説明

基板の乾燥方法と乾燥装置

【課題】複数枚のウエハや支持基板等の基板を洗浄槽から引上げて乾燥させる際に表面張力により基板同士が貼り付いて乾燥不良を起こすことがなく、また、乾燥を効率的に行なえる基板の乾燥方法及び乾燥装置を提供すること。
【解決手段】洗浄槽に満たした洗浄液に複数枚の基板を浸漬させておき、前記洗浄槽から基板を引上げて乾燥させる基板の乾燥装置において、前記洗浄槽の底部中央に基板面に対して垂直方向に気泡発生手段を敷設し、前記複数枚の基板を引上げる際に、前記気泡発生手段から気泡を発生させ、この発生させた気泡を各基板間に通すことによって乾燥させるようにした基板の乾燥装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄された基板等を乾燥させる乾燥方法と乾燥装置に関する。さらに詳しくは、洗浄槽に満たした洗浄液に浸漬された複数枚の基板等を洗浄槽から引上げて乾燥させる乾燥方法と乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種基板を洗浄し、乾燥させることが各種行なわれている。例えば、ウエハ等の基板類は薄型化のために裏面研削が行われ、その後に研削時の汚れ等を除去するためにウエハを洗浄し、乾燥させて次の工程に送られる。
【0003】
これらの洗浄は、洗浄装置に各種の洗浄槽を設け、洗浄液での洗浄の後、純水等ですすぎ、洗浄槽から基板を引上げて乾燥させる引上げ乾燥処理が行なわれている。
【0004】
ここで、引上げ乾燥処理とは、液中から洗浄されたウエハを低速で引上げ、ウエハに付着した液滴を表面張力で液面に引き戻すことにより乾燥させることをいう(例えば特許文献1)。
【0005】
このウエハの乾燥は例えば図8、図9のようにウエハカセット29の仕切り板32間にウエハ37を挿通し、そのウエハカセット29を洗浄槽36の加温した純水26(約80〜90℃)に浸漬しておき、図中二点鎖線の位置から実線の位置までウエハカセット29とウエハ37を一体に低速で引上げて乾燥処理をしている。
【0006】
しかし、ウエハカセット29内の仕切り溝には吸着ハンドが進入してウエハを取り出せるよう若干の遊びが設けられており、図8のように特に薄厚化されたウエハ37ではカセットの仕切り板32間の遊びによりウエハが倒れ込み、隣り合うウエハの間隔が狭くなって、その部分に表面張力により水38が吸い上げられウエハ同士が貼り付くことになる。
【0007】
また、上記ウエハカセット29は、ウエハ37の外周部分の大半が両側壁33で覆われているため、ウエハカセット29内に水滴が残り易く、引上げ乾燥時に両側壁33の内面に残った水滴がウエハ37に再付着して乾燥不良が発生する問題がある。
【0008】
そこで、上記ウエハの引上げ乾燥処理は、水滴による汚れの再付着防止や洗浄時の液の液流阻害による洗浄不良防止のため、ウエハカセット29を使用せずに行なわれており、代わりに複数枚のウエハを接触部が少ない支持部材で一定の間隔で支持しておきながら、低速で前記ウエハ等を引上げて乾燥処理させている。このため、引上げ時にウエハ同士の隙間に表面張力で持ち上げられた水が広がり、特に薄厚化されたウエハではウエハが撓みながらウエハ同士が貼り付いて乾燥不良が生じる問題がある(例えば特許文献2)。
【0009】
上記のように、ウエハ同士が貼り付いて乾燥不良が起こった場合、その引き剥がしは再度液中に浸漬するか、強制的に引き剥がさなければならず、前者の場合、再度乾燥処理が必要となり、後者の場合、ウエハの破損や水滴による汚れが残る問題がある。
【0010】
このため、温水層の内側側面に櫛歯部材を温水に浸漬するように取り付け、各ウエハをそれぞれ該櫛歯部材の間に挿通させた状態で引上げることにより、表面張力によってウエハ同士が貼り付くことを防止することが開示されている(例えば特許文献2)。
【0011】
また、最近では、半導体チップの小型化の要請からウエハを50μm程度の厚さまで裏面研削するようになってきている。このウエハは、従来の保護テープに代えてウエハのパターン形成面上に紫外線や熱等で粘着力が低減できる両面粘着テープを貼り付け、その後、前記ウエハに前記両面粘着テープを介してガラスや樹脂等の支持基板を貼り付けて裏面研削により薄厚化される。
【0012】
前記薄厚化されたウエハは、ダイシングテープにマウントされ、前記両面粘着テープの粘着力を紫外線等により低減させた後、ウエハ表面から支持基板が両面粘着テープと一体に剥離される。その後、両面粘着テープが付着した支持基板から別途剥離装置等で両面粘着テープが剥離される。
【0013】
上記両面粘着テープが剥離された支持基板には、両面粘着テープの粘着剤の一部が付着した状態となっており、再利用するには、この粘着剤を洗浄除去する必要がある。そこで、粘着剤が付着した支持基板を洗浄液で洗浄し、乾燥処理が行なわれている。
【特許文献1】特開平11−317390号公報(段落0002)
【特許文献2】特開2001−284311号公報(図2、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記特許文献2の発明は、櫛歯部材の間隔を小さくしておかないと櫛歯部材の間隔の遊びによりウエハが倒れ込み、支持されていないウエハの頂上部同士が貼り付いて乾燥不良となる問題がある。
【0015】
さらに櫛歯部材はウエハ両側面部分の大半を覆う大きさに形成されており、乾燥処理時に櫛歯部材の溝部分に水滴が残り易く、残った水滴がウエハに再付着して、乾燥不良の原因となる。
【0016】
また、特許文献2の発明は、乾燥時にのみウエハを一定間隔の支持溝が切られた支持部材で部分保持しながら引上げるものであるため、乾燥後のウエハを次の工程に供する前にカセット部材に収納する必要があり、特に薄型化されたウエハではその収納時にウエハを破損する問題がある。
【0017】
また、櫛歯部材は引上げ乾燥処理時にのみ使用するものであり、洗浄が終わったウエハを洗浄槽に投入する毎に櫛歯部材に挿通させなければならず、挿通時に櫛歯部材に引っ掛かったウエハが破損する問題がある。
【0018】
そこで、本発明はウエハや支持基板等の基板を引上げ乾燥させる際に表面張力により基板同士が貼り付いて乾燥不良を起こすことがなく、また、引上げ乾燥を効率的に行なう乾燥方法及び乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1の発明は、洗浄槽に満たした洗浄液に複数枚の基板を浸漬させておき、前記洗浄槽から基板を引上げて乾燥させる基板の乾燥方法において、前記複数枚の基板を引上げる際に、前記洗浄槽の底部に設けられた気泡発生手段から気泡を発生させ、この発生させた気泡を各基板間に通すことによって乾燥させるようにしたことを特徴とする基板の乾燥方法である。
【0020】
また、請求項2の発明は、洗浄槽に満たした洗浄液に複数枚の基板を浸漬させておき、前記洗浄槽から基板を引上げて乾燥させる基板の乾燥装置において、前記洗浄槽の底部中央に基板面に対して垂直方向に気泡発生手段を敷設し、前記複数枚の基板を引上げる際に、前記気泡発生手段から気泡を発生させ、この発生させた気泡を各基板間に通すことによって乾燥させるようにしたことを特徴とする基板の乾燥装置である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、洗浄槽の底部中央に敷設された気泡発生手段により発生させた気泡を複数枚の基板間の隙間に通すことにより液面の表面張力を低減させることができ、また、上昇する液流によってカセット等支持部材の収納溝間に遊びがあっても基板同士の間隔を保つことができるので基板同士の貼り付きによる乾燥不良を防止できる。
【0022】
また、気泡発生による液面の表面張力低減と上昇する液流を利用しているので基板同士の貼り付きによる乾燥不良や汚れを防止でき、基板等を傷付けることなく乾燥できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施形態について図1乃至図5に従って説明する。
【0024】
図1は本発明の引上げ乾燥装置を適用した支持基板洗浄装置の正面図である。
【0025】
機台3上には機枠4が支持基板洗浄装置2を囲むように設けられ、機台3の左から、洗浄前の支持基板1を収納した収納カセット12を載置するカセット投入部a、投入されたカセット12を第1洗浄槽15に搬送するカセット取上げ部bが設けられ、カセット投入部aに載置されたカセット12はコンベア13の駆動によりカセット取上げ部bに搬送されるようになっている。
【0026】
カセット取上げ部bの右側には洗浄前の支持基板1から粘着剤を洗浄除去する第1洗浄部cが設けられ、第1洗浄部cには強アルカリ性等の洗浄液34が満たされた第1洗浄槽15が設けられている。前記第1洗浄槽15内には、カセット12を載置する支持台18と洗浄液34を適宜な温度(例えば60℃)に加温するヒータ16及び適宜な超音波発信機(図示しない)が設けられている。
【0027】
また、上記第1洗浄部cの右側には洗浄液34で洗浄した支持基板1をすすぐ第2洗浄槽17が設けられ、純水26が満たされると共に、第2洗浄槽17下方には上記同様にカセット12を載置する支持台18と適宜な超音波発信機(図示しない)が設けられている。
【0028】
上記第2洗浄部cの右側には、本発明の引上げ乾燥装置を適用した引上げ乾燥部eが設けられ、支持基板1が収納されたカセット12を水洗すると共に引上げて乾燥させるようになっている。
【0029】
上記引上げ乾燥部eには、加温された純水26を満たした第3洗浄槽19が設けられ、槽の底部にはカセット12を載置する支持台18と、純水26を加温するヒータ20、さらに支持基板1を引上げ乾燥させる際に気泡28により純水26に上昇液流を与えて表面張力を低減させる気泡発生手段21が設けられている。
【0030】
上記引上げ乾燥部eの右側には引上げ乾燥が終了したカセット12を引上げ乾燥部eから取り出し、載置するカセット排出部fが設けられ、載置されたカセット12は下方に設けられたコンベア14の駆動によりカセット取出し部gに搬送されるようになっている。
【0031】
機台3の中央上方にはカセット取上げ部b、第1洗浄部c、第2洗浄部d、引上げ乾燥部eから各工程毎のカセット12を持ち上げ、次の工程に搬送するカセット搬送機構5が設けられている。
【0032】
前記カセット搬送機構5は、水平方向に設けられた2本の支持枠35に4本のレール6が上下方向に延設され、4本のレール6の中央2本にはガイド8が設けられており、前記ガイド8はレール7と摺動可能に嵌合し、適宜な駆動源(図示しない)により、4本のレール6は支持枠35と一体にレール7上を水平動自在になっている。
【0033】
また、前記4本のレール6にはそれぞれガイド9が設けられ、ガイド9には下方に向けて牽引アーム10が設けられ、前記牽引アーム10の先端にはカセット12を吊り上げる牽引フック11が設けられている。
【0034】
前記各ガイド9には適宜の駆動源(図示しない)が設けられ、牽引フック11をそれぞれ独立に上下動できるようになっている。
【0035】
次に、本発明の引上げ乾燥装置について以下に説明する。
【0036】
図1乃至図2(a)、(b)、図3(c)のように引上げ乾燥装置は、洗浄液として純水26をカセット12が浸漬するように満たす第3洗浄槽19と、前記第3洗浄槽19の底面に純水26を加温するヒータ20及びカセット12を載置する支持台18が設けられている。
【0037】
また、前記第3洗浄槽19の底部中央には支持基板面に対して垂直方向に1本のパイプ状の気泡発生手段21が設けられ、前記気泡発生手段21は両端の気体供給部27から気体が供給されるようになっている。この気体供給部27には気泡発生のばらつきが少なくなるよう両端から各種気体(空気、窒素等)が導入されるようになっている。なお、清浄度が高く求められる基板では窒素等の不活性ガスを用いることが好ましい。
【0038】
前記気泡発生手段21は上面に0.5mm程度の穴が5〜15mmの間隔で穿設され、気泡発生手段21から発生した気泡28が、上方に位置する複数枚の支持基板1の間を上昇することにより、支持基板1間の純水26に対して上昇液流を発生させ、純水26の液面の表面張力を低下させると共に上昇液流により支持基板1の間隔を保つようになっている。
【0039】
次に第1の実施形態で好適に使用できるカセットについて以下に説明する。
【0040】
図4、図5のように本カセット12は収納する基板面と平行に所定の間隔で2枚の支持板24を立設し、前記支持板24の両側側方に2枚の支持板24と垂直方向に内側面に所定の間隔で仕切り溝が設けられた支持桟22が掛け渡されている。また、両支持板24間に収納される支持基板1を斜め下方から支持する支持桟23が掛け渡され、その内側面には仕切り溝が設けられている。また、支持板24には牽引フック11でカセット12の吊り上げが可能なように支持板24が折り曲げられた牽引部25が設けられている。
【0041】
前記支持桟22、23は使用する洗浄液34に対して耐洗浄液性が高い樹脂等の部材を好ましく使用でき、半導体装置の規格に準じた仕切り溝のピッチに加工すればよく、また、支持板24も同様に規格に準じた形状にしておけば良い。また、上記支持桟22、23は、引上げ乾燥時に水溜まりが発生しないよう、支持部の面積が少なくなるように構成することが好ましい。例えば、円柱状、三角柱状等で頂点部分のみが基板と接するようにすれば、水滴付着を最小限にすることができる。
【0042】
以上が、本発明の第1の実施形態の構成であり、続いて第1の実施形態の洗浄装置の全体工程について以下に説明する。
【0043】
図1のように複数枚の支持基板1が収納されたカセット12を支持基板洗浄装置2のカセット投入部aに載置する。
【0044】
カセット投入部aに載置されたカセット12は、コンベア13を駆動することでカセット取上げ部bに移送された後、カセット12の牽引部25を牽引フック11で引っ掛け、牽引アーム10の上昇によりカセット12を上昇させる。
【0045】
なお、この時、先行して第1洗浄部c、第2洗浄部d、引上げ乾燥部eに位置するカセット12も上記同様に槽内から吊り上げた状態としておく。
【0046】
続いて、カセット搬送機構5をレール7に沿って右方向に駆動し、カセット取上げ部bのカセット12を第1洗浄部c上に移動させる。この時、第1洗浄部c、第2洗浄部d、引上げ乾燥部eに位置するカセット12はそれぞれ次の工程位置に送られる。
【0047】
なお、上記のように各ポジションに位置する各カセット12は一体に水平動するようになっているが、一番時間を要する処理と合わせているため効率が低下することはない。また、カセット搬送機構5は使用態様に合わせて適宜、独立した移動ができるようにすれば良い。
【0048】
前記第1洗浄部c上に送られたカセット12は、牽引アーム10の下降により、第1洗浄槽15内のヒータ16で約60℃で加温された洗浄液34に浸漬され、前記カセット12に収納された支持基板1は、上記第1洗浄槽15内で図示しない超音波機構により超音波洗浄される。
【0049】
前記第1洗浄部で洗浄された支持基板1は、カセット12と共にカセット搬送機構5の駆動により、第2洗浄部dに搬送され、第2洗浄槽17の純水26内に浸漬される。前記第2洗浄槽17は、液流によってすすぎ洗浄するようになっており、第1洗浄槽15で洗浄された際の強アルカリ性の洗浄液34を洗い流すようになっている。
【0050】
第2洗浄槽17ですすぎ洗浄された支持基板1は、カセット12と共にカセット搬送機構5で引上げ乾燥部eに搬送され、ヒータ20で80〜90℃に加温された純水26の満たされた第3洗浄槽19内に浸漬される。
【0051】
引上げ乾燥部eで乾燥処理された支持基板1はカセット搬送機構5でカセット12と共にカセット排出部fに搬送、載置される。カセット排出部fに載置されたカセット12は、コンベア14の駆動によりカセット取出し部gに移送され、ウエハと支持基板1を貼り合わせる支持基板貼り合わせ装置に供される。
【0052】
以後、上記動作を繰り返し連続で行なうことで、各処理工程を並行に行なうことができる。
【0053】
なお、カセット12が半導体装置の規格に準じた形状に構成されていることにより、支持基板貼り合わせ装置に供する際にカセットを移し替える必要がなく、効率的に作業が行なえる。
【0054】
次に本発明の引上げ乾燥装置の詳細について図2(a)乃至図3(c)に基づいて説明する。
【0055】
図2(a)は複数枚の支持基板1が収納されたカセット12が第3洗浄槽19の洗浄液(純水26)中に浸漬された状態を表しており、カセット12は牽引フック11で牽引部25を引っ掛けた状態で支持台18上に載置されている。
【0056】
純水26は、第3洗浄槽19の底部に設けられたヒータ20で引上げ乾燥性を向上するために約80〜90℃に加温されている。
【0057】
次に図2(b)のように、浸漬されたカセット12を牽引フック11の垂直方向の引上げにより、支持基板1の頂上部が水面直前となるまで上昇させる。
【0058】
上記のように支持基板1の頂上部が水面直前となった時点で、気泡発生手段21に左右両側の気体供給部27から空気を供給し、気泡発生手段21に穿設された穴から気泡28を発生させる。
【0059】
この気泡28の発生により、支持基板1間を上昇する気泡28に伴った上昇液流が発生し、液面の表面張力の低下と上昇液流により支持基板1同士の間隔が保たれ、支持基板1同士が貼り付くことがない。
【0060】
なお、上述したようなピッチで気泡発生手段21に穴を穿設することで、上昇する気泡28同士が合わさって大きな気泡となることがなく、液面の乱れによる乾燥不良の発生がなく(気泡が大きくなり過ぎると液面で気泡が弾けた際に基板に液滴が再付着し易くなる)、効果的な乾燥効果を得ることができる。
【0061】
続いて、低速(例えば1mm/秒)でカセット12を引上げ、支持基板1の表面に付着した洗浄液を表面張力で液面に引き戻しながら支持基板1を乾燥させる。
【0062】
図2(b)の状態から図3(c)の状態まで上記の気泡発生手段21から気泡28を発生させ、図3(c)のように支持桟22の基板保持部30の上端が液面に達する直前に気泡28の発生を停止させる。
【0063】
なお、本実施形態においては上記のように支持桟22の基板保持部30の上端が液面に達する直前に気泡28の発生を停止させたが、引き上げ乾燥時に断続的に気泡28を発生させるようにすることもできる。
【0064】
但し、基板間隔が維持できるようになった時点で気泡28の発生を停止又は弱めることが引上げ乾燥に寄与する表面張力を確保する面で好ましい。
【0065】
以後は、気泡28の発生を停止した状態で低速で引上げ乾燥し、カセット12を取り出せる状態まで上昇させる。
【0066】
このように支持基板1同士の先端が貼り付かない程度まで気泡28を発生させ、以後は気泡28の発生を止めることにより、基板の乾燥不良を防止しながら引上げ乾燥に必要な表面張力を確保でき、乾燥効率を下げることなく基板を乾燥できる。
【0067】
続いて第2の実施形態について図6(a)、(b)乃至図7(c)に基づいて説明する。
【0068】
基本構成は第1の実施形態と同様であり、カセット12に代えて従来のウエハカセット29に支持基板1を挿通した場合の実施形態である。
【0069】
図6(a)は第1の実施形態同様に純水26にウエハカセット29が浸漬された状態であり、図中、一点鎖線間で表される部分はウエハカセット29の両側壁33に設けられた仕切り板32で支持基板1が保持されている基板保持部分30である。
【0070】
図6(b)のように支持基板1の頂上部が液面に達する直前から気泡発生手段21で気泡28を発生させ、支持基板1間に上昇液流が発生するようにし、液面の表面張力を低下させると共に低速(例えば1mm/秒)でウエハカセット29を適宜の牽引機構(図示しない)で引上げる。
【0071】
なお、上記ウエハカセット29を用いる場合は、適宜牽引フック11を変更し、ウエハカセット29を引上げできる構成にすれば良い。
【0072】
図7(c)のようにウエハカセット29の基板保持部30の上端が液面に達する直前に気泡28の発生を停止させ、以後、ウエハカセット29が取り出せる位置まで洗浄槽19からウエハカセット29を引上げる。
【0073】
なお、上記第1の実施形態と同様に気泡28の発生を断続的に行なうようにしても良い。
【0074】
乾燥処理が済んだウエハカセット29は次の工程に供される。
【0075】
なお、本発明は上記第2の実施形態のように汎用のウエハカセット29でも適用できるが、カセット内での水滴残留による乾燥不良防止の面から、第1の実施形態で用いたカセット12のような構成にすることが好ましい。
【0076】
また、本発明の実施形態においては、カセットに収納した状態での使用を記載したが、本発明の範囲内でカセット以外の適宜な支持部材も用い、基板を上昇させるようにしても良い。また、本発明の実施形態では支持基板を用いたが、各種のウエハ等の基板類に好適に利用できる。
【0077】
また、上記実施形態では気泡発生手段21を用い、気泡28の発生により液面の表面張力を低減及び上昇液流の発生により、基板同士が貼り付かないようにしたが、本発明の範囲内で構成を適宜変更でき、例えば洗浄水自体を噴射して基板間の隙間に上昇液流を発生させるようにしても良い。また、気泡発生手段も1本だけでなく、複数本用い、配置も基板間に気泡を通じ、液面の表面張力を低減できる構成を採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明を適用した基板洗浄装置の正面図
【図2】(a)、(b) 本発明の第1の実施形態を表す説明図
【図3】(c) 本発明の第1の実施形態を表す説明図
【図4】第1の実施形態で使用する乾燥用カセットの一部切欠き正面図
【図5】第1の実施形態で使用する乾燥用カセットの平面図
【図6】(a)、(b) 本発明の第2の実施形態を表す説明図
【図7】(c) 本発明の第2の実施形態を表す説明図
【図8】従来の基板乾燥装置の課題を表す説明図
【図9】従来のカセットの一部切欠き正面図
【符号の説明】
【0079】
a カセット投入部
b カセット取上げ部
c 第1洗浄部
d 第2洗浄部
e 引上げ乾燥部
f カセット排出部
g カセット取出し部
1 支持基板
2 支持基板洗浄装置
3 機台
4 機枠
5 カセット搬送機構
6 レール
7 レール
8 ガイド
9 ガイド
10 牽引アーム
11 牽引フック
12 カセット
13 コンベア
14 コンベア
15 第1洗浄槽
16 ヒータ
17 第2洗浄槽
18 支持台
19 第3洗浄槽
20 ヒータ
21 気泡発生手段
22 支持桟
23 支持桟
24 支持板
25 牽引部
26 純水
27 気体供給部
28 気泡
29 ウエハカセット
30 基板保持部
31 支持板
32 仕切り板
33 両側壁
34 洗浄液
35 支持枠
36 洗浄槽
37 ウエハ
38 水
39 支持台
40 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽に満たした洗浄液に複数枚の基板を浸漬させておき、前記洗浄槽から基板を引上げて乾燥させる基板の乾燥方法において、前記複数枚の基板を引上げる際に、前記洗浄槽の底部に設けられた気泡発生手段から気泡を発生させ、この発生させた気泡を各基板間に通すことによって乾燥させるようにしたことを特徴とする基板の乾燥方法。
【請求項2】
洗浄槽に満たした洗浄液に複数枚の基板を浸漬させておき、前記洗浄槽から基板を引上げて乾燥させる基板の乾燥装置において、前記洗浄槽の底部中央に基板面に対して垂直方向に気泡発生手段を敷設し、前記複数枚の基板を引上げる際に、前記気泡発生手段から気泡を発生させ、この発生させた気泡を各基板間に通すことによって乾燥させるようにしたことを特徴とする基板の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−177460(P2008−177460A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11155(P2007−11155)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000132954)株式会社タカトリ (65)
【Fターム(参考)】