説明

地図表示装置

【課題】3D広域表示に係る視点方向がスクロールスイッチによって変更されるので、ユーザは視点の変更量を認識しづらいこと。
【解決手段】HDD12には、タッチパネル24での接触座標が2次元地図に係る表示領域内に存在する場合に接触座標の移動に応じて3次元地図に係る視点を移動する処理およびタッチパネル24での接触座標が2次元地図に係る表示領域の境界座標に符合する場合に接触座標の移動に応じて3次元地図に係る視野方向を回転移動する処理をCPU14に実行させるためのプログラムが記憶されている。また、HDD12には、地図に対応する地図データや接触座標と緯度経度との対応関係を示す変換テーブルなどが記憶されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイに対して2次元地図および3次元地図を表示させる地図表示装置に関するものであって、より詳しくは、ナビゲーション装置などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、表示部に道路地図を3次元表示させるとともに画面の中央部にスクロールスイッチを表示させるナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
他方、液晶ディスプレイなどに対してその片画面で3D広域表示を行わせるとともにもう片方の画面で2D詳細表示を行わせるナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開2004−117830号公報(段落0028ないし0032ならびに図2)
【特許文献2】特開2002−311817号公報(段落0011ないし0013ならびに図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術によれば、液晶ディスプレイなどに対して3D広域表示および2D詳細表示を同時に行わせるとともに、画面の中央部にスクロールスイッチを表示させる装置が得られる。この装置では、3D広域表示に係る視点方向がスクロールスイッチによって変更されるので、ユーザは視点の変更量を認識しづらいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る地図表示装置は、ディスプレイに対して2次元地図および3次元地図を表示させる地図表示装置であって、タッチパネルでの接触座標が前記2次元地図に係る表示領域内に存在する場合、前記接触座標の移動に応じて前記3次元地図に係る視点を移動する制御部を備えるものである。本発明における字句の解釈は、次のとおりである。
【0006】
「2次元地図に係る表示領域」とは、2次元地図が表示されるディスプレイの表示領域であって、いわゆる子画面用の表示領域を含む概念である。
【0007】
「表示領域内」とは、表示領域をなす境界線およびその境界線の内側である。一例として、表示領域が矩形領域であれば、矩形の各辺をなす直線および矩形の内側が「表示領域内」である。
【0008】
「接触座標の移動」とは、2次元地図上での緯度経度の変化を含む概念である。「移動」に係る変数として、移動量および移動方向がある。「移動量」としては、接触座標の移動量の他に、接触座標の移動量から求まる2次元地図上での緯度経度の変化量がある。他方、「移動方向」としては、接触座標の移動方向の他に、接触座標の移動方向から求まる2次元地図上での緯度経度の変化方向がある。
【0009】
「3次元地図に係る視点」とは、3次元地図を表示するための基準となる座標であって、緯度、経度および高度からなる座標系の点を含むものである。
【0010】
「視点を移動する」とは、3次元地図を表示するための基準となる座標を移動することである。
【0011】
「制御部」は、ハードウエアおよびハードウエアとソフトウエアとの協働によって特定の処理を実行するものを含む概念である。
【0012】
「制御部」は、好ましくは、前記接触座標が所定の時間にわたって前記2次元地図に係る表示領域内で移動しない場合、タッチパネルでの接触時間を用いて前記3次元地図の縮尺を決定するものである。ここで、「接触時間」とは、その起算点が接触が開始した時点であるか所定の時間が経過した時点であるかを問わない。
【0013】
本発明に係る地図表示装置は、ディスプレイに対して2次元地図および3次元地図を表示させる地図表示装置であって、タッチパネルでの接触座標が前記2次元地図に係る表示領域の境界座標に符合する場合、接触座標の移動に応じて前記3次元地図に係る視野方向を回転移動する制御部を備えるものである。本発明に係る字句の解釈は、次のとおりである。
【0014】
「表示領域の境界座標」とは、表示領域をなす境界線上の座標である。一例として、表示領域が矩形領域であれば、矩形の各辺をなす直線上の座標が「表示領域の境界座標」である。
【0015】
「符合する」とは、両者が一致することおよび両者の差異が微差であることである。
【0016】
「視野方向」とは、視点から水平方向に延びる方向であって、視線方向が水平方向に射影された方向である。
【0017】
「視野方向を回転移動する」とは、視点を中心として水平面内で移動することである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、2次元地図に対する操作に応じて3次元地図の表示を異ならせるので、ユーザに対して3次元地図に係る視点や視野方向などの変更を認識しやすくすることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態は、図1ないし図7で示される。
<構成について>本実施の形態に係るナビゲーション装置1の構成は、図1で示される。ナビゲーション装置1は、データの入出力を行うI/O11と、各種データやプログラムなどを記憶するHDD12と、BIOSなどの基本プログラムを格納するROM13と、HDD12に記憶されたプログラムおよびROM13に格納されたプログラムを実行するCPU14(「制御部」に相当する)と、各種データを保持するRAM15と、音声データを処理する音声プロセッサ16と、画像データを処理する画像プロセッサ17と、画像データを保持するVRAM18とを備え、これらをバス線で接続している。
【0020】
I/O11の入力側には、現在位置や時刻などに対応するGPSデータを受信するGPS受信機21と、移動体の進行方位に対応する方位データを出力する方位センサ22と、移動体の速度に対応する速度データを出力する速度センサ23と、接触座標に対応する接触座標データを出力するタッチパネル24とが接続されている。各種センサからのデータは、RAM15に保持される。
【0021】
I/O11の出力側には、音声データに対応する音声を出力するスピーカ31と、画像データに対応する画像を表示するディスプレイ32とが接続されている。ディスプレイ32は、その表示領域とタッチパネル24の接触検知領域とが重なるように設けられている。
【0022】
HDD12には、タッチパネル24での接触座標が2次元地図に係る表示領域内に存在する場合に接触座標の移動に応じて3次元地図に係る視点を移動する処理およびタッチパネル24での接触座標が2次元地図に係る表示領域の境界座標に符合する場合に接触座標の移動に応じて3次元地図に係る視野方向を回転移動する処理をCPU14に実行させるためのプログラムが記憶されている。また、HDD12には、地図に対応する地図データや接触座標と緯度経度との対応関係を示す変換テーブルなどが記憶されている。
<処理について>以上のように構成されたナビゲーション装置1の処理は、図2で示される。CPU14は、HDD12に記憶されたプログラムをRAM15に展開し、タッチパネル24からの接触座標データを割り込みデータとして、以下の処理を実行する。
【0023】
CPU14は、接触座標データに対応する接触座標が2次元地図の表示領域内にあるか否かを判定する(ステップS1)。具体的には、「F(x,y)≦0」が2次元地図の表示領域として定義されており、接触座標Pt(xpt,ypt)が「F(xpt,ypt)≦0」が満たされるか否かが判定される。本実施の形態では、「F(x,y)≦0」が矩形領域内を示すので(図3(a)を参照)、「a≦xpt≦bかつc≦ypt≦d(但し、0<a<b、0<c<d)」か否かが判定される。
【0024】
ステップS1で接触座標が2次元地図の表示領域内にあるとの判定がなされると(S1のYes)、CPU14は、接触座標が2次元地図の表示領域の境界線上にあるか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、「F(x,y)=0」が境界線として定義されており、接触座標Pt(xpt,ypt)が「F(xpt,ypt)=0」が満たされるか否かが判定される。本実施の形態では、「F(x,y)=0」が矩形をなす直線を示すので、「xpt=aまたはbかつypt=cまたはd(但し、0<a<b、0<c<d)」か否かが判定される。
【0025】
ステップS2で接触座標が2次元地図の表示領域の境界線上にあるとの判定がなされると(S2のYes)、CPU14は、境界線上の接触座標から他の接触座標への移動について回転行列Aを演算する(ステップS3)。具体的には、2次元地図の表示領域の中心から各接触座標への接触座標ベクトルが単位ベクトルに変換され、回転行列Aが演算される。本実施の形態では、2次元地図の表示領域の中心がP0であるので(図3(b)を参照)、各接触座標への接触座標ベクトルは、それぞれ、Pt−P0およびPt´−P0である。そして、これらの単位ベクトルは、それぞれ、(Pt−P0)/P0Ptおよび(Pt´−P0)/P0Pt´であるから、回転行列Aは、1次変換の式「(Pt´−P0)/P0Pt´=A(Pt−P0)/P0Pt」を満たすように演算される。ここで、PP´とは、ベクトル(P´−P)の絶対値である。
【0026】
ステップS3で回転行列Aが演算されると、CPU14は、3次元地図の視野方向を決定する(ステップS4)。具体的には、現在の視野方向の単位ベクトルがS0であれば、新たな視野方向ベクトルS1は、「S1=AS0」に決定される(図4(a)を参照)。ここで、回転行列Aは、接触座標系(=表示座標系)と緯度経度座標系とで共通して用いられうる。
【0027】
ステップS4で3次元地図の視野方向が決定されると、CPU14は、決定された視野方向に係る3次元地図を表示するための制御データを出力する(ステップS5)。画像プロセッサ17は、CPU14からの制御データに従ってVRAM18に対して3次元地図に係る画像データを書き込み、順次、VRAM18に書き込まれた画像データをディスプレイ32に転送する。
【0028】
本実施の形態では、ディスプレイ32は、進行方向を上方向とする2次元地図画像および視野方向を進行方向とする3次元地図を表示しており、タッチパネル24での接触座標は2次元地図の表示領域の境界線上にある(図5(a)を参照)。このとき、タッチパネル24での接触座標が90度回転移動すると、ディスプレイ32は、3次元地図画像の視野方向を進行方向に対して90度をなす方向とする3次元画像を表示する。そして、ディスプレイ32は、2次元画像の表示領域も90度回転させている(図5(b)を参照)。
【0029】
ステップS1で接触座標が2次元地図の表示領域内にないとの判定がなされると(S1のNo)、CPU14は、スクロール表示を連続させるための制御データを出力する(ステップS6)。すなわち、通常のスクロール表示が行われる。
【0030】
ステップS2で接触座標が2次元地図の表示領域の境界線上にないとの判定がなされると(S2のNo)、CPU14は、レジスタ内のカウンタ値Kを「1」に設定する(ステップS7)。
【0031】
ステップS7でレジスタ内のカウンタ値Kが「1」に設定されると、CPU14は、接触座標が接触開始時点から不変であるか否かを判定する(ステップS8)。具体的には、接触開始時点からの接触座標の変化量ΔPtの絶対値が所定の値L以下であるか否かが判定される。
【0032】
ステップS8で接触座標が接触開始時点から不変であるとの判定がなされると(S8のYes)、CPU14は、レジスタ内のカウンタ値Kを「K+1」に設定する(ステップS9)。
【0033】
ステップS9でレジスタ内のカウンタ値Kが「K+1」に設定されると、CPU14は、カウンタ値Kが30であるか否かを判定する(ステップS10)。ステップS7からステップS10の処理は、接触座標が接触開始時点から不変である時間が1sを超えるか否かを判定するためのものである。ステップS8からステップS10までの処理が35msを要し、ステップS8からステップS10までの処理回数が30回であれば、1sを超えることが判定されるからである。
【0034】
ステップS10でカウンタ値Kが30であるとの判定がなされると(S10のYes)、CPU14は、タッチパネル24での接触時間を用いて3次元地図の縮尺を演算する(ステップS11)。本実施の形態では、タッチパネル24での接触時間が演算され、縮尺は接触時間に応じて段階的に大きくなる。したがって、ステップS5では、接触座標が2次元地図の表示領域内で移動しない場合(図6(a)を参照)、ディスプレイ32は、2次元地図および3次元地図を接触時間に応じて拡大したものを表示する(図6(b)を参照)。
【0035】
他方、ステップS8で接触座標が接触開始時点から不変ではないとの判定がなされると(S8のNo)、CPU14は、平行移動ベクトルbを演算する(ステップS12)。具体的には、2次元地図の表示領域内での各接触座標は、HDD12に記憶された変換テーブルによって緯度経度に変換される。本実施の形態では、緯度経度が接触座標Ptおよび接触座標Pt´について求められ、2つの緯度経度を結ぶ方向ベクトルが平行移動ベクトルbとなる。
【0036】
ステップS12で平行移動ベクトルbが演算されると、CPU14は、3次元地図に係る視点を決定する(ステップS13)。具体的には、3次元地図に係る視点(図7(b)を参照)が平行ベクトルbによって移動され、移動後の緯度経度が新たな視点として決定される。したがって、接触座標が2次元地図の表示領域内で横方向に移動する場合(図7(a)を参照)、ディスプレイ32は、横方向に移動した後の3次元地図を表示する(図7(b)を参照)。このとき、3次元地図に係る視点の移動量は、接触座標の移動量に対応する緯度経度の変化量とほぼ等しい。
<本実施の形態における効果>本実施の形態によれば、接触座標が2次元地図の表示領域内で移動すると、3次元地図に係る視点が移動するので、ディスプレイ32は、移動後の視点を基準として3次元地図を表示する。したがって、ユーザに対して3次元地図に係る視点の変更を認識しやすくすることができる。
【0037】
本実施の形態によれば、3次元地図に係る視点の移動量は、接触座標の移動量に対応する緯度経度の変化量とほぼ等しいので、ユーザに対して3次元地図に係る視点の変更量を認識しやすくすることができる。
【0038】
本実施の形態によれば、接触座標が2次元地図の表示領域内で不変であれば、2次元地図および3次元地図の縮尺が接触時間に応じて拡大されるので、ユーザは2次元地図の拡大率を参照しながら3次元地図の拡大率を調整することできる。
【0039】
本実施の形態によれば、タッチパネル24での接触座標が2次元地図の表示領域の境界線上にある場合に、タッチパネル24での接触座標が回転移動すると、3次元地図画像の視野方向が回転移動する。したがって、ユーザに対して3次元地図に係る視野方向の変更を認識しやすくすることができる。
【0040】
本実施の形態によれば、2次元画像の表示領域の回転と視野方向の回転とが連動するので、ユーザに対して3次元地図に係る視野方向の変更量を認識しやすくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明は、ユーザに対して3次元地図に係る視点や視野方向などの変更を認識しやすくすることができるという効果を有し、ナビゲーション装置などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る地図表示装置を実施するための最良の形態であるナビゲーション装置の構成を示すハードウエア構成図
【図2】本実施の形態における処理の流れを示すフロー図
【図3】(a)接触座標が表示領域内にある様子を示す図(b)接触座標が表示領域の境界線上にある様子を示す図
【図4】(a)視点および視野方向の関係を示すx−y平面図(b)視点および視野方向の関係を示すx−z平面図
【図5】(a)回転前の表示例を示す図(b)回転後の表示例を示す図
【図6】(a)拡大前の表示例を示す図(b)拡大後の表示例を示す図
【図7】(a)スクロール前の表示例を示す図(b)スクロール後の表示例を示す図
【符号の説明】
【0043】
1 ナビゲーション装置(地図表示装置)
14 CPU(制御部)
24 タッチパネル
32 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに対して2次元地図および3次元地図を表示させる地図表示装置であって、
タッチパネルでの接触座標が前記2次元地図に係る表示領域内に存在する場合、前記接触座標の移動に応じて前記3次元地図に係る視点を移動する制御部を備える地図表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記接触座標の移動量から求まる前記2次元地図上での緯度経度の変化量を用いて前記視点の移動量を決定することを特徴とする請求項1に記載の地図表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記接触座標の移動方向から求まる前記2次元地図上での緯度経度の変化方向を用いて前記視点の移動方向を決定することを特徴とする請求項1に記載の地図表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記接触座標が所定の時間にわたって前記2次元地図に係る表示領域内で移動しない場合、タッチパネルでの接触時間を用いて前記3次元地図の縮尺を決定することを特徴とする請求項1に記載の地図表示装置。
【請求項5】
ディスプレイに対して2次元地図および3次元地図を表示させる地図表示装置であって、
タッチパネルでの接触座標が前記2次元地図に係る表示領域の境界座標に符合する場合、前記接触座標の移動に応じて前記3次元地図に係る視野方向を回転移動する制御部を備える地図表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−65281(P2007−65281A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251170(P2005−251170)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】