説明

圧力調理器

【課題】 圧力調理モードと常圧調理モードとを有する調理器の作動開始時又は作動開始時からの所定時間内に、蓋体が半ロック状態の場合には常圧調理モードに自動的に制御することとして、安全性を高めた圧力調理器を提供する。
【解決手段】 米が投入される容器7と、容器7が収容される開口部及び加熱手段5を有する調理器本体2と、調理器本体2の開口部を覆う蓋体10と、容器7内の内圧を調整する圧力弁13と、圧力弁13を制御する圧力弁開放機構18と、加熱手段5を制御して米を調理する制御装置31と、を備えた圧力調理器1であって、圧力調理器1は蓋体10と調理器本体2との係止状態を検知する検知手段26を有し、制御装置31は、圧力調理モードと常圧調理モードと各モードの切換手段29とを有し、検知手段26により蓋体10の半ロック状態が検知されると、圧力調理器1の作動開始時又は作動開始時からの所定時間内に切換手段29を作動させて常圧調理モードに切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調理器に係り、特に、調理器の作動開始時の蓋体係止状態に応じて、調理モードを切り換えることにより安全性を高めた圧力調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力調理器、例えば圧力炊飯器は、容器内に米と水とからなる被炊飯物を投入し、この容器内の被炊飯物を加熱するとともに容器内を昇圧して炊飯するもので、炊飯時は、容器内が高温で内圧が高くなっている。このため、炊飯時に容器の蓋体が不意に開放されると、熱湯及び加熱された米飯が外へ飛散して、ときに使用者に当たり火傷させる恐れがあるので、この種の炊飯器には、通常、蓋体ロック機構が付設され、炊飯器の作動中に蓋体が不意に開放しないようになっている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0003】
図9は下記特許文献1に記載された圧力調理器の縦断面図を示し、図10は図9の要部の拡大縦断面図を示している。
【0004】
この圧力調理器50は、容器本体51と蓋体52とからなり、蓋体52は、ロック機構53により容器本体51の開口部51aに閉塞状態にロックされるようになっている。
【0005】
このロック機構53は、蓋体カバー54に回動自在に軸着されたロックレバー55と、このロックレバー55の下端の突起部55aが係合される蓋体側面に形成された横穴52aと、ロックレバー55の上端の真下に形成された穴52bに嵌合する安全ゴム弁56と、この安全ゴム弁56の縦穴に挿入され上下動自在なフロート弁57とで構成されている。
【0006】
この調理器50は、作動スイッチがオンされると、容器本体内の内圧が上昇する。この内圧上昇により、フロート弁57は上方へ移動し、ロックレバー55の一端を突き上げる。すると、ロックレバー55は軸58を中心として回転して、ロックレバー55の下端の突起部55aが、蓋体の側面の横穴52aから蓋体52の側面内側に突出して、ロックレバー55の突起部55aは容器本体の突起部(図示省略)と横並びに並ぶ。この横並びにより、蓋体を容器本体に対して回転させようとしても、ロックレバー55の突起部55aが容器本体の突起部の縁部と係止しており、蓋体と容器本体との係合を解除する方向の回転ができなくなり、蓋体52を容器本体51から外すことができなくなる。
【0007】
したがって、この調理器は、容器本体内に内圧が掛かっている間は、容器本体と蓋体の係合が外れなくなるので安全性が確保される。
【0008】
また、本願の出願人も、このような蓋体ロック機構を備えた炊飯器の特許を取得している(下記特許文献2参照)。
【0009】
この炊飯器は、内鍋を収容しこの内鍋を加熱する熱源を有した炊飯器本体と、この炊飯器本体の一側に枢支して開閉自在とした蓋体と、前記内鍋の上方開口部を覆う中蓋と、前記蓋体の枢支側とは反対側に位置しこの蓋体を閉塞状態に保持するロック装置とを備え、前記ロック装置は、蓋体内に設けられ端部に掛止部を有し一部に係当片を有した係止板と、炊飯器本体の上部に設けられ前記係当片に係止するロック解除ボタンと、前記掛止部に掛止するストッパーとで構成し、前記蓋体の閉塞状態において、前記係止板は、内鍋内の圧力上昇による前記中蓋の浮き上がるのに伴い掛止部が前記ストッパーに斜めに喰い込んで係止するようにしたものである。
【0010】
この炊飯器によると、内鍋内の圧力上昇に伴って係止板の掛止部がストッパーに斜めに喰い込んで蓋体と炊飯器本体との掛止(ロック状態)が確実となり、不意に蓋体が開いて鍋内の被炊飯物が外へ飛び散ったりすることがなくなる。
【特許文献1】実開平2−74658号公報(図3、図4、実用新案登録請求の範囲)
【特許文献2】特許第2816112号公報(図1、図3、特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1、2に記載された圧力調理器は、容器内の圧力が高くなると係止状態がより強固になり、作動中に蓋体が不意に開放されることがない。
【0012】
しかしながら、この種の圧力調理器においては、使用時に容器本体の開口部を蓋体で覆ってロックしたにも拘わらず確実にロックされず、例えば半ロック状態になっていることがある。その原因は、例えば使用者が蓋体を閉める際に確実にロックされなかったり、あるいはロック状態にした後でも誤って肘等が触れ解除ボタンを押したりしてしまうような使用者の不注意によるものが大半となっている。
【0013】
ここで、蓋体が半ロック状態になっていると、調理器が転倒したときあるいは調理器の作動中に、不意に蓋体が開いて容器内の被調理物が外へ飛散してしまうことがある。特に、半ロック状態で炊飯等が開始されると、炊飯過程に伴って容器内の圧力が上昇し、蓋体が簡単に開いてしまい加熱された被調理物が外へ飛散して使用者に当たり火傷させる恐れがある。このような恐れは、加圧手段を用いて被調理物を調理する際には特に顕著なものとなる。したがって、加圧手段の作動に伴う内圧上昇による蓋体の不意の開放を防止する必要がある。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、加圧して調理するモード(圧力調理モード)と常圧において調理するモード(常圧調理モード)とを有する調理器の作動開始時又は前記作動開始時点からの所定時間内に、蓋体が調理器本体に確実にロックされていない場合には常圧調理モードに自動的に制御することとして、安全性を高めた圧力調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係る発明は、被調理物が投入される容器と、前記容器が収容される開口部及び前記容器内の被調理物を加熱する加熱手段を有する調理器本体と、前記調理器本体の一側に枢支されて前記開口部を覆う蓋体と、前記蓋体に装着されて前記容器内の内圧を調整する圧力弁と、前記圧力弁を制御する圧力弁開放機構と、前記加熱手段を制御して被調理物を加熱調理する制御装置と、を備えた圧力調理器であって、
前記調理器本体と前記蓋体とは係止機構で係止され、前記調理器には、前記係止機構の係止状態を検知する検知手段を設け、前記制御装置は、加圧して調理するモード(以下、圧力調理モードという。)と常圧において調理するモード(以下、常圧調理モードという。)とそれぞれの調理モードを切り換える切換手段とを有し、
調理器の作動開始時又は前記作動開始時点からの所定時間内に、前記検知手段により前記係止状態を検知し、前記検知手段が蓋体の半ロック状態を検知したとき、前記制御装置は、前記切換手段を作動させて前記調理モードが圧力調理モードに選択されていても前記常圧調理モードに切り換えることを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の前記係止機構は前記調理器本体又は前記蓋体のいずれかの係止部に係止される係止部材を有し、前記係止部材は一端に前記係止爪及び他端に突出片を有しかつ両端部の間の一部が前記調理器本体又は前記蓋体に枢支されたレバーからなることを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の前記検知手段は前記係止部材の移動により作動するスイッチで構成されていることを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項4に係る発明は、請求項1又は2に記載の前記検知手段は前記係止部材の移動により作動する非接触型センサで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、調理器本体と蓋体とは係止機構で係止され、調理器には係止機構の係止状態を検知する検知手段を設け、制御装置は、圧力調理モードと常圧調理モードとこれらのモードを切り換える切換手段とを有し、調理器の作動開始時又は前記作動開始時点からの所定時間内に、検知手段により係止状態を検知し、蓋体の半ロック状態を検知したとき、制御装置は、切換手段を作動させて調理モードが圧力調理モードに選択されていても常圧調理モードに切り換えるので、圧力調理モードが続行され内圧上昇による蓋体の不意の開放を防止し、安全に調理することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、係止機構は調理器本体又は蓋体のいずれかの係止部に係止される係止部材を有し、係止部材は一端に係止爪及び他端に突出片を有しかつ両端部の間の一部が調理器本体又は蓋体に枢支されたレバーからなるので、レバーの梃子作用を利用して係止部材の係止爪を係止部に小さい力で簡単に食い込ませることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、検知手段は、係止部材の移動により作動するスイッチで構成されるので、各種のスイッチ例えばマイクロスイッチの使用が可能になり、スイッチの取付けが容易になる。
【0022】
請求項4の発明によれば、検知手段は、係止部材の移動により作動する非接触型センサで構成されているので、非接触型センサには種々のもの、例えば電気、圧力、光式センサ等を使用でき、検知及び応答が高速で、長寿命で、高い信頼性を有する検知手段を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための圧力調理器を例示するものであって、本発明をこの圧力調理器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明の実施形態に係る圧力調理器の正面図、図2は図1の調理器の外部ケースを取り外した状態の縦断面図、図3は図2の蓋体係止機構のA部分を拡大した断面図、図4は図1の調理器の外部ケースを取り外した状態の他の形態に係る縦断面図、図5は、図4の蓋体係止機構のB部分を拡大した断面図である。
【0025】
圧力調理器1は、図1、図2に示すように、被炊飯物が投入される容器7と、上方にこの容器7が挿入される開口部及び内部にこの容器7を加熱し被炊飯物を加熱する加熱手段5を有する調理器本体2と、この調理器本体2の一側に枢支されて開口部を覆い閉塞状態に係止する係止機構付蓋体10と、この蓋体10に装着されて容器7内の内圧を調整する圧力弁13と、この圧力弁13を制御する圧力弁開放機構18と、各種の炊飯メニュー、例えば圧力調理モードや常圧モードを表示して選択する表示操作部30と、選択された炊飯メニューに基づいて加熱手段5及び圧力弁開放機構18を制御して容器7内の被炊飯物を所定温度に加熱し且つ所定時間かけて所定量の水分を被炊飯物に吸水させる吸水工程、この吸水された被炊飯物を沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程、この被炊飯物を沸騰状態に維持する沸騰維持工程、この沸騰維持工程後に被炊飯物を蒸らす蒸らし工程を順次実行する制御装置31と、で構成されている。
【0026】
以下、圧力調理器1の構造及び制御装置を説明する。
【0027】
調理器本体2は、図1、図2に示すように、有底の箱状外部ケース3と、この外部ケース3に収容された内部ケース4とからなり、外部ケース3と内部ケース4との間に隙間が形成され、この隙間に制御装置31を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。内部ケース4は、その底部4a及び側部4bには加熱手段5、底部4aには鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度センサ6がそれぞれ設けられている。加熱手段5には、環状に巻装した電磁誘導コイルが使用されている。
【0028】
また、調理器本体2は、図1に示すように、その正面3aに各種炊飯メニューを表示する表示パネル及びこの炊飯メニューを選択等する操作ボタンからなる表示操作部30が設けられている。
【0029】
容器7は、図2に示すように、水及び米とからなる所定量の被炊飯物が投入される比較的深底の容器からなり、アルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成され内部ケース4の内部に設置されている。
【0030】
蓋体10は、図2に示すように、容器7の開口部を閉蓋する内蓋11と、調理器本体2の開口部全体を閉蓋する外蓋12等とで構成されている。この蓋体10は、一側がヒンジ機構により調理器本体2に枢支され、他側が蓋体係止機構20により調理器本体の係止部に係止される。
【0031】
図3に示すように、蓋体係止機構20は係止部材22とバネ24と固定部25とで構成されている。係止部材22は、一端に内部ケース4の係止部4cに係止される係止爪22a及び他端に突出片22bを有し、両端部の間の一部が固定部25により蓋体10に枢支された板状のレバーで構成される。なお、係止部4cは調理器本体2の内部ケース4に形成されるとしたが、係止部材22を固定部25により調理器本体2に枢支させる場合には、係止部4cを蓋体10に形成するものとしてもよい。
【0032】
係止部材22は、バネ24により係止爪22aが調理器本体2の係止部4cに係止される方向に付勢されている。また、この係止部材22の突出片22bは、解除ボタン23の押し下げ時には解除ボタン23の一端に当接される。解除ボタン23を押下げると、係止部材22は、固定部25を中心にして回動し、係止爪22aが係止部4cから外れ蓋体10を開放できる。この検知手段は、調理器本体内側部に設けられている場合と蓋体内上部に設けられている場合とが考えられる。
【0033】
図2、図3には、検知手段26が調理器本体2内側部に設けられている状態が示されている。この検知手段26は検知部材27とマイクロスイッチ28とからなり、調理器本体2内の側部に設けられている。係止爪22aが係止部4cに係止されると、係止爪22aの先端部が検知部材27の一端に触れることで、検知手段26は調理器本体2と蓋体10とが係止状態にあることを検知する。係止爪22aの先端部が検知部材27の一端に触れると、調理器本体2に枢支されている固定部27aを中心に検知部材27の他端が回動し、操作体としてマイクロスイッチ28のアクチュエータ28aに押し当たる。これにより、マイクロスイッチ28の可動接点が端子部28bに接触し、電気信号により制御装置が調理モードの切換手段29を作動させ、圧力調理モードであっても常圧調理モードに切り換える。この場合、後述のように圧力弁開放機構18の電磁コイルが励磁され、プランジャ19bが作動することにより弁孔13aが強制的に開放されることになる。
【0034】
図4、図5には、検知手段26’が蓋体10内上部に設けられている状態が示されている。この検知手段26’は検知部材27’とマイクロスイッチ28’とからなり、蓋体10内の上部に設けられている。係止爪22aが係止部4cに係止されると、突出片22bが検知部材27’の一端に触れることで、検知手段26’は調理器本体2と蓋体10とが係止状態にあることを検知する。突出片22bが検知部材27’の一端に触れると、蓋体10に枢支されている固定部27a’を中心に検知部材27’の他端が回動し、マイクロスイッチ28’のアクチュエータ28a’に押し当たる。これにより、マイクロスイッチ28’の可動接点が端子部28b’に接触し、電気信号により制御装置が調理モードの切換手段29を作動させ、圧力調理モードであっても常圧調理モードに切り換える。この場合も上記と同様、圧力弁開放機構18により弁孔13aが強制的に開放されることになる。
【0035】
なお、ここでは検知手段26、26’の構成部品としてマイクロスイッチ28、28’を用いることとしたが、マイクロスイッチ28、28’の代わりに非接触型のセンサ(近接スイッチ)を用いることとしてもよい。非接触型のセンサを用いると、応答が高速で、長寿命で、高い信頼性を有するという利点がある。
【0036】
内蓋11には、圧力弁13と圧力弁13を開放させる圧力弁開放機構18が設けられている。圧力弁13は、所定径の弁孔13aが形成された弁座13bと、この弁孔13aを塞ぐように弁座13b上に載置される金属性ボール13cと、このボール13cの移動を規制することで弁座13b上にボール13cを保持するカバー13dとで構成されている。
【0037】
圧力弁開放機構18は、制御装置31により制御される。すなわち、制御装置31からの指令に基づき、電磁コイルが励磁されるとプランジャ19bがシリンダ19aから飛出してボール13cに衝突し、このボール13cを横方向に押し出す。この押し出しにより、ボール13cは、弁孔13a上で移動し弁孔13aを強制的に開放させる。また、この開放状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、プランジャ19bがバネ(図示省略)の付勢力によりシリンダ19a内に引き込まれ、この引っ込みにより、プランジャ19bがボール13cを横方向に押す力がなくなって、ボール13cが弁孔13a上に戻り、弁孔13aがボール13cで閉塞されることとなる。
【0038】
外蓋12には、内蓋11と外蓋12との間を連通する蒸気口41が設けられている。また、内蓋11には、容器7内の蒸気の圧力が所定圧力以上の異常圧力に上昇したときに、容器7内の圧力を、蒸気口41を介して外部に逃がすための安全弁42が設けられている。また、この内蓋11には、蒸気温度センサ(図示省略)が取り付けられている。
【0039】
制御装置31は、CPU、ROM、RAMなどが搭載された回路基板からなるハードウェアを備え、メニューキー、スタートキー、及び予約キー及び鍋底温度センサ、蒸気センサにそれぞれ接続され、これらのキー及びセンサの信号がCPUに入力されるようになっている。また、CPUには、所定時間を計時するタイマ、炊飯メニュー検知手段及びROM、RAMが接続され、このCPUにより、加熱手段、表示パネル及び圧力弁開放機構を制御する加熱制御手段、表示パネル制御手段、圧力弁開放機構制御手段が実行される。
【0040】
次に、この圧力調理器の炊飯メニューによる炊飯工程を、図6〜図8のフローチャートを参照して説明する。なお、表示パネルには各種の炊飯メニューが表示されるが、以下には、白米・標準炊飯メニューについて説明する。
【0041】
まず、ステップS101においてユーザにより所定量の水と白米が投入された容器7が内部ケース4内に収容され、蓋体10を閉めることで閉塞状態に係止される。次に、ステップS102において、表示操作部30の操作により炊飯メニューが選択されステップS103において表示操作部30でスタートボタンを押圧すると、炊飯がスタートする。圧力調理器1の作動がスタートすると、ステップS104において、内部ケース4の外底壁と外側壁とに取り付けられた加熱手段5に高周波電流が印加され、容器7に渦電流が発生してこの容器が加熱され、被炊飯物の加熱が開始される。
【0042】
加熱が開始し、ステップS105において常圧調理モードにあるか否かを判断し、炊飯メニューが常圧調理モードにあると判断されると、常圧調理モードに確定し、ステップS109bに進む。一方、炊飯メニューが圧力調理モードにあると判断されると、ステップS106において検知手段26が蓋体10の係止状態の検知を開始する。ステップS10
7において半ロック状態ではないと検知手段26が判断した場合、すなわち係止爪22aの先端部が検知手段26の一端に接触した場合、固定部27aを中心に検知部材27が回動しマイクロスイッチ28が作動される。また、ステップS107において半ロック状態にあると検知手段26が判断した場合、すなわち、ステップS103におけるスタート押圧時又はスタート押圧時から所定時間内に、係止爪22aの先端部が検知手段26の一端に接触しなかった場合、ステップS108において切換手段29が作動し、圧力調理モードから常圧調理モードに切り換えられる。
【0043】
以下、圧力調理モード、常圧調理モードの順に説明する。
[圧力調理モード]
マイクロスイッチ28からの電気信号を受け取ると、制御装置31により圧力弁開放機構18が作動されてボール13cを移動せしめ、ステップS109aにおいて圧力弁13を開状態にし、ステップS110aにおいて吸水工程が実行される。この吸水工程の実行が開始されると、ステップS111aにおいて吸水タイマ(図示せず)が吸水時間T1の計時を開始し、次いでステップS112aにおいて鍋底温度センサ6により鍋底温度K1が計測される。この鍋底温度K1の計測は所定の温度に達するまで行われ、鍋底温度が所定値、例えば55℃に達したことをステップS113aにおいて確認すると、ステップS114aにおいて制御装置31により加熱手段5の加熱量を制御して被炊飯物を所定温度に保持しつつ、吸水時間の計測が行われる。この吸水工程は、所定の吸水時間T1、例えば10分間継続される。
【0044】
ステップS115aにおいて所定の吸水時間T1(10分間)が経過すると、ステップS116aに進み立上加熱工程に移行する。この立上加熱工程では、短時間で沸騰状態になるように加熱手段5を全加熱(フルパワー加熱)するとともに、制御装置31により、圧力弁開放機構18を作動させてプランジャ19bを引き戻すことでボール13cにより圧力弁13が閉鎖される。つまり、ステップS117aにおいて、ボール13cが自重により弁孔13a上に転がって弁孔13aを塞ぎ、圧力弁13が閉鎖状態となる。この状態においては、容器7内の圧力は弁孔13aを介してボール13cを押し上げ得る圧力値に上昇するまで昇圧される。したがって、このときの容器7内の蒸気の圧力は、ボール13cの重さ及び弁孔13aの大きさを設定することにより適宜調節することができる。
【0045】
この立上加熱工程では、ステップS118aにおいて、蒸気温度K2が蒸気温度センサ(図示省略)により計測される。そしてステップS119aにおいてこの蒸気温度K2が所定温度、例えば75℃に達すると、被炊飯物が沸騰現象を起こす温度になり、立上加熱工程が終了する。このときの容器7内の圧力は、圧力弁13により制御され、大気圧以上の所定圧力、例えば約1.2気圧となる。そして、図7に示すように、ステップS120aにおいて沸騰維持工程が開始される。
【0046】
沸騰維持工程に移行すると、容器7内の圧力は大気圧以上の所定圧力、例えば約1.2気圧となり、被炊飯物はこの圧力に対応する飽和温度で沸騰するようになる。
【0047】
また、沸騰維持工程に入ると、ステップS121aにおいて直ちに制御装置31により圧力弁開放機構18を作動させてボール13cを移動させることで圧力弁13の開動作が行われる。またこの開動作の際には、ステップS122aにおいて加熱手段5の加熱を停止して、ステップS123aにおいて圧力弁13の強制的開動作を所定時間、例えば4秒間継続する。この圧力弁13の強制的開動作により、容器7内の圧力が大気圧近傍まで低下する。
【0048】
このように沸騰維持工程において、容器7内の圧力を所定沸騰圧力(約1.2気圧)から一気に大気圧近傍まで低下させると、容器7内は激しい突沸状態となる。この突沸状態になると、容器内に泡が発生し、この泡によって被炊飯物が撹拌される。この結果、被炊飯物が均一に加熱され、炊き上げられることになる。
【0049】
圧力弁13を強制的に開放する所定時間は、1回目の圧力弁13の強制的開動作により容器7内の圧力が略大気圧に戻る程度の時間(すなわち4秒程度)に定められている。圧力弁13を強制的に大気圧に開放する時間をこのように設定することにより、最大限の撹拌エネルギーを得ることができるようにしている。また、圧力弁13の強制的な開放を上記所定時間(4秒間)行った後、ステップS124aにおいて圧力弁開放機構18を作動させて再び圧力弁を閉状態とし、ステップS125aにおいて、所定時間、ステップS126aにおいては例えば28秒間再び加熱する。なお、この加熱時間(28秒間)は、容器7内の圧力が前述の所定圧力(約1.2気圧)まで回復するのに必要な時間である。また、この時間は、予め実験的に求められる。
【0050】
ステップS127aにおいてこの圧力弁開放機構による圧力弁13の強制的開放は複数回、例えば6回繰り返される。なお、S125a、S126aに示す沸騰工程において時間が経過すると、容器7内の残水量が減少し、圧力変動幅が小さくなり、突沸現象が弱くなる。このため、圧力弁13の強制的な開放は沸騰維持工程の初期段階に集中させると効果的である。
【0051】
圧力弁13を複数回開放する操作を終えると、ステップS128aにおいて圧力弁開放機構18による圧力弁13の強制的開放が停止され、圧力弁13が閉状態となる。そして、ステップS129aにおいて加熱手段5による沸騰状態を継続し、ステップS130aにおいて鍋底温度K3が計測される。そして、ステップS131aにおいて鍋底温度K3が所定温度、例えば130℃になると、容器7内の水が枯れて強制ドライアップが終了したと判断されるので、ステップS132aにおいて加熱手段5による加熱作用が停止される。
【0052】
続いて、ステップS133aにおいて先ず蒸らし工程1に移行され、蒸らし時間T2の計時が開始される。ステップS134aにおいて所定の蒸らし時間T2が所定時間、例えば4分経過すると、ステップS135aにおいて圧力弁開放機構18により圧力弁13が強制的に開放され、追炊き工程に移行される。この追炊き工程に入ると、加熱手段5により再加熱して米の表面に付着した水を蒸発させるとともに、ステップS136aにおいて追炊き(再加熱)時間T3の計測を行う。そして、ステップS137aにおいて所定の追炊き時間T3、例えば3分が経過すると、加熱手段5による加熱動作が停止され、蒸らし工程2に移行され、ステップS138aにおいて蒸らし時間T4が計時される。そして、ステップS139aにおいて蒸らし時間T4が所定時間、例えば5分経つと、ステップS140aにおいて炊飯が終了され、ステップS141aにおいて保温工程に移行され、標準炊飯工程が終了する。
[常圧調理モード]
一方、ステップS108において切換手段29の作動が開始され、常圧調理モードに切り換えられると、制御装置31により圧力弁開放機構18が作動されてボール13cを移動せしめ、ステップS109bにおいて圧力弁13を開状態にし、以後圧力弁13を開いたままにする。ステップS110bにおいて吸水工程が実行される。この吸水工程の実行が開始されると、ステップS111bにおいて吸水タイマ(図示せず)が吸水時間T1の計時を開始し、次いでステップS112bにおいて鍋底温度センサ6により鍋底温度K1が計測される。この鍋底温度K1の計測は所定値、例えば55℃に達したことをステップS113bにおいて確認すると、ステップS114bにおいて制御装置31により加熱手段5の加熱量を制御して被炊飯物を所定温度に保持しつつ、吸水時間の計測が行われる。この吸水工程は、所定の吸水時間T1、例えば10分間継続される。
【0053】
ステップS115bにおいて所定の吸水時間T1(10分間)が経過すると、ステップS116bに進み立上加熱工程に移行する。この立上加熱工程では、短時間で沸騰状態になるように加熱手段5を全加熱(フルパワー加熱)する。
【0054】
この立上加熱工程では、ステップS117bにおいて、蒸気温度K2が蒸気温度センサ(図示省略)により計測される。そしてステップS118bにおいてこの蒸気温度K2が(100℃)に達すると、被炊飯物が沸騰現象を起こす温度になり、立上加熱工程が終了する。そして、図8に示すように、ステップS119bにおいて沸騰維持工程が開始される。
【0055】
そして、加熱手段5による沸騰状態を継続し、ステップS120bにおいて鍋底温度K3が計測される。そして、ステップS121bにおいて鍋底温度K3が所定温度、例えば130℃になると、容器7内の水が枯れて強制ドライアップが終了したと判断されるので、ステップS122bにおいて加熱手段5による加熱作用が停止される。
【0056】
続いて、蒸らし工程1が開始され、ステップS123bにおいて先ず蒸らし工程1に移行され、蒸らし時間T2の計時が開始される。ステップS124bにおいて所定の蒸らし時間T2が所定時間、例えば4分経過すると、米の表面に付着した水を蒸発させるため追炊き工程に移行される。ステップS125bにおいて追炊き(再加熱)時間T3の計測を行い、ステップS126bにおいて所定の追炊き時間T3、例えば3分が経過すると、加熱手段5による加熱動作が停止され、蒸らし工程2に移行され、ステップS127bにおいて蒸らし時間T4が計時される。そして、ステップS128bにおいて蒸らし時間T4が所定時間、例えば5分経つと、ステップS129bにおいて炊飯が終了し、ステップS130bにおいて保温工程に移行され、白米・標準メニューでの炊飯工程が終了する。
【0057】
なお、本実施例では、圧力調理器の作動開始時に蓋体の係止状態の検知を行うこととしたが、圧力調理器の作動開始時点からの所定時間内、例えば立上加熱工程の直前に検知を行うこととしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る圧力調理器の正面図である。
【図2】図2は図1の調理器の縦断面図である。
【図3】図3は図2の蓋体係止機構のA部分を拡大した断面図である。
【図4】図4は図1の調理器の他の形態を示す縦断面図である。
【図5】図5は図4の蓋体係止機構のB部分を拡大した断面図である。
【図6】図6は圧力調理器の使用手順を示したフローチャートである。
【図7】図7は圧力調理器の使用手順を示したフローチャートである。
【図8】図8は圧力調理器の使用手順を示したフローチャートである。
【図9】図9は従来の圧力調理器の縦断面図である。
【図10】図10は図9の要部の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 圧力調理器
2 調理器本体
3 外部ケース
4 内部ケース
4a 底部
4b 側部
4c 係止部
5 加熱手段
6 鍋底温度センサ
7 容器
10 蓋体
11 内蓋
12 外蓋
13 圧力弁
18 圧力弁開放機構
19a シリンダ
19b プランジャ
20 蓋体係止機構
22 係止部材
22a 係止爪
22b 突出片
23 解除ボタン
24 バネ
25 固定部
26、26’ 検知手段
27、27’ 検知部材
27a、27a’ 固定部
28、28’ マイクロスイッチ
28a、28a’ アクチュエータ
28b、28b’ 端子部
29 切換手段
30 表示操作部
31 制御装置
41 蒸気口
42 安全弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物が投入される容器と、前記容器が収容される開口部及び前記容器内の被調理物を加熱する加熱手段を有する調理器本体と、前記調理器本体の一側に枢支されて前記開口部を覆う蓋体と、前記蓋体に装着されて前記容器内の内圧を調整する圧力弁と、前記圧力弁を制御する圧力弁開放機構と、前記加熱手段を制御して被調理物を加熱調理する制御装置と、を備えた圧力調理器であって、
前記調理器本体と前記蓋体とは係止機構で係止され、前記調理器には、前記係止機構の係止状態を検知する検知手段を設け、前記制御装置は、加圧して調理するモード(以下、圧力調理モードという。)と常圧において調理するモード(以下、常圧調理モードという。)とそれぞれの調理モードを切り換える切換手段とを有し、
調理器の作動開始時又は前記作動開始時点からの所定時間内に、前記検知手段により前記係止状態を検知し、前記検知手段が蓋体の半ロック状態を検知したとき、前記制御装置は、前記切換手段を作動させて前記調理モードが圧力調理モードに選択されていても前記常圧調理モードに切り換えることを特徴とする圧力調理器。
【請求項2】
前記係止機構は前記調理器本体又は前記蓋体のいずれかの係止部に係止される係止部材を有し、前記係止部材は一端に前記係止爪及び他端に突出片を有しかつ両端部の間の一部が前記調理器本体又は前記蓋体に枢支されたレバーからなることを特徴とする請求項1に記載の圧力調理器。
【請求項3】
前記検知手段は、前記係止部材の移動により作動するスイッチで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力調理器。
【請求項4】
前記検知手段は、前記係止部材の移動により作動する非接触型センサで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−7027(P2007−7027A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189562(P2005−189562)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】