説明

地震警報システム

【課題】地震発生時にネットワークに接続されたコンピュータの状況確認を行う。
【解決手段】地震情報を受信する地震警報装置5にネットワーク6を介して管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8が接続され、地震発生時に管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8は、先ず地震警報装置5から送信される主要動の予測到達時刻及び予測震度が含まれた地震情報を受信し、当該地震情報を受信したサーバーコンピュータ8は、主要動の到達時間までにシャットダウン処理を実行して実行中のデータを保全するようにし、更に、主要動の到達後に、管理用コンピュータ7は、シャットダウン処理がなされたサーバーコンピュータ8に対して起動命令を送信し、当該起動命令を受信したサーバーコンピュータ8は再起動処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震警報システムに関する。さらに詳述すると、地震発生後にネットワークに接続されたコンピュータの状況確認に好適な地震警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震国の我が国では様々な地震計が全国的に整備されている。震源付近で検出した伝搬速度の速いP波の初動データを使って求めた早期地震情報をリアルタイムに各所に配信し、遅れてくる被害の大きいS波の被害を大幅に軽減する研究が、防災、減災、避難誘導、設備保全などを目的に多岐にわたり行われている。
【0003】
地震による被害の軽減を目的に地震の発生をいち早く知るシステムとして、例えば、気象庁により「緊急地震速報システム」が開発されている。緊急地震速報は、震源に近い観測点(地震計)で捉えられた初期微動(P波による振動)を解析して瞬時に震源の位置及び地震の規模(マグニチュード)を特定し、これらをもとに各地への主要動(S波による振動)の到達時刻及びその震度を推定して、地震被害をもたらす主要動が到達する前に、これらを知らせるものである。緊急地震速報の活用により、地震被害の軽減に役立つものと期待されている。
【0004】
また近年では、地震による人身・建物等への被害だけでなく、コンピュータシステムへの被害が問題となっている。即ち、稼働中のコンピュータの電源が地震の影響で遮断されると、メモリ(揮発性メモリ)内にあった作業中のデータ等は保護されず失われる。したがって、これらの作業中のデータは、少なくとも主要動が到達するまでにハードディスク等の不揮発性メモリに記憶させた後に、システムを停止させることが望ましい。
【0005】
例えば、非特許文献1に記載の地震探知システム「イージス」は、気象庁からの緊急地震速報を受信すると、ネットワークで接続されたコンピュータに対し、停止命令を発信しコンピュータシステムを停止して、システムの保護を図っている。
【0006】
【非特許文献1】ライトハウスシステム株式会社ホームページ;地震探知システムイージス(http://www.lth.jp/seihin/aegis/eagle.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に記載の緊急地震速報を用いたシャットダウンシステムは、地震発生時にシステム停止(シャットダウン処理)を行うだけである。
【0008】
このため、非特許文献1に記載の技術は、システム管理者が各コンピュータを再度起動させて初めて実際にシャットダウンの処理状況や不具合等を確認できるものである。当該被害状況の把握には、システム管理者等の人手を必要とするので、煩雑であり、時間もかかるという問題がある。
【0009】
また、実際には、緊急地震速報として受信する主要動の到達時刻までの猶予時間により一連のシャットダウン処理のうちどこまでの処理が実行可能であるかは異なる。このため、主要動の到達時刻までの猶予時間に応じて、実行可能な処理内容を選択し、実行することが望まれ、更に、主要動の到達後、システム管理者がネットワーク内のコンピュータが実際にどのような処理を完了したかの処理状況や通信が可能かどうかの通信状況等を迅速に把握できることが望まれている。
【0010】
しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、地震発生後に実際に一連のシャットダウン処理のうちどの処理まで実行できたか、シャットダウン処理は問題なく完了したか、また、地震により通信自体が遮断されてしまったか等の具体的な処理状況を確認できないという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、地震発生時にネットワークに接続されたコンピュータを安全にシャットダウンするだけでなく、地震発生後にコンピュータを自律的に再起動させ、更に、ネットワーク内のコンピュータの通信状況及びシャットダウンの処理状況を一括管理可能な地震警報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の地震警報システムは、設置地点における主要動の予測到達時刻及び予測震度を少なくとも含んだ地震情報をネットワークで接続された他のコンピュータに送信する地震警報手段を備えた地震警報装置と、地震警報装置にネットワークを介して接続され、地震警報装置から送信される地震情報を受信する少なくとも1つの管理用コンピュータ及びサーバーコンピュータとを備える地震警報システムであって、管理用コンピュータは、地震警報装置からネットワークを介して地震情報を受信する地震情報受信手段と、主要動の予測到達時刻の経過後であって予め設定された時間の経過後に、サーバーコンピュータに対してネットワークを介して起動命令を送信する起動命令送信手段とを備え、サーバーコンピュータは、地震警報装置からネットワークを介して地震情報を受信する地震情報受信手段と、地震情報の受信後であって予測到達時刻前にシャットダウン処理を実行するシャットダウン手段と、主要動の予測到達時刻後に起動命令を受信する起動命令受信手段と、起動命令の受信後に再起動処理を実行する再起動手段とを備えるものである。
【0013】
したがって、地震発生時に管理用コンピュータ及びサーバーコンピュータは、先ず地震警報装置から送信される地震警報装置の設置地点における主要動(S波)の予測到達時刻及び予測震度が含まれた地震情報を受信する。当該地震情報を受信したサーバーコンピュータは、主要動の到達時間までにシャットダウン処理を実行して実行中のデータを保全するようにし、更に、地震発生後(S波の到達後)に管理用コンピュータは、シャットダウン処理がなされたサーバーコンピュータに対して起動命令を送信し、当該起動命令を受信したサーバーコンピュータは再起動処理を行うようにしている。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地震警報システムにおいて、更に、サーバーコンピュータは、予め登録されたシャットダウン処理のアクションレベルのうち、予測到達時刻までの猶予時間内に実行可能なアクションレベルを判断し、該アクションレベルを記録するアクションレベル記録手段と、管理用コンピュータは、起動命令の送信後であって予め設定された時間の経過後に、サーバーコンピュータに対して通信が可能であるか否かの通信状況を問い合わせ、更に通信が可能な場合であると判断した場合は、アクションレベル記録手段により記録されたアクションレベルを問い合わせる安否確認手段と、サーバーコンピュータは、アクションレベルの問い合わせに応じて記録されたアクションレベルを管理用コンピュータに対して送信する安否応答手段とを備え、且つシャットダウン手段は、前記アクションレベルの記録後に該アクションレベルの処理内容を実行するものである。
【0015】
したがって、サーバーコンピュータは、主要動の予測到達時刻までの猶予時間に実行可能な処理内容(シャットダウン処理のアクションレベル)を判断し、当該アクションレベルを記憶装置に記憶させる処理及び当該アクションレベルの処理内容を実行するようにしている。更に、管理用コンピュータは、地震発生後であって起動命令の送信後に、サーバーコンピュータに対して通信が可能であるか否かの通信状況を問い合わせ、通信が可能な場合は、サーバーコンピュータの記憶装置に記憶されているアクションレベル、即ち、シャットダウン処理の具体的な実行内容を受信するようにしている。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれかに記載の地震警報システムにおいて、更に、管理用コンピュータは、予測到達時刻までの猶予時間内に実行中のデータを記憶装置に記憶するデータ記録手段を備えるものである。
【0017】
したがって、管理用コンピュータは、地震の主要動が到達するまでにメモリ上の実行中のデータをハードディスク等の記憶装置に記憶させるようにしている。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3までのいずれかに記載の地震警報システムにおいて、更に、管理用コンピュータは、通信状況及びアクションレベルをサーバーコンピュータの安否状況として出力する安否状況出力手段を備えるものである。
【0019】
したがって、管理用コンピュータは、各サーバーコンピュータが現在、通信可能な状態にあるか否か、また通信可能な場合には、主要動の到達前にどのような内容の処理を実行したかを安否状況として、例えばディスプレイやプリンタ等から出力するようにしている。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4までのいずれかに記載の地震警報システムにおいて、サーバーコンピュータは、WakeOnLAN機能を備え、かつ起動命令はマジックパケットによる起動命令であって、再起動手段は、マジックパケットによる起動命令を受信して、WakeOnLAN機能により再起動するものである。
【0021】
したがって、サーバーコンピュータは、シャットダウン処理によりレジューム処理や電源をオフにする処理が実行された後の状態であっても、起動命令を受信することによりWakeOnLAN機能により人手を介することなく再起動することができるようにしている。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5までのいずれかに記載の地震警報システムにおいて、管理用コンピュータをネットワーク内に複数設けるものである。
【0023】
したがって、少なくとも一つの管理用コンピュータが正常に起動していれば、サーバーコンピュータに対して起動命令を送信することができるようにしている。
【0024】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6までのいずれかに記載の地震警報システムにおいて、管理用コンピュータに地震警報手段を備えるようにしたものである。
【0025】
したがって、管理用コンピュータが地震情報を地震速報センターから直接受信し、ネットワーク内のサーバーコンピュータに地震情報を送信するようにしている。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる地震警報システムによれば、地震情報の受信後であって主要動の到達時刻までにネットワーク内のサーバーコンピュータを安全にシャットダウンさせることができる。
【0027】
地震発生後は、停電、様々な機器の損傷、通信障害等が発生することが予測されるため、システム管理者が遂行する業務はできるだけ軽減することが望まれる。従来は、地震発生後にシステム管理者が各コンピュータを手動で再起動させることが必要であったが、本発明にかかる地震警報システムによれば、人手を介することなくネットワーク内のサーバーコンピュータを、自律的に再起動させることが可能となる。このため、システム管理者は、地震発生後のシステム復旧を効率的且つ迅速に遂行することが可能となる。
【0028】
また、請求項2に記載の地震警報システムによれば、サーバーコンピュータは、一連のシャットダウン処理のうち、猶予時間に基づいて実行可能なアクションレベルを判断した後にシャットダウン処理を実行することで、地震の主要動到達時までに処理を終了させることができる。このため、シャットダウン処理後に主要動が到達するため、機器の破損、停電等が起きても実行中のデータの消失等の被害を防ぐことができる。
【0029】
更に、サーバーコンピュータは、実行可能と判断したアクションレベルを猶予時間内に記憶装置に記憶させるようにしているので、管理用コンピュータは、主要動の到達後に、通信が可能なサーバーコンピュータに記憶されたアクションレベルを問い合わせることで、サーバーコンピュータが主要動の到達前に実行した処理内容を一括して管理することが可能となる。
【0030】
また、請求項3に記載の地震警報システムによれば、地震により停電等が発生した場合であっても、管理用コンピュータにおいて実行中であったデータを保護することができる。
【0031】
また、請求項4に記載の地震警報システムによれば、システム管理者は出力される安否状況を確認するだけで、各サーバーコンピュータの状況を把握することができ、ネットワーク内で通信が遮断している箇所や、実行中のデータが消失した可能性のあるサーバーコンピュータ等を把握することができ、地震発生後のシステム復旧を効率的且つ迅速に遂行することが可能となる。
【0032】
また、請求項5に記載の地震警報システムによれば、起動命令を受信したサーバーコンピュータは、地震発生後に人手を介さず自律的に再起動することができる。
【0033】
また、請求項6に記載の地震警報システムによれば、管理用コンピュータの一部が停電により使用不可になった場合や地震により破損した場合であっても、少なくとも1つの管理用コンピュータに障害がなければ、サーバーコンピュータに対して起動命令を送信することができるため、サーバーコンピュータに再起動処理及び以降の処理を実行させることが可能となる。
【0034】
また、請求項7に記載の地震警報システムによれば、管理用コンピュータにより地震警報装置の機能を実現することができるので、地震警報装置を必須とせず、システムの簡略化を図ることができる。この場合において、地震警報装置と管理用コンピュータ間の通信が不要となるため通信時間を短縮でき、その分サーバーコンピュータがシャットダウン処理を実行する猶予時間を長くとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の地震警報システムの構成を図1〜図3に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。尚、本実施形態では、地震情報として気象庁が発信する「緊急地震速報」を利用することとしている。しかしながら、地震情報として用いることができる情報は「緊急地震速報」に限られるものではなく、他の既存の配信サービス(例えば、独立行政法人防災科学技術研究所によるAQUAシステム等)、または今後開始される配信サービス等であっても良いのは勿論である。
【0036】
図1に本実施形態の地震警報システム1を示す。本実施形態の地震警報システム1は、気象庁2が配信する緊急地震速報を配信ネットワーク4を介して地震警報装置5に配信する地震速報センター3、当該緊急地震速報を受信する地震警報装置5、地震警報装置5が送信する緊急地震速報をネットワーク6を介して受信する管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8(8a,8b,8c,8d...)により構成される。
【0037】
気象庁2から配信される緊急地震速報を地震警報装置5に送信する地震速報センター3は、地震警報装置5が設置されている地点での主要動の予測到達時刻及び予測震度を算出して、各地震警報装置5に主要動の予測到達時刻及び予測震度を含んだ地震情報を送信するものである。
【0038】
また、地震速報センター3が、気象庁2から受信した緊急地震速報をそのまま地震警報装置5に転送し、地震警報装置5が予め記憶されている自身の位置情報(緯度、経度等)に基づいて設置地点での主要動の予測到達時刻及び予測震度を算出するものであっても良い。
【0039】
以下、本実施形態では、地震速報センター3が地震警報装置5の設置地点の位置情報に基づいて、各地震警報装置5における主要動の予測到達時刻及び予測震度を算出して各地震警報装置5に地震情報を送信する場合について説明するが、これに限られず、地震警報装置5が主要動の予測到達時刻及び予測震度を算出するようにしても良い。
【0040】
本実施形態の地震警報システム1は、設置地点における主要動の予測到達時刻及び予測震度を少なくとも含んだ緊急地震速報を受信して、ネットワーク6で接続された他のコンピュータに緊急地震速報を送信する地震警報手段9を備えた地震警報装置5と、地震警報装置5に管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8が、ネットワーク6を介して接続された地震警報システム1であって、管理用コンピュータ7は、地震警報装置5からネットワーク6を介して緊急地震速報を受信する地震情報受信手段10と、主要動の予測到達時刻の経過後であって予め設定された時間の経過後に、サーバーコンピュータ8に対してネットワーク6を介して起動命令を送信する起動命令送信手段12とを備え、サーバーコンピュータ8は、地震警報装置5からネットワーク6を介して緊急地震速報を受信する地震情報受信手段10と、当該緊急地震速報の受信後であって予測到達時刻前にシャットダウン処理を実行するシャットダウン手段16と、主要動の予測到達時刻後に起動命令を受信する起動命令受信手段17と、起動命令の受信後に再起動処理を実行する再起動手段18とを備えるものである。
【0041】
更に、本実施形態の地震警報システム1は、サーバーコンピュータ8は、予め登録されたシャットダウン処理のアクションレベルのうち、予測到達時刻までの猶予時間内に実行可能なアクションレベルを判断し、該アクションレベルを記録するアクションレベル記録手段15と、管理用コンピュータ7は、起動命令の送信後であって予め設定された時間の経過後に、サーバーコンピュータ8に対して通信が可能であるか否かの通信状況を問い合わせ、更に通信が可能な場合であると判断した場合は、アクションレベル記録手段15により記録されたアクションレベルを問い合わせる安否確認手段13と、サーバーコンピュータ7は、アクションレベルの問い合わせに応じて記録されたアクションレベルを管理用コンピュータ7に対して送信する安否応答手段19とを備え、シャットダウン手段16は、アクションレベル記録手段15により判断されたアクションレベルの処理内容を実行することが好ましい。
【0042】
本実施形態の地震警報システム1は、例えば、各会社、工場、学校、病院、事業所等の複数台〜数百、数千台のコンピュータが使用され、各コンピュータ間でのネットワーク6が構築される環境に適用することができるが、適用環境は、特に限られるものではない。また、管理用コンピュータ7は、ネットワーク6に少なくとも1台が接続される。また、サーバーコンピュータ8のコンピュータ数は特に限られるものではなく、例えば、最低1台から数十〜数千台程度であれば良い。尚、管理用コンピュータ7は、平常時は、文書作成、メール送受信、インターネット閲覧等の通常の用途に用いればよく、本発明の地震警報システム1の専用機とする必要はない。また、管理用コンピュータ7は、それぞれ複数のクライアントを管理するサーバーコンピュータであっても良いのは勿論である。また、サーバーコンピュータ8は、必ずしもサーバー機能を実現したサーバーである必要はなく、クライアント用の端末として用いられるコンピュータであっても良いのも勿論である。
【0043】
本実施形態では、気象庁2が配信する緊急地震速報を各会社、工場等に設置されている地震警報装置5が取得する手段(緊急地震速報の取得手段という)として、JEITA((社)電子情報技術産業協会)により提供されている「IT自動防災システム」を用いるようにしている。しかしながら、緊急地震速報の取得手段は特に限られるものではなく、他の公知又は新規の手法によっても良い。
【0044】
「IT自動防災システム」は、気象庁2が配信する緊急地震速報を地震速報センター3の配信サーバ(図示せず)で受信するものである。本実施形態では、地震速報センター3は、地震警報装置5が設置されている地点毎の主要動の予測到達時刻及び予測震度を計算して緊急地震速報として配信ネットワーク4を介して配信するものである。尚、配信ネットワーク4としては、例えば、インターネット、フレームリレー、IP−VPN等のネットワークを用いれば良く、特に限られるものではない。
【0045】
また、地震警報装置5は、地震速報センター3から配信された設置地点での主要動の予測到達時刻及び予測震度を有する緊急地震速報を受信した後、ネットワーク6に接続された管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8に緊急地震速報を送信する地震警報手段9を備えている。尚、上述のように地震警報装置5が地震警報装置5の記憶装置(図示せず)に予め記憶された自身の位置情報(緯度、経度等)に基づいて設置地点での主要動の予測到達時刻及び予測震度を算出する算出手段(図示せず)を備えるようにしても良い。また、地震警報装置5には、公知又は新規の地震警報装置を用いるようにすれば良く、特に限られるものではない。例えば、「デジタルなまず(3Softジャパン社製)」、「QCASTシリーズ受信装置(明星電気社製)」等を用いることが可能である。地震警報装置5は、他のコンピュータと通信可能なインタフェースを備えており、例えば、LANポート、RS−232Cポート等を備えるものである。尚、本実施形態では、地震警報装置5は、TCP/IPプロトコルやUDPプロトコルを利用して緊急地震速報を送信するようにしているが、利用する通信プロトコルは特に限られるものではない。
【0046】
本実施形態において、ネットワーク6は、例えば、会社、工場、学校、病院、事務所等におけるローカルなネットワークを指す。当該ネットワーク6は、一般のLAN、専用線等で構築されていればよく特に限られるものではない。
【0047】
また、後述のシャットダウン処理(S108)が猶予時間に収まる範囲で、ネットワーク6に外部ネットワークとの通信を可能とするルータ等を設け、インターネット、専用線、VPN等を経由して他のネットワークに接続されたコンピュータを接続することも可能である。しかしながら、この場合において、地震警報装置5により送信される緊急地震速報は、地震警報装置5の設置地点におけるものであるので、他のネットワークは、予測到達時刻および予測震度がほぼ同一の範囲内(例えば、数百メートル以内等)に存在することが望ましい。
【0048】
本実施形態の管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8は、例えば既存の又は新規のコンピュータ(計算機)により実現される。このコンピュータ20は、例えば図2に示すように、中央処理演算装置(CPU)21、ハードディスクなどの(補助)記憶装置22、RAMなどの主記憶装置(メモリ)23、キーボードやマウスなどの入力装置24、ディスプレイやプリンタ等の出力装置25、FDやCD、DVDなどの媒体に記録されたデータを読み取るディスクドライブ等のデータ読取装置26や、ネットワーク6とのデータ通信を行うネットワーク(NW)アダプタ(以下、NICという)27等のハードウェア資源がバス28により接続されて構成されている。このコンピュータ20上で各種のプログラムが実行されることにより、コンピュータ20が以下に述べる管理用コンピュータ7またはサーバーコンピュータ8の各手段として機能するものである。
【0049】
本実施形態の管理用コンピュータ7は、図1に示すように地震情報受信手段10、データ記録手段11、起動命令送信手段12、安否確認手段13及び安否状況出力手段14とを備えるものである。
【0050】
また、管理用コンピュータ7の記憶装置22には、ネットワーク6内のコンピュータの情報を記録した構成管理データベース(図示せず)を予め構築させておくものとする。構成管理データベースには、初期情報として少なくとも、全サーバーコンピュータ8について付与された一意のサーバーコンピュータID、当該サーバーコンピュータIDと関連づけてサーバーコンピュータ8のIPアドレス及びNIC27のMACアドレス等を登録しておく、更に、設置場所、使用者、機種名等についても併せて記憶させておくことが望ましい。
【0051】
ここで、管理用コンピュータ7は、地震警報装置5と共にネットワーク6内において最も耐震性のある場所に配置することが望ましい。しかしながら、ネットワーク6が構築されるエリア内において安全な場所に配置したとしても地震により破壊されたり、コンピュータ自体は破損しなくとも通信が遮断されたりするといった被害を受けることが考えられる。そこで、本実施形態では、管理用コンピュータ7を予め複数台用意しておくことで、管理用コンピュータ7の一部のコンピュータに障害が生じた場合であっても、以降の処理を実施可能とすることが好ましい。また、この場合、地震による被害は、局所的に発生するため、複数の管理用コンピュータ7は、ネットワーク6内においてそれぞれ隔離して設置することが好ましい。
【0052】
以下、本実施形態の管理用コンピュータ7が備える各手段について詳説する。
【0053】
地震情報受信手段10は、地震警報装置5により送信される緊急地震速報をNIC27により受信する地震情報受信処理(S105−1)を実行するものである。
【0054】
更に、管理用コンピュータ7も平常時は、通常の業務等に使用されるものであるので、地震発生時には、実行中のデータ等を消失させないよう記憶装置22に記憶させる処理(ハイバネーション)を行うことが望ましい。このため、本実施形態では、管理用コンピュータ7は、データ記録手段11を備えるようにしている。
【0055】
データ記録手段11は、緊急地震速報を受信した後、猶予時間を判断して、実行可能な場合は、メモリ23内の実行中のデータを記憶装置22に記憶させるデータ記録処理(S106)を実行するものである。尚、管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8が実行する猶予時間の算出は、例えば、管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8が備える時刻を計数する実時間タイマー(図示せず)と予測到達時刻との時間差に基づいて算出することができる。
【0056】
サーバーコンピュータ8は、後述のように緊急地震速報を受信後にシャットダウン処理(S108)を実行する。従来は、シャットダウン後のコンピュータを、例えばシステム担当者等が再度電源をオンにすることで起動させ、データが正しく保存されたかどうか等を確認することが必要であったが、例えば、地震発生後の混乱状態においては、人手の確保も困難である。
【0057】
そこで、本実施形態の地震警報システム1では、管理用コンピュータ7がサーバーコンピュータ8に対し起動命令を送信することによりシャットダウン処理がされた電源オフ状態のサーバーコンピュータ8に、人手を介さず自律的にコンピュータの再起動処理(S113)を実行させるようにしている。
【0058】
起動命令送信手段12は、緊急地震速報の受信後であって予め設定された時間の経過後、即ち、地震の主要動が到達した後に、全てのサーバーコンピュータ8に対して、起動命令を送信する起動命令送信処理(S110)を実行するものである。尚、起動命令を送信する時間は、任意に設定することが可能なパラメータであり、予め記憶装置22に記憶させておけばよい。例えば、主要動の到達から数分後とすれば良く、特に限られるものではない。
【0059】
ここで、ネットワーク内の電源オフ状態のコンピュータを起動させる起動命令には、例えば、マジックパケットを用いることができる。これは、LAN経由でコンピュータの電源を投入することが可能な特殊なパケットであり、WakeOnLAN(Wakeup On LANともいう)機能を備えた電源オフ状態にあるコンピュータのBIOSに対して入力されると、電源オン状態に遷移させることができるものである。
【0060】
ここで、マジックパケットを送信するには、ターゲットとなるコンピュータのIPアドレス及びNIC27のMACアドレスが必要となる。したがって、本実施形態におけるマジックパケットによる起動命令の送信は、予測到達時刻の後、予め設定された時間の経過後に、予め構成管理データベースに初期情報として記録されている全てのサーバーコンピュータ8のIPアドレス、NIC27のMACアドレスに対して送信するものである。
【0061】
尚、マジックパケットを受信するには、一般にサーバーコンピュータ8のオペレーティングシステム、マザーボード、電源、NIC27等が電源に関する仕様であるACPI(Advanced Configuration and Power Interface)2.0に対応していることが必要であるが、近年のコンピュータ、オペレーティングシステム等では標準的に装備されていることが多い。
【0062】
また、管理用コンピュータ7は、安否確認手段13を備えることが好ましい。安否確認手段13は、起動命令の送信後であって予め設定された時間の経過後に、サーバーコンピュータ7に対して通信が可能であるか否かの通信状況を問い合わせ(S115)、更に通信が可能な場合であると判断した場合は、後述するアクションレベル記録処理(S107)により記録されているアクションレベルを問い合わせる(S116)安否確認処理(S114)を実行するものである。
【0063】
尚、起動命令の送信後、通信状況を問い合わせるまでの時間は、任意に設定することが可能なパラメータであり、予め記憶装置22に記憶させておけばよい。具体的には、起動命令を送信したネットワーク6内のサーバーコンピュータ8の起動が完了するまで(例えば、数分間)とすれば良く、特に限られるものではない。
【0064】
また、通信が可能かどうかの通信状況の判断は、予め構成管理データベースに登録されている全てのサーバーコンピュータ8のIPアドレスに対して、例えば、pingコマンドを送信することにより行われる。当該pingコマンドは、起動命令の送信後であって、一定時間経過後にpingを送信するよう予め設定しておくものである。その結果、pingへの応答があるサーバーコンピュータ8については、起動命令により起動した、または後述のシャットダウン処理のアクションレベルがレベル1であったと判断でき、pingへの応答のないサーバーコンピュータ8については、地震による停電や通信障害、コンピュータそのものの故障が発生したと判断することができる。管理用コンピュータ7は、各サーバーコンピュータ8について、そのサーバーコンピュータIDとpingの応答内容(通信の可否)とを対として構成管理データベースを更新し、記憶装置22に記憶するものである。
【0065】
更に、管理用コンピュータ7は、pingへの応答のあったサーバーコンピュータ8に対して、後述のアクションレベル記録処理(S107)においてサーバーコンピュータ8の記憶装置22に記憶されているアクションレベルに関して問い合わせをして、サーバーコンピュータ8のアクションレベルとサーバーコンピュータIDとを対として記憶装置22に記憶するものである。
【0066】
また、管理用コンピュータ7は、安否状況出力手段14を備えることが好ましい。安否状況出力手段14は、安否確認処理(S114)の結果、更新された構成管理データベースに記憶された各サーバーコンピュータ8毎の通信状況およびアクションレベルの一覧表を出力装置25としてのディスプレイに表示したり、出力装置25としてのプリンタから印刷をする安否状況出力処理(S119)を実行するものである。
【0067】
また、本実施形態のサーバーコンピュータ8は、図1に示すように地震情報受信手段10、アクションレベル記録手段15、シャットダウン手段16、起動命令受信手段17、再起動手段18及び安否応答手段19とを備えている。
【0068】
以下、本実施形態のサーバーコンピュータ8が備える各手段について詳説する。尚、地震情報受信手段10については、管理用コンピュータ7と同様であるので説明を省略する。
【0069】
サーバーコンピュータ8は、アクションレベル記録手段15を備えることが好ましい。アクションレベル記録手段15は、地震情報受信処理(S105−2)で緊急地震速報を受信した後、緊急地震速報の主要動の予測到達時刻に基づいて猶予時間を計算し、当該猶予時間に基づいてシャットダウン処理のアクションレベルを判断し、当該アクションレベルを記憶装置22に記憶するアクションレベル記録処理(S107)を実行するものである。
【0070】
本実施形態では、シャットダウン処理のアクションレベルを、例えば以下のようなレベル1〜5の5段階で設定するものとしている。
(レベル1):何もしない
(レベル2):ディスクの停止処理まで
(レベル3):ディスクキャッシュの消去まで
(レベル4):レジューム処理(ハイバネーション及びサスペンド)まで
(レベル5):電源オフまで
しかしながら、アクションレベルのレベル数及びレベル毎の具体的な処理内容等については、ユーザが予め任意に設定することが可能であり、例えば、上述のACPIのパワー・ステート(電源レベルS0〜S5)に従うようにしても良い。
【0071】
更に、各レベル毎に猶予時間に予め閾値を設定し、算出された猶予時間によりレベル1〜5までの処理のうち当該猶予時間内に実行可能な処理を判断する。例えば、猶予時間が5秒以上あれば、レベル4の処理までを実行するようにし、猶予時間が3秒以上5秒未満であればレベル3の処理を実行するようにする等と設定することができる。
【0072】
尚、サーバーコンピュータ8のCPU21のクロック数等の性能により同じ猶予時間でも実行可能なアクションレベルは異なるので、上記猶予時間に設定する閾値は、サーバーコンピュータ8の性能に応じて設定し、記憶装置22に記憶させておくことが望ましい。したがって、アクションレベルの判断結果は、各サーバーコンピュータ8毎に異なるものとなる。
【0073】
更に、アクションレベルの判断に際しては、予測震度を併せて考慮することが好ましい。例えば、震度3以下であれば、コンピュータの電源をオフにはせずに、レベル1〜4までのいずれかのアクションレベルを猶予時間に基づいて選択するようにしても良い。また、例えば、震度4以上であれば、コンピュータへの被害が予測されるため、レベル5までの処理を実行することが望ましいが、上述のように猶予時間により実行可能なシャットダウン処理のアクションレベルは制限される。
【0074】
最後に、アクションレベル記録手段15は、選択されたアクションレベルを記憶装置22に記憶するものである。
【0075】
シャットダウン手段16は、アクションレベル記録処理(S107)で判断されたアクションレベルのレベルに応じた処理内容を実行するシャットダウン処理(S108)を実行するものである。本実施形態において、シャットダウン処理(S108)は、各アクションレベルの処理内容(処理コマンド)について予めサーバーコンピュータ8の記憶装置に実行形式のファイルとして記憶させておき、選択されたアクションレベルの実行ファイルを実行するようにしている。
【0076】
起動命令受信手段17は、管理用コンピュータ7が実行する起動命令送信処理(S110)で送信された起動命令を受信する起動命令受信処理(S112)を実行するものである。
【0077】
また、再起動手段18は、起動命令受信処理(S112)において起動命令を受信した後に、再起動処理(S113)を実行するものである。
【0078】
具体的には、シャットダウン処理(S108)が終了したコンピュータは、上記レベル1〜5までのいずれかのアクションレベルの処理が実行されている状態である。また、本実施形態では、管理用コンピュータ7から送信される起動命令は、マジックパケットによるものとし、また、各サーバーコンピュータ8は、WakeOnLAN機能を備えるものとしている。
【0079】
したがって、本実施形態のサーバーコンピュータ8によれば、管理用コンピュータ7により送信されたマジックパケットによる起動命令をBIOSで受信することで、当該サーバーコンピュータ8がアクションレベル2〜5のどの状態にあっても、完全な電源オンの状態(レベル1)に復旧(再起動)することが可能である。但し、レベル5については、Windows(登録商標)等のOSレベルでは対応しておらず、ハードウェアレベルでのみの対応であることが有るので、レベル5から完全な電源オンの状態に復旧できないコンピュータについては、アクションレベルはレベル1〜4までのいずれかを選択するように設定するようにすれば良い。
【0080】
尚、管理用コンピュータ7をネットワーク6内に複数台設けた場合は、サーバーコンピュータ8は、複数の管理用コンピュータ7から起動命令を受信することになるが、この場合は、最初に受信した起動命令に従って以降の処理を行い、以降に到達した起動命令は廃棄するようにすれば良い。
【0081】
また、ネットワーク6内にある電源オフ状態のコンピュータを再起動させるには、上述のWakeOnLAN機能に限らず、公知又は新規の手法を用いることが可能であり、上述の例に限られるものではない。
【0082】
更に、サーバーコンピュータ7は、安否応答手段19を備えることが好ましい。安否応答手段19は、管理用コンピュータ7からの安否状況の問い合わせ(S116)に対して、アクションレベル記録処理(S107)において記憶装置22に記憶したアクションレベルを管理用コンピュータ7に返信する安否応答処理(S117)を実行するものである。
【0083】
以上で、本実施形態の地震警報システム1のシステム構成についての説明を終了する。尚、本実施形態では、地震警報手段9を地震警報装置5内に構成しているが、これには限らず、管理用コンピュータ7が地震警報手段9を備える構成にしても良い。即ち、管理用コンピュータ7が管理用コンピュータ本来の機能に加え、地震警報装置5の機能を備えるようにしても良い。この実施形態の地震警報システム1においては、地震警報装置5は必須ではなく、システムの簡略化を図ることができる。また、地震警報装置5と管理用コンピュータ7間の通信が不要となるので、その分、処理の高速化を図ることが可能となる。また、この際、地震警報装置5及び地震警報手段9を備えた管理用コンピュータ7を併用するようにしても良いのは勿論である。更に、この場合において、管理用コンピュータが記憶装置22に予め記憶された自身の位置情報(緯度、経度等)に基づいて設置地点での主要動の予測到達時刻及び予測震度を算出する算出手段(図示せず)を備えるようにしても良い。
【0084】
以下、本実施形態の地震警報システム1が実行する処理の流れを図3に示すフローチャートに従って説明する。
【0085】
先ず、震源に近い観測点の地震計で地震波(P波による初期微動)が観測されると(地震の発生:S101)、地震速報センター3は、気象庁2からの緊急地震速報を受信し、地域(地震警報装置5の設置地点)ごとの主要動の予測到達時刻及び予測震度を算出し、これを配信サーバから配信ネットワーク4を介して、地震警報装置5に対して配信する(S102)。
【0086】
次に、地震警報装置5の地震警報手段9は、緊急地震速報を受信する(S103)と、管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8に対してネットワーク6を介して緊急地震速報を送信する(S104−1,S104−2)。
【0087】
次に、管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8は、当該緊急地震速報を受信する(S105−1,S105−2)。緊急地震速報を受信すると、管理用コンピュータ7は、主要動の予測到達時刻に基づいて求めた猶予時間内にデータ記録処理(S106)を行って実行中のデータの保全を図る。また、サーバーコンピュータ8は、猶予時間及び震度を基準にアクションレベルを判断し、猶予時間内に当該アクションレベルを記憶する処理(S107)及び、当該アクションレベルの処理内容を実行する(S108)。尚、S107及びS108の処理は並列処理されることが好ましい。
【0088】
予測到達時刻になると主要動が到達する(地震の発生:S109)。更に、主要動の到達後、管理用コンピュータ7は、予め設定した時間の経過後に、起動命令送信処理を実行し(S110)、サーバーコンピュータ8に対し、マジックパケットによる起動命令を送信する(S111)。
【0089】
サーバーコンピュータ8は、WakeOnLAN機能対応のNIC27を介してマジックパケットによる起動命令を受信し(S112)、再起動処理を実行する(S113)。
【0090】
また、管理用コンピュータ7は、起動命令の送信後であって、一定時間の経過後にサーバーコンピュータ7の安否確認処理を行う(S114)。安否確認は、先ず、通信が可能かどうかの通信状況を問い合わせ(S115)、通信が可能なサーバーコンピュータ8に対しては、シャットダウン処理の実行状況、即ち、アクションレベルを問い合わせる(S116)ものである。
【0091】
問い合わせを受けたサーバーコンピュータ8は、安否応答処理(S117)を実行し、アクションレベル記録処理(S107)において記録したアクションレベルを管理用コンピュータ7に対して返信する(S118)。
【0092】
最後に、管理用コンピュータ7は、全てのサーバーコンピュータ8についての通信状況及びアクションレベルを出力装置25に表示させる(S119)。これにより、管理用コンピュータ7の出力装置25を見れば、システム管理者等は、サーバーコンピュータ8の安否状況、即ち、現在、通信が可能であるか否か、また、通信が可能である場合には、主要動の到達前に実行したシャットダウン処理の(S108)の具体的な内容を知ることができ、地震後のシステム復旧への対応を迅速に遂行することが可能となる。
【0093】
以上で、本実施形態の地震警報システム1が実行する処理は終了する。
【0094】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0095】
例えば、起動命令送信手段12を地震警報装置5が備えるようにして、地震警報装置5がサーバーコンピュータ8に対して、マジックパケットによる起動命令を送信するようにしても良い。この場合は、管理用コンピュータ7に障害が発生した場合であっても、サーバーコンピュータ8は、再起動処理(S113)を実行することができる。
【0096】
また、例えば、上述の実施形態では、地震警報装置5は、緊急地震速報を受信した場合、常に管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8に送信するようにしているが、例えば、震度1〜2といった比較的規模の小さい地震の場合については、コンピュータの被害が想定されないので、予測震度を判断して、震度が一定の値(例えば、震度3以上)の場合にのみ、管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8に緊急地震速報を送信するようにしても良い。
【0097】
また、例えば、地震警報装置5は、受信した緊急地震速報の主要動の予測到達時刻から猶予時間を算出して、これを管理用コンピュータ7及びサーバーコンピュータ8に送信するようにしても良い。
【0098】
また、例えば、管理用コンピュータ6に予めメールソフト(Microsoft社製Outlook Express等)をインストールしておき、当該メールソフトを利用して、緊急地震速報の受信時に予め登録されたメールアドレスに地震の発生を伝える電子メールを送信するようにしても良い。これにより、他のコンピュータとのローカルネットワーク接続が困難な位置にあるコンピュータや携帯電話等へも地震の発生を連絡することができ、地震被害の最小限化、地震発生後の迅速な対応等を取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本実施形態の地震警報システムのシステム構成の一例を示す図である。
【図2】管理用コンピュータおよびサーバーコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】本実施形態の地震警報システムが実行する処理の概略シークエンスの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1 地震警報システム
5 地震警報装置
6 ネットワーク
7 管理用コンピュータ
8 サーバーコンピュータ
9 地震警報手段
10 地震情報受信手段
11 データ記録手段
12 起動命令送信手段
13 安否確認手段
14 安否状況出力手段
15 アクションレベル記録手段
16 シャットダウン手段
17 起動命令受信手段
18 再起動手段
19 安否応答手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置地点における主要動の予測到達時刻及び予測震度を少なくとも含んだ地震情報をネットワークで接続された他のコンピュータに送信する地震警報手段を備えた地震警報装置と、前記地震警報装置に前記ネットワークを介して接続され、前記地震警報装置から送信される前記地震情報を受信する少なくとも1つの管理用コンピュータ及びサーバーコンピュータとを備える地震警報システムであって、前記管理用コンピュータは、前記地震警報装置から前記ネットワークを介して前記地震情報を受信する地震情報受信手段と、前記主要動の予測到達時刻の経過後であって予め設定された時間の経過後に、前記サーバーコンピュータに対して前記ネットワークを介して起動命令を送信する起動命令送信手段とを備え、前記サーバーコンピュータは、前記地震警報装置から前記ネットワークを介して前記地震情報を受信する地震情報受信手段と、前記地震情報の受信後であって前記予測到達時刻前にシャットダウン処理を実行するシャットダウン手段と、前記主要動の予測到達時刻後に前記起動命令を受信する起動命令受信手段と、前記起動命令の受信後に再起動処理を実行する再起動手段とを備えることを特徴とする地震警報システム。
【請求項2】
更に、前記サーバーコンピュータは、予め登録された前記シャットダウン処理のアクションレベルのうち、前記予測到達時刻までの猶予時間内に実行可能なアクションレベルを判断し、該アクションレベルを記録するアクションレベル記録手段と、前記管理用コンピュータは、前記起動命令の送信後であって予め設定された時間の経過後に、前記サーバーコンピュータに対して通信が可能であるか否かの通信状況を問い合わせ、更に通信が可能な場合であると判断した場合は、前記アクションレベル記録手段により記録された前記アクションレベルを問い合わせる安否確認手段と、前記サーバーコンピュータは、前記アクションレベルの問い合わせに応じて記録された前記アクションレベルを前記管理用コンピュータに対して送信する安否応答手段とを備え、且つ前記シャットダウン手段は、前記アクションレベルの記録後に該アクションレベルの処理内容を実行することを特徴とする請求項1に記載の地震警報システム。
【請求項3】
更に、前記管理用コンピュータは、前記予測到達時刻までの猶予時間内に実行中のデータを記憶装置に記憶するデータ記録手段を備えることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の地震警報システム。
【請求項4】
更に、前記管理用コンピュータは、前記通信状況及び前記アクションレベルを前記サーバーコンピュータの安否状況として出力する安否状況出力手段を備えることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の地震警報システム。
【請求項5】
前記サーバーコンピュータは、WakeOnLAN機能を備え、かつ前記起動命令はマジックパケットによる起動命令であって、前記再起動手段は、前記マジックパケットによる前記起動命令を受信して、前記WakeOnLAN機能により再起動することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の地震警報システム。
【請求項6】
前記管理用コンピュータを前記ネットワーク内に複数設けることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の地震警報システム。
【請求項7】
前記管理用コンピュータに前記地震警報手段を備えるようにしたことを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の地震警報システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−14516(P2009−14516A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176693(P2007−176693)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【出願人】(500218699)株式会社サンシャイン (3)
【出願人】(507227418)株式会社久保田情報技研 (2)
【Fターム(参考)】