説明

地図情報の表示方法

ナビゲーションシステムに対する地図情報を表示する方法であって、該ナビゲーションシステムで地図情報は地図部分を表示する面(20,21)と、交通路網を表示する線(18,19)とを有する。面情報の表示を付加的背景情報によって改善するために、本発明では、面(20,21)の表示を2次元または3次元ビューにおいて少なくとも部分的に航空写真および/または衛星写真に基づいて発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションシステムに対する地図情報を表示する方法に関するものであり、このナビゲーションシステムで地図情報は地図部分を表示する面と、交通路網を表示する線とを有する。本発明はさらに、本発明の方法を実施するためのナビゲーションシステムに関する。
【0002】
ナビゲーションシステムは最近、とりわけ自動車でのモバイル使用においてますます普及している。公知のシステムでは基本機能として「位置特定」、「目的地選択」、「ルート計算」および「目的地案内」を実現している。すべての機能に対して道路網のデジタル地図が必要であり、このデジタル地図は通常はCD−ROM、DVDまたはハードディスクに格納および記憶されている。
【0003】
付加的に有利にはカラー地図を表示することができる。カラー画面に地図を表示することはシステムに応じて、約1:8,000から1:16,000,000の縮尺で行うことができる。この表示は、縮尺に応じて走行ルートに関する概観を詳細にまたは広域で得るのに助けとなる。位置特定は地形的情報、例えば建物、河川、森、および鉄道区間により容易になる。
【0004】
地図表示を行う実際のナビゲーションシステムでは、情報がベクトル地図の形態でカラー画面に表示される。ベクトル化によって、基礎となる同じ記憶データに基づいて、表示尺度を変更することができる。
【0005】
この地図表示では全体情報が面、線、および点から合成される。面を種々異なって着色することにより、表示すべき領域が特徴付けられる。例えば都市面、すなわち集落にはしばしば赤色が付される。青い面により河川、海洋が表され、種々異なる緑色により田畑ないしは森林が表される。表示では種々異なる太さと色の線が種々の道路、鉄道区間ないしは川に対して使用される。さらなる形態エレメントとして個々の点ないしはアイコンがいわゆるPOI(興味ポイント)、例えばガソリンスタンド、工場、ホテル等に対して全体の地図表示に挿入される。
【0006】
面表示は極端に簡素化されており、従って非常に抽象化されている。高解像度の表示でも、すなわちとりわけ詳細な環境でも、表示からはユーザの位置特定を容易にすることとなる付加的情報を取り出すことができない。
【0007】
従って本発明の課題は、ナビゲーションシステムに対する地図の面情報表示を、背景情報を拡張することによって改善することである。
【0008】
この課題は本発明により、面の表示を2次元または3次元ビューにおいて少なくとも部分的に航空写真および/または衛星写真に基づいて発生することによって解決される。この付加的な、構造化された背景情報、例えば建築物輪郭および田畑は、ユーザに地図情報を実際の環境で伝達するのに助けとなる。これによりユーザの位置特定は格段に容易になる。3次元ビューによって鳥瞰的表示が可能である。
【0009】
本発明の方法の有利な構成では、航空写真および/または衛星写真の解像度が表示すべき地図部分に依存して変化される。これにより表示精度を状況に合わせて適合することができる。
【0010】
本発明の方法の有利な改善形態では、航空写真および/または衛星写真の解像度が少なくとも1つの構造パラメータに依存して変化する。このことにより、必要なデータ量を有利に低減することができる。例えば重要な領域では比較的高い解像度が、すなわち表示すべき個々のオブジェクトを比較的高い精度で出力すると有利である。ナビゲーションシステムで使用するのに重要でない領域に対しては、解像度およびひいては記憶すべきデータ量を低減することができる。
【0011】
有利な構造パラメータとして、面積当りの平均的人口が考慮される。この構造パラメータは、集落、例えば市街地では人口密度が農村地域よりも格段に高いという関連を考慮する。
【0012】
さらに有利な構造パラメータとして、面積当りの平均的建築物数が考慮される。このパラメータは基本的に、上記の人口が考慮される構成に類似するが、しかし単位面積当りの建築物数は航空写真および/または衛星写真から直接得ることができ、例えば住民登録局の統計を用いる必要がない。
【0013】
本発明の方法の有利な改善形態では、地図情報における少なくとも1つの空間点が画像エレメントによってマークされる。画像エレメントは例えばピクトグラムまたはアイコンとすることができ、これによりPOIが地図に示される。
【0014】
本発明の方法の有利な構成では、地図情報の選択された領域が強調して表示される。有利には強調は透明な着色によって行われる。着色した強調によって、例えば公共の建物をマークすることができる。公共の建物は通常、航空写真および/または衛星写真の平面図では私的に使用される建物から区別できない。
【0015】
本発明の方法を実施するためのナビゲーションシステムは、地図情報データに対する記憶装置、地図情報データを処理するプロセッサ装置、および処理された地図情報データを出力する表示装置を有する。記憶装置には地図情報データとして、ベクトル化された道路網と、面情報データとしての航空写真および/または衛星写真の画像データが記憶される。ここでは記憶装置は任意である。すなわち光学的および/または磁気的記憶装置のいずれも実現のために使用することができる。プロセッサ装置は種々異なる地図情報データをつなぎ合わせる。これにより面、線、および点を備える一体的表示が形成される。続いて表示装置、例えばカラーモニタにはつなぎ合わされた地図が出力される。
【0016】
本発明のナビゲーションシステムの有利な構成では、記憶装置がCD(コンパクトディスク)および/またはDVD(デジタルバーサルディスク)を有する。これにより既存のデータを簡単に更新することができ、別の国での使用のために交換することができる。
【0017】
有利には本発明のナビゲーションシステムの記憶装置は、種々異なる解像度で航空写真および/または衛星写真の画像データを有する。これにより該当する領域の重要度に応じて種々異なる表示が可能である。
【0018】
次に、添付の図面を参照しながら実施例に基づき本発明について詳しく説明する。
図1、は本発明による方法を実施するナビゲーションシステムの概略図を示す。
図2は、ナビゲーションシステムに対する通常の地図データを示す。
図3は、航空写真および/または衛星写真の一部を示す図である。
図4は、本発明の方法により形成された、ナビゲーションシステムに対する地図表示を示す図である。
【0019】
図1は、プロセッサ装置2を有するナビゲーションシステム1を概略的に示す。プロセッサ装置2は記憶装置3と接続されており、記憶装置3にファイルされた地図情報を処理する。プロセッサ装置2により形成された地図表示、例えば道路網のベクトル化された地図と航空写真および/または衛星写真との重ね合わせは引き続き表示装置4、例えばカラーモニタに出力される。
【0020】
以下、本発明の方法を詳細に説明する。図2には、人口密集地帯、この例ではハンブルグの部分領域を備える地図部分5が示されている。面情報は実質的に2つの異なる着色によって区別される。やや暗い面6は密集領域をマークする。明るい面7は、ここは実質的に自然の領域、とりわけ草原ないし森林であることを示す。
【0021】
さらに図には種々の線8,9および10が示されており、これらは交通網を示す。太くカラーで顕著に強調された道路8は高速道路であり、一方、参照符号9により示された道路はさほど整備されていない道路、例えば国道ないしは市街地の出入り道路を示す。2色で交互に示された線10は鉄道区間または軌道区間の経過を示す。
【0022】
さらに地図部分5の表示には、付加的な画像エレメントないしはアイコンがPOI(興味ポイント)を示すために存在する。例えば参照符号11により、ガソリンスタンドの場所を示すアイコンがマークされている。アイコン12により空港の位置が、アイコン13により交通障害ないしは交通渋滞の位置が示される。
【0023】
図3は、市街地領域の航空写真および/または衛星写真を示す図である。図3から、川14の経過並びに住宅領域15が分る。同様に図3では、種々異なる種類および大きさの道路16の経過が分る。
【0024】
図4は、本発明の方法により発生された地図部分17を示す。背景データとして地図部分17では、航空写真および/または衛星写真のデータが土台となっている。この背景データの上には、詳細情報としてベクトル化された道路網がオーバレイ表示されている。例えば地図部分17では、高速道路18並びに別の道路19を明瞭に識別できる。
【0025】
個々の道路18,19の間では単色の面だけでなく、相応の領域の実際の構造が識別できる。例えばユーザはナビゲーションシステムの表示でも、道路のそばに建物20または緑地帯21が存在していることが分る。
【0026】
さらに付加的に、特別のPOIは画像エレメントないしはアイコン22により示される。相応の画像領域、例えば公共の建物の輪郭は透明に着色される。このことによりこの建物は図示の環境から強調され、簡単に識別できる。
【0027】
構造化された背景情報が航空写真および/または衛星写真により発生されると、このことはナビゲーションシステム1(図1)の地図データを格段に増大する。種々異なる表示尺度のために、種々異なる解像度の画像情報を保持しなければならない。約876km×632kmの広がりを有するドイツ連邦共和国に対しては、次の表にリストアップされたデータ量が必要である。
【0028】
【表1】

【0029】
前記のデータ量は圧縮されたデータフォーマットに関するものである。この数値は例であり、大凡の把握だけに用いられ、使用される圧縮アルゴリズムに応じて変化し得る。
【0030】
これらのデータから、解像度が例えば1mの高解像度の場合、データ量全体を市販の記憶媒体、CDないしはDVDに収めることができないことが分る。しかし解像度を低減すると、比較的小さな表示尺度(50m−5km)で見かけが悪くなり、許容可能な表示とならない。ここでドイツ全土に対して同じ解像度を選択すると、ピクセル当り10mの解像度でしか処理できないこととなる。
【0031】
従って本発明では、解像度が種々異なる領域に対して重要度に依存して選択される。重要度を評価するために構造パラメータが利用される。この構造パラメータは例えば相応する領域の人口密度とすることができる。
【0032】
人口密度を解像度の区分けに用いると、人口密度の高い領域では詳細な画像情報が使用される。従って人口が少なく、位置特定に対して比較的少ない関連情報が提供される大部分の農村領域では、粗い解像度のデータだけが使用される。このことにより、表示品質を同じに保ちながら、記憶される画像データのデータ量を格段に低減することができる。
【0033】
表2には、種々異なる地図解像度に区分けされた国内の領域が示されており、これは構造パラメータとして人口密度を考慮したものである。
【0034】
【表2】

【0035】
前記のデータ量は圧縮されたデータフォーマットに関するものである。この数値は例であり、大凡の把握だけに用いられ、使用される圧縮アルゴリズムに応じて変化し得る。
【0036】
前記の表から分るように、画像表示のための必要な記憶容量は市販の記憶媒体、例えばCDに記憶することのできる大きさとなっている。比較的に記憶容量の大きな記憶媒体、例えばDVDを使用することにより、記憶媒体の記憶容量を最適に使用するため、面の区分けおよび評価を変化することができる。
【0037】
構造パラメータとしての人口密度に択一的に、または付加的に、該当する領域の建築物の密度を評価基準として使用することができる。構造パラメータとしての建築物の利点は、情報が基礎となる航空写真および/または衛星写真自体に存在することである。例えば住民登録局の統計を付加的に必要としない。
【0038】
さらなる可能な構造パラメータとして、ベクトル化された道路網に基づく道路密度も領域の評価に使用することができる。論理的には前記3つの構造パラメータの組み合わせも有利な評価尺度として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1、は本発明による方法を実施するナビゲーションシステムの概略図を示す。
【図2】図2は、ナビゲーションシステムに対する通常の地図データを示す。
【図3】図3は、航空写真および/または衛星写真の一部を示す図である。
【図4】図4は、本発明の方法により形成された、ナビゲーションシステムに対する地図表示を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーションシステムに対する地図情報を表示する方法であって、該ナビゲーションシステムで地図情報は地図部分を表示する面と、交通路網を表示する線とを有する形式の方法において、
面の表示を2次元または3次元ビューにおいて少なくとも部分的に航空写真および/または衛星写真に基づいて発生する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
航空写真および/または衛星写真の解像度は、表示すべき地図部分に依存して可変である、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、
航空写真および/または衛星写真の解像度は、少なくとも1つの構造パラメータに依存して可変である、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、
構造パラメータに対して、面積当りの平均的人口が考慮される、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の方法において、
構造パラメータに対して、面積当りの平均的建物数が考慮される、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項記載の方法において、
地図情報中の少なくとも1つの空間点を画像エレメントによりマークする、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項記載の方法において、
地図情報の少なくとも1つの選択された領域を強調表示する、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、
強調は透明な着色によって行われる、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項記載の方法を実施するためのナビゲーションシステム(1)であって、
地図情報に対する記憶装置(3)と、
地図情報を処理するプロセッサ装置(2)と、
処理された地図情報を出力する表示装置(4)と
を有するナビゲーションシステム。
【請求項10】
請求項9記載のナビゲーションシステムにおいて、
記憶装置(3)は、コンパクトディスク(CD)および/またはデジタルバーサルディスク(DVD)を有する、ことを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項11】
請求項9または10記載のナビゲーションシステムにおいて、
記憶装置(3)は、種々異なる解像度で航空写真および/または衛星写真の画像データを有する、ことを特徴とするナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−509441(P2008−509441A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525275(P2007−525275)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053417
【国際公開番号】WO2006/018358
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】