説明

基板上にパターン化層を形成する方法

ソフト・リソグラフィのパターン化工程によって基板(24)上にパターン化された自己組織化単分子層(20)を形成する方法であって、その方法は、a)前記パターン化された自己組織化単分子層(20)の必要なパターンを画定するためのパターン化手段(10)を提供すること、b)前記基板(24)の表面(22)上に自己組織化単分子層(20)を形成すること、c)前記パターン化手段(10)を前記基板(24)の前記表面に適用することであって、前記パターン化手段(10)が前記基板表面の選択された領域に修飾剤を送達するように配置され、前記選択された領域が前記必要なパターン又はそのネガに対応し、前記修飾剤が化学物質を含み、且つ前記選択された領域で、前記自己組織化単分子層(10)の分子と前記基板(24)の前記表面との間の相互作用の強さを変えるように配置されること、並びにd)ステップc)の後、その分子と前記基板の前記表面との間でより低い相互作用の強さを示す前記自己組織化単分子層(20)の領域を選択的に除去又は置換し、それによって前記必要なパターンを有する自己組織化単分子層(20)を形成することを含む。修飾剤は、工程の要求に応じて、自己組織化単分子層の分子と基板の最上面との間の相互作用の強さを弱める又は高めるように選択されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロコンタクト・パターン化工程など、ソフト・リソグラフィのパターン化工程によって基板上にパターン化層を形成する方法に関する。本発明はまた、該方法によって得られるパターン化された基板、及び該方法を実施するように配置及び構成された装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に金属、金属酸化物又は他の材料をパターン化することは、近頃の技術では普通の要求であると共に重要な工程であり、例えばマイクロエレクトロニクスやディスプレイの製造に適用されている。金属のパターン化は通常、基板の表面全体にわたる金属の真空蒸着、並びにフォトリソグラフィ及びエッチング技術を用いたその選択的除去を必要とする。
【0003】
マイクロコンタクト・プリンティングは、マイクロメートル及びサブミクロンの横寸法を有する有機単分子層のパターンを形成する技術である。この技術は、分子をスタンプから基板上にプリントすることによる特定タイプのパターン形成に、実験上の簡潔さ及び柔軟性を提供する。今のところ、従来技術のほとんどは、例えば金や他の金属の上に自己組織化単分子層を形成する長鎖アルカンチオレート類の注目すべき能力に依存している。これらのパターンは、適切に配合されたエッチング液による腐食から支持金属を保護することによってナノメートルの薄さのレジストとして働くこと、或いはプリントされたパターンの選択された領域上への流体又は固体の選択的配置を可能にすることができる。エタノールに溶解させたアルカンチオール類(「インク」)の溶液を用いること、及びエラストマーの「スタンプ」を用いて金属基板上にそれらをプリントすることによって、1マイクロメートル未満とすることも可能な横寸法を有する自己組織化単分子層(SAM)のパターンが形成され得る。スタンプは、フォトリソグラフィ又は電子ビームリソグラフィなど他の技術を用いて作成されたマスター(又は型)を用いて、シリコーン・エラストマーを成形することによって製造される。こうしたスタンプ表面のパターン化は、例えば欧州特許第0784543号明細書に開示されており、それは、反応物を基板上へ運ぶスタンプを降下させるステップと、後段の反応を所望のパターンに限定するステップと、スタンプを引き上げるステップと、反応の残存物を基板から除去するステップとを含む、基板層にリソグラフィによる構造を作成する工程について記載している。スタンプは、エッチングされるべきパターン又はパターンに対応する凹部を有することができる。
【0004】
従ってマイクロコンタクト・プリンティングは、中程度から高度の解像度の構造化された表面及び電子回路の簡単、迅速且つ安価な複製に対して固有の可能性を有するソフト・リソグラフィのパターン化技術であり、現在、約100nm又はさらに小さい構造のサイズが、湾曲した基板に対しても可能になっている。
【0005】
(図面の図1を参照すると)マイクロコンタクト工程の4つの主要なステップは、所望のパターンを有するスタンプ10を複製するステップ、適当なインク溶液を用いてスタンプを充填するステップ、インク付けされたスタンプ10を用いてプリントし、パターン14をスタンプ10から表面12へ転写するステップ、並びに、望ましい場合には、例えばエッチング工程など化学的又は電気機械的工程によってパターンを現像する(定着させる)、或いはプリントされたパターンの選択された領域に1つ又は複数の他の材料をさらに堆積させるステップである。
【0006】
先に説明したように、インク分子として高級アルカンチオール類を金及び他の金属の表面上にプリントすることは、開発された主要技術の1つであった(例えば、米国特許第5512131号明細書、Kumar A.等、“The Use of Self−Assembled Monolayers and a Selective Etch to Generate Patterned Gold Features”,Journal of the American Chemical Society,1992年、第114巻、p.9188−89、Kumar,A及びG.M.Whitesides,“Features of Gold having Micrometer to Centimeter Dimensions can be formed through a combination of stamping with an elastomeric stamp and an alkanethiol ”ink” followed by chemical etching”,Applied Physics Letters,1993年、第63巻、p.2002−4参照)。この場合、両親媒性のアルカンチオール・インク分子が、スタンプのパターンに似た表面の上に脱プロトン化されたチオレート類の自己組織化単分子層(SAM)を形成する。SAM形成の駆動力は、一方では、最上部の表面層における有極性のチオレート頭部基と金原子(又は他の金属の原子)との強い相互作用であり、他方では、SAM内の無極性の尾部基相互間での分子間(疎水性)のファンデルワールス相互作用である。これら2つの相互作用の組み合わせが、機械的、物理的又は化学的な作用に対する高い安定性をもつ秩序だったSAMをもたらす。前述の例の他にも、マイクロ・プリンティングによって金属表面上にレジスト材料のパターン化層を生成するために、他のタイプのインク及び材料が使用されてもよい。このように生成されたパターン化層は、従来の(フォト)リソグラフィ工程における現像工程と同様のエッチング・レジストとして使用されてもよい。
【0007】
金属のパターン化のためのマイクロコンタクト・プリンティングとエッチング技術との組み合わせでは、ネガ型マイクロコンタクト・プリンティングとポジ型マイクロコンタクト・プリンティングの2つの基本技術の間で大まかな区別がつけられてもよく、次にこれらの工程をより詳しく説明する。
【0008】
図面の図2を参照すると、ネガ型マイクロコンタクト・プリンティング((−)?CP)工程1では、金属層の表面上へのパターン化された単分子層の形成2が行われ、この単分子層は後段の湿式化学エッチング・ステップ3でエッチング・レジストとして用いられるが、それは従来のネガ型フォトリソグラフィ技術に類似している。図示した例では、(−)?CP工程は、現像ステップ中に、前のプリンティング・ステップ3においてインクで被覆されなかった領域から材料が選択的に除去されるものである。インクで被覆された領域では、材料層は変化しない。基板表面はこの工程後、やはりスタンプ表面上で高くされた領域で高くされるようになる。換言すれば、基板表面はスタンプのレリーフ構造の鏡像になる。
【0009】
これに対してポジ型マイクロコンタクト・プリンティング((+)μCP)工程では、現像ステップ後の処理結果は、((−)?CP)で得られる結果と反対である。従って表面は、スタンプの表面構造で低くされた領域で高くされるようになる。(+)?CP工程を実現するための様々な手法が知られているが、いずれの場合もスタンプ4は、それぞれの(−)?CP工程1で使用されるスタンプ上のパターンに対して反転されたパターンと共に用いられる。後でより詳しく説明するように、最終的には、最初に接触された領域5内で、表面金属層のエッチング7が選択的に実施される。まさにその性質により、(+)?CP工程は前述の2つの工程の中では実際に実現するのがより困難である。
【0010】
従って前述の(−)μCP工程は、所望のパターンの高くされた領域の表面積とパターンの低くされた領域の表面積との比(すなわち、パターンの充填率)が高い場合に、表面のパターン化に対して最も一般的に用いられ、且つ表面のパターン化にきわめて適した方法である。しかし、充填率が約1よりもかなり小さい、すなわちパターン内で高くされていない領域が大きい場合には、従来の(−)μCP工程はきわめて困難なものになる。
【0011】
この理由は、大多数の用途では、選択されるスタンプ材料が、空圧又は機械的な圧力による変形に対して低い3次元安定性を有するエラストマーのポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)であることにある。アクティブ・マトリクス・ディスプレイのドライバ電子機器に見られるような低い充填率を有する、又は広範な特徴のない領域を有するパターンの場合、図面の図3に示されるように、加圧下では、たとえこの圧力がきわめて小さい場合でも、スタンプが圧迫される又はつぶれる(ゆがむ)傾向がある。
【0012】
圧迫現象は、スタンプの低くされた領域と基板表面との望ましくない接触をもたらし、従って、スタンプ10のそれらの低くされた領域から基板12への望ましくないインクの転写をもたらす。スタンプのつぶれ又はゆがみは同様の結果を有し、達成可能な最大解像度の著しい低下を引き起こす。後段の現像ステップでは、これらの余計に接触された領域(例えば図3の詳細図Aの参照番号100を参照)は、意図的にプリントされた領域と区別することができず、その結果、望ましくない構造を転写することになる。
【0013】
低い充填率又は広範な特徴のない領域を有するパターンのマイクロコンタクト・プリンティングは、理論上、反転されたレリーフ構造を有するスタンプを用いる(+)?CPによって実施されてもよい(図面の図2の中央の図を参照)。この場合、スタンプと基板との間の接触領域も、やはり高い充填率を有するようになる。しかし実際には、こうした方法は、後段の基板の接触された領域における選択的エッチングの現像ステップを可能にする適切なインク分子に依存しており、今までのところ、プリンティング・ステップ直後にこうした反転されたパターンの湿式化学エッチングを可能にするインク系は開発されていないが、湿式化学エッチング前の追加の処理ステップに依存する(+)?CP系のいくつかの例が文献に報告されている。
【0014】
例えば、Delamarch,E.等、“Positive Microcontact Printing”,Journal of the American Chemical Society,2002年、第124巻、p.3834−5は、2種類のインクによる方法を記載しており、その方法では、「反転されたレリーフ・パターン」をもつスタンプを用いて金基板又は銅基板をプリントする際の第1のインクとして、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PTMP)が使用される。この4座のチオール分子は、基板の接触された領域に単分子層を形成する。第2のステップでは、プリントされた基板は、好ましくは基板の残りの被覆されていない部分に安定なSAMを形成する第2のチオール(HS(CH19CH)の溶液に浸される。この第2の単分子層は、第1のチオールPTMPとは異なり、現像ステップ中に使用される湿式化学エッチングに対して安定であり、且つそれらの領域に優れたエッチング耐性を与えるように設計される。
【0015】
Kim,E.,A.Kumar,G.M.Whitesides,“Combining Patterned Self−Assembled Monolayers of Alkanethilates on Gold With Anisotropic Etching of Silicon to Generate Controlled Surface Morphologies”,Journal of the Electrochemical Society,1995年、第142巻、p.628−33に記載された方法では、最初のプリンティング・ステップに使用されるインク分子(ヘキサデカンチオール)が、接触された領域に疎水性SAMを形成する。後続のステップでは、表面の残りを誘導化してそれらの領域を親水性SAMで被覆するために、異なる第2のチオール(16−メルカプトヘキサデカン酸、HS(CH15COOH)が用いられる。次の段では、そうして修飾された基板上に少量の有機ポリマーが配置される。ポリマーは表面の親水性領域(すなわち、それらの露出しているCOOH基)上のみに集まり、湿式化学エッチングに対して高められた安定性を有する領域を形成する。後続の現像ステップでは、材料は、ポリマー層で修飾されていない最初にプリントされた領域でのみエッチング除去され、従って使用されるエッチング槽に対してより低いエッチング耐性を与える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述の手法は、2つの主な欠点を有している。第一に、それらはチオールのインク分子としての使用に依存しており、第二に、それらは、実際のプリンティング・ステップの後、ポジ型のパターンが湿式化学エッチングによって現像される前の追加の処理ステップに依存している。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで我々は、改善された態様を考案した。
【0018】
ソフト・リソグラフィのパターン化工程によって基板上にパターン化された自己組織化単分子層を形成する方法であって、その方法は、(a)前記パターン化された自己組織化単分子層の必要なパターンを画定するためのパターン化手段を提供すること、(b)前記基板の表面上に自己組織化単分子層を形成すること、(c)前記パターン化手段を前記基板の前記表面に適用することであって、前記パターン化手段が前記基板表面の選択された領域に修飾剤を送達するように配置され、前記選択された領域が前記必要なパターン又はそのネガに対応し、前記修飾剤が化学物質を含み、且つ前記選択された領域で、前記自己組織化単分子層の分子と前記基板の前記表面との間の相互作用の強さを変えるように配置されること、並びに、(d)ステップ(c)の後、その分子と前記基板の前記表面との間でより低い相互作用の強さを示す前記自己組織化単分子層の領域を選択的に除去又は置換し、それによって前記必要なパターンを有する自己組織化単分子層を形成することを備える。
【0019】
従って、より低い基板表面との相互作用の強さを有するSAMの領域は除去されるか、或いは異なる分子で置換されてもよい。換言すれば、修飾後、例えばそうした他の分子を含む溶液に基板を浸すことによって、緩く結合された分子が他の分子によって置換されてもよい。
【0020】
従って本発明による方法は、自己組織化単分子層を形成することが可能なチオール類などの分子からなる、或いはそれらを含むインクの使用を必要としない。さらにパターンは、さらなる修飾を伴わずにプリンティング・ステップ直後、(例えば、湿式化学)エッチングによって現像されてもよい。
【0021】
パターン化手段は、自己組織化単分子層に修飾剤を送達する、或いは他の方法で自己組織化単分子層と接触するように配置されてもよいことが理解されるであろう。
【0022】
本発明は、先に定義した方法によって得られるパターン化された自己組織化単分子層をその上に有する基板、先に定義した方法を実施するように配置及び構成されたソフト・リソグラフィのパターン化装置、並びに基板上の自己組織化単分子層の選択された領域で、前記自己組織化単分子層の分子と、前記自己組織化単分子層がその上に提供された前記基板の表面との間の相互作用の強さを変えるソフト・リソグラフィのパターン化工程のパターン化手段における化学物質を含む修飾剤の使用であって、前記自己組織化単分子層の前記選択された領域が必要なパターン又はそのネガに対応する修飾剤の使用にも及ぶ。
【0023】
パターン化手段は、前記自己組織化単分子層の必要なパターンを画定するパターン化されたスタンプを備えていてもよく、或いはパターン化手段は、実質的にパターン化されていないスタンプ、及びパターン化された自己組織化単分子層の必要なパターンを画定するマスクを備えていてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態では、修飾剤は、自己組織化単分子層の分子と基板の最上面との間の相互作用の強さを弱めるように選択される。
【0025】
本発明の別の実施形態では、修飾剤は、自己組織化単分子層の分子と基板の最上面との間の相互作用の強さを高めるように選択される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、吸着によって基板上に自己組織化単分子層を形成させるのに十分な時間、基板が適切な分子の溶液に浸される、或いは適切な分子を含む雰囲気に曝される。
【0027】
吸着とは、それによって表面、通常は硬い表面の上に気体、液体又は固体の層が堆積する工程であることが、当分野の技術者にはよく知られている。吸着には、引力が純粋にファンデルワールス型である物理吸着と、実際には吸着剤(吸着を行う材料)と吸着質(吸着される材料)との間に化学結合が形成される化学吸着の2つのタイプがあり、本明細書における「吸着」という用語は、前述の両方のタイプを含むものである。
【0028】
しかし別法として、単分子層がそれによって形成されることになる分子を運ぶパターン化されていないスタンプに接触することによって、基板上に自己組織化単分子層が形成されてもよい。
【0029】
基板は、その上に追加の材料層を有する基部を備えていることが好ましく、そこでは自己組織化単分子層が追加層の上に提供される。一実施形態では、方法はさらに、必要なパターンに従って基板をエッチングして、追加層の選択された部分を除去し、或いは基板の選択された領域に材料を堆積させ、それによって基板上に追加のパターン化層を形成するステップを含んでもよい。
【0030】
実際には、本発明はさらに、先に定義された方法によって得られる追加のパターン化層をその上に有する基板(24)にも及ぶ。
【0031】
先に述べたように、修飾剤は、前記自己組織化単分子層の分子と前記基板の最上面との間の相互作用の強さを変えるように選択された化学物質を含む。一実施形態では、修飾剤は、熱、電磁放射(例えば、UV又は可視光)などの外部刺激による刺激作用、或いはゆっくり進行する反応の場合には時間に応じて、自己組織化単分子層の分子と基板の最上面との間の相互作用の強さを変えるように選択された化学物質を含んでいてもよい。
【0032】
自己組織化単分子層はチオール分子で形成されてもよく、修飾剤は、酸化剤若しくは還元剤、電子若しくは原子移動試薬、化学結合の形成若しくは切断を生じさせる試薬の1つ又は複数の種類の分子を含んでいてもよい。
【0033】
パターン化手段が、パターン化された若しくは別の方法によるスタンプを備えている場合には、スタンプはエラストマー材料、好ましくはポリ(ジメチルシロキサン)などのポリマーで形成されることが好ましく、修飾剤はスタンプを形成する材料に対する親和性を有する化学物質を含むと有益である。
【0034】
従って先に定義した方法では、基板表面はまず、適切な自己組織化単分子層で被覆される。この均質なSAMは、例えば溶液又はガス相からの吸着によって、或いはパターン化されていない「平坦な」スタンプを用いる前述のプリンティング・ステップによって形成されてもよい。このステップの後、パターン化されたスタンプが基板表面とコンフォーマルに接触した状態にされる実際のパターン化/プリンティング・ステップが続く。基板に接触すると、スタンプは化学物質(例えばインク)又は他の(例えば紫外光)修飾剤を接触領域に送達し、その結果、SAM内の分子の局所的な化学修飾を引き起こす。この修飾は、これらの接触領域内でSAMの分子と最上部の材料表面層との間の相互作用の強さを変える性質のものである。非接触領域では修飾は起こらない。
【0035】
その結果得られる局所的な結合力の変化が、単分子層のより安定性の低い部分、すなわち基板表面により弱く結合された部分、及びこれらの領域内の下にある材料層を選択的に除去する後段の現像ステップに利用され、それによって、単分子層に形成されたパターンを材料層へ転写する。本発明によるパターン化された自己組織化単分子層の形成それ自体が、下にある層を除去する又はそれに追加する後段のエッチング(又は堆積ステップ)なしでも有用な工程であることが、当業者には理解されるであろう。一実施形態では(後でより詳しく記述されるように)、(a)自己組織化単分子層の分子の相互作用の強さが最も低い領域を除去するステップと、(b)下にある層の選択された領域を除去するステップとが単一のステップに組み合わされてもよい。しかし、これらの機能を実施する2つの別々のステップを有することにより、例えば相対的に弱い表面結合を有するSAMの領域に必ずしも浸透できるとは限らないが、SAMのこれら領域が前のステップで異なる溶液によって除去されていると、有用且つ選択的となり得るエッチング材料の使用を可能にすることができるため、本発明の多用性を著しく高めることができる。
【0036】
プリンティング・ステップにおけるSAMの化学修飾は、後段のエッチング・ステップ中に単分子層(及び下にある材料)の接触領域が除去されるように、接触領域に単分子層のより弱い結合力をもたらすことができる。これがポジ型マイクロコンタクト・プリンティング工程になる。これに対して、プリンティング・ステップにおけるSAMの化学修飾が、接触領域に単分子層のより強い結合力をもたらすことも可能であり、その場合には、単分子層(及び下にある材料)の非接触領域がエッチング・ステップ中に除去される。これがネガ型マイクロコンタクト・プリンティング工程になる。
【0037】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、本明細書に記載される実施形態から明らかとなり、また実施形態を参照して説明される。
【0038】
次に、本発明の実施形態を、添付図面を参照して例示のみの目的で説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
ここでは本発明の様々な態様を明らかにすることを唯一の目的に、本発明の例示的な実施形態による簡単な方法を説明する。
【0040】
例えば、基板が金である場合には、最適なタイプのSAM形成分子は、アルカンチオール類又はアレーンチオール類である傾向がある。先に説明したように、これらの分子から金上に形成されるSAMは、脱プロトン化されたチオレート類からなる。SAM形成の駆動力は、一方では基板の最上部の表面層における有極性のチオレート頭部基と金原子との強い相互作用であり、他方ではSAM内の無極性の尾部基相互間での分子間のファンデルワールス相互作用である(図1参照)。これら2つの相互作用の組み合わせが、機械的、物理的又は化学的な作用に対する高い安定性をもつ秩序だったSAMをもたらす。
【0041】
これらの2つの相互作用の一方の強さが弱められた場合、SAMの安定性は著しく低下することになる。この例に関して(のみ)工程は、特に単分子層におけるチオール類のイオウの頭部基と最上部の金表面層との間の相互作用の強さを変えることに焦点をあてる(次により詳しく論じられるように、当分野では、二原子酸素又はオゾンなど周囲の酸化剤によるSAMへの酸化作用は、主にチオール分子のイオウの頭部基で起こることが知られている)。
【0042】
周囲条件下で金上のアルカンチオールSAMをUV光に曝すと、チオレートのイオウのスルホキシド種RSO(但しn=2、3)への酸化、最終的には硫酸イオンへの酸化を引き起こす(例えば、Zhang,Y.,R.H.Terrill,P.W.Bohn,“Ultraviolet Photochemistry and ex Situ Ozonolysis of Alkanethiol Self−Assembled Monolayers on Gold.”,Chemistry of Materials,1999年、第11巻、p.2191−8参照)。さらに、暗所でのアルカンチオールSAMとオゾンとの反応は、同じスルホキシド種をもたらすことが示されている。さらに重要なことには、これらの単分子層を周囲に曝すだけで、類似の酸化生成物を生じる。空気酸化の速度は、基板の種類及びその表面構造、アルカンチオール類のタイプ、並びに特定の単分子層の秩序に強く依存していると思われる(例えば、Lee,M.−T.等、“Air Oxidation of Self−Assembled Monolayers on Polycrystalline Gold:The Role of the Gold Substrate.”,Langmuir,1998年、第14巻、p.6419−23参照)。
【0043】
酸化を引き起こすために使用されるメカニズムに関係なく、形成されたスルホキシド種RSOは、面法線に対する酸化された分子の異なる傾斜角度を含めた構造上の変化によってSAM内に欠陥を引き起こす。引き起こされたこれらの欠陥と、それぞれの硫化物に比べて低い酸化された種の金の結合エネルギーとの組み合わせによって、エタノール溶液中のアルカンチオール類による交換速度が劇的に高められる。酸化された領域では、水溶液又はアルコール溶液によっても簡単に単分子層が洗い流される。
【0044】
このことから、前述の組み合わせにおけるSAMの安定性は、集合状態を導くのに十分な強さのイオウ−金の相互作用、吸着質のアルキル鎖によるAu−S接続部分の立体保護作用、及び複数の分子間相互作用の存在を含めたいくつかの要因による結果である。二原子酸素やオゾンなど酸素移動酸化剤による酸化損傷は、内在する単分子層の欠陥部位で生じることが好ましく、また作用はイオウの頭部基に向けられ、主生成物としてスルホキシド種RSO(n=2、3)をもたらす。これらの生成物は、金の表面により弱く結合され、有極性溶媒中で簡単に脱着し、その結果、微視的欠陥の巨視的欠陥への成長を許容する。鎖長の長いSAMは、密に充填されたアルキル鎖構造に活性な酸化剤種が浸透するのが難しくなるため、短いものよりずっとゆっくり酸化する。
【0045】
従って、金表面に対するチオール頭部基の結合相互作用の領域選択的な酸化による変更のために、ペルオキソ化合物など酸素移動剤に対する金上のアルカンチオールSAMの既知の感受性が利用されてもよい。
【0046】
図面の図4を参照すると、この例では、適切なアルカンチオール分子から構成されるSAM20が、スタンピング前にこれらのチオール分子でインク付けされた平坦でパターン化されていないスタンプを用いてプリントすることによって、或いは長時間、基板をチオール分子の溶液に浸す、又は基板をそうした分子を含む雰囲気に曝すことによって、基板24上の平坦な金の層22の上に形成される。その後、パターン化されたスタンプ10は、吸着されたチオレート類のチオールの頭部基RSをそれぞれのスルホキソ誘導体RSO(n=2、3)に酸化するのに適したペルオキソ化合物でインク付けされる。スタンプ10をSAMで被覆された基板24に接触させると、ペルオキソ種が基板上の層22の表面に転写される。これらの領域20aでは、ペルオキソ種がSAMの疎水性領域に浸透する。次いで、ペルオキソ種が酸素原子を表面に結合されたチオレート類のイオウの頭部基へ移動させ、それを次式に従って酸化する。
RS−[Au]surface+nR’OOH→RSO−[Au]surface+nR’OH
【0047】
生成された酸化されたチオレート類のSAM、従ってスルフォネート(sulfonite)種の単分子層は、最初のチオレート類のSAMより弱く金の表面に結合される。それはまた、異なる構造を有する。結果として、また図面の図5aを参照すると、この修飾された単分子層は、チオ硫酸塩ベースのエッチング槽など標準的な金のエッチャントによる湿式化学エッチングに対する耐性が低く、そのことは当分野の技術者なら周知であろう。従って、後続のエッチング・ステップ(5)では、SAM20及び金の層22は、ペルオキソ・インクでプリントすることによって修飾された領域から除去され、エッチング耐性のある未酸化のチオレート類のSAM20によって保護されている未修飾の領域からは除去されないが、後で除去されてもよい(しかしこのことは本質的ではない)。
【0048】
図面の図5bを参照すると、別の実施形態では、修飾剤又は「インク」は、SAM分子と基板上の層22との間の結合を強めるように選択されてもよい。この場合、スタンプ10をSAM20に接触させた後、エッチング・ステップを使用して、プリンティング・ステップによって修飾されなかった領域からSAM20及び層22を除去する。SAM20及び層22は、単一のエッチング・ステップで、又は先に説明した2つの別々のステップとして除去されてもよい。この場合も、残りのSAMが後で除去されてもよい。
【0049】
図面の図6a及び6bを参照すると、本発明のさらに他の実施形態では、SAMが除去された領域に他の材料26(層22と同じでも同じでなくてもよい)を堆積させることによって、基板24上にパターン化層が形成されてもよい。図6aでは、(図5aに関して記述されたように)インクがSAM分子と層22との間の結合を弱めるように選択された場合が示され、図6bでは、(図5bに関して記述されたように)インクがその結合を強めるように選択された場合が示されている。
【0050】
前述の、及び後述の実験に基づく実施例における一般的な例は、金属−チオール 基板−インクの系に関するものであるが、本発明はこの特定の系に限定されるものではないことが、当分野の技術者には理解されるであろう。本発明はむしろ、すべてではないにしても、適切な修飾剤によってインクと基板との間の相互作用が変更され得るほとんどのインク−基板系に適用することができる。さらに、修飾剤は必ずしも化学物質である必要はなく、その代わり、例えば実質的に透過性のスタンプによって選択的に接触領域まで導かれる放射とすることもできる。この後者の適用は、既知のリソグラフィのシャドウ・マスクを用いるフォトリソグラフィ工程を実施するための光導波路としてのスタンプの利用を可能にする。
【0051】
本発明の重要で一般的な利点は、以下のことを含む。
【0052】
・本発明を(+)?CP法、特に低い充填率又は広範な特徴のない領域を有するパターンの場合に使用できることであり、従って、普通なら(−)?CP法を使用しなければならない場合に起こることがある問題(圧迫、及びつぶれ/ゆがみなど)を回避することができる。
【0053】
・本発明の一態様による方法では、最後の現像ステップでエッチング・レジストとして使用されるSAMは、溶液また気相から形成されてもよい。このように形成されたSAMは、秩序がより高く、且つ欠陥がより少ない構造を有することが知られている。従って、それらはスタンピング工程によって形成されるものより優れたエッチング耐性を有し、それによって選択性及び解像度が改善される。しかしこれに対して、迅速なパターン化が必要とされる場合には、平坦なスタンプを用いたプリンティングによって、一瞬にして十分に均質なSAMが形成されてもよい。従って本発明の方法には、要求に対する高い柔軟性及び順応性がある。
【0054】
・(プリンティング・ステップに化学物質が使用される場合)「インク」が基板表面上に単分子層を形成する分子からなっている必要はなく、それは、インクにはむしろ既存の単分子層を修飾することが求められるためである。本発明のこの特定の態様は、既知の?CP法との重要な違いをもたらし、またこの特定の特徴に伴ういくつかの利点があり、それは以下のことを含む。
【0055】
−(既知のほとんどの用途の場合と同様に)スタンプ材料としてPDMSを用いると、インク溶液に使用することができる溶媒はエタノールなどきわめて少数のものに限定され、また単分子層を形成する分子がこの溶媒に可溶でなければならないため、それが使用可能な単分子層形成分子の種類を制限する。本発明では、溶液によって吸着される単分子層の形成にずっと多くの種類の溶媒を利用することができるため、この制限が存在しない。気相から形成されるSAMには、こうした制限がまったく存在しない。
【0056】
−本発明の方法では、単分子層を形成する分子と基板表面との間の相互作用を変える能力を有している限り、実質的に無数のインク分子が使用されてもよい。従って本発明では、インク分子の表面分散(surface spreading)や気相拡散など既知の?CP系に使用されるインクに特徴的な問題はあまり重要ではなくなり、より簡単に変更及び微調整することが可能である。さらに、分散は均質なSAM形成では問題にならないため、本発明の方法では、第2のパターン化ステップで修飾されることになる均質なSAMを形成するのに、高レベルの表面分散を示すことが知られているSAM形成インクがそのまま使用されてもよい。
【0057】
−インクは、酸化剤若しくは還元剤、電子若しくは原子移動試薬、(水素結合や静電結合など弱い結合を含む)化学結合の形成若しくは切断を生じさせる試薬の任意の種類の分子を含むことができる。
【0058】
−単分子層の品質に関して、インク分子の「尾部基」(すなわち、存在するにしても、単分子層内の分子の化学修飾に対してわずかな影響しか及ぼさないインク分子の部分)はもはや重要ではない。従って、その構造は、インク分子のスタンプ材料に対する優れた親和性が得られ、且つインク分子がSAMに容易に浸透することを可能にするように自由に微調整されてもよい。
【0059】
−プリンティング・ステップによって単分子層にエッチング耐性のより低い部分が形成される場合(すなわち、インクが単分子層内の分子と基板材料との間の相互作用を弱める場合)には、インクの転写が定量的である必要はない(すなわち、単分子層内の分子すべてがインクによって修飾されるわけではない場合でも、単分子層の結合性は、やはりエッチング液に対して十分敏感になる程度まで低減されることになる)。
【0060】
・PDMSに対して高い親和性を有するインク分子が使用されてもよい。従って原則として、複数スタンピング・ステップに対してインクを付直すことなくスタンプが再利用されてもよい。
【0061】
・既知の系と比べて、本発明の方法はプリンティングの後、化学エッチングによる現像の前に追加の処理ステップが不要である。
【0062】
さらに最も一般に使用されるチオール−SAMベースの系の場合、本発明の1つの特定の利点は、インク分子がもはや酸素に敏感ではないことである。チオール類は周囲環境からの酸素によって簡単に酸化され、その結果、スタンプの表面上に固体として現れることがある不溶性沈殿を形成する。これが起こると、もはやスタンプを使用することができなくなる。本発明では、スタンピング・ステップにチオール・インクを使用する必要はない(但し、最初の均質なSAMを形成するために、依然としてチオール・インクが使用されてもよい)。
【0063】
実験に基づく実施例
以下に示される実験に基づく実施例は、金属−単分子層−インクの可能な組み合わせのうちきわめて狭い範囲しか含んでいない。すべての系はチオール・インクをベースにしているが、(既に言及されたように)これらの系に対する新しい方法の可能な適用を制限するものとして理解すべきではない。
【0064】
実施例1は、金上に塩基性末端基を有する混合型の脂肪族−芳香族チオールの単分子層分子()及び3−クロロ過安息香酸、従ってインクとして酸素移動酸化剤を用いた、前述の一般的な例についての実例である。一般に、塩基性末端基を有する単分子層は、過酸との組み合わせに有利であると思われる。我々はまた、ペルオキソ化合物12(クメンヒドロペルオキシド)及び13(過酸化水素)も使用してきたが、得られた解像度は、試験を行ったすべてのケースで11によって得られるものより低かった。
【0065】
実施例2は、別のチオール単分子層の分子をペルオキソ酸11と組み合わせて使用することについて述べており、インクが親水性のヒドロキシアルカンチオールであるため、酸性のペルオキソ・インクの場合でも塩基性単分子層が不要であることを実証している。
【0066】
実施例3では、実施例1と同じ単分子層が使用されるが、インクとして異なる原子移動試薬(N−ヨードコハク酸イミド、14)が使用される。この実施例は、チオール−単分子層の系が酸素移動試薬ではない酸化インクと組み合わされてもよいことを実証している。
【0067】
実施例4は、金ではなく銀合金の基板上での、またではなくオクタンチオールを用いた更なる違いを伴う実施例1で使用された系の適用を示している。銀の層は、実施例1で使用された金の層の約10倍の厚さである。
【実施例1】
【0068】
約500nmの厚いシリコン酸化物層、(スパッタリングされた)上部のチタンの密着層(5nm)、及び最後に(やはりスパッタリングされた)ある厚さ又は20nmの金の層を用いて、シリコン・ウェハを修飾した。約1×2cmのサイズを有する試料を、金の表面を水、エタノール及びn−ヘプタンですすぐことによって洗浄した。さらにそれを5分間、アルゴン・プラズマ(0.25ミリバールAr、300W)に曝した。それをチオールのエタノール溶液(0.02モル)に浸して、金上にのSAMを形成した。0.5〜24時間の浸漬時間について試験を行ったが、結果に差はなかった。この溶液から基板を取り出した後、エタノールで完全にすすぎ、過剰なチオール溶液をすべて除去した。基板を窒素ガス流中で乾燥させ、その後にはプリンティングの準備が整った。
【0069】
所望のレリーフ構造を有するPDMSスタンプを、少なくとも10分間、(11−HCl及びKHO(1:1)から調製した)11をエタノールに溶かしたインク溶液(0.02M)に浸した。インク付けの時間を10分〜10時間の間で変化させたが、結果に差はなかった。インク付けの後、スタンプをインク溶液から取り出し、エタノールで完全に洗浄して過剰なインク溶液をすべて除去した。その後、少なくとも30秒間、スタンプを窒素ガス流中で乾燥させた。
【0070】
少なくとも10秒間軽い圧力を加えて、スタンプのパターン化された側面を作成された金の基板とコンフォーマルに接触させた。スタンプを取り外した後、基板を、半飽和状態の水酸化カリウム(1.0M)、チオ硫酸カリウム(0.1M)、フェリシアン化カリウム(0.01M)、フェロシアン化カリウム(0.001M)及びオクタノールからなるエッチング槽に浸した。約15分間のエッチング後、金の層内にはっきりしたパターンが観察された。金は接触領域では定量的にエッチング除去されたが、非接触領域では変化しなかった。同じスタンプ・パターンを用いて従来の(−)μCPによってパターン化された参照試料と比べると、反転したパターンが得られた。
【実施例2】
【0071】
のエタノール溶液ではなくのエタノール溶液を用いること以外は、実施例1に記述したように金の基板を作成した。実施例1に記述したように、プリンティング及びエッチングを実施した。約15分間のエッチング後、金の層内にはっきりしたパターンが観察された。金は接触領域では定量的にエッチング除去されたが、非接触領域では変化しなかった。同じスタンプ・パターンを用いて従来の(−)μCPによってパターン化された参照試料と比べると、反転したパターンが得られた。
【実施例3】
【0072】
実施例1に記述したように金の基板を作成し、の単分子層で被覆した。11ではなくN−ヨードコハク酸イミド14を含むインク溶液(0.02M)を用いたこと以外は、実施例1に記述したようにプリンティングを実施した。実施例1に記述したようにエッチングを実施した。約15分間のエッチング後、金の層内にはっきりしたパターンが観察された。金は接触領域では定量的にエッチング除去されたが、非接触領域では変化しなかった。同じスタンプ・パターンを用いて従来の(−)μCPによってパターン化された参照試料と比べると、反転したパターンが得られた。
【実施例4】
【0073】
ガラス・プレートを、モリブデン−クロムの密着層(20nm スパッタリングされたMoCr(97/3))、及び(スパッタリングされた)上部の200nm厚さのAPC層(APC=Ag(98.1%)、Pd(0.9%)、Cu(1.0%))で被覆した。約1×2cmのサイズを有する試料を、APCの表面を水、エタノール及びn−ヘプタンですすぐことによって洗浄した。さらにそれを3分間、アルゴン・プラズマ(0.25ミリバールAr、200W)に曝した。それをチオールのエタノール溶液(0.02モル)に浸して、APC上にのSAMを形成した。0.5〜24時間の浸漬時間について試験を行ったが、結果に差はなかった。この溶液から基板を取り出した後、エタノールで完全にすすぎ、過剰なチオール溶液をすべて除去した。基板を窒素ガス流中で乾燥させ、その後にはプリンティングの準備が整った。
【0074】
所望のレリーフ構造を有するPDMSスタンプを、少なくとも10分間、11をエタノールに溶かしたインク溶液(0.02M)に浸した。インク付けの時間を10分〜10時間の間で変化させたが、結果に差はなかった。インク付けの後、スタンプをインク溶液から取り出し、エタノールで完全に洗浄して過剰なインク溶液をすべて除去した。その後、少なくとも20秒間、スタンプを窒素ガス流中で乾燥させた。
【0075】
少なくとも10秒間軽い圧力を加えて、スタンプのパターン化された側面を作成されたAPC構造とコンフォーマルに接触させた。スタンプを取り外した後、基板を、硝酸(65%)、リン酸(85%)及び水(12/36/52)からなる酸性のエッチング槽に浸した。約2分間のエッチング後、基板内にはっきりしたパターンが観察された。APC及びMoCrは接触領域では定量的にエッチング除去されたが、非接触領域では変化しなかった。
【0076】
化合物の供給元及び合成
3−クロロ過安息香酸(11)、クメンヒドロペルオキシド(12)、過酸化水素(13)及びオクタデカンチオール(14)は、Aldrichから購入した。6−(16−メルカプトヘキサデシロキシ)キノリン塩酸塩(−HCl)及び11−ヒドロキシウンデカンチオール()は、下記のように合成した。
【0077】
6−(16−メルカプトヘキサデシロキシ)キノリン塩酸塩(−HCl)の合成
水酸化ナトリウム(0.77g、55〜65%、最低17.6mmol)をヒドロキシキノリン(3.09g、31.3mmol)とDMF40mLとの混合物に加える。混合物を終夜撹拌し、次いで(微量の臭化ヘキサデシルを含む)1,16−ジブロモヘキサデカン7.50g(19.5mmol)を加える。混合物を4日間撹拌し、次いで水及びトルエンで処理する。トルエン層を回転蒸発させ、残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィにかけて、6−16−ブロモヘキサデシルオキシ)−キノリン3.50g(7.81mmol、ヒドロキシキノリンベースで37%)が得られる。NMR(CDCl):1.1−1.6(m、26H)、1.85(m、2H)、3.4(t、2H)、4.05(t、2H)、7.0(m、1H)、7.35(m、2H)、8.0(m、2H)、8.75(m、1H)。
【0078】
水酸化ナトリウム(860mg、最低19.7mmol)とテトラヒドロフラン(TFH)25mLとの混合物に、チオ酢酸(2.12g、27.9mmol)を冷却しながら加える。1時間室温で撹拌した後、25mLのTHFに溶解させた先に得られた生成物を加え、混合物を終夜室温で撹拌し、次いで550℃で5時間加熱する。水及びトルエンで処理すると不純な生成物が得られ、それを100gのシリカゲル上でクロマトグラフィにかける。若干のtert−ブチルメチルエーテル(TBME)を含むトルエンと共に生成物が溶出する。生成物の断片を一緒にして回転蒸発させ、残留物をエタノールから再結晶させると薄褐色の固体2.81g(6.34mmol、81%)が得られる。NMR(CDCl):1.1−1.6(M、26H)1.85(m、2H)、2.3(s、3H)、2.85(t、2H)、4.05(t、2H)、7.0(m、1H)、7.35(m、2H)、8.0(m、2H)、8.75(m、1H)。
【0079】
この生成物を還流下で7時間、エタノール50mLと濃塩酸5mLとの混合物中で加熱する。冷却すると、生成物が沈殿する。濾過して90%メタノールで洗浄すると、所望の生成物2.40gが塩酸塩として得られる(5.49mmol、87%)。NMR(CDCl):1.1−1.6(m、27H)、1.85(m、2H)、2.5(q、2H)、4.1(t、2H)、7.25(d、1H)、7.65(dd、1H)、7.8(dd、1H)、8.65(d、1H)、8.8(m、2H)。
【0080】
1,16−ジブロモヘキサデカン
1,6−ジブロモヘキサン(137.4g、0.56mol)をTHF100mLに溶かした溶液を、THF300mLに溶かしたマグネシウム(27.2g、1.13mol)に冷却しながらゆっくりと加える(最大内部温度50℃)。混合物を65℃で2時間撹拌し、次いで温溶液として1,5−ジブロモペンタン(300g、1.30mol)とTHF250mLとTHFに溶かした0.1N−LiCuCl50mLとの混合物に4時間にわたって氷冷しながら加える(最大内部温度15℃)。混合物を50〜60℃で1時間加熱し、次いで冷却して、1,5−ジブロモペンタン(109g、0.47mol)、THF300mL、塩化リチウム1.30g、及び塩化第二銅2.00gを加える。
【0081】
1,6−ジブロモヘキサン(180g、0.73mol)をTHF250mLに溶かした溶液を、THF350mLに溶かしたマグネシウム(42g、1.75mol)に氷冷しながら加える(最大内部温度30℃)。混合物を終夜撹拌し、次いで50℃で3時間暖め、次いで温溶液として先の反応混合物に3時間にわたって氷冷しながら加える(最大内部温度20℃)。混合物を終夜撹拌し、次いでTHFの一部を除去するために回転蒸発させる。残りの懸濁液に対して、水及びTBMEを加える。層を分離し、有機層を水で洗浄し、次いで回転蒸発させる。残留物のクーゲルロール蒸留によって若干の不純物を含む生成物37.4g(97.3mmol、1,6−ジブロモヘキサンベースで7%)が得られる。生成物の一部(17g)を(−15℃まで冷却した)ヘプタンから2回再結晶させると、純粋な生成物7.5gが得られる。
【0082】
11−ヒドロキシウンデカンチオール()の合成
11−ブロモウンデカノール50gとチオ尿素18.3gと水11gとの混合物を、窒素雰囲気下で110℃の油浴中で2時間撹拌した。10%水酸化ナトリウム水溶液160mlを加えた後、同じ温度で2時間、撹拌を続けた。氷40g、その後濃塩酸溶液40mlを加えた。混合物をジエチルエーテル200mlで抽出した。その後、水150ml及び塩水150mlでエーテル溶液を抽出し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。ジエチルエーテルを蒸発させ、ヘキサン200mlから再結晶させた後、生成物29g(71%)が得られた。
【0083】
分子層材料と修飾剤との複数の異なる組み合わせが考えられ、本発明は特定の組み合わせに関して限定されるものではないことが、当分野の技術者には理解されるであろう。むしろ本発明は、前記自己組織化単分子層の分子と前記基板の最上面との間の相互作用の強さを変えるその能力に基づく修飾剤の選択にある。
【0084】
さらに先に言及された実施形態は、本発明を限定するものではなく、当分野の技術者には、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの代替実施形態の設計が可能になるであろうことに留意すべきである。特許請求の範囲では、括弧内に示された参照記号はいずれも、特許請求の範囲を限定するものと解釈すべきではない。「備えている」及び「備える」などの語は、任意の請求項又は全体として本明細書に記載されたもの以外の構成要素又はステップの存在を排除するものではない。構成要素の単数形による参照は、そうした構成要素の複数形による参照を排除するものではなく、逆も同様である。本発明は、複数の別個の構成要素を備えるハードウェアによって、また適切にプログラムされたコンピュータによって実施されてもよい。複数の手段を列挙する装置の請求項では、複数のこれらの手段がハードウェアの同一の部材によって実施されてもよい。ある特定の手段が互いに異なる従属項に引用されているからといって、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないというわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】マイクロコンタクト・プリンティング工程の主要なステップ、すなわちスタンプ複製、インク付け、プリンティング及び現像の概略図である。
【図2】ネガ型及びポジ型のマイクロコンタクト・プリンティング工程の概略図である。
【図3】プリンティング・ステップ中に圧力を加えることによって生じる、低い充填率を有するマイクロコンタクト・プリンティング用スタンプの圧迫(a)及びつぶれ(b)を概略的に示す図である。
【図4】本発明の例示的な実施形態による方法の一部を概略的に示す図である。
【図5】図5(a)、(b)は本発明の例示的な実施形態による方法におけるエッチング・ステップを概略的に示す図である。
【図6a】本発明の別の例示的な実施形態による方法において可能な堆積ステップを概略的に示す図である。
【図6b】本発明の別の例示的な実施形態による方法において可能な堆積ステップを概略的に示す図である。
【図7】実験に基づく実施例に使用される分子式及び命番方式を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフト・リソグラフィのパターン化工程によって基板上にパターン化された自己組織化単分子層を形成する方法であって、
a)前記パターン化された自己組織化単分子層の必要なパターンを画定するためのパターン化手段を提供すること、
b)前記基板の表面上に自己組織化単分子層を形成すること、
c)前記パターン化手段を前記基板の前記表面に適用することであって、前記パターン化手段が前記基板表面の選択された複数の領域に修飾剤を送達するように配置され、前記選択された複数の領域が前記必要なパターン又はそのネガに対応し、前記修飾剤が化学物質を含み、且つ前記選択された複数の領域で、前記自己組織化単分子層の分子と前記基板の前記表面との間の相互作用の強さを変えるように配置されること、並びに
d)ステップc)の後、その分子と前記基板の前記表面との間でより低い相互作用の強さを示す前記自己組織化単分子層の複数の領域を選択的に除去又は置換し、それによって前記必要なパターンを有する自己組織化単分子層を形成することを備える方法。
【請求項2】
前記パターン化手段が、前記パターン化された自己組織化単分子層の必要なパターンを画定するパターン化されたスタンプを備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パターン化手段が、実質的にパターン化されていないスタンプと、前記パターン化された自己組織化単分子層の必要なパターンを画定するマスクとを備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記修飾剤が、前記自己組織化単分子層の分子と前記基板表面との間の相互作用の強さを弱めるように選択される請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記修飾剤が、前記自己組織化単分子層の分子と前記基板表面との間の相互作用の強さを高めるように選択される請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
吸着によって前記基板上に前記自己組織化単分子層を形成させるのに十分な時間、分子の溶液に前記基板を浸す、或いは分子を含む雰囲気に前記基板を曝すことによって前記自己組織化単分子層が形成される前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
単分子層がそれによって形成されることになる分子を運ぶパターン化されていないスタンプに接触させることによって、前記基板上に前記自己組織化単分子層が形成される請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基板が、その上に提供された材料の追加層を有する基部を備え、前記自己組織化単分子層が前記追加層の上に提供される前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記必要なパターンに従って前記基板をエッチングして、前記追加層の選択された複数の部分を除去し、それによって前記基板上に追加のパターン化層を形成するステップをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記必要なパターンに従って前記基板の選択された複数の領域に材料を堆積させ、それによって前記基板上に追加のパターン化層を形成するステップをさらに含む請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記修飾剤が、前記自己組織化単分子層の分子と前記基板表面との間の相互作用の強さを変えるように選択された化学物質を含む請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記修飾剤が、前記自己組織化単分子層の分子間の相互作用の強さを、経時的に又は外部刺激に応じて変えるように選択された化学物質を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記外部刺激が電磁放射を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記外部刺激が紫外放射又は可視光を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記自己組織化単分子層がチオール分子を含む請求項1から14のいずれか一項に記載の方法
【請求項16】
前記修飾剤が、酸化剤若しくは還元剤、電子若しくは原子移動試薬、化学結合の形成若しくは切断を生じさせる試薬の1つ又は複数の種類の分子を含む請求項1から12、又は請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記スタンプがエラストマー材料で形成される請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記スタンプが実質的に電磁放射に対して透過性である請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項19】
前記スタンプがポリマーで形成される請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記スタンプがポリ(ジメチルシロキサン)で形成される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記修飾剤が、前記スタンプを形成する材料に対する親和性を有する化学物質を含む請求項2、請求項3、又は請求項17から請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の方法によって得られるパターン化された自己組織化単分子層をその上に有する基板。
【請求項23】
請求項9又は請求項10に記載の方法によって得られる追加のパターン化層をその上に有する基板。
【請求項24】
請求項1から21のいずれか一項に記載の方法を実施するように配置及び構成されているソフト・リソグラフィのパターン化装置。
【請求項25】
基板上の自己組織化単分子層の選択された複数の領域で、前記自己組織化単分子層の前記選択された複数の領域の分子と、前記自己組織化単分子層がその上に提供された前記基板の表面との間の相互作用の強さを変えるソフト・リソグラフィのパターン化工程のパターン化手段における、化学物質を含む修飾剤の使用であって、前記自己組織化単分子層の前記選択された複数の領域が、必要なパターン又はそのネガに対応する修飾剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−519226(P2007−519226A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539006(P2006−539006)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052253
【国際公開番号】WO2005/045524
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】