説明

圧力調整器

【課題】断熱圧縮防止機構と圧力指示機構とを有する圧力調整器を提供する。
【解決手段】圧力調整器Aの一次側通路1に、段差部10に摺動可能に配置され中心に小流路を形成し外周に大流路を形成し段差部と当接したとき大流路が遮蔽されるように構成され、上流側の端面よりも下流側に小流路と大流路を連通させた連通路を形成した仕切部材11と、仕切部材をガスの流通方向上流側に付勢する第1のばね12と、を有して構成された断熱圧縮防止機構Bと、圧力指示機構とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給源から高い圧力を持った一次ガスを供給されたときに生じる断熱圧縮を防止することができ、且つ一次ガスの圧力の減少又は供給の有無を圧力計を用いることなく指示し得るようにした圧力調整器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば末端が閉鎖された、又は断面積が絞られた部位を有する大気圧の系に高い圧力を持ったガス(高圧ガス)を供給したとき、供給された高圧ガスが断熱圧縮して温度が上昇する現象が生じる。高圧ガスが酸素のような支燃性を持ったガスである場合、ガスの温度上昇によって系を構成する配管や弁等に悪影響を及ぼす虞がある。
【0003】
上記の如き系の代表的な例として圧力調整器がある。この圧力調整器は、ガスボンベや屋内配管を含む高圧ガスの供給源に接続される一次側接続部と、供給源から供給された高圧ガスを減圧する減圧機構と、減圧された低圧ガスを二次側の被供給部材に供給するために該二次側の被供給部材を接続する二次側接続部とを有して構成される。
【0004】
上記圧力調整器では、高圧ガスの供給を開始したとき、減圧機構と一次側接続部との間の空間に断熱圧縮現象が生じて熱が発生し、既存の気体や供給された高圧ガス、或いは周囲の部材の温度が上昇するという現象が生じる。特に、供給される高圧ガスが酸素であり、減圧機構を構成するダイヤフラムやシート部材が可燃性物質によって形成されているような場合、断熱圧縮に伴って生じる熱がダイヤフラムやシート部材に悪影響を及ぼす虞がある。
【0005】
このため、特許文献1に開示されるような、断熱圧縮を生じさせることがない酸素調整器が提案されている。この酸素調整器は、高圧ガスボンベに連通するスリーブを調整器本体に設け、スリーブの内面に、弁と、これを作動させるコイルばねを収容し、前記弁は外周に凹部を設けてスリーブ内面との間に大流路を形成し、中心の小孔を小流路とし、前記弁により、大流路を塞ぐ弁座部を形成して構成されている。このように構成された酸素調整器では、供給源から高圧ガスを供給することに伴う断熱圧縮を防止することができ、減圧機構を構成するダイヤフラムやシート部材を加熱する虞がなく、安全な構成とすることができる。
【0006】
例えば、高圧ガスの供給源がガスボンベである場合、供給されるガス量は有限であるため、二次側への低圧ガスの供給に支障を来すことがないように、適当な時期での交換が必要となる。このため、常にガスボンベの圧力を確認することが必要となる。このような圧力調整器に於ける高圧ガス側の圧力を表示する表示機構として、特許文献2に開示された残量表示装置が提案されている。
【0007】
特許文献2に開示された残量表示装置は、透視窓を有するケーシングの基部を圧力調整器本体の側面に取り付けると共にガス流路に連通させ、ケーシングの基部内腔にガス圧によって摺動できるピストンを設け、該ピストンの摺動範囲にガスを漏出するギャップを形成し、ケーシング内に漏出したガス圧によって可動し、透視窓内に一定の色面を現す可動筒体を設け、ケーシングの頭部にケーシング内のガスを排出するガス抜き弁を設けて構成されている。
【0008】
上記残量表示装置では、ガスボンベの残量が充分あるとき、ギャップを通してケーシングに流入したガスによって可動筒体が移動して透視窓に色面(緑)が現れる。次いでガス抜き弁を操作してケーシングに流入したガスを放出させると、可動筒体が移動して透視窓に色面(黄)が現れる。ガスボンベの残量が少なくなってガス圧が減少すると、ピストンが基部側に移動してギャップを通過する際に該ギャップを通してガスがケーシングに流入し、可動筒体が移動して赤が現れる。この場合でも、ガス抜き弁を操作してケーシングに流入したガスを放出することで可動筒体が移動して黄が現れる。しかし、ガス抜き弁の操作を終了すると、ピストンが再度移動してギャップを通過する際に該ギャップを通してガスがケーシングに流入し、可動筒体が移動して緑が現れる。従って、ガス抜き弁の操作に関わらず、透視窓に連続して赤が現れたとき、ガスボンベの残量が減少したとして認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公平4−19280号公報
【特許文献2】実開昭58−177698号公報(実願57−75592号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
医療機関では、高圧酸素を充填した小型の酸素ボンベに圧力調整器を取り付けて減圧し、所定の圧力に低下させた酸素を患者に供給することが行われている。医療用に酸素を用いる場合には断熱圧縮による温度上昇は避ける必要があり、酸素ボンベの弁を開く際に細心の注意を払うことが要求されている。また、医療用の酸素ボンベは小型化しており、酸素ボンベに対する圧力調整器の着脱は頻繁に行われる。
【0011】
圧力調整器を取り外している間に酸素ボンベに対する接続部にゴミやホコリが付着する虞がある。特許文献1に記載された酸素調整器では、ゴミやホコリが弁の上流側に入り込んで小流路を塞いでしまい、酸素を供給したとき、弁の下流側にある減圧機構に流通しなくなる虞がある。
【0012】
また、酸素ボンベの残量を確認するためにブルドン管式圧力計を用いるのが一般的であり、圧力調整器が大型化して取扱いが不便になる虞がある。更に、特許文献2に記載された残量表示装置では、ボンベに装着したときや残量が減少したときにガス抜き弁の操作を行う必要があり、操作が煩雑になる虞がある。また、ケーシングに流入したガスはガス抜き弁の操作に伴って大気に放出されることとなるため、どのようなガスにも利用し得るものではないという問題もある。
【0013】
本発明の目的は、断熱圧縮を防止することができ且つゴミやホコリが入り込んだとしても一次ガスを流通させることができる断熱圧縮防止機構と、特別な操作を必要とせずに一次ガスが大気に放出されることのない圧力指示機構と、を有する圧力調整器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明に係る圧力調整器は、高い圧力を持った一次ガスの供給源と接続され該一次ガスが流通する一次側通路と、前記一次側通路に配置された断熱圧縮防止機構及び圧力指示機構と、所定の圧力に減圧された二次ガスが流通する二次側通路と、前記一次側通路と二次側通路との間に配置された減圧機構と、前記減圧機構を操作する操作部材と、を有する圧力調整器であって、前記断熱圧縮防止機構は、高い圧力を持った一次ガスが流通する一次側通路に設けた段差部と、前記段差部に対し摺動可能に配置され中心に小さい断面積を持った小流路を形成すると共に外周に大きい断面積を持った大流路を形成し且つ前記段差部と当接したとき該大流路が段差部によって遮蔽されるように構成されると共に、上流側の端面よりも下流側に小流路と大流路を連通させた連通路を形成して構成された仕切部材と、前記仕切部材を一次側通路に於けるガスの流通方向上流側に付勢する第1のばねと、を有して構成され、且つ前記圧力指示機構は、圧力調整器の本体に固定され、内部には基部側が径が小さく先端側が径が大きい空室が形成されると共に、該径が大きい空室を横断して複数の開口が形成された筒体と、指示部と受圧部とからなり、指示部は外周面に少なくとも二種類の異なる模様が形成されて前記筒体の径が大きい空室に挿入され、受圧部は前記筒体の径が小さい空室に挿入されて摺動可能に挿入された摺動部材と、前記筒体の径の小さい空室に於ける径の大きい空室側の端部に配置され、外周が配置部位に於ける空室の内周面と接触し、内周が前記摺動部材の軸部の外周面と接触して径の小さい空室にあるガスの漏洩を防ぐOリングと、前記筒体の径の大きい空室に配置され前記摺動部材を受圧部方向に付勢する第2のばねと、を有し、筒体の内部に形成された径の小さい空室に一次ガスが流入したとき、該一次ガスの圧力に応じて摺動部材が摺動して指示部の外周に形成された模様が筒体に形成された開口から視認し得るように構成されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る圧力調整器では、高い圧力を持った一次ガスが流通する一次側通路に断熱圧縮防止機構及び圧力指示機構を配置したので、該一次側通路にゴミやホコリが付着した場合でも、断熱圧縮を防止することができ、且つ一次ガスの供給源がガスボンベであるような場合、ガスボンベを交換すべきか否かを容易に判断することができる。
【0016】
即ち、一次側通路に一次ガスを供給したとき、仕切部材が段差部に当接して仕切部材の外周に形成した大流路が段差部によって塞がれたとしても、仕切部材の外周に形成した大流路に侵入した一次ガスが上流側の端面よりも下流側に形成した連通路を通って中心の小流路に流通する。従って、仕切部材の下流側で断熱圧縮が生じることがない。そして、仕切部材の下流側の圧力が上昇すると、第1のばねの付勢力によって仕切部材が段差部から離隔して大流路が開放され、大流量の一次ガスが下流側に流通する。
【0017】
また、圧力指示機構を構成する摺動部材が、一次側通路に供給された一次ガスの圧力に応じて筒体の内部で摺動し、この摺動に伴って指示部の外周面に形成された模様が開口に対して移動する。このため、開口を監視することで、該開口に対向する模様を視認することができる。従って、現に開口を介して視認し得る模様によって、一次ガスが充分に高い圧力を有しているか、或いは圧力が降下しているかを認識することができる。
【0018】
また、筒体に形成された径の小さい空室に於ける径の大きい空室側の端部に、外周が配置部位に於ける空室の内周面と接触し且つ内周が摺動部材の受圧部の外周面と接触してガスの漏洩を防ぐOリングを有する。このため、一次ガスが摺動部材の受圧部に作用して該摺動部材を指示部側に摺動させたときに一次ガスが受圧部と径の小さい空室との間隙から漏洩することがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】圧力調整器の全体構成を説明する正面図である。
【図2】圧力調整器の構成を説明する図であり図1のA−B断面図である。
【図3】圧力調整器の構成を説明する図であり図1のB−C断面図である。
【図4】断熱圧縮防止機構の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図により本実施例に係る圧力調整器の構成について説明する。
【0021】
先ず、圧力調整器Aの構成について簡単に説明する。この圧力調整器Aは、医療用酸素を患者に供給するための酸素供給器として構成されており、高い圧力を持った一次ガスの供給源となる医療用の酸素ボンベ(図示せず)に着脱可能に取り付けられる。そして、酸素ボンベから供給された高圧酸素(一次ガス)を減圧して低圧酸素(二次ガス)とし、この二次ガスを酸素マスクやカニューラを介して患者に供給し得るように構成されている。
【0022】
圧力調整器Aは、一次ガスの供給源となる酸素ボンベと接続されて一次ガスが流通する一次側通路1と、一次側通路1に配置された断熱圧縮防止機構B及び圧力指示機構Cと、所定の圧力に減圧された二次ガスが流通する二次側通路2と、一次側通路と二次側通路との間に配置された減圧機構Dと、減圧機構Dを操作する操作部材3と、を有して構成されている。
【0023】
圧力調整器Aは、ボディ5a及びボンネット5bからなる本体5を有している。この本体5には酸素ボンベの吐出口に取り付けられる装着部材6が固定されており、該装着部材6を嵌合した袋ナット7を利用して着脱可能し得るように構成されている。装着部材6を長手方向に貫通して一次側通路1が構成されており、この一次側通路1に於ける自由端側(装着部材6の自由端側)に断熱圧縮防止機構Bが構成されている。
【0024】
断熱圧縮防止機構Bは、図1、4に示すように、一次側通路1の自由端側に形成された段差部10と、この段差部10に摺動可能に配置された仕切部材11と、仕切部材11を一次側通路1に於けるガスの流通方向上流側に付勢する第1のばね12と、を有して構成されている。
【0025】
一次側通路1の自由端側に形成された段差部10は、六角形に形成された仕切部材11の下流側の端面11eが当接したときに該仕切部材11の外周に構成された大流路11fを遮蔽し得る寸法を持って形成された段差端面10aと、仕切部材11の外周に形成された平面と共に大流路11fを構成する内周面10bとを有して構成されている。
【0026】
段差部10の本体5側には、仕切部材11を装着部材6の自由端側に付勢する第1のばね12を収容する収容部13が連続して形成されている。更に、一次側通路1の端部には中心に酸素ボンベに充填された一次ガスである高圧酸素を通す穴15aが設けられ、且つ第1のばね12に付勢された仕切部材11の移動限界を規定する規定部材15が固定されている。更に、段差部10を覆うようにフィルター16が配置されており、該フィルター16が規定部材15によって保持されている。
【0027】
仕切部材11の中心には断面積が小さい小流路11aが形成されている。この小流路11aは、上流側の端面11d側に小径部11bが形成され、下流側の端面11e側に大径部11cが連続して形成されることで構成されている。小径部11bの径及び大径部11cの径は、圧力調整器Aに供給する一次ガスの圧力に応じて適宜設定される。
【0028】
仕切部材11は外形が略六角形に形成されており、該六角形の頂部が内接する円(段差部10の内周面10b)と六つの平面とで構成される六つの隙間が大流路11fとしての機能を発揮するように構成されている。
【0029】
尚、仕切部材11は一次側通路1に設けた段差部10に対し摺動可能に配置されるため、六角の頂部は段差部10の内周面10bに対し円滑に摺動し得るような寸法と平滑さを確保して構成されている。また対向する二つの平面間の寸法は段差部10の段差端面10aによって遮蔽し得る寸法を持って形成されている。
【0030】
仕切部材11の大流路11fを構成する平面から小流路11aの小径部11bに向けて連通路を構成する穴17が形成されている。この穴17は、仕切部材11の対向する二つの平面を貫通して形成されていても良く、一つの平面から小径部11bに到達させた状態で形成されていても良い。
【0031】
上記断熱圧縮防止機構Bでは、一次ガスが供給されていない状態では、図4(a)に示すように、仕切部材11は第1のばね12によって一次ガスの供給側に配置されたフィルター16側に付勢され、この付勢状態を保持している。
【0032】
上記状態から一次ガスを供給すると、この一次ガスはフィルター16を通って圧力が仕切部材11の上流側の端面11dに作用し、第1のばね12による付勢力に抗して下流側に摺動し、同図(b)に示すように、下流側の端面11eが段差部10の段差端面10aに当接する。この状態では、仕切部材11の平面と段差部10の内周面10bとによって構成された大流路11fが段差端面10aによって遮蔽されている。
【0033】
例えば、上記状態で仕切部材11の上流側の端面11dにゴミやホコリが付着して小流路11aを構成する小径部11bが閉鎖されているような場合、フィルター16を通して供給された一次ガスは、仕切部材11の平面と段差部10の内周面10bとの間に流入し、該平面に形成された穴17から小流路11aを構成する小径部11bに供給され、小流路11aを介して一次側通路1に流れ込み、減圧機構Dを構成するノズル18aに供給される。
【0034】
上記の如く、仕切部材11に於ける小流路11aに、一つの小径部11b及び二つの穴17が接続されることとなり、小径部11bの上流側の端面11dに於ける開口部分がゴミやホコリによって遮蔽されていても、穴17が開放されていることで、前記不具合に関わらず、一次ガスを減圧機構Dに供給することが可能となる。
【0035】
減圧機構Dに流れる一次ガスは、仕切部材11の小流路11aによって絞られることとなり、ノズル18a及びシート18bの近傍での断熱圧縮を防止することが可能である。
【0036】
減圧機構Dに対して充分な一次ガスが供給されて圧力が上昇すると、第1のばね12による仕切部材11に対する付勢が復活する。このとき、減圧された二次ガスが二次側通路2に供給されていない状態では、同図(a)に示すように、仕切部材11がフィルター16に当接する。また減圧された一次ガスが二次側通路2に供給され、一次側通路1に一次ガスの流れが形成されている場合には、同図(c)に示すように、仕切部材11は段差部10で浮遊するような位置を保持する。
【0037】
本件発明者等は、断熱圧縮防止機構Bを有する圧力調整器と、断熱圧縮防止機構を有することのない圧力調整器と、を用いて一次ガスを供給したときの温度の上昇についての計測実験を行った。一次ガスの圧力を13.5MPaとし、電磁弁を開放することで断熱圧縮防止機構Bに供給し得るように構成した。温度の計測位置は装着部材6に於ける段差部10の外周面とした。
【0038】
上記実験の結果、断熱圧縮防止機構Bを有する圧力調整器の場合、計測前の温度は約20℃であったのが、一次ガス供給して0.1秒後の温度が約80℃、0.2秒後の温度が約90℃、0,4秒後の温度が約80℃であった。
【0039】
断熱圧縮防止機構Bを有することのない圧力調整器の場合、計測前の温度は約20℃であったのが、一次ガス供給して0.1秒後の温度が約200℃、0.2秒後の温度が約100℃、0,4秒後の温度が約80℃であった。
【0040】
上記実験で明らかなように、断熱圧縮防止機構Bを有する圧力調整器では、高い圧力を持った一次ガスを供給したとき、断熱圧縮を防止して温度上昇を抑えることが可能である。
【0041】
次に、減圧機構Dの構成について簡単に説明する。本体5の内部には、一次側通路1を通った一次ガスを減圧する減圧機構Dが構成されている。本実施例に於ける減圧機構Dは特別な構造を有するものではなく、一般的に市販されている圧力調整器と同様に構成されている。
【0042】
即ち、減圧機構Dは、本体5に形成されたノズル18aと、ノズル18aに対し離隔又は接近し得るように構成されたシート18bと、シート18bをノズル18aを閉鎖する方向に付勢する第3のばね19と、シート18bを移動させるノズルピン20と、操作部材となるハンドル3の操作に伴って伸縮するばね部材21と、ばね部材21に付勢されてノズルピン20を移動させるダイヤフラム22と、を有して構成されている。
【0043】
上記構成に於いて、ノズル18aを境として、上流側に一次側通路1の末端を構成し、且つ第3のばね19を収容する一次側室25が形成され、下流側に二次側通路2の上端を構成し、且つ減圧されたガスが流通する二次側室26が形成されている。
【0044】
二次側室26に連続して二次側通路2が形成されており、この二次側通路2には、減圧された二次ガスを被供給部に供給するホース類を取り付けるためのターミナル27が配置されると共に、このターミナルは本体5に固定されている。
【0045】
次に、圧力指示機構Cの構成について説明する。圧力指示機構Cは、圧力調整器の一次側通路1に作用する圧力、即ち、一次ガスの圧力を指示する機能を有するものである。
【0046】
圧力指示機構Cは、圧力調整器の本体5に形成された一次側通路1の末端に形成された一次側室25に接続されて本体5に固定された筒体31と、筒体31の内部に摺動可能に挿入された摺動部材32と、筒体31に流入したガスが大気に漏洩することを防ぐOリング33と、Oリング33を押さえるOリング押さえ部材34と、摺動部材32を付勢する第2のバネ35と、を有して構成されている。
【0047】
筒体31の内部には、径の小さい空室となる第1空室31aと、径の大きい空室となる第2空室31bと、が形成されており、第1空室31aと第2空室31bとが接続する部位にはシール室31cが形成されている。筒体31の先端側であって第2空室31bの長さ方向の略中央部分に対応する部位には、筒体31の外周面と第2空室31bとを貫通させて複数の開口31dが形成されている。
【0048】
摺動部材32は指示部32aと受圧部32bとからなり、指示部32aが筒体31の第2空室31bに挿入されると共に、受圧部32bが第1空室31aに挿入されて長手方向に摺動して往復移動するものである。指示部32aの外周面には先端側に第1模様部32cが形成され、該第1模様部32cから離隔した位置に第2模様部32dが形成されている。
【0049】
上記第1模様部32cと第2模様部32dとは明確に異なる模様(例えば異なるローレット模様、或いは異なる色)として構成されている。前記第1模様部32cは、摺動部材32が摺動していない状態(受圧部32bに圧力が作用していない状態)で筒体31の開口31dに対向し得るように形成され、摺動部材32が第2のバネ35の付勢力に抗して摺動したとき開口31dに対向し得るように第2模様部32dが形成されている。
【0050】
Oリング33は筒体31に形成したシール室31cに収容されており、外周面が配置部位に於ける空室の内周面、即ち、シール室31cの内周面と接触し、且つ内周面が摺動部材32の受圧部32aの外周面と接触している。このため、筒体31の第1空室31aに高い圧力を持った一次ガスが流入したとしても、この一次ガスの大気への漏洩を防ぐことが可能である。
【0051】
Oリング押さえ部材34は、シール室31cに収容されたOリング33の脱落を防ぐ機能を有する。このため、Oリング押さえ部材34としては、中心に摺動部材32の受圧部32aを貫通させることが可能な径を持った孔を有する部材によって構成されている。
【0052】
第2のバネ35は筒体31の頂部と摺動部材32の指示部32bとの間に配置され、両者を互いに離隔する方向に付勢することで、摺動部材32を一次ガスの作用方向とは反対方向に付勢している。この第2のバネ35のバネ常数は、一次ガスの供給圧が低下したときに二次ガスの供給に支障を来す限界の圧力に対応して設定される。従って、第2のバネ35は、目的のガスに応じて異なるバネ常数が設定される。
【0053】
上記圧力指示機構Cでは、一次側通路1に一次ガスが供給されていない状態では、筒体31の開口31dには摺動部材32の指示部32aの先端側外周面に形成された第1模様32cが対向して視認される。そして、供給源の弁を開放すると、高い圧力を持った一次ガスが供給され、一次側通路1及び一次側室25は一次ガスで充満する。
【0054】
一次側室25に流入した一次ガスは、圧力指示機構Cを構成する摺動部材32の受圧部32bに作用し、該摺動部材32を第2のバネ35の付勢力に抗して摺動させる。摺動部材32の摺動に伴って、筒体31の開口31dには指示部32aの外周面に形成した第2模様32dが対向して視認される。
【0055】
このとき、筒体31の第1空室31aに流入した一次ガスはOリング33によって第2空室31bへの流入が阻止される。このため、圧力指示機構Cを通して一次ガスが大気に漏洩することがない。
【0056】
その後、前述したようにハンドル3を操作して減圧された二次ガスを目的の供給先に供給して二次ガスを消費する。
【0057】
二次ガスの消費量の増大に応じて酸素ボンベの圧力が低下すると、摺動部材32は受圧部32bが摺動し、この摺動に伴って、筒体31の開口31dに対向する模様が第2模様32dから第1模様32cへと変化する。即ち、一次ガスの圧力が充分に高いときには開口31dを介して視認し得る模様は第2模様32dであり、一次ガスの圧力が低下するのに伴って開口31dには第2模様32dの比率が小さくなると共に第1模様32cが視認し得るようになってくる。
【0058】
従って、開口31dから視認される模様の変化、即ち、第2模様32dと第1模様32cとの比率の変化、によって一次ガスの圧力を指示することが可能である。そして、開口31dを介して第1模様32c、第2模様32dの比率等を視認することで、一次ガスの凡その圧力を認識することが可能である。
【0059】
上記の如くして圧力指示機構Cによって一次ガスの圧力を認識した後、必要に応じて酸素ボンベの交換を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る圧力調整器では、供給源から高い圧力を持った一次ガスを供給したときの断熱圧縮を防止することが可能であり、且つゴミやホコリが付着したような場合でも、減圧した二次ガスを安定して供給することが可能となる。このため、例えば病院で使用する酸素供給装置として、或いは産業用の圧力調整器として有利に利用することが可能である。
【0061】
また、構造が簡単で容積が小さく、且つ一次ガスが大気に漏洩することがないので、支燃性ガス、可燃性ガス、不活性ガス等如何なるガスであっても利用することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
A 圧力調整器
B 断熱圧縮防止機構
C 圧力指示機構
D 減圧機構
1 一次側通路
2 二次側通路
3 ハンドル
5 本体
5a ボディ
5b ボンネット
6 装着部材
7 袋ナット
10 段差部
10a 段差端面
10b 内周面
11 仕切部材
11a 小流路
11b 小径部
11c 大径部
11d 上流側の端面
11e 下流側の端面
11f 大流路
12 第1のばね
13 収容部
15 規定部材
15a 穴
16 フィルター
17 穴
18a ノズル
18b シート
19 第3のばね
20 ノズルピン
21 ばね部材
22 ダイヤフラム
25 一次側室
26 二次側室
27 ターミナル
31 筒体
31a 第1空室
31b 第2空室
31c シール室
31d 開口
32 摺動部材
32a 指示部
32b 受圧部
32c 第1模様部
32d 第2模様部
33 Oリング
34 Oリング押さえ部材
35 第2のバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い圧力を持った一次ガスの供給源と接続され該一次ガスが流通する一次側通路と、前記一次側通路に配置された断熱圧縮防止機構及び圧力指示機構と、所定の圧力に減圧された二次ガスが流通する二次側通路と、前記一次側通路と二次側通路との間に配置された減圧機構と、前記減圧機構を操作する操作部材と、を有する圧力調整器であって、
前記断熱圧縮防止機構は、
高い圧力を持った一次ガスが流通する一次側通路に設けた段差部と、
前記段差部に対し摺動可能に配置され中心に小さい断面積を持った小流路を形成すると共に外周に大きい断面積を持った大流路を形成し且つ前記段差部と当接したとき該大流路が段差部によって遮蔽されるように構成されると共に、上流側の端面よりも下流側に小流路と大流路を連通させた連通路を形成して構成された仕切部材と、
前記仕切部材を一次側通路に於けるガスの流通方向上流側に付勢する第1のばねと、
を有して構成され、
且つ前記圧力指示機構は、
圧力調整器の本体に固定され、内部には基部側が径が小さく先端側が径が大きい空室が形成されると共に、該径が大きい空室を横断して複数の開口が形成された筒体と、
指示部と受圧部とからなり、指示部は外周面に少なくとも二種類の異なる模様が形成されて前記筒体の径が大きい空室に挿入され、受圧部は前記筒体の径が小さい空室に挿入されて摺動可能に挿入された摺動部材と、
前記筒体の径の小さい空室に於ける径の大きい空室側の端部に配置され、外周が配置部位に於ける空室の内周面と接触し、内周が前記摺動部材の受圧部の外周面と接触して径の小さい空室にあるガスの漏洩を防ぐOリングと、
前記筒体の径の大きい空室に配置され前記摺動部材を受圧部方向に付勢する第2のばねと、
を有し、筒体の内部に形成された径の小さい空室に一次ガスが流入したとき、該一次ガスの圧力に応じて摺動部材が摺動して指示部の外周に形成された模様が筒体に形成された開口から視認し得るように構成されている
ことを特徴とする圧力調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−160102(P2012−160102A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20473(P2011−20473)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000185374)小池酸素工業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】