説明

圧電振動デバイスの製造方法およびその製造方法により製造された圧電振動デバイス

【課題】ベースとキャップとの接合状態を安定させて、パッケージ内部が気密不良になるのを抑制する。
【解決手段】ベース2に水晶振動片を保持した後に、ベース2へのキャップ3の接合工程に移る。ベース2にキャップ3を接合する際に、ベース2の平面視の対向する辺の予め設定した対向する個所でキャップ3を仮止めする。仮止め工程の後に、ベース2とキャップ3とを熱処理する。熱処理工程の後に、ベース2とキャップ3とを接合して、パッケージ11を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスの製造方法およびその製造方法により製造された圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動デバイスとして、例えば、音叉型水晶振動子(以下、水晶振動子という)などが挙げられる。この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が直方体のパッケージで構成される。このパッケージはセラミックのベースと金属のキャップとから構成され、パッケージ内部は気密封止されている。また、このパッケージ内部では、水晶振動片が、ベース上の電極パッドに導電性接着剤を介して接合されている。
【0003】
また、この種の圧電振動デバイスでは、ベースとキャップとがシーム溶接により接合されてパッケージ内部が気密封止される。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−136812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した特許文献1では、ベースとキャップとをシーム溶接する際、まず、ベースおよびキャップの長手方向もしくは短手方向のいずれか一方の辺についてシーム溶接を行い、その後に残りの辺についてシーム溶接を行なう。
【0005】
しかしながら、ベースとキャップとの接合の際、金属のキャップが熱膨張をおこし、ベースに対してキャップの端面が反った状態となる。特にキャップの長辺端がベースに対して浮いた状態となる。
【0006】
そのため、ベースとキャップとの接合面において隙間などが発生し、この隙間によってパッケージ内部の気密状態を保つことができず、内部の圧電振動片(水晶振動片)の特性が可変する。例えば、圧電振動片(水晶振動片)の直列共振抵抗値(以下、抵抗値とする)が高くなり、圧電振動片の特性を悪化させる原因となる。
【0007】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、ベースとキャップとの接合状態を安定させて、パッケージ内部が気密不良になるのを抑制する圧電振動デバイスの製造方法およびその製造方法により製造された圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスの製造方法は、ベースとキャップとが接合されてパッケージが構成され、前記パッケージ内に圧電振動片が設けられた圧電振動デバイスの製造方法において、前記ベースに前記キャップを接合する際に、前記ベースの平面視の対向する辺の予め設定した個所で前記キャップを仮止めする仮止め工程と、前記仮止め工程の後に、前記ベースと前記キャップとを熱処理する熱処理工程と、前記熱処理工程の後に、前記ベースと前記キャップとを接合する接合工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる圧電振動デバイスの製造方法によれば、前記仮止め工程と前記熱処理工程と前記接合工程とを有するので、前記ベースと前記キャップとの接合状態を安定させることが可能となり、その結果、前記パッケージ内が気密不良になるのを抑制することが可能となる。
【0010】
具体的に、前記仮止め工程を有しているので、前記ベースへの前記キャップの接合に関して予め設定した位置で前記ベースへの前記キャップの接合を行なうことが可能となる。また、前記仮止め工程の後に前記熱処理工程を行なうので、前記仮止め工程において発生したガスを前記熱処理工程において前記パッケージ内から排気することが可能となり、前記仮止め工程を有することによって前記圧電振動片の特性が悪化するのを抑えることが可能となる。さらに、前記仮止め工程を行なうことで生じる前記キャップのそりを、前記熱処理工程における前記ベースと前記キャップとの接合により無くすことが可能となる。さらに、前記熱処理工程の後に前記接合工程を行なうことで、前記パッケージ内のガスを排出した状態で前記パッケージ内に前記圧電振動片を気密封止することが可能となる。
【0011】
前記方法において、前記パッケージが平面視略長方形に形成され、前記仮止め工程では、前記ベースの平面視の対向する長辺それぞれの予め設定した個所で前記キャップを仮止めし、前記接合工程は、前記熱処理の後に、前記ベースの前記長辺に、前記キャップの平面視の長辺を接合する長辺接合工程と、前記長辺接合工程の後に、前記ベースの平面視の短辺に、前記キャップの平面視の短辺を接合する短辺接合工程と、を含んでもよい。
【0012】
この場合、前記パッケージが平面視長方形に形成され、前記仮止め工程では、前記ベースの平面視の対向する長辺それぞれの予め設定した個所で前記キャップを仮止めし、前記接合工程は長辺接合工程と短辺接合工程とを含むので、前記仮止め工程を行なうことで生じる前記キャップのそり量を最小限に抑えることが可能となる。すなわち、前記キャップのそり量は仮止めを行なう辺の仮止個所から端面までの寸法(すなわち自由端の寸法)が長いほど大きくなるが、前記ベースの平面視の対向する長辺それぞれの予め設定した個所で前記キャップを仮止めするので、仮止めを行なう辺の仮止個所から端面までの距離を短くすることが可能となり、前記キャップのそり量を抑えるのに好ましい。
【0013】
前記方法において、前記仮止め工程では、前記ベースの仮止めを行なう個所に不活性ガスを噴きつけながら、前記ベースと前記キャップとの仮止めを行なってもよい。
【0014】
この場合、前記仮止め工程では、前記ベースの仮止めを行なう仮止個所に不活性ガスを噴きつけながら、前記ベースと前記キャップとの仮止めを行なうので、大気中において前記ベースと前記キャップとの仮止めを行なうことが可能となる。そのため、前記ベースと前記キャップとの仮止めを行なうために大量の不活性ガスを用いなくてもよく、製造コストの削減を図ることが可能となる。また、当該仮止め工程を行なうために大きな製造場所を確保しなくてもよい。
【0015】
前記方法において、前記長辺接合工程および前記短辺接合工程は、シーム溶接により行なってもよい。
【0016】
この場合、前記長辺接合工程および前記短辺接合工程はシーム溶接により行うので、接合工程において前記ベースへの前記キャップの接合位置にずれが生じる場合がある。しかしながら、本発明によれば、前記仮止め工程を有しているので、シーム溶接を行なうことによって接合工程での前記ベースへの前記キャップの接合位置のずれが生じるのを防止することが可能となる。また、前記長辺接合工程および前記短辺接合工程は、シーム溶接により行うので、当該圧電振動デバイスを量産するのに好ましい。
【0017】
前記方法において、前記熱処理工程は、真空アニール法により行なってもよい。
【0018】
この場合、前記熱処理工程は、真空アニール法により行なうので、真空加熱することで前記圧電振動片の周波数を安定させることが可能となる。
【0019】
前記方法において、前記仮止め工程では、前記ベースの仮止めを行なう仮止個所を、前記ベースの前記辺に対して複数個所としてもよい。
【0020】
この場合、前記仮止め工程では、前記ベースの仮止めを行なう仮止個所を、前記ベースの前記辺に対して複数個所とするので、前記キャップのそり量を抑えるのに好ましい。すなわち、キャップのそり量は、仮止個所の間の距離や、仮止めを行なう辺の仮止個所から端面までの距離が短くなるにつれて減少するので、この構成によれば前記キャップのそり量を抑えるのに好ましい。
【0021】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、上記した圧電振動デバイスの製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0022】
本発明にかかる圧電振動デバイスによれば、上記した圧電振動デバイスの製造方法により製造されるので、上記したように前記ベースと前記キャップとの接合状態を安定させて、前記パッケージ内部が気密不良になるのを抑制することが可能となる。
【0023】
前記構成において、前記パッケージが平面視略長方形に形成されてもよい。なお、ここでいう平面視略長方形とは、前記パッケージの平面視の長辺と短辺とが、前記長辺>前記短辺を満たす寸法、すなわち、(前記長辺/前記短辺)>1を満たす寸法により設定された形状のことをいう。また、前記パッケージの平面視の長辺と短辺とは、(前記長辺/前記短辺)>2を満たす寸法により設定されることが更に好ましい構成である。
【0024】
前記構成において、前記キャップは、複数の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されてもよい。
【0025】
この場合、前記キャップは、複数の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されるので、前記仮止め工程において前記キャップのそりが発生する。しかしながら、本発明では、少なくとも前記仮止め工程と前記熱処理工程と前記接合工程とを有するので、前記仮止め工程において発生する前記キャップのそり量を抑えることが可能となる。そのため、この構成によれば、前記ベースと前記キャップとの接合状態を安定させることが可能となり、その結果、前記パッケージ内が気密不良になるのを抑制することが可能となる。さらに、前記キャップは、複数の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されるので、前記ベースと前記キャップとの接合強度を強くするとともに、前記ベースと前記キャップとの接合状態を安定させて前記パッケージ内が気密不良になるのを抑制するのに好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる圧電振動デバイスの製造方法およびその製造方法により製造された圧電振動デバイスによれば、ベースとキャップとの接合状態を安定させて、パッケージ内部が気密不良になるのを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、圧電振動デバイスとして音叉型水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0028】
本実施例にかかる音叉型水晶振動子1(以下、水晶振動子という)は、図示しない音叉型水晶振動片(本発明でいう圧電振動片であり、以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片を保持するベース2と、ベース2に保持した水晶振動片を気密封止するためのキャップ3とからなる。
【0029】
この水晶振動子1では、図1に示すように、ベース2とキャップ3とが接合されて筐体であるパッケージ11が構成され、このパッケージ11内に内部空間12が形成される。この内部空間12のベース2上に、水晶振動片が保持されるとともに、パッケージ11の内部空間12が気密封止されている。この際、ベース2と水晶振動片とは、導電性接着剤(図示省略)を用いて接合されている。
【0030】
パッケージ11は、図1に示すように、平面視略長方形に形成されている。このパッケージ11の平面視の長辺13と短辺14とは、長辺13>短辺14を満たす寸法、すなわち(長辺13/短辺14)>1を満たす寸法により設定されている。
【0031】
ベース2は、図1に示すように、底部21と、この底部21から上方に延出した壁部22とから構成される箱状体に形成されている。このベース2は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。また、壁部22は、底部21の表面外周に沿って成形されている。この壁部22の上面は、キャップ3との接合領域23であり、この接合領域23には、キャップ3と接合するための図示しないメタライズ層(例えば、タングステンメタライズ層上にニッケル,金の順でメッキした構成)が設けられている。
【0032】
キャップ3は、金属材料からなり、図1に示すように、平面視矩形状の一枚板に成形されている。このキャップ3は、下面にろう材(図示省略)が形成されており、シーム溶接やビーム溶接等の手法によりベース2に接合されて、キャップ3とベース2とによる水晶振動子1のパッケージ11が構成される。なお、キャップ3は、4層の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されている。具体的に、ベース2との接続面となるキャップ3の下面から、ろう材である銀銅層、銅層、コバール層及びニッケル層が順に積層されてなる。キャップの下面側が銀銅層及び銅層であるため、他の層に比べてセラミックからなるベース2との熱接合がし易い。また、これら銀銅層及び銅層上にコバール層が積層されているので、セラミックからなるベース2との熱膨張率を略同じにしてベース2とキャップ3との熱変形を同等にすることが可能となる。また、最上面にニッケル層が形成されているので、ベース2とキャップ3とのシーム溶接(下記参照)を行い易くする。なお、熱変形を同等レベルにすることからコバール層の厚みはできるだけ厚く設計されている。
【0033】
次に、上記したパッケージを構成するためのベース2とキャップ3との接合について、図2を用いて説明する。
【0034】
まず、ベース2の内部空間12に位置するベース2上に水晶振動片を保持する。
【0035】
ベース2に水晶振動片を保持した後に、ベース2へのキャップ3の接合に移る。
【0036】
ベース2にキャップ3を接合する際に、ベース2の平面視の対向する辺の予め設定した対向する個所(図1,2で示す仮止個所15参照)でキャップ3を仮止めする(本発明でいう仮止め工程)。本実施例における仮止め工程では、図2(a)に示すように、ベース2の接合領域23の平面視の対向する長辺24それぞれの2個所において行ない(ベース2に対して合計4個所の仮止個所15)、ベース2の仮止めを行なう4個所に不活性ガス(本実施例では窒素ガス)を噴きつけながら、ベース2とキャップ3との仮止めを行なう。なお、ベース2の接合領域23の対向する長辺24それぞれの仮止個所15は、それぞれ長辺24を略等分する位置にされる。
【0037】
仮止め工程の後に、ベース2とキャップ3とを熱処理することにより(本発明でいう熱処理工程)、金属の焼きなまし効果が生じ、これにより仮止め工程における歪みを除去し、図2(b)に示すようにベース2とキャップ2との接合面の隙間を無くす。本実施例における熱処理工程は、真空アニール法により行なう。本実施例における熱処理条件として、約200℃の熱で約1時間の熱処理が設定されている。
【0038】
熱処理工程の後に、ベース2とキャップ3とを接合して(本発明でいう接合工程)、図1に示すパッケージ11を構成する。この接合工程では、図2(c)に示すようにローラRを用いてシーム溶接によりベース2の長辺24に、キャップ3の長辺31を接合し(本発明でいう長辺接合工程)、その後に、ローラRを用いてシーム溶接によりベース2の短辺25に、キャップ3の短辺32を接合する(本発明でいう短辺接合工程)。
【0039】
次に、上記してベース2とキャップ3とを接合した水晶振動子1について、その抵抗値を測定した。その抵抗値の測定結果を図3に示し、さらに比較例として上記した接合方法とは異なる接合方法によりベースとキャップとが接合された他の水晶振動子の抵抗値の測定結果を図4に示す。実施例および比較例の水晶振動子のサンプル数は各々1000個であり、上記した水晶振動子1と比較例の水晶振動子とを比較した。
【0040】
すなわち、上記した水晶振動子1では、上記した製造工程に示すように、仮止め工程の後に真空アニール法により熱処理工程を行い、熱処理工程の後に接合工程を行なってベース2とキャップ3とが接合されている。この水晶振動子1の抵抗値を測定し、その測定結果を図3に示す。
【0041】
これに対して、比較例の水晶振動子では、真空アニール法により熱処理工程を行ない、その後に仮止め工程を行ない、そして、最後に接合工程を行なってベースとキャップとが接合されている。この比較例の水晶振動子の抵抗値を測定し、その測定結果を図4に示す。
【0042】
図3,4から、本実施例の水晶振動子1の方が、比較例の水晶振動子に比べて抵抗値が良好であることがわかる。すなわち、本実施例の水晶振動子1の抵抗値分布は、比較例の水晶振動子の抵抗値分布より全体的に値が低く、かつ、そのバラツキも小さい。また、本実施例の水晶振動子1の不発振率が2.2%であり、これに対して、比較例の水晶振動子の不発振率は4.5%であったので、本実施例の水晶振動子1の不発振率は比較例の水晶振動子の不発振率よりかなり低い。従って、本実施例の製造方法によれば、良好な水晶振動子の量産に適していることがわかる。この理由として、仮止め後に熱処理をすることにより、仮止め後に発生するキャップ3の歪みを無くしてキャップ3をフラットにし、ベース2とキャップ3との接合面に隙間が発生するのを防止してパッケージ11内を気密封止することができたことが挙げられる。
【0043】
上記したように、本実施例にかかる水晶振動子1の製造方法によれば、仮止め工程と熱処理工程と接合工程とを有するので、ベース2とキャップ3との接合状態を安定させることができ、その結果、パッケージ11内が気密不良になるのを抑制することができる。
【0044】
具体的に、本実施例にかかる水晶振動子1の製造方法によれば、仮止め工程を有しているので、ベース2へのキャップ3の接合に関して予め設定した位置でベース2へのキャップ3の接合を行なうことができる。また、仮止め工程の後に熱処理工程を行なうので、仮止め工程において発生したガスを熱処理工程においてパッケージ11内から排気することができ、仮止め工程を有することによって水晶振動片の特性が悪化するのを抑えることができる。さらに、仮止め工程を行なうことで生じるキャップ3のそりを、熱処理工程におけるベース2とキャップ3との接合により無くすことができる。さらに、熱処理工程の後に接合工程を行なうことで、パッケージ11内のガスを排出した状態でパッケージ11内に水晶振動片を気密封止することができる。
【0045】
また、パッケージ11が平面視長方形に形成され、仮止め工程では、ベース2の対向する長辺24の4箇所でキャップ3を仮止めし、接合工程は長辺接合工程と短辺接合工程とを含むので、仮止め工程を行なうことで生じるキャップ3のそり量を最小限に抑えることができる。すなわち、キャップ3のそり量は仮止めを行なうベース2の対向する長辺24の仮止個所から端面までの寸法(すなわち自由端の寸法)が長いほど大きくなるが、ベース2の対向する長辺24それぞれの4個所でキャップ3を仮止めするので、仮止めを行なうベース2の対向する長辺24の仮止個所から端面までの距離を短くすることができ、キャップ3のそり量を抑えるのに好ましい。
【0046】
また、仮止め工程では、ベース2の仮止めを行なう個所に不活性ガスを噴きつけながら、ベース2とキャップ3との仮止めを行なうので、大気中においてベース2とキャップ3との仮止めを行なうことができる。そのため、ベース2とキャップ3との仮止めを行なうために大量の不活性ガスを用いなくてもよく、製造コストの削減を図ることができる。また、当該仮止め工程を行なうために大きな製造場所を確保しなくてもよい。
【0047】
また、長辺接合工程および短辺接合工程はシーム溶接により行なっているので、接合工程においてベース2へのキャップ3の接合位置にずれが生じる場合がある。しかしながら、本実施例にかかる水晶振動子1の製造方法によれば、仮止め工程を有しているので、シーム溶接を行なうことによって接合工程でのベース2へのキャップ3の接合位置のずれが生じるのを防止することができる。また、長辺接合工程および短辺接合工程は、シーム溶接により行うので、当該水晶振動子1を量産するのに好ましい。
【0048】
また、熱処理工程は、真空アニール法により行なうので、真空加熱することで水晶振動片の抵抗値などの特性を安定させることができる。
【0049】
また、仮止め工程では、ベース2の仮止めを行なう個所を、ベース2の辺に対して4個所とするので、キャップ3のそり量を抑えるのに好ましい。すなわち、キャップ3のそり量は、仮止個所の間の距離や、仮止めを行なう辺の仮止個所から端面までの距離が短くなるにつれて減少するので、この構成によればキャップ3のそり量を抑えるのに好ましい。
【0050】
また、上記した本実施例にかかる水晶振動子1によれば、上記した水晶振動子1の製造方法により製造されるので、上記したようにベース2とキャップ3との接合状態を安定させて、パッケージ11内部が気密不良になるのを抑制することができる。
【0051】
また、上記した本実施例では、パッケージ11の平面視の長辺13と短辺14とは、(長辺13/短辺14)>1を満たす寸法により設定されているが、さらに限定して、(長辺13/短辺14)>2を満たす寸法により設定されることで、本発明の効果が顕著に現れる。
【0052】
また、キャップ3は、複数の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されるので、仮止め工程においてキャップ3のそりが発生する。しかしながら、本発明では、少なくとも仮止め工程と熱処理工程と接合工程とを有するので、仮止め工程において発生するキャップ3のそり量を抑えることができる。そのため、この構成によれば、ベース2とキャップ3との接合状態を安定させることができ、その結果、パッケージ11内が気密不良になるのを抑制することができる。さらに、キャップ3は、複数の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されるので、ベース2とキャップ3との接合強度を強くするとともに、ベース2とキャップ3との接合状態を安定させてパッケージ11内が気密不良になるのを抑制するのに好ましい。
【0053】
なお、本実施例では、ベース2へのキャップ3の接合にシーム溶接を用いているが、これは好適な例であってこれに限定されるものではなく、ビーム溶接であってもよい。また金錫、銀錫等の金属ろう材を用いた加熱封止に適用してもよい。
【0054】
また、本実施例では、水晶振動片に音叉型水晶振動片を適用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ATカットの水晶振動片を用いてもよい。すなわち、任意の圧電振動片が適用可能である。
【0055】
また、本実施例では、ベース2の接合領域23の平面視の対向する長辺24それぞれの2個所において行なっているが、これに限定されるものではなく、任意の個所を仮止め箇所としてもよい。例えば、ベース2の対向する長辺24それぞれ1個所を仮止個所(合計6個所以上)としてもよく、ベース2の対向する長辺24それぞれの3つ以上の個所(合計6個所以上)を仮止個所としてもよい。なお、上記したように、キャップ3のそり量は、仮止個所の間の距離や、仮止めを行なう辺の仮止個所から端面までの距離が短くなるにつれて減少するので、仮止個所は多いほうがキャップ3のそり量を抑えるのに好ましい。
【0056】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、水晶振動子などの圧電振動デバイスに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1(a)は、本実施例にかかる水晶振動子の概略斜視図である。図1(b)は、その概略平面図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる水晶振動子の製造工程を説明するための図である。図2(a)は、本実施例の仮止め工程を説明するための図である。図2(b)は、本実施例の熱処理工程を説明するための図である。図2(c)は、本実施例の接合工程を説明するための図である。
【図3】図3は、本実施例にかかる水晶振動子の直列共振抵抗値分布を示したグラフ図である。
【図4】図4は、本実施例の比較例の水晶振動子の直列共振抵抗値分布を示したグラフ図である。
【符号の説明】
【0059】
1 音叉型水晶振動子
11 パッケージ
12 内部空間
13 パッケージの長辺
14 パッケージの短辺
15 仮止個所
2 ベース
3 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースとキャップとが接合されてパッケージが構成され、前記パッケージ内に圧電振動片が設けられた圧電振動デバイスの製造方法において、
前記ベースに前記キャップを接合する際に、前記ベースの平面視の対向する辺の予め設定した個所で前記キャップを仮止めする仮止め工程と、
前記仮止め工程の後に、前記ベースと前記キャップとを熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理工程の後に、前記ベースと前記キャップとを接合する接合工程と、を有することを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記パッケージが平面視略長方形に形成され、
前記仮止め工程では、前記ベースの平面視の対向する長辺それぞれの予め設定した個所で前記キャップを仮止めし、
前記接合工程は、前記熱処理の後に、前記ベースの前記長辺に、前記キャップの平面視の長辺を接合する長辺接合工程と、前記長辺接合工程の後に、前記ベースの平面視の前記短辺に、前記キャップの平面視の短辺を接合する短辺接合工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記仮止め工程では、前記ベースの仮止めを行なう個所に不活性ガスを噴きつけながら、前記ベースと前記キャップとの仮止めを行なうことを特徴とする請求項2に記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記長辺接合工程および前記短辺接合工程は、シーム溶接により行うことを特徴とする請求項2または3に記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記熱処理工程は、真空アニール法により行なうことを特徴とする請求項2乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記仮止め工程では、前記ベースの仮止めを行なう仮止個所を、前記ベースの前記辺に対して複数個所とすることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造方法により製造されたことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項8】
前記パッケージが平面視略長方形に形成されたことを特徴とする請求項7に記載の圧電振動デバイス。
【請求項9】
前記キャップは、複数の熱膨張係数の異なる金属材料から形成されたことを特徴とする請求項7または8に記載の圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−88966(P2007−88966A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277117(P2005−277117)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】