説明

固定化された核酸の検出

【課題】チアゾールオレンジの誘導体である非対称シアニン色素、染色溶液、および本質的に非遺伝子毒性として特徴付けられる精選された蛍光発生的化合物を用いる、固定化された核酸の存在を決定するための方法を提供する。
【解決手段】一本鎖または二本鎖のDNA、RNA、またはそれらの組み合わせである核酸を、固体または半固体の支持体上に固定化する工程、上記固定化した核酸を、非対称シアニン色素化合物と接触させる工程、次いで上記固定化させた核酸を、それによって上記核酸の存在が決定される適切な波長を照射する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願の相互参照)
本願は、2003年9月30日出願の米国特許出願番号第60/507,630号の優先権を主張するものであり、本明細書中にその開示を参考として援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、核酸ポリマーと複合される場合に、検出可能な蛍光シグナルを提供する、非対称のシアニンモノマー化合物に関連する。本発明は、分子生物学および蛍光に基づくアッセイの分野における適用を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
固定化された核酸、特にゲル上で分離された核酸の検出は、広く用いられる方法である。数多くの発色団および色素が核酸の検出のために存在するが、エチジウムブロマイドは、比較的検出限界が高いにもかかわらず、部分的には使用の容易さおよび低いコストに起因して、今もなお、最も一般的に用いられる核酸検出試薬の一つである。
【0004】
エチジウムブロマイドは、核酸が前もって染色されてもよく、後で染色されてもよく、そしてUV光源の他に可視化のための特別な装置を必要としないので、核酸ゲル染料として用いるのが容易である。エチジウムブロマイドは、400nm未満のUV光によって励起され、そしてDNAと結合した場合に、約620nmの発光スペクトルを有する。従って、染色されたゲルは、代表的には約300nmの光波長を有する紫外線透過照明装置によって励起され得、そして励起されたエチジウムブロマイド−DNA複合体ゲルは、白黒のポラロイドフィルムを用いて撮影される。エチジウムブロマイドの便利性にもかかわらず、この化合物はいくつかの重要な不都合を有する;すなわち、この化合物は、特別な操作手順および特別な廃棄物処分手順を必要とする、公知の変異原性因子および発癌物質であること。エチジウムブロマイドは、数種の生物において、DNA合成およびRNA合成の双方を妨害することによって複製を阻害すること、エイムス試験において変異促進性であること、ならびに微生物においてフレームシフト突然変異の原因となることが示されている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。このことは、エチジウムブロマイドが、dsDNAにインターカレートし、従って複製の間の誤りの原因となると考えられているからである(非特許文献4)。
【0005】
エチジウムブロマイドのこれらの制限により、本発明者らは、エチジウムブロマイドの利点(使用の容易さおよび低いコスト)を保持し、しかしエチジウムブロマイドの制限を克服する、固定化された核酸を検出するための改善された方法の開発を欲した。従って、この基準を満たすために、方法およびそれに続く色素は、1)大量に合成することが比較的容易であり(低コスト)、2)比較的低濃度で染色溶液中に存在し(低コスト)、3)UV光で励起され(核酸−色素複合体がUV透過照明装置によって可視化され得るような、使用の容易さ)、4)少なくともエチジウムブロマイドと同じ程度に感受性であり(使用の容易さ)、5)非遺伝子毒性であり(非変異促進性および無毒性)、そして6)水生生物に危険が無く、それゆえ特別な廃棄物処分を必要としないものでなければならない。
【0006】
本明細書中で、本発明者らは、エチジウムブロマイドと少なくとも同程度に感受性であり、エチジウムブロマイドに比べてさらなる試薬または器械を必要とせず、そして大量に生産し得る、固定化された核酸ポリマーを検出するための、非対称のシアニン色素化合物のクラスの使用(特許文献1および特許文献2)を報告する。本発明者らはまた、非遺伝子毒性であり、それゆえ最終消費者による特別な操作手順または特別な廃棄物処分手順を必要としない、色素化合物のこのクラス中の化合物を報告する。従って、本発明は、現在用いられる核酸検出試薬に対する改善であり、そして過去に解決されなかった問題を解決する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,883,867号明細書
【特許文献2】米国特許第4,957,870号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.J.Waring、”J.Mol.Biol.”、1965年、第13巻、p.269−282
【非特許文献2】McCannら、”PNAS”、1975年、第72巻、p.5135−5139
【非特許文献3】Singerら、”Mutation Research”、1999年、第439巻、p.37−47
【非特許文献4】Fukunagaら、”Mutation Research”、1984年、第127巻、p.31−37
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、非対称のシアニン色素、染色溶液、および本質的に非遺伝子毒性として特徴付けられる精選された蛍光発生的化合物を用いる、固定化された核酸の存在を決定するための方法を提供する。この方法は、核酸(一本鎖または二本鎖のDNA、一本鎖または二本鎖のRNA、あるいはそれらの組み合わせ)を固体または半固体の支持体上に固定化する工程、上記固定化された核酸を非対称のシアニン色素化合物と接触させる工程、次いで、上記固定化された核酸を、それによって上記核酸の存在が決定される適切な波長で照射する工程を包含する。上記シアニン色素化合物は代表的には、上記色素化合物、および、その中で溶液が上記色素化合物および上記固定化された核酸の接触を促進する、酢酸トリス緩衝液またはトリスホウ酸緩衝液を含む、水溶性染色溶液中に存在する。代表的には、上記固体または半固体の支持体は、ポリマーのゲル、膜、アレイ、ガラス、およびポリマーの微小粒子からなる群より選択される。好ましくは、上記ポリマーのゲルはアガロースまたはポリアクリルアミドである。
【0010】
あるいは本発明は、上記核酸が上記シアニン色素化合物と接触されて、上記核酸を前もって染色し、次いで上記核酸が固体または半固体の支持体上に固定化される方法を提供する。この方法がポリマーのゲル(例えば、アガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲル)と共に用いられる場合、上記核酸は前もって染色され、次いで、代表的には電気泳動によって上記ゲル上に固定化される。しかし、上記前もって染色された核酸はまた、他の支持体(例えばスライドガラスまたはポリマーのビーズ)上に固定化され得る。別の局面において、ポリマーのゲルが用いられる場合、上記シアニン色素化合物はポリマー化されていないゲルと混合され得、次いで凝固され得る。この方法において、上記核酸は上記ゲルに固定化され、そしてシアニン色素が上記核酸に結合して、蛍光性の検出可能なシグナルを生成するかたちで検出される。本方法の上記シアニン色素化合物は蛍光発生的であり、核酸と会合していない場合には、低い固有の蛍光を有し、しかし核酸と結合または会合する場合には、蛍光性になる。この点がエチジウムブロマイドを越える改善であり、ここで上記化合物は有意な固有の蛍光を有し、そして核酸の二本鎖領域にインターカレートした場合に、20〜25倍の蛍光の増加を示す(J.B.LePecq Anal.Biochem.17(1966)100−107)。
【0011】
本発明の上記シアニン色素化合物は、米国特許第4,883,867号明細書および同第4,957,870号明細書(前出)に開示された任意の化合物を含む。これらのシアニン色素化合物は、以下の式
【0012】
【化10】

を有し、ここでXはO、S、またはC(CHであり、Rは縮合されたベンゼン、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cアルキルであり、RおよびRは独立してC〜Cアルキルであり、そしてRはC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり、ここでtは独立して0、1、2、3または4であり、そしてsは独立して0、1、2、3または4である。nは0、1、2または3であるが、ゲル中のDNAを検出するために用いられる場合には、上記色素はチアゾールオレンジではない。
【0013】
これらのシアニン色素化合物は、以前、血液サンプル中の網状赤血球の検出における使用について開示されたが、本明細書中において本発明者らは、これらの化合物の、固定化された核酸ポリマーについての蛍光発生的色素としての新規の使用を報告する。好ましい実施形態において、上記シアニン色素化合物は、電気泳動によって分離された核酸ポリマー、好ましくはDNAについてのゲル染料として用いられる。
【0014】
本発明者らは予想外にも、ある精選された非対称のシアニン色素化合物が、本質的に非遺伝子毒性であるとして特徴付けられ得ることを発見した。最も広く用いられるDNAゲル染料はエチジウムブロマイドであるが、しかしこの化合物は公知の変異原性因子であり、従って特別な操作および特別な廃棄物処分を必要とする。本発明者らは本明細書中で、少なくともエチジウムブロマイドと同程度に感受性であり、そしてエイムス試験、インビトロ形質転換試験、前進突然変異スクリーニング、および染色体異常についてのスクリーニングに基づいて、本質的に非変異促進性かつ無毒性である(実施例2〜5)、非対称のシアニン色素化合物を報告する。それゆえ、少なくともエチジウムブロマイドと同程度に感受性である、本質的に非遺伝子毒性な色素化合物の同定は、過去には解決されなかった、特別な操作および特別な廃棄物処分の問題を解決することによって、エチジウムブロマイドの制限を克服する(実施例7を参照のこと)。加えて、上記色素化合物はUV光によって励起され、大量の使用および合成が容易である。非遺伝子毒性化合物の同定は、変異促進性か、または最終消費者に毒性の危険を有しないDNAゲル染料を提供する。このことは、核酸と結合または会合する化合物は、複製をおそらく妨害することから、強力な変異原性因子であると考えられるので、予想外の発見であった。
【0015】
比較の目的で、チアゾールオレンジ化合物、エチジウムブロマイド、および式
【0016】
【化11】

を有する化合物を、その遺伝子突然変異を誘導する能力、および細胞中の毒性レベルについて試験した。この試験は、化合物1(チアゾールオレンジの誘導体)が本質的に非遺伝子毒性であるとして特徴付けられるが、一方でチアゾールオレンジは、行われた試験に基づくとそのようには特徴付けられ得ないことを示した。それゆえこの化合物は、この化合物が最終消費者にとって遺伝子毒性的(変異促進性または毒性)な危険を有しない点で、固定化された核酸の検出に好ましい。
【0017】
従って本発明は、本発明のチアゾールオレンジ誘導体シアニン色素化合物および水溶性染色溶液を用いる、固定化された核酸の検出のための改善された方法を提供する。特に好ましい改善は、固定化された核酸の検出のための化合物1の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、チアゾールオレンジ(図1Aおよび図1B)および化合物1(図1Cおよび図1D)を用いた、アガロースゲル中の、染色前(図1Aおよび図1D)および染色後(図1Cおよび図1B)のDNAの検出を示す。実施例1を参照のこと。
【図2】図2は、エイムス試験における、エチジウムブロマイドおよび化合物1の間の比較を示す。実施例2を参照のこと。
【図3】図3は、エチジウムブロマイド(図1A)および化合物1(図1B〜図1D)で染色したDNAの比較を示し、ここで、図1Aおよび図1Bは30分間の染色後であり、そして図1Cは60分間の染色後であり、そして図1Dは90分間である。実施例6を参照のこと。
【図4A】図4Aは、UV透過照明装置およびDark Reader(Clare Chemical Research)により可視化したE−ゲル上のDNAの検出を示す。異なる量のLow DNA Mass Ladder(1μl、0.5μl、0.25μl、0.13μl)をE−Gel(2%)にロードし、ここでエチジウムブロマイドを4×濃度の化合物1で置き換えた。ゲルを30分間電気泳動し、次いで透過照明装置で可視化した。実施例9を参照のこと。
【図4B】図4Bは、UV透過照明装置およびDark Reader(Clare Chemical Research)により可視化したE−ゲル上のDNAの検出を示す。異なる量のLow DNA Mass Ladder(1μl、0.5μl、0.25μl、0.13μl)をE−Gel(2%)にロードし、ここでエチジウムブロマイドを4×濃度の化合物1で置き換えた。ゲルを30分間電気泳動し、次いで透過照明装置で可視化した。実施例9を参照のこと。
【図4C】図4Cは、UV透過照明装置およびDark Reader(Clare Chemical Research)により可視化したE−ゲル上のDNAの検出を示す。異なる量のLow DNA Mass Ladder(1μl、0.5μl、0.25μl、0.13μl)をE−Gel(2%)にロードし、ここでエチジウムブロマイドを4×濃度の化合物1で置き換えた。ゲルを30分間電気泳動し、次いで透過照明装置で可視化した。実施例9を参照のこと。
【図4D】図4Dは、UV透過照明装置およびDark Reader(Clare Chemical Research)により可視化したE−ゲル上のDNAの検出を示す。異なる量のLow DNA Mass Ladder(1μl、0.5μl、0.25μl、0.13μl)をE−Gel(2%)にロードし、ここでエチジウムブロマイドを4×濃度の化合物1で置き換えた。ゲルを30分間電気泳動し、次いで透過照明装置で可視化した。実施例9を参照のこと。
【図4E】図4Eは、UV透過照明装置およびDark Reader(Clare Chemical Research)により可視化したE−ゲル上のDNAの検出を示す。異なる量のLow DNA Mass Ladder(1μl、0.5μl、0.25μl、0.13μl)をE−Gel(2%)にロードし、ここでエチジウムブロマイドを4×濃度の化合物1で置き換えた。ゲルを30分間電気泳動し、次いで透過照明装置で可視化した。実施例9を参照のこと。
【図4F】図4Fは、UV透過照明装置およびDark Reader(Clare Chemical Research)により可視化したE−ゲル上のDNAの検出を示す。異なる量のLow DNA Mass Ladder(1μl、0.5μl、0.25μl、0.13μl)をE−Gel(2%)にロードし、ここでエチジウムブロマイドを4×濃度の化合物1で置き換えた。ゲルを30分間電気泳動し、次いで透過照明装置で可視化した。実施例9を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本発明を詳細に記載する前に、本発明が特定の組成物または処理工程に限定されるものではなく、これらが変わり得るように理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲中に用いられるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明白に他を指図しない限り、複数形の対象を含む。従って、例えば「シアニン色素化合物」への言及は複数の化合物を含み、そして「核酸」への言及は複数の核酸などを含む。
【0020】
他に定義されない限り、本明細書中で用いられる全ての技術的用語および科学的用語は、本発明の関連する分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。以下の用語は、本明細書中に記載されるように、本発明の目的のために定義される。
【0021】
本発明の特定の化合物は、溶媒和されていない形態で、ならびに水和された形態を含む溶媒和された形態で存在し得る。通常、溶媒和された形態は溶媒和されていない形態と等価であり、そして本発明の範囲内に包含される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶性の形態で存在しても、非結晶性の形態で存在しても良い。通常、全ての物理的形態は、本発明によって企図される使用について等価であり、そして本発明の範囲内にあると意図される。
【0022】
本発明の特定の化合物は、非対称の炭素原子(光心)または二重結合を有し;ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体、および個々の異性体は、本発明の範囲内に包含される。
【0023】
本発明の化合物は、単一の異性体(例えば、鏡像異性体、シス−トランス異性体、位置異性体、ジアステレオマー)として調製されても、異性体の混合として調製されても良い。好ましい実施形態において、上記化合物は実質的に単一の異性体として調製される。実質的に異性体として純粋な化合物を調製する方法は、当該分野で公知である。例えば、鏡像異性体に富んだ混合物および純粋な鏡像異性体化合物が、鏡像異性体的に純粋である合成中間体から、不斉中心における立体化学を変わらないままにするか、または結果としてその完全な逆位になるかのいずれかである反応と組み合わせて調製され得る。あるいは、合成経路の間の最終生産物または中間体は、単一の立体異性体に分解され得る。特定の立体中心を反転させるか、または変化しないままにするための技術、および立体異性体の混合物を分解するための技術は、当該分野で周知であり、そして特定の状況に対して方法を選択し、そして割り当てることは、当業者の能力の範囲内に十分入る。一般的には、Furnissら(編)、VOGEL’S ENCYCLOPEDIA OF PRACTICAL ORGANIC CHEMISTRY 第5版、Longman Scientific and Technical Ltd.、Essex、1991、pp.809−816;およびHeller、Acc.Chem.Res.23:128(1990)を参照のこと。
【0024】
明瞭さのために代表的には示していないが、本発明の任意の化合物に保有される任意の全体的な正の荷電または負の荷電は、必要な対イオンによって平衡を保たせられる。本発明の化合物が正に荷電される場合、対イオンは代表的には、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、ホスフェート、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、テトラアリールホウ酸塩、硝酸塩、ヘキサフルオロホスフェート、および芳香族カルボン酸または脂肪族カルボン酸の陰イオンから選択されるが、これらに限定されない。本発明の化合物が負に荷電される場合、対イオンは代表的には、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、アンモニウムイオン、または置換されたアンモニウムイオンから選択されるが、これらに限定されない。好ましくは、任意の必要な対イオンは生物学的に適合性であり、使用に当たって毒性でなく、そして生体分子に実質的に有害な効果を有さない。対イオンは当該分野で周知の方法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、または選択的沈殿(selective precipitation))によって容易に交換される。
【0025】
本発明の化合物はまた、このような化合物を構成する1つ以上の原子において、異常な割合の原子同位体を含み得る。例えば、上記化合物は放射活性な同位体(例えば、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)、または炭素−14(14C))によって放射標識され得る。本発明の化合物の全ての同位体の変動は、放射活性であってもなくても、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0026】
置換基が、左から右へ書かれる従来の化学式によって特定される場合、この置換基は等しく、化学的に同一な置換基を包含し、ここで、上記化学的に同一な置換基とは、その構造を右から左へ書いた結果生じるものである(例えば、−CHO−は−OCH−をまた列挙することを意図する)。
【0027】
用語「アシル」または「アルカノイル」は、単独で、または他の用語と組み合わせて、他に述べない限り、明白に規定された数の炭素原子、およびアルカンラジカルの少なくとも1つの末端上のアシルラジカルからなる、安定な直鎖もしくは分枝鎖、または環状炭化水素ラジカル、あるいはそれらの組み合わせを意味する。「アシルラジカル」は、その−OH部分を除くことによってカルボン酸から誘導される基である。
【0028】
用語「アルキル」は、単独で、または他の置換基の部分として、他に述べない限り、直鎖もしくは分枝鎖、または環状炭化水素ラジカル、あるいはそれらの組み合わせを意味し、それらは完全に飽和されていても、一不飽和(mono−unsaturated)であっても、多不飽和であっても良く、そして二価のラジカル(「アルキレン」)および多価のラジカルを含み得、これらは設計された炭素原子の数を有する(すなわち、C〜C10は、1〜10個の炭素を意味する)。飽和炭化水素ラジカルの例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えばn−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等のホモログおよび異性体のような基が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−プロピニルおよび3−プロピニル、3−ブチニル、ならびにより高次のホモログおよび異性体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
用語「アルキル」は、他に記載されない限り、以下でより詳細に定義されるアルキルの誘導体(例えば「ヘテロアルキル」)を含むことも意味される。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル」と名付けられる。
【0030】
本発明において有用な例示的なアルキル基は、約1〜約25個の間の炭素原子を含む(例えば、メチル、エチルなど)。8個以下の炭素原子を有する直線炭化水素鎖、分枝炭化水素鎖、または環状炭化水素鎖はまた、本明細書中で「低級アルキル」と呼ばれる。加えて、本明細書中で用いられるような用語「アルキル」は、炭化水素鎖断片の1つ以上の炭素原子において1つ以上の置換をさらに含む。
【0031】
用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)は、その従来の意味において用いられ、そして、それぞれ酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して、分子の残りに結合したアルキル基をいう。
【0032】
用語「ヘテロアルキル」は、単独で、または他の用語と組み合わせて、他に述べられない限り、明白に規定された数の炭素原子、ならびにO、N、Si、PおよびSからなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなる、直鎖もしくは分枝鎖、または環化炭素を含むラジカル、あるいはそれらの組み合わせを意味し、ここで、窒素原子、リン原子、および硫黄原子は必要に応じて酸化され、そして窒素へテロ原子は必要に応じて四級化され、そして硫黄原子は必要に応じてアルキル置換基またはヘテロアルキル置換基を有する三価である。ヘテロ原子O、N、P、SおよびSiは、上記へテロアルキル基の任意の内部位に位置しても、分子の残りに結合するアルキル基に位置しても良い。例としては、−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH、−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCH、および−CH=CH−N(CH)−CHが挙げられるが、これらに限定されない。2個までのヘテロ原子は連続し得る(例えば、−CH−NH−OCHおよび−CH−O−Si(CH)。同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、単独で、または別の置換基の一部として、ヘテロアルキルから誘導される二価ラジカルを意味し、−CH−CH−S−CH−CH−および−CH−S−CH−CH−NH−CH−を例示するが、これらに限定されない。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子はまた、鎖の末端のいずれか、または双方を占め得る(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。なおさらに、アルキレン結合基およびヘテロアルキレン結合基について、結合基のいかなる配向も、その結合基の式が書かれる方向に含意されない。例えば、式−C(O)R’−は、−C(O)R’−および−R’C(O)−の双方を表す。
【0033】
用語「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、単独で、または他の用語との組み合わせで、他に述べられない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状バージョンを表す。さらにヘテロシクロアルキルについて、ヘテロ原子は、複素環が分子の残りに結合する位置を占め得る。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例としては、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
用語「アリール」は、他に述べない限り、単環であっても複数の環(好ましくは1〜4個の環)であっても良い、多不飽和の芳香族の部分を意味し、これらは互いに縮合されるか、または共有結合的に結合される。アリール置換基の特定の例としては、フェニル、ビフェニル、o−テルフェニル、m−テルフェニルまたはp−テルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリルまたは9−アントリル、1−フェナントレニル、2−フェナントレニル、3−フェナントレニル、4−フェナントレニルまたは9−フェナントレニル、および1−ピレニル、2−ピレニルまたは4−ピレニルの置換された誘導体または置換されていない誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいアリール置換基は、フェニル、置換されたフェニル、ナフチル、または置換されたナフチルである。
【0035】
本明細書中で用いられる用語「ヘテロアリール」は、1つ以上の炭素原子が非炭素原子、特に窒素、酸素、または硫黄によって置換された、上に定義したアリール基をいう。例えば、このような基としては、フリル、テトラヒドロフリル、ピロリル、ピロリジニル、チエニル、テトラヒドロチエニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピリジル、ピリダジイル、トリアジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラジニル、ピペライニル(piperainyl)、ピリミジニル、ナフチリジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、インドリニル、インドリジニル、インダゾリル、キノリジニル、キノリニル(qunolinyl)、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、プテリジニル、キヌクリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチジニル、フェノキサジニル、プリニル、ベンズイミダゾリル、およびベンズチアゾリル、ならびにそれらの芳香族環縮合アナログが挙げられるが、これらに限定されない。多くのフルオロフォアはヘテロアリール基に含まれ、キサンテン、オキサジン、ベンズアゾリウム(benzazolium)誘導体(シアニンおよびカルボシアニンを含む)、ボラポリアザインダセン、ベンゾフラン、インドールおよびキナゾロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
環置換基がヘテロアリール置換基である場合、さらなる6員の芳香族環に、あるいは1つの5員または6員のヘテロ芳香族環に必要に応じて縮合する、5員または6員のへテロ芳香族環として定義される。上記ヘテロ芳香族環は、任意の組み合わせでO、NまたはSからなる群より選択される、少なくとも1個のへテロ原子、および3個もの数のヘテロ原子を含む。上記ヘテロアリール置換基は単結合によって結合され、そして必要に応じて、以下に定義されるように置換される。
【0037】
ヘテロアリール部分の特定の例としては、2−フラニルまたは3−フラニル;2−チエニルまたは3−チエニル;N−ピロリル、2−ピロリルまたは3−ピロリル;2−ベンゾフラニルまたは3−ベンゾフラニル;2−ベンゾチエニルまたは3−ベンゾチエニル;N−インドリル、2−インドリルまたは3−インドリル;2−ピリジル、3−ピリジルまたは4−ピリジル;2−キノリル、3−キノリルまたは4−キノリル;1−イソキノリル、3−イソキノリルまたは4−イソキノリル;2−(1,3−オキサゾリル)、4−(1,3−オキサゾリル)または5−(1,3−オキサゾリル);2−ベンゾオキサゾリル;2−(1,3−チアゾリル)、4−(1,3−チアゾリル)または5−(1,3−チアゾリル);2−ベンゾチアゾリル;3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリルまたは5−イソキサゾリル;N−イミダゾリル、2−イミダゾリルまたは4−イミダゾリル;N−ベンズイミダゾリルまたは2−ベンズイミダゾリル;1−ナフトフラニルまたは2−ナフトフラニル;1−ナフトチエニルまたは2−ナフトチエニル;N−ベンズインドリル、2−ベンズインドリルまたは3−ベンズインドリル;2−ベンゾキノリル、3−ベンゾキノリルまたは4−ベンゾキノリル;1−アクリジニル、2−アクリジニル、3−アクリジニルまたは4−アクリジニルの置換された誘導体、あるいは置換されていない誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいヘテロアリール置換基としては、置換された、または置換されていない4−ピリジル、2−チエニル、2−ピロリル、2−インドリル、2−オキサゾリル、2−ベンゾチアゾリルまたは2−ベンズオキサゾリルが挙げられる。
【0038】
上の複素環式基はさらに、ヘテロアリール基の1つ以上の炭素原子および/または非炭素原子において、1つ以上の置換基を含み得る(例えば、アルキル;アリール;複素環;ハロゲン;ニトロ;シアノ;ヒドロキシル;アルコキシルもしくはアリールオキシル;チオまたはメルカプト、アルキルチオもしくはアリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、もしくはアリールアルキルアミノ;アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、ジアリールアミノカルボニルもしくはアリールアルキルアミノカルボニル;カルボキシル、またはアルキルカルボニルもしくはアリールオキシカルボニル;アルデヒド;アリールカルボニルもしくはアルキルカルボニル;イミニル、またはアリールイミニルもしくはアルキルイミニル;スルホ;アルキルスルホニルもしくはアリールスルホニル;ヒドロキシイミニル、またはアリールイミニルもしくはアルコキシイミニル)。加えて、2つ以上のアルキル置換基が合わせられ得、縮合された複素環式アルキル環系を形成する。複素環式基(例えば、ヘテロアリールオキシ、およびヘテロアラルキルチオ)を含む置換基は、上に記載した用語との類似として定義される。
【0039】
本明細書中で用いられる用語「ヘテロシクロアルキル」は、上に記載した1つ以上のアルキル基によって親構造に結合された複素環式基をいう(例えば、2−ピペリジルメチルなど)。用語「ヘテロシクロアルキル」は、上に記載した1つ以上のアルキル基によって親構造に結合されたヘテロアリール基をいう(例えば、2−チエニルメチルなど)。
【0040】
簡潔のために、他の用語と組み合わせて用いられる場合の用語「アリール」(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)としては、上に定義したようなアリール環およびヘテロアリール環の双方が挙げられる。従って、用語「アリールアルキル」は、アルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)がアリール基に結合したラジカルを含み、ここで上記アルキル基は、その炭素原子(例えば、メチレン基)が、例えば酸素原子によって置換された(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)アルキル基を含むことを意味する。
【0041】
上の用語のそれぞれ(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)は、指示されるラジカルの置換された形態および置換されていない形態の双方を含む。それぞれの型のラジカルについての好ましい置換基は、以下に提供される。
【0042】
アルキルラジカルおよびヘテロアルキルラジカル(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルとして、しばしば呼ばれる基を含む)についての置換基は一般に「アルキル基置換基」として呼ばれ、そして以下から選択される種々の基の1つ以上であり得るが、これらに限定されない:−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R’”、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R’”、−NR”C(O)R’、−NR−C(NR’R”R’”)=NR””、−NR−C(NR’R”)=NR’”、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R”、−NRSOR’、−CN、および−NOであり、その数は0〜(2m’+1)の範囲であり、ここでm’は、このようなラジカル中の炭素原子の総数である。R’、R”、R’”およびR””はそれぞれ、好ましくは独立して、水素、置換された、または置換されていないヘテロアルキル、置換された、または置換されていないアリール(例えば、1〜3個のハロゲンで置換されたアリール)、置換された、または置換されていないアルキル基、アルコキシ基またはチオアルコキシ基、あるいはアリールアルキル基をいう。本発明の化合物が1つ以上のR基を含む場合、例えば、それぞれのR基は、1つ以上のR’基、R”基、R’”基およびR””基が存在する場合に、R’基、R”基、R’”基およびR””基のそれぞれであるように独立して選択される。R’およびR”が同じ窒素原子に結合する場合、これらは窒素原子と合わせられ得て、5員環、6員環、または7員環を形成する。例えば、−NR’R”は、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルが挙げられるが、これらに限定されないことを意味する。上の置換基の議論から、当業者は、用語「アルキル」が水素基以外の基(例えば、ハロアルキル(例えば、−CFおよび−CHCF)およびアシル(例えば、−C(O)CH、−C(O)CF、−C(O)CHOCHなど))に結合した炭素原子を含む基を含むことを意味することを理解する。
【0043】
アルキルラジカルについて記載した置換基と同様に、アリール基およびヘテロアリール基についての置換基は、一般的に「アリール基置換基」と呼ばれる。上記置換基は、たとえば以下から選択される:ハロゲン、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R’”、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R’”、−NR”C(O)R’、−NR−C(NR’R”R’”)=NR””、−NR−C(NR’R”)=NR’”、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R”、−NRSOR’、−CNおよび−NO、−R’、−N、−CH(Ph)、フルオロ(C〜C)アルコキシ、およびフルオロ(C〜C)アルキルであり、その数は0〜芳香族環系上の開放された原子価の総数の範囲であり;そしてここで、R’、R”、R’”およびR””は、水素、置換された、または置換されていないアルキル、置換された、または置換されていないヘテロアルキル、置換された、または置換されていないアリール、および置換された、または置換されていないヘテロアリールから、好ましくは独立して選択される。本発明の化合物が1つ以上のR基を含む場合、例えば、それぞれのR基は、1つ以上のR’基、R”基、R’”基およびR””基が存在する場合に、R’基、R”基、R’”基およびR””基のそれぞれであるように独立して選択される。以下のスキームにおいて、記号Xは上に記載した「R」を表す。
【0044】
本明細書中に記載されるアリール置換基およびヘテロアリール置換基は、置換されていないか、または必要に応じて、および独立して、H、ハロゲン、シアノ、スルホン酸、カルボン酸、ニトロ、アルキル、ペルフルオロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアルキルアミドによって置換される。
【0045】
上記アリール環またはヘテロアリール環の隣接した原子上の置換基の2つは、必要に応じて、式−T−C(O)−(CRR’)−U−の置換基で置換され得、ここで、TおよびUは独立して−NR−、−O−、−CRR’−または単結合であり、そしてqは0〜3の整数である。あるいは、上記アリール環またはヘテロアリール環の隣接した原子上の置換基の2つは、必要に応じて、式−A−(CH−B−で置換され得、ここでAおよびBは独立して−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−または単結合であり、そしてrは1〜4の整数である。そのように形成された新しい環上の単結合の1つは、必要に応じて二重結合によって置換され得る。あるいは、上記アリール環またはヘテロアリール環の隣接した原子上の置換基の2つは、必要に応じて、式−(CRR’)−X−(CR”R’”)−の置換基で置換され得、ここでsおよびdは独立して0〜3の整数であり、そしてXは−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−S(O)NR’−である。置換基R、R’、R”およびR’”は、好ましくは独立して、水素、あるいは置換された、または置換されていない(C〜C)アルキルから選択される。
【0046】
本明細書中に用いられるように、用語「ヘテロ原子」としては、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)および珪素(Si)が挙げられる。
【0047】
用語「アミノ」または「アミン基」は、基−NR’R”(またはNRR’R”)をいい、ここでR、R’およびR”は、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、ヘテロアリール、および置換されたヘテロアリールからなる群より独立して選択される。置換されたアミンは、R’またはR”が水素以外であるアミン基である。第一級アミノ基において、R’およびR”の双方が水素であり、一方で第二級アミノ基において、R’またはR”のいずれかが水素であるが、双方ではない。加えて、用語「アミン」および「アミノ」はプロトン化されたバージョンの窒素、および四級化されたバージョンの窒素を含み得、これらは基−NRR’R”および、その生物学的に適合性の陰イオン性対イオンを含む。
【0048】
本明細書中で用いられる用語「親和性」は、2つの分子(例えば、抗体およびリガンドまたは抗原、あるいは正に荷電した部分および負に荷電した部分)の結合相互作用の強さをいう。二価の分子(例えば抗体)について、親和性は代表的には、抗原についての1つの結合ドメイン(例えば、抗原についての1つのFab断片)の結合強度として定義される。抗原についての双方の結合ドメイン同士の結合強度は、「アビディティー」といわれる。本明細書中で用いられるように、「高い親和性」は、10−1を超える、代表的には10〜1011−1の親和性定数(K)有する抗体に結合するリガンドをいい;阻害ELISA、または匹敵する技術(例えば、スキャッチャードプロット、またはKと相反するK/解離定数を用いて、など)により決定される相当する親和性によって決定される。
【0049】
本明細書中で用いられる用語「水溶液」は、主に水であり、そして水の溶液特性を保持する溶液をいう。水に加えて溶媒を含む水溶液の場合、水は代表的には主なる溶媒である。
【0050】
本明細書中で用いられる用語「複合体」は、通常非共有結合による、2つ以上の分子の会合をいう。
【0051】
本明細書中で用いられる用語「シアニンモノマー」または「シアニン色素」は、1)置換されたベンザゾリウム部分、2)ポリメチン架橋、および3)置換された、または置換されていないピリジニウム部分またはキノリニウム部分を含む、蛍光発生的化合物をいう。これらのモノマーまたは色素部分は、核酸と非共有結合的な複合体を形成し得、そして核酸−色素複合体の形成後に蛍光シグナルの増強を示し得る。
【0052】
本明細書中で用いられる用語「検出可能な反応」は、観察によってか、または機器によってのいずれかで、直接的にか、または間接的に検出可能なシグナルの変化または発生をいう。代表的には、上記検出可能な反応は、波長分配パターン、または吸光度もしくは蛍光の強度の変化、あるいは光散乱、蛍光寿命、蛍光偏光、または上のパラメーターの組み合わせにおける変化を結果として生じる光学的な反応である。
【0053】
本明細書中で用いられる用語「本質的に非遺伝子毒性」は、原核生物細胞および/または真核生物細胞に対して、これらの細胞と接触した場合に、些細な量の毒性または突然変異しか引き起こさない物質をいう。物質の非遺伝子毒性効果は、当該分野で周知の試験およびスクリーニングアッセイによって決定され、これらの試験およびスクリーニングアッセイとしては、エイムス試験、染色体異常試験、前進突然変異スクリーニング、およびLC50値を決定する試験が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書中で用いられる用語「遺伝子毒性」は、原核生物細胞および/または真核生物細胞に対して毒性および/または突然変異を引き起こし、結果として、細胞または生物の死および制御されない増殖を含む、異常な細胞増殖を引き起こす物質をいう。
【0055】
本明細書中で用いられる用語「キット」は、関連した構成成分、代表的には、1つ以上の化合物または組成物の包装されたセットをいう。
【0056】
本明細書中で用いられる用語「変異原性」は、細胞または生物の核酸に、点変異、フレームシフト変異、および欠失変異を含む突然変異を引き起こす物質をいう。
【0057】
本明細書中で用いられる用語「核酸ポリマー」は、一本鎖、二本鎖、三本鎖、または四本鎖であるDNAまたはRNAの天然のポリマーまたは合成ポリマーをいう。ポリマーは、長さが2個以上の塩基である。用語「核酸」は本明細書中で、「核酸ポリマー」と交換可能に用いられる。
【0058】
本明細書中で用いられる用語「サンプル」は、標的核酸を含み得る任意の物質をいう。代表的には、上記サンプルは、固体または半固体の表面(例えば、核酸ポリマー、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドを含むポリアクリルアミドゲル、膜ブロット、またはマイクロアレイ)上に固定されるが、しかし、水溶液中または生存可能な細胞培養物中にあってもよい。しかし、上記サンプルは、生きた細胞、内在性の宿主細胞タンパク質、ペプチドおよび緩衝液溶液を含む生物学的流体であり得る。
【0059】
(化合物および組成物)
本発明は、固定化された核酸、水溶性染色溶液および核酸の複合化合物の存在を決定するための改善された方法を提供する。本発明の一つの局面において、上記の改善は、本質的に非遺伝子毒性であるとして特徴付けられるシアニン色素化合物の使用からなる。これらの化合物は、一般的に毒性および/または変異促進性であるとして考えられ、そして、核酸検出試薬(例えばエチジウムブロマイド)と使用者との間に直接的な接触が無いことを確実にするための予防策を後に続けることが必要な、最終消費者および環境への健康上の危険を有する、現在用いられる核酸検出因子を越える改善である。従って、非遺伝子毒性核酸検出因子の発見は、最終消費者にとって取り扱いが安全であり、危険でない廃棄物として処分し得る、すなわち環境に安全である、重要な改善である(実施例7)。本明細書中で、本発明者らは、特別な取り扱いまたは特別な廃棄物処分を必要とせず、しかし一般的に用いられるエチジウムブロマイドの利点の全てを保持する核酸の検出のための改善された方法を報告する。
【0060】
公知であるか、または固定化されたDNAと会合すると考えられる、多くの異なるクラスの化合物が試験された。代表的には、核酸複合体化合物は、商品名SYBR(登録商標)色素(Molecular Probes,Inc.)として販売される色素、チアゾールオレンジ、これらの誘導体、ならびに米国特許第4,957,870号明細書;同第4,883,867号明細書;同第5,436,134号明細書;同第5,658,751号明細書、同第5,534,416号明細書、および同第5,863,753号明細書に開示される任意のモノマー化合物が挙げられるが、これらに限定されない非対称シアニン色素である。これらの化合物は、Salmonella typhimurium中で突然変異を誘導する能力についてエイムス試験において同時にスクリーニングされ、ここでその目的は、用いられた上記色素化合物が、エチジウムブロマイドと少なくとも、またはそれ以上に感受性であり、しかしエチジウムブロマイドと比べて減少した遺伝子毒性効果を有するような、固定化された核酸の検出のための改善された方法を開発することであった。これらの初期スクリーニングの結果は、2つの化合物(チアゾールオレンジおよび化合物1)が、中程度に変異促進性であるか、または非変異促進性であるかのいずれかであること、および、双方が、電気泳動によってゲル中に固定化された核酸を、UV光(約300nm)によって励起された場合に検出可能であることを示している(実施例1を参照のこと)。比較の目的で、エチジウムブロマイドを、チアゾールオレンジおよび化合物1と共に、適切コントロールと共に試験した(実施例2〜5を参照のこと)。
【0061】
従って、本発明の一つの局面において、米国特許第4,883,867号明細書および同第4,957,870号明細書(前出)に開示される化合物が、固定化された核酸の存在の決定における使用に好ましい。これらのシアニン色素化合物は以下
a)
【0062】
【化12】

の式を有し、ここで、XはO、SまたはC(CHであり、Rは縮合されたベンゼン、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cアルキルであり、RおよびRは独立してC〜Cアルキルであり、そしてRはC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり、ここで、tは独立して0、1、2、3または4であり、そしてsは独立して0、1、2、3または4である。nは0、1、2または3である。
【0063】
好ましい実施形態において、上記色素化合物はチアゾールオレンジ
【0064】
【化13】

または以下の式:
【0065】
【化14】

を有する化合物1であり、ここで、Rは水素であり、Rはメチルであり、nは0であり、Rは水素であり、そしてRはメチル(チアゾールオレンジ)またはプロピル(化合物1)のいずれかである。しかし、ゲル中のDNAの検出のためのチアゾールオレンジの使用は、本発明の局面ではない(Ryeら、Nucleic Acids Res.19(2)(1991)327−33)。それゆえ、化合物1が、ポリマー性ゲル上に固定化された核酸の検出に好ましい。
【0066】
これらの色素は、低い固有の蛍光を有するが、核酸に結合すると蛍光の有意な増加を示す。これらの色素化合物は、480nm〜520nmの最大励起を有するが、これらの化合物はUV光によって励起され得、このUV光は代表的には400nm未満であるとして理解される。従って、上記シアニン色素化合物は、分離された核酸を含むエチジウムブロマイド染色されたゲルについて代表的に用いられるように、UV透過照明装置を用いて励起され得る。これらの色素の励起は、代表的には約530nm〜約600nmの範囲である。エチジウムブロマイドはUV光によって励起され得るが、DNAと会合した場合、540nmの最適吸収および620nmの発光を有する。従って、化合物1を含む本シアニン色素化合物は、UV光によって励起可能であり、そしてエチジウムブロマイドと比較して類似した励起発光を有する基準に適合する。
【0067】
チアゾールオレンジおよび化合物1がエイムス試験において試験され、そして過去に試験されたエチジウムブロマイドと比較された(Singerら、(1999)前出)(実施例2)。3つの化合物(エチジウムブロマイド、チアゾールオレンジおよび化合物1)全てが、インビトロ形質転換試験(実施例3)、前進突然変異スクリーニング(実施例4)、および染色体異常についてのスクリーニング(実施例5)において試験された。この試験のパネルは、結果として、遺伝子毒性か非遺伝子毒性のいずれであるかの化合物の識別を与え、ここで遺伝子毒性とは、細胞毒性効果(cell cytoxicity effect)および遺伝子突然変異の双方を含むように定義される。これらの試験が、その遺伝子毒性効果について、固定化された核酸ポリマーの検出に用いられるべき他の化合物をスクリーニングするために用いられ得ることが、当業者によって理解される。予想外に、これらの試験に基づき、チアゾールオレンジは遺伝子毒性であると見なされるが、しかし、チアゾールアナログである化合物1は、本質的に非遺伝子毒性であると特徴付けられる。加えて、化合物1は、この化合物が水生生物に危険または毒性であるかを決定するために試験され、ここで、化合物1は500mg/Lを超えるLC50値を有し、そして水生生物に危険ではないとして特徴付けられる(実施例7)。
【0068】
行われた試験に基き、化合物1は、マウスリンパ腫細胞において、チミジンキナーゼ(TK)座における突然変異の原因とならず、あるいは、培養されたヒト末梢血リンパ球において、S9代謝活性化の有り、または無しで、染色体異常を誘導しない。加えて、化合物1はシリアンハムスター胚(SHE)細胞培養物を形質転換しなかった。この後者の試験は、げっ歯類の発癌と高い一致(80%を超える)を有し、それゆえ、陰性試験は、化合物1が非発癌性であることを強く示す。従って、化合物1は、哺乳動物細胞に対する潜在的な遺伝子毒性の3つの独立した診断によって、危険な研究室試薬ではない。対照的に、エチジウムブロマイド試験は、SHEアッセイにおいて陽性であり、このことは、この染色がげっ歯類に対し発癌性であることが見出されることを示す。エチジウムブロマイドについての2年間の生物検定研究は、まだ報告されていない。
【0069】
(表1:)
【0070】
【表1】

化合物1は、エチジウムブロマイドおよびチアゾールオレンジと比べて、数種の異なるSalmonella typhimuriumの株における測定により、エイムス試験においてより少ない突然変異を引き起こす(図1および表2を参照のこと)。この試験における弱く陽性な結果(化合物1)が、7株のうち3株で起き、そして、図1に示されるように、ラットの肝臓から得られた哺乳動物S9画分による活性化の後にのみであった。
【0071】
(使用の方法)
染色溶液は様々な方法により調製され得、これは以下に記載されるように、方法、およびサンプルが存在する培地に依存する。具体的には、上記染色溶液は、本発明の非対称シアニン色素、および核酸と適合性の緩衝化成分を含み、必要に応じて上記染色溶液は、有機溶媒、あるいは有機溶媒および付加的なイオン性成分または非イオン性成分の混合物を含む。染色溶液の任意の成分は、一緒に加えられても別々に加えられてもよく、そして特定の順番は無く、そして明白になるように、上記シアニン色素化合物は固体または半固体のマトリックスに固定化され得、ここで上記緩衝化成分がこのマトリックスに加えられて本発明の染色溶液を形成する。それゆえ、上記シアニン化合物は、溶液を形成するために染色溶液中で遊離である必要は無く、しかし、固体または半固体のマトリックス表面上に固定化され得る。あるいは、上記シアニン化合物は、固体または半固体のマトリックス上またはその中に固定化され、ここで上記色素化合物は緩衝液の非存在下において固定化された核酸に移行される。別の局面において、上記シアニン色素化合物は、緩衝液の無い系(例えば、E−gel(Invitrogen Corp))であるポリマー性ゲル中に固定化される。
【0072】
上記染色溶液は代表的には、本発明の非対称シアニン色素化合物を、水性溶媒(例えば水)、緩衝溶液(例えばリン酸緩衝化生理食塩水)、または有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、エタノールまたはアセトニトリル)の中に溶解することで調製される。代表的には、本発明のシアニン色素化合物は、ストック溶液として、まず有機溶媒(例えばDMSO)中に溶解される。代表的には、このストック溶液は、使用濃度と比較して約100倍〜約10,000倍に濃縮されている。
【0073】
一つの局面において、上記ストック溶液は次いで、必要に応じて適切な緩衝化成分を含む水溶液中に効果的な使用濃度まで希釈され、本発明の色素化合物および微量の有機溶媒を含む緩衝溶液を形成する。上記緩衝溶液は代表的には、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、酢酸トリス(TAE)またはトリスホウ酸(TBE)である。好ましくは、上記染色溶液は、本発明のシアニン色素、TAEまたはTBE、および微量のDMSOを含む。本発明の化合物の効果的な使用濃度は、核酸ポリマーと複合体化される場合に、検出可能な蛍光反応を与えるに十分な量である。代表的には、上記効果的な量は約100nm〜約100μMである。好ましいのは、約600nm〜約10μMであり、最も好ましいのは約1μMである。一般的に、染色溶液中に存在する特定の量の上記色素化合物は、サンプルの物理学的性質および行われる解析の性質によって決定されることが理解される。
【0074】
核酸がインタクトな細胞または細胞性細胞小器官から本質的に遊離している、固体または半固体の支持体上の固定化された核酸の存在を決定するための本発明の水性染色溶液は、本発明の非対称シアニン色素化合物、トリスホウ酸緩衝液または酢酸トリス緩衝液、および上記色素化合物を可溶化するために用いた微量の有機溶媒を含む。上記染色溶液は代表的には、約6〜約8のpHを有し、そして上記固体または半固体の支持体は、ポリマー性ゲル、膜、アレイ、ガラス、およびポリマー性微小粒子からなる群より選択される。本発明の一つの局面において、上記溶液は必要に応じてさらに、上記色素化合物がゲルの一部を形成し、そしてゲルが固定化された場合に、上記核酸サンプルが入り、上記色素化合物と接触するように、ポリマー化されていないアガロースまたはポリアクリルアミドを含む。
【0075】
従って、上記色素ストック溶液は希釈され、そしてアガロースならびに/またはアガロースおよび緩衝液と共に混合され、ここで上記核酸は、本発明の化合物を含むアガロース中に固定化される。上記アガロースは錠剤の形態であっても、プレキャスト(pre−cast)ゲルの形態であっても、熱されてそしてスラブゲルに流し込まれる状態にある凝固されたアガロースの形態であっても良い。これの一つの可能な形態は、核酸の電気泳動分離のために用いる濃度における、アガロース/TBE/および本発明の化合物の混合物である。溶融するまでの混合物の過熱工程、混合工程、および室温までの冷却を許容する工程。将来の任意の時点において、上記固体の混合物は再加熱され得、そして構成成分の測定および使用に先立つ混合の必要なしに、使用のために流し込まれ得る。この概念の別の繰り返しは、固体状態の上記色素を固体粉末状のアガロース(粉末として保存しても、錠剤として圧縮してもいずれでも良い)と混合して、保存することである。必要に応じて上記粉末は計量され、そして別々に計測し、ならびに色素を加える必要なく、使用のために緩衝液に加えられる。
【0076】
なお別の局面において、本化合物はポリマー性膜(例えばInstStain paper(Edvotek))中に含浸され、ここで上記膜は固定化された核酸と接触されて、結果として上記色素の、膜から核酸への移行を生じる。
【0077】
本発明の一つの局面において、固体または半固体の支持体上に固定化された核酸の存在または非存在を決定するための方法は、
b)本発明の非対称シアニン色素化合物をサンプルと合わせて、標識混合物を調製する工程であって、ここで上記サンプルは固体または半固体の支持体上に固定化される、工程;
c)上記標識混合物を、上記色素が上記核酸と会合するに十分な時間だけインキュベートし、インキュベートされたサンプルを調製する工程;
d)上記インキュベートされたサンプルを適切な波長で照射し、照射されたサンプルを調製する工程;および
e)それによって上記核酸の存在または非存在が決定される、上記照射されたサンプルを観察する工程
を包含する。
【0078】
本発明の一つの局面において、サンプル混合物中の上記核酸は、上記方法の過程において、移動度によって(例えば、電気泳動ゲルまたは電気泳動キャピラリー)、または大きさによって(例えば、遠心分離、ペレット化、または密度勾配)、あるいは結合親和性によって(例えば、フィルター膜に)、互いに、またはサンプル中の他の成分から分離される。上記サンプルは、上記色素と上記分析物との接触を促進する任意の手段によって、染色溶液と合わせられる。従って、本発明の化合物は染色溶液であっても、ポリマー性膜上で乾燥されても、上記核酸が固定化される固体または半固体の支持体と前もって混合されても良い。代表的には上記接触は、サンプルが溶液である場合のように、単純な混合を通して起きる。上記色素を含む染色溶液は、分析物溶液に直接的に加えられても、液体分離媒体(例えば、電気泳動液、篩いマトリックス(sieving matrix)またはランニング緩衝液)において、あるいは沈降(例えば、ショ糖)または浮遊密度勾配(例えば、CsClを含む)において、あるいは不活性マトリックス(例えば、ブロットまたはゲル、試験小片、あるいは他の任意の固体または半固体の支持体)上で分析物溶液と接触しても良い。適切な支持体としてはまた、ポリマー性微小粒子(常磁性微小粒子を含む)、ポリアクリルアミドゲルおよびアガロースゲル、ニトロセルロースフィルター、コンピューターチップ(例えばシリコンチップ)、天然膜および合成膜、ならびにガラス(光学フィルターを含む)、ならびに他のシリカを基本とする支持体およびプラスチック支持体が挙げられるが、これらに限定されない。上記色素は必要に応じて、分離の過程で、または核酸が分離された後で、ゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動、勾配遠心分離、または他の分離工程に先立って、分析物溶液と合わせられる。あるいは、上記色素は、プレキャストゲル、キャピラリー電気泳動、あるいは行われた密度勾配または沈降勾配におけるように、分析物溶液の添加に先立って、不活性マトリックスまたはキャピラリー中の溶液と合わせられる。
【0079】
上記サンプルは、蛍光性の核酸−色素化合物複合体を形成するに十分な時間だけ、上記色素化合物の存在下にてインキュベートされる。核酸溶液中の検出可能な蛍光は、本質的に瞬間性である。一般に、肉眼で見える検出可能な蛍光は、本発明の実施形態により広範囲の固体または半固体のマトリックス中において、サンプルと合わせられた後約10分〜約90分以内に、一般的には約20分〜約60分以内に、最も好ましくは約30分で得られ得る(実施例6を参照のこと)。この事例において、核酸サンプルは、代表的には電気泳動によってポリマー性ゲル上に固定化され、次いで上記ゲルを染色溶液中に浸し、ここで検出可能なシグナルが、核酸の存在を表す。蛍光性の核酸複合体の十分な形成に必要な時間が、個々のサンプルおよびサンプル媒介物の物理的性質および化学的性質に依存することが、当業者にとって容易に明白である。
【0080】
代替の実施形態において、上記固定化された核酸は、本発明のシアニン色素化合物を含む膜にかぶせられる。数分以内に、代表的には約10分未満で上記化合物は核酸に移行し、標識されたサンプル混合物を提供する。
【0081】
核酸−色素化合物複合体の検出を促進するために、蛍光性複合体の励起性質または発光性質が利用される。例えば、上記サンプルは、上記蛍光性複合体の最大吸収波長における、またはその近くの光を提供し得る光源(例えば、紫外線ランプまたは可視光ランプ、アーク灯、レーザー、あるいは太陽光までも)によって励起または照射される。好ましくは、上記蛍光性複合体は、約280nmと等しい、またはこれを超える波長において、より好ましくは約300nmと等しい、またはこれを超える波長において励起される。結果として生じる発光は、可視的検査、写真フィルム、または現在の機器(例えば、蛍光光度計、量子計数管、プレートリーダー、落射蛍光顕微鏡、およびフローサイトメーター)の使用を含む手段によって、あるいはシグナルを増幅するための手段(例えば光電子増倍管)によって検出される。一つの局面において、UV透過照明装置が、上記核酸−色素化合物複合体の照射に用いられる。別の局面において、可視光透過照明装置(例えば、Dark Reader(Clare Chemical Research,Inc.、CO)が、上記核酸−色素化合物複合体の照射に用いられる。
【0082】
本発明の一つの局面において、ゲル上に固定化された核酸ポリマーの存在を決定するための方法は、以下の工程:
a)核酸ポリマーを、ポリマー性ゲル上にて固定化する工程;
b)上記ゲルを染色溶液と接触させる工程であって、ここで上記染色溶液が、以下;
i)式
【0083】
【化15】

を有する非対称シアニン色素化合物であって、
ここでXはO、SまたはC(CHであり;
は縮合されたベンゼン、メトキシ、C〜Cアルキルであり;
およびRは独立してC〜Cアルキルであり;
はC〜Cアルキルまたはメトキシであり、ここでtは独立して0、1、2、3または4であり、そして
nは0、1、2または3である非対称シアニン色素化合物;および
iii)トリスホウ酸緩衝液または酢酸トリス緩衝液
を含む、工程、
c)工程b)の上記ゲルおよび上記染色溶液を、上記シアニン色素化合物が上記核酸ポリマーと会合することを許容するに十分な時間だけインキュベートする工程;ならびに、
a)上記固定化された核酸−シアニン色素複合体を、それによって上記核酸の存在が決定される適切な波長で照射する工程であって、ただし上記シアニン色素化合物はチアゾールオレンジではない工程
を包含する。
【0084】
代表的には上記ゲルは約3%〜約0.5%のアガロースゲルである。好ましくは上記アガロースゲルは約1%ゲルである。しかし、ゲルの割合は、分離され、そして固定化される核酸ポリマーの大きさに幾分依存することを、当業者は理解する。上記核酸ポリマーは、代表的には、電気泳動によって固定化され、ここで電流が上記アガロースゲルに適用され、そして荷電された核酸ポリマーが、大きさの関数としてゲルを通して移動する。しかし、上記核酸ポリマーは、ポリマー性ゲル(代表的にはアガロースまたはポリアクリルアミド)上にスポットされ得る。一つの局面において、アガロースE−ゲル(Invitrogen、CA)が、核酸を含むサンプルの分離および固定化に用いられる。
【0085】
好ましい実施形態において、上記シアニン色素化合物は化合物1によって表される。この事例において、化合物1は本質的に非遺伝子毒性であるとして特徴付けられる。従って、本発明の好ましい実施形態は、本質的に非遺伝子毒性である化合物を用いた、核酸の存在の決定の改善された方法である。この方法は、化合物1が過去に非遺伝子毒性であるとして開示されておらず、または固定化された核酸の検出の使用のために開示されていなかった、核酸を検出するために現今用いられる色素化合物の改善を提供する。
【0086】
上に記載したように、上記ゲルは、代表的には上記ゲルを上記染色溶液に浸すことで、本発明の染色溶液と接触させられる。上記ゲルは代表的には、上記染色溶液中に約10分間〜約90分間、好ましくは約20分間〜約60分間、最も好ましくは約30分間、浸される。しかし、ランニング緩衝液(上記ゲルを通して電流を伝導するために用いられる緩衝液)は、本発明の染色溶液によって置換され得る。この事例において、上記核酸が上記ゲルを通して移動する間に、上記核酸は上記シアニン色素と複合体を形成する。このようにして、インキュベートする工程は、固定化する工程および接触する工程と同時に起きる。
【0087】
上記染色されたアガロースゲルは代表的には、UV透過照明装置または可視光透過照明装置によって照射される。しかし、上記核酸−色素複合体の可視化を許容し、フルオロフォアを励起し、そして上記フルオロフォアによって発生された励起波長を記録する任意の適切な機器が、上記核酸−色素複合体の検出に用いられ得る。
【0088】
本発明の別の局面において、本発明の非対称シアニン色素化合物を含む上記染色溶液は、上記シアニン色素化合物が、凝固されたゲルの一部分を形成するように、ポリマー化していないゲルと合わせられる。この事例において、乾燥アガロースが緩衝液(例えばTBE)と合わせられ、そして熱せられて上記乾燥アガロースを溶解する。上記シアニン色素化合物のストック溶液を凝固する前に、緩衝液中の融解されたアガロースに加えられる。それゆえ、固定化する工程、接触する工程、およびインキュベートする工程が、本発明のこの局面において同時に起きる。
【0089】
(サンプル調製)
最終消費者は、サンプル、およびサンプルが調製される方法の選択を決定するが、サンプルは代表的には、インビトロの溶液に基いたアッセイ検出のために核酸を単離するための当該分野で周知の方法、あるいは固体または半固体のマトリックス上に固定化された核酸の検出のための周知の方法を用いて調製される。上記サンプルとしては、核酸ポリマーを含むと考えられる任意の生物学的由来の材料が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、サンプルとしてはまた、核酸ポリマーが、例えばPCR反応混合物、ポリマーゲル(例えばアガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲル)、または微小流体(microfluidic)アッセイ系に加えられた材料が挙げられる。本発明の別の局面において、上記サンプルはまた、異なるアッセイ条件下で理想的である本発明の色素化合物を決定するための、または本質的に非遺伝子毒性である本発明の色素化合物を決定するための、核酸ポリマーを含む緩衝溶液を含み得る。
【0090】
上記サンプルは生物学的流体(例えば、全血、血漿、血清、鼻汁、痰、唾液、尿、汗、経皮浸出液、脳脊髄液など)であり得る。生物学的流体はまた、目的の分析物が培地中に分泌される、組織および細胞培養培地を含む。あるいは、上記サンプルは、動物由来の器官全体、組織、または細胞であり得る。このようなサンプルの出所の例としては、筋肉、眼、皮膚、生殖腺、リンパ節、心臓、脳、肺、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、膵臓、固形腫瘍、マクロファージ、乳腺、中皮などが挙げられる。細胞としては、原核生物細胞(例えば細菌)、酵母、カビ、マイコバクテリアおよびマイコプラズマ、ならびに真核生物細胞(例えば、一次培養物および不死化した細胞株を含む、有核植物細胞および有核動物細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的には、原核生物細胞としては、E.coliおよびS.aureusが挙げられる。真核生物細胞としては、卵巣細胞、上皮細胞、循環免疫細胞、β細胞、肝細胞、およびニューロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
上記核酸は、天然的(起源が生物学的)または合成的(人工的に調製された)のいずれかであり得る。上記核酸は、核酸断片、オリゴヌクレオチド、または核酸ポリマーとして存在し得る。上記核酸は、凝縮した相(例えば染色体)として存在し得る。上記サンプル中の上記核酸の存在は、成功した、または失敗した実験的方法論、好ましくない汚染、または疾患の状態に起因し得る。核酸はサンプルの全体または一部のみに存在し得、そして核酸の存在は、個々のサンプルを区別するため、または単一のサンプル内の部分または領域を区別するために用いられ得る。
【0092】
上記核酸は生物学的構造(例えば、ウイルス粒子、細胞小器官、または細胞内に含まれる)に囲まれ得る。生物学的構造に囲まれた上記核酸は、培養細胞、生物体または組織、濾過されていない、または分離された生物学的流体(例えば尿、脳脊髄液、血液、リンパ液、組織ホモジネート、粘膜、唾液、便、または生理学的分泌物)、あるいは環境的サンプル(例えば、土壌、水および空気)を含む、広範囲の環境から得られ得る。上記核酸は、内生であっても、外部の物質として導入されても(例えば、感染またはトランスフェクトによって)良い。
【0093】
あるいは、上記核酸は生物学的構造に囲まれないが、サンプル溶液として存在する。上記サンプル溶液は、精製された核酸のサンプル溶液から、粗製混合物(例えば、細胞抽出物、生物学的流体、および環境的サンプル)まで変化し得る。ある場合において、上記核酸を、本発明のシアニン色素化合物と合わせる前に、上記溶液中の生体分子または流体の混合物から分離することが望ましい。多数の周知の技術が、他のタンパク質または他の生物学的分子を含む一般の粗製混合物からの核酸の分離および精製のために存在する。これらは、電気泳動的技術および種々の支持体を用いるクロマトグラフィー技術のような手段を含む。
【0094】
(照射)
核酸−色素化合物複合体を含むサンプルは、検出可能な光学的反応を与えるために選択される光の波長を照射され、そして上記光学的反応を検出するための手段によって観察される。本発明の化合物および組成物を照射するために有用な装置としては、UV透過照明装置、携帯型紫外線ランプ、水銀アーク灯、キセノンランプ、レーザー、レーザーダイオードおよびDark Reader、または米国特許第6,512,236号明細書および同第6,198,107号明細書に開示される任意の透過照明装置が挙げられるが、これらに限定されない。これらの照射源は、レーザースキャナー、蛍光マイクロプレートリーダー、あるいは標準の蛍光光度計または小型蛍光光度計に、光学的に組み込まれる。
【0095】
上記光学的反応は必要に応じて、視覚的検査、または任意の以下のデバイス:CCDカメラ、ビデオカメラ、写真フィルム、レーザー走査デバイス、蛍光光度計、フォトダイオード、量子計数管、落射蛍光顕微鏡、走査型顕微鏡、フローサイトメーター、蛍光マイクロプレートリーダーを用いて、またはシグナルを増幅するための手段(例えば光電子増倍管)によって検出される。
【0096】
核酸色素化合物の励起帯域および発光帯域の波長は、色素化合物組成によって変化し、広範囲の照射帯域および検出帯域を含む。このことは、特定の励起源または検出フィルターを用いる使用について、個々の色素化合物を選択することを可能にする。
【0097】
(キット)
核酸−色素化合物複合体を形成し、そして核酸を検出するための適切なキットもまた、本発明の一部を形成する。このようなキットは、容易に利用可能な材料および試薬から調製され得、そして様々な実施形態として機能する。上記キットの内容は、アッセイプロトコールの設計、あるいは検出または測定のための試薬に依存する。全てのキットは、使用説明書、適切な試薬、および本発明の核酸色素化合物を備える。代表的には、使用説明書は、使用者に上に記載された方法または調製の任意の一つを実行することを許容するための、試薬濃度、または互いに加えられる試薬およびサンプルの相対量、試薬/サンプル混合物についての保守時間期限、温度条件、緩衝液条件等のような、少なくとも1つのアッセイ方法パラメーターを記載する明確な表現を備える。
【0098】
本発明の一つの局面において、キットは、有機溶媒、および本発明の非対称のシアニン色素化合物を含む溶液を備える。代表的には、上記溶液はさらに緩衝成分を含み、ここで緩衝成分は好ましくは酢酸トリスまたはトリスホウ酸である。上記有機溶媒は代表的にはアルコールまたはDMSOである。上記キットは、上記染色溶液を濃縮物として、または1×の使用の準備の出来た濃度として備える。
【0099】
キットはさらに、欧州特許第1057001号明細書および国際公開第9942620号パンフレットに開示される任意の物品を含むEdvotek(Bethesda、MD)によって提供されるような、InstaStain paperを備え、ここで上記染色溶液は紙に噴霧乾燥されるか、または含浸される。次いで上記紙はゲルに適用され、ここでInstaStain paper中の色素はゲル中に移行される。上記キットはさらにポリマー化されたアガロースを、プレキャストゲル(例えば、E−ゲル(Ethrog/Invitrogen、米国特許第6,562,213号明細書;同第5865974号明細書;同第5582702号明細書;同第6379516号明細書;公開された米国特許出願公開第20020134680号明細書;同第2002/0112960号明細書、ならびに公開された国際公開第96/34276号パンフレットおよび同第97/41070号パンフレットに開示された任意のゲルを含む))の形態、または融解され、次いで適切なゲルスラブに注がれる必要のある形態(例えば、Continental Laboratory Products(San Diego、CA)から販売されるGel−O Shooter、またはIPM Scientific(Eldersburg、MD)から販売されるHeat and Pour Agarose)のいずれかにおいて備える。この場合において、上記染色溶液はポリマー化されたアガロースと前もって混合され得、液相の間に加えられるか、またはポリマー化の後に加えられる。別の局面において上記キットは、緩衝液を加え、次いでスラブに注がれる必要のある、アガロースの錠剤(例えば、Bioline(Randolf、MA)によって販売されるアガロース錠剤)を備える。上記染色溶液は、錠剤中に前もって混合されるか、または最終消費者によって決定される工程においてアガロースに加えられるように、別々のバイアルにおいて提供される。
【0100】
最終消費者に危険でなく、非遺伝子毒性であり、そしてポリマー性ゲル中に固定化される核酸の検出に用いられるキットについて、上記キット中の上記染色溶液は代表的には、有機溶媒DMSO、緩衝液酢酸トリスまたはトリスホウ酸、および化合物1を含む。
【0101】
本発明のキットは必要に応じて、サイズマーカーとして用いられる核酸断片、コントロール、付加的な検出試薬(例えば、DNAのみに特異的な染色化合物、またはRNAのみに特異的な色素化合物)をさらに備え得る。
【0102】
上に提供された本発明の詳細な説明、以下の実施例は、本発明を例証する目的で与えられ、そして本発明の範囲または特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきものではない。
【実施例】
【0103】
(実施例1:チアゾールオレンジおよび化合物1による、アガロースゲル中のDNAの検出)
異なる濃度のDNA(62.5ng、31.25ng、15.63ng、7.813ng、3.906ng、1.953ng、976.6pg、488.3pg、244.1pg、122.1pg、61.04pgおよび30.52pg)をロードし、1%アガロース上で、80vにて0.5×TBE中で分離した。上記ゲルを、TBE(50mL)、およびチアゾールオレンジまたは化合物1(DMSO中の色素ストック溶液4.54μl)のいずれかを含む染色溶液で染色した。あるいは、上記ゲルをチアゾールオレンジまたは化合物1のいずれかを含むように調製し、ここで1gのアガロース、100mlの0.5×TBEを、9.08μlのチアゾールオレンジまたは化合物1のストック溶液のいずれかに混合した。上記DNAをロードし、0.5×TBE中で80vにて分離した。これらのゲルのいくつかをまた、染色溶液で後に染色した。引き続いて全てのゲルの写真を撮影した。これらのゲルは、チアゾールオレンジおよびその誘導体の、ゲル中に分離され固定化された核酸を検出する能力を示す。図1を参照のこと。
【0104】
(実施例2:Salmonella/哺乳動物ミクロソーム復帰突然変異アッセイ(エイムス試験))
エイムスアッセイを、Amesによって記載された方法(Amesら、Mutation Research 31(1975)347−364;Levinら、PNAS 79(1982)7445−7449;MaronおよびAmes、Mutation Research 113(1983)173−215)を用いて行った。用いたテスター株(stain)は、Salmonella typhimuriumヒスチジン栄養要求株TA97a、TA98、TA100、TA102、TA1535、TA1537およびTA1538である。上記アッセイを、6用量の試験化合物(エチジウムブロマイド、チアゾールオレンジおよび化合物1)を用いて、S9(ラット肝臓抽出物)の存在下および非存在下の双方において、適切なビヒクルおよびポシティブコントロールとともに行った(Singerら、Mutation Research 439(1999)37−47)。上記試験化合物、試験ビヒクルおよびS9(適切な場合)を溶融した寒天に合わせ、次いで最小寒天プレートにかぶせた。37℃でのインキュベートに続いて、復帰突然変異体コロニーを計数した。S9を用いない場合、テスター株100μl、およびコントロール化合物または試験化合物50μlを、2.5mlの選択性上層寒天に加えた。S9を用いる場合、S9混合物500μl、テスター株100μl、およびコントロール化合物または試験化合物50μlを、2.0mlの選択性上層寒天に加えた。次いで上記上層寒天を、15×100mmのペトリ皿に含まれる最小下層寒天25mlの表面にかぶせた。反転させたプレートを、37±2℃にて、52±4時間インキュベートした。
【0105】
復帰突然変異体の数を計数し、そして試験化合物を非変異促進性または変異促進性のいずれかとみなした。試験化合物が変異促進性であるかを決定するための判定基準は、少なくとも1種のテスター株(TA97a、TA98、T100およびTA102)について、適切なビヒクルコントロールのプレート1枚あたりの平均復帰突然変異体に対して、1プレートあたりの平均復帰突然変異体の2倍の増加に基づく。テスター株TA1535、TA1537およびTA1538については、陽性の突然変異体を、適切なビヒクルコントロールと比較して、1プレートあたりの平均復帰突然変異体の3倍の増加として識別した。加えて、1プレートあたりの復帰突然変異体の平均数の増加は、試験化合物の濃度の増加への用量反応によって達成されることを必要とした。これらの得点方法論に基づき、S9の存在下において、化合物1は全てのテスター株について中程度に変異促進性であるか、または非変異促進性であるとみなされ、ここで化合物1は、4種のテスター株の復帰突然変異体について3倍〜4倍の増加を示し、チアゾールオレンジはS9の存在下で5種のテスター株について変異促進性であるとみなされ、そしてエチジウムブロマイドは4種のテスター株について4倍〜80倍の復帰突然変異体の増加を示し、3種のテスター株について変異促進性であるとみなされた(図2および表1を参照のこと)。チアゾールオレンジはまた、S9の非存在下において、2種のテスター株について変異促進性であるとみなされた。従って、エチジウムブロマイドと比較して、チアゾールオレンジは3〜4倍変異促進性が低く、そして化合物1は4〜5倍変異促進性が低い。エチジウムブロマイドおよびSybr Green Iは過去に試験され、ここで、Sybr Green Iは弱い変異促進性であるとみなされた(Singerら、Mutation Research 439(1999)37−47)。
【0106】
(表2:ビヒクルコントロール(DMSO)と比較した、復帰突然変異体の増加)
【0107】
【表2】

(実施例3:7日間曝露スクリーニングアッセイによる、シリアンハムスター胚(SHE)細胞のインビトロ形質転換)
このアッセイの設計は、Kerchaertら、Mutation Research 356(1996)65−84に記載された手順に基づき、そしてこれは化学物質の発癌可能性を評価するための、一般に是認された方法である。従って、このアッセイの目的は、試験化合物(エチジウムブロマイド、チアゾールオレンジおよび化合物1)の、7日間の曝露期間にともなう、ビヒクルコントロール培養物に比べた、培養したシリアンハムスター胚細胞の形態学的形質転換の増加を誘導する能力を決定することである。
【0108】
SHE細胞培養物を、20%のウシ胎仔血清(FBS)および4mMのL−グルタミンを補ったダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)のLeBoeufの改変(0.75g/LのNaHCO3、pH6.65〜6.75)中で増殖させた。上記培養物を、加湿空気中の10±0.5%COの雰囲気下で、37±1℃で維持した。公知の前発癌物質であるベンゾ[a]ピレン(B[a]P)を陽性コントロールとして用い、DMSOに溶解し、そしてSHE細胞培養物中で1.25μg/ml〜5μg/mlの範囲の濃度で用いた。細胞培養物中のDMSOの最終濃度は約0.2%であった。上記試験化合物をDMSO中に溶解し、そしてSHE細胞培養物中で0.0400μg/ml〜0.800μg/mlの最終濃度範囲にて用いた。7日間のインキュベート期間の後、培養皿をハンクス平衡塩溶液(HBSS)中で洗浄し、メタノールで固定し、そして10%の緩衝化水性ギムザで染色した。上記皿を水道水で洗浄した後、風乾した。1皿あたりのコロニーの平均数を決定し、そしてそれぞれの用量群について、ビヒクルコントロール群と相対的な、平均相対的培養効率(相対的生存、RPE)を計算した。形態学的形質転換表現型を示すコロニーを識別するために適用される基準を、1)三次元増殖のランダムな配向性(十文字)に重層した細胞を有するコロニー、2)十文字の細胞、およびコロニーの全体にわたる、増加する細胞質性好塩基性を有するコロニー、および/または3)通常のSHE細胞と比較して減少した細胞質:核の比を有する細胞を含むコロニーとした。
【0109】
上記試験化合物を、同時的なビヒクルコントロールと比較して少なくとも2用量レベルについて、形態学的形質転換頻度の統計学的に有意な増加を引き起こした場合、または1用量が統計学的に有意な増加を示し、そして傾向試験が有意であった場合、上記試験化合物をこのアッセイにおいて陽性であると評価した。形態学的形質転換における統計学的に有意な増加が得られなかった場合、上記試験化合物を陰性であると評価した。この方法論に基づいて、化合物1を陰性であるとみなし、一方チアゾールオレンジおよびエチジウムブロマイドを双方とも、7日間の曝露条件下でのSHE細胞形質転換アッセイのスクリーニングのおいて陽性であるとみなした。
【0110】
具体的には、化合物1は0.0500μg/mLにおいて本質的に非細胞障害性であり(120%のRPE)、0.150μg/mLにおいてわずかに細胞障害性であり(88%のRPE)、そして0.300μg/mLにおいて中程度に細胞障害性であり(59%のRPE)、ここで、上記の3つの処理群のいずれも、同時的なビヒクルコントロールと比較して、形態学的形質転換の頻度における有意な増加を誘導しなかった。
【0111】
(表3:)
【0112】
【表3】

MT=形態学的形質転換した;RPE=相対的培養効率
チアゾールオレンジは0.0400μg/mLにおいて本質的に非細胞障害性(noncytoxic)であり(97%のRPE)、0.150μg/mLにおいて中程度に細胞障害性であり(52%のRPE)、そして0.260μg/mLにおいて大いに毒性であり(25%のRPE)、ここで、上記の3つの処理群の内2つ(0.0400μg/mLおよび0.150μg/mL)が、同時的なビヒクルコントロールと比較して、形態学的形質転換の頻度における有意な増加を誘導した。
【0113】
(表4:)
【0114】
【表4】

MT=形態学的形質転換した;RPE=相対的培養効率
エチジウムブロマイドは0.200μg/mLにおいてわずかに細胞障害性であり(85%のRPE)、0.400μg/mLにおいて中程度に細胞障害性であり(66%のRPE)、そして0.800μg/mLにおいて大いに細胞障害性であった(28%のRPE)。上記の3つの処理群の内2つ(0.400μg/mLおよび0.800μg/mL)が、同時的なビヒクルコントロールと比較して、形態学的形質転換の頻度における有意な増加を誘導した。
【0115】
(表5:)
【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

MT=形態学的形質転換した;RPE=相対的培養効率
(実施例4:L5178Y TK+/−マウスリンパ腫前進突然変異スクリーニング)
このアッセイは、S9(アクロロアー(Acrolor)誘導性ラット肝臓に由来する哺乳動物ミクロソーム酵素の外因性代謝活性化系)の存在下または非存在下におけるコロニーの増殖によってアッセイによって、L5178Yマウスリンパ腫細胞中のチミジンキナーゼ(TK)座における有意な変異促進性活性を誘導する能力について、上記試験化合物を評価するものであり、そしてこれは、(CliveおよびSpector、31、Mutation Research(1975)17−29;Cliveら、59、Mutation Research(1979)61−108;Amacherら、Mutation Research 72(1980)447−474;Cliveら、Mutation Research 189(1987)143−156)によって報告されるアッセイに基づく。上記細胞培養物を、細胞障害性、および突然変異頻度の増加の双方について得点をつけ、ここで陽性の結果は、同時的なビヒクルコントロール(DMSO)の平均突然変異頻度の少なくとも2倍である頻度に基づいた。このアッセイに用いた上記マウスリンパ腫細胞は、TK座においてヘテロ接合性であり、TK活性がほとんど、または全く残らないTK−/−遺伝子型に、単一工程の前進突然変異を起こし得る。これらの突然変異体は通常の細胞培養培地中で生存可能であるが、これらの突然変異体はチミジンの毒性アナログをDNA中に取り込むことが出来ないので、チミジンアナログ5−トリフルオロチミジン(TFT)に耐性である。従って、TFTの存在下においてコロニーを形成するまで増殖する細胞は、それゆえ、自然にか、または上記の試験化合物によってのいずれかで、突然変異したと考えられる。このアッセイの結果は決定的ではないが、むしろ、試験化合物が変異促進性性質を有するか否かの指標である。
【0118】
マウスリンパ腫細胞を、ウマ血清(体積で10%)、Pluronic F68、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補ったRPMI1640中で培養した(Amacherら、Mutation Research 72(1980)447−474;CliveおよびSpector、Mutation Research 31(1975)17−29)。処理培地は、ウマ血清を体積で5%まで減少させた点を除いて、培養培地について用いたものと同じ培地補充を含むフィッシャー培地(Fisher’s medium)であった。クローン化培地は、20%未満のウマ血清を含み、Pluronic F68を含まず、そして半固体状態を達成するために0.24%のBBL寒天を加えたRPMI1640であった。選択培地は、3μg/mlのTFTを含むクローン化培地であった(Cliveら、Mutation Research 189(1987)143−156)。
【0119】
陽性コントロールを、S9活性化無し、およびS9活性化ありについて、それぞれメチルメタンスルホネート(MMS)およびメチルコラントレン(MCA)とした。MMSはL5178Y TK+/−細胞に大いに変異促進性である、直接作用する変異原性因子であり、13μg/mLの濃度で用いた。MCAは、L5178Y TK+/−細胞に変異促進性になるには、ミクロソーム酵素による代謝活性化(S9)を必要とし、そして2μg/mLまたは4μg/mLの濃度で用いた。上記試験化合物(エチジウムブロマイド、チアゾールオレンジおよび化合物1)を、0.00625μg/mL〜4.93μg/mLの濃度でアッセイした。
【0120】
上記細胞をペレット化し、そして、S9の有りおよび無しで、コントロールまたは試験化合物を含む処理培地に再懸濁した。このチューブを35℃〜38℃の軌道振盪インキュベーターに置き、そして1分あたり70±10軌道(orbital)にて回転した。4時間の曝露期間の後、細胞を2回洗浄し、10mLの培養培地に再懸濁し、そして軌道振盪器に戻して、そして突然変異体回収のために2日間細胞を増殖させた。2日後における約3×10細胞/mL未満の細胞密度では、突然変異体選択について考慮しなかった。突然変異体を、合計3×10細胞を軟寒天上の選択培地中に播種することで回収した。上記の皿を、約5%CO/約95%加湿空気において、約37℃で10日〜14日間インキュベートした。
【0121】
突然変異頻度を、播種した細胞の総数に対する、それぞれの突然変異体選抜皿中に発見される突然変異体コロニーの総数の比として計算し、これは、絶対的な選択クローン化効率によって調整される。細胞障害性は、結果として相対的総増殖(RTG)数となる、選択時における相対的クローン化効率によって増加される、2日間の発現期間にわたる細胞の相対的懸濁増殖に基づく。この方法論に基づき、3つの全ての試験化合物を非突然変異促進性であるとみなしたが、しかし細胞障害性の種々の度合いを有していた。
【0122】
具体的には、処理培地中にS9を含まないエチジウムブロマイドは、0.620μg/mLにおいて弱く細胞障害性であり、2.47μg/mLにおいて中程度に細胞障害性であり、そして4.93μg/mLにおいて中程度に高く細胞障害性であった。これらの濃度は、突然変異頻度においては増加を示さず、その突然変異頻度は、同時的なビヒクルコントロールと比較して、最低の基準である2倍の増加を上回った。処理培地中にS9を含むエチジウムブロマイドは、2.47μg/mLにおいて中程度に細胞障害性であり(37.1%のRTG)、4.93μg/mLにおいて中程度に高く細胞障害性であった(23.1%のRTG)。突然変異頻度の増加は見られず、それは最低の基準を上回った。
【0123】
(表6:)
【0124】
【表7】

S9を含まない化合物1は、0.125μg/mLにおいて非細胞障害性であり(80.3%のRTG)、そして0.250μg/mLにおいて中程度に高く細胞障害性であった(26.5%のRTG)。突然変異頻度における増加は見られず、それは同時的なビヒクルコントロールの2倍の頻度を上回った。S9を含む化合物1は、1.24μg/mLにおいて弱く細胞障害性であり(65.1%のRTG)、2.47μg/mLにおいて中程度に細胞障害性であり(47.1%のRTG)、そして4.93μg/mLにおいて過剰に細胞障害性であった(7.6%のRTG)。突然変異頻度における増加は見られず、それは同時的なビヒクルコントロールの頻度の2倍であった。
【0125】
(表7:)
【0126】
【表8】

【0127】
【表9】

S9を含まないチアゾールオレンジは、0.100μg/mLにおいて弱く細胞障害性であり(60.9%のRTG)、そして0.200μg/mLにおいて中程度に細胞障害性であった(23.4%のRTG)。突然変異頻度における増加は見られず、それは同時的なビヒクルコントロールの頻度の2倍であった。S9を含むチアゾールオレンジは、4.93μg/mLにおいて非細胞障害性であり(90.4%のRTG)、そして9.85μg/mLにおいて中程度に高く細胞障害性であった(22.6%のRTG)。突然変異頻度の増加は見られず、それは同時的なビヒクルコントロールの頻度の2倍であった。
【0128】
(表8:)
【0129】
【表10】

(実施例5:培養ヒト末梢血単核細胞(PBMC)における染色体異常のスクリーニングアッセイ)
このアッセイの目的は、試験化合物(エチジウムブロマイド、チアゾールオレンジおよび化合物1)の、外因性代謝活性化系の有りおよび無しで培養したヒトリンパ球中における構造的な染色体異常を引き起こす能力を評価することであった。健康な成人のボランティアから得たヒト静脈血を、ヘパリン処理した採血管(vacutainer)に引き込んだ。約0.3mlの新鮮なヘパリン処理した血液を十分な体積の培養培地に加えることで、全血培養を15mlの遠心管中で開始し、試験化合物の添加後に、代謝活性化の有りおよび無しでのアッセイにおいて、最終体積が5mLになるようにした。上記培養培地は、約20%の熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)、ペニシリン(100ユニット/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)、L−グルタミン(2mM)および2%のフィトヘマグルチニンM(PHA−M)を補ったRPMI1640であった。上記培養物を、緩いふたをして、37℃±2℃において、空気中に約5%のCO2の加湿したチャンバー中でインキュベートした。
【0130】
陽性コントロールを、S9活性化無し、およびS9活性化有りについて、それぞれマイトマイシンC(MMC)およびシクロホスファミド(CP)とした。MMCは、代謝活性化を必要としない直接作用するクラストーゲンであり、0.025μg/mL〜3.0μg/mLの濃度において用いた。CPは、染色体異常誘発性中間体に変換されるために、ミクロソーム酵素による代謝活性化を必要とし、10μg/mL〜300μg/mLの濃度において用いた。上記試験化合物(エチジウムブロマイド、チアゾールオレンジおよび化合物1)を、0.500μg/mL〜10μg/mLの濃度においてアッセイした。インビトロ代謝活性系は、ラット肝臓後ミトコンドリア画分(S9)およびエネルギー産生系(NADPH+イソクエン酸)からなる(MaronおよびAmes、113 Mutation Research(1983)173−215)。
【0131】
培養の開始後2日に、培養物を試験化合物で処理した。S9代謝活性化混合物を含まない培養物を、さらに22時間インキュベートし、最後の2±0.5時間はコルセミド(0.1μg/mL)を加えた。S9代謝活性化混合物を含む培養物を、3時間の曝露期間インキュベートした。曝露の後、細胞をPBSで少なくとも2回洗浄し、そして新鮮な培養培地を加えた。次いで上記細胞培養物をさらに18時間インキュベートし、インキュベートの最後2±0.5時間はコルセミド(0.1μg/mL)を加えた。
【0132】
インキュベート期間の最後に、培養物を遠心分離し、上清を捨て、そして細胞を75mMのKClで膨張させ、メタノール:氷酢酸(3:1 v/v)で固定し、スライドガラス上に滴下し、そして風乾させた。このスライドを5%ギムザで染色し、そして風乾し、次いでミトコンドリア毒性(mitotox)指標、倍数性および核内倍加を含む染色体異常について解析した。この方法論に基づき、細胞を個々に上記の3つの試験化合物と、S9活性化混合物の有りおよび無しで処理し、同時的なビヒクルコントロールと比較して、構造的異常、倍数性または核内倍加を有する細胞の数の有意な増加を示さなかった。従って、エチジウムブロマイド、チアゾールオレンジおよび化合物1を、代謝活性化の有りおよび無しで、構造的な染色体異常について陰性であるとみなした。
【0133】
(実施例6:アガロースゲル中で分離され固定化された核酸の染色の、エチジウムおよび化合物1の比較)
異なる濃度のDNA(62.5ng、31.25ng、15.63ng、7.813ng、3.906ng、1.953ng、976.6pg、488.3pg、244.1pg、122.1pg、61.04pgおよび30.52pg)をロードし、1%のアガロースゲル上で、60vで0.5×TBE中で分離した。ゲルを、TBE(50mL)、およびエチジウムブロマイド(2.5μlのストック溶液、水中で10mg/mL)または化合物1(最終濃度1μMのために、DMSO中での5μlの色素ストック溶液)のいずれかを含む染色溶液で、30分間、60分間および90分間染色した。引き続いて、全てのゲルの写真を撮影した。これらのゲルは、類似した染色手順を用いるゲル中の核酸の検出について、化合物1がエチジウムブロマイドと少なくとも同じくらい感受性であることを示す。
【0134】
(実施例7:危険な廃棄物のスクリーニング試験)
化合物1を、この化合物が水生生物にとって危険または毒性であるかどうかを決定するために試験した。ビヒクルコントロール、ならびに250mg/L、500mg/Lおよび750mg/Lの濃度の化合物1を含む8リットルタンクにそれぞれ、10匹のファットヘッドミノー(Pimephakes promelas)を置いた。96時間の曝露期間の後、生存するミノーの数を計数した。コントロールおよび化合物1に対するミノーの生存率は100%であった。このように、化合物1は500mg/Lを超えるLC50値を有し、この値は、水生生物にとって、CCRの表題22(CCR Title 22)の急性毒性に属する危険性ではないとして分類される。
【0135】
(実施例8:生きた真核生物細胞への、化合物1の細胞浸透性)
MRC5ヒト肺線維芽細胞を収集し、完全培養培地(DMEM+10%のFBS)中で、カバーグラスを供給した後1日間、増殖させた。次いで細胞を完全培地から除き、異なる濃度の化合物1を含む、5mMのHEPES、100μMのL−グルタミン、および100μMのコハク酸を補ったハンクス平衡塩溶液w/炭酸水素ナトリウム(HBSS)中に置いた。試験した濃度としては、0.5μM、1.0μM、5.0μMおよび10.0μMが挙げられる。細胞を37℃/5%のCO2にて5分間インキュベートした。細胞をHBSS中で30秒間×3回洗浄し、HBSS中の顕微鏡スライドにのせ、そしてパラフィンでシールした。のせた後、スライドをNikon Eclipse 800正立蛍光顕微鏡で調べ、そして標準のFITCフィルターセットおよびTRITCフィルターセット、Princeton Instrument MicroMax冷却CCDカメラ、ならびにUniversal Imaging MetaMorph画像化ソフトウェアで画像化した。化合物1は、生きたMRC5細胞中で、細胞浸透性であるように見える。標識パターンは核および細胞質であり、標識した細胞の核小体にて顕著なシグナルを有する。化合物1と関連したシグナルはFITCフィルターセットおよびTRITCフィルターセットの双方で検出可能であり、FITCセットを用いた場合により強いシグナル強度である。濃度に関係なく、核小体の標識は最も顕著であるようであり、そしてより低い濃度においてやや、より顕著になるようである。細胞以外のバックグラウンドは、全ての場合において最小であった。
【0136】
(実施例9:化合物1による、アガロースゲル中のDNAの検出)
異なる量のLow DNA Mass Ladder(Invitrogen Corp.カタログ番号10068−013)の1μl、0.5μl、0.25μl、0.13μlをE−Gel 2%(Invitrogen)にロードし、このE−Gel 2%は米国特許第5,582,702号明細書の記載に従って調製し、ここでエチジウムブロマイドを、10000×溶液に由来する4×濃度の化合物1で置換した。ゲルを、Powerbase(Invitrogen、カタログ番号G6200−04)を用いて30分間電気泳動させ、次いで、Clare Chemical Dark Readerを用いて画像化した。図4を参照のこと。
【0137】
(実施例10:0.5×TBE中の化合物1についての、EPA急性経口毒性試験)
試験物質を経口限界用量である5000mg/kg受けた、3匹の雌性Sprague Dawleyラットを用い、OPPTSガイドライン(870.1100)に従って限界スクリーニング試験を行った。上記動物を、2週間の間の死亡率、体重変化および毒性の徴候について観察した。
【0138】
上記の用量を投与した後2週間に、全ての3匹のラットが生存したので、上記試験物質についてのLD50は上記の限界容量を超えるとみなし、これ以上の試験は必要なかった。
【0139】
本研究の終了時において動物を安楽死させた。全身の検死を行い、いずれの試験動物においても異常は見られなかった。
【0140】
(実施例11:水質浄化法の遵守についての、NPDES(国家汚染物質排出防止システム)試験)
化合物1は、シアン化合物、フェノール類、汚染物質金属、有機塩素農薬、PCB、あるいは半揮発性有機化合物または揮発性有機化合物を含まないという、水質浄化法の規定および国家汚染物質排出防止システムの規定に従う。試験を、表9に引用するEPAプロトコールに従って行った。
表9:
【0141】
【表11】

(実施例12:化合物1の合成)
33.92gのレピジン、および50.45gのプロピルトシラートの混合物を、110℃にて1時間熱する。反応物を室温まで冷却し、そして600mLの酢酸エチルを加え、そして60℃にて1時間熱する。この混合物を濾過し、そして75.75gの中間体4−メチル−1−プロピルキノリウムトシレートを得る。この中間体を、300mLの塩化メチレン中の78.05gの3−メチル−2−メチルチオベンゾチアゾリウムトシレートと混合し、そして64.53gのトリエチルアミンを導入する。反応混合物を室温にて一晩攪拌し、次いで1Lの酢酸エチルを加え、生成物を濾過する。
【0142】
【化16】

前述の実施例は、前述の実施例の、具体的に記載された核酸染色化合物を、上の記載において一般におよび具体的に記載された化合物で置換することにより、類似の結果で繰り返され得る。当業者は本発明の基本的な特徴を容易に確認し得、そして本発明の精神および範囲から離れることなく、種々の用法および条件に適応するために、本発明の種々の変化および改変をなし得る。
【0143】
本明細書中に言及された全ての特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的におよび個々に参考として援用されることを意図されるのと同じ程度に、本明細書中で参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の核酸の存在または非存在を決定するための方法であって、ここで該方法が、以下:
a)非対称のシアニン色素化合物をサンプルと合わせて標識混合物を調製する工程であって、ここで該サンプルが固体または半固体の支持体上に固定化され、そして該非対称のシアニン色素化合物が式
【化1】

を有し;
ここでXはO、S、またはC(CHであり;
は縮合されたベンゼン、メトキシ、C〜Cアルキルであり;
およびRは独立してC〜Cアルキルであり;
はC〜Cアルキルまたはメトキシであり;
tは独立して0、1、2、3または4であり;
sは独立して0、1、2、3または4であり、そして
nは0、1、2または3である工程;
b)該標識混合物を、該非対称のシアニン色素化合物が該核酸と会合して、インキュベートされたサンプルを調製するために十分な時間、インキュベートする工程;
c)該インキュベートされたサンプルに適切な波長を照射して、照射されたサンプルを調製する工程;および
d)該照射されたサンプルを観察する工程であって、それによって該核酸の存在または非存在が決定される工程;
を包含する方法であって、ただし、該支持体がポリマーのゲルである場合、該非対称のシアニン色素化合物はチアゾールオレンジではない、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記核酸が一本鎖RNA、二本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖DNA、またはそれらの組み合わせである、方法。
【請求項3】
前記核酸がDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルが固定化される前に、前記非対称のシアニン色素化合物が前記核酸と合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
固定化の間に、前記非対称のシアニン色素化合物が前記サンプルと合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記核酸が固定化された後に、前記非対称のシアニン色素化合物が前記核酸と合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記固体または半固体の支持体が、ポリマーのゲル、膜、アレイ、ガラスビーズ、スライドガラス、またはポリマーの微小粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固体または半固体の支持体が、アガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲルである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非対称のシアニン色素化合物が、ポリマーの膜上に固定化される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、ここで前記シアニン色素が式
【化2】

を有し、そして真核生物細胞中で本質的に非遺伝子毒性であるとして特徴付けられる、方法。
【請求項11】
前記核酸が、アガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲル上に固定化されたDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
サンプル中の核酸の存在または非存在を決定するための方法であって、ここで該方法が、以下;
a)本質的に非遺伝子毒性であるとして特徴付けられる非対称のシアニン色素化合物をサンプルと合わせて、標識混合物を調製する工程であって、ここで該サンプルは固体または半固体の支持体上に固定化される、工程;
b)該標識混合物を、該色素が該核酸と会合して、インキュベートされたサンプルを調製するために十分な時間、インキュベートする工程;
c)該インキュベートされたサンプルに適切な波長を照射して、照射されたサンプルを調製する工程;および
d)該照射されたサンプルを観察する工程であって、それによって該核酸の存在または非存在が決定される工程;
を包含する方法であって、ただし、該支持体がポリマーのゲルである場合、該シアニン色素化合物はチアゾールオレンジではない、方法。
【請求項13】
前記シアニン色素化合物が式
【化3】

を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シアニン色素が、前記サンプルが固定化される前に前記核酸と合わせられる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記シアニン色素が、固定化の間に前記核酸と合わせられる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記シアニン色素が、前記サンプルが固定化された後に前記核酸と合わせられる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記核酸がDNAである、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記固体または半固体の支持体が、ポリマーのゲル、膜、アレイ、ガラス、およびポリマーの微小粒子である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーのゲルが、アガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲルである、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
固体または半固体の支持体上の固定化された核酸の存在または非存在を決定するための染色溶液であって、ここで該溶液が以下:
e)式
【化4】

を有する、非対称のシアニン色素化合物であって、
ここでXはO、S、またはC(CHであり;
は縮合されたベンゼン、メトキシ、C〜Cアルキルであり;
およびRは独立してC〜Cアルキルであり;
はC〜Cアルキルまたはメトキシであり;
tは独立して0、1、2、3または4であり;
sは独立して0、1、2、3または4であり、ならびに
nは0、1、2または3である非対称のシアニン色素化合物;ならびに
a)トリスホウ酸緩衝液または酢酸トリス緩衝液;
を含む溶液であって、ただし、該シアニン色素化合物がチアゾールオレンジではない、溶液。
【請求項21】
さらに、ポリマー化されていないアガロースまたはポリアクリルアミドを含む、請求項20に記載の染色溶液。
【請求項22】
さらに、固体または半固体のマトリックスを含む、請求項20に記載の染色溶液。
【請求項23】
前記シアニン色素が溶液中にあるか、あるいは固体または半固体のマトリックス上に固定化される、請求項20に記載の染色溶液。
【請求項24】
前記染色溶液が、約6〜約8のpHを有する、請求項20に記載の染色溶液。
【請求項25】
前記核酸が、一本鎖RNA、二本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖DNA、またはそれらの組み合わせである、請求項20に記載の染色溶液。
【請求項26】
前記核酸がDNAである、請求項20に記載の染色溶液。
【請求項27】
前記シアニン色素が、式
【化5】

を有し、そして真核生物細胞中で本質的に非遺伝子毒性であるとして特徴付けられる、請求項20に記載の染色溶液。
【請求項28】
前記核酸が、アガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲル上に固定化されたDNAである、請求項20に記載の染色溶液。
【請求項29】
固定化された核酸の存在または非存在を決定するための染色溶液であって、ここで該溶液が以下:
a)真核生物細胞中で本質的に非遺伝子毒性であるとして特徴付けられる、非対称のシアニン色素化合物;および
b)酢酸トリス緩衝液、またはトリスホウ酸緩衝液
を含む、染色溶液。
【請求項30】
さらに、ポリマー化されていないアガロースまたはポリアクリルアミドを含む、請求項29に記載の染色溶液。
【請求項31】
さらに、固体または半固体のマトリックスを含む、請求項29に記載の染色溶液。
【請求項32】
前記シアニン色素が溶液中にあるか、あるいは固体または半固体のマトリックス上に固定化される、請求項29に記載の染色溶液。
【請求項33】
前記シアニン色素が、式
【化6】

を有する、請求項29に記載の染色溶液。
【請求項34】
前記緩衝液が、約6〜約8のpHを有する、請求項29に記載の染色溶液。
【請求項35】
前記核酸が一本鎖または二本鎖のRNAまたは一本鎖または二本鎖のDNA、あるいはそれらの組み合わせである、請求項29に記載の染色溶液。
【請求項36】
前記核酸がDNAである、請求項35に記載の溶液。
【請求項37】
固体または半固体の支持体上に固定化された核酸の検出のための化合物であって、ここで該化合物が、真核生物細胞中で本質的に非遺伝子毒性であるとして特徴付けられる、非対称のシアニン色素化合物である、化合物。
【請求項38】
前記化合物が水溶液中にある、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
前記化合物が、固体または半固体マトリックス上に固定化されているか、または固体または半固体マトリックス中にある、請求項37に記載の化合物。
【請求項40】
前記固体または半固体のマトリックスがアガロースを含む、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
前記固体または半固体のマトリックスがポリマーの膜である、請求項39に記載の化合物。
【請求項42】
前記シアニン化合物が、式
【化7】

を有する、請求項37に記載の化合物。
【請求項43】
固定化された核酸を検出するためのキットであって、該キットが以下:
f)式
【化8】

を有する化合物であって、
ここでXはO、S、またはC(CHであり;
は縮合されたベンゼン、メトキシ、C〜Cアルキルであり;
およびRは独立してC〜Cアルキルであり;
はC〜Cアルキルまたはメトキシであり;
tは独立して0、1、2、3または4であり;
sは独立して0、1、2、3または4であり、そして、
nは0、1、2または3である化合物;
を備えるキットであって、ただし、該シアニン色素化合物がチアゾールオレンジではない、キット。
【請求項44】
前記化合物が水溶液中にある、請求項43に記載のキット。
【請求項44】
前記水溶液がトリスホウ酸または酢酸トリスを含む、請求項44に記載のキット。
【請求項45】
前記化合物がアルコールまたはDMSOに溶解される、請求項43に記載のキット。
【請求項46】
前記化合物が、固体または半固体のマトリックス上に固定化される、請求項43に記載のキット。
【請求項47】
前記マトリックスがアガロースを含む、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
前記マトリックスがポリマーの膜である、請求項46に記載のキット。
【請求項49】
前記化合物が
【化9】

であり、そして本質的に非遺伝子毒性であるとして特徴付けられる、請求項43に記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図4E】
image rotate

【図4F】
image rotate


【公開番号】特開2011−99862(P2011−99862A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255930(P2010−255930)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【分割の表示】特願2006−534241(P2006−534241)の分割
【原出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(504406829)モレキュラー プローブス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】