説明

圧縮成形用金型及び圧縮成形方法

【課題】厚みの違う複数の被封止品に対して、圧縮封止不良を防止しつつ同時に成形可能とし且つ樹脂の部分の厚みを均一にすることができる。
【解決手段】相対的に接近・離反可能な上型112と下型140とを有し、2つの被成形品102を上型112と下型140との間に並列成形された2つのキャビティに配置して樹脂104にて圧縮封止を行う圧縮成形用金型100であって、キャビティ毎に、2つの被成形品102の厚みの違いに応じて被成形品102の保持高さを変更しキャビティにおける被成形品102の圧縮封止側の面を同位置にさせる緩衝機構124を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成形用金型及び圧縮成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つのキャビティを用いて圧縮封止を行う圧縮成形用金型が記載されている。この圧縮成形用金型には2つのキャビティが平面的に並べて成形されている(並列成形)。このため、2つの被成形品(基板)を同時に圧縮封止することが可能である。すなわち、特許文献1では、1つのキャビティを備える圧縮成形用金型に比べて、高い生産性を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−307766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つのキャビティが並列成形されている圧縮成形用金型では、例えば被成形品のばらつきで2つの被成形品の厚みが違う場合には圧縮封止の際の封止圧力に差が生じる。この封止圧力の差から生じる樹脂漏れなどの圧縮封止不良を防ぐ構造として、特許文献1においては、2つのキャビティの間に連絡路を設けている。そして、2つのキャビティ内の圧縮封止の際の封止圧力を等圧に保つようにしている。しかしながら、この連絡路により、被成形品の厚みが異なると被成形被品の厚みが薄いほうのキャビティに樹脂がより多く流れてしまこととなる。このため、圧縮封止された被成形品(成形品)の樹脂の部分の厚みは、被成形品の厚みの違いにより異なってしまうという問題があった。
【0005】
なお、圧縮成形の本来の優位点として、キャビティ内に投入した樹脂をほとんど流動させないことで、被成形品の内部構造(ボンディングワイヤ等)への影響を最小限にすることが挙げられている。しかし、上記の如く、連絡路を設けると、樹脂の流れが当該内部構造に悪影響(例えば、ボンディングワイヤを切断する)を及ぼす恐れもある。加えて、樹脂の粘度によっては、樹脂の連絡路を通過する時の圧力損失によってキャビティ間に許容範囲を超える圧力差を生じさせるおそれもある。
【0006】
そこで、本発明は、前記問題点を解決するべくなされたもので、厚みの違う複数の被封止品に対して、圧縮封止不良を防止しつつ同時に成形可能とし且つ樹脂の部分の厚みを均一にできる圧縮成形用金型及び圧縮成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、相対的に接近・離反可能な上型と下型とを有し、複数の被成形品を該上型と下型との間に並列成形された複数のキャビティに配置して樹脂にて圧縮封止を行う圧縮成形用金型であって、前記キャビティ毎に、前記複数の被成形品の厚みの違いに応じて該被成形品の保持高さを変更し該キャビティにおける該被成形品の圧縮封止側の面を同位置にさせる緩衝機構を備えることにより、上記課題を解決したものである。
【0008】
本発明においては、キャビティ毎に、複数の被成形品の厚みの違いに応じて被成形品の保持高さを変更しキャビティにおける被成形品の圧縮封止側の面を同位置にさせる緩衝機構を備えている。即ち、被成形品の厚みの違いに応じて被成形品の保持高さが変更されキャビティにおける被成形品の圧縮封止側の面が同位置になるので、被成形品の厚みが違ってもキャビティの体積が一定に保たれる。このため、圧縮封止を行う状態では、並列成形されたキャビティの構造でありながら、キャビティ毎の封止圧力の差が緩和されて、樹脂漏れなどの圧縮封止不良を防止することができる。同時に、キャビティにおける被成形品の圧縮封止側の面が同位置とされているので、厚みの違う被成形品に関わらず樹脂の部分の厚みを均一にすることができる。
【0009】
そして、本発明では、上型と下型との間に並列成形された複数のキャビティを備えているので、上型と下型との相対的な接近・離反という単純な動作で、複数の被成形品が同時に成形可能となる。
【0010】
なお、上型と下型に対しての緩衝機構の配置は特に限定されない。しかし、例えば前記上型が、前記キャビティと同一数であって前記被成形品を保持するとともに該キャビティの上面を構成する上圧縮型と、前記上圧縮型を前記緩衝機構を介して支持する上主型と、を備え、該上圧縮型がそれぞれ該上主型に対して前記相対的に接近・離反可能な方向で変位可能とされていてもよい。この場合には、結果的に樹脂を下型に配置することができ、圧縮成形用金型の構成を簡略にしながら圧縮成形用金型の動作を安定して行うことができる。
【0011】
なお、緩衝機構の構成は特に限定されない。しかし、例えば前記緩衝機構が、前記上主型に設けられた複数の貫通穴と、該複数の貫通穴に挿入され前記相対的に接近・離反可能な方向で変位可能とされるとともに該上主型に対して脱落防止構造を備え前記上圧縮型に取付けられるガイドピンと、該上主型と前記上圧縮型との間に配置され該上主型と上圧縮型とを離反させるように付勢を与える複数の緩衝ばねと、を有するようにしてもよい。この場合には、緩衝機構の構成を簡略化でき、結果的に圧縮成形用金型の低コスト化を促進することができる。
【0012】
なお、緩衝ばねの数や種類は特に限定されないが、例えば前記緩衝ばねが、第1ばねと、該第1ばねのばね定数よりも大きい第2ばねの2種類以上を有し、前記上圧縮型がそれぞれ前記上主型に接近していく状態で、該第1ばねで先に該上圧縮型と該上主型との間に付勢が与えられていてもよい。この場合には、型締めの際に、第1ばねだけで付勢される被成形品のほうの保持高さを容易に変更することができる。
【0013】
なお、更に、前記上型が前記上圧縮型に嵌合される貫通穴の設けられた上枠型を備え、該上枠型が該上圧縮型に対して相対的に変位しても前記上型と前記下型との間で減圧可能とされている場合には、下型と上枠型とが接触した段階で密封状態を作ることができ、早い段階で上型と下型との間で減圧状態とすることができる。このため、圧縮封止する際に、樹脂の被成形品への充填を速く且つ十分に行うことができる。即ち、圧縮封止工程を短縮して、更に圧縮封止不良を低減することができる。
【0014】
なお、前記下型が、前記被成形品の圧縮封止される領域の外側を前記上型と把持すると共に前記キャビティと同一数の貫通穴が設けられ一体的に成形された下枠型と、該貫通穴にそれぞれ嵌合して配置される下圧縮型と、を備え、該下枠型が該下圧縮型に対して相対的に変位しても前記上型との密封が保たれる場合には、被成形品が圧縮封止される前に被成形品の位置が把持(クランプ)により固定可能となる。このため、被成形品の圧縮封止される領域の位置ずれに伴う圧縮封止不良を回避できる。そして、圧縮封止する際に下圧縮型の位置が調整可能となることで樹脂量変動が生じていても圧縮封止不良の発生を低減することができる。同時に、密封が保たれることでキャビティからの、樹脂の漏れを防止することができる。また、下枠型がキャビティと同一数の貫通穴を備えても一体的に成形されているので、複数の被成形品を同時に成形できるにも拘らず、下型の寸法を小型化することができる。
【0015】
なお、更に、前記下枠型の下圧縮型に対する変位量を制御する下枠駆動機構を備える場合には、樹脂の下型への配置と圧縮封止された被成形品(成形品)の取り出しが容易となる。また、離型フィルムを下型に用いる場合には、離型フィルムへの応力を最小限にすることが可能なので、離型フィルムの破損による成形品の不良発生を防止でき、且つ離型フィルムの再利用を促し圧縮封止に係るコストを低減することができる。
【0016】
なお、前記キャビティに配置される樹脂が、所定の形状と重量で予備成形されている場合には、圧縮封止に用いる樹脂量の変動を少なくできる。同時に、樹脂の扱いが容易で、且つその管理も容易となる。
【0017】
なお、前記樹脂は、連続した離型フィルムで前記キャビティに配置される場合には、樹脂をキャビティに搬送するのが容易となり、且つ使用した離型フィルムの回収も容易となる。
【0018】
なお、前記樹脂は、短冊状に分離された離型フィルムで前記キャビティに配置される場合には、樹脂の搬送手段の配置を自在とすることができる。また、離型フィルムの余分な部分を極力低減できるので、離型フィルムを有効活用することができる。
【0019】
なお、本発明は、相対的に接近・離反可能な上型と下型とを有し、複数の被成形品を該上型と下型との間に並列成形された複数のキャビティに配置して樹脂にて圧縮封止を行う圧縮成形方法であって、前記キャビティに前記被成形品をそれぞれ配置する工程と、該被成形品の前記厚みの違いに応じて該被成形品の保持される保持高さを変更し該キャビティにおける該被成形品の圧縮封止側の面を同位置にさせることで該キャビティ毎に生じる封止圧力の差を緩和し前記圧縮封止を行う工程と、を含むことを特徴とする圧縮成形方法とも捉えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、厚みの違う複数の被封止品に対して、圧縮封止不良を防止しつつ同時に成形可能とし且つ樹脂の部分の厚みを均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の一例が適用された圧縮成形用金型の模式図
【図2】図1の圧縮成形用金型の一連の動作を示す模式図
【図3】圧縮成形用金型の緩衝機構の効果を示す模式図
【図4】本発明の第2実施形態の一例が適用された圧縮成形用金型の模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態の一例が適用された圧縮成形用金型の模式図である。概略的な特徴について以下説明する。
【0024】
圧縮成形用金型100は、図1に示す如く、相対的に接近・離反可能な上型112と下型140とを有し、2つの被成形品102(102A、102B)を上型112と下型140との間に(X方向で)並列成形された2つの被成形品102と同一数(2つ)のキャビティに配置して樹脂104(104A、104B)にて圧縮封止を行う。そして、圧縮成形用金型100は、キャビティ毎に、2つの被成形品102の厚みの違いに応じて被成形品102の保持高さ(Z方向)を変更しキャビティにおける被成形品102の圧縮封止側の面を同位置にさせる緩衝機構124を備えている。このため、緩衝機構124により、圧縮封止を行う状態では、保持高さ(Z方向)の変更によりキャビティ毎に生じる封止圧力の差が緩和される。ここで、キャビティは、上型112の上圧縮型122(122A、122B)と下型140の下圧縮型150(150A、150B)と下枠型148とで囲まれる樹脂封止のための空間をいう。
【0025】
なお、被成形品102は、例えば、半導体チップが搭載された基板(リードフレームを含む)などである。そして、半導体チップが搭載された側の基板の表面が被成形品102の圧縮封止側の面となる。その圧縮封止される領域には半導体チップが搭載されており、圧縮封止される領域の外側には基板のみが存在する構成とされている。樹脂104は、当該圧縮封止される領域を圧縮封止で充填するように所定の形状と重量で予備成形されている。離型フィルム106は、短冊状に分離されており、伸縮可能である。離型フィルム106は、圧縮封止した際のキャビティからの被成形品102の剥離性向上とキャビティ汚れの防止とをすることができる。本実施形態では、被成形品102、樹脂104はそれぞれ、図示せぬローダによりキャビティに配置される。また、本実施形態では、被成形品102A、102Bは、誤差によりその厚みが違うものの同一とされていることから、樹脂104A、104Bとを同一としている。しかし、これに限られるものはなく、被成形品は同一でなくてもよい。
【0026】
以下、詳細に構成を説明する。
【0027】
圧縮成形用金型100は、図1に示す如く、固定プラテン110に固定された上型112と、固定プラテン110に対して接近・離反可能な可動プラテン138に取付けられた下型140とを備える。
【0028】
前記上型112は、図1に示す如く、断熱板114と上主型116と上固定枠118と上枠型120と上圧縮型122(122A、122B)とを有する。断熱板114は、固定プラテン110に当接して配置され、上主型116の温度が固定プラテン110に拡散することを防止している。上主型116は、断熱板114の下面に取付けられている。上主型116は、緩衝機構124を介して上圧縮型122を支持している。
【0029】
緩衝機構124は、貫通穴116Aとガイドピン126と緩衝ばね128とを有する。貫通穴116Aは、上主型116に複数設けられている。貫通穴116Aは、その上端部が頭部受け孔116AA、その下端部がばね受け孔116AC、上端部と下端部の間がピン穴116ABとされている。ガイドピン126は、複数の貫通穴116Aに挿入され相対的に接近・離反可能な方向(Z方向)で変位可能とされている。ガイドピン126の頭部は、ピン穴116ABよりも大径に設定されて、頭部受け孔116AAに収容されている。このため、ガイドピン126の頭部で上主型116に対して脱落防止構造が構成されている(頭部受け孔116AAの内径は、ピン穴116ABの内径よりも大きい)。ガイドピン126の先端部(下端部)は、上圧縮型122の上面に取付けられており、ガイドピン126と上圧縮型122とは一体化されている。緩衝ばね128は、ばね受け孔116ACに配置され、その緩衝ばね128の中心をガイドピン126が貫通している。緩衝ばね128は、いわゆる上主型116から吊り下げられた状態の上圧縮型122に対して、常に下型側に付勢している。即ち、緩衝ばね128は、上主型116と上圧縮型122との間に配置され上主型116と上圧縮型122とを離反させるように付勢を与えている。
【0030】
このような緩衝機構124によって、上圧縮型122A、122Bがそれぞれ、上主型116に対して相対的に接近・離反可能な方向(Z方向)で変位可能とされている。即ち、圧縮封止を行う状態では、上圧縮型122に対して、下型側から圧力が加わると、緩衝ばね128が圧縮され、上圧縮型122A、122Bそれぞれが上主型116のほうへ移動することとなる。即ち、緩衝機構124は、キャビティ毎に、被成形品102の厚みの違いに応じて被成形品102の保持高さを変更しキャビティにおける被成形品102の圧縮封止側の面を2つとも同じ保持高さ(同位置)にすることができる。なお、本実施形態においては、緩衝ばね128として皿ばねが用いられていたが、これに限定されない。
【0031】
上圧縮型122は、キャビティと同一数(2つ)であり、内部にヒータ130を備えている。ヒータ130は、特に上圧縮型122を加熱し、所定の温度とするようにされている。上圧縮型122A、122Bの下面はそれぞれ、キャビティの上面を構成し、被成形品102A、102Bをそれぞれ保持する。上圧縮型122の周囲には上枠型120が配置されている。即ち、上枠型120には、上圧縮型122に嵌合される貫通穴が設けられている。上枠型120は、ばね132を介して上主型116に接続されている。上枠型120の更に外周には、上固定枠118が配置され、上主型116に固定されている。
【0032】
上枠型120と上固定枠118との間には、Oリング134が配置されている。また、上圧縮型122には図示せぬ、被成形品102に吸着力を与える吸着機構や、減圧機構が設けられている。このため、上枠型120が下型140と離型フィルム106を介して当接した状態で、上枠型120が上圧縮型122に対して相対的に変位したとする。その場合であっても上型112と下型140との間で密閉状態が構成され減圧可能とされている。なお、上枠型120は、上圧縮型122に被成形品102が保持された状態においても、被成形品102で制限されることなく、上圧縮型122に対して移動可能とされている。
【0033】
前記下型140は、図1に示す如く、断熱板142と下主型144と下枠型148と下圧縮型150とを有する。断熱板142は、可動プラテン138に当接して配置され、下主型144の温度が可動プラテン138に拡散することを防止している。下主型144は、断熱板142の上面に取付けられている。下主型144は、2つの下圧縮型150A、150Bを支持している。下主型144には、ヒータ130が設けられており、所定の温度とするようにされている。下枠型148は、上型112の上圧縮型122に保持される被成形品102の圧縮封止される領域の外側を上型112の上圧縮型122と把持(クランプ)する。また、下枠型148には、上圧縮型122A、122Bそれぞれに対応して2つのキャビティと同一数の貫通穴が設けられ一体的に成形されている。下圧縮型150は、当該貫通穴にそれぞれ嵌合して配置されている。下枠型148は、ばね152を介して下主型144に取付られている。そのため、下枠型148は、下圧縮型150に対して移動可能とされている。下枠型148と下圧縮型150との嵌合する部分にはOリング154などの密閉部材が設けられている。なお、下枠型148は、上枠型120と上圧縮型122とに対向している。このため、下枠型148が上枠型120と当接した状態で、下枠型148が下圧縮型150に対して相対的に変位しても下型140と上型112との密閉が保たれている。なお、下型140には、離型フィルム106を吸着するための図示せぬ減圧機構が設けられている。
【0034】
下枠駆動機構156は、可動プラテン138に取付られ、下枠型148と係合している。そして、下枠駆動機構156は、下枠型148の下圧縮型150に対する変位量を制御することができる。
【0035】
次に、上型112の緩衝ばね128及びばね132と、下型140のばね152の強弱関係について説明する。ばね132による力F1と、ばね152による力F2と、緩衝ばね128による力F3との関係は式(1)で示される。なお、力F1〜F3は、それぞれのばね全ての力を合計したものである。
【0036】
F1<F2<F3 (1)
【0037】
即ち、下枠駆動機構156は、上枠型120と下枠型148が当接した状態であっても、下枠型148の下圧縮型150に対する変位量を制御することができる。
【0038】
ここで、緩衝ばね128のすべてが機能していない状態のときの力F4(<F3)では、式(2)が成立する。
【0039】
F2>F4 (2)
【0040】
即ち、例えば下枠型148に被成形品102Aを介して上圧縮型122Aのみが当接した状態では、下枠型148が圧縮されず、上圧縮型122Aのみが変位する。しかし、下枠型148に被成形品102を介して上圧縮型122Bも当接した状態となると、下枠型148が圧縮されることとなる。
【0041】
次に、圧縮成形用金型100の動作について、図2を用いて説明する。
【0042】
上型112と下型140とが離反された型開き状態において、離型フィルム106が下型140上に配置されて吸着される。このとき、下枠駆動機構156により、下枠型148の上面は下圧縮型150の上面の位置から所定の高さ(樹脂が配置される際に不都合を生じさせない程度の高さ)とされる。また、この状態では、上型112と下型140は圧縮封止する際の一定の温度(例えば175度)とされている(図2(A))。
【0043】
次に、図示せぬ搬送機構により、被成形品102と樹脂104とがそれぞれ、圧縮成形用金型100に供給される(図2(B))。
【0044】
次に、上圧縮型122A、122Bにそれぞれ被成形品102A、102Bを保持させる。また、離型フィルム106上の各キャビティに樹脂104A、104Bを配置する(図2(C))。なお、被成形品102A、102Bの吸着による保持は同時でなくてもよい。樹脂104の配置は、樹脂104が硬化するまでの時間を合わせるために、可能な限り同時に行う。
【0045】
次に、可動プラテン138を上昇させて下型140を上型112に接近させていく。このとき、下枠駆動機構156により、下枠型148も上昇させる。すると、上枠型120と下枠型148とが離型フィルム106を介して当接して、離型フィルム106が固定される。同時に、上型112と下型140とで密閉状態が構成される。そして、上型112と下型140の間の減圧が行われる(図2(D))。
【0046】
更に、上型112と下型140とを接近させ、ばね132を縮ませて、上圧縮型122と下枠型148とで被成形品102を把持(クランプ)する。このため、被成形品102がしっかり固定される。なお、本実施形態では、被成形品102Aが被成形品102Bよりも厚みが大きいとしているので、最初に、上圧縮型122Aと下枠型148とで、被成形品102Aをクランプする。しかし、被成形品102Bを介して上圧縮型122Bと下枠型148とが当接していない状態では、式(2)の関係となる。このため、上圧縮型122Aを支える緩衝機構124の緩衝ばね128が圧縮されてから、下枠型148は上圧縮型122Bに保持された被成形品102Bをクランプする(図2(E))。即ち、被成形品102A、102Bの圧縮封止側の面は同位置となる。クランプした後は、式(1)の関係に従い、下枠型148が圧縮される。
【0047】
次に、可動プラテン138を更に上方に移動させて上型112を下型140に接近させていく。そして、上下方向(1軸方向)で圧縮封止し、型締めを完了させる(図2(F))。
【0048】
次に、可動プラテン138を固定プラテン110から離反させる。そして、上型112と下型140の型開きをする(図2(G))。このとき、下枠駆動機構156により、下枠型148の位置を圧縮封止の状態の位置としておく。このため、成形品が取り出しやすくなり、かつ次の圧縮封止が容易となる。そして、圧縮封止された被成形品102(単に成形品と称する)が、図示せぬ搬送装置にて取り出される。
【0049】
このように、本実施形態においては、キャビティ毎に、2つの被成形品102A、102Bの厚みの違いに応じて被成形品102の保持高さを変更しキャビティにおける被成形品102の圧縮封止側の面を同位置にさせる緩衝機構124を備えている。このため、圧縮封止を行う状態では、該保持高さの変更によりキャビティ毎に生じる封止圧力の差を緩和させている。実際に、被成形品102の厚みの違いを横軸に取り、縦軸に封止圧力の差を比率(%)で示した結果を図3に示す。黒塗り◆で示す符号Aのデータが緩衝機構のない場合であり、黒塗り■で示す符号Bのデータが緩衝機構124のある場合である。このように、緩衝機構124により被封止品102の厚みの差異で生じる封止圧力の差が低減(緩和)されている。
【0050】
また、被成形品102の厚みの違いに応じて被成形品102の保持高さが変更されキャビティにおける被成形品102の圧縮封止側の面が同位置になるので、被成形品102の厚みが違ってもキャビティの体積が一定に保たれる。つまり、圧縮封止を行う状態では、単純な並列成形されたキャビティの構造でありながら、キャビティ毎の封止圧力の差が緩和されて、樹脂漏れなどの圧縮封止不良を防止することができる。同時に、キャビティにおける被成形品102の圧縮封止側の面が同位置とされているので、厚みの違う被成形品102に関わらずに樹脂の部分の厚みを均一にすることができる。
【0051】
そして、本実施形態では、上型112と下型140との間に並列成形された2つキャビティを備えているので、上型112と下型140との相対的な接近・離反という単純な動作で、2つの被成形品102が同時に成形可能となる。
【0052】
また、上型112が、キャビティと同一数であって被成形品102を保持するとともにキャビティの上面を構成する上圧縮型122と、上圧縮型122を緩衝機構124を介して支持する上主型116と、を備え、上圧縮型122がそれぞれ上主型116に対して相対的に接近・離反可能な方向(Z方向)で変位可能とされている。このため、結果的に樹脂104を下型140に配置することができ、圧縮成形用金型100の構成を簡略にしながら圧縮成形用金型100の動作を安定して行うことができる。
【0053】
また、緩衝機構124が、上主型116に設けられた複数の貫通穴116Aと、複数の貫通穴116Aに挿入され相対的に接近・離反可能な方向(Z方向)で変位可能とされるとともに上主型116に対して脱落防止構造を備え上圧縮型122に取付けられるガイドピン126と、上主型116と上圧縮型122との間に配置され上主型116と上圧縮型122とを離反させるように付勢を与える複数の緩衝ばね128と、を有する。このため、緩衝機構124の構成を簡略化でき、結果的に圧縮成形用金型100の低コスト化を促進することができる。
【0054】
また、更に、上型112が上圧縮型122に嵌合される貫通穴の設けられた上枠型120を備え、上枠型120が上圧縮型122に対して相対的に変位しても上型112と下型140との間で減圧可能とされている。このため、下型140と上枠型120とが接触した段階で密封状態を作ることができ、早い段階で上型112と下型140との間で減圧状態とすることができる。つまり、圧縮封止する際に、樹脂104の被成形品102への充填を速く且つ十分に行うことができる。即ち、圧縮封止工程を短縮して、更に圧縮封止不良を低減することができる。
【0055】
また、下型140が、被成形品102の圧縮封止される領域の外側を上型112と把持すると共にキャビティと同一数の貫通穴が設けられ一体的に成形された下枠型148と、該貫通穴にそれぞれ嵌合して配置される下圧縮型150と、を備え、下枠型148が下圧縮型150に対して相対的に変位しても上型112との密封が保たれる。このため、被成形品102が圧縮封止される前に被成形品102の位置が把持(クランプ)により固定可能となる。即ち、被成形品102の圧縮封止される領域の位置ずれに伴う圧縮封止不良を回避できる。そして、圧縮封止する際に下圧縮型150の位置が調整可能となることで樹脂量変動が生じていても圧縮封止不良の発生を低減することができる。同時に、密封が保たれることで、キャビティからの樹脂104の漏れを防止することができる。また、下枠型148がキャビティと同一数の貫通穴を備えても一体的に成形されているので、複数の被成形品102を同時に成形できるにも拘らず、下型140の寸法を小型化することができる。
【0056】
また、更に、下枠型148の下圧縮型150に対する変位量を制御する下枠駆動機構156を備えるので、樹脂104の下型140への配置と圧縮封止された被成形品102(成形品)の取り出しが容易となる。また、離型フィルム106を下型140に用いているので、離型フィルム106への応力を最小限にすることが可能である。このため、離型フィルム106の破損による成形品の不良発生を防止でき、且つ離型フィルム106の再利用を促し圧縮封止に係るコストを低減することができる。
【0057】
また、キャビティに配置される樹脂104が、所定の形状と重量で予備成形されているので、圧縮封止に用いる樹脂量の変動を少なくできる。同時に、樹脂104の扱いが容易で、且つその管理も容易となる。
【0058】
また、樹脂104は、短冊状に分離された離型フィルム106でキャビティに配置されているので、樹脂104の搬送手段の配置を自在とすることができる。また、離型フィルム106の余分な部分を極力低減できるので、離型フィルム106を有効活用することができる。
【0059】
即ち、本実施形態によれば、厚みの違う複数の被封止品102に対して、圧縮封止不良を防止しつつ同時に成形可能とし且つ樹脂の部分の厚みを均一にすることができる。
【0060】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0061】
上記実施形態においては、緩衝ばねが1種類のみであったが、本発明はこれに限定されない。緩衝ばねの数や種類は限定されないが、例えば緩衝ばねが、第1ばねと、第1ばねのばね定数よりも大きい第2ばねの2種類以上を有し、上圧縮型がそれぞれ上主型に接近していく状態で、該第1ばねで先に上圧縮型と上主型との間に付勢が与えられていてもよい。図4に具体的に2種類の緩衝ばねを備える第2実施形態を示す。
【0062】
図4では、図1で示されていた離型フィルムや下型のヒータや下枠駆動機構などが省略されているが、適宜使用することができる。ここでは、上圧縮型222(222A、222B)のそれぞれ中央に、両側に配置されたガイドピン226Bよりも径の大きいガイドピン226Aが設けられている。そして、ガイドピン226Aの周囲には、両側にある緩衝ばね228B(第1ばね)よりもばね定数の大きな緩衝ばね228A(第2ばね)が配置されている。緩衝ばね228Bの長さL2は緩衝ばね228Aの長さL3とほぼ同等である。しかし、貫通穴216Bにおけるばね受け孔の長さに比べて、貫通穴216Aにおけるばね受け孔の長さは長く、上圧縮型222の上面から貫通穴216Aのばね受け孔の上端部までの長さL4は、長さL3よりも長い。このため、型締めの際に、被成形品202Aだけが緩衝ばね228Bで付勢されている状態では、被成形品202Aの保持高さを容易に変更することができる。なお、その他の構成は、第1実施形態と同一なので、符号の上一桁の数字を変更して説明は省略する。
【0063】
また、上記実施形態においては、2つのキャビティを備えていたが、本発明はこれに限定されない。3つ以上のキャビティであってもよい。その際、必ずしもすべてのキャビティを使用する必要はなく、適宜いずれか1つ以上のキャビティのみを使用することもできる。
【0064】
また、上記実施形態においては、上型が固定プラテンに取付られ固定されていたが、本発明はこれに限定されず、下型が固定プラテンに取付られ固定されて、上型が接近・離反可能な方向において移動可能とされていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、前記上型が、キャビティと同一数であって前記被成形品を保持するとともに前記キャビティの上面を構成する上圧縮型と、前記上圧縮型を前記緩衝機構を介して支持する上主型と、を備え、該上圧縮型がそれぞれ該上主型に対して前記相対的に接近・離反可能な方向(Z方向)で変位可能とされていたが、本発明はこれに限定されず、たとえば下型で被成形品が保持される構成であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、前記緩衝機構が、前記上主型に設けられた複数の貫通穴と、該複数の貫通穴に挿入され前記相対的に接近・離反可能な方向(Z方向)で変位可能とされるとともに該上主型に対して脱落防止構造を備え前記上圧縮型に取付けられるガイドピンと、該上主型と前記上圧縮型との間に配置され該上主型と上圧縮型とを離反させるように付勢を与える複数の緩衝ばねと、を有していたが、本発明はこれに限定されず、例えば、緩衝ばねでなく広く弾性部材を用いることもできるし、ガイドピン等を使用しなくてもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、前記上型は前記上圧縮型に嵌合される貫通穴の設けられた上枠型を備え、該上枠型が該上圧縮型に対して相対的に変位しても前記上型と前記下型との間で減圧可能とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、上枠型を備えなくてもよいし、必ずしもキャビティの減圧が可能とされていなくてもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、前記下型が、前記被成形品の圧縮封止される領域の外側を前記上型と把持すると共に前記キャビティと同一数の貫通穴が設けられ一体的に成形された下枠型と、該貫通穴にそれぞれ嵌合して配置される下圧縮型と、を備え、該下枠型が該下圧縮型に対して相対的に変位しても前記上型との密封が保たれていたが、本発明はこれに限定されない。例えば下型が下枠型と下圧縮型とに分かれている必要はない。また、下枠型が一体でなく、貫通穴毎に分離していてもよい。更に、前記密封が必ずしも必要とされていない。
【0069】
また、上記実施形態においては、キャビティに配置される樹脂は所定の形状と重量で予備成形されていたが、本発明はこれに限定されずに、粉状、粒状の樹脂でもよいし、液状の樹脂であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、離型フィルムは短冊状とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、樹脂は、連続した離型フィルムでキャビティに配置されてもよい。その場合には、樹脂をキャビティに搬送するのが容易となり、且つ使用した離型フィルムの回収も容易となる。或いは、下型が吸着機構を持たず、離型フィルムを用いなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の圧縮成形用金型は、例えば半導体チップが搭載された基板(リードフレームを含む)等の被成形品を樹脂にて圧縮封止する用途などに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
100、200…圧縮成形用金型
102、102A、102B、202、202A、202B…被成形品
104、104A、104B…樹脂
106…離型フィルム
110、210…固定プラテン
112、212…上型
114、142、214、242…断熱板
116、216…上主型
116A、216A、216B…貫通穴
118、218…上固定枠
120、220…上枠型
122、122A、122B、222、222A、222B…上圧縮型
124、224…緩衝機構
126、226A、226B…ガイドピン
128、228A、228B…緩衝ばね
130…ヒータ
132、152、232、252…ばね
134、154、234、254…Oリング
138、238…可動プラテン
140、240…下型
144、244…下主型
148、248…下枠型
150、150A、150B、250A、250B…下圧縮型
156…下枠駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に接近・離反可能な上型と下型とを有し、複数の被成形品を該上型と下型との間に並列成形された複数のキャビティに配置して樹脂にて圧縮封止を行う圧縮成形用金型であって、
前記キャビティ毎に、前記複数の被成形品の厚みの違いに応じて該被成形品の保持高さを変更し該キャビティにおける該被成形品の圧縮封止側の面を同位置にさせる緩衝機構を備える
ことを特徴とする圧縮成形用金型。
【請求項2】
請求項1において、
前記上型は、前記キャビティと同一数であって前記被成形品を保持するとともに該キャビティの上面を構成する上圧縮型と、
前記上圧縮型を前記緩衝機構を介して支持する上主型と、を備え、
該上圧縮型がそれぞれ該上主型に対して前記相対的に接近・離反可能な方向で変位可能とされている
ことを特徴とする圧縮成形用金型。
【請求項3】
請求項2において、
前記緩衝機構は、前記上主型に設けられた複数の貫通穴と、
該複数の貫通穴に挿入され前記相対的に接近・離反可能な方向で変位可能とされるとともに該上主型に対して脱落防止構造を備え前記上圧縮型に取付けられるガイドピンと、
該上主型と前記上圧縮型との間に配置され該上主型と上圧縮型とを離反させるように付勢を与える複数の緩衝ばねと、を有する
ことを特徴とする圧縮成形用金型。
【請求項4】
請求項3において、
前記緩衝ばねは、第1ばねと、該第1ばねのばね定数よりも大きい第2ばねの2種類以上を有し、
前記上圧縮型がそれぞれ前記上主型に接近していく状態で、該第1ばねで先に該上圧縮型と該上主型との間に付勢が与えられる
ことを特徴とする圧縮成形用金型。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかにおいて、更に、
前記上型は前記上圧縮型に嵌合される貫通穴の設けられた上枠型を備え、
該上枠型が該上圧縮型に対して相対的に変位しても前記上型と前記下型との間で減圧可能とされている
ことを特徴とする圧縮成形用金型。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記下型は、前記被成形品の圧縮封止される領域の外側を前記上型と把持すると共に前記キャビティと同一数の貫通穴が設けられ一体的に成形された下枠型と、該貫通穴にそれぞれ嵌合して配置される下圧縮型と、を備え、
該下枠型が該下圧縮型に対して相対的に変位しても前記上型との密封が保たれる
ことを特徴とする圧縮成形用金型。
【請求項7】
請求項6において、更に、
前記下枠型の下圧縮型に対する変位量を制御する下枠駆動機構を備える
ことを特徴とする圧縮成形用金型。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記キャビティに配置される樹脂は、所定の形状と重量で予備成形されている
ことを特徴とする圧縮成形用金型。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記樹脂は、連続した離型フィルムで前記キャビティに配置される
ことを特徴とする圧縮成形用金型。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記樹脂は、短冊状に分離された離型フィルムで前記キャビティに配置される
ことを特徴とする圧縮成形用金型。
【請求項11】
相対的に接近・離反可能な上型と下型とを有し、複数の被成形品を該上型と下型との間に並列成形された複数のキャビティに配置して樹脂にて圧縮封止を行う圧縮成形方法であって、
前記キャビティに前記被成形品をそれぞれ配置する工程と、
該被成形品の前記厚みの違いに応じて該被成形品の保持される保持高さを変更し該キャビティにおける該被成形品の圧縮封止側の面を同位置にさせることで該キャビティ毎に生じる封止圧力の差を緩和し前記圧縮封止を行う工程と、
を含むことを特徴とする圧縮成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−35433(P2012−35433A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175237(P2010−175237)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】