説明

圧力調理器

【課題】 高価な圧力センサや信頼性が低い温度センサを使用することなく、調理鍋内の圧力制御を可能とする。
【解決手段】 調理鍋(内鍋2)と、該調理鍋を収容する本体3と、調理鍋を加熱する加熱手段(誘導加熱コイル6)と、本体3に開閉可能に取り付けられ調理鍋の開口部を閉塞する蓋体8と、該蓋体8に設けた調理鍋内と連通する開口29aを閉塞して該調理鍋内を大気圧以上に維持する圧力投入手段とを備えた圧力調理器(炊飯器1)において、蓋体8に、調理鍋内の圧力による圧力投入手段の振動を検出するセンサ36を設け、該振動センサ36の出力に基づいて加熱手段を制御するように構成する。圧力投入手段は、蓋体8の開口29aを自重によって閉塞する球状部材(調圧ボール31)と、該球状部材の移動機構(ソレノイド35)とからなる調圧器25であり、開口29aに、球状部材に密着するパッキン30を配設する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蒸し器や炊飯器等、蒸気の吹き出しを抑えて調理する圧力調理器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の圧力調理器は、サーミスタ等の温度センサによって調理鍋の温度を検出し、この温度センサの出力と調理鍋の内圧との相関関係に基づいて調理鍋の加熱手段を制御して調理鍋の内圧を一定に維持しながら、所定の動作フローを実行し、希望する食材を調理するものである。また、圧力センサの検出に基づいて加熱手段を制御し、調理鍋の内圧を一定に維持する圧力調理器も提供されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記圧力調理器では、前記温度センサと調理鍋の相関関係に基づいて制御すると、調理鍋の内圧が上がっても沸騰による蒸気で温度センサによる出力は殆ど変化しなくなるため、信頼性が低く、正確な制御が困難である。
【0004】また、圧力センサの検出に基づいて制御する圧力調理器では、この圧力センサによる検出精度は高いが、この圧力センサ自体が高価であるため、コスト高になるという問題がある。さらに、この圧力センサは、製造時に搭載する際、一品一様に異なるゼロ点の補正をする必要があるため、作業性および生産性が悪いという問題がある。
【0005】そこで、本発明では、高価な圧力センサや信頼性が低い温度センサを使用することなく、調理鍋内の圧力制御を可能とする圧力調理器を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明の圧力調理器は、調理鍋と、該調理鍋を収容する本体と、前記調理鍋を加熱する加熱手段と、前記本体に開閉可能に取り付けられ前記調理鍋の開口部を閉塞する蓋体と、該蓋体に設けた前記調理鍋内と連通する開口を閉塞して該調理鍋内を大気圧以上に維持する圧力投入手段とを備えた圧力調理器において、前記蓋体に、前記調理鍋内の圧力による圧力投入手段の振動を検出するセンサを設け、該振動センサの出力に基づいて前記加熱手段を制御するように構成している。
【0007】前記圧力調理器によれば、調理鍋の内圧が高まると、その圧力に応じて圧力投入手段が振動する。従って、調理鍋内の圧力は、圧力投入手段の振動として振動センサにより検出することができ、その検出精度の信頼性は高い。そのため、調理鍋の内圧を正確に細かい制御することが可能になる。また、前記圧力投入手段の振動を検出する振動センサは、圧力センサと比較して非常に安価であるとともに、ゼロ点補正をする必要がない。
【0008】前記圧力調理器では、前記圧力投入手段は、前記蓋体の開口を自重によって閉塞する球状部材と、該球状部材の移動機構とからなる調圧器であり、前記開口に、前記球状部材に密着するパッキンを配設することが好ましい。このようにすれば、圧力投入手段による調理鍋内の密閉性が向上するうえ、振動の伝達率も向上する。
【0009】また、前記振動センサを、シール部材を介して前記圧力投入手段に接触するように配設し、圧力投入手段内に蒸気が流入しても振動センサが汚れることを防止することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図1は本発明の圧力調理器である圧力制御方式の炊飯器1を示す。この炊飯器1は、大略、調理鍋である内鍋2、本体3、加熱手段である誘導加熱コイル6、内鍋用温度センサ7、蓋体8、および、制御手段であるマイコン37からなる。
【0011】前記内鍋2は、熱伝導率が高いアルミ等からなる鍋母材の外面に、後述する誘導加熱コイル6への高周波電流の通電時に生じる渦電流によって電磁誘導加熱される強磁性材料をコーティングや接合等を施したものである。
【0012】前記本体3は、有底筒形状をなす胴体4の内部に、前記内鍋2を収容する非導電性材料からなる保護枠5を備えている。これら胴体4と保護枠5との間には、前記加熱手段、および、内鍋用温度センサ7および制御手段が配設されている。
【0013】前記加熱手段である誘導加熱コイル6は、前記保護枠5の下面に配設され、高周波電流が通電されることにより、前記内鍋2を電磁誘導加熱するものである。
【0014】前記内鍋用温度センサ7は、前記保護枠5の底部に配設され、その先端の検出部を前記保護枠5に設けた貫通孔を通して内鍋2の底面に接触させ、該内鍋2の温度を制御手段に出力するものである。
【0015】前記蓋体8は、前記内鍋2および本体3の開口部を閉塞するもので、図2に示すように、上板10と下板12と、該下板12の底面に着脱可能に取り付けられる内蓋22とからなる。そして、この蓋体8の内部には、蓋用温度センサ24と、圧力投入手段である調圧器25と、振動センサ36とが配設されている。なお、図中9は、前記内蓋22と上板10および下板12との空間をシールするシール部材である。
【0016】図1および図2に示すように、前記上板10には、炊飯時に、内鍋2内に設定圧力を越える圧力に高まると、その圧力とともに蒸気を外部(大気)に排気する排気口11が設けられ、この排気口の下側縁を囲むように、後述するダクト19が配設されている。
【0017】前記下板12には、後述する調圧器25の取付部分が開口され、この開口を囲繞するように調圧器25の加圧機構26を収容するケース13が取り付けられるとともに、このケース13の側部に加圧機構26の駆動手段であるソレノイド35が配設されている。前記ケース13には、ソレノイド35を配設する側にプランジャを挿通させる挿通口14が設けられ、この挿通口14に内鍋2からの蒸気の漏れを防止するシール部材15が配設されている。また、ケース13の上部には、振動センサ36の配設口16が設けられ、この配設口16にシール部材17が配設されている。さらに、ケース13の下部には、排気口18が設けられ、この排気口18を囲繞するように、前記上板10の排気口11と連通させるためのダクト19が一体に設けられている。このダクトの上端縁には、上板10の下面に圧接されるパッキン19aが配設されている。また、前記下板12の下部には、従来と同様に放熱板20が配設されるとともに、この放熱板20の上面に蓋ヒータ21が配設されている。
【0018】前記内蓋22には、内鍋2の上端縁に圧接して該内鍋2内を密閉する図示しないパッキンが全周にかけて配設されている。また、この内蓋22には、前記ケース13と対応する位置が開口され、この開口に調圧器25を構成する加圧機構26が一体に取り付けられている。
【0019】前記蓋用温度センサ24は、内鍋2の上部の温度を検出することによって、炊飯する米の温度(飯温)を検出し、その検出温度を後述する制御手段に出力するものである。
【0020】前記調圧器25は、内蓋22の開口に配設され前記内鍋2内に圧力を投入する加圧機構26と、前記蓋体8の下板12に配設され前記加圧機構26を動作させる駆動手段とからなる。この駆動機構としては、ソレノイド35が使用可能である。
【0021】前記加圧機構26は、大略、逆止弁27と、台座部材29と、球状部材である調圧ボール31と、キャップ32とからなり、前記内鍋2内を大気圧以上に維持するものである。
【0022】前記逆止弁27は、内蓋22の開口に固定されるもので、その中央には内鍋2と連通する流入口28が設けられている。前記台座部材29は、前記流入口28を囲繞する大きさの上下開口の筒体からなる。この台座部材29の上端開口29aは、開口面積を狭めるように縮径され、その内周縁には、前記ダクト19を介して外部と内鍋2内とを連通させる通気口30aを備えたパッキン30が配設されている。前記調圧ボール31は、自重によって前記パッキン30に密着して通気口30aを閉塞するもので、本実施形態では、内鍋2内の圧力が約0.20kg/cm2(ゲージ圧)を越えると浮き上がる重さのものを使用している。前記キャップ32は、前記調圧ボール31を内部に収容した状態で台座部材29に取り付けられ、前記ケース13内に所定の隙間をもって配設されるもので、前記ソレノイド35のプランジャを挿通する挿通孔33と、ダクト19に連通する多数の通気口34が設けられている。
【0023】前記振動センサ36は、前記ケース13の上部に配設したシール部材17を介して前記キャップ32の上部に接触するように配設されるものである。この振動センサ36は、内鍋2の内圧が上がって調圧ボール31を下側から加圧することにより振動する調圧ボール31の振動を、パッキン30、台座部材29、キャップ32、シール部材17を介して検出する。
【0024】前記各部品を制御する制御手段であるマイコン37は、従来と同様に、記憶されたプログラムに従って、予熱、中ぱっぱ、電力制御、炊き上げ、むらし、及び、保温の各工程を順次実行して炊飯動作を実行するとともに、前記内鍋用温度センサ7、蓋用温度センサ24、および、振動センサ36からの出力に基づいて、前記加熱手段による内鍋2の加熱量を制御するものである。
【0025】次に、前記炊飯器1による炊飯動作について具体的に説明する。まず、使用者は、希望するカップ数の米と、その米を炊飯するのに要する分量の水を内鍋2内に収容させ、この内鍋2を本体3にセットした後、希望するご飯の硬さや、炊き上がり時間等を設定して炊飯スイッチを押す。
【0026】そうすると、炊飯器1のマイコン37は、図3に示すように、まず、誘導加熱コイル6に対して高周波電流を100%(フルパワー)の電力で通電を開始して予熱工程1を行う。なお、この状態では、調圧器25の調圧ボール31はソレノイド35によって通気口30a上から退避され、内鍋2の内部と外部とを連通させている。
【0027】そして、蓋用温度センサ24を介して内鍋2内が約55度を越えたことを検知すると、内鍋2内の温度が約55℃から65℃の範囲内を維持するように、誘導加熱コイル6に対する通電をオン、オフ制御して予熱工程2を行う。
【0028】そして、前記予熱工程2の工程を所定時間実行すると、誘導加熱コイル6に対して100%の電力で通電し続けて中ぱっぱ工程を実行する。この中ぱっぱ工程では、開始して所定時間経過すると、炊飯容量を判別する。ここで、この炊飯容量の判別は、内鍋用温度センサ7を介して検出した温度の上昇勾配によって行われる。
【0029】次に、調圧器25のソレノイド35を動作させて、調圧ボール31を通気口30a上に移動させ、内鍋2内に圧力を投入するとともに振動センサ36をオンする。これにより、内鍋2内は、大気圧以上に維持される。
【0030】そして、蓋用温度センサ24によりご飯の温度が100℃になったと判断すると、電力制御工程を実行する。具体的には、この電力制御工程では、誘導加熱コイル6への供給電力を60%とし、内鍋2内が沸騰状態を維持するように電力制御する。
【0031】電力制御工程では、調圧ボール31の働きにより内鍋2の内圧が1気圧を超え、発生する蒸気量が増大する。そして、これらにより、加圧機構26の調圧ボール31は振動し、その振動がパッキン30、台座部材29、キャップ32、シール部材17を介して振動センサ36に伝達される。この際、この振動センサ36は、前記シール部材17によって加圧機構26を収容するケース13内と隔離されているため、ケース13内に蒸気が流入しても汚れることはない。そのため、経時的に振動センサ36による検出精度が低下することはない。また、加圧機構26の振動がシール部材17を介して直に伝わるため、検出精度はよい。
【0032】ここで、前記振動センサ36によって検出した加圧機構26の振動による出力Vは、内鍋2内の圧力Pと略比例する。そのため、内鍋2内の圧力は、前記振動センサ36の出力によって検出することができる。即ち、この振動センサ36の出力Vと、予め設定したしきい値に基づいて誘導加熱コイル6への通電のオン、オフを制御して電力制御工程における沸騰維持を実行する。具体的には、振動センサ36の出力Vがしきい値を上回ると誘導加熱コイル6への通電をオフし、振動センサ36の出力Vがしきい値を下回ると誘導加熱コイル6への通電をオンする。
【0033】なお、図3に示すように、使用者が設定した炊き上げ硬さが「やわらかめ」である場合において、内鍋2内の圧力を0.20kg/cm2に維持するためのしきい値V1、「ふつう」である場合において、内鍋2内の圧力を0.15kg/cm2に維持するためのしきい値V2、および、「かため」である場合において、内鍋2内の圧力を0.10kg/cm2に維持するためのしきい値V3は、適用した振動センサ36の性能によって異なるが、その性能に応じて一義的に求められる。
【0034】このように、本実施形態では、誘導加熱コイル6への電力制御工程を、振動センサ36の出力に基づいて行うため、温度センサの検出によって制御する場合と比較して、検出精度の信頼性が高く、細かい電力制御が可能である。また、前記振動センサ36は、圧力センサと比較して非常に安価であるとともに、製造時にゼロ点補正をする必要がない。そのうえ、加圧機構26には、調圧ボール31と密着するパッキン30が設け、内鍋2内への加圧時に、調圧ボール31が振動していても密閉状態を維持できるようにしているため、内鍋2内の密閉性の向上を図ることができるとともに、振動センサ36への振動の伝達率の向上を図ることができる。
【0035】前記電力制御工程を続けて、従来と同様に、蓋用温度センサ24による検出値によってドライアップしたと判断すると、誘導加熱コイル6に対して100%の電力で通電をし、炊き上げ工程を実行する。
【0036】そして、内鍋用温度センサ7および蓋用温度センサ24により内鍋温度が所定の炊き上げ温度に達すれば、誘導加熱コイル6への供給電力を一定時間抑制した後に停止し、蒸らし工程を実行する。
【0037】なお、本発明の実施形態は前記構成に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、圧力調理器として炊飯器1を適用したが、蒸し器や圧力調理鍋等に適用しても同様の作用、効果を得ることができる。
【0038】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の圧力調理器では、調理鍋の内圧が高まると、その圧力で振動する圧力投入手段の振動を検出し、その検出した振動の出力に基づいて加熱手段への電力制御を行うようにしているため、温度センサの出力と比較してその検出精度の信頼性は高い。そのため、調理鍋の内圧を正確に細かい制御することが可能になり、炊き上げの均一化を図ることができる。また、振動センサは、圧力センサと比較して非常に安価である。そのうえ、製造時にゼロ点補正をする必要がないため作業性が向上し、生産性の向上を図ることができる。
【0039】さらに、前記圧力投入手段として、蓋体の開口を自重によって閉塞する球状部材と、該球状部材の移動機構からなる調圧器を適用し、前記開口に、前記球状部材に密着するパッキンを配設しているため、圧力投入手段による調理鍋内の密閉性が向上するうえ、振動センサへの振動の伝達率の向上を図ることができる。
【0040】さらにまた、前記振動センサを、前記圧力投入手段にシール部材を介して接触するように配設し、圧力投入手段内に蒸気が流入しても振動センサが汚れることを防止できるため、該振動センサによる検出精度の低下を防止できる。そのうえ、圧力投入手段の振動がシール部材を介して直に伝わるため、検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の圧力調理器である炊飯器の概略図である。
【図2】 図1の蓋体の1部を示す断面図である。
【図3】 炊飯器のマイコンによる制御を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1…炊飯器(圧力調理器)、2…内鍋、3…本体、6…誘導加熱コイル(加熱手段)、7…内鍋用温度センサ、8…蓋体、11…排気口、13…ケース、15…シール部材、17…シール部材、19…ダクト、20…放熱板、22…内蓋、25…調圧器、26…加圧機構、29…台座部材、29a…開口、30…パッキン、30a…通気口、31…調圧ボール、32…キャップ、35…ソレノイド、36…振動センサ、37…マイコン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 調理鍋と、該調理鍋を収容する本体と、前記調理鍋を加熱する加熱手段と、前記本体に開閉可能に取り付けられ前記調理鍋の開口部を閉塞する蓋体と、該蓋体に設けた前記調理鍋内と連通する開口を閉塞して該調理鍋内を大気圧以上に維持する圧力投入手段とを備えた圧力調理器において、前記蓋体に、前記調理鍋内の圧力による圧力投入手段の振動を検出するセンサを設け、該振動センサの出力に基づいて前記加熱手段を制御するようにしたことを特徴とする圧力調理器。
【請求項2】 前記圧力投入手段は、前記蓋体の開口を自重によって閉塞する球状部材と、該球状部材の移動機構とからなる調圧器であり、前記開口に、前記球状部材に密着するパッキンを配設したことを特徴とする請求項1に記載の圧力調理器。
【請求項3】 前記振動センサを、シール部材を介して前記圧力投入手段に接触するように配設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−70154(P2001−70154A)
【公開日】平成13年3月21日(2001.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−251514
【出願日】平成11年9月6日(1999.9.6)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】