説明

地図データ補正装置

【課題】 観測する位置参照点の数を減らすことで観測コストを軽減することができる地図データ補正装置を得る。
【解決手段】 地図補正対象エリアの地図データを記憶する地図データ記憶部3と、地図データをメッシュ状に画定した領域に区分けする地図データ読み出し部41と、区分けされたメッシュ毎に地図補正に用いる位置参照候補点を抽出する位置参照候補点抽出部42と、各位置参照候補点におけるGPS測量に対する適合度であるGPS適合度を算出するGPS適合度算出部43と、GPS適合度に基づいて位置参照候補点を抽出すると共に、各メッシュ内に設定した、現実の位置情報を取得する位置参照点の許容数を超えない範囲で抽出した位置参照候補点から位置参照点を選択する位置参照点選択部44と、位置参照点選択部44により選択された位置参照点の位置情報をGPS測量を利用して取得する位置参照点観測部1と、位置参照点観測部1が取得した位置情報に基づいて当該地図データを補正する地図補正部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、GPS(Global Positioning System)によって観測される位置情報を使用して地図補正を行う地図データ補正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の地図データ補正装置には、例えば特許文献1に開示されるものがある。この地図データ補正装置では、CPU、記憶装置および表示画面を有するモバイルコンピュータを本体システムとして用い、さらにGPS受信設備、およびGPS補正情報を取得するための通信設備(携帯電話)を備える構成となっていた。
【0003】
地図を補正する際には、ユーザが補正対象である元地図上で、位置参照点をマウス等で選択する。ここで、位置参照点とは、補正のための基準データとしてその実測位置情報を取得する地点のことを言う。地図データ補正装置は、ユーザが選択した位置参照点の位置情報をGPS測量により取得し、位置参照点のこの実測した正確な位置情報に基づいて、モバイルコンピュータにおいてアフィン変換等の公知の技術により元地図データを補正する。
【0004】
【特許文献1】特開2002−341757号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の地図データ補正装置は上記のように構成されているので、観測する位置参照点の数分の観測コストがかかり、その数を減らすことで観測コストを軽減するといった工夫がなされていないという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、観測する位置参照点の数を減らすことで観測コストを軽減することができる地図データ補正装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る地図データ補正装置は、地図補正対象エリアの地図データを記憶する地図データ記憶手段と、地図データを1以上のメッシュに画定した領域に区分けする区分け手段と、区分けされた地図データの各メッシュから地図補正に用いる位置参照候補点を抽出する位置参照候補点抽出手段と、各位置参照候補点におけるGPS適合度を算出する適合度算出手段と、GPS適合度に基づいて位置参照候補点を抽出すると共に、各メッシュ内に設定した位置参照点の許容数を超えない範囲で抽出した位置参照候補点から位置参照点を選択する位置参照点選択手段と、位置参照点選択手段により選択された位置参照点の位置情報をGPS測量を利用して取得する位置情報取得手段と、位置情報取得手段が取得した位置情報に基づいて当該地図データを補正する地図補正手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、地図データ補正装置が、地図補正対象エリアの地図データを記憶する地図データ記憶手段と、地図データを1以上のメッシュに画定した領域に区分けする区分け手段と、区分けされた地図データの各メッシュから地図補正に用いる位置参照候補点を抽出する位置参照候補点抽出手段と、各位置参照候補点におけるGPS適合度を算出する適合度算出手段と、GPS適合度に基づいて位置参照候補点を抽出すると共に、各メッシュ内に設定した位置参照点の許容数を超えない範囲で抽出した位置参照候補点から位置参照点を選択する位置参照点選択手段と、位置参照点選択手段により選択された位置参照点の位置情報をGPS測量を利用して取得する位置情報取得手段と、位置情報取得手段が取得した位置情報に基づいて当該地図データを補正する地図補正手段とを備えるように構成したので、GPS測量点数を低減でき、観測コストを軽減することができる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による地図データ補正装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように地図データ補正装置は、位置参照点観測部(位置情報取得手段)1、位置参照点記憶部2、地図データ記憶部3、位置参照点取得部4、地図補正部(地図補正手段)5を備える。位置参照点取得部4は、地図データ読み出し部(区分け手段)41、位置参照候補点抽出部(位置参照候補点抽出手段)42、GPS適合度算出部(適合度算出手段)43、位置参照点選択部(位置参照点選択手段)44を備える。
【0010】
位置参照点観測部1は、GPSにより位置参照点の位置情報、例えば位置座標を取得する。位置参照点記憶部2は、位置参照点観測部1によって取得された位置参照点の位置情報を記憶する。地図データ記憶部3は地図補正対象エリアの地図データを記憶する。位置参照点取得部4は、地図補正に用いる位置参照点を選択する。地図補正部5は、位置参照点取得部4により選択された位置参照点の位置情報を用いて地図補正を行う。
【0011】
図2は地図データ補正装置の動作を示すフローチャートである。この図を参照して動作について説明する。
通常、地図データは、地図全体が例えば国土地理院の数値地図2500にあるようにメッシュ分割され、1つのメッシュ領域を1つの地図データファイルとして表現している。まず、地図データ読み出し部41は、地図データ記憶部3から地図データを読み出し、補正対象エリアを地図全体と同様に1以上のメッシュに画定した領域に分割(区分け)する(ステップST101)。
【0012】
次に、位置参照点の候補となる位置参照候補点を上記分割したメッシュ毎に以下に示す方法で抽出する(ステップST102)。位置参照候補点抽出部42は、位置参照点記憶部2に記憶される位置参照点のうち、各メッシュ領域内に存在するものを位置参照候補点として抽出する(ステップST103)。
【0013】
続いて、抽出した位置参照候補点から既定の距離だけ離れたエリア内(例えば半径100mの同心円内等)において、補正対象データ内のマンホール、道路境界線上の点をさらに位置参照候補点として抽出する(ステップST104)。ステップST103、ステップST104で抽出した各位置参照候補点をGPS適合度算出部43に供給する。GPS適合度算出部43は、抽出された位置参照候補点毎にGPS適合度を算出する(ステップST105)。
【0014】
GPS適合度とは、GPS測量に適している度合いを表す指標で、次式(1)で定義される。ある位置のGPS適合度は、周辺に高層ビルが少なく、上空が開けているほど、大きな値を示す。
GPS適合度
=B−位置参照点を中心とする半径Rmの同心円内に存在する高層ビル(N階以上) の個数 (1)
ここで、B,R,Nは観測に用いるGPSの感度等に応じて経験的に決定される値である。
GPS適合度算出部43は、満たすべきGPS適合度に関する既定値を予め保持しており、算出したGPS適合度が既定値以上の位置参照候補点のみを位置参照点選択部44に供給する。
【0015】
位置参照点選択部44は、メッシュ領域毎に予め定められた位置参照候補点基準値(許容数)を保持しており、この許容数を超えない範囲で位置参照候補点から位置参照点を選択する。すなわち、各メッシュ領域内の位置参照候補点の数と上記対応する基準値とを比較し(ステップST106)、メッシュ領域内の位置参照候補点の数が基準値以下である場合は、全ての位置参照候補点を位置参照点として選択する(ステップST107)。この場合、位置参照点選択部44はすべての位置参照点を位置参照点観測部1に供給する。一方、メッシュ領域内の位置参照候補点の数が基準値より多い場合は、算出したGPS適合度の高い順に基準値の数分だけ選択し、これらを位置参照点として位置参照点観測部1に供給する。
【0016】
位置参照点観測部1は位置参照点を取得すると、未観測、すなわち位置参照点記憶部2に格納されていない位置参照点の位置情報をGPS測量する(ステップST108)。位置参照点選択部44は、位置参照点観測部1および位置参照点記憶部2から位置参照点の位置情報を取得し、この位置情報をメッシュ毎の地図データと共に地図補正部5に供給する。地図補正部5は、取得した位置参照点の位置情報と上記メッシュ毎の地図データを用いて、アフィン変換等の公知の技術により地図補正を行う(ステップST110)と共に、このメッシュ毎に補正した地図データを最終的に結合して1地図データファイルとする。
【0017】
以上のように、この実施の形態1によれば、補正対象地図データをメッシュ構造に区分けし、位置参照点取得部4がメッシュ領域毎にGPS測量への適合度に基づいて位置参照点を選定するようにしたので、選定された位置参照点の位置情報は相対的に精度の高いものとなっている。従って、従来よりも位置参照点数を少なくしても補正精度の劣化は小さい。すなわち補正精度の劣化を抑えつつ、GPS測量点数を低減できるので、観測コストを軽減できる。
【0018】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2による地図データ補正装置の動作を示すフローチャートである。この図は、実施の形態1で示した図2のステップST109をステップST111〜ステップST114に改変したものである。この図を参照して実施の形態2による地図データ補正装置の動作について説明する。なお、ステップST111〜ステップST114以外の動作は実施の形態1で説明した動作と同様であるので省略する。
【0019】
位置参照点選択部44は、ステップST106で各メッシュ領域内の位置参照候補点の数とその基準値とを比較し、位置参照候補点が基準値より多い場合はその旨を地図データ読み出し部41に通知する。地図データ読み出し部41は、各メッシュ領域を既定のメッシュ分割仕様に基づいてサブメッシュ化する(ステップST111)。続いて、位置参照候補点抽出部42はサブメッシュ毎に位置参照候補点を抽出し、GPS適合度算出部43は各サブメッシュ領域における各位置参照候補点のGPS適合度を、実施の形態1の式(1)を用いて算出し、サブメッシュ毎に各位置参照候補点のGPS適合度の和を求める(ステップST112)。このGPS適合度の和をGPSエリア適合度とする。
【0020】
位置参照点選択部44は、予め定められたGPSエリア適合度に関する既定値を保持しており、算出したGPSエリア適合度と上記既定値とに基づいて、許容数を超えない範囲で位置参照点を選択する。具体的には、GPSエリア適合度が既定値より小さい場合には、当該サブメッシュに隣接するサブメッシュのうち最もGPSエリア適合度の大きいサブメッシュを選択してマージする(ステップST113)。図4は、位置参照点選択部44によるマージ処理の手順を示すフローチャートである。位置参照点選択部44は、全サブメッシュ領域のGPSエリア適合度が既定値以上であるか否かを判定し(ステップST1131)、既定値以上でない場合は、GPSエリア適合度が既定値以下の全サブメッシュに対し、隣接するサブメッシュのうち最もGPSエリア適合度が大きいサブメッシュを選択してマージする(ステップST1132)。位置参照点選択部44はこの手順で全サブメッシュ領域のGPSエリア適合度が既定値以上になるまでマージ処理を繰り返す。
【0021】
位置参照点選択部44は、サブメッシュ毎に最もGPS適合度が大きい点を位置参照点として決定する(ステップST114)。位置参照点選択部44は、ステップST111〜ステップST114までの処理を、位置参照点の総数が各メッシュ内の位置参照点の総数の既定値となるまで繰り返す。位置参照点選択部44は、決定した位置参照点を位置参照点観測部1に供給する。以降の処理は実施の形態1で説明した動作と同様である。
【0022】
以上のように、この実施の形態2によれば、位置参照点選択部44が、各メッシュ領域をサブメッシュ分割し、サブメッシュ毎に最もGPS適合度が大きい点を位置参照点として決定することで、実施の形態1に示した場合と比較して位置参照点がメッシュ領域内でより一様に分布することになり、特定の場所に偏って存在する場合等に比べて補正精度が向上する。
【0023】
実施の形態3.
この実施の形態3では、実施の形態1または実施の形態2に示した地図データ記憶部3が、レーダ測量等によって取得される補正対象エリアの三次元地図情報を保持するようにする。位置参照点取得部4のGPS適合度算出部43は、位置参照点のGPS適合度を求める際に、当該三次元地図情報を参照し、各位置参照点において仰角が、所定の角度、例えば15度または20度内の位置にGPS測量の障害となりうる建造物等の物体が存在するか否かを判定する。ここでは、GPS適合度を以下の式(2)で定義する。
GPS適合度=B−所定の角度の仰角範囲内に存在する物体の個数 (2)
【0024】
以上のように、地図データ記憶部3が補正対象エリアの三次元地図情報を保持し、位置参照点選択部44が、位置参照点のGPS適合度を求める際にGPS測量の障害となりうる建造物の個数を考慮して求めるようにしたので、GPSの電波の受信精度を向上させることができ、GPS電波の受信感度を考慮して作成する各位置参照点の観測に関する計画の裕度が高くなりGPS測量が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態1による地図データ補正装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による地図データ補正装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2による地図データ補正装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2に係る位置参照点選択部によるマージ処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
1 位置参照点観測部(位置情報取得手段)、2 位置参照点記憶部、3 地図データ記憶部、4 位置参照点取得部、5 地図補正部(地図補正手段)、41 地図データ読み出し部(区分け手段)、42 位置参照候補点抽出部(位置参照候補点抽出手段)、43 GPS適合度算出部(適合度算出手段)、44 位置参照点選択部(位置参照点選択手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS測量により実測した位置情報に基づいて地図データを補正する地図データ補正装置において、
地図補正対象エリアの地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記地図データを1以上のメッシュに画定した領域に区分けする区分け手段と、
前記区分けされた地図データの各メッシュから地図補正に用いる位置参照候補点を抽出する位置参照候補点抽出手段と、
前記各位置参照候補点におけるGPS適合度を算出する適合度算出手段と、
前記GPS適合度に基づいて位置参照候補点を抽出すると共に、各メッシュ内に設定した位置参照点の許容数を超えない範囲で前記抽出した位置参照候補点から位置参照点を選択する位置参照点選択手段と、
前記位置参照点選択手段により選択された位置参照点の位置情報をGPS測量を利用して取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段が取得した位置情報に基づいて当該地図データを補正する地図補正手段とを備えた地図データ補正装置。
【請求項2】
区分け手段は、位置参照点選択手段によりGPS適合度に基づいて抽出された位置参照候補点がメッシュ内に設定した位置参照点の許容数を超える場合、当該メッシュをさらにサブメッシュに区分けし、
位置参照候補点抽出手段は、区分けされたサブメッシュ毎に地図補正に用いる位置参照候補点を抽出し、
適合度算出手段は、前記各位置参照候補点におけるGPS適合度を算出すると共に、前記サブメッシュ毎に各位置参照候補点のGPS適合度の合計値を求め、
前記位置参照点選択手段は、前記メッシュ内に設定した位置参照点の許容数を超えない範囲で、前記GPS適合度の合計値に基づいてサブメッシュを選択すると共に、前記GPS適合度に基づいて、前記選択したサブメッシュ内の位置参照候補点から位置参照点を選択することを特徴とする請求項1記載の地図データ補正装置。
【請求項3】
地図データ記憶手段は、地図データと共に、前記地図データに関する三次元地図情報を記憶し、
適合度算出手段は、前記三次元地図情報を参照して、GPS測量において位置情報の取得の障害となりうる物体を検索し、当該検索結果に基づいて前記障害となりうる物体を考慮したGPS適合度を算出することを特徴とする請求項1または請求項2記載の地図データ補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−58669(P2006−58669A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241228(P2004−241228)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】