説明

埃とエアロゾルを防止可能な被覆物が施された基礎部、該基礎部と被覆物の材料を製造する方法

本発明は、
(a)加水分解的な縮合によって形成され、大きさが5〜20nmの範囲の、第1の酸化物粒子、
(b)直径が、80〜300nmの範囲の第2の粒子、
(c)加水分解的な縮合によって形成される酸化物粒子のための原料が溶解可能であり及びその加水分解及び縮合が許容され又は促進される第1の水性溶媒、
(d)所定の定義を有するアルコール、エーテル、有機酸、エステル、ケトン、アミン、及び酸アミド、及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の第2の溶媒、を含むことを特徴とする被覆材料に関する。
本発明は、更に、被覆物が施された基礎部、特に、光起電力−及び温水コレクターの分野に適切な、ガラスに関し、ここで上記被覆物は、少なくとも2種の粒子部分から構成され、第1の部分の粒子は、その直径範囲が5〜20nmであり、第2の部分の粒子の直径は、80〜300nmの範囲であり、第2の部分の粒子は、該粒子のケーゲル(山状体、又はピン状体)からケーゲルまでを測定して、相互の平均間隔が、20〜200nmの範囲であり、第1の部分の粒子は、所定の孔分布を有する孔を有し、その最大値が、1〜6nmの範囲である。基礎部の被覆物は、上記被覆物材料を使用して製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埃を防止し、及び付着性の無機性及び有機性の汚れを雨水で浄化することができる基礎部の被覆物に関する。被覆物は、好ましい形態では、ガラスに、抗反射性の特性を追加的に与え、従って、太陽エネルギーを利用する設備に使用されるガラス(例えば光起電力モジュール又は温水コレクターを被覆するための板ガラス、又はソーラー温水発生器のための管ガラス、しかし、適宜、建築ガラス又はこれらに類似するもの)の被覆に特に適切である。被覆物を製造するために、基礎部(サブストレート)が被覆溶液中に漬けられ、そして次に適切な速度で、溶液から取り出される。ガラスの表面に残った、湿ったフィルムが乾燥され、そして次に、所望により、対摩性を高めるために、数百度の温度、例えば500℃でか焼(加熱すること)される。このようにして加工(改良)されたガラスが施された技術器具又は他に基礎部は、特に、(大気中に多くの埃が発生し、そしてこれにより、埃まみれになった光の入射表面によって、エネルギー収量が減少するような)地理学の分野に適切である。
【背景技術】
【0002】
大気中の成分は、ナノメートル以下の非常に小さなガス分子から、100μm以下の大きさのアッシュ粒子までに達する。エアロゾルのグループは、空気中の固体又は液体粒子であり、典型的には、その大きさは、0.01〜10μmの範囲であり、及び−温室効果ガスとは対照的に−その寿命が数日間と非常に短い。エアロゾルは、天然に及び/又は人工的に発生し得る(海塩、無機の埃、硫酸塩、煤、等)。ソーラー設備を効果的に利用する上で、不利になる粒子状の物質は、特に、水に難溶解性の埃(該埃は、無機及び有機成分を有する)又は煤ないし主として炭素からできている煙である。これらエアロゾルの最も小さいものは、直径が10nm(超微粒な埃)であり、これは沈降せず、そして100nm程度の(超微粒な埃よりも)非常に大きい凝固物とは、降水によって分離される。沈降する埃は、直径をミクロメートルの範囲に有し、10μm以上である。
【0003】
ガラス表面上にエアロゾルが堆積(沈澱)すると、透過性が減少する。特に、汚れの層としてガラス上に恒久的に集積し、及び雨によっても、風によっても除去することができない粒子が有害であり、この場合、上記除去には、機械作用の洗浄(例えば、スポンジ及びブラシ)が必要とされる。
【0004】
コレクター(太陽熱集熱器)の、汚れが付いたガラス表面を調査した結果、固着した、油脂等で汚れた基礎層の上に、埃の上部層が存在することが分かった。埃性の上部層(該上部層は、基礎層ではない)は、雨の滴によっても除去されない。これは、特に恒久的に作用する汚れであり、そしてソーラー設備の効果的な利用を害するものである。
【0005】
汚れたガラス管において、表面の化学的化合物をTOF−SIMS−法(滞空時間−二次イオン−測定スペクトロメトリー;time−of−flight−SIMS)によって分析した。強さ(集中度)が高いものとして、Na、K、Mg、Ca、Fe、Al、Si及びPbが見出された。水溶性化合物を形成するCl及びNOに加え、F及びSOも確認された。F及びSOは、MgF、CaF又はギプス(石膏)として存在する場合には、難溶解性であり得る。更に、有機化合物(これに高級脂肪酸が属する)も同様に難溶解性であり、そして恒久的な基礎層の(汚れた)油性の堅固さを説明し得るものである。
【0006】
特許文献1(DE10351467A1)に記載されているように、汚れの堆積物(沈澱物)を回避するための物質が、疎水性溶液に施されるか、又は親水性の光触媒層に施されることが公知である。疎水性の表面は、異なる方法(手段)で製造できる。一方では、(セラミック工業では通常であるが、)無機−有機ナノ粒子ネットワークでできた層を、不飽和有機基を介して、熱的に、又はUV光で架橋することができる。代表的な例は、無機−有機ハイブリッドポリマーで、該ハイブリッドポリマーは、Fraunhofer Instituts fuer SilicatforschungのMarke ORMOCERe(登録商標)によって公知である。他方では、種々の疎水性有機溶液が存在し、これらは製造の後に、又は最終的な顧客によって施すことができる(例えば、商標“ClearShieldTM”によって公知である。)。特許文献2(WO00/37374)には、この溶液付加の例が示されている。しかしながら、この出版物に記載されている層は、機械的に安定しているものではなく、そして有機成分によって、最大の使用温度が制限される。更に、容易に洗浄可能な、疎水性、光触媒層を有する繊維ガラスが提供されている。洗浄効果を得るためには、UV−光による活性化が、強制的に必要である。更に、分解速度は非常に低く、そして接触状態の汚れには適切ではない。
【0007】
特許文献3(WO03/027015A1)からハイブリッド−ゾルが公知である。ハイブリッド−ゾルは、水と溶媒に加え、[SiO(OH)y]−粒子(但し、0<y<4、及び0<x<2)の2種の異なる部分(フラクション)を含んでおり、第1の部分は、粒子径が4〜15nmで、そして第2の部分は、平均粒径が20〜60nmである。このゾルは、水性溶媒体を含む媒体中(これには、酸化珪素−水酸化物−粒子が含まれている)で、テトラアルコキシシランを加水分解的に重縮合することによって得ることができる。シランの加水分解的な重縮合が少なくとも部分的に行なわれた時に、この媒体に、平均粒径が20〜60nmの、単一分散した酸化珪素−水酸化物−ゾルが加えられる。このハイブリッド−ゾルは、耐摩性のSiO−抗反射性層を基礎部上(好ましくはガラス上、特に好ましくは、ソーラーコレクター(太陽熱集熱器)及び光起電性の電池のカバー上)に製造する方法に適している。特許文献4(WO03/027034A2)には、このようなゾルから製造された抗反射性−表面被覆物(これは、第1の粒子部分と第2の粒子部分の割合が、3000:1〜250:1の範囲である)が記載されている。これらの被覆物が、どの程度まで、埃−又はエアロゾル防止性であることが可能であるかについては、上述した文献には記載されていない;上述した出願の発明者(該発明者は、上記WO−明細書に記載された層の発明者でもある)によれば、フィールド調査では、被覆されていないガラスと被覆されたガラスの間に、埃の堆積(沈殿)について、有意な差異は見出されなかったとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE10351467A1
【特許文献2】WO00/37374
【特許文献3】WO03/027015A1
【特許文献4】WO03/027034A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ガラス−基礎部又は他の表面に施した後、その表面が、(たとえ、強い汚れに、微小の及び極微小の、大気中粒子が堆積した場合であっても、)従来技術の(公知の)層(被覆物)よりも容易に洗浄可能になり、最終的に得られる層が、好ましくは高い透明性を有する被覆物を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題は、
(a)加水分解的な縮合(凝縮)によって形成され、大きさが5〜20nmの範囲の、酸化物粒子、
(b)大きさ(直径)が、80〜300nmの範囲の粒子(該粒子は、酸化物粒子であることが好ましいが、その必要はない)、
(c)加水分解的な縮合によって形成される粒子のための原料が溶解可能であり及びその加水分解と縮合が許容され又は促進される第1の水含有溶媒、
(d)以下の式、
ROH
ROR
RCOOH
RCOOR
RC(O)R及び
RCONR
のアルコール、エーテル、有機酸、エステル、ケトン、アミン、及び酸アミドの下に選ばれる、第2の溶媒、
但し、RとRは、適宜、同一又は異なって良く、及び無置換の、又はヒドロキシ、−NHR、アミド、イミノ、−COOR及び/又はアルコキシカルボニルで置換された、飽和又は不飽和の直鎖の又は枝分かれしたアルキル、アルコキシ又はポリエーテルアルコキシを意味し、そして好ましくは1〜3種のアルキレンオキシド単位及び好ましくは全部で1〜10個の炭素原子を有し、又はRとRは、無置換の又はヒドロキシ、−NHR、アミド、イミノ、−COOR及び/又はアルコキシカルボニルで置換された、又は不飽和の、直鎖の、又は枝分かれしたアルキレン−、オキシアルキレン−又はアルキレン(ポリ)オキシアルキレン基の形成下に、環を形成して相互に結合されており、但し、溶媒が式ROHのものに該当する場合には、Rが無置換のアルキルではなく、及びRが、適宜、同一又は異なって良く、及びH又はC−〜C−アルキルを意味し、及び、上述した加水分解的な縮合のための原料の原料(出発材料)の錯体化又はキレート化が、小さい方の粒子(より小さい粒子)を生じさせ、及び/又は原料ないしそれ自身で形成される粒子の軽度〜中程度の溶媒和及び/又はペプタイズを生じさせるか、又は支持(サポート)可能であることを特徴とする被覆材料によって解決可能であり、そしてこのことは驚くべきことであった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の作用を説明した図である。
【図2】都市のエアロゾルの代表的な径分布(サイズ分布)を示した図である。
【図3】本発明の構造を示した図である。
【図4】本発明の構造を示した図である。
【図5】本発明の層の孔径分布(最大を2nmに有する)を示した図である。
【図6】水のフィルムで覆われた多孔性層の全厚さと相対湿度との関係を示した図である。
【図7】ガラス管上に施された、本発明に従う層の、温度が21℃及び相対湿度が50%での埃除去効果を、被覆していないガラス管と比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
加水分解的な縮合によって得られる、酸化物粒子は、(ゾル−ゲル−技術を使用した周知の方法で)その大きさを5〜20nmの範囲に製造可能である。WO03/027015A1には、このような粒子を、(塩基性の水性のアルコール含有溶液中の)テトラアルコキシシランを加水分解的に重縮合することによって製造することが記載されている。しかし、本発明は、この製造方法及び/又は純粋な二酸化珪素に限定されるものではない。この理由は、使用するカチオンとは独立して、本発明の目的のために、任意の酸化物粒子が適しているからである。従って、任意のシランテトラ−又は−トリアルコキシド(後者の場合には、例えば、炭素原子を介して結合した基を更に含む)からの、又は、その他の加水分解可能な、及び縮合可能なシランからの酸化金属を含むことができる。この替わりに、又は、これと組み合わせて、化合物、特に、ヒドロキシド及び/又は周期表の主族及び遷移金属の2−、3−、4−、又は5価のイオンのアルコキシドを装入しても良い。これらは、加水分解と縮合によって、金属−酸素−結合の形成下に、酸化物に変換されるもので、例えば、マグネシウム、カルシウム、硼素、アルミニウム、ゲルマニウム、錫、チタン、又はジルコニウム又はこれらの混合物の、加水分解可能な金属化合物である。(見かけで)3−及び/又は4価の状態にある(半−)金属−イオンが好ましい。各場合において、原料(出発材料)として、ヒドロキシド及びアルコキシドが好ましく、特に、直鎖状の又は枝分かれした、又は環状のC−C10−アルコキシドが好ましい。
【0013】
(大きい方の)酸化物粒子は、任意の粒子、例えば、キーゼルゾル(珪石ゾル)の粒子が可能である。この替わりに、他の酸化物、及び特に小さい寸法の方の粒子について上述した金属又は半金属が導入されて良く、又は、この粒子は、二酸化チタンでできているか、又はこれを、混合物中に含んで良く、又は、1種以上の他の金属カチオンと一緒に、混合酸化物として含んでも良い。更なる変形例として、室温では水に非溶解性の、ないしごく僅かにしか溶解しない、非−酸化物性物質、例えば、MgFでできた粒子、又は内側が任意の材料で、その外側「被膜」(すなわち、最も外側の、少なくとも約4〜10nmの厚さ範囲)が、上述した酸化物材料、又はMgFでできた粒子が挙げられる。好ましくは、これらの粒子の粒子径分布は、比較的狭く、又は非常に狭く、又は、粒子分布は、単一分散(例えば、その最大値が、100〜280nmの範囲、好ましくは100〜150nmの範囲であり、及び粒子のほぼ80%が、その下側と上側に20nmの範囲に存在するか、又は平均径が、約100nm〜約250nmの範囲、例えば約120nmの単一分散の粒子)であっても良い。
【0014】
例えば、第1の、工程(c)で述べた溶媒は、水性の、上述した原料の加水分解的な縮合を補助する、又は触媒作用を及ぼす、適宜アルコールを含んだ、好ましくは塩基性の溶媒であり、該溶媒は、塩基として、例えば、アンモニア、アミン、ポリエチレンイミン、又はこれらに類似するものを含んでも良い。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、i−又はn−プロパノール又はn−、i−又はt−ブタノールが有用である。しかしながら、アルコールは、必ずしも必要なわけではない。
【0015】
第2の溶液は、アルコキシアルコール、例えば、メトキシプロパノール、メトキシエタノール、又はメトキシメタノール、好ましくは、2又は3個のアルキレンオキシド単位を有するポリアルコキシアルコール(ポリエーテルアルコール)(例えば、CHCH−O−CHCH−O−CHCHOH)、好ましくは低級の、対称又は非対称のケトン、例えばアセトン又はメチルイソブチルケトン、好ましくは低級の対称又は非対称のエーテル、例えば、ジメチルエーテル又はジブチルエーテル又はテトラヒドロフラン、エステル、例えば、酢酸エチルエステル又は(ポリ−)アルコキシ−炭酸、例えば、CH−O−CH−O−CHCOH又はカルボキシ基を有するアルコール又はポリオールから選ぶことができる。
【0016】
更に、本発明は、上述した課題の解決に、被覆物が施された基礎部を提供する。ここで、上記被覆物は、少なくとも2種の粒子部分から構成されており、第1の部分は、酸化物粒子を、5〜20nmの粒径の範囲に有しており、又はこの粒子から構成されており、及び第2の部分は、粒子を、80〜300nmの大きさの範囲、好ましくは100nm〜300nmの範囲に有しており、これらは、これらの粒子のケーゲル(山状体又はピン状体)からケーゲルまでを測定して、約20〜200nmの平均間隔を相互に有しており、そして、第1の部分の粒子は、所定の孔径部分を有する孔(細孔)を有しており、その最大値は、1〜6nmの範囲である。
【0017】
第1の部分の酸化物粒子は、任意に構成(調合)することができる;好ましくは、上記酸化物粒子は、二酸化珪素から構成されるか、又は珪素と主族又は遷移金属の1種以上のカチオン(好ましくは見かけの酸化段階が、+2、+3、+4又は+5である)の混合酸化物から構成される。酸化物について、マグネシウム、カルシウム、硼素、アルミニウム、ゲルマニウム、錫、チタン又はジルコニウム又はその混合物の酸化物、又はその混合酸化物が好ましい。
【0018】
第2の部分の粒子は、第1の粒子と同一の又は他の化合物を有することができる;しかし、これらは、二酸化珪素、又は二酸化珪素と1種以上の主族又は遷移金属、好ましくは、見かけの酸化段階が、+2、+3、+4又は+5のカチオンとの混合物から、又はマグネシウム、カルシウム、硼素、アルミニウム、ゲルマシウム、錫、チタン、又はジルコニウムの1種以上の酸化物から、又はこれらの混合物又は混合酸化物から構成することもできる。粒子は、純粋な酸化物又は混合酸化物で構成されることができ、該酸化物は、例えば、Al、SiO又はTiOであり、これらは、対応する塊又はゾル、例えばキーゼルゾルから得ることができる。この代わりに、第2の部分の粒子は、被覆材料について上述したように、他の、少なくとも室温で、水に僅かにしか溶解しないか、又は全く溶解しない材料で構成することができ、又、第2の部分の粒子は、任意の材料でできた核と、上述した材料でできた外皮又は外殻で構成することができる。
【0019】
本発明に従い導入される溶媒を使用して、ゾル−ゲル−技術の補助下に第1の粒子を製造することにより、これらの粒子は、最大の孔径が6nm以下の範囲の孔を有するようになる。孔分布の最大値は、約1.5〜4nmの範囲であることが特に好ましい。より大きい粒子(大きい方の粒子)も、このような孔を有することができる;このような孔粒子(細孔粒子)は、市販されている。より大きな粒子が、それ自身、その表面に孔を有するか、又は有しないかについては、本発明にとっては重要ではない。この理由は、これらの粒子は、第1の小さな粒子によって包み込まれており、その外側表面又は、該その内側に大きい方の粒子が存在する「おおい」が、孔を有するからである。
【0020】
より小さい粒子は、通常その製造に基いて、不規則な形状を有しており、球状又は略球状に形成されるものでもない。これに対して、より大きい粒子は、球状(円球状)又は球に近い状態(略球状)であることが好ましい。「球に近い状態」は、楕円体又は卵形の形状と理解されるか、又はこの「より大きい粒子」は、その本体が球状の基本形状を有する状態で、その表面により小さい不規則な構造体を有している。
【0021】
より大きい粒子に対するより小さい粒子の重量割合又は質量割合は、好ましくは約25:1〜1:5の範囲であり、より好ましくは5:1〜1:1の範囲であり、及び特に好ましくは1.5:1〜1.2:1の範囲である。より大きい粒子に対するより小さい粒子の数は、大まかに評価して、約1000:1〜20:1の範囲、好ましくは約200:1〜40:1の範囲である。
【0022】
大きい方の粒子は、小さい方の粒子の薄い層の被覆物内に存在し、これにより、大きい方の粒子は、その「外皮」ないし覆いに、同様に孔を有している;ここで、該孔は、小さい方の粒子によって、(基礎部の上に)形成された層を突出る状態になっている。大きい方の粒子は、相互の間隔が、粒子によるケーゲル(山状体又はピン状体)からケーゲルまでを測定して、主として20〜200nmの範囲になるような量で使用される。これにより、3種の異なる孔径を有する被覆物が、その表面に生じる(孔については、材料中の、上方に開放された空間部分を意味している):第1の孔径(孔の大きさ)は、大きい方の粒子の相互の間隔によって決定され、第2の孔径は、小さい方の粒子の相互の間隔によって決定され、第3の孔径は、小さい方の粒子の孔によって決定される。
【0023】
この表面は、水滴を広げるもので、そして接触角が小さい。この特性は、多孔性層の毛管現象によって発生する。水は、孔内に浸入し、そして外側の目視可能な境界面に小さな接触角をもたらす。このような層の、観察される親水性は、(化学的性質である)光触媒のTiO−層のそれとは、根本的に区別される。本発明に従う多孔性層は、他の親水性の層とは異なり、物理的な分離作用を有する。水は、層内に浸入することができるが、エアロゾル粒子は、浸入することができない。エアロゾル粒子は、表面上に留まる。水量が十分であれば、多孔性表面の上に存在する粒子は、洗われそして運び去られる。このようにして、(それ自体は水に濡れない)疎水性のエアロゾルが除去される。この理由は、水が、その高い表面エネルギーに基いて、物理吸着した物質を実際に排除するからである。重要なことは、水が、付着している汚れの粒子の付着性表面の下側に、可能な限り、妨げられることなく達するということである(図1、参照)。
【0024】
この目的で、及び固体の接触を小さくするために、エアロゾル粒子と被覆物表面との間の付着表面が、(本発明に基いて施された孔及び該孔に基く所定の凹凸に基いて、)従来技術の層に対して、明確に小さくなる。第2の、大きい方の部分の粒子は、(中心を有する)直径分布を、約80nm〜300nmの範囲に有しており、及び通常、おおよそ球状又は全くの球状である。小さい方の粒子(該粒子で第2の粒子を覆う)の孔径−サイズ分布の最大値は、6nm未満であることが好ましい。その孔は非常に小さく、ガスと液体だけが孔内に浸入することができ、固体のエアロゾルは孔内に浸入することができない。図2は、都市のエアロゾルの代表的な径分布(サイズ分布)を示している。ここで、dN(r)/dlog(r)の式で表される数密度分布が、粒子半径rの対数に対して示されており、及びdS/dlog(r)及びdV/dlog(r)の値の表面積−ないし体積分布について類似するものが示されている。ここで、a:数スペクトル、b:表面スペクトル、c:体積スペクトルである。
【0025】
本発明に従う層の多孔性表面は、超微細な埃(直径10nm)の粒子径分布に適合するもので、これに対応して付着表面が小さい。ヌクレアーゼによって、ガス相から新たに形成された粒子は、代表例では、大きさが10nm〜60nmの範囲であり、<10nmのナノ粒子は、液体状態であると推定される。超微細な埃の拡散速度は速く、短い滞留時間の後により大きな粒子に凝固する。超微細な埃は、粒子数が多く、及び拡散速度が速く、保護対象となるガラス表面の主要な(第1の)汚れをもたらす。従って、ガラス上の、本発明に従う保護層の全表面には、上述したナノメータースケールの構造が施される。図5は、エリプソメーターで測定した、このような層の孔径分布(最大を2nmに有する)を示す。孔径分布は広く、そして大きな孔も存在することを示している。ナノメートルスケールの多孔性の基礎構造に加え、この層は、二次的な構造を有している。該二次的な構造は、より大きい孔を、特に、5〜20nmの範囲に有し、及び上記粒子を平均サイズ範囲で、300nmだけ隔てている。これらの孔構造は、走査電子顕微鏡により調査によって確かめられ、及び良好に識別することができる。これらの孔構造は、より小さい粒子の相互の距離によって形成されている(図3及び図4)。
【0026】
REM−図では、孔構造に加え、更なる構造単位(該構造単位は明確に、より大きい)が認められる。ここで、第2の部分の(大きさが300nm以下の)粒子が存在し、該粒子は、本発明に従う層にレリーフ構造を与え、そして、個々のケーゲル(山状体又はピン状体)の間隔を20nm〜200nmの範囲に不規則に有している。ナノケーゲルは、破断面(ブルッフカンテ)において、特に良好に認識することができる(図4)。
【0027】
レリーフ構造は、空気の湿分が高い場合、厚さが50nm以下の水のフィルムを、層の表面上に凝縮させ、これは、汚れの粒子の付着を妨げる。水のフィルムの形成は、層厚さのエリプソメトリー測定法によって、相対湿度(RH)に依存していることがわかった(図6、参照)。この図は、水のフィルムで覆われた多孔性層の全厚さの測定を、相対空気湿度に対する関係として示している(エリプソメーターで測定)。
【0028】
所望のレリーフ構造を製造するために、上述したSiO−粒子の替わりに、任意の、例えばAl−粒子又は凝集したTiO−粒子又はその混合物を使用することも可能である。TiO−粒子は、層に、追加的な光触媒的作用による洗浄効果を更に与える。粒子は、所望のレリーフ構造を形成可能なように、十分な大きさを有する必要がある。
【0029】
本発明に従う層は、埃をはねつけ、そして有機の汚れを、光触媒の層のように容易に浄化するばかりではなく、無機の汚れをも浄化する。本発明に従う層は、ナノケーゲルから成る、そのレリーフ構造のために、50%〜70%の相対湿度において、十分な厚さの水のフィルムを形成し、物理吸着したエアロゾル粒子を除去する。雨が、分解した有機エアロゾルを、表面から洗浄するのに、(従来では)光触媒層が常に必要であったが、本発明の層では、必要ではない。本発明に従う層は、(自明なことであるが、)降雨によっても洗浄可能であり、降水がめったに発生することなく、加えてエアロゾルで強く汚れている場合であっても、降水で洗浄可能である。ここでは、層の分離作用が、有利に補助する。本発明に従う層は、仕上げられたガラスの透明性を高め、及び、ガラスよりも高い屈折率を有するTiOの場合のように、透明性を低下させることがない。従って、本発明に従う層は、太陽エネルギーの利用に特に適切である。
【0030】
本発明に従う被覆材料は、通常の方法、例えば、ゾル−ゲル−技術を使用して製造することができる。上述したように、第2の、より大きい粒子の範囲にある粒子は市販されており、また、このような粒子は、この技術分野では公知の種々の方法(例えば、シュテーベル法)で容易に製造することができる。より小さい粒子は、好ましくは、ゾル−ゲル−法で現場(in situ)で、第1の溶媒内で製造される;より大きい粒子は、対応する材料の加水分解的な縮合の完了の後、又は進行中に加えることができる。最後に、得られた混合物が、適切な量の第2の溶媒で薄められる。
【0031】
被覆材料は、この状態で適宜、保管され;これは、本発明に従う被覆物を製造するために、基礎部(サブストレート)の上に施され、例えば、吹き付けられるか、又は適切な設備で施されるか、又は基礎部が、被覆材料で抜枠される。次に、層は、室温又は高温で十分に長い時間、溶媒が除去されるまで乾燥される。付着力(粘着力)及び耐摩性を高めるために、更に層を、実質的に高い温度で、調整(処理又はコンディショニング)することができ、これは例えば、15分間、250〜(好ましくは)約550℃で行われる。この温度で、更に、Si−C−結合が破壊され、これにより、粒子中に有機成分が存在する場合(当然、少ないことが好ましい)であっても、これらは、上記調整(コンディショニング)で、同様に決定的に除去することができる。
【0032】
実施例
1500gのエタノール中の213gのテトラメトキシシランを、125g、0.1nのアンモニア水溶液で加水分解した。2時間後、加水分解物に、1680gの水中の8.4gのTiO−集塊(P25,Fa.Degussa)から成る水性分散物、及び100nmのサイズの粒子を含む16.4gの水性キーゼルゾル(Levasil 50/50%,Fa.H.C.Starck)を加えた。次に、この混合物を、5500gの1−メトキシ−2−プロパノールで薄めた。このようにして得られた被覆溶液を、浸漬により、ガラス管に施すことができた。
【0033】
層の調整(コンディショニング)のために、被覆されたガラス基礎部を15分間、550℃の温度に置いた。これにより、本発明に従う層が得られた。
【0034】
図7は、ガラス管上に施された、本発明に従う層の、温度が21℃及び相対湿度が50%での埃除去効果を、被覆していないガラス管と比較して示している。被覆していない参照ガラス管が、左側に見られ、右側のガラス管は、その前側(手前側)の縁部以外は、被覆物が施されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)加水分解的な縮合によって形成され、大きさが5〜20nmの範囲の、第1の酸化物粒子、
(b)大きさが、80〜300nmの範囲の第2の粒子、
(c)加水分解的な縮合によって形成される酸化物粒子のための原料が溶解可能であり及びその加水分解及び縮合が許容され又は促進される第1の水性溶媒、及び
(d)以下の式、
ROH
ROR
RCOOH
RCOOR
RC(O)R及び
RCONR
のアルコール、エーテル、有機酸、エステル、ケトン、アミン、及び酸アミド、及びこれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の第2の溶媒、
但し、RとRは、適宜、同一又は異なって良く、及び無置換の、又はヒドロキシ、−NHR、アミド、イミノ、−COOR及び/又はアルコキシカルボニルで置換された、飽和又は不飽和の直鎖の又は枝分かれしたアルキル、アルコキシ又はポリエーテルアルコキシを意味し、又はRとRは、無置換の又はヒドロキシ、−NHR、アミド、イミノ、−COOR及び/又はアルコキシカルボニルで置換された、又は不飽和の、直鎖の又は、枝分かれしたアルキレン−、オキシアルキレン−又はアルキレン(ポリ)オキシアルキレン基の形成下に、環を形成して相互に結合されており、但し、溶媒が式ROHのものに該当する場合には、Rが無置換のアルキルではなく、
及びRが、適宜、同一又は異なり、及びH又はC−〜C−アルキルを意味する、
を含むことを特徴とする被覆材料。
【請求項2】
加水分解的な縮合によって得られる第1の粒子が、加水分解可能な及び縮合可能なシランから、及び/又はヒドロキシド及び/又は周期表の主族及び遷移金属の2−、3−、4−、又は5価のイオンのアルコキシドから得られることを特徴とする請求項1に記載の被覆材料。
【請求項3】
第1の粒子が、マグネシウム、カルシウム、硼素、アルミニウム、珪素、ゲルマニウム、錫、チタン又はジルコニウム又はこれらの混合物の(半−)金属化合物、及び好ましくは3−及び/又は4価の(半−)金属化合物の金属化合物から得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆材料。
【請求項4】
第1の粒子が、部分的に、又は全部が、シランテトラ−又は−トリアルコキシドから得られることを特徴とする請求項2又は3に記載の被覆材料。
【請求項5】
第1の粒子が、孔を有し、該孔は、孔径−分布の最大値が6nm以下、好ましくは1.5〜4nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の被覆材料。
【請求項6】
第2の粒子が、酸化物粒子であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の被覆材料。
【請求項7】
第2の粒子が、純粋な酸化物又は酸化物の混合物から、又は純粋な酸化物の粒子の混合物から成り、この、又はこれらの酸化物は、好ましくはAl、SiO及びTiOから選ばれることを特徴とする請求項6に記載の被覆材料。
【請求項8】
第2の粒子が、実質的に球状であり、及び/又は平均径が、100〜150nmの範囲、好ましくは100nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の被覆材料。
【請求項9】
第2の溶媒のための式の中の基Rが、1〜10個の炭素原子を有し、及びポリエーテルアルコキシ基又はアルキレンポリオキシアルキレン基を含む場合、これらの基は、2つ又は3つのアルキレンオキシド単位を有することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の被覆材料。
【請求項10】
第2の溶媒がアルコキシアルコール及びポリアルコキシアルコールから選ばれることを特徴とする請求項9に記載の被覆材料。
【請求項11】
被覆物が施された基礎部であって、
前記被覆物が少なくとも2種の粒子−部分から構成され、
第1の部分の粒子が、その大きさを、5〜20nmの範囲に有し、及第2の部分の粒子が、その直径を、80〜300nmの範囲に有し、第2の部分の粒子は、この粒子のケーゲルからケーゲルまでを測定した間隔を、相互に、平均して20〜200nmの範囲に有し、及び第1の部分の粒子が、所定の孔径分布を有する孔を有し、該孔径分布の最大値が1〜6nmの範囲であることを特徴とする被覆物が施された基礎部。
【請求項12】
第2の粒子−部分が、粒子を、100nm〜200nmの範囲に有していることを特徴する請求項11に記載の被覆物が施された基礎部。
【請求項13】
第1の粒子−部分の粒子が酸化物粒子であり、好ましくは、周期表の主族及び遷移金属の2−、3−、4−、又は5価のイオンの酸化物から選ばれることを特徴とする請求項11又は12に記載の被覆物が施された基礎部。
【請求項14】
第1の粒子−部分の粒子が、完全に、又は主に、適宜有機的に変性された二酸化珪素から成ることを特徴とする請求項13に記載の被覆物が施された基礎部。
【請求項15】
第2の粒子−部分の粒子が、アルミニウム、珪素、ゲルマニウム、錫、ジルコニウム及びチタンから選ばれる、純粋な酸化物、又は混合した酸化物から成ることを特徴とする請求項11〜14の何れか1項に記載の被覆物が施された基礎部。
【請求項16】
第1の部分の粒子が、少なくとも被覆物の表面で、5〜20nmの平均間隔を相互に有することを特徴とする請求項11〜15の何れか1項に記載の被覆物が施された基礎部。
【請求項17】
請求項1〜10の何れか1項に記載された被覆材料から製造された、請求項11〜16の何れか1項に記載の被覆物が施された基礎部。
【請求項18】
基礎部が、ガラス、好ましくは板ガラス又は管ガラス、及び特に好ましくは光起電力モジュール又は温水コレクターを被覆するための板ガラス、又はソーラー温水発生器のための管ガラスであることを特徴とする請求項11〜17の何れか1項に記載の被覆物が施された基礎部。
【請求項19】
以下の工程:
(i)加水分解可能な、及び縮合可能なシラン及び/又はヒドロキシド、及び/又は周期表の主族及び遷移金属の2−、3−、4−、又は5価のイオンのアルコキシドから選ばれる少なくとも1種の化合物を準備する工程、
(ii)工程(i)で得られた1種以上の化合物を請求項1の(c)に記載の第1の溶媒に溶解させ、これにより、前記1種以上の化合物を加水分解的に縮合させる工程、
(iii)工程(ii)の加水分解的な縮合の間、又は後に、平均径が80〜300nmの第2の粒子を、請求項1の(c)に記載の溶媒に加える工程、
(iv)工程(ii)の加水分解的な縮合の間、又は後に、及び、第2の粒子を加える前、又は第2の粒子と一緒に、又は第2の粒子を加えた後に、請求項1の(d)に記載の第2の溶媒を加える工程、
を有することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の被覆材料を製造する方法。
【請求項20】
以下の工程:
(i)基礎部に、請求項1〜10の何れか1項に記載の被覆材料を施す工程、
(ii)被覆材料を、室温〜600℃の範囲の温度で、乾燥/調整する工程、
を有することを特徴とする請求項11〜18の何れか1項に記載の被覆された基礎部を製造する方法。
【請求項21】
基礎部が、ガラス製の基礎部であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
被覆材料が、約5〜40分、約550℃で乾燥され、及び調整されることを特徴とする請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜10の何れか1項に記載の被覆材料を、基礎部を所定の被覆物で被覆するために使用する方法であって、前記被覆物は、埃とエアロゾルから守り、及び付着性の無機性及び有機性の汚れを、雨水で浄化できる被覆物であることを特徴とする方法。
【請求項24】
前記基礎部が、ガラス、好ましくは板ガラス又は管ガラス、及び特に好ましくは光起電力モジュール又は温水コレクターを被覆するための板ガラス、又はソーラー温水発生器のための管ガラスであることを特徴とする請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−538099(P2010−538099A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521399(P2010−521399)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060625
【国際公開番号】WO2009/024511
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(503306168)フラウンホーファー・ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デア・アンゲヴァンテン・フォルシュング・エー・ファウ (38)
【Fターム(参考)】