説明

基体処理方法及び基体処理装置

【課題】超臨界流体を媒体として被処理基体を処理する処理方法において、薬液を混合した超臨界流体を処理槽に導入したときの、処理槽の圧力変動を防止する。
【解決手段】本発明の基体処理方法は、超臨界流体を処理槽22に直接供給して処理槽22を所定の処理圧力とした後、混合部25から薬液を混合した超臨界流体を処理槽22に導入するようになす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界流体を媒体として用いて、被処理基体の処理、エッチング、レジスト剥離、抽出などを行う基体処理方法、及びその方法を実施するための基体処理装置に関する。更に詳細には、超臨界流体を処理媒体として用いて、電子基板に付着している微粒子、フォトレジスト膜、金属膜、絶縁膜を効率よく除去できる基体処理方法、及び基体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のウェットプロセスや真空ドライプロセスに代わり、超臨界流体を用いて電子基板を処理することが提案されている(特許文献1及び特許文献2など参照)。超臨界流体とは、臨界温度及び臨界圧力と呼ばれるそれぞれの物質に固有の値以上の温度と圧力のもとで各物質が存在する状態相の流体である。超臨界状態では、物質は、他の液体や固体に対する溶解力がその物質の液体状態とほぼ同等であるにもかかわらず、その粘度や密度がその物質の液体状態に比べて著しく小さく、拡散係数が極めて大きいという特異な性質を有している。つまり、気体の状態を持った液体と言える。
【0003】
使用される超臨界流体としては、一般に、二酸化炭素、アンモニア、水、アルコール類、低分子量の脂肪族飽和炭化水素類、ベンゼン、ジエチルエーテルなど超臨界状態となることが確認されている多くの物質を利用することができる。これらの中で、超臨界温度が31.3℃と室温に近い二酸化炭素は、取り扱いが容易であること、また、被処理体を高温に曝すことなく処理できることなどの理由から、最も使用されている物質である。
【0004】
しかし、超臨界二酸化炭素は、無極性有機溶剤のような溶解特性を有するので、単体での溶解性能が選択性を有するため、除去できる対象が限定される。超臨界二酸化炭素は、低分子の有機物の除去や、油脂やワックスなどの除去には効果的であるものの、無機化した混合化合物や、繊維、プラスチックなどの有機高分子化合物で形成されている微粒子や無機物の膜等の除去には有効でない。
【0005】
そのために、超臨界二酸化炭素に第2の化学物質(薬液)を数%程度添加して、溶解能力を向上させることが検討されている(特許文献3、特許文献4など参照)。さらに、薬液が超臨界二酸化炭素に完全に溶解した状態になってから、処理槽に流体を提供するために、混合流体をまず処理槽のバイパスに流し、その後、バルブをバイパスから処理槽側に切り替えて、処理槽に流すような装置構成およびプロセスフローを行う方法の提案されていた(特許文献5及び特許文献6参照)。
【0006】
図8、図9に、従来の薬液を混合した超臨界流体を媒体として導入して処理槽内の被処理基体を処理する基体処理装置の配管経路およびプロセスフローを示す。従来の超臨界流体を用いた基体処理装置1は、図8に示すように、超臨界二酸化炭素の供給部2と、薬液供給部3と、超臨界二酸化炭素と薬液を混合する混合部、すなわち混合槽4と、処理槽5とを備えて成る。超臨界二酸化炭素及び薬液は、超臨界二酸化炭素の供給部2及び薬液供給部3からそれぞれ配管6及び7を介して混合槽4に供給され、ここで混合される。処理槽5の下流の配管8には、第3開閉バルブV3と圧力調整弁9が設けられる。また、混合槽4から処理槽5に通じる配管10には、第1開閉バルブV1が設けられるとともに、配管10から分岐したバイパス用配管11が第2開閉バルブV2を介して処理槽5の下流の第3開閉バルブV3と圧力調整弁9との間の配管8に接続される。
【0007】
この基体処理装置1の動作を図9の処理フローを用いて説明する。先ず、図9Aに示すように、混合槽4と処理槽5との間の第1開閉バルブV1を閉じ、処理槽5の下流の第3開閉バルブV3を閉じ、バイパス用配管11の第2開閉バルブV2を開く。供給部2から超臨界二酸化炭素を、薬液供給部3から薬液をそれぞれ混合槽4に導入して混合し、十分に薬液が超臨界二酸化炭素に溶解するまで、その混合流体をバイパス用配管11を通じて圧力調整弁9より排出する。このとき、処理槽の圧力は、例えば大気圧(絶対値で0.1MPa)である。
【0008】
次に、図9Bに示すように、混合槽4内で超臨界二酸化炭素に薬液が混合され、十分に薬液が溶解したならば、第2開閉バルブV2を閉じ、第1開閉バルブV1及び第2開閉V2を開いて超臨界二酸化炭素に薬液が溶解した混合流体を処理槽5に導入し、被処理基体の例えば基板を処理する。混合流体は第3開閉バルブV3及び圧力調整弁9を通じて排出される。
【0009】
【特許文献1】特許1975268号公報
【特許文献2】特開2005−72568号公報
【特許文献3】特開2003−224099号公報
【特許文献4】特許3564101号公報
【特許文献5】特表2003−531478号公報
【特許文献6】特表2004−510321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、従来、薬液を含む超臨界二酸化炭素で例えば基板を洗浄する際に、超臨界二酸化炭素と薬液を混合槽4で混合し、十分に溶解するまではバイパス用配管(バイパスライン)11で混合流体を廃棄し、安定して二酸化炭素に薬液が溶解するようになってから、処理槽5に流すようにしていた。二酸化炭素と薬液が十分に溶解するためには、両方の流体が混合槽4の中である程度の時間、攪拌されると流体が十分に分散するため、分散した流体の表面同士が接触する機会が増加するために時間をかけて混合する必要がある。特に、薬液を導入した直後は、混合槽4の中の薬液の割合が一定になりにくいため、十分な溶解時間が必要となる。
【0011】
実際の手順は、前述した通りであり、始めに、混合槽4と処理槽5の間の第1開閉バルブV1と処理槽5の下流の第3開閉バルブV3を閉じておき、混合槽4に超臨界二酸化炭素と薬液を導入し、薬液が十分に溶解するまでは第2開閉バルブV2および圧力調整弁9を通じて排出し、十分に溶解した後に、第2開閉バルブV2を閉じ、第1開閉バルブV1および第3開閉バルブV3を開けて、処理槽5に混合流体を流通させる。
【0012】
しかしながら、処理槽5に流れるように第1開閉バルブV1を操作すると、処理槽5はもともと常圧であるので、処理槽5の温度が急激に低下してしまい(例えば26MPaから18MPaに低下:図9B参照)、処理温度が不安定になったり、溶解していた薬液(特に揮発性の低い液体や固体)が析出してしまうという問題があった。また、圧力が均一化して、処理槽5を含む全体の圧力がもともとの混合槽4の圧力より低下して、元の圧力(例えば26MPa)に戻るまで(図9B参照)に多大な時間がかかるという問題があった。時間がかかるだけでなく、バルブV1を操作した直後には、薬液を含む超臨界二酸化炭素が処理槽5を通過して基板表面が処理されるが、所定の圧力に戻る過程で処理中に圧力が上昇してしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、上述の点に鑑み、混合部から処理槽へ薬液を含む超臨界流体を導入したときの処理槽の圧力変動を防止できるようにした基体処理方法及び基体処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る基体処理方法は、薬液を混合した超臨界流体を処理槽に導入して処理槽内の被処理基体を処理する基体処理方法であって、超臨界流体を処理槽に直接供給して処理槽を所定の処理圧力とした後、混合部から薬液を混合した超臨界流体を処理槽に導入することを特徴とする。
【0015】
本発明の基体処理方法では、予め、超臨界流体を直接処理槽に供給して処理槽の圧力を所定の処理圧力にして置くことにより、混合部から薬液を混合した超臨界流体を処理槽に導入したときの処理槽の圧力変動が防止できる。
【0016】
本発明に係る基体処理装置は、超臨界流体を媒体として導入し処理槽内の被処理基体を処理する基体処理装置であって、処理槽の下流に設けられた圧力調整弁と、処理槽の上流側に設けられた超臨界流体と薬液を混合する混合部と、混合部の上流側に設けられた超臨界流体の供給部を備え、混合部から処理槽に薬液を混合した超臨界流体を導入する第1の経路と、超臨界流体の供給部から直接に処理槽に超臨界流体を導入する第2の経路が設けられて成ることを特徴とする。
【0017】
本発明の基体処理装置では、超臨界流体の供給部から直接に処理槽に超臨界流体を導入する第2の経路が設けられているので、予め第2経路を通じて超臨界流体を供給して処理槽を所定の処理圧力とすることができ、第1の経路を通じて混合部から薬液を混合した超臨界流体を処理槽に導入したときの処理槽の圧力変動が防止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る基体処理方法及び基体処理装置によれば、混合部から処理槽へ薬液を含む超臨界流体を導入したときの処理槽の圧力変動が防止できる。これにより処理槽の温度低下と薬液の析出を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態では、予め、超臨界流体例えば超臨界二酸化炭素を、混合部を通らずに処理槽に直接供給して、処理槽の圧力を所定の処理圧力にしておくことで、混合部から処理槽へ薬液を含む超臨界流体(いわゆる混合流体)を輸送したときの圧力変動を防止できる構成とした。本実施の形態は、基本的に処理槽を独立して昇圧する構成としている。すなわち、予め処理槽に超臨界流体、例えば超臨界二酸化炭素を導入して独立に圧力調整して置いた後に、混合部(混合槽または混合配管)に超臨界二酸化炭素と薬液を導入して混合し、十分に溶解した後に、この混合流体を処理槽に導入する方法である。そのために、本実施の形態では、超臨界流体を混合部とは独立の経路で処理槽に導入するための配管およびバルブを新たに設置して構成される。
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
〔第1実施の形態〕
図1〜図3に、本発明に係る超臨界流体を用いた基体処理装置の第1実施の形態を示す。図1は全体の基体処理装置の概略構成図、図2は要部の概略構成図、図3は超臨界処理フローと開閉バルブ操作手順である。
本実施の形態に係る基体処理装置21は、図1、図2に示すように、被処理基体26を収容して処理する処理槽22と、超臨界流体を供給する超臨界流体供給部23と、薬液を供給する薬液供給部24と、超臨界流体と薬液を混合して十分に薬液を超臨界流体に溶解させるための混合部25とを備える。超臨界流体としては、本例では超臨界二酸化炭素が用いられる。混合部25は、本例では混合槽が用いられる。被処理基体26としては、本例では基板が用いられる。
【0022】
処理槽22は、チャンバー27とチャンバー蓋28を有し、チャンバー27の被処理基板26の載置台に埋込みヒータ29が内蔵されて構成される。
【0023】
超臨界流体供給部23は、超臨界流体の原料となる二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段31と、この二酸化炭素供給手段31からの二酸化炭素を供給するための配管32の途上に配置した冷却手段、本例では冷却器33、昇圧手段34及び昇温手段35とを有して構成される。二酸化炭素供給手段31は、加圧して液化した二酸化炭素を収容した二酸化炭素ボンベで構成される。また、昇圧手段34は例えば昇圧ポンプで構成され、昇温手段35は例えばラインヒータ等の加熱器で構成される。二酸化炭素供給手段31には、開閉バルブ36が設けられる。
【0024】
超臨界流体供給部23では、二酸化炭素供給手段31から供給された二酸化炭素ガスを冷却器33で液化し、昇圧手段34で臨界圧力以上の高圧とされた二酸化炭素を、昇温手段35で臨界温度以上の高温に加熱して、超臨界二酸化炭素としている。この超臨界二酸化炭素が混合部25に導入される。
【0025】
薬液供給部24は、所要の薬液を供給する薬液供給手段39と、この薬液供給手段39からの薬液を供給するための配管40の途上に配置した昇圧手段41及び昇温手段42とを有して構成される。薬液供給手段39は、薬液を収容した薬液ボンベで構成される。薬液としては、例えば洗浄の場合ではエッチング剤(酸、アルカリ)等の薬液が用いられる。また、昇圧手段41は例えば昇圧ポンプで構成され、昇温手段42は例えばラインヒータなどの加熱器で構成される。薬液供給手段39には、開閉バルブ43が設けられる。
【0026】
薬液供給部24では、薬液供給手段39からの薬液を昇圧手段41で所要の高圧した後、昇温手段42で所要の高温に加熱して、高圧、高温の薬液としている。この薬液が混合部25である混合槽に導入される。
【0027】
また、混合部25は、埋込みヒータ51が内蔵され、超臨界二酸化炭素に薬液が溶解したことを確認するための相溶性確認窓52を有して構成される。
【0028】
一方、混合部25から処理槽22に至るいわゆる処理槽22の上流側に導入用の主配管53が配置されると共に、処理槽22の下流側に排出用の主配管54が配置される。処理槽22を挟む導入側の主配管53と下流側の主配管54にそれぞれ加熱器55及び56が設けられる。また、排出用の主配管54には、加熱器56の下流側に処理槽22内の圧力を所要圧力に調整するための圧力調整弁57が設けられる。圧力調整弁57の下流には、処理槽22から排出された混合流体を、二酸化炭素ガスと薬液に気液分離して薬液を回収する気液分離・薬液回収手段58が設けられる。
【0029】
そして、本実施の形態においては、処理槽22の上流側の主配管53に第1の開閉バルブV1が設けられる。この開閉バルブV1は、混合部25と加熱器55との間の主配管53に設置される。また、排出用の主配管54の加熱器56と圧力調整弁57との間に第3の開閉バルブV3が設けられる。また、超臨界流体供給部23の下流側の配管32から分岐し、第4の開閉バルブV4を介して処理槽22に通じる第1バイパス用配管45が設けられる。より詳しくは、第1バイパス用配管45は、処理槽22の上流側における第1開閉バルブV1と加熱器55との間に対応する主配管53に接続される。さらに、混合部25の下流側で第1開閉バルブV1の上流側の主配管53から分岐し、第2開閉バルブV2を介して排出側の第3開閉バルブV3と圧力調整弁57との間の主配管54に至る第2バイパス用配管46が設けられる。
【0030】
処理槽22は、枚葉処理用として構成され、その容積は混合部25の容積より小さく構成される。例えば処理槽22の容積は混合部25と比較して1/10程度と非常に小さくすることができる。
【0031】
本実施の形態の基体処理装置21において、薬液は薬液供給部24から混合部25に供給されて、超臨界二酸化炭素と混合される。その後、薬液を含んだ超臨界二酸化炭素は混合部25から処理槽22に供給され、処理槽22の下流にある圧力調整弁57を通り排出されるか、または処理層22を通らずに直接圧力調整弁57を通り排出される。
【0032】
超臨界二酸化炭素は、排出側の主配管54から加熱器56および圧力調整弁57を経て、気液分離・薬液回収手段58に流出する。超臨界二酸化炭素の排出側の主配管54に設けられた圧力調整弁57は、処理槽22内の圧力を制御し、加熱器56は圧力調整弁57での断熱膨張により温度低下した廃超臨界二酸化炭素を加熱してガス化する。一方、処理剤(薬液)は液状に戻り、気液分離・薬液回収手段58の回収容器に溜まる。
【0033】
なお、図2の模式的概略図では、処理槽22がその上流及び下流に設けた加熱器55及び56を含んだ状態で表している。
【0034】
次に、第1実施の形態の基体処理装置21を用いて被処理基体を処理する基体処理方法を、図1、図2及び図3(処理フロー)を参照して説明する。
先ず、被処理基体26、本例では半導体基板を処理槽22のチャンバー27内に収容し、チャンバー蓋28を閉めて処理槽22を密閉状態とする。次いで、圧力調整弁57を適量閉めて置く。第1開閉バルブV1および第2開閉バルブV2を閉じて置き、第3開閉バルブV3および第4開閉バルブV4を開く(図3A参照)。
【0035】
この状態で超臨界二酸化炭素供給部23では、開閉バルブ36を開き、二酸化炭素供給手段31から二酸化炭素を供給し、この二酸化炭素を昇圧手段(昇圧ポンプ)34により所定の高圧にして送り出し、昇温手段35で所定の温度に加熱して、超臨界二酸化炭素として供給する。この超臨界二酸化炭素供給部23からの超臨界二酸化炭素は、第1バイパス用配管45に送られ、第4開閉バルブV4を通して処理槽22に直接導入する。すなわち、超臨界二酸化炭素のみを処理槽22に導入する。処理槽22に導入された超臨界二酸化炭素は第3開閉バルブV3および圧力調整弁57を通り、排出される。
【0036】
圧力調整弁57により処理槽22内の圧力を所定の処理圧力、例えば、26MPaに調整する。すなわち、処理槽22内は、大気圧(絶対値で0MPa)から26MPaに昇圧する。内部圧力が所定圧力以上になると、圧力調整弁57が開き、超臨界二酸化炭素が加熱器56、第3開閉バルブV3を経由して気液分離、薬液回収手段58に排出される。このとき、処理槽22の容積を混合部25の容積と比較して小さく、例えば1/10程度と非常に小さくしておけば、処理槽22を昇圧する時間を最小限にすることが可能である。
【0037】
次いで、第1バイパス用配管45の第4開閉バルブV4および処理槽22の下流の第3開閉バルブV3を閉じて、第2バイパス用配管46の第2開閉バルブV2を開く。第1開閉バルブV1は閉じた状態である(図3B参照)。
処理槽22内の圧力は、所定の圧力、例えば26MPaに維持されている。超臨界二酸化炭素を混合部25に供給し、第2バイパス用配管46より第2開閉バルブV2を通して排出する。一方、薬液供給部24において、開閉バルブ43を開き、薬液供給手段39から薬液を供給し、昇圧手段(昇圧ポンプ)41により所定の濃度(たとえば1〜5wt%)送り出し、混合部25に導入する。薬液が超臨界二酸化炭素に安定に溶解するまでは、超臨界二酸化炭素と薬液との混合流体は、第2バイパス用配管46の第2開閉バルブV2および圧力調整弁57を通って排出する。
【0038】
混合部25が所定の処理圧力と同じ圧力となって、混合部25で薬液と超臨界二酸化炭素が完全に溶解したところで、第2バイパス用配管46の第2開閉バルブV2を閉じ、同時に処理槽22の上流側の第1開閉バルブV1および下流側の第3開閉バルブV3を開ける(図3C参照)。
薬液を完全に溶解した所定の圧力(例えば26MPa)の超臨界二酸化炭素流体は、混合部25から処理槽22に送られる。処理槽22の内部圧力は既に所定の圧力(例えば26MPa)に維持されているので、薬液を含む超臨界二酸化炭素(いわゆる処理流体)が処理槽に送られても処理槽22の圧力の変化もなく、所定の圧力(例えば、26MPa)で被処理基板26が超臨界処理される。処理流体の温度制御は温度制御装置付き加熱手段、すなわち処理装置22の埋め込みヒータ29により行われる。
【0039】
処理槽22の内部圧力が所定圧力以上になると、圧力調整弁57が開き、薬液を含む超臨界二酸化炭素が昇温手段(加熱器)56を経由して気液分離、薬液回収手段58に排出される。このように、処理槽22に充填された超臨界二酸化炭素を適宜排出することにより、処理槽22内の圧力、温度を一定に保つことができる。
【0040】
圧力調整弁57で断熱膨張した超臨界二酸化炭素は、圧力が気液分離・薬液回収手段58内で大気圧に戻ることにより、薬液が排出液として回収される。また、除去、抽出された物質は、薬液に溶解して、又は同伴されて、処理剤回収タンクに蓄積される。一方、二酸化炭素は気体として排出され、再凝縮させて、回収することも可能である。回収された排出液や二酸化炭素ガスは、利用できる状態に再生して再利用することもできる。
【0041】
上述の第1実施の形態によれば、予め第1バイパス用配管45を通じて超臨界二酸化炭素供給部23から、直接に処理槽22に超臨界二酸化炭素を供給し、処理槽22内の圧力を処理圧力の例えば26MPaに維持してから、混合部25で薬液を十分に溶解した26MPaの超臨界二酸化炭素(混合流体)を処理槽22に導入することにより、この混合流体を処理槽22に導入したときの処理槽の圧力変動を防止することができる。すなわち、処理槽の圧力の急激な上昇と、混合部25の圧力低下が防止できる。このため、処理槽の温度低下と薬液の析出を防止することができる。また、処理槽22への切替え後、短時間で一定濃度の薬液を含む超臨界二酸化炭素による基体処理を行うことができる。
【0042】
〔第2実施の形態〕
図4に、本発明に係る基体処理装置の第2実施の形態を示す。図4は要部の模式的構成図である。図4において、図2と対応する部分には同一符号を付して詳細説明を省略する。なお、図4で示した構成以外の全体の概略構成は前述の図1と同様である。
【0043】
本実施の形態に係る基体処理装置61の特徴は、混合部である混合槽を省略し、超臨界二酸化炭素と薬液を配管で直接混合するようにした構成である。薬液の種類により、混合槽を設けなくても、配管(いわゆるインライン)内で十分混合できる。この場合の薬液としては、超臨界二酸化炭素に溶解し易く、濃度が低い薬液を用いることができ、例えばアルコールなどの有機溶剤を使用できる。それ以外の第1〜第4開閉バルブV1〜V4、配管45、46、53、54は、図2の第1実施の形態の構成と同様である。
【0044】
すなわち、本実施の形態に係る基体処理装置61は、前述の図1で説明したと同様に、被処理基体26を収容して処理する処理槽22と、超臨界流体を供給する超臨界流体供給部23と、薬液を供給する薬液供給部24とを備える。超臨界流体としては、本例では超臨界二酸化炭素が用いられる。被処理基体26としては、本例では基板が用いられる。
【0045】
処理槽22は、チャンバー27とチャンバー蓋28を有し、チャンバー27の被処理基体26の載置台に埋め込みヒータ29が内蔵されて構成される。
【0046】
超臨界流体供給部23は、超臨界流体の原料となる二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段31と、この二酸化炭素供給手段31からの二酸化炭素を供給するための配管32の途上に配置した冷却手段、本例では冷却器33、昇圧手段34及び昇温手段35とを有して構成される。二酸化炭素供給手段31は、加圧して液化した二酸化炭素を収容した二酸化炭素ボンベで構成される。また、昇圧手段34は例えば昇圧ポンプで構成され、昇温手段35は例えばラインヒータ等の加熱器で構成される。二酸化炭素供給手段31には、開閉バルブ36が設けられる。
【0047】
超臨界流体供給部23では、二酸化炭素供給手段31から供給された二酸化炭素ガスを冷却器33で液化し、昇圧手段34で臨界圧力以上の高圧とされた二酸化炭素を、昇温手段35で臨界温度以上の高温に加熱して、超臨界二酸化炭素としている。
【0048】
薬液供給部24は、所要の薬液を供給する薬液供給手段39と、この薬液供給手段39からの薬液を供給するための配管40の途上に配置した昇圧手段41及び昇温手段42とを有して構成される。薬液供給手段39は、薬液を収容した薬液ボンベで構成される。また、昇圧手段41は例えば昇圧ポンプで構成され、昇温手段42は例えばラインヒータなどの加熱器で構成される。薬液供給手段39には、開閉バルブ43が設けられる。
【0049】
薬液供給部24では、薬液供給手段39からの薬液を昇圧手段41で所要の高圧した後、昇温手段42で所要の高温に加熱して、高圧、高温の薬液としている。
【0050】
そして、本実施の形態においては、超臨界二酸化炭素供給部23から処理槽22に至る主配管53が配置され、この主配管53に薬液供給部24からの配管が合流される。この主配管53は、超臨界二酸化炭素供給部23からの超臨界二酸化炭素と、薬液供給部24からの薬液とを混合する混合部として構成される。
【0051】
処理槽22の下流側には、前述と同様に、排出用の主配管54が配置される。処理槽22を挟む上流側の主配管53と下流側の主配管54にそれぞれ加熱器55及び56が設けられる。また、下流側の主配管54には、加熱器56の下流側に処理槽22内の圧力を所要圧力に調整するための圧力調整弁57が設けられる。圧力調整弁57の下流には、処理槽22から排出された混合流体を、二酸化炭素ガスと薬液に気液分離して薬液を回収する、気液分離・薬液回収手段58が設けられる。
【0052】
さらに、本実施の形態においては、処理槽22の上流側の主配管53に第1開閉バルブV1が設けられる。また、下流側の主配管54の加熱器56と圧力調整弁57との間に第3開閉バルブV3が設けられる。また、超臨界二酸化炭素供給部23の下流側の主配管53から分岐し、第4の開閉バルブV4を介して処理槽22に通じる第1バイパス用配管45が設けられる。より詳しくは、第1バイパス用配管45は、処理槽22の上流側における第1開閉バルブV1と加熱器55との間に対応する主配管53に接続される。さらに、混合部25の下流側で第1開閉バルブV1の上流側の主配管53から分岐し、第2の開閉バルブV2を介して排出側の第3開閉バルブV3と圧力調整弁57との間の主配管54に至る第2バイパス用配管46が設けられる。
【0053】
処理槽22は、枚葉処理用として構成される。
【0054】
本実施の形態の基体処理装置61において、薬液は薬液供給部24から主配管53に供給されて、この主配管53内で超臨界二酸化炭素と混合される。その後、薬液を含んだ超臨界二酸化炭素は混合部25から処理槽22に供給され、処理槽22の下流にある圧力調整弁57を通り排出されるか、または処理層22を通らずに直接圧力調整弁57を通り排出される。
【0055】
超臨界二酸化炭素は、下流側の主配管54から加熱器56および圧力調整弁57を経て、気液分離・薬液回収手段58に流出する。超臨界二酸化炭素の排出側の主配管54に設けられた圧力調整弁57は、処理槽22内の圧力を制御し、加熱器56は圧力調整弁57での断熱膨張により温度低下した廃超臨界二酸化炭素を加熱してガス化する。一方、処理剤(薬液)は液状に戻り、気液分離・薬液回収手段58の回収容器に溜まる。
【0056】
図4の模式的概略図では、処理槽22がその上流及び下流に設けた加熱器55及び56を含んだ状態で表している。
【0057】
次に、第2実施の形態に基体処理装置61を用いて被処理基体を処理する基体処理方法を、図4及び図5(処理フロー)を参照して説明する。
先ず、被処理基体26、本例では半導体基板を処理槽22のチャンバー27内に収容し、チャンバー蓋28を閉めて処理槽22を密閉状態とする。次いで、圧力調整弁57を適量閉めて置く。第1開閉バルブV1および第2開閉バルブV2を閉じて置き、第3開閉バルブV3および第4開閉バルブV4を開く(図5A参照)。
【0058】
この状態で超臨界二酸化炭素供給部23では、開閉バルブ36を開き、二酸化炭素供給手段31から二酸化炭素を供給し、この二酸化炭素を昇圧手段(昇圧ポンプ)34により所定の高圧にして送り出し、昇温手段35で所定の温度に加熱して、超臨界二酸化炭素として供給する。この超臨界二酸化炭素供給部23からの超臨界二酸化炭素は、第1バイパス用配管45に送られ、第4開閉バルブV4を通して処理槽22に直接導入する。すなわち、超臨界二酸化炭素のみを処理槽22に導入する。処理槽22に導入された超臨界二酸化炭素は第3開閉バルブV3および圧力調整弁57を通り、排出される。
【0059】
圧力調整弁57により処理槽22内の圧力いわゆる処理圧力を、所定の圧力、例えば、26MPaに調整する。すなわち、処理槽22内は、大気圧(絶対値で0.1MPa)から26MPaに昇圧する。内部圧力が所定圧力以上になると、圧力調整弁57が開き、超臨界二酸化炭素が加熱器56、第3開閉バルブV3を経由して気液分離・薬液回収手段58に排出される。
【0060】
次いで、第1バイパス用配管45の第4開閉バルブV4および処理槽22の下流の第3開閉バルブV3を閉じて、第2バイパス用配管46の第2開閉バルブV2を開く。第1開閉バルブV1は閉じた状態である(図5B参照)。
処理槽22内の圧力は、所定の圧力、例えば26MPaに維持されている。超臨界二酸化炭素を主配管53に供給し、第2バイパス用配管46より第2開閉バルブV2を通して排出する。一方、薬液供給部24において、開閉バルブ43を開き、薬液供給手段39から薬液を供給し、昇圧手段(昇圧ポンプ)41により所定の濃度(たとえば1〜5wt%)送り出し、超臨界二酸化炭素が供給されている主配管53に導入し、この主配管53内で超臨界二酸化炭素と薬液を混合する。薬液が超臨界二酸化炭素に安定に溶解するまでは、超臨界二酸化炭素と薬液との混合流体は、第2バイパス用配管46の第2開閉バルブV2および圧力調整弁57を通って排出する。
【0061】
主配管53内で薬液と超臨界二酸化炭素が完全に溶解したところで、第2バイパス用配管46の第2開閉バルブV2を閉じ、同時に処理槽22の上流側の第1開閉バルブV1および下流側の第3開閉バルブV3を開ける(図4C参照)。
薬液を完全に溶解した所定の圧力(例えば26MPa)の超臨界二酸化炭素流体は、混合部となる主配管53から処理槽22に送られる。処理槽22の内部圧力は既に所定の圧力(例えば26MPa)に維持されているので、薬液を含む超臨界二酸化炭素(いわゆる処理流体)が処理槽22に送られても処理槽22の圧力の変化もなく、所定の圧力(例えば、26MPa)で被処理基体26が超臨界処理される。処理流体の温度制御は温度制御装置付き加熱手段、すなわち処理装置22の埋め込みヒータ29により行われる。
【0062】
処理槽22の内部圧力が所定圧力以上になると、圧力調整弁57が開き、薬液を含む超臨界二酸化炭素が昇温手段(加熱器)56を経由して気液分離・薬液回収手段58に排出される。このように、処理槽22に充填された超臨界二酸化炭素を適宜排出することにより、処理槽22内の圧力、温度を一定に保つことができる。
【0063】
圧力調整弁57を通して排出された混合流体は、前述と同様に、気液分離・薬液回収手段58へ送られ、前述したように、薬液が回収され、また二酸化炭素ガスとして回収され、再利用することもできる。
【0064】
上述の第2実施の形態によれば、予め第1バイパス用配管45を通じて超臨界二酸化炭素供給部23から、超臨界二酸化炭素を直接処理槽22に供給し、処理槽22内の圧力を処理圧力の例えば26MPaに維持してから、混合部となる主配管53で薬液を十分に溶解した26MPaの超臨界二酸化炭素(混合流体)を処理槽22に導入することにより、この混合流体を処理槽22に導入したときの処理槽の圧力変動を防止することができる。すなわち、処理槽の圧力の急激な上昇と、混合部となる主配管53の圧力低下が防止できる。このため、処理槽の温度低下と薬液の析出を防止することができる。また、処理槽22への切替え後、短時間で一定濃度の薬液を含む超臨界二酸化炭素による基体処理を行うことができる。
【0065】
〔第3実施の形態〕
図6に、本発明に係る基体処理装置の第3実施の形態を示す。図6は要部の模式的構成図である。図6において、図2と対応する部分には同一符号を付して詳細説明を省略する。なお、図6で示した構成以外の全体の概略構成は前述の図1と同様である。
【0066】
本実施の形態に係る基体処理装置63の特徴は、混合槽の下流から分岐した第2バイパス用配管を、処理槽の下流の圧力調整弁に連通させずに、他の圧力調整弁に連通するようにした構成である。それ以外の第1〜第4開閉バルブV1〜V4、配管45、53、54は、図2の第1実施の形態と同様である。
【0067】
すなわち、本実施の形態に係る基体処理装置63は、前述の図1で説明したと同様に、被処理基体26を収容して処理する処理槽22と、超臨界流体を供給する超臨界流体供給部23と、薬液を供給する薬液供給部24と、超臨界流体と薬液を混合して十分に薬液を超臨界流体に溶解させるための混合部25とを備える。超臨界流体としては、本例では超臨界二酸化炭素が用いられる。混合部25は、本例では混合槽が用いられる。被処理基体26としては、本例では基板が用いられる。
【0068】
処理槽22は、チャンバー27とチャンバー蓋28を有し、チャンバー27の被処理基板26の載置台に埋め込みヒータ29が内蔵されて構成される。
【0069】
超臨界流体供給部23は、超臨界流体の原料となる二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段31と、この二酸化炭素供給手段31からの二酸化炭素を供給するための配管32の途上に配置した冷却手段、本例では冷却器33、昇圧手段34及び昇温手段35とを有して構成される。二酸化炭素供給手段31は、加圧して液化した二酸化炭素を収容した二酸化炭素ボンベで構成される。また、昇圧手段34は例えば昇圧ポンプで構成され、昇温手段35は例えばラインヒータ等の加熱器で構成される。二酸化炭素供給手段31には、開閉バルブ36が設けられる。
【0070】
超臨界流体供給部23では、二酸化炭素供給手段31から供給された二酸化炭素ガスを冷却器33で液化し、昇圧手段34で臨界圧力以上の高圧とされた二酸化炭素を、昇温手段35で臨界温度以上の高温に加熱して、超臨界二酸化炭素としている。この超臨界二酸化炭素が配管32を介して混合部25に導入される。
【0071】
薬液供給部24は、所要の薬液を供給する薬液供給手段39と、この薬液供給手段39からの薬液を供給するための配管40の途上に配置した昇圧手段41及び昇温手段42とを有して構成される。薬液供給手段39は、薬液を収容した薬液ボンベで構成される。また、昇圧手段41は例えば昇圧ポンプで構成され、昇温手段42は例えばラインヒータなどの加熱器で構成される。薬液供給手段39には、開閉バルブ43が設けられる。
【0072】
薬液供給部24では、薬液供給手段39からの薬液を昇圧手段41で所要の高圧した後、昇温手段42で所要の高温に加熱して、高圧、高温の薬液としている。この薬液が配管40を介して混合部25に導入される。
【0073】
また、混合部25は、埋込みヒータ51が内蔵され、超臨界二酸化炭素に薬液が溶解したことを確認するための相溶性確認窓52を有して構成される。
【0074】
一方、混合部25から処理槽22に至るいわゆる処理槽22の上流側に導入用の主配管53が配置されると共に、処理槽22の下流側に排出用の主配管54が配置される。処理槽22を挟む上流側の主配管53と下流側の主配管54にそれぞれ加熱器55及び56が設けられる。また、排出用の主配管54には、加熱器56の下流側に処理槽22内の圧力を所要圧力に調整するための第1圧力調整弁57が設けられる。第1圧力調整弁57の下流には、処理槽22から排出された混合流体を、二酸化炭素ガスと薬液に気液分離して薬液を回収する、気液分離・薬液回収手段58が設けられる。
【0075】
そして、本実施の形態においては、処理槽22の上流側の主配管53に第1開閉バルブV1が設けられる。この第1開閉バルブV1は、混合部25と加熱器55との間の主配管53に設置される。また、排出用の主配管54の加熱器56と圧力調整弁57との間に第3開閉バルブV3が設けられる。また、超臨界二酸化炭素供給部23の下流側の配管32から分岐し、第4の開閉バルブV4を介して処理槽22に通じる第1バイパス用配管45が設けられる。より詳しくは、第1バイパス用配管45は、処理槽22の上流側における第1開閉バルブV1と加熱器55との間に対応する主配管53に接続される(図1参照)。
【0076】
さらに、混合部25の下流側で第1開閉バルブV1の上流側の主配管53から分岐し、第2開閉バルブV2を介して処理槽22とは独立に設置された第2圧力調整弁64に通じる第2バイパス用配管46設けられる。つまり、この第2圧力調整弁64は、第1圧力調整弁57とは異なり、別途設けられる。第2圧力調整弁64は、処理槽22の圧力を決定する第1圧力調整弁57の圧力と同等もしくはそれ以下の圧力に設定される。第2圧力調整弁64の下流は、上記気液分離・薬液回収手段58に通じている。
【0077】
処理槽22は、枚葉処理用として構成され、その容積は混合部25の容積より小さく構成される。例えば処理槽22の容積は混合部25と比較して1/10程度と非常に小さくすることができる。
【0078】
本実施の形態の基体処理装置63において、薬液は薬液供給部24から混合部25に供給されて、超臨界二酸化炭素と混合される。その後、薬液を含んだ超臨界二酸化炭素は混合部25から処理槽22に供給され、処理槽22の下流にある第1圧力調整弁57を通り排出されるか、または処理層22を通らずに直接第1圧力調整弁57を通り排出される。
【0079】
超臨界二酸化炭素は、下流側の主配管54から加熱器56および圧力調整弁57を経て、気液分離・薬液回収手段58に流出する。超臨界二酸化炭素の排出側の主配管54に設けられた圧力調整弁57は、処理槽22内の圧力を制御し、加熱器56は圧力調整弁57での断熱膨張により温度低下した廃超臨界二酸化炭素を加熱してガス化する。一方、処理剤(薬液)は液状に戻り、気液分離・薬液回収手段58の回収容器に溜まる。
【0080】
なお、図6の模式的概略図では、処理槽22がその上流及び下流に設けた加熱器55及び56(図1参照)を含んだ状態で表している。
【0081】
次に、第3実施の形態の基体処理装置63を用いて被処理基体を処理する基体処理方法を、図6及び図7(処理フロー)を参照して説明する。
先ず、被処理基体26、本例では半導体基板を処理槽22のチャンバー27内に収容し、チャンバー蓋28を閉めて処理槽22を密閉状態とする。次いで、第1及び第2の圧力調整弁57及び64を適量閉めて置く。第1開閉バルブV1および第2開閉バルブV2を閉じて置き、第3開閉バルブV3および第4開閉バルブV4を開く(図7A参照)。
【0082】
この状態で超臨界二酸化炭素供給部23では、開閉バルブ36を開き、二酸化炭素供給手段31から二酸化炭素を供給し、この二酸化炭素を昇圧手段(昇圧ポンプ)34により所定の高圧にして送り出し、昇温手段35で所定の温度に加熱して、超臨界二酸化炭素を導出する。この超臨界二酸化炭素供給部23からの超臨界二酸化炭素を第1バイパス用配管45に送られ、第4開閉バルブV4を通して処理槽22に直接導入する。すなわち、超臨界二酸化炭素のみを処理槽22に導入する。処理槽22に導入された超臨界二酸化炭素は第3開閉バルブV3および第1圧力調整弁57を通り、排出される。
【0083】
第1圧力調整弁57により処理槽22内の圧力、いわゆる処理圧力を所定の圧力、例えば、26MPaに調整する。すなわち、処理槽22内は、大気圧(絶対値で0.1MPa)から26MPaに昇圧する。内部圧力が所定圧力以上になると、圧力調整弁57が開き、超臨界二酸化炭素が加熱器56、第3開閉バルブV3を経由して気液分離・薬液回収手段58に排出される。このとき、処理槽22の容積を混合部25の容積と比較して小さく、例えば1/10程度と非常に小さくしておけば、処理槽22を昇圧する時間を最小限にすることが可能である。
【0084】
次いで、第1バイパス用配管45の第4開閉バルブV4および処理槽22の下流の第3開閉バルブV3を閉じて、第2バイパス用配管46の第2開閉バルブV2を開く。第1開閉バルブV1は閉じた状態である(図7B参照)。
処理槽22内の圧力は、所定の圧力、例えば26MPaに維持されている。超臨界二酸化炭素を混合部25に供給し、第2バイパス用配管46より第2開閉バルブV2を通して排出する。一方、薬液供給部24において、開閉バルブ43を開き、薬液供給手段39から薬液を供給し、昇圧手段(昇圧ポンプ)41により所定の濃度(たとえば1〜5wt%)送り出し、混合部25に導入する。薬液が超臨界二酸化炭素に安定に溶解するまでは、超臨界二酸化炭素と薬液との混合流体は、第2バイパス用配管46の第2開閉バルブV2および第2圧力調整弁64を通って排出する。第2圧力調整弁64を通して排出された混合流体は、気液分離・薬液回収手段58へ送られ、前述したように、薬液が回収され、また二酸化炭素ガスとして回収され、再利用することもできる。
【0085】
ここで、第2圧力調整弁64の圧力が、処理槽22の圧力を決定している第1圧力調整弁57の圧力と同等か、もしくはそれ以下に設定されているので、その後、第1開閉バルブV1を開いて薬液を溶解した超臨界二酸化炭素を処理槽22に導入したとき、薬液が析出することがない。すなわち、圧力が高いほど薬液は溶解し易いが、例えば第2圧力調整弁64の圧力が第1圧力調整弁57の圧力より高くした場合、混合部25で薬液を溶解しても、混合部25より圧力の低い処理槽22に薬液を溶解した超臨界二酸化炭素を導入したときに、薬液の析出が発生する。
【0086】
混合部25で薬液と超臨界二酸化炭素が完全に溶解したところで、第2バイパス用配管46の第2開閉バルブV2を閉じ、同時に処理槽22の上流側の第1開閉バルブV1および下流側の第3開閉バルブV3を開ける(73C参照)。
薬液を完全に溶解した所定の圧力(例えば26MPa)の超臨界二酸化炭素流体は、混合部25から処理槽22に送られる。処理槽22の内部圧力は既に所定の圧力(例えば26MPa)に維持されているので、薬液を含む超臨界二酸化炭素(いわゆる処理流体)が処理槽に送られても処理槽22の圧力の変化もなく、所定の圧力(例えば、26MPa)で被処理基体26が超臨界処理される。処理流体の温度制御は温度制御装置付き加熱手段、すなわち処理槽22の埋め込みヒータ29により行われる。
【0087】
ここで、第2圧力調整弁64が混合部25の二次側に独立に設置されていることにより、第2開閉バルブV2を閉状態に切り換えたときに、第2開閉バルブV2の下流の流体が処理槽22に逆流する可能性を防止できる。
【0088】
処理槽22の内部圧力が所定圧力以上になると、第1圧力調整弁57が開き、薬液を含む超臨界二酸化炭素が加熱器56を経由して気液分離・薬液回収手段58に排出される。このように、処理槽22に充填された超臨界二酸化炭素を適宜排出することにより、処理槽22内の圧力、温度を一定に保つことができる。
【0089】
第1圧力調整弁57を通して排出された混合流体は、前述と同様に、気液分離・薬液回収手段58へ送られ、前述したように、薬液が回収され、また二酸化炭素ガスとして回収され、再利用することもできる。
【0090】
第3実施の形態によれば、予め第1バイパス用配管45を通じて超臨界二酸化炭素供給部23から、超臨界二酸化炭素を直接処理槽22に供給し、処理槽22内の圧力を処理圧力の例えば26MPaに維持してから、混合部25で薬液を十分に溶解した26MPaの超臨界二酸化炭素(混合流体)を処理槽22に導入することにより、この混合流体を処理槽22に導入したときの処理槽の圧力変動を防止することができる。すなわち、処理槽の圧力の急激な上昇と、混合部25の圧力低下が防止できる。このため、処理槽の温度低下と薬液の析出を防止することができる。また、処理槽22への切替え後、短時間で一定濃度の薬液を含む超臨界二酸化炭素による基体処理を行うことができる。
【0091】
また、第2バイパス用配管46に処理槽22とは独立に第2圧力調整弁64を設け、この第2圧力調整弁64の圧力を、処理槽22側の第1圧力調整弁57の圧力と同じ、もしくはそれ以下に設定することにより、第2開閉バルブV2を閉状態に切り換えたときに、第2開閉バルブV2の下流の流体が処理槽22に逆流することがない。因みに、第2バイパス用配管46が処理槽22の下流に通じている構成(図2、図3)では、第2開閉バルブV2を閉状態に切り換えたときに、第2開閉バルブV2の下流の残留流体が処理槽22へ逆流する僅かな可能性も原理的に考えられるが、第3実施の形態ではこの逆流の可能性をも確実に防止することができる。
【0092】
上例では、超臨界流体として、二酸化炭素を用いたが、その他、アンモニア、水、アルコール類、低分子量の油脂族飽和炭化水素類、ベンゼン、ジエチルエーテルなど超臨界状態となる物質を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係る基体処理装置の第1実施の形態を示す全体の概略構成図である。
【図2】第1実施の形態の基体処理装置の要部の概略構成図である。
【図3】第1実施の形態の基体処理方法を示す処理フロー図である。
【図4】本発明に係る基体処理装置の第2実施の形態を示す要部の概略構成図である。
【図5】第2実施の形態の基体処理方法を示す処理フロー図である。
【図6】本発明に係る基体処理装置の第3実施の形態を示す要部の概略構成図である。
【図7】第3実施の形態の基体処理方法を示す処理フロー図である。
【図8】従来の基体処理装置の例を示す要部の概略構成図である。
【図9】従来の基体処理方法を示す処理フロー図である。
【符号の説明】
【0094】
21,61,63・・基体処理装置、22・・処理槽、23・・超臨界流体供給部、24・・薬液供給部、25・・混合部(混合槽)、26・・被処理基体、27・・チャンバー、28・・チャンバー蓋、29・・埋め込みヒータ、V1,V2,V3,V4・・開閉バルブ、31・・二酸化炭素供給手段、32・・配管、33・・冷却器、34・・昇圧手段、35・・昇温手段、39・・薬液供給手段、40・・配管、41・・昇圧手段、42・・昇温手段、45・・第1バイパス用配管、46・・第2バイパス用配管、53・・導入側の主配管、55・・排出側の主配管、57・・圧力調整弁(第1圧力調整弁)、58・・気液分離・薬液回収手段、64・・第2圧力調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を混合した超臨界流体を処理槽に導入して該処理槽内の被処理基体を処理する基体処理方法であって、
超臨界流体を前記処理槽に直接供給して前記処理槽を所定の処理圧力とした後、
前記混合部から前記薬液を混合した超臨界流体を前記処理槽に導入する
ことを特徴とする基体処理方法。
【請求項2】
混合部に前記超臨界流体と前記薬液を供給して前記混合部を前記所定の圧力と同じ圧力にしてから、薬液を混合した超臨界流体を前記処理槽に導入する
ことを特徴とする請求項1記載の基体処理方法。
【請求項3】
前記超臨界流体として、超臨界二酸化炭素を用いる
ことを特徴とする請求項1記載の基体処理方法。
【請求項4】
前記混合部を前記所定の圧力になるまで、前記薬液を混合した超臨界流体を前記処理槽の下流の圧力調整弁を通して排出する
ことを特徴とする請求項1記載の基体処理方法。
【請求項5】
前記混合部を前記所定の圧力になるまで、前記薬液を混合した超臨界流体を前記処理槽の下流側の第1の圧力調整弁とは異なる経路の第2の圧力調整弁を通して排出する
ことを特徴とする請求項1記載の基体処理方法。
【請求項6】
前記第2の圧力調整弁の圧力を前記第1の圧力調整弁の圧力より低くする
ことを特徴とする請求項5記載の基体処理方法。
【請求項7】
超臨界流体を媒体として導入し処理槽内の被処理基体を処理する基体処理装置であって、
前記処理槽の下流に設けられた圧力調整弁と、
前記処理槽の上流側に設けられた超臨界流体と薬液を混合する混合部と、
前記混合部の上流側に設けられた超臨界流体の供給部を備え、
前記混合部から前記処理槽に薬液を混合した超臨界流体を導入する第1の経路と、
前記超臨界流体の供給部から直接に前記処理槽に超臨界流体を導入する第2の経路が設けられて成る
ことを特徴とする基体処理装置。
【請求項8】
前記混合部の下流が分岐されて前記処理槽の下流の圧力調整弁に通じるようにして成る
ことを特徴とする請求項7記載の基体処理装置。
【請求項9】
前記処理槽の下流に第1の圧力調整弁が設けられ、
前記混合部の下流が分岐されて前記第1の圧力調整弁と異なる第2の圧力調整弁に通じるようにして成る
ことを特徴とする請求項7記載の基体処理装置。
【請求項10】
前記超臨界流体としては、超臨界二酸化炭素が用いられる
ことを特徴とする請求項7記載の基体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−182034(P2008−182034A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14003(P2007−14003)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】