説明

圧電アクチュエータの製造方法

【課題】機械的強度が高く長期信頼性に優れていて、圧電アクチュエータの変位量とキャパシタの容量との関係が安定し、可変可能な容量の幅が広い圧電駆動型の可変キャパシタを提供可能とすること。
【解決手段】2以上の圧電体層のうち何れか一の外表面側に位置する圧電体層に分極処理を施し、その圧電体層の残留分極を制御することによって、平板状の形状を調節した圧電アクチュエータを、圧電駆動型の可変キャパシタの駆動部として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状の調整をすることが出来る圧電アクチュエータの製造方法、及び、その圧電アクチュエータの製造方法に適応するとともに、支持体と一体をなしていて、機械的強度に優れた圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話は、全世界的に普及しつつあるが、その規格は統一されていない。そのため、携帯電話においては、世界各国の規格(周波数)に合わせたRF回路が必要になり、各国において仕様を変更したり、全ての規格に対応すべく複数のRF回路を実装する必要が生じる。これらは、コストの増大を招来し、特に後者の場合には、小型化の障害にもなる。
【0003】
このような問題を解決するため、近年、可変キャパシタが提案されている。可変キャパシタには、圧電駆動型、静電駆動型、電磁駆動型等の駆動方式があり、一般には、構造が簡単であること及び製造容易であることから、静電駆動型が採用されているが、駆動電圧が高く、可変可能な容量の幅が狭いという改善すべき点がある。又、電磁駆動型では、消費電力が大きい。
【0004】
そこで、近年、圧電駆動型の可変キャパシタの発展に期待が集まっている。尚、先行文献としては、特許文献1、2、及び非特許文献1を挙げることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−005642号公報
【特許文献2】特開2001−320103号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】社団法人電気学会発行、『誘電体現象論』第24版 P153〜188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の圧電駆動型の可変キャパシタでは、製造過程における残留歪によって、2つのキャパシタ電極の間隔が一定にならず、2つのキャパシタ電極が、平行を維持して近接し又は離隔しない場合がある、そうなると、圧電アクチュエータの変位量とキャパシタの容量との関係は不安定になり、更には、2つのキャパシタ電極が接触してしまい、可変可能な容量の幅が狭くなってしまう。
【0008】
図3は、従来の圧電駆動型の可変キャパシタを表す模式図であり、可変キャパシタの圧電アクチュエータが駆動している様子を表した図である。図3に示される可変キャパシタ30は、支持体39に一端を固定されたバイモルフ型のアクチュエータ部38を有する圧電アクチュエータ31において、アクチュエータ部38の一方の表面に、一のキャパシタ電極36が配設され、そのキャパシタ電極36に対面するように、他のキャパシタ電極33が配設されているものである。可変キャパシタ30では、圧電アクチュエータ31のアクチュエータ部38を(図3における)矢印方向に変形させることによって、キャパシタ電極33,36間の距離を制御し、その間に生じる静電容量を変えることが可能である。但し、図3に示されるように、従来の可変キャパシタ30では、圧電アクチュエータ31のアクチュエータ部38が弓状に反った変形をするため、キャパシタ電極33,36が平行を維持して近接し又は離隔せず、場合によっては、キャパシタ電極33,36が接触してしまうのである。
【0009】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、上記の問題を解決することであり、圧電アクチュエータの変位量とキャパシタの容量との関係が安定し、可変可能な容量の幅が広い圧電駆動型の可変キャパシタを提供可能とすることにある。研究が重ねられた結果、以下に示す手段によって、上記課題が解決されることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明によれば、2以上の平板状の圧電体層と、それら2以上の圧電体層の間及び圧電体層の外表面のうち少なくとも何れか一方に設けられた電極層と、を有するアクチュエータ部、並びに、そのアクチュエータ部の一端を支持する支持体、で圧電アクチュエータを構成し、2以上の圧電体層のうち何れか一の外表面側に位置する圧電体層に分極処理を施し、その圧電体層の残留分極を制御することによって、平板状の形状を調節する圧電アクチュエータの製造方法が提供される。
【0011】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法においては、2以上の圧電体層のうち、一の圧電体層と、他の圧電体層とを、残留分極が異なるものとすることが好ましい。
【0012】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法においては、圧電体層の外表面の両方を、焼成面で構成することが好ましい。
【0013】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法においては、圧電体層の外表面の両方に電極層を設けることが好ましい。
【0014】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法においては、電極層のうち2以上の圧電体層の間に設けられたものの少なくとも1つを、支持体内に延長して設け、その電極層を圧電体層より長くすることが好ましい。
【0015】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法においては、電極層は、圧電体層より薄いことが好ましい。電極層が圧電体層と同等以上の厚さであると、圧電体層の変位を阻害するおそれがあり、好ましくない。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法は、圧電体層の残留分極を制御することによって、平板状の形状を調節することが可能である。よって、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法で得られる圧電アクチュエータは、圧電駆動型の可変キャパシタにおける駆動部として用いたときに、2つのキャパシタ電極が平行を維持して近接し又は離隔するような平板状の形状を実現することが出来、圧電駆動型の可変キャパシタにおいて圧電アクチュエータの変位量とキャパシタの容量との関係を安定させることが可能である。勿論、2つのキャパシタ電極が接触してしまって可変可能な容量の幅が狭くなる、という問題は生じず、可変可能な容量の幅を大きくとることが出来る。
【0017】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法は、圧電体層の残留分極を制御することによって、平板状の形状を調節することが可能である。よって、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法で得られる圧電アクチュエータは、平面性を必要とする、例えば特許文献2に開示された圧電アクチュエータとして、好適である。換言すれば、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法は、平面性を必要とする、例えば特許文献2に開示された圧電アクチュエータを製造する手段として好適である。
【0018】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法は、その好ましい態様において、圧電体層の外表面の両方を、焼成面で構成するので、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法で得られる圧電アクチュエータは、他の部材(電極)との密着性を改善することが出来、接着剤が不要になる可能性がある。
【0019】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法は、その好ましい態様において、圧電体層の外表面の両方に電極層を設ける。電極を設置すると更に機械的強度が高く、積層方向に対称形になり得るため、平坦形状になり易い。そのため、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法で得られる圧電アクチュエータは、圧電駆動型の可変キャパシタにおける駆動部として好適である。
【0020】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法は、その好ましい態様において、電極層のうち2以上の圧電体層の間に設けられたものの少なくとも1つを、支持体内に延長して設け、その電極層を圧電体層より長くするので、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法で得られる圧電アクチュエータは、機械的強度が高く、圧電駆動型の可変キャパシタにおける駆動部として用いたときに、変形を繰り返しても、支持体との間に亀裂を生じ難く、長期信頼性に優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法が製造対象とする圧電アクチュエータの一の実施形態を表す断面図である。
【図2】本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法が製造対象とする圧電アクチュエータの他の実施形態を表す断面図である。
【図3】従来の(圧電駆動型)可変キャパシタの一例を表す模式図である。
【図4】本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法が製造対象とする圧電アクチュエータを用いた(圧電駆動型)可変キャパシタの一例を表す模式図である。
【図5】本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法における一の実施形態を表す断面図であり、工程(1)〜(5)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、適宜、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
【0023】
先ず、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法が製造対象とする圧電アクチュエータについて説明する。図1は、圧電アクチュエータの一例を表す断面図であり、図2は、他例を表す断面図である。又、図4は、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法が製造する圧電アクチュエータの効果を表す図であり、圧電アクチュエータを駆動部として用いた圧電駆動型の可変キャパシタを表す模式図である。
【0024】
図1に示される圧電アクチュエータ1は、2つの圧電体層6,7と、それら圧電体層6,7の間、及び、圧電体層6,7の外表面の両方、に設けられた電極層3,4,5と、を有するアクチュエータ部8、並びに、そのアクチュエータ部8の一端を支持する支持体9、を有するものである。圧電アクチュエータ1では、圧電体層6,7が、ともに、支持体9と焼成一体化されており、圧電体層6の外表面には電極層3が設けられ、圧電体層7の外表面には電極層5が設けられている。
【0025】
圧電アクチュエータ1は、支持体9が、圧電体層7の外表面の側に突出しており、その側において、支持体9と圧電体層7との境界には、圧電体である(圧電材料からなる)凸部10が設けられ、それによって段差が形成されている。尚、凸部10は用途に応じ設置しなくてもよい。
【0026】
又、圧電アクチュエータ1では、圧電体層6において電極層3が設けられた面(圧電体層6の外表面)が焼成面で構成され、且つ、圧電体層7において電極層5が設けられた面(圧電体層7の外表面)も焼成面で構成されている。
【0027】
そして、圧電アクチュエータ1では、圧電体層6が無配向であり、且つ、圧電体層6と圧電体層7とでは、(例えば)残留分極が異なる。又、図示しないが、圧電アクチュエータ1において、電極層4を支持体9内に延長して設けてもよい。電極層4を延長して設けることで支持体9の強度が向上する。
【0028】
図2に示される圧電アクチュエータ11は、圧電アクチュエータ1と同様に、2つの圧電体層16,17と、それら圧電体層16,17の間、及び、圧電体層16,17の外表面の両方、に設けられた電極層13,14,15と、を有するアクチュエータ部18、並びに、そのアクチュエータ部18の一端を支持する支持体19、を有するものである。圧電アクチュエータ11では、圧電体層16,17が、ともに、支持体19と焼成一体化されており、圧電体層16の外表面には電極層13が設けられ、圧電体層17の外表面には電極層15が設けられている。
【0029】
圧電アクチュエータ11は、支持体19が、電極層15が設けられた圧電体層17の外表面の側に突出しており、支持体19と圧電体層17との境界には、電極による(電極材料によって)隅埋部20が設けられ、それによって隅に曲面ないし平面が形成されている。
【0030】
又、圧電アクチュエータ11は、圧電アクチュエータ1と同様に、圧電体層16において電極層13が設けられた面(圧電体層16の外表面)が焼成面で構成され、且つ、圧電体層17において電極層15が設けられた面(圧電体層17の外表面)も焼成面で構成されている。
【0031】
そして、圧電アクチュエータ11では、圧電体層16が無配向であり、且つ、圧電体層16と圧電体層17とでは、(例えば)緻密度が異なる。又、図示しないが、圧電アクチュエータ11において、電極層14を支持体19内に延長して設けてもよい。
【0032】
上記圧電アクチュエータ1,11のように、圧電アクチュエータにおいて、支持体が、圧電体層の外表面のうち何れか一の面の側に突出しており、その側において、支持体と圧電体層との境界に圧電体による段差が設けられるか、又は、支持体が、圧電体層の外表面のうち電極層が設けられる側に突出し、支持体と圧電体層との境界に電極による隅埋部が設けられることによって、機械的強度が高く、圧電駆動型の可変キャパシタにおける駆動部として用いたときに変形を繰り返しても、支持体との間に亀裂を生じ難く、長期信頼性に優れる圧電アクチュエータとなる。
【0033】
図4に示される可変キャパシタ40は、支持体49に一端を固定されたアクチュエータ部48を有する圧電アクチュエータ41において、アクチュエータ部48の一方の表面に、一のキャパシタ電極46が配設され、そのキャパシタ電極46に対面するように、他のキャパシタ電極43が配設されているものである。可変キャパシタ40では、圧電アクチュエータ41のアクチュエータ部48を(図4における)矢印方向に変形させることによって、キャパシタ電極43,46間の距離を制御し、その間に生じる静電容量を変えることが可能である。そして、可変キャパシタ40では、アクチュエータ部48の平板状の形状を調節することが可能な圧電アクチュエータ41が採用されているため、図4に示されるように、キャパシタ電極33,36が、平行を維持して近接し又は離隔させることが可能である。
【0034】
次に、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法について説明する。図5は、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法における一の実施形態を表す断面図であり、工程(1)〜(5)を示す図である。工程(1)〜(5)に示される圧電アクチュエータの製造方法は、複数の圧電アクチュエータを同時に作製するもの(多個取り)である。尚、図5は、製造過程が理解し易いように描かれた模式図であり、図5では、圧電体層の厚さと電極層の厚さは好ましい状態には描かれていない。
【0035】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法では、先ず、圧電材料及び電極材料を用いて、アクチュエータ部前駆体50を作製する。このアクチュエータ部前駆体50は、のちに、主にアクチュエータ部となるものであるが、一部は支持体になる。アクチュエータ部前駆体50は、具体的には、(例えば)ジルコン酸鉛等のセラミックス粉末にバインダ、溶剤、分散剤、可塑剤等を添加混合してスラリーを作製し、これを脱泡処理後、リバースロールコーター法、ドクターブレード法等の方法によって、(ここでは例えば)同じ圧電材料からなるグリーンシートを2枚作製し、一方のグリーンシートに、導電性材料(例えば金、電極材料)を用いて、(圧電体層に挟まれることになる)電極層54を形成した後、その電極層54を間にして2枚のグリーンシートを積層し、得ることが出来る。
【0036】
又、別途、支持体前駆体52を作製する。これは、実質的にはグリーンシートであり、(例えば)同じジルコン酸鉛等のセラミックス粉末にバインダ、溶剤、分散剤、可塑剤等を添加混合してスラリーを作製し、これを脱泡処理後、リバースロールコーター法、ドクターブレード法等の方法によって、グリーンシートを得て、その後、金型を用いた打ち抜き、レーザー加工等の方法により、外形を、アクチュエータ前駆体50と同等か又は大きくし、且つ、のちにアクチュエータ部となる部分に対面する部分を開口とする。
【0037】
そして、アクチュエータ部前駆体50と支持体前駆体52を接合した後に、使用する圧電材料に基づき800〜1600℃の範囲の適切な温度で、焼成をする(以上が工程1である、図5を参照)。
【0038】
次に、一方の外表面側に位置する電極層53を形成するために、レジストパターニングを行う(工程(2))。即ち、例えば露光法によって、アクチュエータ部前駆体50における支持体前駆体52が付いていない側の面の、のちに電極層53となる部分を除く部分に、レジスト61を塗布する。
【0039】
次いで、例えばスパッタ処理によって、導電性材料(例えば金)からなる膜状の電極層53を形成する(工程(3))。
【0040】
そして、例えば剥離剤によって、レジスト61を除去すれば、膜状の電極層53のみが残る。アクチュエータ部前駆体50における支持体前駆体52が付いている側においても、同様にして、レジストパターニング、膜状の電極層55の形成、レジスト除去、を行って、膜状の電極層55のみを残す(工程(4))。
【0041】
その後、アクチュエータ部前駆体50を切断すれば、個々に分離した圧電アクチュエータ51が得られる(工程(5))。圧電アクチュエータ素子51は、アクチュエータ部58及びそのアクチュエータ部58の一端を支持する支持体59を有するものであり、アクチュエータ部58は、2つの圧電体層56,57と、それら圧電体層56,57の間、及び、圧電体層56,57の外表面の両方、に設けられた電極層53,54,55と、を有するものである。
【0042】
そして、個々に分離した圧電アクチュエータ51に対し、先ず、圧電層56のみに、電圧印加し、歪を発生するよう所定の分極処理を行う。その後、圧電体層57のみに、分極処理を施し、その圧電体層57の残留分極を制御することによって、圧電アクチュエータ51の(アクチュエータ部58の)平板状の形状を調節する。以上によって、平板状の形状が調節された、機械的強度の高い、本発明に係る圧電アクチュエータを得ることが出来る。圧電層57に分極処理を行う際、反り量を変位計等で測定しながら、残留分極を決めるようにすると、そうしない場合より、平板の形状を所定の形状にし易く、好適である。
【0043】
次に、圧電アクチュエータに用いられる材料について説明する。先ず、圧電体層の材料(圧電材料)について説明する。材料としては、圧電効果若しくは電歪効果等の電界誘起歪みを起こす材料であれば、問われるものではない。半導体セラミック、強誘電体セラミック、及び反強誘電体セラミックを用いることが可能であり、用途に応じて適宜選択し採用すればよい。又、分極処理が必要な材料であっても必要がない材料であってもよい。
【0044】
具体的には、好ましい材料として、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、マンガンタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛、マグネシウムタングステン酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウムビスマス、チタン酸ビスマスネオジウム(BNT)、ニオブ酸カリウムナトリウム、タンタル酸ストロンチウムビスマス、銅タングステンバリウム、鉄酸ビスマス、あるいはこれらのうちの2種以上からなる複合酸化物を挙げることが出来る。
【0045】
又、上記の材料には、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン、セリウム、カドミウム、クロム、コバルト、アンチモン、鉄、イットリウム、タンタル、リチウム、ビスマス、スズ、銅等の酸化物が固溶されていてもよい。更に、上記材料等に、ビスマス酸リチウム、ゲルマン酸鉛等を添加した材料、例えば、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、及びマグネシウムニオブ酸鉛の複合酸化物に、ビスマス酸リチウム乃至ゲルマン酸鉛を添加した材料は、圧電体の低温焼成を実現しつつ高い材料特性を発現出来るので好ましい。
【0046】
上記圧電体層の材料は、焼成後に、非180度ドメインを呈するものが好ましく、特に、90度ドメインを呈するものが好ましい。このような材料によって形成された圧電体層は、圧電体層の残留分極によって残留歪が制御し易いため、平板状の形状に対する調節幅を大きくとれるからである。
【0047】
尚、支持体の材料についても、上記の圧電材料を用いることが出来る。熱膨張の程度を同じにすべく、圧電アクチュエータ(グリーンシート)と同じ材料を用いることが好ましい。
【0048】
次に、電極層の材料(電極材料)としては、導電性材料、特に金属、が採用される。例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、又は鉛等の金属単体又はこれら2種類以上からなる合金、例えば、銀−白金、白金−パラジウム、銀−パラジウム等を1種単独で又は2種類以上を組み合わせたものを用いることが好ましい。又、これらの材料と、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化セリウム、ガラス、又は圧電材料等との混合物、サーメットであってもよい。これらの材料の選定にあたっては、圧電材料の種類に応じて選択することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法は、例えば、可変キャパシタのアクチュエータ部として用いられる圧電アクチュエータを製造する手段として、好適に利用される。
【符号の説明】
【0050】
1,11,41,51:圧電アクチュエータ
8,18,48,58:アクチュエータ部
9,19,49,59:支持体
3,13,53:電極層
4,14,54:電極層
5,15,55:電極層
30:可変キャパシタ
31:圧電アクチュエータ
38:アクチュエータ部
39:支持体
40:可変キャパシタ
61:レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の平板状の圧電体層と、それら2以上の圧電体層の間及び圧電体層の外表面のうち少なくとも何れか一方に設けられた電極層と、を有するアクチュエータ部、
並びに、そのアクチュエータ部の一端を支持する支持体、で圧電アクチュエータを構成し、
前記2以上の圧電体層のうち何れか一の外表面側に位置する圧電体層に分極処理を施し、その圧電体層の残留分極を制御することによって、平板状の形状を調節する圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項2】
前記2以上の圧電体層のうち、一の圧電体層と、他の圧電体層とを、残留分極が異なるものとする請求項1に記載の圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項3】
前記圧電体層の外表面の両方を、焼成面で構成する請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−251726(P2010−251726A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66290(P2010−66290)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】