説明

圧電振動片の製造方法及び圧電振動片

【課題】本発明は、圧電ウエハから圧電振動片の落下が防がれるとともに、圧電振動片を圧電ウエハから取り外しやすい圧電振動片の製造方法及び圧電振動片を提供する。
【解決手段】圧電振動片の製造方法は、圧電材料からなる圧電ウエハから矩形の圧電振動片を複数形成する圧電振動片の製造方法であって、圧電ウエハから圧電振動片の矩形の外形を形成する際に、矩形の1つの短辺の中央と圧電ウエハとをつなぐ第1連結部と矩形の角部と圧電ウエハとをつなぐ第1連結部より細い第2連結部とを形成する外形形成工程(S101)と、圧電振動片の両主面に一対の励振電極とこれら一対の励振電極からそれぞれ引き出される一対の引出電極とを形成する電極形成工程(S102)と、圧電ウエハを液体で洗浄する洗浄工程(S103)と、少なくとも第1連結部を折り圧電ウエハから圧電振動片を取り外す切断工程(S104、S105)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電ウエハから圧電振動片の落下が防がれた圧電振動片の製造方法及び圧電振動片に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動片は、圧電材料により形成される圧電ウエハ上に複数の圧電振動片が形成されることにより作製される。このような圧電振動片は、圧電振動片と圧電ウエハとが連結部により連結された状態で形成され、最後に連結部を折ることにより、圧電振動片が圧電ウエハから切り離されて個々の圧電振動片となる。この連結部は、容易に折ることができるように形成されることで、圧電ウエハからの圧電振動片の取り外しが容易になる。
【0003】
例えば特許文献1には、圧電振動片と圧電ウエハとが連結部により連結された例が示されている。特許文献1では、支持部に溝が設けられることにより圧電基板を形成したのちに圧電ウエハから圧電振動片を折り取りやすくする旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−142526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された圧電振動片は、連結部の強度が弱くなるため、圧電振動片の製造途中に圧電振動片が圧電ウエハから落下する場合がある。例えば圧電振動片に励振電極を形成する前に圧電振動片が圧電ウエハから取れてしまっては、その圧電振動片に励振電極を形成することができない。
【0006】
そこで本発明は、圧電ウエハから圧電振動片の落下を防ぐとともに、圧電振動片を圧電ウエハから取り外しやすい圧電振動片の製造方法及び圧電振動片を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の圧電振動片の製造方法は、圧電材料からなる圧電ウエハからフォトリソグラフィにより矩形の圧電振動片を複数形成する圧電振動片の製造方法であって、圧電ウエハからフォトリソグラフィにより圧電振動片の矩形の外形を形成する際に、矩形の1つの短辺の中央と圧電ウエハとをつなぐ第1連結部と矩形の角部と圧電ウエハとをつなぐ第1連結部より細い第2連結部とを形成する外形形成工程と、圧電振動片の両主面に一対の励振電極とこれら一対の励振電極からそれぞれ引き出される一対の引出電極とを形成する電極形成工程と、圧電ウエハを液体で洗浄する洗浄工程と、少なくとも第1連結部を折り圧電ウエハから圧電振動片を取り外す切断工程と、を備える。
【0008】
第2観点の圧電振動片の製造方法は、第1観点において、洗浄工程が液体に超音波を与えることにより圧電ウエハを洗浄する工程であり、第2連結部が超音波による衝撃波により切断される。
【0009】
第3観点の圧電振動片の製造方法は、第1観点及び第2観点において、外形形成工程で、圧電振動片と圧電ウエハとをつなぐ第1連結部及び第2連結部の一部の厚みを薄く形成する。
【0010】
第4観点の圧電振動片の製造方法は、第1観点から第3観点において、外形形成工程で矩形の4つの角部又は短辺と向かい合う短辺の2つの角部に第2連結部を形成し、電極形成工程で引出電極を第1連結部の両側まで形成する。
【0011】
第5観点の圧電振動片の製造方法は、第1観点から第3観点において、外形形成工程で矩形の4つの角部又は短辺と向かい合う短辺の2つの角部に第2連結部を形成し、電極形成工程で引出電極を向かい合う短辺のそれぞれに形成する。
【0012】
第6観点の圧電振動片は、圧電デバイスのパッケージ内に収納される矩形の圧電振動片であって、圧電振動片がその両主面に一対の励振電極とこれら一対の励振電極から短辺までそれぞれ引き出される一対の引出電極とを有し、矩形の1つの短辺の中央で且つ両主面を結ぶ側面において第1幅の第1折取り残部を有し、矩形の角部で且つ両主面を結ぶ側面において第1幅よりも狭い第2折取り残部を有し、第2折取り残部により角部は欠けがない。
【0013】
第7観点の圧電デバイスの製造方法は、第1観点から第5観点の圧電振動片の製造方法により製造された圧電振動片を用意する工程と、内側に凹んだ凹部を有するパッケージを用意する工程と、リッド板を用意する工程と、圧電振動片をパッケージ内に載置しパッケージの凹部をリッド板により密封する工程と、を備える。
【0014】
第8観点の圧電デバイスは、第6観点の圧電振動片と、内側に凹み、圧電振動片が載置される凹部を有するパッケージと、凹部を密封するリッド板と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧電ウエハから圧電振動片の落下を防ぐとともに、圧電振動片を圧電ウエハから取り外しやすい圧電振動片の製造方法及び圧電振動片を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】圧電デバイス100の分解斜視図である。
【図2】圧電デバイス100の断面図である。
【図3】(a)は、圧電振動片130の斜視図である。 (b)は、圧電振動片130の平面図である。
【図4】圧電振動片130の製造方法が示されたフローチャートである。
【図5】(a)は、圧電振動片130の外形が形成された圧電ウエハW130の平面図である。 (b)は、電極が形成された圧電ウエハW130の平面図である。
【図6】(a)は、圧電ウエハW130に形成された圧電振動片130の拡大図である。 (b)は、図6(a)のB−B断面図である。
【図7】(a)は、第2連結部136bが折られた圧電ウエハW130の部分平面図である。 (b)は、第1連結部136a及び第2連結部136bが折られた圧電ウエハW130の部分平面図である。
【図8】(a)は、圧電振動片130が第1連結部236a及び第2連結部236bにより連結された圧電ウエハW230の部分平面図である。 (b)は、圧電振動片130が第1連結部136a及び第2連結部336bにより連結された圧電ウエハW330の部分平面図である。
【図9】(a)は、圧電振動片130が第1連結部436a及び第2連結部436bにより連結される圧電ウエハW430の部分平面図である。 (b)は、圧電ウエハW430の部分断面図である。
【図10】(a)は、圧電振動片130が第1連結部136a及び第2連結部536bにより連結される圧電ウエハW530の部分平面図である。 (b)は、圧電振動片230が第1連結部136a及び第2連結部136bにより連結された圧電ウエハW630の部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0018】
(第1実施形態)
<圧電デバイス100の構成>
図1は、圧電デバイス100の分解斜視図である。圧電デバイス100は、圧電振動片130と、リッド板110と、パッケージ120と、により形成されている。圧電振動片130には、例えばATカットの水晶振動片が用いられる。ATカットの水晶振動片は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶振動片の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、圧電デバイス100においては圧電デバイス100の長辺方向をX軸方向、圧電デバイス100の高さ方向をY’軸方向、X及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。
【0019】
圧電デバイス100は、パッケージ120の+Y’軸側に形成され内側に凹む凹部121に圧電振動片130が載置される。さらに圧電振動片130が載置された凹部121を密封するようにリッド板110がパッケージ120の+Y’軸側の面に接合されて圧電デバイス100が形成される。
【0020】
圧電振動片130は、所定の振動数で振動する励振部134aの厚みが励振部134aを囲むように形成される周辺部134bの厚みよりも厚いメサ型の圧電振動片である。励振部134aの+Y’軸側の面と−Y’軸側の面とには励振電極131が形成されており、各励振電極131から周辺部134bの−Y’軸側にはそれぞれ引出電極132が形成されている。
【0021】
圧電デバイス100は表面実装型の圧電デバイスであり、実装端子125とプリント基板等とがハンダを介して固定され、電気的に接続されることにより実装される。圧電デバイス100が実装される面であるパッケージ120の−Y’軸側の面には、一対の実装端子125(図2参照)が形成されている。また、パッケージ120は矩形形状に形成されており、パッケージ120の外壁の四隅にはキャスタレーション127aが形成され、短辺側の中央にはキャスタレーション127bが形成されている。キャスタレーション127bには、実装端子125の一部が形成されている。また、パッケージ120の+Y’軸側の面には凹部121が形成されている。凹部121には、圧電振動片130が載置されるための載置部123が形成されており、載置部123の+Y’軸側の面には接続端子124が形成されている。さらに、パッケージ120の凹部121の周囲にはリッド板110と接合される接合面122が形成されている。接続端子124と実装端子125とは互いに電気的に接続されている。パッケージ120は、例えばセラミックスにより形成されており、パッケージ120は3つの層により形成されている。第1層120aは平面状に形成されパッケージ120の−Y’軸側に配置されており、第1層120aの−Y’軸側の面には実装端子125が形成されている。第1層120aの+Y’軸側には第2層120bが配置される。第2層120bの中央部には、凹部121の一部を形成する貫通孔が形成されている。また第2層120bは凹部121に載置部123を形成し、載置部123の+Y’軸側の面には接続端子124が形成される。第2層120bの+Y’軸側の面には第3層120cが配置される。第3層120cの中央部には凹部121の一部を形成する貫通孔が形成されている。また、第3層120cの+Y’軸側の面には接合面122が形成されている。パッケージ120に形成される接続端子124及び実装端子125等の電極は、例えばセラミックス上にタングステンの層が形成され、その上に下地めっきとしてニッケル層が形成され、さらにその上に仕上げメッキとして金層が形成されることにより形成される。
【0022】
リッド板110は、平面状の板として形成されている。リッド板110はパッケージ120の+Y’軸側の面に形成されている接合面122に封止材142(図2参照)を介して接合されることによりパッケージ120の凹部121を密封する。
【0023】
図2は、圧電デバイス100の断面図である。図2には、図1のA―A断面を含む断面図が示されている。パッケージ120の凹部121の−X軸側には載置部123が形成されており、載置部123の+Y’軸側の面には接続端子124が形成されている。圧電振動片130は載置部123に載置され、圧電振動片130の−Y’軸側の面に形成される引出電極132と接続端子124とが導電性接着剤141を介して電気的に接続されている。パッケージ120の+Y’軸側に接合されるリッド板110は、パッケージ120の接合面122に封止材142を介して接合されることによりパッケージ120の凹部121を密封している。また、パッケージ120の−Y’軸側の面及びキャスタレーション127bの一部には、一対の実装端子125が形成されている。接続端子124は、パッケージ120の凹部121内であり第1層120aの+Y’軸側の面に形成される接続電極124aを介してキャスタレーション127bに形成されている実装端子125に電気的に接続されている。
【0024】
図3(a)は、圧電振動片130の斜視図である。励振部134aの+Y’軸側及び−Y’軸側の主面には励振電極131が形成されている。+Y’軸側の面に形成されている励振電極131から引き出されている引出電極132は、−X軸方向に引き出され、−Z’軸側の側面を介して−Y’軸側の面にまで形成されている。また、圧電振動片130の−Y’軸側の面に形成されている励振電極131から引き出される引出電極132は、励振電極131から−X軸側に伸び、圧電振動片130の+Z’軸側の側面を介して+Y’軸側の面にまで形成されている。圧電振動片130に形成される励振電極131及び引出電極132は、例えば圧電振動片130にクロム(Cr)層が形成され、クロム層の上に金(Au)層が形成されることにより形成されている。また圧電振動片130には、−X軸側の側面に第1折取り残部135aが形成され、+X軸側の側面の+Z’軸側及び−Z’軸側の端に第2折取り残部135bが形成されている。第1折取り残部135a及び第2折取り残部135bは、後述される圧電振動片の製造方法において説明される第1連結部136a及び第2連結部136bが切断された跡である。
【0025】
図3(b)は、圧電振動片130の平面図である。圧電振動片130の−X軸側の側面の中央には第1折取り残部135aが形成されており、圧電振動片130の+X軸側の側面の+Z’軸側の端及び−Z’軸側の端には第2折取り残部135bが形成されている。第1折取り残部135a及び第2折取り残部135bは、それぞれZ’軸方向の幅が幅L1及び幅L2に形成されている。
【0026】
圧電振動片の振動周波数は、その外形の形状により変わる。圧電振動片130では、第1折取り残部135a及び第2折取り残部135bの大きさが小さく、圧電振動片130の平面形状は矩形の形状が保たれるように形成されている。そのため圧電振動片130は、圧電振動片の製品ごとの外形形状のばらつきが小さく、圧電振動片の外形形状の違いに起因する製品ごとの振動周波数のばらつきが小さい。
【0027】
<圧電振動片130の製造方法>
図4は、圧電振動片130の製造方法が示されたフローチャートである。以下に、図4のフローチャートを参照して圧電振動片130の製造方法について説明する。
【0028】
ステップS101では、圧電ウエハW130に、圧電振動片130、第1連結部136a、及び第2連結部136bが形成される。ステップS101は、圧電振動片130の外形が形成される外形形成工程である。まず、ステップS101では、圧電材料により形成された圧電ウエハW130が用意される。この圧電ウエハW130にフォトリソグラフィにより複数の圧電振動片130の外形が形成される。
【0029】
図5(a)は、圧電振動片130の外形が形成された圧電ウエハW130の平面図である。図5(a)には、圧電ウエハW130に複数の圧電振動片130の外形が形成されている状態が示されている。圧電振動片130の外形は、フォトリソグラフィによって圧電ウエハW130をY’軸方向に貫通する貫通溝137が形成されることにより形成される。貫通溝137は、第1連結部136a及び第2連結部136bを除いた圧電振動片130の周りに形成される。また、貫通溝137の外側には、圧電振動片130を第1連結部136a及び第2連結部136bを介して圧電ウエハW130に保持する枠部138が形成されている。圧電ウエハW130に形成される各圧電振動片130は、圧電振動片130の−X軸側の辺の中央に連結される1本の第1連結部136a、及び圧電振動片130の+X軸側の辺の+Z’軸側及び−Z’軸側の端にそれぞれ連結される2本の第2連結部136bにより枠部138に固定されている。
【0030】
ステップS102では、圧電振動片130に電極が形成される。ステップS102は、圧電振動片130に電極が形成される電極形成工程である。圧電振動片130に形成される電極は、マスク(不図示)を介して圧電ウエハW130にクロム(Cr)層が形成され、さらに、クロム層の表面に金(Au)層が形成されることにより形成される。
【0031】
図5(b)は、電極が形成された圧電ウエハW130の平面図である。ステップS102では、図5(a)に示された圧電振動片130の外形が形成された圧電ウエハW130にクロム層及び金層が蒸着等の方法により形成されることにより、励振電極131及び引出電極132等の電極が形成される。
【0032】
図6(a)は、圧電ウエハW130に形成された圧電振動片130の拡大図である。図6(a)は、図5(b)の点線で囲まれた領域161の拡大平面図である。圧電ウエハW130に形成されている圧電振動片130は、第1連結部136a及び第2連結部136bにより圧電ウエハW130に連結されている。また、各圧電振動片130の第1連結部136a及び第2連結部136b以外の周りには、貫通溝137が形成されている。第1連結部136aのZ’軸方向の幅は幅L1に形成されており、第2連結部136bのZ’軸方向の幅は幅L2に形成されている。圧電ウエハW130では、幅L1は幅L2よりも広く形成されている。
【0033】
図6(b)は、図6(a)のB−B断面図である。圧電ウエハW130は、Y’軸方向の厚さが厚さT1に形成されている。このとき、圧電振動片130では、励振部134aのY’軸方向の厚さが厚さT1に形成される。また、圧電振動片130の周辺部134bは厚さT1よりも薄い厚さT2に形成される。さらに、第1連結部136aは、圧電ウエハW130に厚さT1で連結され、圧電振動片130には厚さT2で連結されている。また、第2連結部136bは、圧電ウエハW130に厚さT1で連結され、圧電振動片130とは厚さT2で連結されている。
【0034】
ステップS103では、圧電ウエハW130が超音波洗浄される。ステップS103は、圧電ウエハW130の洗浄工程である。ステップS103では、圧電ウエハW130が純水などの液体に浸されて超音波が液体に与えられることにより洗浄される。圧電ウエハW130に形成される第2連結部136bは、このステップS103において切断されるように形成されてもよい。第2連結部136bは、幅L2の大きさを調整することにより、超音波による衝撃波を利用して切断されるように形成することができる。以下、ステップS103で第2連結部136bが切断される場合はステップS104に進み、第2連結部136bが切断されない場合はステップS105に進む。
【0035】
ステップS104では、第1連結部136aが折られ、圧電ウエハW130から圧電振動片130が切り離される。ステップS104は、圧電ウエハW130から圧電振動片130を取り外す切断工程である。ステップS104は、ステップS103の洗浄工程において、第2連結部136bが切断される場合に行われるステップである。
【0036】
図7(a)は、第2連結部136bが折られた圧電ウエハW130の部分平面図である。図7(a)は、図5(b)の領域161と同様の領域が示されている。図7(a)に示されている圧電ウエハW130では、ステップS103の洗浄工程において、第2連結部136bが超音波洗浄により切断されている。そのため、圧電振動片130の+X軸側の辺の+Z’軸側及び−Z’軸側の端には、第2折取り残部135bが形成されている。第2折取り残部135bのZ’軸方向の幅は、第2連結部136bのZ’軸方向の幅である幅L2に等しい。ステップS103において圧電ウエハW130の超音波洗浄が終了した後は、圧電振動片130を圧電ウエハW130から取り外すのみである。圧電ウエハW130に施す別工程がないため、圧電振動片130が圧電ウエハW130に第1連結部136aのみで連結されていても問題がない。
【0037】
ステップS105では、第1連結部136a及び第2連結部136bが折られ、圧電ウエハW130から圧電振動片130が切り離される。ステップS105は、ステップS103において圧電ウエハW130が超音波洗浄されたときに、超音波洗浄の力が弱かったり、第2連結部136bがエッチングで太く形成されてしまったりして、第2連結部136bが切断されない場合に行われるステップである。この場合、第2連結部136bはステップS105において切断される。
【0038】
図7(b)は、第1連結部136a及び第2連結部136bが折られた圧電ウエハW130の部分平面図である。図7(b)は、ステップS104及びステップS105の後の状態が示されている。圧電振動片130の−X軸側の辺の中央には、第1連結部136aが折られることにより第1折取り残部135aが形成される。第1折取り残部135aのZ’軸方向の幅は、第1連結部136aのZ’軸方向の幅である幅L1に等しい。
【0039】
圧電デバイス100の製造方法は、図4に示された製造方法により製造された圧電振動片130が用意され、パッケージ120(図1参照)が用意され、リッド板110(図1参照)が用意され、パッケージ120の凹部121に圧電振動片130が載置され、凹部121をリッド板110により密封することにより製造される。
【0040】
圧電振動片130は、1本の第1連結部136aと2本の第2連結部136bとにより圧電ウエハW130の枠部138に連結されていることにより、圧電振動片130の製造過程において、圧電ウエハW130から落下することを防いでいる。また、圧電振動片130の製造工程では、第2連結部136bが第1連結部136aよりも細く形成され、第2連結部136bが第1連結部136aよりも折れやすく形成されることにより、圧電振動片130を圧電ウエハW130から切り離すことが容易である。これは例えば、ステップS104においては第1連結部136aを切断するのみなので第1連結部136aの切断が容易であり、ステップS105においても第2連結部136bの切断が容易であるため第1連結部136aの切断も容易になる。
【0041】
また圧電振動片は矩形形状の平面を有するように作製されるが、ステップS101で行われるフォトリソグラフィにおいて、圧電振動片の角部が面取りされるように余分に削れてしまい圧電振動片の形状が矩形形状とは異なる形状になる場合がある。圧電振動片130では、圧電振動片130の角部に第2連結部136bが連結されているため、ステップS101で行われるフォトリソグラフィにおいて圧電振動片130の角部が余分に削れてしまうことがなく、圧電振動片130の形状が、矩形形状とは異なる形状にならない。そのため圧電振動片130では、製品ごとに圧電振動片130の形状が異なることがなく、製品ごとに振動周波数が大きく変わることがないため好ましい。
【0042】
(第2実施形態)
圧電振動片、第1連結部及び第2連結部には様々な変形例が考えられる。以下に、圧電振動片130、第1連結部136a、及び第2連結部136bの変形例を説明する。また、以下の説明では、圧電振動片130及び圧電ウエハW130と同様の部分を同じ記号を用いて示し、その説明を省略する。また、以下の実施例では、圧電ウエハに第1連結部及び第2連結部を介して連結されている圧電振動片が説明される。
【0043】
図8(a)は、圧電振動片130が第1連結部236a及び第2連結部236bにより連結された圧電ウエハW230の部分平面図である。図8(a)には、図5(b)の領域161と同様の領域が示されている。図8(a)には、圧電振動片130が第1連結部236a及び第2連結部236bにより圧電ウエハW230に連結されている状態が示されている。第1連結部236aは、第1連結部236aと圧電ウエハW230とがZ’軸方向の幅が幅L1で連結されており、第1連結部236aと圧電振動片130とがZ’軸方向の幅が幅L3で連結されている。また、第2連結部236bは、第2連結部236bと圧電ウエハとがZ’軸方向の幅が幅L2で連結されており、第2連結部236bと圧電振動片130とがZ’軸方向の幅が幅L4で連結されている。幅L1は幅L3よりも大きく、幅L2は幅L4よりも大きく、幅L3は幅L4よりも大きく形成されている。
【0044】
図8(a)に示された圧電ウエハW230では、第1連結部236a及び第2連結部236bが、圧電ウエハW230に連結されている幅よりも圧電振動片130に連結されている幅の方が狭く形成されている。そのため、第1連結部236a及び第2連結部236bでは、この狭く形成された箇所に応力が集中するため、第1連結部236a及び第2連結部236aの切断される箇所を特定させることができ、圧電振動片130に残る第1折取り残部135a及び第2折取り残部135bが小さくなるように形成することができる。
【0045】
図8(b)は、圧電振動片130が第1連結部136a及び第2連結部336bにより連結された圧電ウエハW330の部分平面図である。図8(b)では、圧電振動片130が、第1連結部136a及び第2連結部336bにより圧電ウエハW330に連結されている状態が示されている。第2連結部336bは、圧電振動片130の+X軸側の+Z’軸側及び−Z’軸側の角部を含み、Z’軸方向に伸びて圧電ウエハW330と連結されるように形成されている。また、第2連結部336bのX軸方向の幅は、第1連結部136aの幅L1よりも細い幅L5に形成されている。図8(b)に示されるように、圧電ウエハに形成される第2連結部は、圧電振動片の長辺に連結されていてもよい。
【0046】
図9(a)は、圧電振動片130が第1連結部436a及び第2連結部436bにより連結される圧電ウエハW430の部分平面図である。図9(a)では、圧電振動片130が、第1連結部436a及び第2連結部436bにより圧電ウエハW430に連結されている。第1連結部436aは圧電振動片130の−X軸側の辺の中央に幅L1で連結されており、第2連結部436bは圧電振動片130の+X軸側の+Z’軸側及び−Z’軸側の端に幅L2で連結されている。
【0047】
図9(b)は、圧電ウエハW430の部分断面図である。図9(b)は、図9(a)のC−C断面図である。圧電振動片130は圧電ウエハW430に第1連結部436a及び第2連結部436bを介して連結されている。第1連結部436a及び第2連結部436bは、圧電振動片130に厚さT3で連結され、圧電ウエハW430に厚さT1で連結されている。厚さT1及び周辺部134bの厚さT2は、厚さT3よりも厚い。
【0048】
圧電ウエハW430に形成される第1連結部436a及び第2連結部436bは、圧電振動片130に厚さT3で連結されている。そのため、圧電ウエハW430に形成される第1連結部436a及び第2連結部436bの各連結部の厚さが薄い箇所に応力が集中し、第1連結部436a及び第2連結部436bが切断される箇所を特定することができるため、圧電振動片130に残る第1折取り残部及び第2折取り残部を小さく形成することができる。
【0049】
図10(a)は、圧電振動片130が第1連結部136a及び第2連結部536bにより連結される圧電ウエハW530の部分平面図である。第2連結部536bは圧電振動片130の短辺に、四隅の各角部を含むように連結されている。第2連結部536bのZ’軸方向の幅は、第1連結部136aの幅L1よりも狭い幅L6に形成されている。
【0050】
圧電振動片は、図4のステップS101に示された外形形成工程において、圧電振動片の角部が面取りされるように過剰にエッチングされる場合がある。圧電ウエハW530に形成される圧電振動片130では、圧電振動片130の四隅の角部にそれぞれ第2連結部536bが形成されていることにより圧電振動片130の角部が面取りされることがなく、圧電振動片130の形状を矩形形状に保つことができるため、圧電振動片130の振動周波数の変化を防ぐことができる。
【0051】
図10(b)は、圧電振動片230が第1連結部136a及び第2連結部136bにより連結された圧電ウエハW630の部分平面図である。圧電振動片230は、励振部134a及び周辺部134bを有している。励振部134aには励振電極131が形成されており、+Y’軸側に形成されている励振電極131に接続されている引出電極632は、励振電極131から−X軸側の−Z’軸側の角部に伸び、圧電振動片230の−Z’軸側の側面を介して−Y’軸側の面に引き出されている。また、−Y’軸側に形成されている励振電極131に接続されている引出電極632は、励振電極131から+X軸側の+Z’軸側に伸び、圧電振動片230の+Z’軸側の側面を介して+Y’軸側の面に引き出されている。図10(b)に示されるように、第1連結部及び第2連結部が連結される圧電振動片は、引出電極が+X軸側及び−X軸側に引き出されて形成されている圧電振動片であってもよい。
【0052】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【0053】
また、上記の実施形態では圧電振動片にATカットの水晶振動片である場合を示したが、同じように厚みすべりモードで振動するBTカット、又は音叉型水晶振動片などであっても同様に適用できる。さらに圧電振動片は水晶材のみならず、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムあるいは圧電セラミックを含む圧電材料に基本的に適用できる。
【符号の説明】
【0054】
100 … 圧電デバイス
110 … リッド板
120 … パッケージ
120a … 第1層
120b … 第2層
120c … 第3層
121 … 凹部
122 … 接合面
123 … 載置部
124 … 接続端子
125 … 実装端子
127a、127b … キャスタレーション
130 … 圧電振動片
131 … 励振電極
132、632 … 引出電極
134a … 励振部
134b … 周辺部
135a … 第1折取り残部
135b … 第2折取り残部
136a、236a、436a … 第1連結部
136b、236b、336b、436b、536b … 第2連結部
141 … 導電性接着剤
142 … 封止材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料からなる圧電ウエハからフォトリソグラフィにより矩形の圧電振動片を複数形成する圧電振動片の製造方法であって、
前記圧電ウエハからフォトリソグラフィにより前記圧電振動片の矩形の外形を形成する際に、前記矩形の1つの短辺の中央と前記圧電ウエハとをつなぐ第1連結部と、前記矩形の角部と前記圧電ウエハとをつなぐ前記第1連結部より細い第2連結部とを形成する外形形成工程と、
前記圧電振動片の両主面に一対の励振電極とこれら一対の励振電極からそれぞれ引き出される一対の引出電極とを形成する電極形成工程と、
前記圧電ウエハを液体で洗浄する洗浄工程と、
少なくとも前記第1連結部を折り、前記圧電ウエハから前記圧電振動片を取り外す切断工程と、
を備える圧電振動片の製造方法。
【請求項2】
前記洗浄工程は前記液体に超音波を与えることにより前記圧電ウエハを洗浄する工程であり、前記第2連結部は前記超音波による衝撃波により切断される請求項1に記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項3】
前記外形形成工程は、前記圧電振動片と前記圧電ウエハとをつなぐ前記第1連結部及び前記第2連結部の一部の厚みを薄く形成する請求項1又は請求項2に記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項4】
前記外形形成工程は、前記矩形の4つの角部又は前記短辺と向かい合う短辺の2つの角部に前記第2連結部を形成し、
前記電極形成工程は、前記引出電極を前記第1連結部の両側まで形成する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項5】
前記外形形成工程は、前記矩形の4つの角部又は前記短辺と向かい合う短辺の2つの角部に前記第2連結部を形成し、
前記電極形成工程は、前記引出電極を向かい合う短辺のそれぞれに形成する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項6】
圧電デバイスのパッケージ内に収納される矩形の圧電振動片であって、
前記圧電振動片は、
その両主面に一対の励振電極とこれら一対の励振電極から短辺までそれぞれ引き出される一対の引出電極とを有し、
前記矩形の1つの短辺の中央で且つ前記両主面を結ぶ側面において第1幅の第1折取り残部を有し、
前記矩形の角部で且つ前記両主面を結ぶ側面において前記第1幅よりも狭い第2折取り残部を有し、前記第2折取り残部により前記角部は欠けがない圧電振動片。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の圧電振動片の製造方法により製造された圧電振動片を用意する工程と、
内側に凹んだ凹部を有するパッケージを用意する工程と、
リッド板を用意する工程と、
前記圧電振動片を前記パッケージ内に載置し、前記パッケージの前記凹部を前記リッド板により密封する工程と、
を備える圧電デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の圧電振動片と、
内側に凹み、前記圧電振動片が載置される凹部を有するパッケージと、
前記凹部を密封するリッド板と、
を備えた圧電デバイス。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−27009(P2013−27009A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163041(P2011−163041)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】