説明

圧電発振器及びその製造方法

【課題】薄型化に適した構造の圧電発振器及び取り扱いが簡便で且つ生産性にも優れた圧電発振器の製造方法を提供することにある。
【解決手段】圧電振動素子と、この圧電振動素子を搭載する為の圧電振動素子搭載用電極パッドを設けてなる少なくとも発振回路を内蔵した集積回路素子と、この集積回路素子を搭載してなる配線基板と、圧電振動素子及び集積回路素子を気密封止するための概略箱形状の蓋体とで構成される圧電発振器において、上記集積回路素子と配線基板との間に空間部が形成されており、この空間部に面する集積回路素子表面に圧電振動素子搭載用電極パッドが形成されており、この圧電振動素子搭載用電極パッドに圧電振動素子が搭載されている圧電発振器及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用通信機器等の電子機器に用いられる圧電発振器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前より、携帯用通信機器等の電子機器に組み込まれるタイミングデバイスとして温度補償機能を内蔵したような水晶発振器(TCXO)等の圧電発振器が幅広く用いられている。
【0003】
かかる従来の圧電発振器の概略としては、例えば図5に示すように、内部に圧電振動素子としての水晶振動素子54が収容されている第1の容器体51を、外側底面に複数個の外部接続用電極端子55を設け、内部に水晶振動素子53からの発振出力を各種制御するための発振回路や温度補償回路等が内蔵されている集積回路素子52を収容した第2の容器体53上に重ね合わせる形態で配置し、第1の容器体51の外側底面に形成された第2の容器体接続用電極端子56と、第2の容器体53の側壁部頂面に形成された第1の容器体接続用電極端子57とを、半田等の導電性接合材を介して導通固着した構造のものが知られている。
【0004】
このような構造の圧電発振器の組み立て工程中おいて、第1の容器体51の開口部は、金属製の蓋体58を従来周知のシーム溶接(抵抗溶接)等で第1の容器体51の側壁部頂面に接合することにより塞がれ、これによって第1の容器体51内に搭載された水晶振動素子54が気密に封止される。
【0005】
また、このような従来の圧電発振器の製造方法としては、通常、第1の容器体51と第2の容器体53のみを、複数個の容器体形成領域をマトリックス状に配列形成した容器体ウエハから、容器体形成領域外周に沿って切断して同時に個々の容器体を複数得る手法によって製作し、分割切断後に得られた個々の第1の容器体51及び第2の容器体53に、それぞれ水晶振動素子54や集積回路素子52を個別に搭載し、各種工程を経た後、両者を接合して圧電発振器を組み立てる方法を用いていた。
【0006】
上述したような圧電発振器、及び圧電発振器の製造方法については、下記のような先行技術文献に開示がある。
【特許文献1】特許第2974622号公報
【特許文献2】特開2005−94241号公報
【0007】
尚、出願人は上記した先行技術文献の情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の圧電発振器のような構造では、圧電振動素子が搭載されている第1の容器体51と、集積回路素子52が搭載されている第2の容器体53とを、縦方向に積み上げて組み立てたものであり、圧電発振器全体としての厚み寸法が増加してしまう虞がある。したがって、圧電発振器の実装面積を小さく抑えたまま、圧電発振器を低背化(薄型化)する要求に対応させることが困難となる可能性があるという欠点を有していた。
【0009】
また、上述した圧電発振器の製造方法では、第2の容器体を個片に分割切断した後で、集積回路素子を内部に搭載する工程や、第1の容器体を第2の容器体上に搭載する工程において、その工程が完了するまでの間、第2の容器体を個々にキャリア等で保持しておく必要があり、圧電発振器組み立て作業が煩雑である上に、保持キャリア等の製造設備が別途必要になり、これによっても圧電発振器の生産性が低下する虞があるという欠点を有していた。
【0010】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、薄型化に適した構造の圧電発振器及び取り扱いが簡便で且つ生産性にも優れたその圧電発振器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る圧電発振器は、圧電振動素子と、この圧電振動素子を搭載する為の圧電振動素子搭載用電極パッドを設けてなる少なくとも発振回路を内蔵した集積回路素子と、この集積回路素子を搭載してなる配線基板と、圧電振動素子及び集積回路素子を気密封止するための概略箱形状の蓋体とで構成される圧電発振器において、
上記集積回路素子と配線基板との間に空間部が形成されており、この空間部に面する集積回路素子表面に圧電振動素子搭載用電極パッドが形成されており、この圧電振動素子搭載用電極パッドに圧電振動素子が搭載されていることを特徴とするものである。
【0012】
又、本発明に係る圧電発振器の製造方法は、
一方の主面に基板接続用電極パッドと圧電振動素子搭載用電極パッドを形成した複数の集積回路素子形成領域をマトリックス状に連接形成してなる集積回路素子ウエハ上で、各々の集積回路素子形成領域の圧電振動素子搭載用電極パッドに圧電振動素子を搭載し、且つ基板接続用電極パッド上に導電性接合材を形成する工程Aと、
圧電振動素子が搭載された集積回路素子ウエハを個々の集積回路素子形成領域外周に沿って切断し、圧電振動素子を搭載した個々の集積回路素子を形成する工程Bと、
複数の配線基板領域を有するマスター基板上に、圧電振動素子が搭載されている集積回路素子を、集積回路素子の他方の主面を保持しつつ圧電振動素子をマスター基板側に向けた形態で各配線基板領域内に個々に配置し、圧電振動素子表面をマスター基板表面及び集積回路素子表面に接触させない形態で導電性接合材により個々の集積回路素子とマスター基板とを固着接続する工程Cと、
概略箱形状の蓋体を、マスター基板に搭載した圧電振動素子が搭載されている個々の該集積回路素子を覆う形態で被せ、集積回路素子が内蔵された蓋体内を気密に封止する工程Dと、
配線基板領域外周に沿ってマスター基板を切断して、複数個の圧電発振器を個々に得る工程Eとを具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧電発振器によれば、集積回路素子と配線基板との間に導電性接合材により所定の間隔の空間部が形成されており、この空間部に面する集積回路素子表面に圧電振動素子搭載用電極パッドが形成されており、この圧電振動素子搭載用電極パッドに圧電振動素子が搭載されている形態によって、従来例に比し圧電発振器全体構造を著しく薄く形成することが可能となり、圧電発振器の薄型化に供することが可能となる。
【0014】
また、圧電振動素子が集積回路素子の表面に実装されているので、圧電振動素子に形成されている励振用電極が集積回路素子の圧電振動素子接続用電極パッドに直接接続されるようになるため、集積回路素子と圧電振動素子とを別の容器体に搭載する場合に比し、圧電振動素子と集積回路素子内電子回路とを接続する配線の長さが短縮されて配線抵抗に起因した容量の発生を有効に防止することができ、設計値に近い発振特性が得られるようになる。
【0015】
更に本発明の圧電デバイスの製造方法によれば、マスター基板が圧電発振器製造工程中キャリア部材として機能するため、別途キャリア部材を用意し、キャリア部材にマスター基板を分割して得た個々の配線基板を搭載するといった煩雑な作業が一切不要となり、圧電デバイスの生産性を飛躍的に向上させることができる。
【0016】
又、圧電振動素子及び導電性接合材を一方の主面上に搭載或いは形成した個々の集積回路素子をマスター基板の各配線基板領域内の所定の位置に配置する際に、集積回路素子の他方の主面をチャッキング(例えば真空吸着盤を用いた真空チャッキング)することで配置位置まで搬送できるので、圧電振動素子を搭載した集積回路素子の側面を挟み込む形態での搬送方法を用いずにすみ、集積回路素子に不要且つ有害な応力をかけることがなくなるため、集積回路素子の不具合による圧電発振器の不良品発生を低減できる。
【0017】
以上のようなことから、本発明の圧電発振器及びその製造方法は、圧電発振器の実装面積を小さく抑えたまま、薄型で且つ特性の良好な圧電発振器を提供し、更に生産性が良く製造歩留まりが良い圧電発振器の製造方法を提供できる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。又、各図では、説明を明りょうにするため部品或いは構造体の一部を図示せず、更に図示した寸法も一部誇張している。特に各図面の厚み寸法は著しく誇張して図示している。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る圧電発振器を表面実装型の水晶発振器に適用した例を示す分解斜視図、図2は、図1の記載の集積回路素子2を配線基板対向主面側から示した外観斜視図である。又、図3は、図1記載の水晶発振器を組み立てた場合の概略断面図である。これらの図に示す水晶発振器は、大略的に、配線基板1と、集積回路素子2と、圧電振動素子としての水晶振動素子3と、蓋体4と、導電性接合材5とで構成されている。
【0020】
主面外形が矩形であり且つ平板形状の配線基板1の他方の主面(外部実装基板に対向する面)には複数個の外部接続用電極端子6が設けられている。本実施形態においては配線基板1の他方の主面四隅にそれぞれ形成される4個の外部接続用電極端子6が設けられており、それぞれ電源電圧端子、グランド端子、発振出力端子、発振制御端子として機能する。これらの外部接続用電極端子6は、水晶発振器を外部実装基板(マザーボード)等の外部電気回路に搭載する際、半田付け等によって外部電気回路の回路配線と電気的に接続される。
【0021】
なお、配線基板1の主構造材は、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料や樹脂等の有機材料から形成されている。
【0022】
また、配線基板1の一方の主面には、バンプによる導電性接合材5を介して所望の間隔を有する空間部14を形成した形態で集積回路素子2が配置されており、水晶振動素子3は集積回路素子2の配線基板対向主面に実装され空間部14内に位置するように配置されている。集積回路素子2の配線基板対向主面に設けられる圧電振動素子搭載用電極パッド7に水晶振動素子3に形成された励振用電極が導電性接着剤を介して電気的に接続されている。更に、配線基板1の一方の主面の全外周縁部には封止用導体パターン9が被着形成されている。
【0023】
尚、配線基板1は、アルミナセラミックスから成る場合、例えば、アルミナセラミックスの原料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合した上、これを従来周知のドクターブレード法等で所定形状に成形することによりセラミックグリーンシートを得、その表面等に接続パッドや封止用導体パターンとなる導体ペーストを所定パターンに塗布し、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することによって製作されている。
【0024】
配線基板1の一方の主面上には、フリップチップ型の集積回路素子2が搭載されている。この集積回路素子2の配線基板対向主面には、水晶振動素子3が実装されており、かかる水晶振動素子3は、人工水晶体より所定のカットアングルで切り出し外形加工した矩形平板状の水晶片の両主面に一対の励振用電極を被着形成してなり、外部からの変動電圧が一対の励振用電極を介して水晶片に印加されると、所定の振動モード及び周波数で振動を起こす。尚、この水晶振動素子3は、一対の励振用電極を集積回路素子2の配線基板対向主面に設けた対応する圧電振動素子搭載用電極パッド7に導電性接着剤を介して電気的に接続させることにより、集積回路素子2の配線基板対向主面上に実装され、この状態で集積回路基板2と配線基板1の間に形成された空間部14内に配置される。
【0025】
このように、水晶振動素子3を発振用集積回路素子2の配線基板対向主面上に実装させておけば、水晶振動素子3の励振用電極が集積回路素子2の圧電振動素子搭載用電極パッド7に直接接続されることになるため、集積回路素子2と水晶振動素子3を別の容器体内に搭載する場合の圧電発振器に比し、水晶振動素子3と集積回路素子2内に内蔵されている発振回路等の電子回路とを電気的に接続する配線の長さは著しく短縮され、配線抵抗に起因した容量の発生を有効に防止することができる。これにより、設計値理論値に近い発振特性が得られる。
【0026】
集積回路素子2内には、単結晶シリコン等から成る基体の下面に、周囲の温度状態を検知する感温素子(サーミスタ)、水晶振動素子3の温度特性を補償する温度補償データを格納するとともに該温度補償データに基づいて水晶振動素子3の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路や、この温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路等の電子回路が設けられており、前述した発振回路で生成された発振出力は、外部実装基板側に出力された後、例えば、他の電子部品や電子機器のクロック信号やタイミング信号等の基準信号として利用されることとなる。
【0027】
尚、集積回路素子2は、単結晶シリコンのインゴットを所定厚みにスライスしてシリコンウエハを得、その一主面に従来周知の半導体製造技術を採用し、発振回路等の電子回路や各種電極パッド等を、マトリックス状に配列形成した複数の集積回路素子形成領域毎に製作された一体の集積回路素子ウエハ10を、各集積回路素子形成領域外周に沿って切断分割することによって得られる。また、集積回路素子2に形成された基板接続用電極パッド11にはバンプ等の導電性接合材5が配され、この導電性接合材5によって、集積回路素子2の配線基板対向主面に形成された基板接続用電極パッド11と配線基板1の一方の主面に形成された集積回路素子接続用電極パッド12とが電気的且つ機械的に接続している。
【0028】
導電性接合材5は、配線基板1と集積回路素子2を機械的並びに電気的に接続する為に用いるのと同時に、配線基板1と集積回路素子2との間に、集積回路素子2に搭載されている水晶振動素子3が、配線基板1の表面及び集積回路素子2表面に接触することのない間隔の空間部14を維持する機能を有する。また、導電性接合材5はバンプの他にロウ材並びに金属部材でも構わない。
【0029】
このように、集積回路素子2と配線基板1との間に形成した空間部14に水晶振動素子3を配置する構成することで、従来例に比し圧電(水晶)発振器全体を薄く形成することができ、圧電(水晶)発振器の薄型化に供することが可能となる。
【0030】
蓋体4は、例えば、42アロイやコバール,リン青銅等の金属から成る、厚み60μm〜100μmの金属板を、従来周知の板金加工にて開口部周囲につば状の配線基板接合部を有する概略箱形状に加工することによって製作される。蓋体4は、配線基板1に配置固着した水晶振動素子5を搭載した集積回路素子2を内部に収容して気密封止するためのものであり、更に、蓋体4は蓋体4の配線基板接合部表面に形成した封止部材13及び封止用導体パターン9を介して配線基板1の他方の主面に形成させた外部接続用電極端子6のうちのグランド端子に電気的に接続される。これにより、水晶発振器の使用時には蓋体4はグランド電位に保持されることとなり、水晶振動素子3が蓋体4の電磁シールド効果によって外部からの不要な電気的作用、例えばノイズ等から良好に保護される。尚、封止部材13としては、例えば、AuやAu−Sn合金、半田等の金属から成るロウ材が好適に用いられる。
【実施例2】
【0031】
次に、上述した水晶発振器(圧電発振器)の製造方法について、各工程を図4の(a)乃至(e)を用いて説明する。
【0032】
(工程A)
初めに、図4(a)に示すような、複数個の集積回路素子形成領域をマトリックス状に配列形成し、その個々の集積回路素子形成領域の一方の主面上に、圧電振動素子搭載用電極パッド7と基板接続用電極パッド11を形成した一体の集積回路素子ウエハ10を準備する。集積回路素子ウエハ10は、単結晶シリコンのインゴットを所定厚みにスライスしてシリコンウエハを得、その一主面に従来周知の半導体製造技術を採用し、発振回路等の電子回路や圧電振動素子搭載用電極パッド7や基板接続用電極パッド11を形成することによって製作される。
【0033】
そして、集積回路素子ウエハ10の各集積回路素子形成領域の一方の主面上に形成された圧電振動素子搭載用電極パッド7上に水晶振動素子3が搭載され、水晶振動素子3の励振用電極(図示せず)と集積回路素子ウエハ10上面の圧電振動素子搭載用電極パッド7とが導電性接着剤を介して電気的且つ機械的に接続される。又、各基板接続用電極パッド11上にはバンプによる導電性接合材5を形成する。尚、本実施形態では、マトリクス状に配された個々の集積回路素子形成領域の間に所定の捨代領域を設けている。
【0034】
(工程B)
次に図4(b)が示すように、各集積回路素子形成領域に水晶振動素子3が搭載された集積回路素子ウエハ10を、集積回路素子形成領域外周に沿ってダイサーなどで切断し、捨代領域を分離し、水晶振動素子3及び導電性接合材5を表面に搭載した複数個の集積回路素子2を得る。
【0035】
(工程C)
次に、図4(c)に示すように、複数個の配線基板形成領域をマトリックス状に配列形成し、その個々の配線基板形成領域の一方の主面上に集積回路素子搭載用電極パッド12及び封止用導体パターン9と、他方の主面上に外部接続用電極端子6を形成した一体のマスター基板15を準備し、水晶振動素子3が搭載されている集積回路素子2を、集積回路素子2の他方の主面を保持しつつ、水晶振動素子3をマスター基板15側に向けた形態で各配線基板領域内に個々に配置し、集積回路素子2と配線基板形成領域との間に空間部14を形成し水晶振動素子3表面をマスター基板15表面及び集積回路素子2表面に接触させない形態で導電性接合材5により個々の集積回路素子2とマスター基板15とを固着接続する。尚、本実施形態では、マトリクス状に配された個々の配線基板形成領域の間に所定の捨代領域を設けている。
【0036】
マスター基板15は、上述した配線基板1と同じ材料、即ち、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料からなる平板状基板であり、例えば、アルミナセラミックス等から成るセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートの表面等に接続用電極パッドや外部接続用電極端子6、封止用導体パターン9等となる導体ペーストを所定パターンに印刷・塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することによって製作される。
【0037】
尚、本実施例では、水晶振動素子3及び導電性接合材5を一方の主面上に搭載或いは形成した個々の集積回路素子2は、集積回路素子2の他方の主面を、真空吸着盤16を用いた真空チャッキングにより保持され、マスター基板15の各配線基板領域内の所定の位置まで搬送され配置する。この方法により水晶振動素子3を搭載した集積回路素子2の側面を挟み込む形態での搬送方法を用いずにすみ、集積回路素子2に不要且つ有害な応力をかけることがなくなるため、集積回路素子2の不具合による圧電発振器の不良品発生を低減できる。
【0038】
(工程D)
図4(d)が示すように、開口部周囲につば状の配線基板接合部を有する概略箱形状の蓋体4を、蓋体4の配線基板接合部に形成した封止部材13とマスター基板15の各配線基板形成領域に形成した封止用導電パターン9を合わせつつ、蓋体4の箱状部分を各配線基板形成領域に載置した水晶振動素子3を搭載した集積回路素子2に被せ、封止部材13と封止用導電パターン9を接合することにより、蓋体4内の水晶振動素子3と集積回路素子2を気密封止する。
【0039】
蓋体4は、例えば、42アロイやコバール,リン青銅等の金属から成る、厚み60μm〜100μmの金属板を従来周知の板金加工にて上述した形状に加工することによって製作される。又、蓋体4の配線基板接合部には、ニッケル(Ni)層、金錫(Au−Sn)層とからなる封止部材13を形成する。かかる封止部材13は蓋体4をマスター基板15の各配線基板形成領域に対して接合するためのろう材層として機能するものであり、金錫の組成比率は、例えば、金80%、錫20%に設定され、その厚みは、例えば、10μm〜30μmに設定される。
【0040】
又、個々の蓋体4と配線基板形成領域との具体的な接合方法は、蓋体4を、蓋体4の配線基板接合部に形成した封止部材13とマスター基板15の各配線基板形成領域に形成した封止用導電パターン9を合わせつつ、蓋体4の箱状部分を各配線基板形成領域に載置した水晶振動素子3を搭載した集積回路素子2に被せ後、これを300℃〜350℃の温度に保たれた加熱炉の中に入れ、封止部材13を高温で加熱・溶融させ封止用導電パターン9と接合することによって、個々の蓋体4がマスター基板15に接合される。その後、マスター基板15と蓋体4は徐々に室温まで冷却される。
【0041】
尚、その他の蓋体と配線基板形成領域との接合方法として、光ビームを蓋体4の配線基板接合部に照射し、前記封止部材13を溶融させることによって、蓋体4をマスター基板の各配線基板形成領域に封止を行う方法がある。このとき、複数個同時に封止をすることできる。
【0042】
上述のような水晶発振器は、まず水晶振動素子3を発振用集積回路素子2の下面に搭載し、次に発振用集積回路素子2を下面に実装した水晶振動素子3が収容空間を設けるようにして配線基板1上に導電性部材5を介して載置させ、しかる後、これをNガスやArガス等の不活性ガス雰囲気中または所定の真空度に保たれた真空中で熱処理し、封止部材13で蓋体4を配線基板1の上面に接合することにより組み立てられる。
【0043】
尚、上述した封止工程は真空中又は不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。水晶振動素子3が収容される蓋体4内空間内を、不活性ガスを充填しておくことで水晶振動素子3の電気的特性を安定させることが可能となる。また、真空内で封止を行った場合には、水晶振動素子3の電気的特性を安定させることができるとともに、水晶振動素子3のクリスタルインピーダンスを低く抑えることができる。
【0044】
又、導電性接合材5や封止部材13として半田を用いる場合には、フラックス等の汚染物質を用いることなく酸化膜を良好に除去するために、従来周知の水素還元方式を用いることが好ましい。
【0045】
(工程E)
そして、図4(e)に示すように、個々の配線基板形成領域に、水晶振動素子3が搭載された集積回路素子2気密封止したマスター基板15を、個々の配線基板形成領域外周に沿ってダイサーなどで切断し、捨代領域を分離し、水晶振動素子3を搭載した集積回路素子2を蓋体4により気密封止した複数個の圧電発振器を同時に得る。
【0046】
尚、温度補償機能を有する圧電(水晶)発振器の場合は、上記工程のあとに、配線基板1の外表面に設けられる書込制御端子(図示せず)に温度補償データ書込装置のプローブ針を当て、予め測定しておいた水晶振動素子3の温度特性に応じた温度補償データを書き込むことによって発振用集積回路素子2のメモリ内に温度補償データを格納した後、外部実装基板等の外部配線基板上に半田付け等によって搭載され、その温度状態に応じて集積回路素子2の温度補償回路で発振出力を補正しながら、水晶振動素子3の共振周波数に応じた所定の発振信号を出力する。
【0047】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば、上記実施例においては、発振器内に搭載される圧電振動素子の圧電材料として水晶を用いた水晶発振器を例示したが、圧電効果を奏するものであれば、水晶の他に、タンタル酸リチウム、ニオウブ酸リチウムや圧電セラミック等の他の圧電材を圧電振動素子の主材として使用しても構わない。
【0048】
又、上述した実施形態においては、圧電振動素子3として水晶振動素子を用いた表面実装型の水晶発振器を例にとって説明したが、これに代えて、振動素子として弾性表面波振動素子等の他の振動素子を用いた場合にも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る圧電発振器を、圧電発振器の一つである水晶発振器に例を示した概略分解斜視図である。
【図2】図2は、図1の記載の集積回路素子2を配線基板対向主面側から示した外観斜視図である。
【図3】図3は、図1記載の水晶発振器を組み立てた場合の概略断面図である。
【図4】図4(a)乃至(e)は、本発明の製造方法における各工程を説明するために、各工程における本発明構造体の概略形態を断面図で示した説明図である。
【図5】図5は、従来の圧電発振器の一形態を示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・配線基板
2・・・集積回路素子
3・・・圧電振動素子(水晶振動素子)
4・・・蓋体
5・・・導電性接合材
6・・・外部接続用電極端子
7・・・圧電振動素子搭載用電極パッド
9・・・封止用導体パターン
10・・・集積回路素子ウエハ
11・・・基板接続用電極パッド
12・・・集積回路素子接続用電極パッド
13・・・封止部材
14・・・空間部
15・・・マスター基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と、
該圧電振動素子を搭載する為の圧電振動素子搭載用電極パッドを設けてなる少なくとも発振回路を内蔵した集積回路素子と、
該集積回路素子を搭載してなる配線基板と、
該圧電振動素子及び該集積回路素子を気密封止してなる為の概略箱形状の蓋体とで構成される圧電発振器において、
該集積回路素子と該配線基板との間に空間部が形成されており、該空間部に面する該集積回路素子表面に該圧電振動素子搭載用電極パッドが形成されており、該圧電振動素子搭載用電極パッドに該圧電振動素子が搭載されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
一方の主面に基板接続用電極パッドと圧電振動素子搭載用電極パッドを形成した複数の集積回路素子形成領域をマトリックス状に連接形成してなる集積回路素子ウエハ上で、各々の該集積回路素子形成領域の該圧電振動素子搭載用電極パッドに圧電振動素子を搭載し、且つ該基板接続用電極パッド上に導電性接合材を形成する工程Aと、
該圧電振動素子が搭載された集積回路素子ウエハを個々の集積回路素子形成領域外周に沿って切断し、圧電振動素子を搭載した個々の集積回路素子を形成する工程Bと、
複数の配線基板領域を有するマスター基板上に、該圧電振動素子が搭載されている該集積回路素子を、該集積回路素子の他方の主面を保持しつつ該圧電振動素子をマスター基板側に向けた形態で各配線基板領域内に個々に配置し、該圧電振動素子表面を該マスター基板表面及び集積回路素子表面に接触させない形態で該導電性接合材により個々の集積回路素子とマスター基板とを固着接続する工程Cと、
概略箱形状の蓋体を、該マスター基板に搭載した該圧電振動素子が搭載されている個々の該集積回路素子を覆う形態で被せ、該集積回路素子が内蔵された蓋体内を気密に封止する工程Dと、
該配線基板領域外周に沿って該マスター基板を切断して、複数個の圧電発振器を個々に得る工程Eと
を具備することを特徴とする圧電発振器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−180701(P2007−180701A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374495(P2005−374495)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】