説明

固体組電池の製造方法

【課題】高い電池性能を有し且つ連続的に製造することができる固体組二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】正極層11、固体電解質層12および負極層13からこの順で形成した薄膜電池要素単体10を、帯状正極集電体1に複数配置するとともに、帯状負極集電体3を介して積層した固体組電池の製造方法であって、上記帯状正極集電体1の表裏面に、開口部21が長さ方向に複数形成された帯状熱融着フィルム20を配置し、上記薄膜電池要素単体10の正極層11を上記帯状正極集電体1に接触させるように、当該薄膜電池要素単体10を上記各開口部21に配置して、隣り合う薄膜電池要素単体10の両負極層13で上記帯状負極集電体3を表裏面から挟み込むように、上記帯状正極集電体1と帯状負極集電体3とを交差させて交互に折り込んで、積層体を形成し、この積層体を、上記薄膜電池要素単体10の積層方向に加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体組電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高機能の携帯電話・PDA・ノートパソコンなどの電子機器が広く普及し、量産されている。このため、これら高機能の機器に搭載される電池には、高い電池性能だけでなく、量産性も求められている。
【0003】
このような電池の一例として、高い電池性能を有するとともに容易に製造できる固体薄膜電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の固体薄膜電池は、正負極層およびこの層間に配置された固体電解質層からなる固体薄膜電池単体を複数積層するとともに、各固体薄膜電池単体の正極接続耳部で正極層をそれぞれ接続した正極の接続手段と、各負極接続耳部で負極層をそれぞれ接続した負極の接続手段とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−293791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の固体薄膜電池では、各固体薄膜電池単体の接続耳部の配置が異なるので、各固体薄膜電池単体の形状が異なり、これら固体薄膜電池単体を構成する多種の部材および部品を準備して、初めて製造が容易になる。また、各固体薄膜電池単体は単品であるから、連続的にこれら固体薄膜電池単体を積層すること、すなわち、連続的に上記固体薄膜電池を製造することは困難である。このため、上記固体薄膜電池は、大量生産に適しておらず、近年求められている量産性を満たしていないという問題がある。
【0006】
さらに、上記固体薄膜電池では、固体薄膜電池単体の積層数に応じて各接続耳部の幅を小さくする必要があるので、積層数に限界があり、大積層数でもって電池性能を高めることができない。
【0007】
そこで、本発明は、高い電池性能を有し且つ連続的に製造することができる固体組電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る固体組電池の製造方法は、電極層、固体電解質層および対極層からこの順に形成した電池要素単体を、帯状電極集電体に複数配置するとともに、帯状対極集電体を介して積層した固体組電池の製造方法であって、
上記帯状電極集電体の表裏面に、開口部が長さ方向に複数形成された帯状絶縁体を配置し、
上記電池要素単体の電極層を上記帯状電極集電体に接触させるように、当該電池要素単体を上記各開口部に配置して、
隣り合う電池要素単体の両対極層で上記帯状対極集電体を表裏面から挟み込むように、上記帯状電極集電体と帯状対極集電体とを交差させて交互に折り込んで、積層体を形成し、
この積層体を、上記電池要素単体の積層方向に加圧するものである。
【0009】
また、請求項2に係る固体組電池の製造方法は、請求項1に記載の固体組電池の製造方法において、帯状絶縁体が熱融着性を有するものであり、
積層体を加圧すると同時に、または加圧した後に、上記帯状絶縁体を加熱して融着させ、電池要素単体を封止するものである。
【0010】
さらに、請求項3に係る固体組電池の製造方法は、請求項1または2に記載の固体組電池の製造方法において、帯状絶縁体が、各山折り位置において帯状電極集電体を露出させるスリットが形成されたものである。
【0011】
また、請求項4に係る固体組電池の製造方法は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の固体組電池の製造方法において、帯状絶縁体が帯状電極集電体よりも幅広であり、開口部が帯状電極集電体よりも幅狭であるものである。
【発明の効果】
【0012】
上記固体組電池の製造方法によると、電池要素単体が複数配置された帯状電極集電体と、帯状対極集電体とを交差させて交互に折り込んで積層体を形成し、その後に、この積層体を電池要素単体の積層方向に加圧して固体組電池を製造するため、大積層数で高い電池性能を有する固体組電池を連続して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る固体組電池の断面図であり、(a)は帯状正極集電体の幅方向の断面図、(b)は帯状負極集電体の幅方向の断面図である。
【図2】同固体組電池における帯状正極集電体の表裏面に、帯状熱融着フィルムを貼り合わせる状態を説明するための斜視図である。
【図3】同固体組電池における帯状正極集電体と帯状負極集電体とを交差させて交互に折り込む状態を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の実施例に係る固体組電池の製造工程を示すブロック図である。
【図5】同製造工程に用いる両面成膜装置の図であり、(a)は両面成膜装置の平面図、(b)は両面成膜装置における無端ベルト型マスクの側面図である。
【図6】同製造工程における積層工程で帯状正極集電体を折り込む状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1に係る固体組電池の製造方法を図面に基づき説明する。
まず、固体組電池の基本構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、この固体組電池は、交互に交差して折り込まれた帯状正極集電体(帯状電極集電体の一例である)1および帯状負極集電体(帯状対極集電体の一例である)3と、帯状正極集電体1と帯状負極集電体3とが交差した面間にそれぞれ配置された薄膜電池要素単体(電池要素単体の一例である)10と、帯状正極集電体1の表裏面に配置されて絶縁性を有する帯状熱融着フィルム(帯状絶縁体の一例である)20と、これら帯状熱融着フィルム20の山折り部に形成された各スリット22から露出した帯状正極集電体1の山折り部をそれぞれ接続する正極板41と、帯状負極集電体3の山折り部をそれぞれ接続する負極板43と、上記正極板41および負極板43にそれぞれ接続された正極リード51および負極リード53と、上記正極板41および負極板43の外周側から包装する外装体(図示省略)とを具備する。
【0016】
ここで、上記帯状熱融着フィルム20は、帯状正極集電体1の表裏面にそれぞれ貼り合わされた(配置された)ものであり、帯状正極集電体1の山折り部を露出させるスリット22と、帯状負極集電体3と交差する面において薄膜電池要素単体10を帯状正極集電体1に接触させて配置する開口部21とが形成されている。
【0017】
さらに、上記薄膜電池要素単体10は、正極層(電極層の一例である)11、固体電解質層12および負極層(対極層の一例である)13からこの順で形成したものである。また、上記薄膜電池要素単体10は、上記各開口部21に成膜(配置)されて正極層11が帯状正極集電体1に接触するものであり、帯状正極集電体1および帯状負極集電体3が交差して交互に折り込まれることにより負極層13が帯状負極集電体3に接触するものである。なお、実際には、帯状熱融着フィルム20が各層で融着し薄膜電池要素単体10を封止しているが、図1では簡単のため、帯状熱融着フィルム20が融着する前の状態を示す。
【0018】
また、上記正極板41および負極板43は、いずれも導電板を湾曲させてU字型に形成し、帯状正極集電体1、薄膜電池要素単体10および帯状負極集電体3から構成される電池単体を並列接続するものである。
【0019】
以下、上記固体組電池の製造方法について説明する。
まず、図2に示すように、帯状正極集電体1よりも幅広の帯状熱融着フィルム20を、当該帯状正極集電体1の表裏面に、当該帯状正極集電体1と幅方向の中心を一致させて貼り合わせる。上記帯状熱融着フィルム20には、帯状正極集電体1よりも幅狭で矩形状の開口部21が、長さ方向に等間隔で複数形成されている。また、隣り合う上記開口部21の中間には、1つ置きにスリット22が形成されている。これらスリット22の位置は、上記帯状正極集電体1を帯状負極集電体3と交互に交差して折り込んだ際に、帯状正極集電体1および帯状熱融着フィルム20の各山折り部となる位置(山折り位置)である。
【0020】
次に、両帯状熱融着フィルム20が表裏面に貼り合わされた帯状正極集電体1に対して、上記各開口部21に薄膜電池要素単体10を、正極層11が帯状正極集電体1に接触するように成膜していく。上記開口部21は帯状正極集電体1の表裏面に位置するので、薄膜電池要素単体10の成膜は、帯状正極集電体1の表裏面の両側から行われる。なお、実際には、一端側の裏面の開口部21を除き全ての開口部21に薄膜電池要素単体10が成膜されるが、図2では簡単のため、2つの薄膜電池要素単体10が成膜される状態を示す。
【0021】
そして、帯状正極集電体1の表裏面に成膜された各薄膜電池要素単体10を、表裏面の両側から加圧していくことで、薄膜電池要素単体10を帯状正極集電体1の表裏面に仮固定していく。
【0022】
その後、図3に示すように、帯状正極集電体1と帯状負極集電体3とを交差させて交互に折り込んでいく。以下、この折り込みについて詳細に説明するが、便宜上、帯状正極集電体1の表面の一端側に成膜された薄膜電池要素単体10を第1表側単体といい、この第1表側単体に隣り合う薄膜電池要素単体10を第2表側単体といい、順次隣り合う薄膜電池要素単体10を、第3表側単体、第4表側単体、という。同様に、帯状正極集電体1の裏面の一端側に成膜された薄膜電池要素単体10を第1裏側単体といい、順次隣り合う薄膜電池要素単体10を、第2裏側単体、第3裏側単体、第4裏側単体、という。なお、第1裏側単体については、折り込みの前に除去するか、成膜しないで、帯状正極集電体1の一端部の裏面を開口部21から露出させておく。
【0023】
まず、帯状正極集電体1の一端部の表面に、帯状負極集電体3の一端部を、帯状正極集電体1と帯状負極集電体3とが同一平面で交差するように接触させる。すなわち、第1表側単体の負極層13と帯状負極集電体3の一端部の裏面とが接触するとともに、帯状正極集電体1の長さ方向および幅方向と帯状負極集電体3の長さ方向および幅方向とが同一平面で直交する。そして、帯状正極集電体1の裏面に貼り合わされた帯状熱融着フィルム20のスリット22の位置が山折り部となるように、帯状正極集電体1を折り込む。具体的には、帯状正極集電体1の表面が谷折り、裏面が山折りとなる。これにより、第2表側単体の負極層13が、帯状負極集電体3の表面と接触する。すなわち、帯状負極集電体3の一端部は、裏面から第1表側単体の負極層13と、表面から第2表側単体の負極層13とで挟み込まれる。次に、第2裏側単体の負極層13が帯状負極集電体3の表面に接触するように、帯状負極集電体3を折り込む。具体的には、帯状負極集電体3の表面が谷折り、裏面が山折りとなる。そして、同様に、帯状正極集電体1の表面に貼り合わされた帯状熱融着フィルム20のスリット22の位置が山折り部となるように、帯状正極集電体1を折り込む。具体的には、帯状正極集電体1の裏面が谷折り、表面が山折りとなる。これにより、第3裏側単体の負極層13が、帯状負極集電体3の表面と接触する。すなわち、帯状負極集電体3の一端部に隣接する隣接部は、裏面から第2裏側単体の負極層13と、表面から第3裏側単体の負極層13とで挟み込まれる。次に、第3表側単体の負極層13が帯状負極集電体3の裏面に接触するように、帯状負極集電体3を折り込む。具体的には、帯状負極集電体3の裏面が谷折り、表面が山折りとなる。以上では、帯状正極集電体1と帯状負極集電体3とを2回ずつ折り込むことについて説明したが、実際には薄膜電池要素単体10の所望する積層数だけ同様に折り込んでいく。最後に、帯状正極集電体1の他端部に成膜された薄膜電池要素単体10の負極層13に、帯状負極集電体3の他端部が接触するように、帯状負極集電体3を折り込む。この帯状正極集電体1と帯状負極集電体3とを折り込んで形成したものを、以下では便宜上、積層体という。
【0024】
次に、上記積層体を、薄膜電池要素単体10の積層方向に加圧すると同時に加熱する。この加圧により、各層の薄膜電池要素単体10と帯状正極集電体1および帯状負極集電体3とが固定される。一方、上記加熱により、帯状熱融着フィルム20が融けて各層で互いに接着する。言い換えれば、上記加熱により、帯状熱融着フィルム20が各層で融着する。ここで、帯状熱融着フィルム20は、形成された各開口部21に薄膜電池要素単体10が配置されている、つまり、各層の薄膜電池要素単体10の外周を囲んでいるため、上記融着により各層の薄膜電池要素単体10を封止する。この加圧および加熱された積層体を、以下では便宜上、封止積層体という。
【0025】
その後、封止積層体の帯状熱融着フィルム20の各スリット22から露出した帯状正極集電体1の各山折り部を正極板41で接続するとともに、封止積層体の帯状負極集電体3の各山折り部を負極板43で接続する。具体的には、正極板41を封止積層体における帯状正極集電体1の一端側から嵌め込んで帯状正極集電体1の各山折り部に接触させ、負極板43を封止積層体における帯状負極集電体3の他端側から嵌め込んで帯状負極集電体3の各山折り部に接触させる。この正極板41および負極板43が嵌め込まれた封止積層体を、以下では便宜上、半製品という。
【0026】
そして、半製品の正極板41および負極板43に、正極リード51および負極リード53をそれぞれ接続し、この半製品を外装体で包装するとともに、上記正極リード51および負極リード53の各一端部を外装体の外側に配置して、固体組電池が製造される。
【0027】
このように、上記固体組電池の製造方法では、帯状正極集電体1と帯状負極集電体3とを交差させて交互に折り込んで積層体を形成し、この積層体に正極板41および負極板43を嵌め込んで固体組電池を製造するので、製造時間を短縮できるとともに、大積層数で高い電池性能を有する固体組電池を連続して製造することができる。
【0028】
また、上記固体組電池の製造方法では、絶縁性を有する帯状熱融着フィルム20が、帯状正極集電体1の表裏面において各薄膜電池要素単体10の外周を囲んで配置されるので、短絡を防止して信頼性の高い固体組電池を製造することができる。
【0029】
さらに、上記固体組電池の製造方法では、積層体を積層方向に加圧すると同時に加熱することで、加圧の工程で帯状熱融着フィルム20による薄膜電池要素単体10を封止でき、固体組電池の製造時間を一層短縮することができる。
【実施例】
【0030】
以下、上記実施の形態1をより具体的に示した実施例として、製造装置により連続的に固体組電池を製造する方法について説明する。なお、上記実施の形態1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
上記製造装置により連続的に固体組電池を製造する方法は、大きく分けて6つの工程からなる。図4に示すように、この6つの工程は、帯状正極集電体1の表裏面に帯状熱融着フィルム20を貼り合わせるラミネート工程(第1工程)71、帯状正極集電体1に複数の薄膜電池要素単体10を成膜する両面成膜工程(第2工程)72、各薄膜電池要素単体10を仮プレスする仮プレス工程(第3工程)73、帯状正極集電体1と帯状負極集電体3とを交差させて交互に折り込む積層工程(第4工程)74、積層体を積層方向にプレスする本プレス工程(第5工程)75、および封止積層体を外装体で包装して固体組電池を製造するパッケージ工程(第6工程)76である。
【0032】
まず、第1工程であるラミネート工程71について説明する。
図4に示すように、このラミネート工程71では、平行に配置された表面用ロール82Aおよび裏面用ロール82Bからそれぞれ帯状熱融着フィルム20が巻き出されるとともに、表面用ロール82Aと裏面用ロール82Bとの間に配置された正極集電体用ロール81から帯状正極集電体1が上記両帯状熱融着フィルム20間に巻き出される。巻き出された両帯状熱融着フィルム20および帯状正極集電体1を、平行に且つ接して配置された両合板ローラ84間を通過させて、帯状正極集電体1の表裏面に両帯状熱融着フィルム20を連続的に貼り合わせる。
【0033】
次に、第2工程である両面成膜工程72について説明する。
この両面成膜工程72では、幅方向を鉛直方向にして長さ方向へ移動させる帯状正極集電体1に対して、表裏面の両側からそれぞれ静電スプレー(後述する)で薄膜電池要素単体10を噴き付けて連続的に成膜していく。
【0034】
図5(a)に示すように、上記両面成膜工程に用いる両面成膜装置99は、表面成膜装置99Aおよび裏面成膜装置99Bからなり、この表面成膜装置99Aと裏面成膜装置99Bとは同一の構成である。上記表面成膜装置99Aは、帯状正極集電体1の表面に噴射口90Nを向けて配置した静電スプレー90と、この静電スプレー90の周囲において平面視が長方形状に張られた無端ベルト型マスク92と、この無端ベルト型マスク92を架け渡して支持するとともに回転移動させる4本の支持回転ローラ94と、無端ベルト型マスク92の内周面に吸引口95Nを向けて配置した吸引機95とから構成される。
【0035】
ここで、上記無端ベルト型マスク92は、帯状熱融着フィルム20よりも幅広であり、幅方向を鉛直方向にして長方形状に張られ、この長方形の一辺が帯状正極集電体1と平行に且つ近接して配置されたものである。図5(b)に示すように、この無端ベルト型マスク92には、帯状熱融着フィルム20の開口部21より僅かに大きな成膜用開口部91が、帯状熱融着フィルム20の開口部21の位置に対応させて、つまり長さ方向に複数形成されている。また、上記4本の支持回転ローラ94は、鉛直軸心回りに回転して無端ベルト型マスク92を回転移動させるものである。この回転移動により、無端ベルト型マスク92の成膜用開口部91の中心は、移動する帯状熱融着フィルム20の開口部21の中心に追従し得る。一方、上記静電スプレー90は、噴射口から薄膜電池要素単体10を無端ベルト型マスク92の成膜用開口部91に噴き付けることで、当該成膜用開口部91の大きさの薄膜電池要素単体10を、帯状熱融着フィルム20の開口部21に連続的に成膜するものである。また、上記吸引機95は、無端ベルト型マスク92の成膜用開口部91の周辺に付着した薄膜電池要素単体10の一部を、再利用のために吸引口95Nから吸収するものである。
【0036】
一方、上記裏面成膜装置99Bは、表面成膜装置99Aと同一の構成で、帯状正極集電体1の裏面側に配置される。
上記両面成膜装置99により、幅方向を鉛直方向にして長さ方向へ移動する帯状正極集電体1に対して、帯状熱融着フィルム20の開口部21より僅かに大きな薄膜電池要素単体10を、帯状熱融着フィルム20の各開口部21に表裏面の両側から連続的に成膜していく。
【0037】
次に、第3工程である仮プレス工程73について説明する。
この仮プレス工程73では、長さ方向に移動する帯状正極集電体1に対して、固定された仮プレス機88により、この帯状正極集電体1の表裏面に成膜された薄膜電池要素単体10を表裏面の両側から連続的に加圧していく。なお、この仮プレス機88には、単動プレスやローラプレスなどが用いられる。
【0038】
次に、第4工程である積層工程74について説明する。
まず、帯状正極集電体1の一端部に、負極集電体用ロール83から巻き出された帯状負極集電体3の一端部を交差させて重ねる。そして、図6に示すように、帯状正極集電体1および帯状負極集電体3の互いの一端部を接触させたまま、帯状負極集電体3の長さ方向を軸Xにして帯状正極集電体1を巻き取るように帯状負極集電体3を反転させる。これにより、帯状正極集電体1が折り込まれる。次に、帯状正極集電体1の長さ方向を軸にして帯状負極集電体3を巻き取るように帯状正極集電体1を反転させる。これにより、帯状負極集電体3が折り込まれる。同様にして、帯状正極集電体1と帯状負極集電体3とを交互に折り込んでいき、薄膜電池要素単体10の所望する積層数が得られると、帯状正極集電体1および帯状負極集電体3を切断して、当該帯状正極集電体1および帯状負極集電体3から積層体を分離させる、つまり積層体を形成する。
【0039】
次に、第5工程である本プレス工程75について説明する。
本プレス工程75では、図示しないが、コンベアで搬送される各積層体に対して、固定された本プレス機により、薄膜電池要素単体10の積層方向に加圧していく。また、この加圧と同時に、積層体を加熱して帯状熱融着フィルム20を各層で融着させて薄膜電池要素単体10を封止し、封止積層体を形成する。
【0040】
次に、第6工程であるパッケージ工程76について説明する。
パッケージ工程76で用いる装置には、図示しないが、導電板を湾曲させてU字型に形成した正極板41および負極板43と、金属箔片である正極リード51および負極リード53と、封止積層体を包装する外装体とが複数準備されている。そして、パッケージ工程76で用いる装置により、封止積層体における帯状正極集電体1の一端側から正極板41を嵌め込んで帯状正極集電体1の各山折り部に当該正極板41を接触させるとともに、当該封止積層体における帯状負極集電体3の他端側から負極板43を嵌め込んで帯状負極集電体3の各山折り部に当該負極板43を接触させて、半製品を製造する。その後、正極層11および負極層13に正極リード51および負極リード53をそれぞれ接続し、この半製品を外装体で包装するとともに、上記正極リード51および負極リード53の各一端部を外装体の外側に配置して、固体組電池が製造される。
【0041】
このように、上記固体組電池の製造方法では、簡素な構成の製造装置により連続して固体組電池を製造することができる。また、無端ベルト型マスク92に付着した薄膜電池要素単体10の一部を、吸引機95で吸収して再利用することにより、歩留まりを向上させることができる。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る固体組電池の製造方法を説明する。
【0042】
本発明の実施の形態2に係る固体組電池の製造方法は、上述した実施の形態1に係る固体組電池の製造方法において極性(正負極)を逆転させたものである。すなわち、上述した実施の形態1に係る固体組電池の製造方法では、帯状電極集電体および電極層の一例として帯状正極集電体1および正極層11について説明し、帯状対極集電体および対極層の一例として帯状負極集電体3および負極層13について説明したが、実施の形態2に係る固体組電池の製造方法では、帯状電極集電体および電極層が帯状負極集電体および負極層であり、帯状対極集電体および対極層が帯状正極集電体および正極層である。
【0043】
上記実施の形態2に係る固体組電池の製造方法では、このように極性(正負極)を逆転させた点以外について、実施の形態1に係る固体組電池の製造方法と全く同一の構成である。
【0044】
ところで、上記実施の形態1、実施例および実施の形態2では、積層体を加圧すると同時に加熱するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、積層体を加圧した後に加熱してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 帯状正極集電体
3 帯状負極集電体
10 薄膜電池要素単体
11 正極層
12 固体電解質層
13 負極層
20 帯状熱融着フィルム
21 開口部
22 スリット
41 正極板
43 負極板
51 正極リード
53 負極リード
81 正極集電体用ロール
82A 表面用ロール
82B 裏面用ロール
83 負極集電体用ロール
88 仮プレス機
91 成膜用開口部
92 無端ベルト型マスク
99 両面成膜装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極層、固体電解質層および対極層からこの順に形成した電池要素単体を、帯状電極集電体に複数配置するとともに、帯状対極集電体を介して積層した固体組電池の製造方法であって、
上記帯状電極集電体の表裏面に、開口部が長さ方向に複数形成された帯状絶縁体を配置し、
上記電池要素単体の電極層を上記帯状電極集電体に接触させるように、当該電池要素単体を上記各開口部に配置して、
隣り合う電池要素単体の両対極層で上記帯状対極集電体を表裏面から挟み込むように、上記帯状電極集電体と帯状対極集電体とを交差させて交互に折り込んで、積層体を形成し、
この積層体を、上記電池要素単体の積層方向に加圧することを特徴とする固体組電池の製造方法。
【請求項2】
帯状絶縁体が熱融着性を有するものであり、
積層体を加圧すると同時に、または加圧した後に、上記帯状絶縁体を加熱して融着させ、電池要素単体を封止することを特徴とする請求項1に記載の固体組電池の製造方法。
【請求項3】
帯状絶縁体が、各山折り位置において帯状電極集電体を露出させるスリットが形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の固体組電池の製造方法。
【請求項4】
帯状絶縁体が帯状電極集電体よりも幅広であり、開口部が帯状電極集電体よりも幅狭であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の固体組電池の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−243395(P2012−243395A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108918(P2011−108918)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】