説明

圧電素板の処理方法

【課題】 本発明は、研磨装置を用いて厚み研磨あるいは、表面鏡面加工を行った後に研磨装置からウエハー状態の圧電素板を効率良く回収するための作業手順を実現することを目的とする。
【解決手段】 課題を解決するために本発明は、圧電素板の表面研磨に研磨装置を用いて、前記圧電素板の厚み研磨あるいは、表面鏡面加工を行った後の前記表面研磨装置から前記圧電素板を回収する圧電素板の処理方法において、前記厚み研磨あるいは、表面鏡面加工を行った後、前記圧電素板を専用トレーに回収する工程と、専用トレーを複数個まとめて格納する洗浄枠に収納し洗浄工程で洗浄する工程と、前記洗浄処理後乾燥工程で乾燥する工程を一貫して処理することにより課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置を用いて厚み研磨あるいは、表面鏡面加工を行った後に研磨装置からウエハー状態の圧電素板を効率良く回収するための作業手順に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から圧電素板は回転機構を持つ表面研磨装置(ラッピングマシン)によって圧電素板自身の厚みを整える手法(ラッピング工程)として用いられ、現在に至っても使用されている。また、表面研磨装置の研磨運動を利用して、圧電素板の表面を鏡面加工するいわゆるポリッシング加工も同様の原理を用いて行われている。
【0003】
ここで簡単に表面研磨装置の機構を説明するが、表面研磨装置によるラッピング工程とは一般的に、4ウェイの表面研磨装置(上定盤、下定盤、中心ギヤ、インターナルギヤが個々に回転する機構を持つ研磨装置)に、中心ギヤとインターナルギヤからの回転運動を受けて回転するキャリアとを組み合わせ、キャリアにある穴部に圧電素板を配置し、中心ギヤとインターナルギヤの回転により回転するキャリアが研磨装置の上下定盤間を圧電素板を保持しながら回転する。
【0004】
ここに研磨材溶液を研磨装置に一定の研磨材と水とで混合した研磨材溶液を研磨装置に付属する専用蓄液槽から供給することにより、研磨装置の上下定盤間をキャリアに保持された圧電素板が回転することにより、回転運動と研磨材溶液とにより圧電素板の表裏の厚み研磨を行うものである。
【0005】
ここで用いる研磨材溶液は厚みを薄くする研磨効果を持った研磨材には、アルミナ系を主成分とした研磨材微粒粉を純水などで一定配分で溶かしたもので、アルミナ系の微粒粉と純水とを効率的に調合させるために、界面活性剤を混合することが今日までの周知の事実として広く知られている。
【0006】
一方、圧電素板の表面を鏡面加工にすめたには、上述するアルミナ系の微粒粉に代えて、酸化セリウム系の微粉体と純水などで一定配分で溶かし研磨材を用いて表面研磨を行うことにより、いわゆる鏡面加工を行うことができる。従って、厚み研磨を行う場合には、アルミナ系の微粒粉を用い、研磨装置の定盤に圧電素板が直接触れた状態で研磨材溶液により圧電素板の厚み研磨を行うものである。
【0007】
鏡面研磨については、研磨装置の定盤面に特殊フエルト(布地)を施し、フエルト(上下定盤)との間に圧電素板を配置し酸化セリウムの研磨材水溶液により圧電素板の表面を鏡面加工することができる。
【0008】
上述のような研磨装置とその加工原理により厚み研磨鏡面加工を施すことができるが、研磨加工の善し悪しについては、研磨装置を構成する駆動部分の回転比や、実際の圧電素板の厚み研磨を行う上下定盤の平面精度に匹敵するに等しい重要な条件として研磨材溶液の液質(使用する研磨材水溶液の主成分となる微粒粉の粒径、配合比率、配合状態(固まりの有無)など)が挙げられている。
【0009】
以上の表面研磨加工は、圧電素板から振動子素板を得るためには大変重要な工程であり、研磨対象となる圧電素板の大きさは、数ミリの矩形状の圧電素板や、丸板状の小片形状のものから、2〜4インチ角状の大きな面板形状まで、様々な寸法や板厚みのものに対応し研磨加工が行える。
【0010】
また、研磨加工を終えた研磨装置からの圧電素板の回収方法の一例としては、ハケなどでまとめて集めるか、あるいはウエハー専用のピンセットを使って1枚ずつ採取し、予め水を入れてある容器などで回収する。そして、回収した圧電素板は回収した容器ごと洗浄装置で洗浄を行う。洗浄時は容器単位で、容器内の圧電素板を洗浄するため洗浄効率も悪く、また、洗浄後の乾燥時は圧電素板を適当に散乱させて乾燥工程で処理し、乾燥処理後は次工程へとつなげるために、きちんと整列する工程などを含んで研磨工程が進められている。
【0011】
【特許文献1】特開平11−070466号公報 なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
昨今の電子部品をはじめ圧電振動子を中心に市場で出回っている製品群にの代表製品に携帯端末市場がある。携帯端末いわゆる携帯電話は日増しに小型化、高機能化へと進化を続けており、携帯電話の小型化に追従するように圧電部品も小型化、低背化の要求が強く求められている。
【0013】
そのため、圧電素板を加工する工程にあっては、従来では最終製品の外形形状と寸法にまで小片にした圧電素板を従来の技術に記述する研磨装置を使って圧電素板の厚み寸法を薄くする加工工程が採られていたが、最近では最終形状での小片寸法では加工ができないことから、圧電ウエハー状態で所望の厚み加工にまで研磨装置を用いて加工をしているのが主流となってきている。
【0014】
従って、ウエハー単位としては2〜4インチ角の圧電素板を従来技術の厚み加工を行い圧電素板を大きな面積の状態でほぼ最終厚みまでの加工方法へと製造作業が変わってきている。従って、ウエハー単位で研磨加工を行うため、小片の圧電素板を取り扱うときとは、異なる作業課題が挙げられている。
【0015】
その一例としては、(1)研磨処理後のウエハー状態の圧電素板を、研磨装置から回収中にウエハー同士が接触することによって破損のおそれがあること、(2)回収時にウエハー専用ピンセットを使用する場合には、ウエハーが研磨装置の定盤に密着しるために回収しにくく、無理に回収しようとすると破損していまうおそれがあること、(3)回収後には水を入れた容器に一時的に格納するため、容器の状態で回収した圧電素板を扱わなければならないことから、容易に作業現場を移動することができないこと、(4)圧電素板は非常に薄片状態になっていることから、水などによりウエハー同士が密着してしまい、洗浄時に密着したウエハーの間に存在する研磨材の洗浄を行うのに時間がかかること、(5)洗浄工程後の乾燥処理では、乾燥効果を高めるために適当に散乱させてウエハーを扱い、乾燥後次工程にウエハーを送る際に散乱した状態のウエハーを整列させるための工数がかかり、同時にその整列時にもウエハーを破損させるおそれがあること、などの課題が考えられている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの課題を解決するために本発明は、圧電素板の表面研磨に研磨装置を用いて、前記圧電素板の厚み研磨あるいは、表面鏡面加工を行った後の前記表面研磨装置から前記圧電素板を回収する圧電素板の処理方法において、前記厚み研磨あるいは、表面鏡面加工を行った後、前記圧電素板を専用トレーに回収する工程と、専用トレーを複数個まとめて格納する洗浄枠に収納し洗浄工程で洗浄する工程と、前記洗浄処理後乾燥工程で乾燥する工程を一貫して処理することを特徴とする研磨装置を用いて加工する圧電素板の扱いである。そして、上述する圧電素板の形態としてはウエハー形状であることを特徴とするものである。
【0017】
要するに本発明は、厚み研磨加工を終えたウエハー状態の圧電素板を、研磨装置の定盤上を1枚のウエハー単位で、滑らせるように、ずらすように回収トレーで1枚のウエハー状の圧電素板単位で回収することにより、回収時の破損率を大幅に改善することができる。
【0018】
また、研磨装置から回収する圧電素板(ウエハー)は、個々にトレーにて収納し格納するために、従来方法のように水を入れた容器で一時的に保管することが無いために、工程間を移動するときにも非常に作業性がよくなる。加えて、圧電素板同士は個々にトレーで収納されているため、薄片状態の圧電素板は密着することなく保管することができ、個々の圧電素板単位を別途用意する枠状に複数枚の圧電素板をトレーの状態で整列することで、研磨加工後の洗浄処理工程にも容易につなげることができ、更にはトレーで収納した圧電素板状態であることから、洗浄工程時の研磨材の落ちも良く、短時間で洗浄することができる。
【0019】
上述する一連の作業から分かるように、研磨加工後圧電素板は個々にトレーで収納された状態になっていることから、洗浄処理工程から乾燥工程にまで、そのままの状態で工程を搬送することができ、乾燥工程でも洗浄工程時と同様に個々に収納された圧電素板の状態であることから、乾燥時の乾燥時間や乾燥作業の品質も向上することができる。そして更には、次工程に送る場合でも改めて圧電素板を整列されることが無いために、研磨加工後の全体的な作業を大幅に簡略化し時間短縮をすることができる。以上にように、研磨加工後に圧電素板を回収した後は、全体を通して直接圧電素板を触れることがないために、圧電素板の破損のおそれを改善することができ課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明は、研磨加工を終えた圧電素板を回収した以降は、圧電素板を個々の単位で専用トレーに収納し、場合によっては必要に応じて更にまとめた状態にまでブロック状態にして、洗浄処理、乾燥処理を行うことにより、研磨加工後の圧電素板の扱いを大幅に簡素化し、安全に圧電素板を取り扱うことにより、破損のおそれを改善し歩留まりと作業効率を向上し工数の削減を実現し、、研磨加工の品質を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面に従ってこの発明の実施例を説明する。なお、各図において同一の符号は同様の対象を示すものとする。なお、本発明の概念は図1に示す作業の流れにより説明するものである。従来から圧電素板の表面研磨は、表面研磨装置とその表面研磨装置に研磨材溶液を供給することにより行われている。
【0022】
研磨加工あるいは、鏡面加工を終えた圧電素板は、所望となる厚みにまで薄く処理された状態になっている。本発明では、研磨加工後次の手順で圧電素板を回収ことに特徴がある。
【0023】
まず、圧電素板は研磨装置により圧電素板の厚み研磨あるいは、表面鏡面加工が行われる。ここでは従来の技術により厚み研磨あるいは鏡面研磨が行われる。所望の加工が終了した時点で、研磨装置から圧電素板を回収する。
【0024】
この回収作業時には、例えば定盤上を圧電素板を滑らせながら、ひとつの圧電ウエハーに対応する樹脂材料でできた皿状のトレーに圧電素板を受ける格好で個々に圧電素板を回収する。そして、このトレーに収まった状態の圧電素板は、必要に応じてひとつの固まりとして、複数枚のトレーをまとめて例えば枠体からなる容器体(例えば洗浄枠)にこの皿状トレーを格納し、ひと固まりの状態で研磨加工後の圧電素板を処理するものである。
【0025】
ここでもひと固まりにまとめる容器体の材質についてもPPS(ポリ・フェニレンサルファイド)樹脂材料であれば十分であり、前述する皿状トレーと合わせてその材料についての限定要素は無い。しかしながら、研磨加工(鏡面加工)後の全ての工程でも兼用、共有して使えうこと考えると、耐フッ素系樹脂のテフロン(登録商標)材料などが最も有効である。
【0026】
加工を終え回収後は、洗浄工程、乾燥工程、あるいはその後製造工程にも、回収後の皿状のトレーに圧電素板を受ける格好と、このトレーを更にまとめた固まりとして処理することで、一貫して作業効率を改善することができる。
【0027】
以上に説明する加工後の回収作業により、従来方法のように水を入れた容器で一時的に保管することが無いために、工程間を移動するときにも非常に作業性がよくなり、圧電素板同士は個々にトレーで収納されているため、薄片状態の圧電素板は密着することなく保管することができ、個々の圧電素板単位を別途用意する枠状に複数枚の圧電素板をトレーの状態で整列することで、研磨加工後の洗浄処理工程にも容易につなげることができ、更にはトレーで収納した圧電素板状態であることから、洗浄工程時の研磨材の落ちも良く、短時間で洗浄することができる。また、乾燥時においても同様に作業効率を改善することができる。
【0028】
なお、上述する図1の流れを簡単な概念図で示したものが図2であり、図2に示す(A)から(C)では本発明の作業状態を示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の概念示す一連の作業の流れを説明するフロー図である。
【図2】図1を模式化した概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素板の表面研磨に研磨装置を用いて、前記圧電素板の厚み研磨あるいは、表面鏡面加工を行った後の前記表面研磨装置から前記圧電素板を回収する圧電素板の処理方法において、
前記厚み研磨あるいは、表面鏡面加工を行った後、前記圧電素板を専用トレーに回収する工程と、専用トレーを複数個まとめて格納する洗浄枠に収納し洗浄工程で洗浄する工程と、前記洗浄処理後乾燥工程で乾燥する工程を一貫して処理することを特徴とする研磨装置を用いて加工する圧電素板の処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の圧電素板はウエハー形状であることを特徴とする圧電素板の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−205313(P2006−205313A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22020(P2005−22020)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】