説明

地図スクロール制御装置およびこれを用いたナビゲーション装置、地図スクロール制御方法

【課題】操作性よく、ユーザの思い通りに方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせることが可能な「地図スクロール制御装置およびこれを用いたナビゲーション装置、地図スクロール制御方法」を提供する。
【解決手段】操作子3の押下操作情報の入力に応じてスクロールを実行するスクロール実行部21と、スクロールの継続中に操作子3の回転操作情報を入力した場合、スクロールを継続したままの状態で、回転操作情報に応じた方向にスクロール方向を変化させるスクロール方向変更部22とを設け、傾倒操作の方向をスクロールすべき方向に応じて逐次変えなければならないジョイスティックを操作する場合とは異なり、押下操作の方向を変える必要をなくすことで、操作子3の回転操作だけでスクロールの方向を簡単に変えられるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図スクロール制御装置およびこれを用いたナビゲーション装置、地図スクロール制御方法に関し、特に、ナビゲーション装置における地図表示のスクロールを制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車載用のナビゲーション装置では、自立航法センサやGPS(Global Positioning System)受信機などを用いて車両の現在位置を検出し、その近傍の地図データを記録媒体から読み出して画面上に表示する。そして、画面上の所定箇所に自車位置を示す車両位置マークを重ね合わせて表示することにより、車両が現在どこを走行しているのかを一目で分かるようにしている。
【0003】
この種のナビゲーション装置では、ユーザがリモートコントローラ(リモコン)のスクロールキーやジョイスティックを操作することにより、ナビゲーション画面上に表示されている地図を任意にスクロールさせることができるようになっている。このような地図スクロールは、例えば、これから走行する誘導経路の先方をあらかじめ確認したり、所望の施設を地図画面上で探したりする際などに行われる。
【0004】
ジョイスティックを用いた地図スクロールの場合は、当該ジョイスティックを任意の方向に倒すことにより、地図スクロールを行うことができるようになっている。具体的には、ジョイスティックを倒した方向でスクロール方向を決定するとともに、ジョイスティックを倒し続けることでスクロールを継続するようになっている。
【0005】
また、左右方向への回転操作と押下操作とが可能なターンノブの操作によって地図スクロールを行う装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の技術では、ターンノブを左右に回す操作に応じて地図のスクロール方向を決定するとともに、ターンノブを押し続ける操作に応じて地図がスクロールし続ける期間を決定するようになされている。例えば、ユーザがターンノブを回転して右下の方向を指示すると、ターンノブを押し続けることによって地図は右下の方向にスクロールする。
【特許文献1】特開2000−241170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ジョイスティックを用いた地図スクロールの場合、方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせる操作をユーザの思い通りに行うことが難しいという問題があった。すなわち、方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせるためには、どの方向も選択していないニュートラル状態に戻ろうとする復元力に抗してジョイスティックを倒し続けながら回転させなければならない。つまり、比較的大きな力を要する傾倒操作自体の方向を連続的に変えていかなければならず、ジョイスティックを傾倒させながらその傾倒方向を任意に変えていくことに操作上の難しさがあった。
【0007】
一方、特許文献1のようにターンノブを用いた地図スクロールの場合は、そもそも方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせることができないという問題があった。すなわち、特許文献1の場合、スクロール方向を決定するために行うターンノブの回転操作と、スクロールを継続するために行うターンノブの押下操作とが独立している。このため、スクロール方向を変えたいときは、いったん押下操作を止めて、回転操作によりスクロール方向を変え、その後再び押下操作によりスクロールを開始しなければならない。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、操作性よく、ユーザの思い通りに方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明では、操作子を押下操作することによって得られる押下操作情報の入力に応じてスクロールを実行するとともに、そのスクロールの継続中に、操作子を左右方向へ回転させることによって得られる回転操作情報を入力した場合、スクロールを継続したままの状態で、回転操作情報に応じた方向にスクロール方向を変化させるようにしている。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明によれば、操作子の押下操作情報で地図のスクロールが実行され、そのスクロールの継続中に、操作子の回転操作情報でスクロールの方向が変えられる。本発明の一態様では、押下操作情報を入力し続けている間、スクロールの実行が継続される。この場合、方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせるために、ユーザは所望のタイミングで操作子の回転操作を行うことに加えて、操作子の押下操作を継続して行う必要がある。しかし、傾倒操作の方向をスクロールすべき方向に応じて逐次変えなければならないジョイスティックを操作する場合とは異なり、押下操作の方向は常に変える必要がなく、操作子の回転操作だけでスクロールの方向を簡単に変えることができる。これにより、簡単な操作でユーザの思い通りに、方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせることができるようになる。
【0011】
また、本発明の別の態様では、押下操作情報を一度入力した後に再度入力するまでの間、その間に押下操作情報の入力が継続していなくてもスクロールの実行が継続される。この場合ユーザは、操作子を一度押下操作した後は、当該押下操作状態を維持しなくても、操作子の回転操作だけでスクロールを継続させながらその方向を変えることができる。すなわち、方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせるために、ユーザは、操作子を押下しながら回転させたり、傾倒したまま回転させたりするなど、2種類の操作を同時に行う必要がなく、操作子の回転操作だけで自由自在に地図をスクロールさせることができる。これにより、より簡単な操作でユーザの思い通りに、方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態による地図スクロール制御装置を適用したナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態のナビゲーション装置10は、表示装置1、表示制御部2、操作子3、操作情報入力部4、ナビマイコン5および地図DB(データベース)6を備えて構成されている。これらのうち、表示制御部2、操作情報入力部4およびナビマイコン5によって本発明の地図スクロール制御装置(本発明のスクロール実行手段、スクロール方向変更手段および地図復帰手段)が構成される。
【0013】
表示装置1は、地図DB6から読み出される地図画像(以下、単に地図という)を画面表示するための表示デバイスであり、例えばLCD(液晶表示装置)により構成される。表示制御部2は、本発明の表示制御手段に相当するものであり、表示装置1に対する地図の表示および当該地図のスクロールに関する表示制御を行う。この表示制御に関する動作の詳細は後述する。
【0014】
操作子3は、ユーザがナビゲーション装置10に対して各種の情報(例えば、誘導経路の目的地)を設定したり、各種の操作(例えば、メニュー選択操作、拡大/縮小操作、手動地図スクロール、数値入力など)を行ったりするための入力デバイスである。本実施形態では特に、操作子3は、表示装置1の画面上で地図をスクロールすべき方向に関する指示入力と、スクロールの実行に関する指示入力とを行うことが可能であり、例えば図2のように構成されている。
【0015】
図2に示す操作子3は、垂直方向への押下操作と左右方向への回転操作とを独立して、あるいは同時に行うことを可能に構成されたロータリ型スイッチである。すなわち、操作子3は、押下操作によって押下操作情報を発生する一方、回転操作によって回転操作情報を発生する。押下操作と回転操作とが同時に行われた場合(ユーザが操作子3を押下しながら回転させた場合)、操作子3は押下操作情報と回転操作情報とを同時に発生する。また、押下操作が継続して行われている場合、操作子3は押下操作情報を継続して発生し続ける。
【0016】
ここで、垂直方向への押下操作は、スクロールの実行をナビマイコン5に指示するための操作に対応する。また、左右方向への回転操作は、スクロールすべき方向をナビマイコン5に指示するための操作に対応する。すなわち、操作子3とは別の図示しない操作子によって地図スクロールモードを選択した後に、操作子3を押下および回転させることによって、表示装置1の画面上に表示された地図をスクロールさせることができる。
【0017】
操作情報入力部4は、本発明の操作情報入力手段に相当するものであり、操作子3の操作によって発生される押下操作情報および回転操作情報を操作子3から入力し、ナビマイコン5に供給する。操作情報入力部4は、押下操作情報および回転操作情報を操作子3から同時に受付可能に構成されており、押下操作情報および回転操作情報を同時に受け付けた場合は、これらを同時にナビマイコン5に供給する。
【0018】
ナビマイコン5は、ナビゲーション装置10の全体の制御を実行する。本実施形態では特に、操作情報入力部4から供給された押下操作情報および回転操作情報に基づいて表示制御部2に指示を出し、地図スクロールの実行を制御する。このときナビマイコン5は必要に応じて、地図DB6から地図データを読み出して表示制御部2に供給する。地図DB6は、地図表示や経路探索などに必要な各種の地図データを記憶した地図記録媒体であり、例えばDVD−ROM、CD−ROM、ハードディスクまたは半導体メモリなどにより構成されている。
【0019】
ナビマイコン5は、操作情報入力部4から押下操作情報が入力されたときに、スクロールの実行指示を表示制御部2に出力する。また、ナビマイコン5は、操作情報入力部4からの押下操作情報の入力が中断されたときに、地図復帰の指示を表示制御部2に出力する。また、ナビマイコン5は、操作情報入力部4から回転操作情報が入力されたときに、その回転操作情報に応じた方向へスクロールの方向を変更させるためのスクロール方向指示を表示制御部2に出力する。
【0020】
上述の表示制御部2は、ナビマイコン5からの指示を受けて、操作情報入力部4により入力される押下操作情報に応じて画面上の地図をスクロールさせるとともに、スクロールを実行している間に操作情報入力部4により入力される回転操作情報に基づいて、スクロールを継続したままの状態で回転操作情報に応じた方向にスクロール方向を変化させる制御を行う。この表示制御部2は、その機能構成として、スクロール実行部21、スクロール方向変更部22および地図復帰部23を備えている。
【0021】
スクロール実行部21は、操作子3を押下操作することによって得られる押下操作情報に応じて行われるナビマイコン5からの制御に従って、画面上の地図をスクロールさせる。具体的に、スクロール実行部21は、操作情報入力部4において操作子3から押下操作情報を入力し続けている間、ナビマイコン5からのスクロール実行指示を受けて、地図スクロールの実行を継続する。
【0022】
スクロール方向変更部22は、スクロール実行部21によりスクロールが実行されている間に、操作子3を左右方向へ回転させることによって得られる回転操作情報に応じて行われるナビマイコン5からの制御に従って、スクロールを継続したままの状態で回転操作情報に応じた方向にスクロール方向を変化させる。具体的に、スクロール方向変更部22は、操作情報入力部4が操作子3から回転操作情報を入力したときに、ナビマイコン5からのスクロール方向変更指示を受けて、スクロールの方向を変更する。
【0023】
以上のスクロール実行部21およびスクロール方向変更部22を備えることにより、表示制御部2は、操作情報入力部4が操作子3から押下操作情報を入力し続けている間はスクロールの実行を継続するとともに、当該スクロールを実行している間に断続的あるいは連続的に操作情報入力部4が操作子3から入力する回転操作情報に応じてスクロール方向を変化させる。
【0024】
図3は、このような地図スクロールの動作中に表示装置1に表示される画面例を示す図である。図3に示すように、地図スクロールの動作中は、地図画像30の上にカーソル31が表示され、カーソル31の位置を始点としてスクロール方向を示す矢印32が表示される。また、当該スクロール方向の矢印32の両側に、操作子3の回転操作によってスクロール方向を変更可能であることを示唆する矢印33が表示される。このような矢印32,33を表示することにより、どの方向にスクロール中であるか、操作子3のどのような操作によってスクロール方向を変えられるのかをユーザに分かりやすく見せることができる。
【0025】
地図復帰部23は、操作情報入力部4による押下操作情報の入力に応じてスクロール実行部21による地図スクロールが行われた後、当該押下操作情報の入力が停止したとき(スクロール実行部21によるスクロールの実行が終了したとき)に、画面上の地図をスクロールが行われる前の元の状態に復帰させる。具体的に、地図復帰部23は、操作子3から操作情報入力部4に対する押下操作情報の入力が中断したときに、ナビマイコン5からの地図復帰の指示を受けて、画面上の地図をスクロールが行われる前の元の状態に復帰させる。
【0026】
例えば、地図復帰部23は、スクロール実行部21によるスクロールの開始時に現在地情報を記憶しておく。そして、ナビマイコン5からの地図復帰の指示を受けたときに、記憶しておいた現在地情報を用いて現在地周辺の地図を地図DB6からナビマイコン5を介して取得し、表示装置1に表示する。なお、現在地情報ではなく、スクロールの開始時に表示装置1に表示されていた現在地周辺の地図画像そのものを記憶しておき、ナビマイコン5からの地図復帰の指示を受けたときに、記憶しておいた地図画像を表示装置1に表示するようにしても良い。
【0027】
上述のように、地図スクロールは、これから走行する誘導経路の先方をあらかじめ確認したり、所望の施設を地図画面上で探したりする際などに多く行われる。すなわち、ユーザは、現在地付近以外の場所を一時的に確認するためにスクロールを行うことが多く、確認終了後は現在地に地図を復帰させることが多い。従来は、スクロール操作の終了後に現在地に戻るための操作を別にしなければならなかったが、本実施形態では地図復帰部23を備えることにより、スクロールの終了後は地図画面を現在地(スクロール前の元の状態)に自動的に戻すことができる。
【0028】
次に、上記のように構成したナビゲーション装置10による地図スクロール制御の動作について説明する。図4は、第1の実施形態による地図スクロール制御の動作を示すフローチャートである。なお、図4に示すフローチャートの動作は、地図スクロールのモードが選択された状態から開始する。
【0029】
図4において、表示制御部2は、ナビマイコン5によってスクロールモードが設定されたことに対応して、図3に示したカーソル31および矢印32,33を地図画面上に表示させる(ステップS1)。なお、スクロールモード設定時の初期段階では、スクロール方向は前方に設定されており、スクロール方向を示唆する矢印32は画面上方を向いている。その後、操作情報入力部4は、操作子3を押下操作することによって発生する押下操作情報が操作子3から入力されたか否かを判定する(ステップS2)。
【0030】
ここで、押下操作情報を入力したと判断した場合、操作情報入力部4は、入力した押下操作情報をナビマイコン5に供給する。押下操作情報を入力したナビマイコン5は、表示制御部2にスクロールの実行を指示する。このスクロールの実行指示を受けた表示制御部2は、画面上の地図をスクロールさせる(ステップS3)。なお、スクロール開始時の初期段階では、スクロール方向は前方(画面上方)に設定されている。
【0031】
次に、操作情報入力部4は、操作子3を左右方向へ回転させることによって発生する回転操作情報が操作子3から入力されたか否かを判定する(ステップS4)。ここで、操作情報入力部4が回転操作情報を入力していないと判断した場合、処理はステップS7に進む。ステップS7では、操作子3から押下操作情報が入力されているか否かを操作情報入力部4が再び判定する。
【0032】
ここで、押下操作情報が入力されていると操作情報入力部4にて判断した場合には、処理はステップS3に戻る。この場合、操作情報入力部4は、入力した押下操作情報をナビマイコン5に供給する。押下操作情報を入力したナビマイコン5は、表示制御部2にスクロールの実行を指示する。このスクロールの実行指示を受けた表示制御部2は、画面上の地図をスクロールさせる。このように、操作情報入力部4が操作子3から押下操作情報を入力し続けている間、表示制御部2はスクロール動作を継続する。
【0033】
一方、以上のようなスクロールの継続中に、ステップS4で操作情報入力部4が操作子3から回転操作情報を入力したと判断した場合、操作情報入力部4は、入力した押下操作情報をナビマイコン5に供給する。回転操作情報を入力したナビマイコン5は、表示制御部2にスクロール方向の変更を指示する。このスクロール方向の変更指示を受けた表示制御部2は、画面上の矢印32,33の方向を回転操作情報に応じた方向に変化させるとともに(ステップS5)、スクロールを継続したままの状態で回転操作情報に応じた方向にスクロール方向を変化させる(ステップS6)。その後、処理はステップS7に進む。
【0034】
上記ステップS2において、操作情報入力部4が押下操作情報を入力していないと判断した場合、操作情報入力部4は、引き続き回転操作情報を入力したか否かを判定する(ステップS8)。ここで、操作情報入力部4が回転操作情報を入力していないと判断した場合、処理はステップS2に戻る。
【0035】
一方、操作情報入力部4が回転操作情報を入力したと判断した場合、操作情報入力部4は、入力した押下操作情報をナビマイコン5に供給する。回転操作情報を入力したナビマイコン5は、表示制御部2にスクロール方向の変更を指示する。このスクロール方向の変更指示を受けた表示制御部2は、画面上の矢印32,33の方向を回転操作情報に応じた方向に変化させるとともに(ステップS9)、スクロールは行っていない状態のままで、回転操作情報に応じた方向にスクロール方向の設定を変化させる(ステップS10)。
【0036】
スクロール方向の設定を変更した後、処理はステップS2に戻る。なお、ステップS10からステップS2に戻った後、押下操作情報の入力に応じてステップS3に進みスクロールを開始するときは、初期設定の前方ではなく、ステップS10で設定された方向にスクロールを開始する。このように、本実施形態では、ユーザは操作子3の押下操作を先に行うか回転操作を先に行うかを特に意識せずとも、スクロールを開始することができる。
【0037】
上記ステップS7において、押下操作情報が入力されていない(つまり、操作子3の押下操作が中断された)と操作情報入力部4にて判断した場合、操作情報入力部4は、ナビマイコン5に対する押下操作情報の出力を停止する。ナビマイコン5は、操作情報入力部4から入力される押下操作情報の中断を受けて、スクロール実行指示の出力を中止するとともに、表示制御部2に地図復帰の実行を指示する。この地図復帰の実行指示を受けた表示制御部2は、現在地に地図を復帰させる(ステップS11)。
【0038】
以上詳しく説明したように、第1の実施形態では、操作子3の押下操作によって発生する押下操作情報の入力が続いている間はスクロールを継続して実行するとともに、そのスクロールの継続中に、操作子3の左右方向への回転操作によって発生する回転操作情報を入力した場合、スクロールを継続したままの状態で、回転操作情報に応じた方向にスクロール方向を変化させるようにしている。
【0039】
この場合、方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせるために、ユーザは、所望のタイミングで操作子3の回転操作を行うことに加えて、操作子3の押下操作を継続して行う必要がある。しかし、傾倒操作の方向をスクロールすべき方向に応じて逐次変えなければならないジョイスティックを操作する場合とは異なり、押下操作の方向は常に垂直方向で変える必要がなく、操作子3の回転操作だけでスクロールの方向を簡単に変えることができる。しかも、操作子3はロータリ式で、ジョイスティックに比べて回転操作が行いやすい。これにより、簡単な操作でユーザの思い通りに、方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。図5は、第2の実施形態による地図スクロール制御装置を適用したナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。
【0041】
図5に示すように、第2の実施形態によるナビゲーション装置20は、表示装置1、表示制御部2’、操作子3、操作情報入力部4、ナビマイコン5’および地図DB6を備えている。また、表示制御部2’は、その機能構成として、スクロール実行部21’、スクロール方向変更部22および地図復帰部23’を備えている。なお、図5において、図1に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0042】
ナビマイコン5’は、操作情報入力部4から1回目の押下操作情報が入力されたときに、スクロールの開始指示を表示制御部2’に出力する。また、ナビマイコン5’は、操作情報入力部4から2回目の押下操作情報が入力されたときに、スクロールの終了指示を表示制御部2’に出力するとともに、地図復帰の指示を表示制御部2’に出力する。また、ナビマイコン5’は、操作情報入力部4から回転操作情報が入力されたときに、その回転操作情報に応じたスクロール方向指示を表示制御部2’に出力する。
【0043】
スクロール実行部21’は、操作子3を押下操作することによって得られる押下操作情報に応じて行われるナビマイコン5’からの制御に従って、画面上の地図をスクロールさせる。具体的に、スクロール実行部21’は、操作情報入力部4が操作子3から最初に押下操作情報を入力してから、押下操作情報を再び入力するまでの間、押下操作情報の入力が継続していなくてもスクロールの実行を継続する。すなわち、スクロール実行部21’は、操作子3の1回目の押下操作に応じてナビマイコン5’から入力されるスクロール開始指示に従ってスクロールを開始し、2回目の押下操作に応じてナビマイコン5’から入力されるスクロール終了指示に従ってスクロールを終了する。
【0044】
地図復帰部23’は、操作情報入力部4により1回目の押下操作情報が入力されてスクロール実行部21’によるスクロールの実行が開始された後、操作情報入力部4により2回目の押下操作情報が入力されてスクロール実行部21’によるスクロールの実行が終了したときに、画面上の地図をスクロールが行われる前の元の状態に復帰させる。すなわち、地図復帰部23’は、操作子3の2回目の押下操作に応じてナビマイコン5’から入力される地図復帰の指示に従って、画面上の地図をスクロールが行われる前の元の状態に復帰させる。
【0045】
次に、上記のように構成したナビゲーション装置20による地図スクロール制御の動作について説明する。図6は、第2の実施形態による地図スクロール制御の動作を示すフローチャートである。なお、図6において、図4に示したステップ番号と同一の番号を付した処理は同一の処理を行うものであるので、ここでは重複する説明を省略する。図6において図4と異なる点は、ステップS7での判定結果に応じた処理の遷移先である。
【0046】
すなわち、図6のフローチャートでは、1回目の押下操作情報の入力(ステップS2)に応じてスクロールを開始した後(ステップS3)、操作子3から2回目の押下操作情報がまだ入力されていないと操作情報入力部4にて判断した場合(ステップS7にてNo)、処理はステップS3に戻る。この場合、ナビマイコン5’は、操作情報入力部4から操作情報が何も入力されないので、表示制御部2’に対して何ら指示を出力しない。表示制御部2’は、ナビマイコン5’からスクロール終了指示が与えられない限り、スクロールを継続して実行する。
【0047】
一方、操作子3から2回目の押下操作情報が入力されたと操作情報入力部4にて判断した場合(ステップS7にてYes)、処理はステップS11に進む。この場合、操作情報入力部4は、2回目の押下操作情報をナビマイコン5’に供給する。2回目の押下操作情報を入力したナビマイコン5’は、表示制御部2’に対してスクロール終了指示および地図復帰指示を出力する。表示制御部2’は、スクロール終了指示に応じて、継続中であったスクロール動作を中止するとともに、地図復帰指示に応じて、現在地周辺に地図を復帰させる。
【0048】
以上詳しく説明したように、第2の実施形態では、操作情報入力部4が操作子3から押下操作情報を一度入力すれば、その後で押下操作情報を再度入力するまでの間は、押下操作情報の入力が継続していなくてもスクロールの実行を継続するようにしている。そして、そのスクロールの継続中に、操作子3の左右方向への回転操作によって発生する回転操作情報を操作情報入力部4が入力した場合、スクロールを継続したままの状態で、回転操作情報に応じた方向にスクロール方向を変化させるようにしている。
【0049】
この場合ユーザは、操作子3を一度押下操作した後は、当該押下操作状態を維持しなくても、操作子3の回転操作だけでスクロールを継続させながらその方向を変えることができる。すなわち、方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせるために、ユーザは、操作子3を押下しながら回転させするといった2種類の操作を同時に行う必要がなく、操作子3の回転操作だけで自由自在に地図をスクロールさせることができる。これにより、より簡単な操作でユーザの思い通りに、方向を変えながら連続的に地図をスクロールさせることができる。
【0050】
なお、上記第1および第2の実施形態では、操作子3として図2のようなロータリ型スイッチを用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、垂直方向への押下操作と左右方向への回転操作とを独立して、あるいは同時に行うことが可能な操作子であれば、図2のような構成でなくても良い。また、押下操作の方向も、一方向であれば垂直方向である必要はない。
【0051】
例えば、図7に示すように、内軸に略円柱状の8方向スイッチ41を備えるとともに、外軸にリング状のロータリ型スイッチ42を備えた操作子であっても良い。この場合、リング状のロータリ型スイッチ42を垂直方向に押下可能に構成するとともに、左右方向に回転可能に構成する。ロータリ型スイッチ42は、押下操作によって押下操作情報を発生する一方、回転操作によって回転操作情報を発生する。
【0052】
また、ロータリ型スイッチ42のリング側面に、内軸方向に向かって押下操作可能なスイッチを設けた操作子を用いても良い。この場合、ロータリ型スイッチ42は、リング自体を下方に押下する構造ではなく、リング側面に設けられたスイッチを内軸方向に押下する構造を持つ。このような操作子を用いた場合、ロータリ型スイッチ42をつまむときにリング側面のスイッチをほぼ自然に押下することができる。このため、第1の実施形態のように操作子3を押下しながら回転する操作を、より一層行いやすくすることができる。
【0053】
また、上記第1および第2の実施形態では特に言及していないが、スクロールを開始してから所定時間経過後に、スクロール速度をそれまでよりも速くするようにしても良い。スクロールを開始してから所定時間経過後は、スクロール速度の向上に合わせて、スクロール方向の変更速度もそれまでよりも速くする。スクロールの変更速度を上げた後に操作子3の回転操作が行われた場合、矢印32,33の方向の表示変更速度も速くする。
【0054】
また、スクロールモードが設定された場合、地図画面を左右の領域に2分割表示し、一方の領域は現在地周辺の地図を表示したままとし、他方の領域でスクロールを実行するようにしても良い。このようにすれば、いつでも現在地周辺の地図を確認できる状況を残しつつ、これから走行する誘導経路の先方を確認したり、所望の施設を地図画面上で探したりすることができる。また、スクロールを実行した領域の方に、スクロールの軌跡を表示するようにしても良い。
【0055】
また、スクロールが終了して画面上の地図をスクロールが行われる前の元の状態に復帰させる際に、地図画面を左右の領域に2分割表示し、一方の領域は現在地周辺の地図に復帰させ、他方の領域はスクロール終了時の地図を表示したままとしても良い。このようにすれば、ユーザは、現在地周辺の地図とスクロール先の地図とを2画面で確認しながら運転することが可能となる。
【0056】
その他、上記第1および第2の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の実施形態による地図スクロール制御装置を適用したナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による操作子の構成例を示す図である。
【図3】本実施形態のスクロール時に表示される画面例を示す図である。
【図4】第1の実施形態による地図スクロール制御の動作を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態による地図スクロール制御装置を適用したナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】第2の実施形態による地図スクロール制御の動作を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態による操作子の他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 表示装置
2,2’ 表示制御部
3 操作子
4 操作情報入力部
5,5’ ナビマイコン
6 地図DB
21,21’ スクロール実行部
22 スクロール方向変更部
23,23’ 地図復帰部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作子を押下操作することによって得られる押下操作情報を入力し、当該押下操作情報に応じて画面上の地図をスクロールさせるスクロール実行手段と、
上記スクロール実行手段により上記スクロールが実行されている間に、上記操作子を左右方向へ回転させることによって得られる回転操作情報を入力し、上記スクロールを継続したままの状態で上記回転操作情報に応じた方向にスクロール方向を変化させるスクロール方向変更手段とを備えたことを特徴とする地図スクロール制御装置。
【請求項2】
上記スクロール実行手段は、上記押下操作情報を入力し続けている間、上記スクロールの実行を継続することを特徴とする請求項1に記載の地図スクロール制御装置。
【請求項3】
上記押下操作情報の入力が停止して上記スクロール実行手段による上記スクロールの実行が終了したときに、画面上の地図を上記スクロールが行われる前の元の状態に復帰させる地図復帰手段を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の地図スクロール制御装置。
【請求項4】
上記スクロール実行手段は、上記押下操作情報を入力してから、上記押下操作情報を再び入力するまでの間、上記押下操作情報の入力が継続していなくても上記スクロールの実行を継続することを特徴とする請求項1に記載の地図スクロール制御装置。
【請求項5】
上記押下操作情報が入力されて上記スクロール実行手段による上記スクロールの実行が終了したときに、画面上の地図を上記スクロールが行われる前の元の状態に復帰させる地図復帰手段を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の地図スクロール制御装置。
【請求項6】
画像による地図を画面表示する表示装置と、
押下操作によって押下操作情報を発生する一方、左右方向への回転操作によって回転操作情報を発生する操作子と、
上記操作子から発生する上記押下操作情報および上記回転操作情報を入力する操作情報入力手段と、
上記操作情報入力手段により入力される上記押下操作情報に応じて上記画面上の地図をスクロールさせるとともに、上記スクロールを実行している間に上記操作情報入力手段により入力される上記回転操作情報に基づいて、上記スクロールを継続したままの状態で上記回転操作情報に応じた方向にスクロール方向を変化させる表示制御手段とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
上記操作情報入力手段は、上記押下操作情報および上記回転操作情報を同時に受付可能に構成され、
上記表示制御手段は、上記操作情報入力手段により上記押下操作情報を入力し続けている間、上記スクロールの実行を継続するとともに、当該スクロールを実行している間に上記操作情報入力手段により入力される上記回転操作情報に応じて上記スクロール方向を変化させることを特徴とする請求項6に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
上記表示制御手段は、上記操作情報入力手段による上記押下操作情報の入力が停止したときに、画面上の地図を上記スクロールが行われる前の元の状態に復帰させることを特徴とする請求項7に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
操作子を押下操作することによって発生する押下操作情報の入力があるか否かを判定し、当該押下操作情報の入力がある場合に、画面上の地図をスクロールさせる第1のステップと、
上記第1のステップで上記スクロールが実行されている間、上記操作子を左右方向へ回転させることによって発生する回転操作情報の入力があるか否かを判定し、当該回転操作情報の入力がある場合に、上記スクロールを継続したままの状態で当該回転操作情報に応じた方向にスクロール方向を変化させる第2のステップとを有することを特徴とする地図スクロール制御方法。
【請求項10】
上記押下操作情報の入力がなくなって上記スクロールの実行が終了したときに、画面上の地図を上記スクロールが行われる前の元の状態に復帰させる第3のステップを更に有することを特徴とする請求項9に記載の地図スクロール制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−97556(P2010−97556A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269935(P2008−269935)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】