610から読み出されたリセット信号または光信号に対してゲインをかけて増幅する処理を行う。
【0035】
次に、図2を用いて、図1に示した固体撮像装置の動作について説明する。本実施形態では列処理回路350に設定されるゲインが行毎かつフレーム毎に異なるため、図2は、出力信号のレベルが異なること以外は、前述した図10と同様である。図2に示す動作のタイミングは、図10に示した動作と同様であるため、説明は省略する。
【0036】
前述したように、画素部200では、垂直走査回路300が出力する各パルスによって、露光開始から次の露光開始までの単位期間である1フレームにおいて、行毎に光信号を読み出し、その後、一部の行のみ電荷保持部103をリセットしてリセット信号を読み出す制御が行われると共に、リセット信号を読み出す行をフレーム毎に変更する制御が行われる。また、ゲイン制御部700によって、列処理回路350及び増幅処理部630に設定されるゲインが以下のように制御される。
【0037】
本実施形態では、各行について、Nフレーム目におけるリセット信号の読出しと、N+3フレーム目におけるリセット信号の読出しとの間に非破壊読出しにより光信号が3回読み出される。列処理回路350は、1回目に読み出された光信号に3倍のゲインをかけ、2回目に読み出された光信号に3/2倍のゲインをかけ、3回目に読み出された光信号に1倍のゲインをかける。列処理回路350によってゲインがかけられた光信号は水平信号読出し回路400から出力され、ADC500によりA/D変換され、フレームメモリ610に記憶される。
【0038】
1回目に読み出された光信号(列処理回路350により3倍のゲインがかけられた光信号)とリセット信号との差分をとる際、増幅処理部630は、フレームメモリ610から読み出された光信号に対して1/3倍のゲインをかけて減算器620へ出力し、フレームメモリ610から読み出されたリセット信号をそのまま減算器620へ出力する。減算器620は、1回目に読み出された光信号からリセット信号を減算し、撮像信号として出力する。これによって、1回目の露光期間でフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した撮像信号を得ることができる。
【0039】
また、2回目に読み出された光信号(列処理回路350により3/2倍のゲインがかけられた光信号)と、1回目に読み出された光信号(列処理回路350により3倍のゲインがかけられた光信号)との差分をとる際、増幅処理部630は、フレームメモリ610から読み出された光信号(2回目)に対して2/3倍のゲインをかけて減算器620へ出力し、フレームメモリ610から読み出された光信号(1回目)に対して1/3倍のゲインをかけて減算器620へ出力する。減算器620は、光信号(2回目)から光信号(1回目)を減算し、撮像信号として出力する。これによって、2回目の露光期間でフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した撮像信号を得ることができる。
【0040】
また、3回目に読み出された光信号(列処理回路350により1倍のゲインがかけられた光信号)と、2回目に読み出された光信号(列処理回路350により3/2倍のゲインがかけられた光信号)との差分をとる際、増幅処理部630は、フレームメモリ610から読み出された光信号(3回目)をそのまま減算器620へ出力し、フレームメモリ610から読み出された光信号(2回目)に対して2/3倍のゲインをかけて減算器620へ出力する。減算器620は、光信号(3回目)から光信号(2回目)を減算し、撮像信号として出力する。これによって、3回目の露光期間でフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した撮像信号を得ることができる。
【0041】
上述したように、本実施形態によれば、列処理回路350で出力レベルの低い光信号を増幅することで、列処理回路350の増幅処理より後のアナログ処理により発生するランダムノイズが光信号に与える影響を抑制し、S/Nを向上させることができる。したがって、ランダムノイズが光信号に与える影響を抑制した光信号を得ることが可能となり、減算器620における差分処理によって増加するランダムノイズ成分をも抑制しS/Nを向上させることができる。
【0042】
また、フレームメモリ610から読み出された光信号に対して、増幅処理部630が、列処理回路350によってかけられたゲインの逆数となるゲインをかけることによって、減算器620では、所望の露光期間でフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した撮像信号を得ることができる。
【0043】
画素部200からリセット信号を読み出す際には、列処理回路350で1回目の光信号と同じゲイン(上記の例では3倍)をかけることが好ましい。これにより、列処理回路350の増幅処理より後のアナログ処理により発生するランダムノイズがリセット信号に与える影響を抑制できると共に、1回目の光信号とリセット信号の差分をとる際に、1/3倍のゲインをかけずに差分をとることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図3は、本実施形態による固体撮像装置の構成を示している。図3に示す構成は、図1に示す構成と比べて、検出部800を設けた以外は、図1に示す構成と同様である。検出部800は、光信号のレベルを検出する。ゲイン制御部700は、検出部800で検出された光信号のレベルに応じてゲインを制御する。本実施形態では、画素領域を複数に分割した分割領域が行に対応しているが、この限りではない。
【0045】
次に、図4を用いて、図3に示した固体撮像装置の動作について説明する。本実施形態では、列処理回路350において光信号にかけるゲインが異なるため、図4は、出力信号の大きさが異なること以外は、前述した図2と同様である。図4に示す動作のタイミングは、図10に示した動作と同様であるため、説明は省略する。
【0046】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、各行について、Nフレーム目におけるリセット信号の読出しと、N+3フレーム目におけるリセット信号の読出しとの間に非破壊読出しにより光信号が3回読み出される。また、1回目に読み出された光信号の大きさに応じて、2回目、3回目に読み出される光信号のゲインが決定される。
【0047】
図5(a)のように固定のゲインをかけた場合、信号の大きさによっては、ゲインをかけた後でも信号レベルが飽和レベルに達せず、さらにゲインをかけても信号がクリップしない場合がある。これに対して、本実施形態では、以下のようにゲインを設定することによって、列処理回路350がゲインをかけた後の光信号のレベルをより飽和レベルに近づけることができる。図5(b)のように列処理回路350は、1回目に読み出された光信号に対して、予め設定されたa倍(a>1)のゲインをかける。検出部800は、a倍のゲインをかけた光信号のレベルを検出する。このレベルが飽和レベルに対してb倍であった場合、ゲイン制御部700は、列処理回路350が光信号(2回目)と光信号(3回目)にかけるゲインを、それぞれa/2b倍、a/3b倍に設定する。
【0048】
1回目に読み出された光信号(列処理回路350によりa倍のゲインがかけられた光信号)とリセット信号との差分をとる際、増幅処理部630は、フレームメモリ610から読み出された光信号に対して1/a倍のゲインをかけて減算器620へ出力し、フレームメモリ610から読み出されたリセット信号をそのまま減算器620へ出力する。減算器620は、1回目に読み出された光信号からリセット信号を減算し、撮像信号として出力する。これによって、1回目の露光期間でフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した撮像信号を得ることができる。
【0049】
また、2回目に読み出された光信号(列処理回路350によりa/2b倍のゲインがかけられた光信号)と、1回目に読み出された光信号(列処理回路350によりa倍のゲインがかけられた光信号)との差分をとる際、増幅処理部630は、フレームメモリ610から読み出された光信号(2回目)に対して2b/a倍のゲインをかけて減算器620へ出力し、フレームメモリ610から読み出された光信号(1回目)に対して1/a倍のゲインをかけて減算器620へ出力する。減算器620は、光信号(2回目)から光信号(1回目)を減算し、撮像信号として出力する。これによって、2回目の露光期間でフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した撮像信号を得ることができる。
【0050】
また、3回目に読み出された光信号(列処理回路350によりa/3b倍のゲインがかけられた光信号)と、2回目に読み出された光信号(列処理回路350によりa/2b倍のゲインがかけられた光信号)との差分をとる際、増幅処理部630は、フレームメモリ610から読み出された光信号(3回目)に対して3b/a倍のゲインをかけて減算器620へ出力し、フレームメモリ610から読み出された光信号(2回目)に対して2b/a倍のゲインをかけて減算器620へ出力する。減算器620は、光信号(3回目)から光信号(2回目)を減算し、撮像信号として出力する。これによって、3回目の露光期間でフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した撮像信号を得ることができる。
【0051】
上述したように、本実施形態によれば、列処理回路350で出力レベルの低い光信号を増幅することで、列処理回路350の増幅処理より後のアナログ処理により発生するランダムノイズが光信号に与える影響を抑制し、S/Nを向上させることができる。第1の実施形態では、1回目、2回目、3回目に読み出された光信号にかけるゲインが固定であったため、光信号のレベルが低い場合、特に列処理回路350の増幅処理より後のアナログ処理で発生するランダムノイズが光信号に与える影響が大きくなるため、光信号のレベルが高い場合よりもS/Nが悪くなる。これに対して、本実施形態では、光信号の大きさに合わせてできるだけ高いゲインをかけることができるため、光信号のレベルが低い場合でも、列処理回路350の増幅処理より後のアナログ処理で発生するランダムノイズが光信号に与える影響を抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、減算器620における差分処理によって増加するランダムノイズ成分をも抑制し、S/Nを向上させることができる。
【0052】
また、第1の実施形態と同様に、フレームメモリ610から読み出された光信号に対して、増幅処理部630が、列処理回路350によってかけられたゲインの逆数となるゲインをかけることによって、減算器620では、所望の露光期間でフォトダイオード101に蓄積された信号電荷に対応した撮像信号を得ることができる。
【0053】
第1の実施形態と同様に、画素部200からリセット信号を読み出す際には、列処理回路350で1回目の光信号と同じゲイン(上記の例ではa倍)をかけることが好ましい。これにより、列処理回路350の増幅処理より後のアナログ処理により発生するランダムノイズがリセット信号に与える影響を抑制できると共に、1回目の光信号とリセット信号の差分をとる際に、1/a倍のゲインをかけずに差分をとることができる。
【0054】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0055】
例えば、上記の各実施形態では、簡易的に画素が3行3列に配列されている場合を説明したが、これに限るものではなく、目的を逸脱しない範囲での変更が可能である。例えば、画素数が多い場合は、画素領域を複数に分割し、分割した領域の画素をフレーム毎に変えて電荷保持部103のリセット動作を行うことも可能である。また、信号を読み出す順序及び電荷保持部103をリセットする順序を1行目、2行目、3行目の順としているが、順序はこれに限ったものではない。さらに、1回目、2回目、3回目の光信号にかけるゲインを3倍、3/2倍、1倍などとしたが、これに限らない。
【符号の説明】
【0056】
100・・・画素、101・・・フォトダイオード(光電変換素子)、102・・・転送トランジスタ(転送部)、103・・・電荷保持部、104・・・ FDリセットトランジスタ(第2のリセット部)、105・・・増幅トランジスタ、106・・・選択トランジスタ、107・・・ PDリセットトランジスタ(第1のリセット部)、150・・・電流源、200・・・画素部、300・・・垂直走査回路(信号読出し制御部)、350・・・列処理回路、400・・・水平信号読出し回路、500・・・ ADC、600・・・ノイズ抑圧回路、610・・・フレームメモリ、620・・・減算器(差分処理部)、630・・・増幅処理部、700・・・ゲイン制御部、800・・・検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と、前記光電変換素子に蓄積された信号電荷をリセットする第1のリセット部と、前記光電変換素子に蓄積された信号電荷を保持する電荷保持部と、前記光電変換素子に蓄積された信号電荷を前記電荷保持部に転送する転送部と、前記電荷保持部に保持された信号電荷をリセットする第2のリセット部とを備えた画素を2次元状に配列した画素部を有し、
所定領域の全画素の前記光電変換素子を一括してリセットし、当該リセットから露光期間が経過した後に、前記光電変換素子に蓄積された前記信号電荷を前記全画素で一括して前記電荷保持部に転送した後に、前記電荷保持部に転送された前記信号電荷に応じた光信号を読み出すことを連続して行う固体撮像装置であって、
露光開始から次の露光開始までの期間である単位期間において、前記画素部の画素を複数に分割した分割領域毎に前記光信号を読み出し、前記分割領域のうち、一部の分割領域のみ前記電荷保持部をリセットし、当該リセットを行った前記電荷保持部からリセット信号を読み出し、且つ前記リセット信号を読み出す分割領域を前記単位期間毎に変更する制御を行う信号読出し制御部と、
前記光信号と直前の前記単位期間で読み出した前記光信号もしくは前記リセット信号との差分をとった信号から撮像信号を生成する差分処理部と、
前記画素部から出力される前記光信号もしくは前記リセット信号を列毎に増幅する列処理回路と、
前記分割領域毎かつ読み出しのタイミング毎に前記列処理回路における増幅のゲインを制御するゲイン制御部と、
を有することを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
前記光信号のレベルを検出する検出部をさらに有し、
前記ゲイン制御部は、前記検出部が検出したレベルに応じて前記ゲインを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記光信号と直前の前記単位期間で読み出した前記光信号もしくは前記リセット信号とを増幅し、前記差分処理部へ出力する増幅処理部をさらに有し、
前記ゲイン制御部はさらに、前記分割領域毎かつ読み出しのタイミング毎に、前記増幅処理部における増幅のゲインを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−188380(P2011−188380A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53670(P2010−53670)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】