圧電発振器
【課題】有風などの瞬間的な環境温度変化によっても安定して所望の周波数で発振できるようにした圧電発振器を提供すること。
【解決手段】圧電振動片14と、該圧電振動片を発振させる発振回路と温度補償回路とを備えたICチップ15と、前記圧電振動片および前記ICチップを収容するパッケージ23を備える圧電発振器本体11と該圧電発振器を覆うカバー部材20とを有しており、前記カバー部材が、前記圧電発振器本体に当たる風を遮蔽する箇所に設定されている。
【解決手段】圧電振動片14と、該圧電振動片を発振させる発振回路と温度補償回路とを備えたICチップ15と、前記圧電振動片および前記ICチップを収容するパッケージ23を備える圧電発振器本体11と該圧電発振器を覆うカバー部材20とを有しており、前記カバー部材が、前記圧電発振器本体に当たる風を遮蔽する箇所に設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージに圧電振動片とICチップを収容した温度補償型の圧電発振器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において、圧電振動子や圧電発振器が広く使用されている。
圧電発振器は、圧電材料で形成した圧電振動片と、集積回路チップ、すなわちICチップを組み合わせたものであり、圧電振動片は、例えば水晶ウエハを矩形にエッチングして駆動用の電極を設けることにより形成されている。
【0003】
特許文献1は、このような圧電発振器の一例を示しており、その図1において、圧電発振器30は、圧電振動片を収容した振動子パッケージ50と、この振動子パッケージの裏面に固定され、内部に発振回路を収容したICチップ40とを備えていて、前記振動子パッケージの前記裏面には、リードフレームのインナーリード部61a,62a,63a,
64aが固定され、かつ前記リードフレームのアウターリード部を除いて、前記振動子パッケージ及び前記ICチップが樹脂モールドされた構造である。
このような圧電発振器30では、圧電振動子部分とICチップとが縦に配置されているので、実装スペースをとらない小型の外形を実現できるとともに、環境温度が変化しても、圧電振動片のもつ温度−周波数特性を補正して、正確な周波数となるようにされている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−297770
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載したような圧電発振器にあっては、電子機器に搭載された冷却ファン等によって生じる風により、圧電発振器の環境温度(周囲の温度)が急激に変化すると、図11(a)に示すように、温度変化開始から一定の間、所望の周波数と発振周波数の差が生じてしまう。これは、図11(b)に示すように、環境温度の変化に対して、鎖線で示すICチップ温度と圧電振動片(圧電振動子)温度の瞬間的なズレが生じ、応答速度の速いICチップが微妙な温度変化に迅速に反応してしまうせいであると考えられる。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、電子機器の冷却ファン等によって生じる風に起因して圧電発振器の環境温度が瞬間的に変化しても安定して所望の周波数で発振できるようにした圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
圧電振動片と、該圧電振動片を発振させる発振回路と温度補償回路とを備えたICチップと、前記圧電振動片および前記ICチップを収容するパッケージを備える圧電発振器本体と、該圧電発振器本体を覆う凹状のカバー部材とを有する圧電発振器であって、前記圧電発振器本体と前記カバー部材との間に空隙が形成されていることを特徴とする圧電発振器。
上記構成によれば、圧電発振器本体に対して、電子機器の冷却ファン等から風が吹いた場合においては、環境温度の急激な変化があるが、このような風を遮蔽するカバー部材を備えているので、圧電発振器本体に急激な環境温度の変化が及ばず、風が吹いてからの一定時間の間、所望の周波数と発振周波数の差が生じることを有効に防止することができる。
さらに、前記圧電発振器本体と前記カバー部材との間に空隙が形成されているため、この空隙に存在する空気が断熱効果を発揮し、有風などによる瞬間的な温度変化が圧電発振器本体に及ぶことを確実に防止することができる。
かくして、有風などの瞬間的な環境温度変化によっても安定して所望の周波数で発振できるようにした圧電発振器を提供することができる。
【0009】
[適用例2]
上記構成において、前記圧電発振器本体の表面は、前記圧電発振器が実装される実装基板と相対する実装面部と、該実装面部の反対面に位置する主面部と、側面部とを備え、前記カバー部材が、前記主面部を覆う主面カバー部と、前記側面部の一部を覆う側面カバー部とを有しており、前記主面カバー部と前記主面部との間、および前記側面カバー部と前記側面部との間に前記空隙が形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、カバー部材の前記主面カバー部と前記側面カバー部は、これらと、前記圧電発振器本体の主面および側面との間に空隙を形成するので、この空隙に存在する空気が断熱効果を発揮し、有風などによる瞬間的な温度変化が圧電発振器本体に及ぶことを確実に防止することができる。特に空隙は、カバー部材と圧電発振器本体の主面との間だけでなく、側面との間にも形成されるので、いかなる方向からの風にも同様の作用を発揮することができる。
【0010】
[適用例3]
上記構成において、前記カバー部材が、前記圧電発振器本体との間に支持部を介して固定されていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記支持部によりカバー部材が確実に固定される。しかも該支持部はスペーサとしての機能を発揮するので、カバー部材と圧電発振器本体との間に確実に空隙を形成することができ、該空隙によりカバー部材からの熱が好適に遮断される。
【0011】
[適用例4]
上記構成において、前記支持部が、前記圧電発振器本体の前記主面部との間に介在する第1の支持部と、前記圧電発振器本体の前記側面部との間に介在する第2の支持部とを有することを特徴とする。
上記構成によれば、前記カバー部材と前記圧電発振器本体の主面部との間、および前記カバー部材と前記圧電発振器本体の側面との間において、それぞれ空隙が確実に形成されるので、これら各空隙によりカバー部材からの熱が遮断され、より確実にICチップ温度と圧電振動片(圧電振動子)温度のズレが生じにくく、安定した周波数で発振させることができる。
【0012】
[適用例5]
他の発明は、上記構成において、前記支持部が、該カバー部材と一体に形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、カバー部材と圧電発振器本体との間に、空隙を形成するための支持部材がカバー部材自体に備えられているので、別体の支持部を取付ける場合と比べて、組み立て作業等が容易である。
【0013】
[適用例6]
上記構成において、前記支持部が、前記圧電発振器本体のパッケージと一体に形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、カバー部材と圧電発振器本体との間に、空隙を形成するための支持部材が圧電発振器本体のパッケージ自体に備えられているので、別体の支持部を取付ける場合と比べて、組み立て作業等が容易である。
【0014】
[適用例7]
上記構成において、前記カバー部材の前記支持部が、前記圧電発振器本体の前記主面部との間に介在する第1の部分と、前記圧電発振器本体の前記側面部との間に介在する第2の部分とを有することを特徴とする。
上記構成によれば、前記カバー部材が有する前記支持部が前記カバー部材と前記圧電発振器本体の主面部との間に介在する第1の部分と、前記カバー部材と前記圧電発振器本体の側面との間に介在する第2の部分を備えているから、これらの各位置において、それぞれ空隙が確実に形成されるので、これら各空隙によりカバー部材からの熱が遮断され、より確実にICチップ温度と圧電振動片(圧電振動子)温度のズレが生じにくく、安定した周波数で発振させることができる。
【0015】
[適用例8]
上記構成において、前記圧電発振器本体が、リードフレームを介してその一面に前記ICチップを接合し、他面に前記圧電振動片を納めた収容容器を接合し、これらを樹脂により被覆した樹脂パッケージを有しており、前記カバー部材が該樹脂パッケージの主としてICチップ側を覆う構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、前記圧電発振器本体が、リードフレームを介してその一面に前記ICチップを接合し、他面に前記圧電振動片を納めた収容容器を接合しているので、圧電発振器本体と圧電振動子を縦に配置して、実装スペースを小さくすることができる。しかも、これらを樹脂により被覆した樹脂パッケージとすることにより、気密に収容して保護することができる。
そして、この場合、樹脂パッケージの主としてICチップ側を前記カバー部材で覆うようにしているので、環境温度の急激な変化がICチップに即座に伝達されるのを防止し、温度−応答速度の速いICチップの補償動作を遅延させて、圧電振動子を適切な周波数で励振させることができる。
【0016】
[適用例9]
上記構成において、前記圧電発振器本体が、前記圧電振動片を納めた収容容器の底板を共通の基板として、該基板の底面側にキャビティを形成して、該キャビティに前記ICチップを収容する構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、前記圧電発振器本体と圧電振動片を縦に配置して、実装スペースを小さくすることができる。しかも圧電振動片を収容容器に収容するだけでなく、ICチップもキャビティに収容しているので、丈夫な構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の圧電発振器の第1の実施形態を示す概略断面図である。
図において、圧電発振器10は、リードフレーム17を利用して、その上面にICチップ15をダイボンディングし、ボンディングワイヤー16,16で電気的接続をとることで実装するとともに、該リードフレーム17の裏面に圧電振動子13を接合して、ICチップ15とこの圧電振動子13とを電気的に接続したものである。これらをモールド樹脂により被覆して樹脂パッケージ23を形成して、圧電発振器本体(以下、「本体」という)11を形成している。
【0018】
具体的には、ICチップ15は、圧電振動子13の発振回路と温度補償回路とを内臓した半導体素子であり、該圧電振動片14の動作の温度補償などの機能を発揮するものである。
圧電振動子13は、収容容器である振動子パッケージ12内に圧電振動片14を収容したものである。ここで、振動子パッケージ12は、例えば、セラミックグリーンシートを成形後に焼結するなどして形成し、内部に所定の収容空間を設けた箱状のパッケージ本体12aを金属製の蓋体12bにより気密に封止したものである。
パッケージ本体12aの内部には、外部端子(図示せず)と接続された電極部(図示せず)が形成されており、この電極部に対して、例えば、バンプ14aや導電性接着剤を介して、圧電振動片14が接合されている。
ここで、圧電振動片14は、圧電材料を用いた基板、例えば、水晶基板を矩形もしくは正方形の外形を備える板状に形成し、必要な駆動電極を形成したものが使用される。この場合、圧電振動片の種類は目的に応じていかなるものでもよく、厚みすべり振動を利用したもの、音叉型圧電振動片、弾性表面波素子〔SAW(Surface Acoustic Wave)素子〕などを使用することができる。
【0019】
この実施形態では、圧電振動子13とICチップ15は、リードフレーム17のダイパッド部の表面と裏面にそれぞれ接着剤などで接合されている。また、リードフレーム17のインナーリード部18は、圧電振動子13の外部端子と電気的に接続されるとともに、ICチップ15の接続端子に対して、上記ワイヤボンディングにより接続されており、アウターリード部19は、下方に曲折されて、実装端子とされている。このアウターリード部19は、実装の際に半田が付着してヒレを形成しやすいように上記曲折によるフォーミングがなされている。
ここで、リードフレーム17は、例えば、42アロイ等のFe合金、あるいはCu−Sn,Cu−Fe,Cu−Zn,Cu−Ni等のCu合金等により適宜形成することができる。
なお、ダイパッドを用いることなく、圧電振動子13のパッケージ本体12aの裏面にICチップ15を接着剤などにより直接接合してもよい。
【0020】
樹脂パッケージ23は、リードフレーム17に上記した圧電振動子13とICチップ15を接合した後で、所定の型内で、樹脂モールドすることにより形成される。使用される合成樹脂は、半導体の樹脂封止に用いられるものなどが好適に使用され、例えば、エポキシ系の樹脂を型内に射出して、図示するように成形することで形成することができる。
これにより、各構成部品の端子やボンディングワイヤ等が絶縁され、被覆した部品を気密に保護することができる。
【0021】
さらに、この実施形態では、図示されているように、本体11は凹状のカバー部材20により被覆されている。
カバー部材20は、例えば、金属製、または樹脂製、あるいはセラミック製であり、好ましくは、非導電性の材料で形成される。
具体的には、この実施形態では、カバー部材20は、樹脂成型品により、平らな上面と傾斜側面を有する円錐台状でなり、その断面は、図示のように、ほぼ台形である。
しかも、カバー部材20は、本体11のICチップ15側を覆うように配置され、例えば、主面カバー部20aと樹脂パッケージ23の表面に間に、接着剤21を塗布することにより固定されている。
【0022】
すなわち、図1の接合状態において、カバー部材20は、本体11表面の最も広い面積でなる上面、すなわち、主面部24を覆う主面カバー部20aと、本体11の側面部25を覆う側面カバー部20bとを有している。
ここで、好ましくは、図1において、カバー部材20の傾斜側面である側面カバー部20bの下端は、リードフレーム17のアウターリード部19の根元部もしくは基端部19aを超えて圧電振動子13側に延びる大きさとされている。これにより、カバー部材20は、ICチップ15を完全に覆う構成とされている。
なお、本体11の主面部24の反対面である図示の底面部は、実装に際して、実装基板と相対もしくは対向する実装面部36である。
【0023】
本実施形態は以上のように構成されており、圧電振動片14と、該圧電振動片14を発振させる発振回路と温度補償回路とを備えたICチップ15を有しているから、環境温度の変化に対しても、該圧電振動片14の温度特性に基づいて、温度補償回路により補正を行うので、正確な周波数で発振することができる。
特に、本体11に対して、風が吹いた場合等においては、環境温度の急激な変化があるが、このような風を遮蔽するカバー部材20を備えているので、本体11に急激な環境温度の変化が及ばず、風が吹いてからの一定時間の間、所望の周波数と発振周波数の差が生じることを有効に防止することができる。
かくして、有風などの瞬間的な環境温度変化によっても安定して所望の周波数で発振できるようにした圧電発振器10を提供することができる。
特に、カバー部材20は樹脂パッケージ23のICチップ15側を覆うようにされているので、環境温度の急激な変化がICチップ15に即座に伝達されるのを防止し、温度−応答速度の速いICチップ15の補償動作を遅延させて、圧電振動子を適切な周波数で励振させることができる。
【0024】
図2は圧電発振器の第2の実施形態を示している。
図2において、図1の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。なお、以下の各実施例の図においては、圧電振動子の内部構造については、第1の実施形態と同じであるから、図示を省略している。
この実施形態では、カバー部材20と本体11の間に支持部30が形成されており、具体的には、支持部30は、主面カバー部20aの裏面中央部に、ボス状に突出して一体に設けられている。
これにより、圧電発振器10−1では、図1の実施形態と同じ作用効果を発揮するとともに、さらに、支持部30の周囲に接着剤21が塗布されることにより、本体11に対してカバー部材20が確実に固定される。しかも該支持部30はスペーサとしての機能を発揮するので、カバー部材と圧電発振器本体との間に確実に符号22a,22bで示す空隙を形成することができ、該空隙によりカバー部材20からの熱が好適に遮断される。
【0025】
図3は圧電発振器の第3の実施形態を示している。
図3において、図2の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、カバー部材20と本体11の間に支持部30−1が形成されており、具体的には、支持部30−1は、本体11の樹脂パッケージ23の中央部、すなわち、主面部24の中心から上方に向けてボス状に突出して一体に設けられている。
本実施形態は以上のように構成されており、第2の実施形態と同様の作用効果を発揮する。
【0026】
図4は圧電発振器の第4の実施形態を示している。
図4において、図2の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、主として本体11−1の構造とカバー部材20−3の形状が相違しており、それ以外は第2の実施形態と同じである。
【0027】
この圧電発振器10−3の本体11−1を構成する部品である圧電振動子13は他の実施形態と同じである。この圧電振動子13の振動子パッケージ12aを構成する底板12dの上には、側板12cが立設されており、内側のキャビティに圧電振動片14が収容されている。
この底板12dを共通の基板として、図において下面周囲にはセラミックなどによる側板26が設けられ、内側に形成されるキャビティが形成されている。このキャビティには、ICチップ15がバンプ15a等を介して実装されている。側板26の下端面には実装端子27が形成されている。
【0028】
一方、カバー部材20−3は、四角形もしくは矩形の箱状であり、平坦な主面カバー部20aと、側壁部である側面カバー部20bを有している。
また、この実施形態でも、カバー部材20−3と本体11−1の間に支持部30が形成されている。この支持部30は、図2の場合と同様に、主面カバー部20aの裏面中央部に、ボス状に突出して一体に設けられている。
本実施形態は以上のように構成されており、第2の実施形態と同様の作用効果を発揮できるだけでなく、本体11−1と圧電振動片14(圧電振動子13)を縦に配置して、実装スペースを小さくすることができる。しかも圧電振動片14を振動子パッケージに収容するだけでなく、ICチップ15もキャビティに収容しているので、丈夫な構造とすることができる。
【0029】
図5は圧電発振器の第5の実施形態を示している。
図5において、図2の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、第2の実施形態とカバー部材20−4の形状が相違しており、それ以外は第2の実施形態と同じである。
【0030】
具体的には、カバー部材20−4は、主面カバー部20aと本体11の主面部24との間に介在する第1の支持部31と、側面カバー部20bと本体11の側面部25との間に介在する第2の支持部32とを有している。これら各支持部31,32は、カバー部材と一体に形成され、本体11に突き当てるようにされて接着剤21により固定されている。
これにより、主面カバー部20aと、本体11の主面部24との間に隙間22aを、側面カバー部20bと本体11の側面部25との間に隙間22bを、それぞれ確実に形成できるので、これら各空隙によりカバー部材20−4からの熱が遮断され、より確実にICチップ温度と圧電振動片14(圧電振動子13)温度のズレが生じにくく、安定した周波数で発振させることができる。
それ以外の点については、第2の実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0031】
図6は圧電発振器の第6の実施形態を示している。
図6において、図5の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、第5の実施形態とカバー部材20−5の形状が相違しており、それ以外は第2の実施形態と同じである。
つまり、この実施形態では、第5の実施形態と比較すると、各支持部31−1,32−1が、樹脂パッケージ23と一体に形成され、カバー部材20−5に突き当てるようにされて接着剤21により固定されている。
第6の実施形態では、上記構成以外については第5の実施形態と同じ構成であるから、第5の実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0032】
図7は圧電発振器の第7の実施形態を示している。
図7において、図5の実施形態ならびに図4の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、第5の実施形態とカバー部材20−6の形状が相違しており、それ以外は第5実施形態と同じである。
【0033】
第7の実施形態では、カバー部材20−6は、四角形もしくは矩形の箱状であり、平坦な主面カバー部20aと、垂直な側壁部である側面カバー部20bを有している。そして、主面カバー部20aと本体11−1の主面部24との間に介在する第1の支持部31−1と、側面カバー部20bと本体11−1の側面部25との間に介在する第2の支持部32−2とを有している。これら各支持部31−2,32−2は、カバー部材と一体に形成され、本体11−1に突き当てるようにされて接着剤21により固定されている。
本実施形態は以上のように構成されており、第5の実施形態と同じ作用効果を発揮できるとともに、ICチップ15がキャビティ内に収容されることにより、丈夫な構造とすることができる。
【0034】
図8は圧電発振器の第8の実施形態を示している。
図8において、図5の実施形態ならびに図7の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
第8の実施形態では、カバー部材20−7は、四角形もしくは矩形の箱状であり、平坦な主面カバー部20aと、垂直な側壁部である側面カバー部20bを有している。
側面カバー部20bから内方に向かって延びる実質的に内向きの凸条、あるいは内向きフランジ状の支持部33が形成されている。この支持部33は、主面カバー部20aと本体11の主面部24との間に介在する第1の部分33aと、側面カバー部20bと本体11の側面部25との間に介在する第2の部分33bを備えているから、これらの各位置において、それぞれ空隙22a,22bが確実に形成されるので、これら各空隙によりカバー部材20−7からの熱が遮断され、より確実にICチップ温度と圧電振動片(圧電振動子13)温度のズレが生じにくく、安定した周波数で発振させることができる。
【0035】
図9は圧電発振器の第9の実施形態を示している。
図9において、図5の実施形態ならびに図7の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
第9の実施形態では、カバー部材20−8は、図8と同様に四角形もしくは矩形の箱状であり、平坦な主面カバー部20aと、垂直な側壁部である側面カバー部20bを有している。
側面カバー部20bから内方に向かって延びる支持部34,35が形成されている。支持部34が上の位置に、支持部35は下の位置にそれぞれ設けられており、各支持部は、それぞれ側面カバー部20bから内方に向かって延びる実質的に内向きの凸条、あるいは棚状、もしくは内向きフランジ状構造である。
【0036】
すなわち、図9に示されているように、カバー部材20−8は、主面カバー部20aと本体11の主面部24との間に介在する第1の支持部34と、側面カバー部20bと本体11の側面部25との間に介在する第2の支持部35とを有している。これら各支持部34,35は、カバー部材と一体に形成され、本体11に突き当てるようにされて接着剤21により固定されている。
これにより、主面カバー部20aと、本体11の主面部24との間に隙間22aを、側面カバー部20bと本体11の側面部25との間に隙間22bを、それぞれ確実に形成できるので、本実施形態も第8の実施形態と同じ作用効果を発揮することができる。
【0037】
図10は圧電発振器の第10の実施形態を示している。
図10において、図8の実施形態ならびに図7の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
第10の実施形態では、カバー部材20−9は、図8のカバー部材20−7とほぼ同じ構造であるが、図4で説明した(圧電発振器)本体11−1を覆う構造としたため、若干の形状変更がされている。その他の点は第8の実施形態と同じであり、第8の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0038】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
圧電発振器本体は、図示した形状に限らず、異なる構成とすることもでき、圧電発振器本体を被覆するカバーを備えるものであれば、本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図6】本発明の第6の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図7】本発明の第7の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図8】本発明の第8の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図9】本発明の第9の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図10】本発明の第10の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図11】環境温度(周囲の温度)の急激な変化と発振周波数のずれを説明するグラフ。
【符号の説明】
【0040】
10・・・圧電発振器、13・・・圧電振動子、14・・・圧電振動片、15・・・ICチップ、17・・・リードフレーム、20・・・カバー部材、23・・・樹脂パッケージ、24・・・主面部、25・・・側面部、30,31,32,33,34,35・・・支持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージに圧電振動片とICチップを収容した温度補償型の圧電発振器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において、圧電振動子や圧電発振器が広く使用されている。
圧電発振器は、圧電材料で形成した圧電振動片と、集積回路チップ、すなわちICチップを組み合わせたものであり、圧電振動片は、例えば水晶ウエハを矩形にエッチングして駆動用の電極を設けることにより形成されている。
【0003】
特許文献1は、このような圧電発振器の一例を示しており、その図1において、圧電発振器30は、圧電振動片を収容した振動子パッケージ50と、この振動子パッケージの裏面に固定され、内部に発振回路を収容したICチップ40とを備えていて、前記振動子パッケージの前記裏面には、リードフレームのインナーリード部61a,62a,63a,
64aが固定され、かつ前記リードフレームのアウターリード部を除いて、前記振動子パッケージ及び前記ICチップが樹脂モールドされた構造である。
このような圧電発振器30では、圧電振動子部分とICチップとが縦に配置されているので、実装スペースをとらない小型の外形を実現できるとともに、環境温度が変化しても、圧電振動片のもつ温度−周波数特性を補正して、正確な周波数となるようにされている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−297770
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載したような圧電発振器にあっては、電子機器に搭載された冷却ファン等によって生じる風により、圧電発振器の環境温度(周囲の温度)が急激に変化すると、図11(a)に示すように、温度変化開始から一定の間、所望の周波数と発振周波数の差が生じてしまう。これは、図11(b)に示すように、環境温度の変化に対して、鎖線で示すICチップ温度と圧電振動片(圧電振動子)温度の瞬間的なズレが生じ、応答速度の速いICチップが微妙な温度変化に迅速に反応してしまうせいであると考えられる。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、電子機器の冷却ファン等によって生じる風に起因して圧電発振器の環境温度が瞬間的に変化しても安定して所望の周波数で発振できるようにした圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
圧電振動片と、該圧電振動片を発振させる発振回路と温度補償回路とを備えたICチップと、前記圧電振動片および前記ICチップを収容するパッケージを備える圧電発振器本体と、該圧電発振器本体を覆う凹状のカバー部材とを有する圧電発振器であって、前記圧電発振器本体と前記カバー部材との間に空隙が形成されていることを特徴とする圧電発振器。
上記構成によれば、圧電発振器本体に対して、電子機器の冷却ファン等から風が吹いた場合においては、環境温度の急激な変化があるが、このような風を遮蔽するカバー部材を備えているので、圧電発振器本体に急激な環境温度の変化が及ばず、風が吹いてからの一定時間の間、所望の周波数と発振周波数の差が生じることを有効に防止することができる。
さらに、前記圧電発振器本体と前記カバー部材との間に空隙が形成されているため、この空隙に存在する空気が断熱効果を発揮し、有風などによる瞬間的な温度変化が圧電発振器本体に及ぶことを確実に防止することができる。
かくして、有風などの瞬間的な環境温度変化によっても安定して所望の周波数で発振できるようにした圧電発振器を提供することができる。
【0009】
[適用例2]
上記構成において、前記圧電発振器本体の表面は、前記圧電発振器が実装される実装基板と相対する実装面部と、該実装面部の反対面に位置する主面部と、側面部とを備え、前記カバー部材が、前記主面部を覆う主面カバー部と、前記側面部の一部を覆う側面カバー部とを有しており、前記主面カバー部と前記主面部との間、および前記側面カバー部と前記側面部との間に前記空隙が形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、カバー部材の前記主面カバー部と前記側面カバー部は、これらと、前記圧電発振器本体の主面および側面との間に空隙を形成するので、この空隙に存在する空気が断熱効果を発揮し、有風などによる瞬間的な温度変化が圧電発振器本体に及ぶことを確実に防止することができる。特に空隙は、カバー部材と圧電発振器本体の主面との間だけでなく、側面との間にも形成されるので、いかなる方向からの風にも同様の作用を発揮することができる。
【0010】
[適用例3]
上記構成において、前記カバー部材が、前記圧電発振器本体との間に支持部を介して固定されていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記支持部によりカバー部材が確実に固定される。しかも該支持部はスペーサとしての機能を発揮するので、カバー部材と圧電発振器本体との間に確実に空隙を形成することができ、該空隙によりカバー部材からの熱が好適に遮断される。
【0011】
[適用例4]
上記構成において、前記支持部が、前記圧電発振器本体の前記主面部との間に介在する第1の支持部と、前記圧電発振器本体の前記側面部との間に介在する第2の支持部とを有することを特徴とする。
上記構成によれば、前記カバー部材と前記圧電発振器本体の主面部との間、および前記カバー部材と前記圧電発振器本体の側面との間において、それぞれ空隙が確実に形成されるので、これら各空隙によりカバー部材からの熱が遮断され、より確実にICチップ温度と圧電振動片(圧電振動子)温度のズレが生じにくく、安定した周波数で発振させることができる。
【0012】
[適用例5]
他の発明は、上記構成において、前記支持部が、該カバー部材と一体に形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、カバー部材と圧電発振器本体との間に、空隙を形成するための支持部材がカバー部材自体に備えられているので、別体の支持部を取付ける場合と比べて、組み立て作業等が容易である。
【0013】
[適用例6]
上記構成において、前記支持部が、前記圧電発振器本体のパッケージと一体に形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、カバー部材と圧電発振器本体との間に、空隙を形成するための支持部材が圧電発振器本体のパッケージ自体に備えられているので、別体の支持部を取付ける場合と比べて、組み立て作業等が容易である。
【0014】
[適用例7]
上記構成において、前記カバー部材の前記支持部が、前記圧電発振器本体の前記主面部との間に介在する第1の部分と、前記圧電発振器本体の前記側面部との間に介在する第2の部分とを有することを特徴とする。
上記構成によれば、前記カバー部材が有する前記支持部が前記カバー部材と前記圧電発振器本体の主面部との間に介在する第1の部分と、前記カバー部材と前記圧電発振器本体の側面との間に介在する第2の部分を備えているから、これらの各位置において、それぞれ空隙が確実に形成されるので、これら各空隙によりカバー部材からの熱が遮断され、より確実にICチップ温度と圧電振動片(圧電振動子)温度のズレが生じにくく、安定した周波数で発振させることができる。
【0015】
[適用例8]
上記構成において、前記圧電発振器本体が、リードフレームを介してその一面に前記ICチップを接合し、他面に前記圧電振動片を納めた収容容器を接合し、これらを樹脂により被覆した樹脂パッケージを有しており、前記カバー部材が該樹脂パッケージの主としてICチップ側を覆う構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、前記圧電発振器本体が、リードフレームを介してその一面に前記ICチップを接合し、他面に前記圧電振動片を納めた収容容器を接合しているので、圧電発振器本体と圧電振動子を縦に配置して、実装スペースを小さくすることができる。しかも、これらを樹脂により被覆した樹脂パッケージとすることにより、気密に収容して保護することができる。
そして、この場合、樹脂パッケージの主としてICチップ側を前記カバー部材で覆うようにしているので、環境温度の急激な変化がICチップに即座に伝達されるのを防止し、温度−応答速度の速いICチップの補償動作を遅延させて、圧電振動子を適切な周波数で励振させることができる。
【0016】
[適用例9]
上記構成において、前記圧電発振器本体が、前記圧電振動片を納めた収容容器の底板を共通の基板として、該基板の底面側にキャビティを形成して、該キャビティに前記ICチップを収容する構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、前記圧電発振器本体と圧電振動片を縦に配置して、実装スペースを小さくすることができる。しかも圧電振動片を収容容器に収容するだけでなく、ICチップもキャビティに収容しているので、丈夫な構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の圧電発振器の第1の実施形態を示す概略断面図である。
図において、圧電発振器10は、リードフレーム17を利用して、その上面にICチップ15をダイボンディングし、ボンディングワイヤー16,16で電気的接続をとることで実装するとともに、該リードフレーム17の裏面に圧電振動子13を接合して、ICチップ15とこの圧電振動子13とを電気的に接続したものである。これらをモールド樹脂により被覆して樹脂パッケージ23を形成して、圧電発振器本体(以下、「本体」という)11を形成している。
【0018】
具体的には、ICチップ15は、圧電振動子13の発振回路と温度補償回路とを内臓した半導体素子であり、該圧電振動片14の動作の温度補償などの機能を発揮するものである。
圧電振動子13は、収容容器である振動子パッケージ12内に圧電振動片14を収容したものである。ここで、振動子パッケージ12は、例えば、セラミックグリーンシートを成形後に焼結するなどして形成し、内部に所定の収容空間を設けた箱状のパッケージ本体12aを金属製の蓋体12bにより気密に封止したものである。
パッケージ本体12aの内部には、外部端子(図示せず)と接続された電極部(図示せず)が形成されており、この電極部に対して、例えば、バンプ14aや導電性接着剤を介して、圧電振動片14が接合されている。
ここで、圧電振動片14は、圧電材料を用いた基板、例えば、水晶基板を矩形もしくは正方形の外形を備える板状に形成し、必要な駆動電極を形成したものが使用される。この場合、圧電振動片の種類は目的に応じていかなるものでもよく、厚みすべり振動を利用したもの、音叉型圧電振動片、弾性表面波素子〔SAW(Surface Acoustic Wave)素子〕などを使用することができる。
【0019】
この実施形態では、圧電振動子13とICチップ15は、リードフレーム17のダイパッド部の表面と裏面にそれぞれ接着剤などで接合されている。また、リードフレーム17のインナーリード部18は、圧電振動子13の外部端子と電気的に接続されるとともに、ICチップ15の接続端子に対して、上記ワイヤボンディングにより接続されており、アウターリード部19は、下方に曲折されて、実装端子とされている。このアウターリード部19は、実装の際に半田が付着してヒレを形成しやすいように上記曲折によるフォーミングがなされている。
ここで、リードフレーム17は、例えば、42アロイ等のFe合金、あるいはCu−Sn,Cu−Fe,Cu−Zn,Cu−Ni等のCu合金等により適宜形成することができる。
なお、ダイパッドを用いることなく、圧電振動子13のパッケージ本体12aの裏面にICチップ15を接着剤などにより直接接合してもよい。
【0020】
樹脂パッケージ23は、リードフレーム17に上記した圧電振動子13とICチップ15を接合した後で、所定の型内で、樹脂モールドすることにより形成される。使用される合成樹脂は、半導体の樹脂封止に用いられるものなどが好適に使用され、例えば、エポキシ系の樹脂を型内に射出して、図示するように成形することで形成することができる。
これにより、各構成部品の端子やボンディングワイヤ等が絶縁され、被覆した部品を気密に保護することができる。
【0021】
さらに、この実施形態では、図示されているように、本体11は凹状のカバー部材20により被覆されている。
カバー部材20は、例えば、金属製、または樹脂製、あるいはセラミック製であり、好ましくは、非導電性の材料で形成される。
具体的には、この実施形態では、カバー部材20は、樹脂成型品により、平らな上面と傾斜側面を有する円錐台状でなり、その断面は、図示のように、ほぼ台形である。
しかも、カバー部材20は、本体11のICチップ15側を覆うように配置され、例えば、主面カバー部20aと樹脂パッケージ23の表面に間に、接着剤21を塗布することにより固定されている。
【0022】
すなわち、図1の接合状態において、カバー部材20は、本体11表面の最も広い面積でなる上面、すなわち、主面部24を覆う主面カバー部20aと、本体11の側面部25を覆う側面カバー部20bとを有している。
ここで、好ましくは、図1において、カバー部材20の傾斜側面である側面カバー部20bの下端は、リードフレーム17のアウターリード部19の根元部もしくは基端部19aを超えて圧電振動子13側に延びる大きさとされている。これにより、カバー部材20は、ICチップ15を完全に覆う構成とされている。
なお、本体11の主面部24の反対面である図示の底面部は、実装に際して、実装基板と相対もしくは対向する実装面部36である。
【0023】
本実施形態は以上のように構成されており、圧電振動片14と、該圧電振動片14を発振させる発振回路と温度補償回路とを備えたICチップ15を有しているから、環境温度の変化に対しても、該圧電振動片14の温度特性に基づいて、温度補償回路により補正を行うので、正確な周波数で発振することができる。
特に、本体11に対して、風が吹いた場合等においては、環境温度の急激な変化があるが、このような風を遮蔽するカバー部材20を備えているので、本体11に急激な環境温度の変化が及ばず、風が吹いてからの一定時間の間、所望の周波数と発振周波数の差が生じることを有効に防止することができる。
かくして、有風などの瞬間的な環境温度変化によっても安定して所望の周波数で発振できるようにした圧電発振器10を提供することができる。
特に、カバー部材20は樹脂パッケージ23のICチップ15側を覆うようにされているので、環境温度の急激な変化がICチップ15に即座に伝達されるのを防止し、温度−応答速度の速いICチップ15の補償動作を遅延させて、圧電振動子を適切な周波数で励振させることができる。
【0024】
図2は圧電発振器の第2の実施形態を示している。
図2において、図1の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。なお、以下の各実施例の図においては、圧電振動子の内部構造については、第1の実施形態と同じであるから、図示を省略している。
この実施形態では、カバー部材20と本体11の間に支持部30が形成されており、具体的には、支持部30は、主面カバー部20aの裏面中央部に、ボス状に突出して一体に設けられている。
これにより、圧電発振器10−1では、図1の実施形態と同じ作用効果を発揮するとともに、さらに、支持部30の周囲に接着剤21が塗布されることにより、本体11に対してカバー部材20が確実に固定される。しかも該支持部30はスペーサとしての機能を発揮するので、カバー部材と圧電発振器本体との間に確実に符号22a,22bで示す空隙を形成することができ、該空隙によりカバー部材20からの熱が好適に遮断される。
【0025】
図3は圧電発振器の第3の実施形態を示している。
図3において、図2の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、カバー部材20と本体11の間に支持部30−1が形成されており、具体的には、支持部30−1は、本体11の樹脂パッケージ23の中央部、すなわち、主面部24の中心から上方に向けてボス状に突出して一体に設けられている。
本実施形態は以上のように構成されており、第2の実施形態と同様の作用効果を発揮する。
【0026】
図4は圧電発振器の第4の実施形態を示している。
図4において、図2の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、主として本体11−1の構造とカバー部材20−3の形状が相違しており、それ以外は第2の実施形態と同じである。
【0027】
この圧電発振器10−3の本体11−1を構成する部品である圧電振動子13は他の実施形態と同じである。この圧電振動子13の振動子パッケージ12aを構成する底板12dの上には、側板12cが立設されており、内側のキャビティに圧電振動片14が収容されている。
この底板12dを共通の基板として、図において下面周囲にはセラミックなどによる側板26が設けられ、内側に形成されるキャビティが形成されている。このキャビティには、ICチップ15がバンプ15a等を介して実装されている。側板26の下端面には実装端子27が形成されている。
【0028】
一方、カバー部材20−3は、四角形もしくは矩形の箱状であり、平坦な主面カバー部20aと、側壁部である側面カバー部20bを有している。
また、この実施形態でも、カバー部材20−3と本体11−1の間に支持部30が形成されている。この支持部30は、図2の場合と同様に、主面カバー部20aの裏面中央部に、ボス状に突出して一体に設けられている。
本実施形態は以上のように構成されており、第2の実施形態と同様の作用効果を発揮できるだけでなく、本体11−1と圧電振動片14(圧電振動子13)を縦に配置して、実装スペースを小さくすることができる。しかも圧電振動片14を振動子パッケージに収容するだけでなく、ICチップ15もキャビティに収容しているので、丈夫な構造とすることができる。
【0029】
図5は圧電発振器の第5の実施形態を示している。
図5において、図2の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、第2の実施形態とカバー部材20−4の形状が相違しており、それ以外は第2の実施形態と同じである。
【0030】
具体的には、カバー部材20−4は、主面カバー部20aと本体11の主面部24との間に介在する第1の支持部31と、側面カバー部20bと本体11の側面部25との間に介在する第2の支持部32とを有している。これら各支持部31,32は、カバー部材と一体に形成され、本体11に突き当てるようにされて接着剤21により固定されている。
これにより、主面カバー部20aと、本体11の主面部24との間に隙間22aを、側面カバー部20bと本体11の側面部25との間に隙間22bを、それぞれ確実に形成できるので、これら各空隙によりカバー部材20−4からの熱が遮断され、より確実にICチップ温度と圧電振動片14(圧電振動子13)温度のズレが生じにくく、安定した周波数で発振させることができる。
それ以外の点については、第2の実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0031】
図6は圧電発振器の第6の実施形態を示している。
図6において、図5の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、第5の実施形態とカバー部材20−5の形状が相違しており、それ以外は第2の実施形態と同じである。
つまり、この実施形態では、第5の実施形態と比較すると、各支持部31−1,32−1が、樹脂パッケージ23と一体に形成され、カバー部材20−5に突き当てるようにされて接着剤21により固定されている。
第6の実施形態では、上記構成以外については第5の実施形態と同じ構成であるから、第5の実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0032】
図7は圧電発振器の第7の実施形態を示している。
図7において、図5の実施形態ならびに図4の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、第5の実施形態とカバー部材20−6の形状が相違しており、それ以外は第5実施形態と同じである。
【0033】
第7の実施形態では、カバー部材20−6は、四角形もしくは矩形の箱状であり、平坦な主面カバー部20aと、垂直な側壁部である側面カバー部20bを有している。そして、主面カバー部20aと本体11−1の主面部24との間に介在する第1の支持部31−1と、側面カバー部20bと本体11−1の側面部25との間に介在する第2の支持部32−2とを有している。これら各支持部31−2,32−2は、カバー部材と一体に形成され、本体11−1に突き当てるようにされて接着剤21により固定されている。
本実施形態は以上のように構成されており、第5の実施形態と同じ作用効果を発揮できるとともに、ICチップ15がキャビティ内に収容されることにより、丈夫な構造とすることができる。
【0034】
図8は圧電発振器の第8の実施形態を示している。
図8において、図5の実施形態ならびに図7の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
第8の実施形態では、カバー部材20−7は、四角形もしくは矩形の箱状であり、平坦な主面カバー部20aと、垂直な側壁部である側面カバー部20bを有している。
側面カバー部20bから内方に向かって延びる実質的に内向きの凸条、あるいは内向きフランジ状の支持部33が形成されている。この支持部33は、主面カバー部20aと本体11の主面部24との間に介在する第1の部分33aと、側面カバー部20bと本体11の側面部25との間に介在する第2の部分33bを備えているから、これらの各位置において、それぞれ空隙22a,22bが確実に形成されるので、これら各空隙によりカバー部材20−7からの熱が遮断され、より確実にICチップ温度と圧電振動片(圧電振動子13)温度のズレが生じにくく、安定した周波数で発振させることができる。
【0035】
図9は圧電発振器の第9の実施形態を示している。
図9において、図5の実施形態ならびに図7の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
第9の実施形態では、カバー部材20−8は、図8と同様に四角形もしくは矩形の箱状であり、平坦な主面カバー部20aと、垂直な側壁部である側面カバー部20bを有している。
側面カバー部20bから内方に向かって延びる支持部34,35が形成されている。支持部34が上の位置に、支持部35は下の位置にそれぞれ設けられており、各支持部は、それぞれ側面カバー部20bから内方に向かって延びる実質的に内向きの凸条、あるいは棚状、もしくは内向きフランジ状構造である。
【0036】
すなわち、図9に示されているように、カバー部材20−8は、主面カバー部20aと本体11の主面部24との間に介在する第1の支持部34と、側面カバー部20bと本体11の側面部25との間に介在する第2の支持部35とを有している。これら各支持部34,35は、カバー部材と一体に形成され、本体11に突き当てるようにされて接着剤21により固定されている。
これにより、主面カバー部20aと、本体11の主面部24との間に隙間22aを、側面カバー部20bと本体11の側面部25との間に隙間22bを、それぞれ確実に形成できるので、本実施形態も第8の実施形態と同じ作用効果を発揮することができる。
【0037】
図10は圧電発振器の第10の実施形態を示している。
図10において、図8の実施形態ならびに図7の実施形態と同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
第10の実施形態では、カバー部材20−9は、図8のカバー部材20−7とほぼ同じ構造であるが、図4で説明した(圧電発振器)本体11−1を覆う構造としたため、若干の形状変更がされている。その他の点は第8の実施形態と同じであり、第8の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。
【0038】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
圧電発振器本体は、図示した形状に限らず、異なる構成とすることもでき、圧電発振器本体を被覆するカバーを備えるものであれば、本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図6】本発明の第6の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図7】本発明の第7の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図8】本発明の第8の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図9】本発明の第9の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図10】本発明の第10の実施形態に係る圧電発振器の概略断面図。
【図11】環境温度(周囲の温度)の急激な変化と発振周波数のずれを説明するグラフ。
【符号の説明】
【0040】
10・・・圧電発振器、13・・・圧電振動子、14・・・圧電振動片、15・・・ICチップ、17・・・リードフレーム、20・・・カバー部材、23・・・樹脂パッケージ、24・・・主面部、25・・・側面部、30,31,32,33,34,35・・・支持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片と、
該圧電振動片を発振させる発振回路と温度補償回路とを備えたICチップと、
前記圧電振動片および前記ICチップを収容するパッケージを備える圧電発振器本体と、
該圧電発振器本体を覆う凹状のカバー部材と
を有する圧電発振器であって、
前記圧電発振器本体と前記カバー部材との間に空隙が形成されている
ことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電発振器であって、
前記圧電発振器本体の表面は、前記圧電発振器が実装される実装基板と相対する実装面部と、該実装面部の反対面に位置する主面部と、側面部とを備え、
前記カバー部材が、前記主面部を覆う主面カバー部と、前記側面部の一部を覆う側面カバー部とを有しており、
前記主面カバー部と前記主面部との間、および前記側面カバー部と前記側面部との間に前記空隙が形成されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電発振器であって、
前記カバー部材が、前記圧電発振器本体との間に支持部を介して固定されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電発振器であって、
前記支持部が、前記圧電発振器本体の前記主面部との間に介在する第1の支持部と、前記圧電発振器本体の前記側面部との間に介在する第2の支持部とを有することを特徴とする圧電発振器。
【請求項5】
請求項3または4に記載の圧電発振器であって、
前記支持部が、該カバー部材と一体に形成されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項6】
請求項3または4に記載の圧電発振器であって、
前記支持部が、前記圧電発振器本体の前記パッケージと一体に形成されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項7】
請求項3に記載の圧電発振器であって、
前記カバー部材の前記支持部が、前記圧電発振器本体の前記主面部との間に介在する第1の部分と、前記圧電発振器本体の前記側面部との間に介在する第2の部分とを有することを特徴とする圧電発振器。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の圧電発振器であって、
前記圧電発振器本体が、リードフレームを介してその一面に前記ICチップを接合し、他面に前記圧電振動片を納めた収容容器を接合し、これらを樹脂により被覆した樹脂パッケージを有しており、前記カバー部材が該樹脂パッケージの主としてICチップ側を覆う構成としたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、7のいずれかに記載の圧電発振器であって、
前記圧電発振器本体が、前記圧電振動片を納めた収容容器の底板を共通の基板として、該基板の底面側にキャビティを形成して、該キャビティに前記ICチップを収容する構成としたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項1】
圧電振動片と、
該圧電振動片を発振させる発振回路と温度補償回路とを備えたICチップと、
前記圧電振動片および前記ICチップを収容するパッケージを備える圧電発振器本体と、
該圧電発振器本体を覆う凹状のカバー部材と
を有する圧電発振器であって、
前記圧電発振器本体と前記カバー部材との間に空隙が形成されている
ことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電発振器であって、
前記圧電発振器本体の表面は、前記圧電発振器が実装される実装基板と相対する実装面部と、該実装面部の反対面に位置する主面部と、側面部とを備え、
前記カバー部材が、前記主面部を覆う主面カバー部と、前記側面部の一部を覆う側面カバー部とを有しており、
前記主面カバー部と前記主面部との間、および前記側面カバー部と前記側面部との間に前記空隙が形成されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電発振器であって、
前記カバー部材が、前記圧電発振器本体との間に支持部を介して固定されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電発振器であって、
前記支持部が、前記圧電発振器本体の前記主面部との間に介在する第1の支持部と、前記圧電発振器本体の前記側面部との間に介在する第2の支持部とを有することを特徴とする圧電発振器。
【請求項5】
請求項3または4に記載の圧電発振器であって、
前記支持部が、該カバー部材と一体に形成されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項6】
請求項3または4に記載の圧電発振器であって、
前記支持部が、前記圧電発振器本体の前記パッケージと一体に形成されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項7】
請求項3に記載の圧電発振器であって、
前記カバー部材の前記支持部が、前記圧電発振器本体の前記主面部との間に介在する第1の部分と、前記圧電発振器本体の前記側面部との間に介在する第2の部分とを有することを特徴とする圧電発振器。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の圧電発振器であって、
前記圧電発振器本体が、リードフレームを介してその一面に前記ICチップを接合し、他面に前記圧電振動片を納めた収容容器を接合し、これらを樹脂により被覆した樹脂パッケージを有しており、前記カバー部材が該樹脂パッケージの主としてICチップ側を覆う構成としたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、7のいずれかに記載の圧電発振器であって、
前記圧電発振器本体が、前記圧電振動片を納めた収容容器の底板を共通の基板として、該基板の底面側にキャビティを形成して、該キャビティに前記ICチップを収容する構成としたことを特徴とする圧電発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−49955(P2009−49955A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216782(P2007−216782)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
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