説明

基板ホルダー

【課題】レジストが形成された基板を保持した際に、押圧部材へのレジストの付着を抑制
することができる基板ホルダーを提供する。
【解決手段】レジスト101が形成された基板100が載置されるステージ14と、ステ
ージ14上に載置された基板100の周縁部に先端面15aが当接する爪部15を備えて
基板100をステージ14側に向かって押圧する押圧部材16とを有し、爪部15の先端
面15aに複数の突起部21が設けられている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、イオンミリング装置等の基板処理装置において、レジストが形成さ
れた基板を保持するための基板ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造には、イオンの衝突による物理的作用を利用して基板表面の処理、あるい
は基板上に設けられた配線や素子の加工等を行う基板処理装置、例えば、イオンミリング
装置等が用いられている。イオンミリング装置では、ステージ上に半導体ウエハー(シリ
コンウエハー)等の基板を載置し、ステージを回転させながらイオン源で発生させたイオ
ンビームをステージ上の基板に照射することで基板表面の処理を行う。すなわち、イオン
源によって生成したイオン(例えば、Arイオン)を高電圧によって加速し、ターゲット
である基板の表面に衝突させる。これにより、基板の表面が削り取られる。その際、基板
上にレジストを所定パターンで形成しておくことで、基板のレジストが形成されていない
部分のみが削られて、所望の表面形状の基板を形成することができる。
【0003】
ところで、このようなイオンミリング装置等の基板処理装置は、処理対象となる基板を
保持する基板ホルダーを備えている。基板ホルダーとしては、例えば、基板台(ステージ
)上に載置された基板の周縁部を、リングチャック(押圧部材)によって基板台上に押圧
することによって、基板台に載せられた基板をクランプするようにしたものがある(例え
ば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−297905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような基板ホルダーによって、ステージ上に載置された基板を良好に保持すること
ができる。しかしながら、押圧部材によってレジストが形成された基板をクランプする場
合、押圧部材を介してレジストに高温、高圧が直接加わると、押圧部材にレジストが付着
(転写)してしまう虞がある。押圧部材に付着したレジストは、次に処理する基板をクラ
ンプする際に、その基板に異物として付着(再転写)することがある。そして、異物が付
着したレジストは剥離し難くなってしまうという問題がある。さらに押圧部材と基板との
間に異物が存在すると、押圧部材によって基板を押圧する際に、異物を介して基板を局部
的に強く押圧することになり、基板の破損を生じさせる虞もある。
【0006】
また基板処理装置の構成によっては、基板ホルダーに基板を下向きに保持させる場合が
ある。このような場合には、押圧部材でステージ上の基板を比較的強い力で押圧する必要
があるため、上述のような押圧部材へのレジスト付着の問題が特に生じやすい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、レジストが形成された基板を
保持した際に、押圧部材へのレジストの付着を抑制することができる基板ホルダーを提供
することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、基板が載置されるステージと、該ステージ上に載置され
た前記基板の周縁部に先端面が当接する爪部を備えて前記基板を前記ステージ側に向かっ
て押圧する押圧部材とを有し、前記爪部の先端面に、複数の突起部が設けられていること
を特徴とする基板ホルダーにある。
かかる本発明では、押圧部材の爪部に突起部が設けられていることで、レジストに高温
、高圧が直接加わる領域が減少する。その結果、押圧部材へのレジストの付着が抑制され
る。
【0009】
ここで、前記突起部の高さが、10〜100μmであることが好ましい。また前記突起
部の間隔が、50μm以上であることが好ましい。これにより、仮に爪部の先端面に異物
が付着した場合でも、異物が突起部の間に入り込む。したがって、押圧部材によって基板
を押圧する際に、異物を介して基板を局部的に強く押圧することがなくなる。
【0010】
また前記突起部が、前記押圧部材の中心部に対して放射線状に配置されていることが好
ましい。基板を処理する際の加熱により基板が膨張すると、突起部によって基板上に設け
られているレジストが掻き取られてしまうことが考えられる。しかしながら、突起部が放
射線状に設けられていることで、レジストが掻き取られる量は最小限に抑えられる。した
がって、押圧部材へのレジストの付着量も最小限に抑えられる。
【0011】
また前記突起部の横断面形状が円形であることが好ましい。これにより、突起部の剛性
が十分に確保される。したがって、ステージ上の基板を突起部によって比較的強い力で押
圧して良好に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るイオンミリング装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーの平面図及び断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る押圧部材を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る基板ホルダーの使用状態を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る押圧部材の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る押圧部材の変形例を示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る押圧部材の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、図1は本発明の一実施形
態に係る基板ホルダーを備えるイオンミリング装置の概略構成図であり、図2は、本実施
形態に係る基板ホルダーの平面図及び断面図であり、図3は、基板ホルダーを構成する押
圧部材の断面図である。
【0014】
図1に示すように、イオンミリング装置1を構成する真空処理チャンバー2には、イオ
ン源チャンバー3が接続されている。イオン源チャンバー3には、アルゴン(Ar)等の
不活性ガスが導入される導入管4が接続され、例えば、真空処理チャンバー2とは反対側
の面に、熱電子を放出するフィラメント5が設けられ、このフィラメント5には電源6が
接続されている。また、このイオン源チャンバー3には、真空処理チャンバー2との境界
側に、加速電極7と減速電極8とが設けられている。
【0015】
一方、真空処理チャンバー2内には、基板ホルダー9が複数固定され、支持軸10によ
って回転自在に支持された回転ステージ11が設けられており、基板ホルダー9には、詳
しく後述するが、被処理基板としての複数のウエハー(基板)100が載置保持されるよ
うになっている。例えば、本実施形態では、回転ステージ11上には、4つの基板ホルダ
ー9が、支持軸10を中心とする同一円周上に所定間隔で固定されている。また、本実施
形態では、この回転ステージ11は、ウエハー100の加工時には、イオン源チャンバー
3から引き出されるイオンビームの照射方向に対して、所定角度で傾斜した状態に配され
るようになっている。この回転ステージ11と、イオン源チャンバー3に設けられた減速
電極8との間には、シャッター12が配置されており、イオン源チャンバー3から引き出
されるイオンビームを必要に応じて遮断できるようになっている。
【0016】
なお、真空処理チャンバー2又はイオン源チャンバー3には、排気系(ロータリーポン
プとターボモレキュラーポンプまたはクライオンポンプ等)13が接続されており、この
排気系13により真空処理チャンバー2及びイオン源チャンバー3の内部が所定の圧力に
減圧保持されるようになっている。なお、本実施形態では、排気系13は、真空処理チャ
ンバー2に接続されている。
【0017】
このようなイオンミリング装置1では、まず排気系13によって真空処理チャンバー2
及びイオン源チャンバー3内を所定の圧力に減圧し、この圧力を維持した状態で、イオン
源チャンバー3に、不活性ガス、例えば、アルゴンガスが導入管4を介して導入する。イ
オン源チャンバー3内にアルゴンガスが充填された状態で、電源6からフィラメント5に
電力が供給されると、イオン源チャンバー3内のアルゴンガスがイオン化される。加速電
極7と減速電極8とに図示しない電源によって電圧を印加することにより、イオン化され
たアルゴンガス(アルゴンイオン)が加速されて、真空処理チャンバー2内にイオンビー
ムとして引き出される。そして、真空処理チャンバー2内に配置されているシャッター1
2を開放することにより、基板ホルダー9によって保持された各ウエハー100にイオン
ビームが照射されるようになっている。なお、このように各ウエハー100にイオンビー
ムを照射する際には、基板ホルダー9が固定された回転ステージ11は、所定速度で連続
的に回転されており、これにより、回転ステージ11上に基板ホルダー9によって保持さ
れた複数のウエハー100が、それぞれ均一に加工されるようになっている。
【0018】
ここで、本実施形態に係る基板ホルダー9の構成について説明する。本実施形態に係る
基板ホルダー9は、図2に示すように、ウエハー100が載置されるウエハーステージ1
4と、ウエハーステージ14上に載置されたウエハー100の周縁部に当接してウエハー
100をウエハーステージ14との間に挟持可能に設けられた爪部15を有する押圧部材
16とを有する。
【0019】
ウエハーステージ14は、外形が略円形に形成されており、その周縁部近傍には、ウエ
ハーステージ14の外形に沿って溝部17が形成されており、この溝部17にはOリング
18がはめ込まれている。そして、ウエハー100は、このOリング18を介してウエハ
ーステージ14上に載置されている。Oリング18は、ウエハーステージ14上に載置さ
れるウエハー100の滑り止めとしての役割や、いわゆる衝撃吸収材としての役割等を果
たしている。
【0020】
押圧部材16は、ウエハーステージ14上のウエハー100の周縁部をウエハーステー
ジ14側に向かって押圧するためのものであり、本実施形態では、ウエハー100の周縁
部に対応するリング状に形成されている。また押圧部材16の内周側の端部近傍は、外周
側の端部よりもウエハーステージ14側に突出する爪部15となっている。爪部15は、
本実施形態では、その先端側に向かって厚さが漸小する形状を有する。そして、押圧部材
16はこの爪部15の先端面(当接面)15aがウエハーステージ14上に載置されたウ
エハー100の表面に当接可能に配置されている。
【0021】
押圧部材16の外周側の端部近傍には一対のガイド部材19が固定されており、このガ
イド部材19がウエハーステージ14に形成されたガイド孔20に挿通されている。つま
り押圧部材16は、これらガイド部材19及びガイド孔20によって、ガイド孔20に沿
って直線移動可能に構成されている。
【0022】
このような基板ホルダー9では、ウエハーステージ14上の所定位置にウエハー100
を載置した状態で、押圧部材16をウエハーステージ14側に移動させることで、押圧部
材16の爪部15の先端面(当接面)15aでウエハー100が押圧される。すなわち爪
部15とウエハーステージ14との間にウエハー100が挟持される。これにより、ウエ
ハー100はウエハーステージ14上に良好に保持される。
【0023】
そして、本発明では、図3に示すように、このような基板ホルダー9を構成する押圧部
材16の爪部15の先端面15aには、例えば、先端側ほど径の細い円錐状の複数の突起
部21が所定間隔で全面に亘って設けられている。言い換えれば、爪部15の先端面15
aに突起部21を残して凹部が設けられている。すなわち爪部15の先端面15aが凹凸
面となっている。
【0024】
このような突起部21が設けられていることにより、図4に示すようにウエハー100
の表面にレジスト101が形成されている場合でも、押圧部材16によってウエハー10
0を良好に保持しつつ、爪部15の先端面15aへのレジスト101の付着(転写)やレ
ジスト101の剥離といった問題の発生を抑制することができる。まずは、爪部15の先
端面15aによってウエハー100の所定範囲を押圧することでウエハー100を良好に
保持することができる。さらに爪部15の先端面15aに複数の突起部21が設けられて
いることで、先端面15aのレジスト101との接触面積が比較的小さく抑えられ、先端
面15aへのレジスト101の付着(転写)が抑制される。
【0025】
したがって、新たなウエハー100をウエハーステージ14上に保持する際に、その新
たなウエハー100に押圧部材16に付着したレジストが異物として付着することがなく
、各ウエハー100に形成されたレジスト101の剥離が容易となる。さらに異物を介し
て押圧部材16によってウエハー100を局部的に強く押圧することもなくなり、ウエハ
ー100の破損も抑制することができる。
【0026】
突起部21の高さは、特に限定されないが、10〜100μm程度であることが好まし
い。また各突起部21の間隔は、50μm以上であることが好ましい。これにより、爪部
15の先端面15aに、仮に異物が付着した場合でも、異物が突起部21の間に入り込み
、ウエハー100が局部的に強く押圧されることがなくなる。
【0027】
また本実施形態では、突起部21を錐状に形成するようにしたが、突起部21の形状は
、特に限定されず、例えば、図5に示すように柱状であってもよい。またこのような突起
部21の形状に拘わらず、突起部21の横断面形状は円形であることが好ましい。これに
より、ウエハー100を良好に保持できる程度に、突起部21の剛性を十分に確保するこ
とができる。勿論、突起部21の横断面形状は特に限定されるものではない。
【0028】
また各突起部21は、本実施形態では、爪部15の先端面15aに全面亘って所定間隔
で設けられているが、これら突起部21の配置も特に限定されるものではない。例えば、
図6に示すように、突起部21は、千鳥状に配置されていてもよい。何れの配置としても
、突起部21が設けられていることで、押圧部材16に対するレジストの付着を抑えるこ
とができる。
【0029】
あるいは突起部21は、例えば、図7(a)に示すように、押圧部材16の中心(ウエ
ハー100の中心)に対して放射線状に配置されていてもよい。さらに突起部21を放射
状に形成する場合には、図7(b)に示すように、突起部21を爪部15の内側端部から
外側端まで連続する梁状に形成するようにしてもよい。ウエハー100を処理する際の加
熱によってウエハー100が膨張すると、突起部21によってレジスト101が掻き取ら
れてしまう虞があるが、突起部21が放射線状に設けられていることでその量は最小限に
抑えられ、押圧部材16へのレジスト101の付着量も最小限に抑えられるからである。
【0030】
また突起部21は、爪部15の先端面15aに必ずしも規則的に設けられていなくても
よく、例えば、突起部21はランダムに設けられていてもよいし、爪部15の先端面15
aの表面を荒らすことによって形成されていてもよい。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態に限定される
ものではない。例えば、上述の実施形態では、複数枚のウエハー(基板)を同時に加工す
るタイプのイオンミリング装置を例示したが、勿論、一度に一枚の基板を加工するいわゆ
る枚様式の装置にも本発明を採用することができる。また例えば、上述の実施形態では、
イオンミリング装置を例示して本発明を説明したが、本発明に係る基板ホルダーは、レジ
ストが形成された基板を処理する他の基板処理装置にも採用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 イオンミリング装置、 2 真空処理チャンバー、 3 イオン源チャンバー、
4 導入管、 5 フィラメント、 6 電源、 7 加速電極、 8 減速電極、 9
基板ホルダー、 10 支持軸、 11 回転ステージ、 12 シャッター、 13
排気系、 14 ウエハーステージ、 15 爪部、 15a 先端面、 16 押圧
部材、 17 溝部、 18 Oリング、 19 ガイド部材、 20 ガイド孔、 2
1 突起部、 100 ウエハー、 101 レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置されるステージと、該ステージ上に載置された前記基板の周縁部に先端面が
当接する爪部を備えて前記基板を前記ステージ側に向かって押圧する押圧部材とを有し、
前記爪部の先端面に、複数の突起部が設けられていることを特徴とする基板ホルダー。
【請求項2】
前記突起部の高さが、10〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の基板
ホルダー。
【請求項3】
前記突起部の間隔が、50μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基
板ホルダー。
【請求項4】
前記突起部が、前記押圧部材の中心部に対して放射線状に配置されていることを特徴と
する請求項1〜3の何れか一項に記載の基板ホルダー。
【請求項5】
前記突起部の横断面形状が円形であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記
載の基板ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−210967(P2011−210967A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77504(P2010−77504)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】