説明

圧縮空気より発生したドレン水の処理方法および処理装置

【課題】 複数の機器から発生した圧縮空気のドレン処理方法において、ドレンを排出するドレン配管の全てを集合させ、一つの電気式ドレントラップで排出する技術では、冷凍式エアードライヤーで冷却した圧縮空気もドレン排出の為に使用し、発生した冷たいドレンも捨てるだけという、エネルギー効率から見て非常に無駄な処理を行っていた。
【解決手段】 エアータンク14と冷凍式エアードライヤ30で圧縮空気より発生したドレン水の処理方法に於いて、冷凍式エアードライヤ30で発生したドレン水D2をエアータンク14に送り込むことで、エアータンク14で発生したドレン水D1と一体にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気より発生したドレン水の処理方法および処理装置に関する技術であって、更に詳細に述べると、エアータンクと冷凍式エアードライヤで圧縮空気より発生したドレン水の処理方法に於いて、冷凍式エアードライヤで発生したドレン水をエアータンクに送り込むことで、エアータンクで発生したドレン水と一体にする技術について述べたものであり、特に冷却したドレン水を、ただ廃棄するのでは無く、有効活用することによって、エネルギーの無駄な排出を防止しようとする内容のものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮空気より発生したドレン水の処理方法および処理装置に関係する技術としては、複数の機器から発生した圧縮空気のドレン処理方法において、ドレンを排出するドレン配管の全てを集合させ、一つの電気式ドレントラップで排出するもの(例えば、特許文献1参照)を見ることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
ここに、圧縮空気より発生したドレン水の処理方法および処理装置に類似している、従来の圧縮空気のドレン処理方法およびドレン処理装置について、特許文献1によって説明する。
【0004】
この場合、特許文献1に於いて、圧縮機11からの圧縮空気をエアータンク14に貯蔵することと圧縮空気を圧縮空気吐出配管15によって冷凍式エアードライヤー30に送り込み冷却することによって発生するドレンD1、D2を排出するための圧縮空気のドレン処理装置に於いて、エアータンク14のドレン排出口14bに接続したドレン配管イ16と、冷凍式エアードライヤー本体31のドレン排出口31cに接続したドレン配管ロ36と、ドレン配管16、36が共に接続した集合管41と、集合管41に接続した電気式ドレントラップ40により構成された技術が示されている。
【特許文献1】特開平11−201390
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような圧縮空気より発生したドレン水の処理方法および処理装置に類似している、従来の圧縮空気のドレン処理方法およびドレン処理装置に関しては、以下に示すような課題があった。
【0006】
ここで、複数の機器から発生した圧縮空気のドレン処理方法において、ドレンを排出するドレン配管の全てを集合させ、一つの電気式ドレントラップで排出する技術では、冷凍式エアードライヤー30で冷却した圧縮空気もドレンD2排出の為に使用し、発生した冷たいドレンD2も捨てるだけという、エネルギー効率から見て非常に無駄な処理を行っていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エアータンク14と冷凍式エアードライヤ30で圧縮空気より発生したドレン水の処理方法に於いて、前記冷凍式エアードライヤ30で発生したドレン水D2を前記エアータンク14に送り込むことで、前記エアータンク14で発生したドレン水D1と一体にすることを特徴とし、更には、前記冷凍式エアードライヤ30を前記エアータンク14より高い所に位置させ、前記ドレン水D2が位置エネルギーを持つことによって前記エアータンク14から前記冷凍式エアードライヤ30の側に逆流しないようにしたことを特徴とし、更には、前記冷凍式エアードライヤ30と前記エアータンク14の間に逆流を防止する機能を付加したことを特徴とし、更には、前記エアータンク14の何れかの地点に於ける前記ドレン水D1の量によって、または一定の時間ごとに、圧縮空気の力によって前記ドレン水D1を送り出し、更にエマルジョン破壊と油吸着の処理を行うことを特徴とすることによって、上記課題を解決したのである。
【0008】
また、本発明は、エアータンク14と冷凍式エアードライヤ30で圧縮空気より発生したドレン水の処理装置に於いて、ドレン水D2を排出する目的で、前記冷凍式エアードライヤ30が前記エアータンク14より高い所に位置した状態で、前記冷凍式エアードライヤ30の下部に接続したドレン水配管36を前記エアータンク14に接続し、それによって前記ドレン水D2が流れ込んで前記エアータンク14内のドレン水D1に合流するようにしたことを特徴とし、更には、前記ドレン水配管36の先端を前記エアータンク14内の底部近傍に位置させたことを特徴とし、更には、前記ドレン水D1を排出する目的で、前記エアータンク14の下部に接続したドレン水配管16と、前記エアータンク14に貯留された前記ドレン水D1の量によってまたは一定の時間毎に圧縮空気と共に前記ドレン水D1を送り出す電磁式ドレントラップ40と、エマルジョン破壊と油吸着の処理を行うドレン水処理装置70を接続したことを特徴とし、更には、前記エアータンク14と前記冷凍式エアードライヤ30と前記電磁式ドレントラップ40を、パッケージ型冷凍式エアードライヤ搭載形エアーコンプレッサ1として一体に構成したことを特徴とし、更には、前記ドレン水配管36の途中に前記エアータンク14からの逆流を防止する逆止弁34を設けたことを特徴とし、更には、前記エアータンク14と前記冷凍式エアードライヤ30の設置面での高さの差は、0.7〜3.5mであることを特徴とすることによって、上記課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明によって、以下に示すような効果をあげることが出来る。
【0010】
第一に、エアータンクと冷凍式エアードライヤで圧縮空気より発生したドレン水の処理装置に於いて、ドレン水を排出する目的で、冷凍式エアードライヤがエアータンクより高い所に位置した状態で、冷凍式エアードライヤの下部に接続したドレン水配管をエアータンクに接続し、それによってドレン水が流れ込んでエアータンク内のドレン水に合流するようにしたことで、エアータンクから冷凍式エアードライヤの側に逆流するのを防止しながら、冷凍式エアードライヤによって冷却した圧縮空気やドレン水を、ドレンを排出の為に使用したりそのまま廃棄するという、エネルギー効率から見て無駄なことを防止し、エアータンクで合流するようにしたことで冷却に使用出来るようにしたのである。 その結果、冷凍式エアードライヤの冷却のためのエネルギー消費を抑え、更に安価な維持費を達成し、結果として省エネルギーに効果をもたらしたのである。
【0011】
第二に、ドレン水配管の先端をエアータンク内の底部近傍に位置させたことで、有効に位置エネルギーを確保することを出来るようにしたのである。
【0012】
第三に、ドレン水を排出する目的で、エアータンクの下部に接続したドレン水配管と、エアータンクに貯留されたドレン水の量によってまたは一定の時間毎に圧縮空気と共にドレン水を送り出す電磁式ドレントラップと、エマルジョン破壊と油吸着の処理を行うドレン水処理装置を接続したことで、無駄な圧縮空気の排出もなく、確実にドレン水を清浄水にすることが出来るようにしたのである。
【0013】
第四に、エアータンクと冷凍式エアードライヤと電磁式ドレントラップを、パッケージ型冷凍式エアードライヤ搭載形エアーコンプレッサとして一体に構成したことで、運搬に容易で、設置が簡単で、設置面積の少ない装置を、安価に提供することが出来るようにしたのである。
【0014】
第五に、ドレン水配管の途中にエアータンクからの逆流を防止する逆止弁を設けたことで、万が一の異常事態が発生した場合でも、確実に逆流を防止することが出来るようにしたのである。
【0015】
第六に、エアータンクと冷凍式エアードライヤの設置面での高さの差は、0.7〜3.5mであることで、逆流を防止する位置エネルギーを確実に確保することが出来るようにしたのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 本願発明の全体を示した図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に詳細に説明する。
ここで、図1は、本願発明の全体を示した図である。
【0018】
図1に見られるように、1はパッケージ型冷凍式エアードライヤ搭載形エアーコンプレッサであり、空気圧縮機10と冷凍式エアードライヤ30と電磁式ドレントラップ40と圧縮空気やドレン水の配管を一体に構成し、従ってそれらの機器は箱1aに収納されていて、吸入口13より大気92を吸引することにより空気圧縮機10で作り出された圧縮空気は空気圧縮機10を構成しているエアータンク14に貯蔵され、その後圧縮空気吐出配管15によって冷凍式エアードライヤ30に送り込まれるようになっている。 但し、箱1aということに拘る必要は無く、平面の基板の上に収納されている前述の物が全て位置していればそれでも構わない。
【0019】
この場合、図1では、冷凍式エアードライヤ30は棚1bの上に配置されているが、棚1bが無くても、この場所にこだわる必要も無いし、また圧縮空気吐出配管15,35やドレン水配管16、36を支柱として棚1bの代わりに使っても良いし、その他の方法で支持することも考えられる。 何れにしても、位置エネルギーを確保するためには、冷凍式エアードライヤ30がエアータンク14より常に高い所に位置していることが必要である。 更には、エアータンク14から冷凍式エアードライヤ30の側に逆流を防止することが出来る位置エネルギーを確保する意味からも、エアータンク14と冷凍式エアードライヤ30の設置面での高さの差としては、0.7〜3.5mであることが必要であると言える。
【0020】
ここで、空気圧縮機10は、圧縮機11とモータ12とエアータンク14から構成されている。 この場合、モータ12が作動することによってベルトを介して圧縮機11を回転させることで、吸込口13から大気92を吸い込み、圧縮機11によって圧縮空気を作り、その圧縮空気をエアータンク14内に貯蔵するという構成になっている。 更に、エアータンク14内の圧縮空気を冷凍式エアードライヤ30に送り出すための圧縮空気吐出配管15は、エアータンク14に形成された圧縮空気吐出口14aに接続している。 また、このような構成の中で、圧縮空気から結露することで発生したドレン水D1が、エアータンク14の底に溜まるようになっている。
【0021】
尚、圧縮空気吐出配管15に関して言えば、何れにしても圧力損出を防ぐ意味で十分な内径を確保されている必要は有る。 但し、それにもかかわらずエアータンク14内の圧縮空気の圧力は、冷凍式エアードライヤ30内の圧縮空気の圧力よりも、圧縮空気が圧縮空気吐出配管15を経由することによる圧力損出によって、確実に高い値を示すと言うことが出来る。
【0022】
一方、冷凍式エアードライヤ30は、冷凍式エアードライヤ本体31内にアキュムレータと圧縮機と凝縮機から構成される冷媒循環装置32と周辺にフィン33aを位置させた冷媒配管33が収納されており、アンモニアやフレオン・・・等の冷媒が冷媒循環装置32と冷媒配管33の間を循環することによって圧縮空気を冷却するような構造になっている。 この場合、エアータンク14からの圧縮空気吐出配管15は、冷凍式エアードライヤ本体31に形成された圧縮空気流入口31aに接続して圧縮空気が流入するようになっている。
【0023】
尚、冷却されることで乾燥した圧縮空気は、冷凍式エアードライヤ本体31に形成された圧縮空気流出口31bに接続した圧縮空気吐出配管35を経由して、手動によって圧縮空気の流れを開放し遮断することが出来る圧縮空気開閉弁38から、乾燥した圧縮空気91としてエアーシリンダーやエアーモータ・・・等の各種のアクチュエータに流すことが出来るようになっている。
【0024】
更に、このような構成の中で、冷凍式エアードライヤ30内で圧縮空気から結露することで発生した冷たいドレン水D2が、冷凍式エアードライヤ本体31の底に溜まるようになっている。
【0025】
ここで、冷凍式エアードライヤ本体31の底に溜まっている冷たいドレン水D2は、冷凍式エアードライヤ木体31の底部に形成されているドレン水排出口31cから、ドレン水配管36と、ドレン水配管36の途中に位置していて手動によってドレン水の流れを開放し遮断することが出来るドレン水開閉弁37と流体がエアータンク14の側から冷凍式エアードライヤ本体31の側に流れるのを防止する逆止弁34を経由して、エアータンク14内に流れ込むようになっている。 即ち、ドレン水D2はドレン水D1に合流することになる。 また、逆止弁34に関しては、別の方法で位置エネルギーを確保しているということから、配設しんしという構成も考えられる。
【0026】
この事によって、冷たいドレン水D2は、エアータンク14とその中に貯留されているドレン水D1を冷却するという効果をもたらしている。 その結果、冷たいドレン水D2をただ廃棄するのではなく、エアータンク14を冷却することによってその中の圧縮空気を冷却し、次の冷凍式エアードライヤ30でのエネルギーの消費を少なくするという効果をもたらしたのである。
【0027】
この場合、ドレン水配管36の先端は、図1に見られるように、エアータンク14内部の底部近傍に位置させることが、位置エネルギーを確保する意味で最も望ましいと言える。但し、ドレン水配管36の先端をエアータンク14内部の中央に位置させても、上部に位置させてもそれなりの効果を期待することは出来る。 当然のことながら、エアータンク14とドレン水配管36の間は、洩れが無いように完全に密封されていることが必要である。
【0028】
一方、エアータンク14の底に溜まっているドレン水D1は、エアータンク14の底部に形成されているドレン水排出口14bから、ドレン水配管16と、ドレン水配管16の途中に位置していて手動によってドレン水の流れを開放し遮断することが出来るドレン水開閉弁17を経由して、更にドレン水配管16の途中に位置していてドレン水を圧縮空気と共に送り出す電磁式ドレントラップ40を経由して、油吸着とエマルジョン破壊の機能を持ったドレン水処理装置70に送り込まれ、清浄水配管75から河川にそのまま排水することが可能な清浄水93となって送り出している。
【0029】
ところで、電磁式ドレントラップ40に於いては、エアータンク14に貯留されたドレン水D1の量によってまたは一定の時間毎に、圧縮空気と共にドレン水D1を送り出すようになっている。 但し、電磁式ドレントラップ40に関しては、ドレン水を圧縮空気によって排出するものであれば、どの様な方式のものでも構わない。
【0030】
さて、ドレン水処理装置70としては、図1のドレン水処理装置70に見られるように、ドレン水処理装置本体71の内部に、油吸着材72ということで、色素や異臭を除去する活性炭を概ね中央部の断面全体にドレン水の流れを遮るように配設し、更にエマルジョンを破壊させ油を吸着する目的のエマルジョン破壊粒子を付着させたエマルジョン破壊粒子付吸着材と油を吸着する目的の吸着材を概ね均一に混在させたものを、活性炭の前後に収納している。 但し、油吸着材72としては、エマルジョン破壊粒子付吸着材と吸着材を収納する場合も、エマルジョン破壊粒子付吸着材だけを収納する場合も、それなりに考えられる。
【0031】
ここで、ドレン水処理装置本体71に関しては、外部から内部の状況を目視することが可能なようにガラス製やプラスチック製等の透明の材料を使用したり、外部から内部の状況を目視することが可能なようにガラス製やプラスチック製等の透明の材料をはめ込む等のことも考えられる。
【0032】
尚、エマルジョン破壊粒子付吸着材は、エマルジョン破壊粒子の働きによって微小の油が水と結合してエマルジョン化したドレン水をエマルジョン破壊することで油と水の結合を解き放ち、その後、分離した油はエマルジョン破壊粒子付吸着材を構成している吸着材や吸着材に吸着される。 従って、エマルジョン破壊粒子付吸着材と吸着材が散在することによって、エマルジョン化した油から油を完全に分離し吸着することによって除去が可能となったのである。
【0033】
一方、活性炭のドレン水処理装置本体71内での充填する位置としては、最上流では活性炭がかなり早い時点に汚れてしまい、最下流では活性炭そのものが流出することによって汚れた水が流れる様に見える為に、概ね中央部に位置させることが最も望ましいと言える。
【0034】
ここで、ドレン水処理装置本体71の構造としては、液体であるドレン水が、ドレン水配管16の端部である流入口からドレン水処理装置本体71に流入し、清浄水配管75の端部である流出口から流出するまでの間に、ドレン水処理装置本体71内を均一に流れるように、ドレン水処理装置本体71の両端部である入口側と出口側には、二箇所の空間部71zを確保してドレン水配管16の端部である流入口と清浄水配管75の端部である流出口を位置させている。
【0035】
従って、両端の空間部71zを確保するために、また液体であるドレン水が流れ易いように数多くの小さな穴を形成している油吸着材押え板74を二枚用意し、その油吸着材押え板74とドレン水処理装置本体71の両端との間にドレン水処理装置本体71の内径より小径の円筒状の支柱73を配設することによって油吸着材押え板74を支え、エマルジョン破壊粒子付吸着材や吸着材や活性炭である油吸着材72を、二つの油吸着材押え板74の間の中央の側に収納するようにしているのである。
【0036】
但し、支柱73は円筒状のものに限る必要は全くなく、空間部71zを確保出来れば、どのような形状でも構わない。 尚、油吸着材押え板74としては、数多くの小さな穴を形成したパンチングプレートやセラミック樹脂等を使用することが考えられる。 この場合、油吸着材押え板74としては、ドレン水を通し易いものであれば、どの様なものでも構わない。
【0037】
また、エマルジョン破壊粒子付吸着材や吸着材である油吸着材72は、油等の異物を吸着するに従って抵抗が大きくなり、圧縮されながら下流に向かって押し付けられることで、更に抵抗が大きくなると同時にエマルジョン化した油の破壊や油吸着の機能も低下していくのである。
【0038】
そこで、このことを少しでも防止するために、具体的に図示していないが、液体の流れを垂直に遮ることが出来るようにドレン水処理装置本体71の略中央部に数多くの小さな穴を形成した中間多孔板を配設し、この中間多孔板を支えるために、中間多孔板と油吸着材押え板74の間にドレン水処理装置本体71の内径より小径の円筒状の支持材を配設することによってエマルジョン破壊粒子付吸着材や吸着材である油吸着材72が圧縮されるのを防止している。
【0039】
但し、この中間多孔板の位置に関しては、ドレン水処理装置本体71の略中央部に多少前後しても構わない。 また、中間多孔板を支える支持材は円筒状のものに限る必要はなく、数本のボルトで固定する等中間多孔板を支持出来れば、どのような形状のものでも構わない。 この場合、中間多孔板の材料としては、油吸着材押え板74と同じ様に、パンチングプレートやセラミック樹脂等の使用が考えられる。
【0040】
尚、ドレン水処理装置本体71の内部には、活性炭を中間多孔板の下流直後に充填するのが最善であるが、中間多孔板の上流直前に充填するのも最善に近い効果が十分に見られる。 一方、中間多孔板に多少前後して充填してもかなりの効果が見られるし、ドレン水処理装置本体71の両端末に近付いた何れかの部分に充填してもそれなりの効果はみられる。
【0041】
ここで、エマルジョン破壊粒子を吸着材に付着させたエマルジョン破壊粒子付吸着材を作る方法としては、アミンや硫酸バリウム等のエマルジョン破壊粒子が溶媒で溶解されている溶液を吸着材に付着させた後に溶媒を蒸発乾燥させるような方法が一般的であるが、溶液を吸着材に霧状に吹き付ける方法もある。 また、アミンや硫酸バリウム等のエマルジョン破壊粒子を溶解した状態でなく、液体内で均一に混合された状態で吸着材に付着させるという方法も考えられる。 更に、エマルジョン破壊粒子そのものと吸着材を混合させることによって作り出すことも考えられる。
【0042】
この場合、エマルジョン破壊粒子と吸着材をエマルジョン破壊粒子付吸着材の状態にしないで、粒子の状態のままで吸着材の間でばらばらに分散するように充填しても良い。 この場合にも、活性炭は、中間多孔板の上流直前直後やその周辺に配置しても良いし、入口や出口の多孔板の直後や直前に配置しても良い。 但し、前記の何れの場合に於いても、活性炭を配置しない構成も考えられる。
【0043】
一方、本発明に用いられるアミンについてはアミン化合物またはその誘導体が考えられ、アミン化合物またはその誘導体が25℃であるとき固体状のものであることが好ましいが、その化合物が25℃で非固体状であっても、他の化合物との混合体で固体状になる化合物でも構わない。 つまり、化合物は、一種類単独で使用しても、二種類以上併用しても良い。
【0044】
ところで、これらのアミン化合物やその誘導体は、好ましくは、一級アミン、二級アミン、三級アミン、およびその誘導体であり、より好ましくは、一級アミン、二級アミン、およびその誘導体、特に好ましくは、一級アミン(例えば、ステアリルアミン)、およびその誘導体である。
【0045】
尚、アミン化合物としては、例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デジルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミン等の一級アミン、または、これらの炭化水素鎖を有するジアミン、トリアミン等の二級アミン、および、三級アミン、あるいは、そのピクラート、種々の塩(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、炭酸、酢酸等の塩)、さらに、これらの炭化水素鎖を有する一級アミン、および、二級アミンの酸アミド、アミジン類、尿素類、および、チオ尿素類や一級アミンのシツフ塩基物等がある。
【0046】
また、吸着材およびエマルジョン破壊粒子付吸着材に使用している吸着材としては、ポリプロピレンやポリスチレン等の不織布を含む繊維よりなるものが考えられる。 但し、吸着材およびエマルジョン破壊粒子付吸着材に使用している吸着材に関しては、前述のものに限定する必要は無く、油を吸着する機能を持っていて水を溶かさない性質のものであれば、活性炭や大鋸屑等も考えられるし、更に同じ性質を持ったものであればその他のものでもかまわない。
【0047】
ここで、吸着材およびエマルジョン破壊粒子付吸着材に使用している吸着材の大きさとしては、好ましくは、(10〜200mm)×(2〜50mm)のものであるか、より好ましくは、(30〜80mm)×(5〜40mm)の大きさのものであると言える。 特に、(35〜55mm)×(25〜40mm)と、(40〜60mm)×(3〜10mm)の2種類の大きさのものを準備するのが最も望ましいと言える。 この事は、別の見方で言うと、100mm×50mm以下の小片で、面積で3〜10倍の違った大きさのものを2種類準備するという考え方に近いとも言えるし、最善のものでは、60mm×40mm以下の小片で、面積で4〜8倍の違った大きさのものを2種類準備するのが理想的であるとも言える。
【0048】
この場合、このような大きさが好ましい理由は、吸着材およびエマルジョン破壊粒子付吸着材に使用している吸着材をドレン水処理装置本体71に充填する際に、大きすぎる場合には、隙間が大きくなることで多くの量を充填することが難しいために大きな表面積を得にくくなり、無理な圧縮をしている部分が多くなるがそのような部分はエマルジョン化した油の破壊や吸着の機能は低下し、充填する量が少なくなるために性能を確保することが出来ず、小さすぎる場合には、基本的に隙間が小さいためにエマルジョン化した油の破壊や吸着の機能の低下が早くなり、裁断するのにめんどうであるし、各種の管理をするにもめんどうである。
【0049】
また、二種類の大きさのものを使用するということは、大きさの異なる二種類の小片を準備することで、大きくすることでの課題である大きな隙間や無理な圧縮を、小さいものを加えることで補うことが可能であり、同時に小さくすることでの課題である早期の機能低下を、大きなものを加えることで補うことが出来るということに大きな意味を持っているのである。
【0050】
尚、二種類の小片については、吸着材およびエマルジョン破壊粒子付吸着材に使用している吸着材の両方に二種類の小片を使用するのが最善であるが、吸着材に小さい小片とエマルジョン破壊粒子付吸着材に使用している吸着材に大きい小片を使用してもその逆でも良い。 当然のことながら、エマルジョン破壊粒子付吸着材の状態にしないで、エマルジョン破壊粒子と二種類の大きさの吸着材を、粒子の状態のままで吸着材の間でばらばらに分散するように充填することも考えられる。
【0051】
本発明による、圧縮空気より発生したドレン水の処理方法および処理装置は前述したように構成されており、以下にその動作についてその内容を説明する。
【0052】
先ず、空気圧縮機10を構成しているモータ12を作動させると、ベルトの伝達によって圧縮機11も回転し、吸入口13から吸い込んだ大気92を圧縮してエアータンク14に圧縮空気を貯蔵する。 この、エアータンク14に圧縮空気を貯蔵する過程で、圧縮空気が結露してエアータンク14の底にドレン水D1として溜まってくる。 同時に、単一の電源によって作動が行なわれるパッケージ型冷凍式エアードライヤ搭載形エアーコンプレッサ1ということで、空気圧縮機10と同時に冷凍式エアードライヤ30も作動を開始することになる。
【0053】
次に、圧縮空気吐出配管35の先端に位置している圧縮空気開閉弁38を介して、その先に装着されているエアーシリンダ・・・等の各種のアクチュエータが作動することによって圧縮空気が供給されると、エアータンク14に貯蔵された圧縮空気が圧縮空気吐出配管15を通って冷凍式エアードライヤ30に送り込まれる。 この、冷凍式エアードライヤ30においても圧縮空気が冷却される過程で、圧縮空気が結露して冷凍式エアードライヤ本体31の底にドレン水D2として溜まってくる。
【0054】
ここで、冷却された圧縮空気は、乾燥した圧縮空気となって圧縮空気流出口31bより圧縮空気吐出配管35と圧縮空気開閉弁38を経由して、乾燥した圧縮空気91として何等かの動作を行っているエアーシリンダやエアーモータ・・・等の各種のアクチュエータに送られる。
【0055】
そして、冷凍式エアードライヤ本体31の底に溜まったドレン水D2は、ドレン水配管36とドレン水配管36の途中に位置しているドレン水開閉弁37と逆止弁34を経由してエアータンク14に送り込まれドレン水D1と合流する。 この場合、圧縮空気が圧縮空気吐出配管15を流れる間に圧力を損出させることで、冷凍式エアードライヤ30内の圧力がエアータンク14内の圧力より低くなる。 一方、冷凍式エアードライヤ30がエアータンク14より高い所に位置していることで、ドレン水D2は常に位置エネルギーを確保していることになる。
【0056】
尚、冷凍式エアードライヤ30を適切な高さに位置させることで位置エネルギーを確保し、冷凍式エアードライヤ30内の圧力に位置エネルギーを加えることによって、その値がエアータンク14内の圧力より常に高い値を確保することを可能としているのである。結果として、冷凍式エアードライヤ30の側にエアータンク14より流体が逆流するのが防止されているのである。
【0057】
但し、例外的な異常事態として、ドレン水配管36の途中に逆止弁34を位置させることが必要であるとも考えられる。 即ち、例外的な異常事態としては、エアータンク14内の圧力が何等かの理由によって変動することにより瞬間的に圧力が小さくなった場合や、またエアータンク14と冷凍式エアードライヤ30の高さの違いを十分に確保しているつもりであるのに対して冷凍式エアードライヤ30に於いて圧縮空気より発生したドレン水D2の位置エネルギーが不足した場合のようなことに対応することが出来るということで配設することが考えられるのである。
【0058】
所で、エアータンク14内の圧力が変動する例としては、モータ12に接続している電源に起因する場合や、圧縮機11やモータ12の故障や経年変化によるものや、吸入口13の異常や、各種配管のつまり等が考えられる。
【0059】
ここで、冷たいドレン水D2がエアータンク14内のドレン水D1に合流することによって、エアータンク14が冷却されるという効果をもたらすのである。 この事は別の点から見ると、エアータンク14内の圧縮空気を冷却することになり、結果として冷凍式エアードライヤ30で消費するエネルギーを減少させるという、省エネルギーの効果をもたらすのである。
【0060】
一方、エアータンク14の底に溜まったドレン水D1は、ドレン水配管16とドレン水配管16の途中に位置しているドレン水開閉弁17と電磁式ドレントラップ40に送り込まれる。 この場合、電磁式ドレントラップ40に於いては、エアータンク14に貯留されたドレン水D1の量によって、または一定の時間毎に開放することで、圧縮空気と共にドレン水D1を送り出し、ドレン水配管16を経由して、圧縮空気と共にドレン水をドレン水処理装置70に送り込んでいる。
【0061】
また、ドレン水処理装置70に於いては、先ずドレン水配管16より送り込まれたドレン水と圧縮空気は、ドレン水処理装置70の下部から上部に向って流入し、その途中でエマルジョン破壊粒子を付着させたエマルジョン破壊粒子付吸着材と油を吸着する吸着材を概ね均一に混在させた状態で収納された中で、エマルジョン破壊粒子付吸着材と吸着材をランダムに経由することで、エマルジョン破壊粒子付吸着材ではエマルジョン化した油の水と油の結合を解き放つことでエマルジョン破壊を行い、更に離脱した油を吸着させ、吸着材ではエマルジョン破壊粒子付吸着材で吸着出来なかった油を吸着させ、このような処理をランダムに何度も行うことによってドレン水の清浄度を向上させた後に清浄水配管75から清浄水93として輩出している。 但し、ドレン水処理装置70に於いて、ドレン水と圧縮空気が、ドレン水処理装置70の上部から下部に向って流入させることも考えられる。
【0062】
そして、ドレン水が活性炭を通過すると臭いや色素が除去されるようになっている。所で、収納されているエマルジョン破壊粒子付吸着材と吸着材と活性炭より成る油吸着材72によってこれ等の動作が達成されるのである。 この場合、油吸着材72としては、エマルジョン破壊粒子付吸着材だけということも考えられる。
【0063】
尚、一つの例として、具体的に、油吸着材72としてどの位の量のものが充填されているかを示すと、55Kw〜110Kwのスクリュ式エアーコンプレッサ10より発生したドレン水に対し、概略200mmで高さ950mmの円筒であるドレン水処理装置本体71にポリプロピレン製の不織布である45mm×25mmのエマルジョン破壊粒子付吸着材を2.5Kg充填しポリプロピレン製の不織布である45mm×5mmの吸着材を2.5Kg充填し活性炭を1Kg充填したドレン水処理装置70を、二組並列して並べて使用している。
【産業上の利用可能性】
【0064】
圧縮空気より発生したドレン水の処理方法および処理装置に関する技術であって、更に詳細に述べると、エアータンクと冷凍式エアードライヤで圧縮空気より発生したドレン水の処理方法に於いて、冷凍式エアードライヤで発生したドレン水をエアータンクに送り込むことで、エアータンクで発生したドレン水と一体にする技術について述べたものであり、特に冷却したドレン水を、ただ廃棄するのでは無く、有効活用することによって、エネルギーの無駄な排出を防止しようとする内容のものである。 即ち、非常に省エネルギーに配慮されたものとなっている。
【符号の説明】
【0065】
1・・・・・・・パッケージ型冷凍式エアードライヤ搭載形エアーコンプレッサ
1a・・・・・・箱
1b・・・・・・棚
10・・・・・・空気圧縮機
11・・・・・・圧縮機
12・・・・・・モータ
13・・・・・・吸入口
14・・・・・・エアータンク
14a・・・・・圧縮空気吐出口
14b・・・・・ドレン水排出口
15・・・・・・圧縮空気吐出配管
16・・・・・・ドレン水配管
17・・・・・・ドレン水開閉弁
30・・・・・・冷凍式エアードライヤ
31・・・・・・冷凍式エアードライヤ本体
31a・・・・・圧縮空気流入口
31b・・・・・圧縮空気流出口
31c・・・・・ドレン水排出口
32・・・・・・冷媒循環装置
33・・・・・・冷媒配管
33a・・・・・フィン
34・・・・・・逆止弁
35・・・・・・圧縮空気吐出配管
36・・・・・・ドレン水配管
37・・・・・・ドレン水開閉弁
38・・・・・・圧縮空気開閉弁
40・・・・・・電磁式ドレントラップ
70・・・・・・ドレン水処理装置
71・・・・・・ドレン水処理装置本体
71z・・・・・空間部
72・・・・・・油吸着材
73・・・・・・支柱
74・・・・・・油吸着材抑え板
75・・・・・・清浄水配管
91・・・・・・乾燥した圧縮空気
92・・・・・・大気
93・・・・・・清浄水
D1・・・・・・ドレン水
D2・・・・・・ドレン水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアータンク(14)と冷凍式エアードライヤ(30)で圧縮空気より発生したドレン水の処理方法に於いて、前記冷凍式エアードライヤ(30)で発生したドレン水(D2)を前記エアータンク(14)に送り込むことで、前記エアータンク(14)で発生したドレン水(D1)と一体にすることを特徴とする圧縮空気より発生したドレン水の処理方法。
【請求項2】
前記冷凍式エアードライヤ(30)を前記エアータンク(14)より高い所に位置させ、前記ドレン水(D2)が位置エネルギーを持つことによって前記エアータンク(14)から前記冷凍式エアードライヤ(30)の側に逆流しないようにしたことを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気より発生したドレン水の処理方法。
【請求項3】
前記冷凍式エアードライヤ(30)と前記エアータンク(14)の間に逆流を防止する機能を付加したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧縮空気より発生したドレン水の処理方法。
【請求項4】
前記エアータンク(14)の何れかの地点に於ける前記ドレン水(D1)の量によって、または一定の時間ごとに、圧縮空気の力によって前記ドレン水(D1)を送り出し、更にエマルジョン破壊と油吸着の処理を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の圧縮空気より発生したドレン水の処理方法。
【請求項5】
エアータンク(14)と冷凍式エアードライヤ(30)で圧縮空気より発生したドレン水の処理装置に於いて、ドレン水(D2)を排出する目的で、前記冷凍式エアードライヤ(30)が前記エアータンク(14)より高い所に位置した状態で、前記冷凍式エアードライヤ(30)の下部に接続したドレン水配管(36)を前記エアータンク(14)に接続し、それによって前記ドレン水(D2)が流れ込んで前記エアータンク(14)内のドレン水(D1)に合流するようにしたことを特徴とする圧縮空気より発生したドレン水の処理装置。
【請求項6】
前記ドレン水配管(36)の先端を前記エアータンク(14)内の底部近傍に位置させたことを特徴とする請求項5に記載の圧縮空気より発生したドレン水の処理装置。
【請求項7】
前記ドレン水(D1)を排出する目的で、前記エアータンク(14)の下部に接続したドレン水配管(16)と、前記エアータンク(14)に貯留された前記ドレン水(D1)の量によってまたは一定の時間毎に圧縮空気と共に前記ドレン水(D1)を送り出す電磁式ドレントラップ(40)と、エマルジョン破壊と油吸着の処理を行うドレン水処理装置(70)を接続したことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の圧縮空気より発生したドレン水の処理装置。
【請求項8】
前記エアータンク(14)と前記冷凍式エアードライヤ(30)と前記電磁式ドレントラップ(40)を、パッケージ型冷凍式エアードライヤ搭載形エアーコンプレッサ(1)として一体に構成したことを特徴とする請求項7に記載の圧縮空気より発生したドレン水の処理装置。
【請求項9】
前記ドレン水配管(36)の途中に前記エアータンク(14)からの逆流を防止する逆止弁(34)を設けたことを特徴とする請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の圧縮空気より発生したドレン水の処理装置。
【請求項10】
前記エアータンク(14)と前記冷凍式エアードライヤ(30)の設置面での高さの差は、0.7〜3.5mであることを特徴とする請求項5ないし請求項9のいずれか1項に記載の圧縮空気より発生したドレン水の処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−20110(P2011−20110A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181026(P2009−181026)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000154521)株式会社フクハラ (87)
【Fターム(参考)】