説明

土壌汚染の測定

一定体積の土壌試料を乾燥剤(MgSO4)、次いでアセトンと混合する。液体を濾過して除去し、試料をIR分光計の全反射減衰(ATR)素子の検出面に適用する。アセトンの蒸発後、C−H伸縮領域(例えば、2950cm-1)において吸収を測定し、試料中の油量を示す値を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌汚染の測定のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の及び計画されている立法は、産業界に、ますます厳しくなる汚染同意レベルの遵守を強制しつつある。欧州連合は「汚染者負担」の命令を記した法律を立案し、一方で、米国環境保護局(EPA)は産業汚染者に対して重大な罰則で臨む厳しい規制を作り上げてきた。所与の環境保護指令に従っていないことが示された組織団体は遂行に対する責任があるだけでなく、汚染された領域を許容可能な状態に再生することに対しても責任がある。産業界は環境監視手法を採用することにより対処してきた。一般的に、土壌、水又は空気の試料が対象領域から採取され、分析のため離れた研究所に運ばれる。しかしながら、研究所に基づく分析技術は、複雑で高価な計測機器、頻繁な再計測、及び高度な訓練を受けた作業者を必要とし、維持するには高価になりすぎる傾向にある。従って、土地再開発用の正確な現地広さの低レベルの汚染測定を提供するために指定区域上で用いることができる化学的測定手段に対する明確で特定可能な必要性が存在してきた。こうした手段は、それらが汚染状態に関して直接得た情報を提供するので商業活動者及び立法者にとって特に魅力的である。
【0003】
すべての汚染事件の中で、燃料及び油による汚染が最大であり、欧州のすべての有害な有機汚染の90%に対して責任を負っている。汚染は、例えば、地下及び地上の貯蔵タンク、油及び電気のパイプライン、給油所、現場化学品貯蔵庫、並びに油圧オイル及び植物油の使用者により引き起こされ得る。英国環境庁は、ガソリンスタンドの1/3が公害問題を有すると推定し、米国EPAは、すべての地下石油貯蔵設備の75%が今後10年間で機能しなくなると予測している。これは土地及び飲料水の品質に全世界的に影響を及ぼす非常に大きな問題である。実に、先進国世界には、油によって汚染されているか又は汚染される可能性があり、改善を目指すために測定を必要とする約15百万の箇所が存在する。
【0004】
現在の技術は、GC−FID(水素炎イオン化検出器付ガスクロマトグラフ)などの大きく高価で複雑な装置を用いた高度な技術による分析のために試料を研究所に持ち帰る必要がある。
【0005】
現在、妥当なコストでこのような正確な測定を生み出すことができる迅速で携帯可能な人間工学的に簡単な抽出及び測定システムは市場に出ていない。例えば、ケーブル又はパイプラインの走行、石油流出の動きの軌跡に沿った携帯型油漏れ検出(これは帯水層系で汚染が生じると必要である)、土地評価査定、改善監視、住宅開発、素早い結果を必要とするあらゆる箇所のうち1つ又は複数で使用するのに適したデバイスを有することが有利であろう。英国国家電力供給部門(ローカル配信ではない)のみにおいて、地下電力ケーブルからの漏れにより、業界は失った取引及びネットワークセキュリティーの損失で1日当たり最大250,000ポンドの費用がかかる可能性があり、有効な漏れ検出の唯一の方法は漏れを見つけるまで試掘することを伴う。燃料漏れ検出の市場は年100億ポンドを超える価値があり、損失ディーゼルにほぼ匹敵する。
【発明の開示】
【0006】
本発明によれば、
(i)所定の体積を有する土壌試料を採取し、
(ii)該土壌試料を乾燥剤と混合し、
(iii)該土壌試料にアセトンを添加し、
(iv)該土壌試料/乾燥剤/アセトンを混合し、
(v)濾過して液相を得、
(vi)所定の体積の該液相の試料を赤外(「IR」)分光計の全反射減衰(「ATR」)結晶表面に適用し、
(vii)該ATR結晶表面上の液相試料からアセトンを蒸発させ、
(viii)前記分光計を用いて前記試料に関するIR分光データを測定し、
(ix)該IR分光データから前記土壌試料の油含量を示すデータを得ること
を含む土壌の油汚染を定量化する方法が提供される。
【0007】
ATR結晶は、好ましくは、セレン化亜鉛からなる。他の可能性としては、ゲルマニウム、ジルコニア及びダイアモンドが挙げられる。
【0008】
本方法は、土壌中の油及び燃料汚染の迅速な現場測定のために用いることができる。OMDと抽出を組み合わせた機構は、土壌から抽出され、揮発性溶剤蒸発相の蒸発後、全反射減衰(ATR)結晶表面上に堆積した油中に存在するC−H結合による赤外線の吸収を測定することにより作用する。土壌試料の抽出は、同じ工程において、30%以下のすべての「正常な」土壌水濃度に対して適した油抽出及び乾燥処理を用いて、試料の水含量によるスペクトル補正の必要性をなくし、濾過してセンサー表面に堆積できる状態の抽出物を残す。
【0009】
アセトン以外の溶剤を使用することができ、特には、他の揮発性有機溶剤、例えば、他のケトン、アルコール、エステル、エーテル及び炭化水素を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示すように、サンプリング容器10は、既知の体積量の土壌(例えば、5ml)を収集するのに用いられる。好ましくは、根及び他の植物部分などの巨視的な植物質及び石を避けるために幾らかの注意が払われる。土壌試料は、より大きな容器、例えば、50mlの遠心分離管12中に置かれる。無水硫酸マグネシウムの分取量(例えば、2g)とアセトンの分取量(HPLCグレード、例えば、10ml)を添加し、混合物を簡単に撹拌し、次に、例えば2分間にわたって振る。アセトン相を、例えば、濾紙又は膜シリンジを用いた濾過により分離する。測定体積分(例えば、100μl)を、IR分光計のセレン化亜鉛ATR結晶素子16のセンサー表面14に適用する。ATR結晶は、Specac HATRトラフ上板GS 111 66(www.specac.com)である。アセトンを例えば2分間にわたり蒸発させ、その結果、土壌試料中に存在する油の膜18がセンサー表面上に堆積する。分光計を作動させる。
【0011】
MIR光処理量を測定する最適の方法は、最大ソース出力及び最小ソース出力での透過の差が定量化できるように、変化又は振動する光信号を用いることによる。これは、あらゆるシステム・オフセットを打ち消すと共に、絶対信号値間の微細な又はドリフト差の測定を不要にする。2つのチャンネル、即ち、信号チャンネルと参照チャンネルは、例えば、絶対信号値に影響を及ぼす場合のある外部温度又は充電状態による操作条件の如何なる変化も信号差又は相互値に基づく値に対して最小の影響を及ぼすように用いられる。
【0012】
ソースは、好ましくは、電子変調ができる低熱線式質量加熱器であることが好ましい(又は出力は機械的に切り刻むことができるであろう)。光の無駄を最小源に抑えるために放物面の後方反射体を有する高温薄膜素子を用いた。それは、好ましくは、5Hzでのパルスである。(15Hzまでの他の周波数、例えば、8Hzを用いることができる)。それは、パルス出力がかけられている間に、ほんの一瞬、約1000℃の最大色温度に達する。パルス間において、それは室温近くまで冷める。ピーク出力でそれは1Wを消費する。このデバイスは、炭化水素吸収の感度のよい測定には必須の、2950cm-1のC−H吸収エネルギーでの極めて重要な光出力を有する。選択されたエミッターは、Scitec(英国、コーンウォール州、レッドルース、www.scitec.uk.com)製の放物面反射体を有する窓無しIR55装置である。
【0013】
エミッター及び検出器をATR結晶面に置いて光の最大処理量を得る。検出表面での6回の反射は、試料中のC−H結合による微細波吸収のための最大の機会を与える。
【0014】
選択された検出器は焦電検出器である。このデバイスは、広帯域IR測定用に設計される。構成要素内部のホットエレメントは、そのキュリー温度未満に保持される時に、大きな自然発生電気分極を示す高度な強誘電性材料からなる。フィラメント材料の温度が、例えば、入射光の吸収により変更される場合、分極は変化し、これは、一時的な検出エレクトロニクスを用いて監視される静電容量変化として測定される。この方法は入射光の波長には無関係であり、従って、焦電センサーは極めて広範なスペクトル域にわたり平坦な応答性を有する。デバイスの特異性は、2つの帯域通過フィルタにより修正され、正確な波長の放射のみが焦電材料と相互作用することを可能とする。選択された構成要素は、Infratec製のPyromid LMM 242D(英国のLasercomponents社から入手可能であり、詳細はwww.infratec.de)である。これは、作り付けの増幅度、及び両方のチャンネルが関連検出器フィラメント上のノッチ・フィルタの使用により作り出される、3950nm(2531cm−1)での参照チャンネルを伴う3400nm(2900cm−1)での特異性を有するデュアル・チャンネル焦電検出器である。参照チャンネルは、レシオメトリック測定が同じソースを用いてなされ、従って、瞬間電源の関数として強度変動の原因となることができるように都合のよい形に作られる。これは、デバイスに対して、電源又は周辺熱変動の関数としてエレクトロニクス変動をより少なくする利点を有する。
【0015】
作動中、IR放射線の高出力平行ビームは、ATR結晶16に入り、そこでセンサー表面14からの反射を含む内部反射を行ってから、結晶を離れ検出器20に入る。
【0016】
エミッター用の電気駆動インパルスは、素早い光出力の立ち上がり時間用に特別に形成される。セレン化亜鉛のATRは、この材料が抽出プロトコル溶剤と適合するので好適である。
【0017】
データ処理は、行われるべき正確で再現性のある作業のための重要な収集後機能である。デバイスにおいて行われる実際の測定は、発光体が1秒当たり5回オンオフパルスする際に、ATR結晶を通過する光の強度の変動で生じる静電容量変化による検出器電圧出力のナノボルト変化である。オン期間とオフ期間の間の光処理量の差は収集される信号である。本デバイスの検出器中には、両方とも結晶を通過するエミッターからの光を収集し、それぞれ特定の波長で作動する2つのチャンネルがある。第1チャンネルは、炭化水素結合の吸収のピーク波長(波長3.4μm又はエネルギー2950cm-1)での光処理量を測定する。第2チャンネルは、極めて少ない化合物が吸収する波長での光の処理量を測定するが、これは参照チャンネル(波長約3μm)である。それは、外部温度変化、電源変動、又は光源などのそれらの有用な寿命にわたるあらゆる電気部品の自然劣化を補償するように2チャンネルとなっている。図2は、処理及び表示前の焦電検出器から受け取る電気信号をグラフで示す。Y軸は強度を有するAC信号、及びX軸は時間(1秒の1/25単位で)である。
【0018】
示されるデータは、油がある場合とない場合での検出器からの信号出力を図式的に示している。変化は非常に小さいので、それはノイズにより極めて強い影響を受け、従って、アルゴリズムは、a)「1サイクル内」の高周波数ノイズ、b)数秒間にわたるピーク高さの変動、c)数分及び数時間にわたる変動、又は機器ドリフト、d)構成部品の寿命に関するドリフト(数年で測定される)を補償する多くのサイクルにわたる相関性を見出すことにより、これらの影響を最小化するように設計されている。
【0019】
ピーク当たり20個のデータ点によりピークを地図化し(高周波数ノイズを限定する)、それらの高さをいずれかの側に対するトラフの平均深さから離れた距離として測定する(数分のドリフトを補償する)。これらの値の移動平均は、試料添加前(データ点は常に収集される)、及びキャリヤー溶剤が蒸発された後30秒間にわたり算出される。これら2つのレベル間の差は、次に、作り付けの較正統計値及び最新の較正曲線データに対して位置付けられる。本デバイスの絶対性能に関するいくつかの試験を行った。アセトン中200ppm油の添加に対する実際の信号データを図3に示す。
【0020】
一旦すべてのピークの寄与が平均化されると、信号チャンネル及び参照チャンネルは、連続DC信号として表示される。試料添加前後での信号チャンネルの高さ間の差(大きな中央の下落)は、ATR表面に添加される油の量に関係する。強度はy軸上に表示され、x軸は時間(1秒の1/5)である。
【0021】
y軸は、特定の単位なしでの総数を表す(それは相互測定値である)。アセトン中の油(200ppm)を、4分のバックグラウンド収集時間の後に添加した。それがセンサー中で引き起こす反応は、強く信号チャンネルに影響を与えると共に参照チャンネルの変化さえ引き起こす、試料中に存在する非常に大量のアセトンのせいで、即時であり且つ極めて大きい。アセトンが蒸発するにつれて、両方の信号は静止レベルとなる傾向にある。参照チャンネルは、それが添加前にあったレベルに戻る。信号チャンネルでの最終レベルは、一旦アセトンが蒸発してからセンサー表面上に残る油の量に比例する。ソフトウエアはデータを記録し、アセトン添加によるこの大きな吸光度の変化を検出する。それは、次に、アセトン添加の前に初期信号レベルを計算する。それは、次に、アセトンが蒸発するように2分間待ち、最終信号レベルを計算する。この吸光度と較正吸光度間の比較がなされて、存在する油量を計算する。
【0022】
良好な平均信号が収集され、そうして信号のノイズ成分を最小化する十分に長い測定期間にわたりデータを収集することは重要である。同じく、余りに長すぎる測定を通してのデータ損失を避けるために、測定時間を合理的に短い期間を超えて増大させないことも重要である。データ収集時間は、従って、最小に保持され、測定当たり合計1分であり、溶剤の蒸発を可能とする4分の全体時間を伴う(溶剤の添加前2分、添加後2分)。土壌汚染に対するより正確な読みが必要とされる場合、測定時間を増大させることが可能であることを留意することは重要である。これは2つの効果を有するであろう。第一に、それは、より多くのサイクルにわたって平均化が起こることを可能とし、不確実さを減じるであろう。第二に、それは、試料を添加することにより加えられる混乱状態の後にデバイスのより大きな安定を可能とするであろう。このためにより長い時間を可能とすることは不確実さを減じるが、これは測定時間を増大させるであろうし、本プロジェクトの目標の1つが可能な限り測定時間を短くすることであるので、正確さと測定が行われる時間との間で妥協がなされる。
【0023】
最適化された較正曲線は以下の図4に示される。これは唯一の機械設定、即ち、2分の蒸発期間に続く30秒にわたるピーク高さの収集からのデータを含む。これは、試料採取時間をできるだけ短縮することが本明細書の要求事項であるので、測定精度と必要時間との妥協の結果である。
【0024】
図5はエレクトロニクスのブロック図を示す。
【0025】
デュアル・チャンネル検出器(A)は、低レベル信号(+/−0.1V)をオフセット電圧増幅器(B)に送り、増幅器はマイクロチップdsPIC30F3012(C)用に0〜5Vに電圧を増大させる。これは2kHzのサンプルレートで作動する12ビットのAD変換器を含む。アルゴリズムは、すべてのピーク及びトラフを検出し、それぞれの周囲のピーク高さの平均値からトラフ深さを測定して、より長期間のドリフトに有効であるよう支援する。チップは、幹線ノイズ(50Hz)及びより長期間のドリフトを排除して、6〜37Hzの周波数が通過することを可能とする帯域通過フィルタとして作用するDSP(ディジタル信号処理)アルゴリズムを含む。それは、8Hz用に最適化された247点の有限インパルス応答フィルタである。チップはまた、IR55エミッターFを駆動するために、増幅器回路Eにより増幅され電流増強される8Hzパルス幅の変調TTL信号を出力する。信号はマーク・スペース比65%で最も効果的にエミッターを作動させる。RS232リンクは、データ表示のためデータをPDA(D)に連絡するために用いられる。(注:この実施形態において、コードの単純な変化はこれを再度5Hzに下げるであろうと共に、バンドパスもまたわずかに変化するであろうが、測定時間を短くするためにエミッターの繰り返し数を5Hzから8Hzに上げた。)
【0026】
本デバイスは、抽出可能な油の濃度を自動的に測定する。土壌を質量ではなく体積で採取することは、(未知の)水含量が密度、従って質量により採取される試料中の土壌の量に強く影響を及ぼすので極めて重要である。土壌は、アセトン添加前の水吸収量を最適化するために乾燥剤と予備混合される。溶剤を乾燥するための硫酸マグネシウム(無水)の能力は他のところで実証されている。2分間振ることは、アセトンの土壌中への強い浸透を可能とし、詰まった土壌の大きな塊を分散させる。検出表面上への堆積に続いて、大部分の蒸発はほんの60秒後には完了するが、揮発性成分の完全な消失を確実にするために2分間が与えられる。測定はさらに30秒後に完了し、画面上に表示される。
【0027】
本システムは以下の利点を提供する。
1)土壌からの油汚染の定量的な抽出及び測定のための10分未満の実地方法
2)最小の運用訓練しか必要としない完全携帯型の抽出工程と定量的な測定システムの組み合わせ
3)IR測定に不利に影響を及ぼしかねない試料中の自然発生的な水の作用を排除する抽出工程
4)非塩素化された毒性の低い揮発性溶剤を用いた抽出後の定量的な蒸発性油堆積工程
5)変化率検出器を備えた整形パルスIRエミッターのために設計されたAC信号デコンボリューションアルゴリズムを内蔵する2チャンネルで低コストの焦電検出システム
6)レシオ測定による較正ドリフトに対する固有の不感受性
7)測定は主として自動化され、抽出はPDA(携帯端末、例えば、HP Ipaq)によって促進される。
【0028】
[デバイス応答]
本デバイスは、標準器を用いて0ppm〜25600ppm(v/v)の間で較正された。較正後の標準器の適用は、各点に対する標準偏差が4%未満の全吸光度であることを示した。これは計測機器の正確さの概念を与える。標準器を数ヶ月の使用期間にわたり測定した場合に、較正ドリフトは全く観測されなかった。図6は測定用に用いられた較正曲線のタイプの例を示す。それは、標準試料の油含量(ppm)に対する検出器によって測定される吸光度(%)のグラフである。各バーは5つの読み値を示す。
【0029】
[デバイスの検証]
電気絶縁油で汚染された場所から持ち込まれた5つの試験土壌の分析を2つの別の日に行った。結果を図7に示す。抽出方法及びデバイスの正確さは明確であり、(同じ試料の異なる日での分析に関する)結果の組の大部分が互いの20%以内にある。
【0030】
本デバイスを用いて試験した5つの土壌のブラインド測定からの結果を、2つの異なる技術、即ち、パークロロエチレンによる抽出及び卓上FTIRによる測定と、EPA法を用いた抽出及びGC/FIDによる測定とを用いて独立研究所により作製された結果と比較した。結果を図8に表示する。ここで、上の線(菱形)は我々の結果であり、第2の線(三角)はFI−IRを用いた結果を示し、下の線(破線、四角)はGC−FIDを用いた結果を示す。2つの赤外線測定法(我々の方法とFI−IRの結果)の間に幾つかの相違があるのは、外部研究所が土壌に対して異なる抽出溶剤を使用しているので予期されるべきことである。実際、外部研究所において使用されたものは、抽出及び測定に関して非常に環境に優しくない塩素系溶剤である。本方法は、このような有害物の使用を避けることを特別に目的とした新規デバイスによる使用のために開発された。本デバイスはまた、GC/FIDによる全石油炭化水素の抽出及び分析のための方法の「最も基準になる検査」EPAシリ−ズを用いた分析と比較しても結果が上首尾であった。GC/FID法が抽出可能な物質全体のほんの一部であるC10とC40の分子を表すクロマトグラムに関して2つの時間チェックポイント間に溶出する物質を考慮に入れるだけであるので、GC/FIDによる結果はIRによる結果よりもはるかに低いことが予期される。GC/FID法を用いてより多くの情報が得られるが、それは、訓練された人材による操作及び分析を伴う高価な装置を十分に備えた研究所を必要とする。全体のプロセスは、試料当たり1時間以上を費やす場合がある。本明細書において示唆される方法は6分内に結果を出し、低い初期及び操作費用を有すると共に、最小の訓練後に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態を行うための装置の概略図である。
【図2】未処理出力データを示す図である。
【図3】処理データを示す図である。
【図4】較正曲線である。
【図5】電子構成要素のブロック図である。
【図6】較正曲線を示す。
【図7】2つの異なる日に試料採取した5つの土壌に関する試験データを表示する。
【図8】本発明を具現化した方法及び2つの他の方法によって測定した同じ5つの土壌に関する試験データを表示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)所定の体積を有する土壌試料を採取し、
(ii)該土壌試料を乾燥剤と混合し、
(iii)該土壌試料にアセトンを添加し、
(iv)該土壌試料/乾燥剤/アセトンを混合し、
(v)濾過して液相を得、
(vi)所定の体積の該液相の試料を赤外(「IR」)分光計の全反射減衰(「ATR」)結晶表面に適用し、
(vii)該ATR結晶表面上の液相試料からアセトンを蒸発させ、
(viii)前記分光計を用いて前記試料に関するIR分光データを測定し、
(ix)該IR分光データから前記土壌試料の油含量を示すデータを得ること
を含む、土壌の油汚染を定量化する方法。
【請求項2】
前記乾燥剤が硫酸マグネシウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ATR結晶がセレン化亜鉛である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分光計が信号値を得るためにC−H伸縮領域の吸収を測定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記分光計が2950cm-1での吸収を測定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記分光計が参照値を得るために参照領域の吸収をさらに測定する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記参照値が2530cm-1で測定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
信号値と参照値の比が周期的に自動計算される、請求項6又は7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−522180(P2008−522180A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543925(P2007−543925)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004652
【国際公開番号】WO2006/059138
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507184063)クランフィールド ユニバーシティ (7)
【出願人】(507183468)ナショナル グリッド エレエクトリシィティー トランスミッション パブリック リミティド カンパニー (1)
【Fターム(参考)】