説明

圧力調整弁の組立方法およびこれに用いるバネセット治具

【課題】圧力調整弁を簡単且つ精度良く組み立てることができる圧力調整弁の組立方法およびこれに用いるバネセット治具を提供する。
【解決手段】圧力調整弁の液室に、コイルバネを起立状態で載置するバネ載置工程と、コイルバネが起立状態を維持するように、バネセット治具70をリング状端面にセットする治具セット工程と、バネセット治具70の上から受圧膜体11および押えリング13を重ねるようにセットする膜体・リングセット工程と、受圧膜体11がコイルバネに当接するように、少なくとも2本の取付けネジ37を仮締めして、押えリング13および受圧膜体11をリング状端面に仮固定するネジ仮締め工程と、リング状端面からバネセット治具70を離脱させるセット治具取外し工程と、全ての取付けネジ37を本締めして、押えリング13および受圧膜体11をリング状端面に固定するネジ本締め工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液室の内外を画成する受圧膜体により、液体を大気圧基準で減圧供給する圧力調整弁の組立方法およびこれに用いるバネセット治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の圧力調整弁として、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を減圧供給するものが知られている(特許文献1参照)。この圧力調整弁は、ハウジング本体(バルブケーシング)と、受圧板およびダイヤフラム本体から成るダイヤフラム(受圧膜体)と、ハウジング本体とダイヤフラムとの間に介設されたパッキン(シールリング)と、ダイヤフラムを押さえるリングプレート(押えリング)と、を有している。また、圧力調整弁は、ダイヤフラムに突き当てた弁体と、弁体とダイヤフラムとの圧力バランスを取るために弁体を付勢する弁体付勢ばねと、弁体付勢ばねのバネ力を吸収すべくダイヤフラムを付勢する膜体付勢ばねと、を有している。
ハウジング本体、ダイヤフラムおよびリングプレートには、相互に対応する位置に固定ねじを螺合するための複数の貫通孔がそれぞれ形成されている。ハウジング本体に形成した複数の貫通孔はネジ孔で構成され、ダイヤフラムに形成した複数の貫通孔は固定ねじが遊挿される切抜き孔で構成され、リングプレートに形成した複数の貫通孔は固定ねじが遊挿されるバカ孔で構成されている。
この圧力調整弁において、想定されるダイヤフラム廻りの組立方法は、ハウジング本体の環状溝にパッキンを装着し、且つ膜体付勢ばねを載置した後、これに相互の貫通孔を位置合わせしてダイヤフラムおよびリングプレートを重ね、固定ねじを仮締めする。次に、ダイヤフラムの受圧板を、ハウジング本体の2次室のセンターに目見当で位置合わせし、ダイヤフラムに張りを与えつつ固定ねじを本締めする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−142215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の圧力調整弁の組立方法は、ダイヤフラムおよびリングプレートの相互の貫通孔を位置合わせして重ねる仮締めと、ダイヤフラムに張りを与えつつ受圧板をハウジング本体のセンターに位置合わせして行う本締めとを、全て目見当による手作業で行っている。このため、受圧膜体を前方向に向かって付勢する膜体付勢ばねが倒れ易く、受圧板に対して中央部に起立状態でセットすることは、極めて煩雑で作業効率が低いという問題があった。膜体付勢ばねが、起立状態でセットされない場合、圧力調整弁の連通流路の開閉動作が妨げられてしまい、正常に機能液を通液させることができない。
【0005】
本発明は、圧力調整弁を簡単且つ精度良く組み立てることができる圧力調整弁の組立方法およびこれに用いるバネセット治具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力調整弁の組立方法は、バルブケーシングのリング状端面に、液室の内外を画成する受圧膜体と、受圧膜体を押える押えリングと、押えリングおよび受圧膜体を貫通してリング状端面に螺合した複数の取付けネジと、液室内に配設され受圧膜体を液室外に向って付勢するコイルバネと、を備え、受圧膜体により、導入した液体を大気圧基準で減圧して供給する圧力調整弁の組立方法であって、リング状端面を水平に保持した状態で液室内に載置したコイルバネの中間部に臨み、コイルバネを挟み込むようにして起立状態に維持する一対のバネサポート部と、リング状端面にセットされ、各バネサポート部を支持すると共に各バネサポート部をコイルバネのセット位置に臨ませる板状の一対の治具フレームと、から成るバネセット治具を用い、リング状端面が水平となるようにセットされた圧力調整弁の液室に、コイルバネを起立状態で載置するバネ載置工程と、コイルバネが起立状態を維持するように、バネセット治具をリング状端面にセットする治具セット工程と、治具セット工程の後、バネセット治具の上から受圧膜体および押えリングを重ねるようにセットする膜体・リングセット工程と、膜体・リングセット工程の後、受圧膜体がコイルバネに当接するように、少なくとも2本の取付けネジを仮締めして、押えリングおよび受圧膜体をリング状端面に仮固定するネジ仮締め工程と、ネジ仮締め工程の後、リング状端面からバネセット治具を離脱させるセット治具取外し工程と、セット治具取外し工程の後、全ての取付けネジを本締めして、押えリングおよび受圧膜体をリング状端面に固定するネジ本締め工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、バネセット治具を用いて、圧力調整弁の液室に起立状態に載置したコイルバネを挟み込むようにして予め位置固定してから、バルブケーシングのリング状端面に対し、セットされた受圧膜体および押えリングを装着するようにしているため、コイルバネの起立状態を維持して組立作業を行うことができる。また、押えリングおよび受圧膜体は取付けネジによって仮締めされているため、バネセット治具取外しの際にも位置ズレすることなく、バネセット治具のみを離脱させることができる。なお、バネ載置工程と治具セット工程とは、いずれが先であってもよい。
【0008】
この場合、受圧膜体は、押えリングの外形より大きく形成されており、ネジ本締め工程の後、押えリングからはみ出した受圧膜体の不要部分を、押えリングの外周に沿って切り取るカット工程を、更に備えたことが好ましい。
【0009】
この構成によれば、膜体・リングセット工程において、受圧膜体の押えリングからはみ出した部分を把持して微調整を行うことで、受圧膜体の位置決め作業を簡単且つ迅速に行うことができる。そして、ネジ本締め工程の後、受圧膜体の不要部分をカットすることで、不要部分を適切に処理することができる。
【0010】
本発明のバネセット治具は、上記の圧力調整弁の組立方法に用いるバネセット治具であって、リング状端面を水平に保持した状態で液室内に載置したコイルバネの中間部に臨み、コイルバネを挟み込むようにして起立状態に維持する一対のバネサポート部と、リング状端面にセットされ、各バネサポート部を支持すると共に各バネサポート部をコイルバネのセット位置に臨ませる板状の一対の治具フレームと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、治具フレームをリング状端面に装着することによって、コイルバネの起立状態を維持すると共にセット位置に位置決めすることができるため、コイルバネを簡単に且つ精度良く組み込むことができる。
【0012】
この場合、各治具フレームは、バネサポート部を支持する支持フレーム部と、リング状端面にセットされる半リング状の本体フレーム部と、を有し、一対の本体フレーム部は、突き合せた状態でリング状を為し、突き合せた一対の本体フレーム部の外側輪郭が、押えリングの外側輪郭に略合致することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、押えリングに治具フレームを重ねるようにして位置決めできるため、バネセット治具自身を精度良く位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】圧力調整弁の外観平面図である。
【図2】圧力調整弁を流入ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図3】圧力調整弁における2次室側の外観斜視図である。
【図4】圧力調整弁における2次室側の分解斜視図である。
【図5】第1治具の斜視図である。
【図6】第2治具の斜視図である。
【図7】バネセット治具の斜視図である。
【図8】2次室側の組立工程(1)を示した組立説明図である。
【図9】2次室側の組立工程(2)を示した組立説明図である。
【図10】2次室側の組立工程(3)を示した組立説明図である。
【図11】2次室側の組立工程(4)を示した組立説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付した図面を参照して、本実施形態について説明する。この圧力調整弁は、カラーフィルタなどを製造する液滴吐出装置の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給するチューブに介設されており、機能液滴吐出ヘッドに機能液を大気圧基準(一定圧)で減圧供給するものである。
【0016】
図1に示すように、圧力調整弁1は、主要部を成す調整弁本体2と、調整弁本体2の流入側に差込み接合した流入コネクタ3と、調整弁本体2の流出側に差込み接合した流出コネクタ4と、を備えている。そして、流入コネクタ3には、押えナット5を介して、図外の機能液タンクに連なるチューブ6が接続され、同様に流出コネクタ4には、押えナット5を介して、図外の機能液滴吐出ヘッドに連なるチューブ6が接続される。
【0017】
図2および図3に示すように、調整弁本体2は、略円板状で、かつ前面および後面の中央部が凹型形成されたバルブケーシング7と、バルブケーシング7と共に1次室8を画成する蓋体9と、バルブケーシング7に受圧膜体11を固定することでバルブケーシング7と共に2次室12を画成する押えリング13と、で構成されており、バルブケーシング7、蓋体9および押えリング13は、ステンレス等の耐食性材料で形成されている。また、バルブケーシング7の中心部には、1次室8および2次室12を連通する連通流路14が形成されている。
【0018】
押えリング13および蓋体9は、バルブケーシング7に対し、前後方向から挟み込むようにねじ止めして組み込まれており(図示省略)、いずれも円形の受圧膜体11の中心を通る軸線と同心円となる円形の外形を有している。バルブケーシング7および押えリング13は、受圧膜体11の周縁部およびシールリング15を挟込み込んで相互に液密に突合せ接合されている。同様に、蓋体9は、シールリング15を介してバルブケーシング7に対し相互に液密に突合せ接合されている。これにより、1次室8および2次室12は、液密に保持されている。
【0019】
1次室8は、バルブケーシング7の後面と、バルブケーシング7の開放端を閉蓋する蓋体9とにより、受圧膜体11と同心となる略円柱形状に形成されている。また、1次室8の上部には、1次室8から径方向斜めに延びる流入ポート19が形成され、中心部には、連通流路14に連なる1次室側開口部16が開口している。そして、この1次室側開口部16には、1次室8側から連通流路14を開閉する弁体17が臨む一方、これに対応して、1次室側開口部16の周縁部により、弁体17が離接する弁座が構成されている。また、弁体17は、これと蓋体9との間に介設した弁体付勢ばね18によって、閉弁方向(2次室12側)に弱い力で付勢されている。
【0020】
流入ポート19は、流入コネクタ3が差込み接合される接合受け部21と、接合受け部21に連なり、フィルタ22を収容するフィルタ収容部23と、フィルタ収容部23と1次室8とを連通する流入流路部24と、から構成されている。接合受け部21には、後述する流入コネクタ3の接続口部48が差し込み接合される。フィルタ収容部23には、フィルタ22が、流入コネクタ3との間に介設した押えばね25に付勢された状態で収容されている。また、流入流路部24は、流入ポート19に対し1次室8側に偏って形成されている。
【0021】
フィルタ22は、円形ステンレス製のフィルタエレメント26と、フィルタエレメント26をセットする受けホルダ27と、フィルタエレメント26を押える押えホルダ28とで構成され、フィルタ収容部23の当接段部29に着座するように設けられている。そして、上記の押えばね25およびフィルタ22は、流入コネクタ3を引抜くことで、取り出し得るようになっている。
【0022】
2次室12は、バルブケーシング7の前面と、バルブケーシング7の開放端を閉蓋する受圧膜体11と、で形成されており、受圧膜体11は、押えリング13によりバルブケーシング7に取り付けられている。具体的には、2次室12は、バルブケーシング7に凹型形成した内面壁31と受圧膜体11とによって、全体として受圧膜体11を底面とする円錐台形状に形成されている。また、2次室12の下部には、2次室12から真下に延びる流出ポート32が形成され、中心部には、連通流路14に連なる2次室側開口部33が開口している。そして、この2次室側開口部33の周縁部と後述する受圧膜体11との間には、受圧膜体11を前方向に向かって付勢する膜体付勢ばね(コイルバネ)34が介設されている。
【0023】
バルブケーシング7の前面周縁部であるリング状端面35には、断面矩形の環状溝36が形成され、環状溝36には、リング状端面35と受圧膜体11との間をシールする上記のシールリング15が装着されている。また、リング状端面35における環状溝36の外側には、押えリング13を取り付けるための複数の取付けネジ37が螺合するネジ孔38が複数(6個)形成されている。
【0024】
受圧膜体11は、樹脂フィルムで構成した膜体本体39と、膜体本体39の中央部に接着した樹脂製の受圧板41とで構成されている。膜体本体39(受圧膜体11)の周縁部には、バルブケーシング7のネジ孔38に対応する部位に複数(6個)の切抜き孔42が形成されている(図4参照)。受圧板41は、膜体本体39と同心の円板状に、且つ膜体本体39に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に上記の弁体17が離接するようになっている(図2参照)。
【0025】
押えリング13は、バルブケーシング7のリング状端面35と同じ大きさのドーナツ状に形成されており、その周縁部には、ネジ孔38および切抜き孔42に対応する部位に複数(6個)のバカ孔43が形成されている(図3参照)。これにより、環状溝36にシールリング15を装着したバルブケーシング7のリング状端面35に受圧膜体11をセットし、これに押えリング13を複数本の取付けネジ37でねじ止めすることで、2次室12が構成される。
【0026】
弁体17は、弾性材で構成され、弁の機能を奏するリング状の弁体本体44と、弁体本体44保持する弁ホルダ45と、を備えている。弁体本体44は、弁座となる1次室側開口部16の周縁部に離接することで連通流路14を開閉する。また、弁ホルダ45は、連通流路14を挿通する軸部46を有しており、この軸部46の先端が上記の受圧板41に当接するようになっている(図2参照)。
【0027】
流出ポート32は、流入ポート19と同様の形態を有しており、流出コネクタ4が差込み接合される接合受け部21と、接合受け部21と2次室12とを連通する流出流路部47と、から構成されている。接合受け部21には、流出コネクタ4の接続口部48が差し込み接合される。なお、流入ポート19および流出ポート32は、機能液の流れ方向とフィルタ22の有無とにおいて異なるが、接合部分の基本形態は同一である。
【0028】
このように構成された圧力調整弁1では、例えば機能液滴吐出ヘッドの液滴吐出により2次室12の圧力が下がってゆくと、大気圧により受圧膜体11が凹変形してゆき、受圧板41が弁体17を押す。これにより、弁体17が開弁し、連通流路14を介して1次室8から2次室12に機能液が流入する。機能液の流入がすすむと、やがて2次室12の圧力が高まってゆき、受圧膜体11が外部に向かって凸変形してゆく。これにより、受圧板41が弁体17から離れるように前進し、同時に弁体17が前進して閉弁する。
【0029】
すなわち、圧力調整弁1は、大気圧と機能液滴吐出ヘッドに連なる2次室12との内部圧力のバランスにより受圧膜体11が変形することで連通流路14を開閉する。その際、弁体付勢ばね18および膜体付勢ばね34に力が分散して作用し、且つ弁体本体44の弾性力により、弁体17は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体17の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッドの吐出駆動に影響を与えないようになっている。もちろん、1次室8側で発生する脈動等も、弁体17で縁切りされるため、これを吸収(ダンパー機能)することができる。
【0030】
次に、圧力調整弁1の2次室12側(図4参照)の組立方法について詳細に説明する。受圧膜体11は、上記したように、2次室12内の内部圧力の変化により凹凸変化して弁体17を開閉させる、いわゆるダイヤフラムであり、バルブケーシング7に精度良く組みつけられる必要がある。本実施形態では、この組立てに際し、押えリング13および受圧膜体11をバルブケーシング7にセットするための第1治具50と、第1治具50を抜止め状態に保持する第2治具60と、膜体付勢ばね34を姿勢維持させるためのバネセット治具70と、を用いる。そこで、圧力調整弁1の2次室12側の組立方法を説明する前に、第1治具50、第2治具60、およびバネセット治具70について詳細に説明する。
【0031】
図5に示すように、第1治具50は、板状の治具フレーム51と治具フレーム51の裏面に突設した一対の装着ピン52とから成り、治具フレーム51は、リング状端面35にセットされる本体フレーム部53と、本体フレーム部53中央に設けられた、受圧板41の位置合わせ基準となるマーク形成部材54と、本体フレーム部53とマーク形成部材54とを連結する一対の連結フレーム55と、一体に形成されている。
【0032】
本体フレーム部53は、その輪郭において押えリング13の輪郭に略合致する大きさに形成されている。本体フレーム部53の裏面には、押えリング13のバカ孔43、受圧膜体11の切抜き孔42、およびリング状端面35のネジ孔38に挿通可能な2本の装着ピン52が180°隔てた位置に突設されている。さらに、複数(図示では4つ)の貫通孔(遊挿孔)56がリング状端面35のネジ孔38に臨む位置に設けられ、各貫通孔56は、各取付けネジ37の頭部が遊挿される大きさに形成されている。2本の装着ピン52には、それぞれ軸線に直交すると共に後述する第2治具60が装着される装着孔57が形成されている。各装着孔57は、第2治具60の断面形状と相補的な断面形状を有し、第2治具60ががたつき無く挿入装着されるようになっている。
【0033】
なお、実施形態の各装着ピン52は、ストレートピンで構成されているが、各装着ピン52は段付き構造を有したものであっても良い。すなわち、各装着ピン52の装着孔57から上部を、押えリング13のバカ孔43および受圧膜体11の切抜き孔42が嵌合する径とし、装着孔57から下部を、リング状端面35のネジ孔38に嵌合する径とする。すなわち、上部に対し下部を僅かに細径とする段付きピンとする。これにより、押えリング13および受圧膜体11を、リング状端面35に精度良く組み込むことができる。
【0034】
リング状のマーク形成部材54は、その内周面が受圧板41より僅かに大径に形成されており、治具フレーム51の内周壁面から中央のマーク形成部材54の外周壁面に向かって延設された一対の連結フレーム55によって支持されている。このように構成された第1治具50は、受圧膜体11および押えリング13を装着し、装着ピン52をリング状端面35のネジ孔38に挿通させると共に、残りのネジ孔38に対して取付けネジ37を仮締めして仮固定するものである。
【0035】
図6に示すように、第2治具60は、断面長方形の薄手に形成された一対の板状部材である。各第2治具60は、L字状に一体に形成されており、一端は摘み部61となり、他端は上述した第1治具50の2つの装着ピン52に形成された装着孔57に挿入される挿入部62となっている。各第2治具60は、L字状端部を装着孔57に差し込んで装着され、摘み部61を引張り水平に引き出すことによって第1治具50から容易に取外すことができる。第2治具60は、第1治具50にセットした押えリング13および受圧膜体11を抜止め状態に保持する。
【0036】
図7に示すように、バネセット治具70は、リング状端面35を水平に保持した状態で2次室12内に載置した膜体付勢ばね34の中間部に臨み、膜体付勢ばね34を挟み込むようにして起立状態に維持する一対のバネサポート部71と、リング状端面35にセットされ、各バネサポート部71を膜体付勢ばね34のセット位置に臨ませる板状の一対の治具フレーム72と、で構成されている。各治具フレーム72は、バネサポート部71を支持する支持フレーム部73と、リング状端面35にセットされる半リング状の本体フレーム部74とを有している。
【0037】
一対の本体フレーム部74は、突き合わせた状態でリング状を為し、その外側輪郭は、押えリング13の外側輪郭に略合致するように形成されている。また、各本体フレーム部74には、突き合わせた状態でリング状端面35の複数のネジ孔38に臨む位置に複数の切欠き部75が形成されている。また、各本体フレーム部74には、離脱させるときに指掛かり部となる摘み部76が設けられている。したがって、各取付けネジ37および第1治具50の装着ピン52は、バネセット治具70を介してリング状端面35に装着することができる。このように構成されたバネセット治具70は、2次室12内に載置した膜体付勢ばね34の起立姿勢を維持しながらリング状端面35にセットされ、受圧膜体11および押えリング13をリング状端面35に重ねるように位置合わせして仮固定される。
【0038】
次に、図8ないし図11を参照して、圧力調整弁1の2次室12側の組立方法について詳細に説明する。上述したように、2次室12は、第1治具50および第2治具60によって、押えリング13および受圧板41を有する受圧膜体11を重ね合わせてセットした後、バネセット治具70を用いて膜体付勢ばね34を姿勢維持させた状態で、受圧膜体11および押えリング13をリング状端面35に複数の取付けネジ37でネジ止めされる。なお、組み付け前の受圧膜体11には、その中央部に受圧板41が接着されており、且つ受圧板41の位置調整のために受圧膜体11は、押えリング13(リング状端面35)より一回り大きく形成されている(摘み代を加味している)。
【0039】
図8ないし図11に示すように、圧力調整弁1の2次室12側の組立方法は、第1治具50に押えリング13および受圧膜体11を装着した後、第1治具50に第2治具60を装着する準備工程(図8参照)と、リング状端面35が水平になるようにセットされた2次室12に、膜体付勢ばね34を起立状態で載置するバネ載置工程(図9(d)参照)および膜体付勢ばね34を姿勢維持するようにバネセット治具70をリング状端面35にセットする治具装着工程(図9(e)参照)から成る治具セット工程と、リング状端面35の2つのネジ孔38に2本の装着ピン52を挿通して、バネセット治具70が装着されたリング状端面35に第1治具50をセットする膜体・リングセット工程(図9(f)参照)と、残余の複数のネジ孔38に対応する複数の取付けネジ37を仮締めして、受圧膜体11および押えリング13をリング状端面35に仮固定するネジ仮締め工程(図10(g)参照)と、第1治具50から2個の第2治具60をそれぞれ離脱させる第2治具60取外し工程(図10(h)参照)と、第2治具60取外し工程後、押えリング13および受圧膜体11を残して第1治具50をリング状端面35から離脱させる第1治具50取外し工程(図10(i)参照)と、第1治具50取外し工程後、残りの取付けネジ37を仮締めして、リング状端面35からバネセット治具70を取外すバネセット治具70取外し工程(図11(j)参照)と、全ての取付けネジ37を本締めして、受圧膜体11および押えリング13をリング状端面35に固定するネジ本締め工程(図11(k)参照)と、押えリング13からはみ出した受圧膜体11の不要部分を、押えリング13の外周に沿って切り取るカット工程(図11(l)参照)と、を備えている。
【0040】
準備工程では、第1治具50を表裏反転しておいて、第1治具50の一対の装着ピン52に、押えリング13のバカ孔43および受圧膜体11の切抜き孔42を挿通して装着した後、2個の第2治具60をそれぞれ各装着ピン52に形成された装着孔57に差し込み、第1治具50に重ね合わせた押えリング13および受圧膜体11を保持状態とする(図8参照)。
【0041】
治具セット工程では、リング状端面35が水平となるようにセットされたリング状端面35に、膜体付勢ばね34を起立状態で載置してバネセット治具70の一対の本体フレーム部74によって両側から挟むようにして膜体付勢ばね34を姿勢維持した状態で、バネセット治具70をリング状端面35に装着する(図9(d),(e)参照)。もちろん、バネセット治具70をリング状端面35にセットしてから、膜体付勢ばね34を起立状態で投入するようにしてもよい。
【0042】
膜体・リングセット工程では、第1治具50の2本の装着ピン52をリング状端面35の2つのネジ孔38に挿通することにより、バネセット治具70を介して第1治具50をリング状端面35に装着する(図9(f)参照)。このとき、上述したように、各装着ピン52は、リング状端面35に挿通する部分は、ネジ孔38の大きさに合わせて一回り小さく形成されている場合には、精度良く固定される。
【0043】
ネジ仮締め工程では、リング状端面35のネジ孔38において、2本の装着ピン52が挿通されている以外の4つのネジ孔38に、対応する取付けネジ37を仮締めする。これにより、受圧膜体11および押えリング13を、リング状端面35に仮固定する(図10(g)参照)。このとき、セットされている第1治具50、第2治具60、およびバネセット治具70を取外しできる程度の強度で仮固定する。
【0044】
第2治具60取外し工程では、ネジ仮締め工程によって受圧膜体11および押えリング13がリング状端面35に仮固定されたため、これらを保持していた第2治具60を摘み部61を引張り、水平方向に引き抜いて取外す。これにより、受圧膜体11および押えリング13が、第2治具60の厚み分落ち込み、受圧膜体11が膜体付勢ばね34に接触する(図10(h)参照)。
【0045】
第1治具50取外し工程では、受圧膜体11に設けられた受圧板41を、第1治具50のマーク形成部材54に位置合わせして微調整した後、第1治具50を持ち上げることによって、リング状端面35のネジ孔38に挿通した装着ピン52が引抜かれる。第1治具50を取外した後、装着ピン52が差し込まれていた2つのネジ孔38に対し、取付けネジ37を仮締めする。第1治具50の4つの貫通孔56は、仮締めされた取付けネジ37が遊挿される大きさに形成されているため、受圧膜体11、押えリング13を残して、それぞれが位置ズレすることなく容易に取外すことができる(図10(i)参照)。もちろん、先の4本の取付けネジ37を再度仮締めしてもよい。
【0046】
バネセット治具70取外し工程では、各本体フレーム部74の摘み部76を引張り、これを水平方向に引抜くことによって、突き合わせ状態の一対の本体フレーム部74を離脱させる。これによって、押えリング13、受圧膜体11を残し、最後のバネセット治具70が取り外されることになる。したがって、押えリング13および受圧膜体11は、装着された状態を維持しながらバネセット治具70の本体フレーム部74の高さ分だけ、リング状端面35に向って下方向に移動する(図11(j)参照)。
【0047】
ネジ本締め工程では、バネセット治具70の離脱によって、仮締めされた取付けネジ37の頭部と押えリング13の間に生じた隙間を埋めるべく、取付けネジ37を本締めする。これにより、押えリング13および受圧膜体11がリング状端面35に完全に固定される(図11(k)参照)。
【0048】
カット工程では、本締めした後、押えリング13の外周からはみ出している受圧膜体11を、押えリング13の外周に沿って切り取る(図11(l)参照)。以上の工程により、圧力調整弁1の2次室12側の組立作業を終了する(図11(m)参照)。
【0049】
なお、本実施形態では、ネジ孔38、切抜き孔42およびバカ孔43は、それぞれ6つずつ形成されているが、これらの数は限定されるものではない。
【0050】
以上の構成によれば、第1治具50および第2治具60によって重ね合わせた受圧膜体11および押えリング13を、バネセット治具70によって膜体付勢ばね34が起立状態に維持されたリング状端面35に装着し、仮固定することができる。このため、押えリング13および受圧膜体11を、簡単且つ精度良くバルブケーシング7のリング状端面35に対して位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…圧力調整弁 7…バルブケーシング 11…受圧膜体 13…押えリング 17…弁体 35…リング状端面 37…取付けネジ 38…ネジ孔 41…受圧板 42…切抜き孔 43…バカ孔 50…第1治具 51…治具フレーム 52…装着ピン 54…マーク形成部材 56…貫通孔 57…装着孔 60…第2治具 70…バネセット治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブケーシングのリング状端面に、液室の内外を画成する受圧膜体と、前記受圧膜体を押える押えリングと、前記押えリングおよび前記受圧膜体を貫通して前記リング状端面に螺合した複数の取付けネジと、前記液室内に配設され前記受圧膜体を前記液室外に向って付勢するコイルバネと、を備え、
前記受圧膜体により、導入した液体を大気圧基準で減圧して供給する圧力調整弁の組立方法であって、
前記リング状端面を水平に保持した状態で前記液室内に載置した前記コイルバネの中間部に臨み、前記コイルバネを挟み込むようにして起立状態に維持する一対のバネサポート部と、
前記リング状端面にセットされ、前記各バネサポート部を支持すると共に前記各バネサポート部を前記コイルバネのセット位置に臨ませる板状の一対の治具フレームと、から成るバネセット治具を用い、
前記リング状端面が水平となるようにセットされた前記圧力調整弁の前記液室に、前記コイルバネを起立状態で載置するバネ載置工程と、
前記コイルバネが起立状態を維持するように、前記バネセット治具を前記リング状端面にセットする治具セット工程と、
前記治具セット工程の後、前記バネセット治具の上から前記受圧膜体および前記押えリングを重ねるようにセットする膜体・リングセット工程と、
前記膜体・リングセット工程の後、前記受圧膜体が前記コイルバネに当接するように、少なくとも2本の前記取付けネジを仮締めして、前記押えリングおよび前記受圧膜体を前記リング状端面に仮固定するネジ仮締め工程と、
前記ネジ仮締め工程の後、前記リング状端面から前記バネセット治具を離脱させるセット治具取外し工程と、
前記セット治具取外し工程の後、全ての前記取付けネジを本締めして、前記押えリングおよび前記受圧膜体を前記リング状端面に固定するネジ本締め工程と、を備えたことを特徴とする圧力調整弁の組立方法。
【請求項2】
前記受圧膜体は、前記押えリングの外形より大きく形成されており、
前記ネジ本締め工程の後、前記押えリングからはみ出した前記受圧膜体の不要部分を、前記押えリングの外周に沿って切り取るカット工程を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁の組立方法。
【請求項3】
請求項1に記載の圧力調整弁の組立方法に用いるバネセット治具であって、
前記リング状端面を水平に保持した状態で前記液室内に載置した前記コイルバネの中間部に臨み、前記コイルバネを挟み込むようにして起立状態に維持する一対のバネサポート部と、
前記リング状端面にセットされ、前記各バネサポート部を支持すると共に前記各バネサポート部を前記コイルバネのセット位置に臨ませる板状の一対の治具フレームと、を備えたことを特徴とするバネセット治具。
【請求項4】
前記各治具フレームは、前記バネサポート部を支持する支持フレーム部と、前記リング状端面にセットされる半リング状の本体フレーム部と、を有し、
前記一対の本体フレーム部は、突き合せた状態でリング状を為し、
突き合せた前記一対の本体フレーム部の外側輪郭が、前記押えリングの外側輪郭に略合致することを特徴とする請求項3に記載のバネセット治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−180942(P2010−180942A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24607(P2009−24607)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】