説明

垂直磁気記録媒体及び垂直磁気記録媒体の製造方法

【課題】結晶配向を劣化させず、かつ結晶粒の密度を下げずに、下地層及び磁性層の結晶粒を微細化した垂直磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】ディスク基体11上に軟磁性層13、配向制御層14、下地層15及び主記録層17を備える垂直磁気記録媒体10であって、前記配向制御層14は、NiW、NiPd、NiCr、NiMo、NiTa、NiV、NiNb、NiZr、NiHf、NiCuから選択される少なくとも一つに酸化物を添加してなる合金を主材料とし、配向制御層14上に成長する下地層15、主記録層17の結晶粒を微細化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式のHDD(ハードディスクドライブ)などに搭載される垂直式記録媒体及び垂直磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理の大容量化に伴い、各種の情報記録技術が開発されている。特に、磁気記録技術を用いたHDD(ハードディスクドライブ)の面記録密度は年率100%程度の割合で増加し続けている。
【0003】
HDD等に用いられる磁気ディスクにおいて高記録密度を達成するためには、情報信号の記録を担う磁気記録層を構成する磁性結晶粒子を微細化すると共に、その層厚を低減して行く必要があった。ところが、従来から商業化されている面内磁気記録方式(長手磁気記録方式又は水平磁気記録方式ともいう)の磁気ディスクの場合、磁性結晶粒子の微細化が進展した結果、超常磁性現象により記録信号の熱安定性が損なわれ、記録信号が消失してしまう、いわゆる熱揺らぎ現象が発生するようになり、磁気ディスクの高記録密度化への阻害要因となっていた。この阻害要因解決のために、垂直磁気記録方式の磁気ディスクが提案されている。
【0004】
垂直磁気記録方式の場合、面内磁気記録方式とは異なり、主記録層の磁化容易軸基盤面に対して垂直方向に配向するよう調整されている。垂直磁気記録方式は、面内記録方式に比べて、熱揺らぎ現象を抑制することができる。また、垂直磁気記録媒体に軟磁性層を設け、軟磁性層により記録ヘッドからの磁束を収束させ、また鏡像効果により長手記録媒体に比べ急峻で大きな磁界を発生させることが可能になるので、高記録密度化に対して好適である。
【0005】
垂直磁気記録方式において磁気記録層がhcp構造(六方細密充構造)である場合、磁化容易軸はC軸であり、C軸を基板の法線方向に配向させる必要がある。このC軸の配向性を向上させるためには、磁気記録層の下にhcp構造の非磁性下地層を設けることが有効である。下地層を形成する材料としてCoCr合金、Ti、V、Zr、Hfなどが知られているが、特にRu(ルテニユム)が磁気記録層の結晶配向性を効果的に向上させ、保磁力Hcを高めることができることが知られている。
【0006】
垂直磁気記録方式では、S/N比(Signal/Noise Ratio)及び保磁力Hcを向上させるために、磁気記録層の磁性粒(磁性グレイン)の間に非磁性物質または酸化物(例えば、特許文献1参照)を偏析させて粒界部を形成したグラニュラー構造とし、磁性粒を孤立微細化することにより行なわれている。さらに、磁性粒の微細化を促進するために、磁性層の下に形成されている下地層の微細化が重要であり、下地層への非磁性物質または酸化物の添加も行なわれている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−036525号公報
【特許文献2】特開2006−085742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、最近では、磁気ディスクの情報記録密度のさらなる高記録密度化が要求されており、HDD等に用いられる2.5インチ径磁気ディスクとして、1枚あたり160GBを越える情報記録容量が求められるようになって来ている。このような要請に応えるためには1平方インチあたり250GBビットを越える情報記録密度を実現する必要がある。このような高記録密度を可能にするためにはさらに磁性粒の微細化し、S/N比(Signal/Noise Ratio)を向上させる必要がある。従来の方法における磁性粒の微細化には、磁気記録層への酸化物の添加量を増加させることが知られている。しかしながら、酸化物の添加量が多くなると、酸化物が粒界部へ偏析し、磁性粒と磁性粒との間隔が大きくなり、磁気記録層での磁性粒の密度が下がる。情報記録の高密度化する場合、記録されるビット領域が小さくなり、信号の出力を確保するために、ある程度の磁性粒の個数が必要になるため、磁気記録層への酸化物の添加による磁性粒の微細化には限界がある。
【0009】
磁性粒を微細化するための他の方法として、下地層に酸化物を添加し、下地層を微細化することで可能であることも知られている。但し、この方法では、酸化物の添加により、下地層の結晶配向が劣化し、磁性層の結晶配向を劣化させることがあるので、制御が困難になる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、下地層の下に積層される配向制御層を微細化することにより、結晶配向を劣化させず、かつ結晶粒の密度を下げずに、その上に積層される下地層及び磁性層の結晶粒を微細化できる垂直磁気記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者が鋭意検討したところ、配向制御層に酸化物を添加することにより、配向制御層、その上に成長する下地層、磁気記録層の結晶粒を微細化することができ、S/N比を向上させることができることが判明した。そして、各酸化物の材料について検討し、さらに研究を重ねることにより、本発明を完成することに至った。
【0012】
配向制御層としては、NiW、NiPd、NiCr、NiMo、NiTa、NiV、NiNb、NiZr、NiHf、NiCuの合金で構成される群から選択される少なくとも一つの物質から形成されることが好ましい。
【0013】
配向制御層へ添加する酸化物としては、SiO、SiO、TiO、TiO、Cr、Zr、Ta、Al、W、Mo、V、Nbの材料で構成される群から選択されるひとつの物質から形成されることが好ましい。
【0014】
配向制御層の膜厚としては、1nm以上、好ましくは3nm以上20nm以下である。配向制御層が1nm以下になると、初期層の結晶配向制御が困難であるため、下地層の結晶配向の制御ができなくなる。また、配向制御層が20nm以上になると、書き込みヘッドと軟磁性層との距離が遠くなるため、書き込み磁界が弱くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の垂直磁気記録媒体及び垂直磁気記録媒体の製造方法によれば、配向制御層として、酸化物を添加した材料を用いることにより、磁性層での磁性粒密度を下げずに磁性粒の大きさを微細化することができる。また、磁性粒の結晶配向もほとんど劣化させずに磁性層を積層することができ、垂直記録媒体の記録再生特性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態いついて図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る垂直磁気記録媒体10の構造を示した断面図である。この垂直磁気記録媒体10は、垂直磁気記録再生方式に用いられる磁気記録媒体である。
【0017】
図1に示す垂直磁気記録媒体10は、ディスク基体11、付着層12、第一軟磁性層13a、非磁性スペーサ層13b、第二2軟磁性層13c、配向制御層14、第一下地層15a、第二下地層15b、第一オンセット層16a、第二オンセット層16b、主記録層17、連続層(Continuous層)18、媒体保護層19、潤滑層20がその順で積層されて構成されている。なお、第一軟磁性層13a、非磁性スペーサ層13b、第二軟磁性層13cは、あわせて軟磁性層13を構成する。第一下地層15aと第二下地層15bはあわせて下地層15を構成する。第一オンセット層16aと第二オンセット層16bはあわせてオンセット層16を構成する。
【0018】
ディスク基体11としては、例えば、ガラス基板、アルミニウム基板、シリコン基板、プラスチック基板などを用いることができる。ディスク基体10にガラス基板を用いる場合には、例えば、アモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円盤状に成型してガラスディスクを作製し、このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施すことにより作製することができる。アルミノシリケートガラスは、平滑かつ高剛性が得られるので、磁気的スペーシング、特に、磁気ヘッドの浮上量をより安定して低減できる。また、アルミノシリケートガラスは化学強化により、高い剛性強度を得ることができる。
【0019】
付着層12は、ディスク基体10との間の密着性を向上させるための層であり、軟磁性層13の剥離を防止することができる。付着層12の材料としては、例えばTi含有材料を用いてもよい。実用上の観点からは付着層12の膜厚は、1nm〜50nmとするのが好ましい。
【0020】
軟磁性層13の第一軟磁性層13a及び第二軟磁性層13cとしては、例えば、FeCoTaZr膜などを用いることができる。非磁性スペーサ層13bの組成は、非磁性材料のRu膜などを挙げることができる。第一軟磁性層13aと第二軟磁性層13cの間に非磁性スペーサ層13bを介在させることによって、AFC(Antiferro-magnetic exchange coupling:反強磁性交換結合)を備えるように構成した。これにより軟磁性層13の磁化方向を高い精度で磁路(磁気回路)に沿って整列させることができ、磁化の垂直成分が極めて少なくなることで軟磁性層13から生じるノイズを低減することができる。
【0021】
配向制御層14は、軟磁性層13を防護する作用、下地層15の結晶粒の配向の整列を促進する作用、さらに結晶粒を微細化する作用を備える。本実施の形態において、配向制御層14は、Niを主材料とし、酸化物材料を含んでいる。配向制御層14の材料は、Niを主成分としたfcc構造を有するNiW、NiPd、NiCr、NiMo、NiTa、NiV、NiNb、NiZr、NiHf、NiCuの合金から選択されたものであることが好ましい。また、配向制御層14に添加される酸化物材料は、SiO、SiO、TiO、TiO、Cr、Zr、Ta、Al、W、Mo、V、Nbから選択したものであることが好ましい。このように、配向制御層14に上記酸化物材料を添加することで、特に結晶粒を微細化する作用が増大される。
【0022】
下地層15を構成する材料はhcp構造を有し、主記録層17を構成する材料のhcp構造の結晶をグラニュラー構造として成長させることができる。したがって、下地層15の結晶配向性が高いほど、主記録層17の配向性を向上させることができる。下地層15の材質としては、Ruの他に、RuCr、RuCoを挙げることができる。Ruはhcp構造をとり、Coを主成分とする主記録層を良好に配向させることができる。
【0023】
下地層15は、2層構造のRu膜で構成されている。上層側の第二下地層15bを形成する際に、下層側の第一下地層15aを形成するときよりもArのガス圧を高くしている。ガス圧を高くするとスパッタリングされるプラズマイオンの自由移動距離が短くなるため、成膜速度が遅くなり、結晶配向性を改善することができる。また高圧にすることにより、結晶格子の大きさが小さくなる。Ruの結晶格子の大きさはCoの結晶格子よりも大きいため、Ruの結晶格子を小さくすればCoのそれに近づき、Coのグラニュラー層の結晶配向性をさらに向上させることができる。
【0024】
下地層15のhcp結晶構造の上に非磁性のグラニュラー層を形成し、この上に主記録層17のグラニュラー層を成長させることにより、磁性のグラニュラー層を初期段階(立ち上がり)から分離させる作用を有している。第一オンセット層16aおよび第二オンセット層16bの組成は非磁性のCoCr−SiO2および磁性のCoCrPt−Crとした。
【0025】
主記録層17は、hcp結晶構造を有する磁性層である。主記録層17としては、CoCrPt-Cr、CoCrPt−SiO、CoCrPt−TiOなどを挙げることができる。非磁性物質としての酸化珪素(SiO2)または酸化チタン(TiO2)を含有するCoCrPtからなる硬磁性体のターゲットを用いて、hcp結晶構造を形成する。なお、主記録層17は7nm〜15nmの範囲で適宜設定しうる。主記録層17を形成するためのターゲットの組成は、CoCrPtとSiO2(またはTiO2)とを約9:1(mol%)で構成する。非磁性物質は磁性物質の周囲に偏析して粒界を形成し、磁性粒(磁性グレイン)は柱状のグラニュラー構造を形成した。この磁性粒は、オンセット層16のグラニュラー構造から継続してエピタキシャル成長した。
【0026】
連続層18は、面方向に磁性が連続しているCoCrPtB膜からなる。連続層18は、低Arガスで形成され、膜厚は10nm以下であることが好ましく、望ましくは5nm以下である。
【0027】
付着層12から連続層18までは、ディスク基体11上に、真空引きを行った成膜装置を用いて、Ar雰囲気中でDCマグネトロンスパッタリング法にて順次成膜を行う。生産性を考慮すると、インライン型成膜によりこれらの層や膜を形成することが好ましい。
【0028】
媒体保護層19は、磁気ヘッドの衝撃から主記録層17を防護するための保護層である。媒体保護層19を構成する材料としては、例えば、Cr、Cr合金、カーボン、ジルコニア、シリカなどが挙げられる。真空を保ったまま例えばカーボンをCVD法により成膜して形成する。一般に、CVD法によって成膜されたカーボンはスパッタリング法によって成膜したものと比べて膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対してより有効に垂直磁気記録層を保護することができる。
【0029】
潤滑層20は、例えば、液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系などの溶媒で希釈し、媒体表面にディップコート法、スピンコート法、スプレイ法によって塗布し、必要に応じ加熱処理を行って形成する。潤滑層20の膜厚は約1nmである。このパーフロロポリエーテルは、直鎖構造を備え、磁気ディスク用に適度な潤滑性能を発揮するとともに、末端基に水酸基(OH)を備えることで、炭素媒体保護層に対して高い密着性能を発揮することができる。
【0030】
次に、図1に示す垂直磁気記録媒体10と同一構造で配向制御層14の材料を変化させた実施例1〜実施例7、及び配向制御層14及び下地層15の材料を変化させた比較例1〜3について説明する。
【0031】
(実施例1)
アモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円盤状に成型し、ガラスディスクを作成した。このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性ディスク基体11を得た。ディスク基体11の直径は、65mm、内径は20mm、ディスク厚は0.635mmの2.5インチ型磁気ディスク用基板であった。得られたディスク基体11の表面粗さをAFM(原子間力顕微鏡)で観察したところ、Rmaxが2.18nm、Raが0.18nmの平滑な表面であることを確認した。なお、Rmax及びRaは、日本工業規格(JIS)に従う。
【0032】
次に、キヤノンアネルバ社製C3040スパッタ成膜装置を用いて、ディスク基体110上に、DCマグネトロンスパッタリングで順次、付着層12、軟磁性層13、配向制御層14、下地層15、第一オンセット層16a、第二オンセット層16b、主記録層17の成膜を行なった。
【0033】
まず、付着層112が10nmのCrTi45(Cr:55at%、Ti:45at%)層となるように、CrTiターゲットを用いて成膜した。
【0034】
次に、第一及び第二軟磁性層13a、13cが、25nmのアモルファスFeCoTaZr(Fe:37at%、Co:55at%、Ta:3at%、Zr:5at%)層となるように、FeCoTaZrターゲットを用いて成膜した。非磁性スペーサ層13bとしてはRuターゲットを用いて0.5nmのRu層を成膜した。
【0035】
次に、軟磁性層13の上に、10nmのNiW‐TiO(Ni:86at%、W:8at%、TiO:6at%)膜となる配向制御層14を成膜した。
【0036】
次に、配向制御層14の上に、成膜ガス圧1.5Paにて膜厚10nmのRuからなる第一下地層15aを成膜し、さらに成膜ガス圧6.0Paにて膜厚10nmのRuからなる第二下地層15bを成膜した。
【0037】
次に、下地層15の上に、1.0nmのCoCr−SiO(Co:53at%、Cr:35at%、SiO:12at%)膜からなる第一オンセット層16aを成膜し、さらに3nmのCoCrPt−Cr(Co:67at%、Cr:11at%、Pt:17at%、Cr:5at%)膜からなる第二オンセット層16bを成膜した。
【0038】
次に、オンセット層16の上に、8nmのhcp結晶構造のCoCrPt−TiO(Co:64at%、Cr:11.5at%、Pt:14.5at%、TiO:10at%)からなる硬磁性体のターゲットを用いて主記録層17を成膜した。さらに、連続層18は7.5nmのCoCrPtB(Co:60at%、Cr:20at%、Pt:15at%、B:5at%)のターゲットを用いて成膜した。
【0039】
次に、CVD法で水素化カーボンからなる媒体保護層19を形成した。水素化炭素とすることで、膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対して垂直主記録層を防護することができる。
【0040】
この後、PFPE(パーフロロポリエーテル)からなる潤滑層20をディップコート法により形成した。潤滑層20の膜厚は1nmである。
【0041】
以上の工程にて得られた媒体の記録再生特性を評価した。R/Wアナライザーと、記録側がSPT素子、再生側がGMR素子を備える垂直磁気記録方式用磁気ヘッドとを用いて、記録密度を1200kfciとして測定した。このとき、磁気ヘッドの浮上量は10nmであった。
【0042】
(比較例1)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiW(Ni:92at%、W:8at%)とした。
【0043】
(比較例2)
上述した実施例1と同様の膜構成で、第一下地層15aと第二下地層15bとして、Ru‐SiO(Ru:95at%、SiO:5at%)とした。
【0044】
(比較例3)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14には、NiW(Ni:92at%、W:8at%)とし、第二下地層15bとして、Ru‐SiO(Ru:95at%、SiO2:5at%)とした
【0045】
(実施例2)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiW‐TiO(Ni:89at%、W:8at%、TiO:3at%)とした。
【0046】
(実施例3)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiW‐SiO(Ni:87at%、W:8at%、SiO:5at%)とした。
【0047】
(実施例4)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiW‐Cr(Ni:82at%、W:7at%、Cr:11at%)とした。
【0048】
(実施例5)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiW‐Ta(Ni:62at%、W:5at%、Ta:33at%)とした。
【0049】
(実施例6)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiW‐Nb(Ni:74at%、W:6at%、Nb:20at%)とした。
【0050】
(実施例7)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiW‐Al(Ni:85at%、W:7at%、Al:8at%)とした。
【0051】
(実施例8)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiPd‐TiO(Ni:86at%、Pd:8at%、TiO:6at%)とした。
【0052】
(実施例9)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiCr‐TiO(Ni:86at%、Cr:8at%、TiO:6at%)とした。
【0053】
(実施例10)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiMo‐TiO(Ni:86at%、Mo:8at%、TiO:6at%)とした。
【0054】
(実施例11)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiTa‐TiO(Ni:86at%、Ta:8at%、TiO:6at%)とした。
【0055】
(実施例12)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiV‐TiO(Ni:86at%、V:8at%、TiO:6at%)とした。
【0056】
(実施例13)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiNb‐TiO(Ni:86at%、Nb:8at%、TiO:6at%)とした。
【0057】
(実施例14)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiZr‐TiO(Ni:86at%、Zr:8at%、TiO:6at%)とした。
【0058】
(実施例15)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiHf‐TiO(Ni:86at%、Hf:8at%、TiO:6at%)とした。
【0059】
(実施例16)
上述した実施例1と同様の膜構成で、配向制御層14としては、NiCu‐TiO(Ni:86at%、Cu:8at%、TiO:6at%)とした。
なお、実施例に係る磁気記録媒体10として、図1を用いて説明した構成の磁気記録媒体10を作製する。磁気記録媒体10の製造工程では、例えば軟磁性層形成工程、磁気記録層形成工程等により、ディスク基体11上に形成される各層を順番に形成する。尚、各層を形成する工程において、軟磁性層形成工程以外は、公知の各工程と同一又は同様の工程であってよい。
【0060】
図2は、各実施例1〜16及び比較例1〜3で作製した磁気記録媒体を、透過電子顕微鏡の平面写真から評価した平均結晶粒径、X線回折装置で評価したΔθ50及び記録再生特性S/Nの評価結果を示している。透過電子顕微鏡の平面写真から求めた各結晶粒の面積を円形に換算し、その円形の半径を結晶粒径と定義している。平均結晶粒径は数百個の結晶粒から取った平均値である。また、Δθ50はRu(002)結晶配向ピークのローキングカーブの半値幅を示している。
【0061】
図2からは、下地層15に酸化物を添加せずに配向制御層14にだけ酸化物を添加した実施例1〜7は、磁性層の磁性粒径を微細化でき、しかも下地層に酸化物を添加した比較例2,3に比べて、磁性粒の結晶配向の劣化が抑えられていることが確認できる。
【0062】
上記実施の形態における層構成、部材の材質、個数、サイズ、処理手順などは一例であり、本発明の効果を発揮する範囲内において種々変更して実施することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施の形態に係る磁気記録媒体の断面構成図
【図2】実施例1〜16及び比較例1〜3の評価結果を示す図
【符号の説明】
【0064】
10 磁気記録媒体
11 ディスク基体
12 付着層
13 軟磁性層
13a 第一軟磁性層
13b 非磁性スペーサ層
13c 第二軟磁性層
14 配向制御層
15 下地層
15a 第一下地層
15b 第二下地層
16 オンセット層
16a 第一オンセット層
16b 第二オンセット層
17 主記録層
18 連続層
19 媒体保護層
20 潤滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板と、
前記非磁性基板上に形成された軟磁性層と、
前記軟磁性層上に形成され、Niを主材料とし、酸化物が添加された配向制御層と、
前記配向制御層上に形成された六方細密充構造を有する非磁性下地層と、
前記非磁性下地層上に形成され、六方細密充構造の結晶をグラニュラー構造として成長させた磁気記録層と、
を具備したことを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
前記配向制御層は、NiW、NiPd、NiCr、NiMo、NiTa、NiV、NiNb、NiZr、NiHf、NiCuから選択される少なくとも一つに酸化物を添加してなる合金を主材料としたことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項3】
前記配向制御層は、前記酸化物としてSiO、SiO、TiO,TiO,Cr、Zr,Ta,Al,W,Mo、V、Nbから選択される少なくとも1種の材料が添加さることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項4】
前記配向制御層は、厚さが1nm〜20nmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項5】
前記下地層は、RuまたはRu合金を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項6】
前記磁気記録層は、CoCrPt-酸化物からなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項7】
基板上に軟磁性層を形成するステップと、前記軟磁性層上にNiを主材料とする材料に酸化物を添加した配向制御層を形成するステップと、前記配向制御層上に六方細密充構造を有する非磁性下地層を形成するステップと、前記非磁性下地層上に六方細密充構造の結晶をグラニュラー構造として成長させて磁気記録層を形成するステップとを具備したことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−245484(P2009−245484A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88141(P2008−88141)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】