説明

基板上に材料を印刷するための方法

本発明は、感光性要素から作製される凸版印刷フォームを用いて、基板上に材料を印刷するための方法を提供する。本方法は、250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有するin−situマスクを感光性要素上に形成する工程と、不活性ガスおよび190,000〜100ppmの濃度の酸素を有する環境において、in−situマスクを通して上記要素を化学線に露光する工程と、露光された要素を処理して、250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する複数の浮出し面を有するレリーフ構造を形成する工程とを含む。印刷は、画像形成材料を複数の浮出し面に塗布し、画像形成材料を基板に転写するように接触させることによって行われる。本方法は、高解像度のグラフィック画像の印刷、ならびに基板上に画像形成材料の均一層を形成するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に材料を印刷するための方法、特に、基板に接触させる際に複数の浮出し面(raised surface)から材料を転写する凸版印刷フォームを用いて印刷する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷プレートが、波形のカートン箱から段ボール箱およびプラスチックフィルムの連続ウェブにいたる包装材料の印刷に広く用いられている。フレキソ印刷プレートは、インクが浮出し画像面から運ばれ、基板に転写される凸版印刷に用いられる。フレキソ印刷プレートは、米国特許第4,323,637号明細書および同第4,427,759号明細書に記載されるものなどの光重合性組成物から作製され得る。感光性要素は、一般に、支持体とカバーシートまたは多層カバー要素との間に介挿された光重合性組成物の固体層を有する。フレキソ印刷プレートは、化学線に露光されると架橋または硬化することができることを特徴とする。フレキソ印刷プレートは、いわゆるアナログワークフロー用の写真のネガまたは透明陽画(transparency)(例えば、ハロゲン化銀フィルム)などの像担持アートワークまたはテンプレートを介して、あるいはいわゆるデジタルワークフロー用の光重合性層の上方に予め形成された放射線不透過性領域を有するin−situマスクを介して、化学線で像様露光される。化学線露光は、通常、紫外線(UV)を用いて行われる。化学線は、透明領域を通って感光性要素に入り、透明陽画またはin−situマスクの黒色または不透過性領域に入るのを妨げられる。光重合性層における化学線に露光された領域は架橋および硬化し、および/または現像の際に用いられる溶剤に不溶になる。露光の際に透明陽画またはin−situマスクの不透過性領域下にあった、光重合性層の非露光領域は、硬化せず、および/または可溶性のままである。非露光領域は、洗浄溶液または熱で処理することによって除去され、印刷に適したレリーフ画像が残る。洗浄溶液で処理される場合、フレキソ印刷プレートは乾燥される。全ての所望の処理工程の後、フレキソ印刷プレートは次にシリンダに取り付けられ、印刷に用いられる。
【0003】
液晶表示装置(LCD)の構造の表面にポリイミド材料を被覆するのにフレキソ印刷のような印刷法が現在用いられている。ポリイミド材料は、液晶表示装置の配向層として用いられる。フレキソ凸版印刷フォームは、基板上にコーティングを形成するために、プレートにおけるポリイミド材料を転写する領域に400線毎インチ(LPI)および40%の画像を通常有するコーティングプレートとして基本的に用いられる。コーティングプレートは、基板の所定の領域に材料の均一なコーティング(すなわち層)を提供するように意図的に設計されたレリーフパターンを有する、プレートまたはシリンダなどの印刷フォームである。凸版印刷フォームは、コーティング材料を基板に転写する複数の狭い間隔で配置された微細な浮出し面要素から構成される、1つまたは複数の領域、すなわち、コーティング領域を有し;かつコーティング材料を捕集せず、基板における被覆されていない領域を形成する1つまたは複数の凹型領域を有するレリーフ構造(relief structure)を含む。転写の際、複数の狭い間隔で配置された微細な浮出し面要素が、基板上にコーティング材料の均一層を、すなわち、基板の接触された領域上にコーティング材料の連続層を形成する。凸版印刷フォームは、1つまたは複数のコーティング領域から基板へとコーティング材料を転写して、被覆領域および非被覆領域のパターンを形成し、ここで、被覆領域は各々、基板上にコーティング材料の均一層を有する。複数の狭い間隔で配置された微細な浮出し面要素を有する凸版印刷フォームは、所定の規格を満たし、基板上の所定の領域にコーティング材料の均一層のパターンを形成するのに必要である。複数の狭い間隔で配置された微細な浮出し面要素の代わりに単一の浮出し面要素から構成される1つまたは複数のコーティング領域を有する凸版印刷フォームを形成することが可能であるが、単一の浮出し面要素によるコーティング材料の転写は、基板上の被覆領域にコーティング材料の十分に均一な層を形成しない。
【0004】
現在、ポリイミド材料を被覆するための凸版印刷プレートまたは印刷フォームは、感光性前駆体から2つの方法のいずれかによって製造される。凸版印刷フォームを製造するための1つの方法は、例えば、CYREL(登録商標)NOW(本願特許出願人製)光重合性印刷前駆体などのシートプレート材料を用い、第2の方法は、例えば、Asahi APR K−11などの液体プレート製造ワークフローを用いる。シートプレートの製造は、上述したハロゲン化銀の写真のネガを介してプレートを像様露光するのに用いられるアナログワークフローを用いた、従来の固体プレート作製工程を含む。液体プレートの製造は、ガラス基板上に画像のクロムコーティングをエッチングすることによって中間体を作製することを含む従来の多段階の液体プレート作製プロセスを含む。
【0005】
他の印刷用途において、インクが乾燥する前または乾燥した後に印刷物が形成された後、印刷される基板の所定の領域上にコーティングを塗布するのが通常である。このプロセスは、一般に、スポットコーティングまたはパターンコーティングと呼ばれる。スポットコーティングは、広い周囲領域におけるコーティングのない部分によって囲まれた小さな領域にコーティングを塗布することである。あるいは、「パターンコーティング」と呼ばれるコーティングは、小さな所定の領域にコーティングを施さずに、広い領域に塗布され得る。印刷される材料を保護するため;インクがまだ湿っているかまたは粘着性があるとき、シートが重ねて置かれるときに印刷される材料が他のシートに付着するのを防ぐため;および耐擦り傷性を向上させるため、などの様々な理由でコーティングが塗布され得る。コーティングはまた、美観上の理由で所定の領域に塗布され得る。例えば、コーティングは、強調を与えるために、他の領域を艶なしのままにしてシートの所定の領域に光沢を与えるのが望ましい場合がある。さらに、印刷折り畳み式カートン箱の所定の領域が接着剤で被覆されなければならないとき、接着剤被覆領域を避けるのにパターンコーティングが用いられる。本明細書において、凸版印刷フォームは、コーティング材料を転写し、基板上に好適なコーティング層を形成するための複数の狭い間隔で配置された微細な浮出し面要素から構成される1つまたは複数のコーティング領域を有するレリーフ構造を含むべきである。
【0006】
固体プレートおよび液体プレートの両方のワークフローは、中間体、すなわち、写真のネガおよびクロムでパターニングされたガラスを作製することを含む。アナログワークフローには、フォトツールの作製が必要であり、これは、別個の処理機器および化学現像溶液を必要とする、複雑でコストおよび時間のかかるプロセスである。さらに、フォトツールは、温度および湿度の変化により、寸法がわずかに変わり得る。同じフォトツールでも、異なる時間または異なる環境で用いられると、異なる結果を生じ得る。また、フォトツールとプレートとの間の密着を確実に保つようにフレキソ印刷フォームを製造するとき、フォトツールの使用には特別な注意および取り扱いも必要である。特に、フォトツールおよびプレートの両方を特殊な材料とともに露光装置に入れる際には、確実に密着させるために、真空生成時の空気の封入を最小限に抑えるように注意が必要である。さらに、フォトポリマープレートおよびフォトツールの全ての表面が確実に清浄でちりや埃がないように注意を払わなければならない。このような異物が存在すると、フォトツールとプレートとの間の密着の欠如ならびに画像アーチファクト(image artifact)が生じるおそれがある。
【0007】
アナログワークフローの代替は、デジタルワークフローと呼ばれ、別個のフォトツールの作製を必要としない。前駆体としての使用およびデジタルワークフローにおいてin−situマスクを形成することができるプロセスに適した感光性要素が、米国特許第5,262,275号明細書;米国特許第5,719,009号明細書;米国特許第5,607,814号明細書;米国特許第6,238,837号明細書;米国特許第6,558,876号明細書;米国特許第6,929,898号明細書;米国特許第6,673,509号明細書;米国特許第5,607,814号明細書;米国特許第6,037,102号明細書;および米国特許第6,284,431号明細書に記載されている。前駆体または前駆体との集合体は、赤外線に感受性でかつ化学線に対して不透過性の層を含む。赤外線感受性層は、レーザー放射線で像様露光され、それによって、赤外線感受性材料が、集合体の重畳されたフィルムから除去され、またはそのフィルムに/そのフィルムから転写されて、光重合性層に隣接し、放射線不透過性領域および透明領域を有するin−situマスクが形成される。前駆体は、(真空が不要なため)大気中酸素の存在下で、in−situマスクを介して化学線に露光される。さらに、一つには像様露光の際に大気中酸素が存在することにより、フレキソ印刷フォームは、アナログワークフローにおいて形成されるレリーフ構造と異なるレリーフ構造を有する(両方のワークフローでは、同じサイズのマスク開口に基づいている)。デジタルワークフローにより、最上面(すなわち、印刷面)の表面領域がレリーフ構造に対応するin−situマスクの開口よりかなり小さいレリーフ構造に浮出し要素(すなわち、ドット)が形成される。デジタルワークフローにより、ドット(すなわち、浮出し面要素)の構造が異なるレリーフ画像が得られ、この構造は通常、より小さく、丸みを帯びた上部、および湾曲した側壁形状を有し、これはドット鮮鋭化効果(dot sharpening effect)と呼ばれることが多い。アナログワークフローによって生成されるドットは、通常、円錐形であり、平坦な上部を有する。デジタルワークフローによって形成されるレリーフ構造は、白色へと徐々に色が薄くなるより微細な印刷ハイライトドット、印刷可能な色調の範囲の増大、および鮮明な線画(linework)などのプラスの印刷特性をもたらす。したがって、デジタルワークフローは、その使用し易さおよび望ましい印刷性能のため、フレキソ印刷フォームを製造するための望ましい方法として広く受け入れられている。しかし、全ての最終使用用途にとって、このドット鮮鋭化効果が有益なものと考えられているわけではない。
【0008】
フリーラジカル光重合プロセスにおいて、露光の際に酸素(O2)が存在することにより、反応性モノマー分子の間の一次反応が起こる一方、フリーラジカル分子が酸素と反応する副反応が誘発されることになることが当業者によって知られている。この副反応は、重合または架橋された分子の形成の速度を遅らせるため、阻害(すなわち、酸素阻害)として知られている。多くの先行の開示は、化学線への光重合露光が、空気中(デジタルワークフローの場合のように)、真空下(アナログワークフローの場合のように)、または不活性環境で起こるのが望ましいことを認めている。多くの場合、不活性環境に適した不活性ガスとして窒素が挙げられる。窒素環境は、大気中よりかなり少ない酸素を含有する環境から全ての酸素が除去された程度まで、または酸素が約10ppm未満の環境であることが示唆される。酸素不純物濃度レベルが10ppm未満の窒素は、市販品として容易に入手可能である。
【0009】
写真のネガの中間体の作製、ならびにコーティング材料を転写して基板上にコーティング材料の層を形成することができる固体プレートの製造におけるアナログワークフローからデジタルワークフローへの移行に関連する、コストおよび時間がかかり問題のあるプロセス工程を解消することが必要とされている。しかしながら、大気中酸素の存在下での従来のデジタル露光に関連するドット鮮鋭化効果は、高い線数解像度の画像形成によって生成されるレリーフ構造を有する必要があるコーティングプレートなどの凸版印刷フォームにとって不都合となる。デジタルワークフローにおける像様露光が、重合を阻害する大気中酸素の存在下で行われるため、浮出し面要素のドット構造は、(アナログワークフローによって製造されるもの、ならびにデジタルマスク画像の対応する開口と比較して)かなり低減された印刷可能な表面領域を有する。従来のデジタルワークフローによって作製される印刷可能なドット面領域の低減の程度は、印刷フォームのコーティング領域の複数の浮出し印刷要素が、コーティング材料の均一層が基板上に形成され得るほど十分に近接していないようになっている。印刷フォームが基板上のコーティング材料の層の所望の均一性を与えるために、凸版印刷フォームの所与のコーティング領域における浮出し面要素の数および浮出し要素の互いに対する近接は、高いスクリーン線数解像度、すなわち、250線毎インチ超に保たれなければならない。上記で説明したように、基板上にコーティング材料の均一層を転写し、形成するために、印刷フォームが、高い解像度のレリーフパターン、すなわち、複数の狭い間隔で配置された微細な浮出し面要素を有するコーティング領域を有する必要がある。さらに、デジタルワークフローによって作製される印刷可能なドット面領域の低減の程度は、in−situマスクのより大きな開口を形成することによって補うことができない。その理由は、各開口が、所望の線数/ドット解像度を関連する画素の大きさより大きい必要があり得、隣接する画素に重なり得るためである。その結果、従来のデジタルワークフローによって、コーティング材料を転写し、基板上にコーティング材料の均一な連続層を形成するのに十分なコーティング領域に複数の狭い間隔で配置された微細な浮出し面要素(すなわち、ドット)を有する凸版印刷フォームを製造することができない。
【0010】
他の最終使用用途において、所望の文書または他の物において高いスクリーン線数解像度の画像および/またはテキストのパターンを正確に再現する、印刷に適したフレキソ印刷フォーム用のレリーフ面を形成するのが望ましい。偽造防止印刷は、高解像度画像の再現に対する要求が高まっているこのような最終使用用途の1つである。偽造防止印刷は、文書またはオブジェクトのねつ造、改ざん、または偽造を防ぐために、紙幣、パスポート、改ざん防止ラベル、株券、郵便切手、および身分証明書などの物の印刷に対処するものである。偽造防止印刷に用いられる高解像度画像の一例は微細印刷である。微細印刷は、極小のテキストの使用を含み、通貨および銀行小切手に用いられることが多い。テキストは、一般に、肉眼で識別できないほど小さい。このような高いスクリーン線数解像度の印刷用途において、凸版印刷フォームの所与のコーティング領域における浮出し面要素は、浮出し面要素の各々が、基板、文書、または他の物の上に所望の微細な画像パターンを正確に再現できるほど十分微細でよく構成されているように、高いスクリーン線数解像度、すなわち、250線毎インチ以上で形成されるべきである。本明細書において、アナログワークフローによって形成されるレリーフ構造と同様または同じ印刷フォームでレリーフ構造を提供しながら、容易さおよび簡単さのためデジタルワークフローを用いて印刷フォームを製造するのが望ましい。
【0011】
したがって、凸版印刷フォームの製造にデジタルワークフローを使用する必要性は、印刷フォームが、アナログワークフローによって製造される浮出し面要素のサイズおよび近接と同様の高い線数解像度の浮出し面要素を有する必要性と両立しない。このため、コストがかかりかつ問題のある別個の中間体の形成を解消するためにデジタルワークフローを用いる、感光性前駆体要素から凸版印刷フォームを製造する方法に対する必要性が生じている。凸版印刷フォームは、凹型領域および基板上に印刷領域のパターンを形成するための浮出し領域から構成されるレリーフ構造を有する必要があり、ここで、各浮出し領域は、基板上の印刷領域に所望の画像を形成するために、インク、ワニス、配向材料、または他のコーティング材料などの画像形成材料を転写することができる複数の狭い間隔で配置された微細な浮出し面要素から構成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
基板上に材料を印刷するための方法は、i)光重合性層に隣接し、化学線に対して不透過性の領域を貫く複数の開口を有するin−situマスクを形成する工程であって、開口が250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する工程と;ii)不活性ガスおよび190,000百万分率(ppm)〜100ppmの濃度の酸素を有する環境において、マスク開口を介して、光重合性層を化学線に露光する工程と;iii)工程ii)から得られる要素を処理して、250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する複数の浮出し面を有するレリーフ構造を形成する工程とを含むがこれらに限定されない工程を含む、光重合性層を有する感光性要素から凸版印刷フォームを提供する工程を含む。この印刷方法は、複数の浮出し面に材料を塗布する工程と;材料を複数の浮出し面から基板に接触させ、それによって材料を基板に転写する工程とを含む。
【0013】
別の実施形態は、250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する複数の浮出し面を含むレリーフ構造を有するエラストマー層を含む凸版印刷フォームを作製するための方法を提供する。本方法は、バインダー、エチレン性不飽和化合物、および光開始剤を含有する光重合性組成物のエラストマー層を含む感光性要素を提供する工程と;光重合性層に隣接し、化学線に対して不透過性の領域を貫く複数の開口を有するin−situマスクを形成する工程であって、開口が250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する工程と;不活性ガスおよび190,000百万分率(ppm)〜100ppmの濃度の酸素を有する環境において、マスク開口を介して、光重合性層を化学線に露光する工程と;得られる要素を処理して、250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する複数の浮出し面を有するレリーフ構造を形成する工程とを含むがこれらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プレートを作製するのに用いられるマスクの開口面積に対する、プレートのドット面積の測定値のグラフであり、パーセンテージで表され、対照のプレートおよび実施例1に記載されるように作製される本発明のプレートの結果を示している。
【図2】デジタルマスク(すなわち、in−situマスク画像)、デジタルプレート(すなわち、対照のプレート)、および実施例1に記載されるように作製される酸素を調整されたプレートのドット面積の範囲の写真の再現である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明の全体を通して、同様の参照符号は、図面の全ての図において同様の要素を指す。
【0016】
本発明は、基板上に材料を印刷するための方法、特に、基板に接触させる際に複数の浮出し面から材料、すなわち、画像形成材料を転写する凸版印刷フォームを用いて印刷する方法である。凸版印刷フォームは、基板上に画像形成材料の1つまたは複数の領域のパターンを形成するための凹型領域および浮出し領域から構成されるレリーフ構造を有し、ここで、各浮出し領域は、基板上の印刷またはコーティング領域において画像形成材料の所望の画像を形成することができる複数の微細なよく構成された浮出し面要素から構成される。ある実施形態において、基板上に形成されるパターンは、コーティング材料と呼ばれ得る画像形成材料の1つまたは複数のコーティング領域と、1つまたは複数の非コーティング領域とを含む。本発明の方法のこの実施形態において、凸版印刷フォームによって転写される所望の画像は、基板上の所定の領域、すなわち、コーティング領域におけるコーティング材料の層である。他の実施形態において、基板上に形成されるパターンは、印刷材料と呼ばれ得る画像形成材料の1つまたは複数の印刷領域と、1つまたは複数の非印刷領域とを含む。本発明の方法のこの実施形態において、1つまたは複数の印刷領域において凸版印刷フォームによって転写される所望の画像は、レリーフ構造の複数の浮出し面要素から再現される中間調の図、テキスト、および/または線特徴を含むグラフィック情報の画像である。
【0017】
基板上に画像形成材料を印刷するための本発明の方法は、in−situマスクを有する感光性前駆体要素から作製される凸版印刷フォームを使用する。感光性前駆体要素は、バインダー、エチレン性不飽和化合物、および光開始剤を含む光重合性組成物の層を有する光重合性印刷要素である。凸版印刷フォームは、不活性ガスおよび大気中酸素より少ない濃度の酸素を有する環境において、in−situマスクを介して感光性要素を化学線に像様露光することによって形成される複数の浮出し面要素から構成される浮出し領域のパターンを含む。ほとんどの実施形態において、in−situマスクを介した像様露光の際の酸素の濃度は、190,000百万分率(ppm)〜100ppmである。不活性ガスおよび特定の酸素含量を有する環境において、250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する開口から構成されるin−situマスクを介した感光性要素の像様露光は、複数の微細なよく構成された浮出し面要素を有する印刷フォームを提供し、各浮出し面要素は、基板上の印刷またはコーティング領域に所望の画像を形成するのに適した画像形成材料を転写するための上面領域を有する。
【0018】
複数の微細なよく構成された浮出し面要素を有する凸版印刷フォームがデジタルワークフローのようなプロセス(すなわち、修正されたデジタルワークフロー)で得られることが意外かつ予想外にも分かっており、このプロセスにおいて、感光性要素は、不活性ガスおよび大気中より少ないが完全な不活性ガス環境より多い濃度の酸素を有する環境において像様露光される。浮出し面要素は、複数の浮出し面要素の浮出し面要素の各々から画像形成材料を個々に基板に転写、すなわち印刷することによって、250線毎インチ以上の高解像度画像が基板上に再現され得るほど十分に微細でよく構成されている。本発明の方法は、画像形成材料のグラフィック情報から構成される高解像度画像の基板への印刷を提供する。本発明の方法は、微細なよく構成された浮出し面要素から構成される浮出し印刷領域を有する印刷フォームを提供し、各浮出し面要素は、その円錐形状によってよく構成され、基板上に所望の高解像度画像を正確に再現するのに十分な平坦またはほぼ平坦な上面領域を有する。さらに、デジタルワークフローのようなプロセスが、複数の浮出し面要素が基板上にコーティング材料の均一層を印刷、すなわち被覆することができるほど十分に互いに近接して微細な浮出し面要素を形成することができることは意外かつ予想外である。本発明は、デジタルワークフロー、さらにはアナログワークフローの従来の方法によって作製される凸版印刷フォームを上回る、基板上の画像形成材料の層の均一性を向上させる能力を有する凸版印刷フォームも提供する。もはや、光重合性層に対する酸素阻害効果によって制限されるデジタルワークフローによって製造される凸版印刷フォームにおけるレリーフ構造ではない。本発明は、印刷フォーム上に浮出し領域のレリーフを形成する能力を提供し、これは実質的に、特に浮出し面要素(例えば、中間調ドット)のサイズに対するマスクの開口のサイズについての、in−situマスクの再現である。本発明はまた、アナログワークフローに関するコストおよび製造上の不都合を回避し、完全な不活性環境を確立する困難を回避しつつ、デジタルワークフローの効率を十分に生かすものである。
【0019】
感光性要素から凸版印刷フォームを提供するための方法は、光重合性層に隣接するin−situマスクを形成する工程と、不活性ガスおよび190,000〜100百万分率(ppm)の濃度の酸素を有する環境において、in−situマスクを介して、感光性要素の光重合性層を化学線に露光する工程と、露光された要素を処理して、印刷するための浮出し領域および凹型領域のパターンを有する凸版印刷フォームを形成する工程とを含む。感光性要素は、少なくとも、バインダー、エチレン性不飽和化合物、および光開始剤から構成される光重合性組成物の層を含む。ほとんどの実施形態において、光重合性層は、支持体に接しているかまたは隣接している。本発明に使用するための感光性要素は、感光性要素が光重合性層に接してまたは隣接してin−situマスクを有することができる限り、限定されない。in−situマスクは、化学線に像様露光するための感光性要素と一体またはほぼ一体である不透過性領域および透過性領域の画像であり、光重合性層へのマスクの接触を確実にするために真空を必要としない。in−situマスクにより、凸版印刷フォームを作製するとき、別個のフォトツールを生成すること、および感光性層へのフォトツールの接触を確実にするために真空を使用することに付随する欠点が避けられる。
【0020】
本方法は、光重合性層に隣接し、化学線に対して不透過性の領域を貫く複数の開口を有するin−situマスクを形成する工程であって、開口が250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する工程を含む。マスクが光重合性層における支持体と反対側の表面上に形成されるかまたはその上方に配置されるとき、in−situマスク画像は光重合性層に隣接している。マスクは、不透過性領域、および透過性または「透明」領域の開口を含む画像である。マスクの不透過性領域は、下の光重合性材料が放射線に露光されるのを防ぐ(すなわち、化学線不透過性領域)ため、光重合性層における暗色領域で覆われる領域は重合しない。マスクの「透明」領域は、光重合性層を化学線に露光し、光重合性層の下部を重合または架橋する。マスクの透明領域は、化学線に対して不透過性の領域を通る複数の開口を形成する。感光性要素のマスク画像は、凸版印刷フォームのための、浮出し領域、すなわち印刷領域のパターンのレリーフ構造を最終的に形成する。
【0021】
in−situマスクが化学線不透過性材料を用いて形成される方法は限定されない。in−situマスクは、レーザー放射線を用いたデジタルダイレクト刷版方法(デジタル方法またはデジタルワークフローと呼ばれることが多い)、および化学線に感光性要素を像様露光する前に行われるインクジェット塗布を含む、任意の好適な方法によって生成され得る。化学線不透過性層は、レーザー放射線、通常、赤外レーザー放射線が、感光性要素用の画像のマスクを形成するのに用いられるデジタルダイレクト刷版画像技術に(従来の画像透明陽画またはフォトツールの代わりに)用いられる。一般に、in−situマスク形成のデジタル方法は、レーザー放射線を用いて、感光性要素における支持体と反対側の表面から放射線不透過性材料を選択的に除去するかまたはその表面に転写する。マスク画像を形成するデジタル方法は、像様露光の前に感光性要素を作製するための1つまたは複数の工程を必要とする。
【0022】
一実施形態において、感光性要素は、最初に、光重合性層における支持体と反対側の表面上またはその上方に配置される化学線不透過性層を含み、レーザー放射線は、放射線不透過性層を像様に除去し、すなわち、融除し(ablate)、または蒸発させて、in−situマスクを形成する。放射線不透過性層における感光性要素から除去されなかった部分のみが要素上に残ってマスクが形成されることになる。
【0023】
別の実施形態において、感光性要素は、化学線不透過性層を最初は含まないであろう。放射線不透過性層を有する別個の要素は、放射線不透過性層が感光性要素における支持体と反対側の表面に隣接するように、感光性要素とともに集合体を形成し得る。集合体は、レーザー放射線で像様露光されて、放射線不透過性層を選択的に転写し、または放射線不透過性層の接着バランスを選択的に変更し、光重合性層上またはその上方に配置されるマスク画像を形成する。この実施形態において、放射線不透過性層の転写された部分のみが感光性要素に存在し、in−situマスクを形成する。
【0024】
インクジェット塗布デバイスが250lpi以上のインク塗布能力を有することを条件として、デジタルマスク形成は、感光性要素にインクジェットインクの形態の放射線不透過性材料を像様塗布することによって行うこともできることが考えられる。インクジェットインクの像様塗布は、光重合性層上に直接行うか、または感光性要素の別の層上の光重合性層の上方に配置させることができる。
【0025】
in−situマスクを形成するための別の考えられる実施形態は、別個のキャリア上に放射線不透過性層のマスク画像を形成することによる。ある実施形態において、別個のキャリアは、放射線不透過性層を含み、放射線不透過性層は、レーザー放射線に像様露光されて、放射線不透過性材料が選択的に除去され、画像が形成される。次に、キャリア上のマスク画像は、光重合性層における支持体と反対側の表面に熱および/または圧力を加えることによって転写される。光重合性層は、通常、粘着性であり、転写された画像を保持することになる。次に、別個のキャリアは、像様露光の前に要素から除去され得る。
【0026】
ある実施形態において、マスクを形成するのに用いられるレーザー放射線は赤外レーザー放射線である。赤外レーザー露光は、750〜20,000nmの範囲で放射する様々なタイプの赤外レーザーを用いて行われ得る。780〜2,000nmの範囲で放射するダイオードレーザーおよび1064nmで放射するNd:YAGレーザーを含む赤外レーザーが好ましい。感光性要素から化学線不透過性層を像様に除去するための赤外レーザー露光のための好ましい装置および方法は、Fanらによって、米国特許第5,760,880号明細書および同第5,654,125号明細書に開示されている。in−situマスク画像は、化学線への全露光の次の工程のために感光性要素上に残る。
【0027】
ある場合には高解像度または微細精密(fine−detail)グラフィック画像を印刷することができ、他の場合には十分な数の浮出し面要素を互いに狭い間隔で配置して、基板上に画像形成材料の均一なコーティング層を形成することができるほど十分に微細に個々の浮出し面要素を形成することができるように、in−situマスクの複数の開口は、250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する。in−situマスクの複数の開口が250線毎インチ未満のスクリーン線数解像度を有する場合、個々の浮出し面要素がこれまでのように形成されるが、好適な高解像度のグラフィック画像を印刷するのに十分微細には形成されない。特に一実施形態では、250線毎インチ未満のスクリーン線数解像度で、個々の浮出し面要素は、基板上にコーティング材料の均一層を形成するのに十分な数および近接を有さないことになる。in−situマスクの複数の開口の、250線毎インチ(lpi)以上のスクリーン線数解像度は特に限定されない。従来のスクリーン線数解像度のマスクスクリーン線数解像度中間体が可能であり、用いられ得るため、本発明の方法に使用可能なマスクのスクリーン線数解像度は、300lpi、350lpi、400lpi、および600lpiといった従来のスクリーン線数解像度を含むが、これらに限定されない。
【0028】
コーティング材料を印刷して基板上に材料の層を形成するある実施形態において、マスクに形成される開口は、20〜80%の範囲のドット面積を有する。ある他の実施形態において、マスクに形成される開口は、30〜60%の範囲のドット面積を有する。均一層を被覆するために、ほとんどの場合、浮出し面要素の各々のマスク開口のドット面積は、コーティング材料を印刷することになる任意の所与の浮出し領域について同じかまたはほぼ同じである。用いられるマスク開口の特定のドット面積の選択は、少なくとも、被覆される特定の材料の特性、所望のコーティング厚さ、および基板に左右されることになる。本発明の方法を用いて、テキスト特徴、線特徴、および中間調の図を含み得る高解像度のグラフィック画像を印刷する実施形態において、マスクに形成される開口は、2〜99%の範囲であり得るドット面積を有する。浮出し印刷領域の浮出し面要素の各々のドット面積は、印刷されるグラフィック画像の要件に応じて変わることになる。
【0029】
凸版印刷フォームを作製する方法の次の工程は、in−situマスクを介して、感光性要素を化学線に全露光すること、すなわち、要素の像様露光である。化学線への感光性要素の像様露光は、不活性ガスおよび190,000〜100百万分率(ppm)の酸素濃度の存在を含む環境において行われる。不活性ガスは、感光性要素との反応を示さないかまたは低い反応速度を示し(すなわち、重合反応に対して不活性)、露光環境中の酸素と置き換えることができる気体である。好適な不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、およびそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態において、不活性ガスは窒素である。
【0030】
不活性ガスおよび190,000〜100ppmの酸素濃度の特定の環境における感光性要素の像様露光により、アナログワークフローで作製され得る印刷フォームに形成されるインク保持上面領域と構造が類似しているインク保持上面領域を各々が有する複数の浮出し面要素のレリーフ構造が印刷フォーム(処理後)に形成される。すなわち、本発明の方法にしたがって作製される凸版印刷フォームにおける浮出し面要素の上面領域は、平坦またはほぼ平坦であり、要素が大気中酸素の存在下で露光される従来のデジタルワークフローに特有の丸みを帯びていない。さらに、不活性ガスおよび190,000〜100ppmの酸素濃度の存在下でのin−situマスクを介した感光性要素の像様露光は、凸版印刷フォームの印刷領域が材料の均一コーティングを基板上に印刷または形成し得るように、複数の個々の浮出し面要素を有する印刷領域を互いに十分に近接して形成する能力を提供する。不活性ガスおよび190,000〜100ppmの酸素濃度の存在下でのin−situマスクを介した感光性要素の像様露光は、マスク形成にデジタルワークフローを使用するのを可能にしつつ、酸素阻害によって引き起こされるドット鮮鋭化効果に対処する。従来のデジタルワークフロー方法は、78%の窒素、約21%の酸素、各々が1%未満のアルゴンおよび二酸化炭素、ならびに微量の他の気体である空気中で感光性要素を化学線に像様露光する。一実施形態において、感光性要素は、像様露光されている表面に対して環境に対するバリアとして働き得るさらなる層を、in−situマスクの上部に全く含まない。
【0031】
一実施形態において、感光性要素は、化学線に対して透過性であり、露光ユニットの床に設置するように構成された筺体またはチャンバに設置され得る。筺体のこのような一実施形態は、2009年1月21日に出願の米国特許出願第12/356752号明細書に記載されている。一実施形態において、筺体は、外部環境(室内条件)から密閉可能であり、不活性ガスを筺体中に導入するための入口および筺体中に初めからある空気をパージするための出口を含む。筺体内の酸素の濃度を測定するための計測器が、出口に配置され得る。
【0032】
筺体中の酸素濃度が190,000ppm以下に達した後のある実施形態において、像様露光が開始され、不活性ガスを筺体中に連続的に導入することによって、筺体中の酸素濃度は、像様露光の間、連続的に低減される。像様露光は、酸素の濃度が190,000ppm(19%)以下であるとき開始することができ、酸素濃度が5000ppm以下まで減少する際に継続する。他の実施形態において、像様露光は、酸素濃度が1000ppmであるとき開始することができ、酸素濃度が約100ppmに達するまで継続する。ある実施形態において、露光の際の感光性要素の環境は、像様露光の開始時の酸素濃度と像様露光の終了時の酸素濃度との平均である酸素の濃度を有する。他の実施形態において、像様露光の際の感光性要素の環境は、全露光時間のうちの時間の割合に基づいた酸素濃度の加重平均である酸素の濃度を有する。ある実施形態において、環境は、80,000ppm以下の平均酸素濃度を有する。他の実施形態において、環境は、30,000ppm以下の平均酸素濃度を有する。筺体中の酸素濃度が190,000ppm以下に達した後のある実施形態において、像様露光が開始され、筺体の環境中の酸素濃度が、不活性ガスおよび所望の濃度の酸素の組合せを連続的にパージすることによって、保たれるかまたはほぼ保たれる。
【0033】
本発明の感光性要素は、in−situマスクを介して好適な線源からの化学線に露光される。化学線の露光時間は、化学線の強度およびスペクトルエネルギー分布、感光性要素からの化学線の距離、所望の画像の解像度、ならびに光重合性組成物の性質および量に応じて、数秒間から数分間まで変わり得る。露光温度は、好ましくは周囲温度かまたはそれよりわずかに高い温度、すなわち、約20℃〜約35℃である。露光は、露光領域を、支持体まで、または背面露光層、すなわちフロア(floor)まで架橋するのに十分な持続時間を有する。像様露光時間は、通常、バックフラッシュ露光時間よりはるかに長く、数分間から数十分間の範囲である。
【0034】
化学線源は、紫外線および可視光波長域を含む。特定の化学線源の適合性は、フレキソ印刷プレートを作製するのに用いられる開始剤および少なくとも1種のモノマーの感光性によって決定される。ほとんどの一般的なフレキソ印刷プレートの好ましい感光性は、比較的良好な室内光安定性を与えるため、スペクトルの紫外線域および遠紫外線域にある。好適な可視光および紫外線源の例としては、炭素アーク、水銀蒸気アーク、コンテント蛍光灯(content fluorescent lamp)、電子閃光ユニット、電子線ユニット、レーザー、および写真用投光ランプ(photographic flood lamp)が挙げられる。業界標準の放射線源の例としては、Sylvania 350 Blacklight蛍光灯(FR48T12/350 VL/VHO/180、115w)、およびPhilips UV−A 「TL」−シリーズ低圧水銀蒸気蛍光灯が挙げられる。ある実施形態において、水銀蒸気アークまたは太陽灯を用いることができる。他の実施形態において、高紫外線含有蛍光灯を、感光性要素から約1〜約10インチ(約2.54〜約25.4cm)の距離で用いることができる。これらの放射線源は、一般に、310〜400nmの長波長紫外線を放射する。
【0035】
ある実施形態において、凸版印刷フォームを作製するための方法は、背面露光またはバックフラッシュ工程を含む。これは、支持体を通した化学線へのブランケット露光である。これを用いて、光重合性層の支持体の側に、重合された材料の層、すなわちフロアを形成し、光重合性層を感光性にする。フロアにより、光重合性層と支持体との間の接着が向上し、プレートのレリーフの深さが規定される。バックフラッシュ露光は、他の画像形成工程の前、その後、またはその間に行うことができる。全(像様)化学線露光工程のための上述した従来の放射線源のいずれかを、バックフラッシュ露光工程に用いることができる。露光時間は、一般に、数秒間から数分間までの範囲である。ある実施形態において、感光性要素が製造されるとき、フロアが感光性要素に含まれてもよいため、別個のバックフラッシュ露光工程が不要になることがある。
【0036】
マスクを介した紫外線への全露光の後、感光性印刷要素は、光重合性層における非重合領域を除去するように処理され、それによってレリーフ面が形成される。処理工程によって、少なくとも、光重合性層における化学線に露光されなかった領域、すなわち、光重合性層の非露光領域または非硬化領域が除去される。エラストマーキャッピング層を除いて、通常、光重合性層に存在し得るさらなる層が、光重合性層の重合領域から除去または実質的に除去される。in−situマスクを有する感光性要素のある実施形態において、処理工程によって、マスク画像(化学線に露光された)および光重合性層の下部の非露光領域も除去される。
【0037】
感光性要素の処理は、(1)光重合性層を好適な現像液と接触させて非重合領域を洗い流す「湿式」現像および/または(2)光重合性層の非重合領域を溶融または軟化または流動させる現像温度まで感光性要素を加熱し、その後非重合領域を除去する「乾式」現像を含む。乾式現像は、熱現像とも呼ばれ得る。湿式処理と乾式処理との組合せを用いてレリーフを形成することができることも考えられる。
【0038】
湿式現像は、室温で行うことができるが、通常、約80〜100°Fで行われる。現像液は、有機溶剤、水溶液または半水溶液、および水であり得る。現像液の選択は、主に、除去される光重合性材料の化学的性質に左右されることになる。好適な有機溶剤現像液は、芳香族または脂肪族炭化水素および脂肪族または芳香族ハロ炭化水素溶剤、またはこのような溶剤と好適なアルコールとの混合物を含む。好適な半水溶性現像液は、通常、水および水混和性有機溶剤およびアルカリ性材料を含有する。好適な水溶性現像液は、通常、水およびアルカリ性材料を含有する。
【0039】
現像時間は、光重合性材料の厚さおよびタイプ、用いられる溶剤、ならびに機器およびその操作温度に基づいて変わり得るが、約2〜約25分間の範囲であるのが好ましい。現像液は、浸漬、噴霧およびブラシ塗布またはローラー塗布を含む任意の従来の方法で塗布され得る。ブラシ塗布補助具を用いて、要素の非重合部分を除去することができる。洗い流しは自動処理ユニットで行うことができ、自動処理ユニットでは、現像液および機械的ブラシ塗布作業を用いてプレートの非硬化部分を除去し、露光された画像およびフロアを構成するレリーフを残す。
【0040】
溶液中での現像による処理の後、凸版印刷プレートは、一般に拭き取られ、すなわち水分を拭き取られてから、強制空気または赤外線オーブンでより完全に乾燥される。乾燥時間および温度は、機器の設計、空気流量、プレート材料に基づいて変わり得るが、通常、プレートは、60℃で60〜120分間乾燥される。高温は、支持体が収縮して、これにより位置合わせ上の問題(registration problem)が生じるおそれがあるため、推奨されない。
【0041】
要素を熱処理する工程は、少なくとも1つの光重合性層(およびさらなる層)を有する感光性要素を、光重合性層の非硬化部分を液化、すなわち、軟化または溶融または流動させるのに十分な温度に加熱し、非硬化部分を除去する工程を含む。感光性組成物の層は、熱現像の際、部分的に液化可能である。すなわち、熱現像の際、非硬化組成物は、適度な処理または現像温度で軟化または溶融するはずである。感光性要素が、光重合性層上に1つまたは複数のさらなる層を含む場合、1つまたは複数のさらなる層も光重合性層のための許容できる現像温度の範囲で除去することが可能であることが望ましい(しかし必要である)。光重合性層の重合領域(硬化部分)は、非重合領域(非硬化部分)より高い溶融温度を有するため、熱現像温度では、溶融も軟化も流動もしない。非硬化部分は、米国特許出願公開第2004/0048199 A1号明細書に記載のような圧力下での空気流または液体流、特開昭53−008655号公報に記載のような真空、ならびに米国特許第3,060,023号明細書;米国特許第3,264,103号明細書;米国特許第5,015,556号明細書;米国特許第5,175,072号明細書;米国特許第5,215,859号明細書;米国特許第5,279,697号明細書;および米国特許第6,797,454号明細書に記載のような吸収材料との接触を含む任意の手段によって、組成物層の硬化部分から除去され得る。非硬化部分を除去するための好ましい方法は、要素の最外面を現像媒体などの吸収面と接触させて、溶融された部分を吸収するかまたは水分を取り去るかまたは拭き取ることによる。
【0042】
用語「溶融」は、高温に曝された組成物層の非照射(非硬化)部分が軟化し、吸収材料により吸収され得るほど粘度が低下する挙動を表すのに用いられる。しかしながら、本明細書全体を通して、用語「溶融」、「軟化」、および「液化」は、組成物が固体状態と液体状態との間の明確な転移温度を有し得るか否かにかかわらず、組成物層の加熱された非照射部分の挙動を表すのに用いられ得る。本発明の趣旨で組成物層を「溶融」するのに広い温度範囲が用いられ得る。プロセスの良好な動作の際、吸収は温度が低いほど遅くなり、温度が高いほど速くなり得る。
【0043】
感光性要素を加熱し、要素の最外面を現像媒体と接触させる熱処理工程は、光重合性層の非硬化部分が、現像媒体と接触される際にまだ軟質であるかまたは溶融状態にあるという条件において、同時または連続して行うことができる。少なくとも1つの光重合性層(およびさらなる層)は、伝熱法、対流法、輻射法、または他の加熱方法によって、非硬化部分を溶融させるのに十分であるが層の硬化部分を変形させるほど高くない温度に加熱される。光重合性層の上方に配置される1つまたは複数のさらなる層は、軟化または溶融または流動し、また、現像媒体によって吸収されてもよい。光重合性層の非硬化部分を溶融または流動させるために、感光性要素は、約40℃超、好ましくは約40℃〜約230℃(104〜446°F)の表面温度に加熱される。非硬化領域において溶融された光重合性層と現像媒体との密着をおおむね保つことによって、光重合性層から現像媒体への非硬化感光性材料の転写が起こる。まだ加熱された状態にある間に、現像媒体は、支持体層と接触している硬化された光重合性層から分離されて、レリーフ構造が現れる。光重合性層を加熱し、溶融(部分)層を現像媒体と接触させる工程のサイクルを、非硬化材料を十分に除去し、十分なレリーフの深さを形成するのに必要な回数だけ繰り返すことができる。しかしながら、好適なシステム性能のためにサイクルの回数を最小限にするのが望ましく、通常、光重合性要素は、5〜15サイクルにわたり熱処理される。光重合性層(非硬化部分が溶融されている間)への現像媒体の密着は、層と現像媒体とを押し付け合うことによって保たれ得る。
【0044】
現像媒体は、放射線硬化性組成物の非照射または非硬化部分の溶融または軟化または液化温度を超える溶融温度を有し、同じ操作温度で良好な引き裂き抵抗を有するように選択される。選択される材料は、加熱の際に感光性要素を処理するのに必要な温度に耐える。現像媒体は、現像材料、吸収材料、吸収ウェブ、およびウェブとも呼ばれ得る。現像媒体は、溶融されたエラストマー組成物に対する吸収性も有するべきである。現像媒体は、含まれる容量のうちのおおむねかなりの割合を空隙容量として含む、不織材料、製紙原料、繊維織物材料、連続気泡発泡体材料、多孔質材料から選択される。現像媒体は、ウェブまたはシートの形態であり得る。ある実施形態において、現像媒体は、ナイロンの不織ウェブまたはポリエステルの不織ウェブである。
【0045】
処理工程の後、感光性要素は、光重合プロセスが完全に行われ、このように形成されたフレキソ印刷プレートの印刷中および保管中の安定性を確実に保つために、均一に後露光され得る。この後露光工程は、像様の主露光と同じ放射線源を用いることができる。さらに、フレキソ印刷プレートの表面がまだ粘着性である場合、非粘着化処理が行われ得る。「仕上げ」とも呼ばれるこのような方法は、当該技術分野で周知である。例えば、フレキソ印刷プレートを臭素または塩素溶液で処理することによって粘着性を取り除くことができる。好ましくは、非粘着化は、長さが300nm以下の波長を有する紫外線源に露光することによって行われる。このいわゆる「光仕上げ」は、欧州特許出願公開第0017927号明細書および米国特許第4,806,506号明細書に開示されている。また、様々な仕上げ方法を組み合わせてもよい。通常、後露光および仕上げ露光は、両方の放射線源を有する露光デバイスを用いて感光性要素に対して同時に行われる。
【0046】
本発明は、不活性ガスおよび190,000ppm〜100ppmの酸素濃度を有する環境において、in−situマスクを介して、感光性要素を化学線に像様露光することによって修正されたデジタルワークフローを用いて凸版印刷フォームを作製するものである。
【0047】
凸版印刷フォームの作製における修正されたデジタルワークフローは、in−situマスクを形成する従来のデジタルワークフローの利点を提供し、複数の微細なよく構成された浮出し面要素を形成する能力も提供し、ここで、各浮出し要素は、かなり微細な円錐形状であり、上部が平坦であり、それによって従来のデジタル画像形成プロセスで通常起こるドット鮮鋭化効果を避ける。修正されたデジタルワークフローの本発明の方法は、アナログワークフローを用いて形成されるものと同様の形状を浮出し面要素に与え、複数の微細な浮出し面要素を形成し、所与の領域において個々の浮出し面要素を狭い間隔で配置する能力を与える。限られた酸素濃度を有する不活性ガスの存在下での像様露光の際の光重合およびその後の処理工程によって形成される印刷フォームの浮出し面の形状は、印刷フォームを製造するのに用いられるプロセスに基づいて異なることが示されている。特に、本発明の方法によって製造される浮出し面の形状は、従来のデジタルワークフロープロセスによって製造される浮出し面の形状と異なり、従来のアナログプロセスとある程度異なる。もはや、光重合性層に対する酸素阻害効果によって制限されるデジタルワークフローによって形成されるレリーフ構造ではない。本発明は、特に浮出し要素(すなわち、中間調ドット)のサイズに対するマスクの開口のサイズについて、実質的にin−situマスク画像の再現である、印刷フォームのレリーフ画像を形成する能力を提供する。
【0048】
前駆体の処理の後、得られる凸版印刷フォームは、印刷するための、フロアから浮出した複数の個々の面要素を有する少なくとも1つの浮出し領域と、非印刷領域である少なくとも1つの凹型領域とを含むパターンを形成するレリーフ構造を有する。250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する複数の開口を有するマスクおよび190,000ppm〜100ppmの酸素を有する不活性雰囲気中での像様露光により、互いに対して狭い間隔で配置され得る微細な個々に形成される浮出し面要素が(印刷領域中に)形成される。複数の浮出し面要素が個々に形成されるため、印刷領域は、それに応じて、各個々の浮出し面要素を囲む(光重合性材料が処理によって除去された)開口部も含む。複数の個々の浮出し面要素の浮出し面要素の各々は、基板上に印刷されるインクまたはコーティング材料などの画像形成材料を保持する上面領域を有する。印刷フォームの浮出し領域の複数の浮出し面は、250線毎インチ以上であり、かつマスクの開口を形成するのに用いられるスクリーン線数解像度に相当するスクリーン線数解像度を有する。印刷フォームの浮出し領域の複数の浮出し面の特徴サイズ、すなわち、ドットサイズは、印刷フォームに関連するin−situマスクの対応する開口と実質的に同じ、すなわちほぼ同じである。
【0049】
すなわち、複数の浮出し面要素の各々の特徴サイズまたはドットサイズは、浮出し要素を形成するのに用いられるマスク開口よりわずかに小さいに過ぎない。ある実施形態において、複数の浮出し面要素のドットサイズは、対応するマスク開口より4%未満だけ小さい。他の実施形態において、複数の浮出し面要素のドットサイズは、対応するマスク開口より2%未満だけ小さい。ほとんどの実施形態において、本発明の方法によって作製される各浮出し面要素は、上面、すなわち、約10〜約90マイクロメートルの直径を有する、画像形成材料を転写するほぼ平坦な表面領域を有する。
【0050】
一実施形態において、コーティング材料を印刷して、基板上にコーティング材料の均一層を形成する複数の浮出し面要素の上面にコーティング材料が塗布される。複数の面要素の浮出し面要素は、基板(すなわち、印刷領域)に印刷するとき複数の浮出し要素がコーティング材料の均一層(すなわち、連続層)を形成するのに十分に微細でかつ狭い間隔で配置される。印刷フォームが、印刷しない少なくとも1つの凹型領域を含むレリーフ構造を有するため、本発明にしたがって作製される印刷フォームは、基板上に少なくとも1つの印刷領域および少なくとも1つの非印刷領域のパターンを印刷することが可能であり、ここで、印刷領域は、(複数の個々の浮出し面要素によって提供される)コーティング材料の均一層である。基板上の印刷領域に形成されるコーティング材料の層は、均一またはほぼ均一であり、ある実施形態において約50〜5000オングストローム、他の実施形態において約200〜約1500オングストロームの厚さを有する。
【0051】
基板上に印刷される画像形成材料は、好適な任意の手段によって、印刷フォーム、特に、複数の浮出し面要素に塗布され得る。凸版印刷のほとんどの実施形態において、通常、アニロックスローラーを用いて、印刷フォームのレリーフ面上にコーティング材料を計量供給する。しかし、本発明の方法は、印刷フォームへの画像形成材料の従来の塗布方法に限定されない。
【0052】
画像形成材料は、印刷に好適な液体材料を含む。画像形成材料は、本明細書において印刷材料またはコーティング材料と呼ばれ得る。本発明の方法によって印刷される画像形成材料は限定されず、ワニス;インク;接着剤;ポリイミドなどの液晶配列材料として好適な材料;および配向材料を含む。
【0053】
本発明の方法によって印刷するのに適した基板は限定されず、画像形成材料を塗布する前に存在する他の層または部分を有さないか、1つ有するか、またはそれ以上有し得る。基板の例としては、紙、板紙、プラスチック、ガラス、ポリマーフィルムなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
感光性要素
凸版印刷フォームを作製するのに用いられる本発明の感光性前駆体要素は、少なくとも1つの光重合性層を含む。凸版印刷フォームは、フレキソ印刷フォームおよび活版印刷フォームを含む。凸版印刷は、印刷フォームが画像領域から印刷する印刷の方法であり、ここで、印刷フォームの画像領域は浮出し状であり、非画像領域は凹状である。任意選択的に、感光性要素は支持体を含む。任意選択的に、感光性要素は、光重合性層と隣接する化学線不透過性材料の層を含む。一実施形態において、感光性要素は、少なくとも、バインダー、少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物、および光開始剤から構成される光重合性組成物の層を含む。別の実施形態において、光重合性組成物の層は、エラストマーバインダー、少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物、および光開始剤を含む。ある実施形態において、凸版印刷フォームは、密着印画に必要な圧縮に対応するエラストマー印刷フォームである(すなわち、光重合性層はエラストマー層である)。
【0055】
特に示されない限り、用語「凸版印刷プレートまたは要素」は、フレキソ印刷および活版印刷に適した任意の形態のプレートまたは要素を含む。特に示されない限り、用語「感光性要素」および「印刷フォーム」は、平坦なシート、プレート、シームレスな連続した形態、円筒形、プレート・オン・スリーブ(plates−on−sleeves)、およびプレート・オン・キャリア(plates−on−carriers)を含むがこれらに限定されない、印刷のための前駆体として適した任意の形態の要素または構造を含む。
【0056】
支持体は、凸版印刷プレートを作製するのに用いられる感光性要素とともに従来用いられる任意の可撓性材料であり得る。ある実施形態において、支持体は、支持体を通した「バックフラッシュ」露光に対応するように化学線に対して透過性である。好適な支持体材料の例としては、付加ポリマーおよび直鎖状縮合ポリマーによって形成されるものなどのポリマーフィルム、透明な発泡体および布帛を含む。金属支持体は放射線に対して透過性ではないにもかかわらず、特定の最終使用条件下で、アルミニウムなどの金属が、支持体として用いられてもよい。好ましい支持体はポリエステルフィルムであり;特に好ましいのはポリエチレンテレフタレートである。支持体は、シート形態またはスリーブなどの円筒形であってもよい。スリーブは、可撓性材料の単層または多層から形成され得る。ポリマーフィルムで作製された可撓性スリーブが、通常、紫外線に対して透過性であることで、円筒形印刷要素のフロアを構築するためのバックフラッシュ露光に対応するため好ましい。好ましいスリーブは、米国特許第5,301,610号明細書に開示されるような多層のスリーブである。スリーブはまた、ニッケルまたはガラスエポキシなどの不透過性の化学線遮断材料で作製されていてもよい。支持体は、通常、0.002〜0.250インチ(0.0051〜0.635cm)の厚さを有する。ある実施形態において、シート形態の厚さは、0.003〜0.016インチ(0.0076〜0.040cm)である。ある実施形態において、スリーブは、4〜80ミル(0.010〜0.203cm)以上の壁厚を有する。
【0057】
任意選択的に、要素は、支持体と光重合性層との間の接着層を含み、または支持体における光重合性層と隣接する表面は、接着促進面を有する。支持体の表面上の接着層は、支持体と光重合性層との間に好適な接着を与えるための、米国特許第2,760,863号明細書および米国特許第3,036,913号明細書に開示されるような、接着材料の下塗り層すなわちプライマーまたは固着層であり得る。あるいは、光重合性層が存在する支持体の表面は、火炎処理または電子処理、例えば、コロナ処理によって、支持体と光重合性層との間の接着を促すように処理され得る。
【0058】
感光性要素は、光重合性組成物の少なくとも1つの層を含む。本明細書において使用される際の用語「光重合性」は、光重合性、光架橋性、または両方である系を含むように意図される。光重合性層は、バインダー、少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物、および光開始剤を含む組成物で形成される固体層である。光開始剤は、化学線に対する感受性を有する。本明細書全体を通して、化学光は、紫外線および/または可視光を含むことになる。光重合性組成物の固体層は、1種または複数の溶液で処理され、および/または加熱されて、凸版印刷に適したレリーフが形成される。本明細書において使用される際の用語「固体」は、一定の体積および形状を有し、体積または形状を変える傾向にある力に抵抗する層の物理的状態を指す。光重合性組成物の固体層は、重合(光硬化)されても、または重合されなくても、または両方であってもよい。ある実施形態において、光重合性組成物の層はエラストマーである。
【0059】
バインダーは、単一のポリマーまたはポリマーの混合物であり得る。ある実施形態において、バインダーはエラストマーバインダーである。他の実施形態において、光重合性組成物の層はエラストマーである。バインダーは、ポリイソプレン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、ブタジエン/アクリロニトリル、およびジエン/スチレン熱可塑性エラストマーブロックコポリマーを含む、共役ジオレフィン炭化水素の天然または合成ポリマーを含む。好ましくは、A−B−A型ブロックコポリマーのエラストマーブロックコポリマーであり、ここで、Aが、非エラストマーブロック、好ましくはビニルポリマーおよび最も好ましくはポリスチレンを表し、Bが、エラストマーブロック、好ましくはポリブタジエンまたはポリイソプレンを表す。ある実施形態において、エラストマーA−B−A型ブロックコポリマーバインダーは、ポリ(スチレン/イソプレン/スチレン)ブロックコポリマー、ポリ(スチレン/ブタジエン/スチレン)ブロックコポリマー、およびそれらの組合せであり得る。バインダーは、感光性組成物の約10重量%〜90重量%の量で存在する。ある実施形態において、バインダーは、感光性組成物の約40重量%〜85重量%で存在する。
【0060】
他の好適なバインダーとしては、アクリル;ポリビニルアルコール;ポリケイ皮酸ビニル;ポリアミド;エポキシ;ポリイミド;スチレンブロックコポリマー;ニトリルゴム;ニトリルエラストマー;非架橋ポリブタジエン;非架橋ポリイソプレン;ポリイソブチレンおよび他のブチルエラストマー;ポリアルキレンオキシド;ポリホスファゼン;エラストマーポリマーおよびアクリレートとメタクリレートとのコポリマー;エラストマーポリウレタンおよびポリエステル;エチレン−プロピレンコポリマーおよび非架橋EPDMなどのオレフィンのエラストマーポリマーおよびコポリマー;酢酸ビニルおよびその部分的に水素化された誘導体のエラストマーコポリマーが挙げられる。
【0061】
光重合性組成物は、透明の曇っていない感光性層が製造される程度にバインダーと相溶性である、付加重合可能な少なくとも1種の化合物を含有する。付加重合可能な少なくとも1種の化合物はまた、モノマーと呼ばれてもよく、単一のモノマーまたはモノマーの混合物であり得る。光重合性組成物に用いられ得るモノマーは、当該技術分野で周知であり、少なくとも1つの末端エチレン基を有する付加重合エチレン性不飽和化合物を含むがこれに限定されない。光重合性組成物にエラストマー特性を与えるために、モノマーが当業者によって適切に選択され得る。
【0062】
付加重合可能な少なくとも1種の化合物(すなわち、モノマー)が、少なくとも、光重合性組成物の5重量%、通常10〜20重量%の量で存在する。
【0063】
光開始剤は、化学線に感受性であり、過度な停止(excessive termination)を伴わずに1つまたは複数のモノマーの重合を開始するフリーラジカルを生成する任意の単一の化合物または化合物の組合せであり得る。公知の種類の光開始剤のいずれか、特にフリーラジカル光開始剤が用いられ得る。あるいは、光開始剤は、化合物のうちの1種が、放射線によって活性化される感光剤によって促されるとフリーラジカルを提供する化合物の混合物であってもよい。ほとんどの実施形態において、主露光(ならびに後露光およびバックフラッシュ)のための光開始剤は、310〜400nm、好ましくは345〜365nmの可視光または紫外線に感受性である。光開始剤は、一般に、光重合性組成物の重量を基準にして0.001%〜10.0%の量で存在する。
【0064】
光重合性組成物は、所望の最終特性に応じて他の添加剤を含有し得る。光重合性組成物へのさらなる添加剤は、感光剤、可塑剤、レオロジー調整剤、熱重合防止剤、着色剤、加工助剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、染料、および充填剤を含む。
【0065】
光重合性層の厚さは、所望の印刷プレートのタイプに応じて、例えば、約0.005インチ〜約0.250インチ以上(約0.013cm〜約0.64cm以上)など、広範囲にわたって変わり得る。ある実施形態において、光重合性層は、約0.005インチ〜0.0450インチ(0.013cm〜0.114cm)の厚さを有する。ある他の実施形態において、光重合層は、約0.020インチ〜約0.112インチ(約0.05cm〜約0.28cm)の厚さを有する。他の実施形態において、光重合性層は、約0.112インチ〜約0.250インチ以上(0.28cm〜約0.64cm以上)の厚さを有する。
【0066】
バインダー、モノマー、開始剤、および他の成分を混合することによって形成される光重合性組成物の層を含む感光性前駆体要素を作製することは、当業者の技能の範囲に十分に含まれる。ほとんどの実施形態において、光重合性混合物は、ホットメルトに形成され、次に任意選択的に、所望の厚さおよび平面または円筒形状になるように押し出され、圧延される(calendered)。感光性要素は、二層または多層構造であり得る少なくとも1つの光重合性層を含む。さらに、感光性要素は、少なくとも1つの光重合性層上にエラストマーキャッピング層を含み得る。エラストマーキャッピング層として適した多層カバー要素および組成物は、Gruetzmacherらの、米国特許第4,427,759号明細書および米国特許第4,460,675号明細書に開示されている。
【0067】
感光性要素は、光重合性層における支持体と反対側の表面の上方に配置される化学線不透過性層を含み得、または化学線不透過性層を含む別個のキャリアまたは要素とともに集合体を形成し得る。フォトツールを形成する従来のハロゲン化銀をベースとする材料を除いて、放射線不透過性層を像様露光して、感光性要素の光重合性層上にまたは感光性要素に隣接してin−situマスクを形成することができる限り、化学線不透過性層および化学線不透過性層を組み込んだ構造を構成する材料は特に限定されない。化学線不透過性層は、表面をほとんど覆うかまたは光重合性層の画像形成可能な部分のみを覆い得る。化学線不透過性層は、光重合性材料の感受性に対応する化学線に対してほぼ不透過性である。化学線不透過性層は、バリア層とともにまたはバリア層なしで用いられ得る。バリア層とともに用いられる場合、バリア層は、光重合性層と放射線不透過性層との間の材料の移行を最小限に抑えるために、光重合性層と放射線不透過性層との間に配置される。モノマーおよび可塑剤は、それらが隣接する層中の材料と相溶性である場合に時間とともに移行し得る。これらの材料は、放射線不透過性層のレーザー放射線感受性を変更し得るか、または画像形成の後の放射線不透過性層の不鮮明化および粘着化を引き起こし得る。化学線不透過性層はまた、不透過性層を選択的に除去するかまたは転写し得るレーザー放射線に感受性である。
【0068】
一実施形態において、化学線不透過性層は、赤外レーザー放射線に感受性である。ある実施形態において、化学線不透過性層は、放射線不透過性材料、赤外線吸収材料、および任意選択のバインダーを含む。カーボンブラックおよび黒鉛などの暗色の無機顔料、顔料の混合物、金属、および金属合金が、一般に、赤外線感受性材料および放射線不透過性材料の両方として機能する。任意選択のバインダーは、自己酸化ポリマー、非自己酸化ポリマー、熱化学的に分解可能なポリマー、ならびにスチレンおよび/またはオレフィンを有するブタジエンおよびイソプレンのポリマーおよびコポリマー、熱分解可能なポリマー、両性共重合体、ポリエチレンワックス、上記の剥離層として従来用いられる材料、およびそれらの組合せを含むがこれらに限定されないポリマー材料である。化学線不透過性層の厚さは、一般に、約20オングストローム〜約50マイクロメートルである、感受性および不透過性の両方を最適化するような範囲にあるべきである。化学線不透過性層は、化学線および下部の光重合性層の重合を効果的に防ぐために、2.0を超える透過光学密度を有するべきである。
【0069】
感光性要素は、上方に配置される化学線不透過性層を含んでいてもよく、光重合性層の表面全体を覆うかまたはほぼ覆う。この場合、赤外レーザー放射線が、放射線不透過性層を像様に除去し、すなわち、融除し、または蒸発させて、in−situマスクを形成する。この化学線不透過性層に適した材料および構造は、Fanの米国特許第5,262,275号明細書;Fanの米国特許第5,719,009号明細書;Fanの米国特許第6,558,876号明細書;Fanの欧州特許出願公開第0 741 330 A1号明細書;およびVan Zoerenの米国特許第5,506,086号明細書および同第5,705,310号明細書に開示されている。Van Zoerenの米国特許第5,705,310号明細書に開示されるように、材料が感光性要素から除去される際に材料を捕捉するために、レーザー露光の際に、化学線不透過性層に隣接する材料捕捉シートが存在してもよい。放射線不透過性層における感光性要素から除去されなかった部分のみが、要素上に残ってin−situマスクを形成することになる。
【0070】
別の実施形態において、感光性要素は、最初に化学線不透過性層を含まないであろう。放射線不透過性層を有する別個の要素は、放射線不透過性層が感光性要素における支持体(通常、光重合性層である)と反対側の表面に隣接するように、感光性要素とともに集合体を形成することとなる。(感光性要素と関連するカバーシートがある場合、これは、通常、集合体を形成する前に除去される)。別個の要素は、デジタル露光プロセスを補助するために、放出層または加熱層などの1つまたは複数の他の層を含み得る。本明細書において、放射線不透過性層は、赤外線にも感受性である。集合体は、赤外レーザー放射線で像様露光されて、放射線不透過性層を選択的に転写し、または放射線不透過性層の接着バランスを選択的に変更し、光重合性層上またはその上方に配置される画像を形成する。この化学線不透過性層に適した材料および構造は、Fanらの米国特許第5,607,814号明細書;およびBlanchettの米国特許第5,766,819号明細書;同第5,840,463号明細書;および欧州特許出願公開第0 891 877 A号明細書に開示されている。像様転写プロセスの結果として、放射線不透過性層の転写された部分のみが感光性要素上に残ってin−situマスクを形成することになる。
【0071】
本発明の感光性印刷要素は、要素の最上層の上に一時的なカバーシートをさらに含み得る。カバーシートの一目的は、保管および取り扱いの際に感光性印刷要素の最上層を保護することである。カバーシートに適した材料の例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ポリアミドまたはポリエステルの薄膜が挙げられ、これらは剥離層で下塗りすること(subbed)が可能である。
【0072】
用語説明
「線毎インチ」(LPI)は、中間調スクリーンを使用するシステムの印刷解像度の測定値である。それは、中間調グリッドの線の密集の程度の尺度である。LPIが高くなるほど、一般に、画像の細部がより鮮明で、鮮鋭度が高くなることを示す。
【0073】
「中間調」は、様々なサイズを有し、中心間の間隔が等しいドットに画像を変換するスクリーニングプロセスによる、連続階調画像の再現に用いられる。中間調スクリーンにより、インクなどの印刷媒体を転写する(または転写しない)ことによって印刷される画像の陰影(または灰色)領域の形成が可能になる。
【0074】
「ドット毎インチ」(DPI)は、階調画像におけるドット構造の頻度であり、空間印刷ドット密度の尺度、特に1リニアインチ(2.54cm)の範囲内に配置され得る個々のドットの数である。DPI値は、画像解像度と相関する傾向がある。グラフィックス用途用の通常のDPI範囲は75〜150であるが、200もの高さにもなり得る。
【0075】
「スクリーン線数解像度」(「スクリーン線数」と呼ばれることもあり得る)は、中間調スクリーンにおけるインチ当たりの線またはドットの数である。
【0076】
「画素幅」は、DPI値の逆数である。
【0077】
「マスク開口」は、下部の光重合性材料の化学線への露光を可能にする一体型マスクの「透明」領域である。(ある実施形態において、透明領域は、要素から化学線不透過性材料を除去することによって形成される。他の実施形態において、透明領域は、化学線不透過性材料を要素に転写しないことによって形成される)。マスク開口は、測定顕微鏡を用いて測定される。有効なマスク開口面積は、開口の面積を測定し、それを、線毎インチ(LPI)単位のスクリーン解像度によって定義される全画素面積で除算することによって計算される。全画素面積は、式(1/LPI)2を用いて計算され、有効なマスク開口は、(開口面積)/(1/LPI)2として定義される。マスク開口は、通常、(全画素面積の)パーセンテージとして表される。
【0078】
「フォトツール開口」は、フォトツールにおける、化学線に対して透過性の領域(全画素面積のパーセンテージとして表される)であり、上記のマスク開口面積と同様に計算される。
【0079】
「光学密度」または単に「密度」は、画像の暗度(光吸収度または不透明度)であり、以下の関係式から求められ得る:
密度=log10{1/反射率}(式中、反射率は{反射光の強度/入射光の強度}である)。
【0080】
「プレート上のドットサイズ」は、目盛り付き顕微鏡または専門の光学装置を用いて一般的に評価されたドットの直径の尺度である。測定値は、通常、プレート上のドット構造の平坦な部分を正確に表す。
【0081】
「プレート上のドット面積」または「プレートのドット面積」は、一般的にパーセンテージとして表され、一般に、ドットサイズを面積に換算し(面積=πr2)、スクリーン解像度によって定義される全画素面積で除算することによって計算される。
【0082】
「有効な印刷ドット面積」は、色調領域(tint area)と呼ばれる均一なサイズの規則的な配列のドットで印刷される領域の密度測定値および完全なインク被覆率(100%の被覆率またはベタ被覆率(solid coverage)とも呼ばれる)を有する印刷領域の密度測定値に基づいて計算される量である。用いられる式は、Murray Davies式と呼ばれ、以下のように表される:
有効な印刷ドット面積=(1−10-Dt)/(1−10-Ds
式中、Dt=色調密度であり、Ds=ベタ密度である。
【0083】
「圧力下における有効な印刷領域(ドット面積)」は、プレートおよび基板が互いに密着しているときおよびプレート/基板が圧迫をかけ合っているとき、印刷される基板と接触することになる、全面積のパーセントとして表されるプレート上のドット面積である。
【0084】
「印刷ドットに対するプレートの増加率(Plate to Print Dot Gain)」は、被覆面積のパーセンテージとして表される有効な印刷ドット面積に対する、全画素面積のパーセンテージとして表されるプレート上のドット面積から印刷されるドット面積の増加を表す。これは単にそれら2つの差である。
【0085】
「インチ当たりの走査線」は、画像形成デバイスの書込み解像度(writing resolution)である。通常のインチ当たりの走査線は、約2,540(10μmのスポットサイズを表す)である。
【0086】
「マスク有効領域」。デジタルワークフローによって形成されるプレートの場合、マスク有効領域は、紫外線不透過性層(マスク)における、紫外光が透過され得る開口を残して融除されて下に重合された構造を形成する領域である。この領域は、ほぼ円形であり、測定顕微鏡を用いて開口の長さおよび幅を測定し、それらの数値を平均して開口直径を求め、円の面積を求めるための式を用いて有効領域を計算することによって計算される。有効領域は、この面積を計算することによって表され、この開口は、全画素面積のパーセンテージとして表される。
【0087】
アナログワークフローによって形成されるプレートの場合、マスク有効領域は、紫外光が透過されて下に重合された構造を形成することができるフィルム中間体開口の領域である。この領域は、ほぼ円形であり、測定顕微鏡を用いて開口の長さおよび幅を測定し、それらの数値を平均して開口直径を求め、円の面積を求めるための式を用いて有効領域を計算することによって計算される。次に、有効領域は、この面積を計算することによって表され、この開口は、全画素面積のパーセンテージとして表される。
【0088】
「ドット面」。露光の際、化学線がアナログフィルム中間体または紫外線不透過性層(マスク)を通過して、開口の形状にほぼ適合する光重合された領域を形成する。処理の後、浮出し印刷要素、すなわちこの場合はドットを残して、重合されていない材料が除去される。ドット面は、画像形成され、処理された光重合性印刷プレートの画像形成要素の印刷面を表す。
【0089】
「ドット有効領域」。ドット構造のこの印刷面は、ほぼ円形であり、測定顕微鏡を用いてドット構造の上部の長さおよび幅を測定し、それらの数値を平均して直径を求め、円の面積を求めるための式を用いて有効領域を計算することによって計算される。次に、有効領域は、この面積を計算することによって表され、この開口は、全画素面積のパーセンテージとして表される。
【0090】
「谷部深さ(Valley depth)」は、2つの連続した印刷面の上部と、それらの間の非印刷領域の最深地点との間の垂直距離である。
【実施例】
【0091】
以下の実施例において、全てのパーセンテージは、特に示されない限り重量基準である。CYREL(登録商標)光重合性印刷プレート、CYREL(登録商標)Digital Imager、CYREL(登録商標)露光ユニット、およびCYREL(登録商標)処理装置は全て、本願特許出願人から入手可能である。
【0092】
器具
顕微鏡または光学デバイスなどの一般的な画像形成技術を用いて、印刷フォームの観測されるドット面積を測定し得る。好適な光学デバイスの一例は、Beta Industries(Carlstadt、NJ)製のBetaflexフレキソ分析器ユニットであり、このユニットは、凸版印刷フォームの浮出し構造を、ドット面積、スクリーン線数、およびドット品質などのレリーフ特性の測定および分析のための画像として捕らえる。
【0093】
測定顕微鏡(ニコン(米国)(Melville、NY)製のNikon Measurescope、モデルMM−11)を用いて、プレートの浮出し領域に示されるドットサイズおよび他の特徴を測定した。
【0094】
実施例1
紫外線不透過性層が上に配置されたCYREL(登録商標)光重合性印刷プレート、タイプDPI(フォトポリマーおよび支持体の厚さが0.067インチ(0.17cm))という2つの感光性前駆体印刷要素に、赤外レーザー放射線で放射線不透過性層を融除することによって同様に画像形成して、CYREL(登録商標)Digital Imagerにおいてある範囲の開口(マスクにおいて1%、5%、10%、20%、50%、70%、90%の面積の開口)を有する要素上にin−situマスクを形成した。開口サイズを、ニコン測定顕微鏡を用いて1つのプレート上で測定して、実際のマスク開口サイズを推定した。スクリーン線数解像度は、インチ当たり150線であった。本発明の方法による高解像度の印刷またはコーティングについて記載される範囲から外れているが、この実施例は、(修正されたデジタルワークフローの)本発明の方法が、関連するマスクにおける対応する開口よりわずかに小さいに過ぎない、ひいては理想に近い、凸版印刷フォームのレリーフ構造の浮出し面要素の特徴サイズを形成することができることを示した。
【0095】
対照として、CYREL(登録商標)露光ユニット上で(デジタルワークフローのための)通常の慣例により大気中酸素の存在下で、1つのプレートを、in−situマスクを介して紫外線に露光し、同様に通常の慣例により溶剤処理装置において処理した。
【0096】
米国特許出願第12/356752号明細書(2009年1月21日に出願され、米国特許出願公開第2009/0191483号明細書として公開された)に記載されるように、窒素である不活性ガス、および190,000〜100百万分率の酸素濃度の存在下で露光するための環境を提供する露光チャンバを含むようにCYREL(登録商標)露光ユニットを修正した。パージされる気体における酸素濃度が露光の開始時に1000ppm未満と測定された時点までチャンバに窒素を流すことによってパージして酸素を取り除いた露光ユニットのチャンバに第2のプレートを入れた。チャンバを(修正されたデジタルワークフローの本発明の方法に係る)所与の条件下に置きながら第2のプレートを紫外線に露光し、通常の慣例により溶剤処理装置において、対照に用いられたのと同じ条件で処理した。
【0097】
処理の後、上述した2つの方法によって作製されたプレート上に形成された浮出しレリーフ特徴を、ニコン測定顕微鏡において測定し、結果を図1に示した。図1は、プレートを作製するのに用いられるマスクの開口面積に対する、プレートの測定されたドット面積をパーセンテージとして表したグラフである。長鎖線である線A(デジタルワークフローの場合の面積%)は、従来のデジタルワークフローによって作製される実施例1の対照を表す。短鎖線である線B(酸素を含まない場合の面積%)は、修正されたデジタルワークフローの本発明の方法にしたがって作製される実施例1のプレートを表し、本方法では、窒素の不活性ガスの存在下で、約1000ppmの酸素の濃度(調整された酸素)で、in−situマスクを介してプレートを化学線に像様露光した。実線である線C(1対1)は、プレート上に製造されたドット面積が、プレートの関連するin−situマスクに形成された開口面積のパーセンテージに直接対応する理想を表す。
【0098】
データの解釈により、露光が不活性ガスおよび調整された酸素濃度環境の存在下で行われるとき、理想に対して、修正されたデジタルワークフローによって作製される本発明のプレートに形成された浮出し面要素の特徴サイズのある程度の減少が観察されたことが示された。しかしながら、対照は、像様露光が、従来のデジタルワークフローにしたがって、大気中酸素の存在下で行われたとき、浮出し面要素の特徴サイズのかなりの減少が観察されることを示している。in−situマスク画像、対照のプレート、および実施例1に記載されるように本発明によって作製されるプレートのある範囲のドット面積の写真の再現である図2を参照されたい。図2において「デジタルプレート」と表示されるドット面積の範囲は、実施例1の対照を表す。図2において「デジタルマスク」と表示されるドット面積の範囲は、実施例1の対照およびプレート上に形成されるin−situマスクである。図2において「酸素を調整されたプレート」と表示されるドット面積の範囲は、修正されたデジタルワークフローの本発明の方法にしたがって作製される実施例1のプレートを表し、本方法では、窒素の不活性ガスの存在下で1000ppmの酸素の濃度で、in−situマスクを介してプレートを化学線に像様露光した。ドット面(またはドットの印刷面)の直径を、デジタルマスクの対応する開口と比較し、直径の変化を、以下の表に報告する。
【0099】
【表1】

【0100】
実施例2
この実施例は、1)フィルム中間体を使用した従来のアナログプレート作製、2)上述したように、in−situマスクを形成し、大気中酸素の存在下でマスクを介して像様露光した従来のデジタルプレート作製(デジタルワークフロー)、および3)上で細かく見たように、in−situマスクを形成し、不活性ガス、例えば、窒素、および190,000〜100ppmの濃度の酸素の存在下で、マスクを介して像様露光した、修正されたデジタルワークフロープレート作製方法という3つの異なるプレート作製方法の比較を示す。
【0101】
CYREL(登録商標)光重合性印刷プレートを、感光性前駆体印刷要素として使用した。これは、要素上に配置される放射線不透過性デジタル層の有無が異なるが、エラストマー層を形成する同じかまたはほぼ同じ光重合性組成物を有する。CYREL(登録商標)光重合性印刷プレート、タイプDPU(フォトポリマーおよび支持体の厚さが0.067インチ(0.17cm))は、不透過性デジタル層を含み、タイプUXL(フォトポリマーおよび支持体の厚さが0.067インチ(0.17cm))は、不透過性デジタル層を含まなかった。
【0102】
プレート1として特定される、デジタル層を有さないプレートを、CYREL(登録商標)露光ユニットにおいて、ポリイミドコーティング印刷プレートの製造業者から入手したフィルム中間体(フォトツール)を介して、紫外線に像様露光した。フィルム中間体とプレートとを密着させるために真空を引いた。フィルム中間体は、350ドット毎インチのスクリーン解像度および30%の開口面積で形成される画像パターン(基板上にコーティング層を形成する)を有した。この実施例において、ドット毎インチ(DPI)は、350線毎インチ(LPI)であったスクリーン線数解像度に相当し、すなわち350線毎インチ(LPI)であったスクリーン線数解像度と同じである。プレート1を、従来の条件で、露光し、溶剤処理した。
【0103】
プレート2として特定される、放射線不透過性デジタル層を有する第2のプレートに、放射線不透過性デジタル層を赤外レーザー放射線で融除して、CYREL(登録商標)Digital Imagerにおいてプレート上にin−situマスクを形成することによって、画像形成した。プレート上に形成されたin−situマスクは、プレート1に用いられるフィルム中間体と同様の解像度および開口面積を有するが、フィルム中間体を形成したフィルム画像形成デバイスの「書込み解像度」と全く同一というわけではなく、in−situマスク用のプレート画像形成デバイスは異なる。大気中酸素の存在下で、in−situマスクを介してプレート2を紫外線に像様露光し、次に、プレート1と同じ条件で溶剤処理した。
【0104】
プレート3として特定される、放射線不透過性層を有する第3のプレートを、プレート2について記載されるように画像形成してin−situマスクを形成した。プレート3を、実施例1に記載されるような露光チャンバに入れ、不活性ガスとしての窒素を有し、約1000ppmの酸素濃度での環境において、紫外線に像様露光した。次に、プレート3を、溶剤処理装置において、プレート1と同じ条件で処理した。
【0105】
上述したように作製された全ての3つのプレート(プレート1、2、3)を測定し、データを以下の表に示した。(「酸素を調整されたプレート3」と表示された列が、不活性ガスおよび190,000〜100ppmの濃度の酸素を有する環境において露光する修正されたデジタルワークフローによって作製されるプレートを表すため、酸素を含まない環境において作製されるプレートとして解釈されるべきではないことに留意されたい)。
【0106】
【表2】

【0107】
これらの結果から、標準的なアナログプロセスによって製造されたプレート1について、浮出し面要素の構造サイズのわずかな増加(3.1μm)が測定され;従来のデジタルワークフロープロセスによって製造されたプレート2について、浮出し面要素の構造サイズの大幅な減少(−37.7μm)が測定され;修正されたデジタルワークフローによって製造されたプレート3について、浮出し面要素の構造サイズの非常に少ない増加(1.2μm)が測定されたことが示された。
【0108】
少なくともプレート3が、基板上にコーティング材料の均一層を印刷するのに有効であり得ることが考えられる。
【0109】
実施例1および実施例2は、光重合性印刷要素に対する酸素阻害効果の程度を示し、不活性ガスの存在下および190,000〜100ppmの酸素濃度での像様露光の本発明の方法が重合阻害特性を効果的に解消することで、浮出し面要素の所望の構造サイズを得ることが可能になることを示した。
【0110】
実施例3
放射線不透過性デジタル層を有するCYREL(登録商標)光重合性印刷要素、タイプDPI(フォトポリマー層および支持体の厚さが0.045インチ(0.114cm))を用いて、修正されたデジタルワークフローの本発明の方法にしたがって作製されるとき、浮出し面要素の極小の構造を形成する能力を評価した。CYREL(登録商標)Digital Imagerにおいてin−situマスクを形成するように融除することによって、デジタル層に画像形成した。要素に画像形成して、インチ当たり10,000、8,000および4,000走査線の解像度および300、400および600DPI(ドット毎インチ)の空間解像度での複数の画像パターンを有するin−situマスクを形成した。要素を、実施例1に記載されるような露光チャンバに入れ、不活性ガスとしての窒素の存在下および100ppmより高く1000ppm未満の酸素の濃度で、化学線に像様露光した。露光された要素を、従来の溶剤処理条件を用いて溶剤処理して、画像パターンの各々において浮出し面要素のレリーフ構造を有する印刷プレートを形成した。
【0111】
画像パターンの箇所の各々におけるプレートのドット構造、すなわち、浮出し面要素を、ニコン測定顕微鏡を用いて測定し、データを以下の表に報告した。画像パターンは、ポリイミドなどのコーティング材料が、凸版印刷プレートによって、基板上に印刷されて、基板上に均一層が形成される最終使用用途に適した浮出しレリーフ領域(例えば、300/400DPIについて40%の表面積および600DPIについて20%の表面積)を表していた。
【0112】
【表3】

【0113】
これらの結果は、凸版印刷フォームにおいて、低い走査解像度で高い空間解像度(例えばインチ当たり4,000走査線で400/600DPI)の構造(すなわち、浮出し面要素)を正確に製造するのが困難であることを示した。また、好適な画像形成解像度を用いて、凸版印刷フォームの非常に高い空間解像度(600ドット毎インチ)で小さい構造(約21μm)を得ることができる。さらに、コーティング材料の層を印刷するのに十分である、凸版印刷フォームにおける浮出し面要素の構造を、本発明の方法を用いて得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に材料を印刷するための方法であって:
a)バインダー、エチレン性不飽和化合物、および光開始剤を含有する光重合性組成物の層を含む感光性要素から凸版印刷フォームを提供する工程であって:
i)前記光重合性層に隣接し、化学線に対して不透過性の領域を貫く複数の開口を有するin−situマスクを形成する工程であって、前記開口がインチ当たり250線以上のスクリーン線数解像度を有する工程と;
ii)不活性ガスおよび190,000百万分率(ppm)〜100ppmの濃度の酸素を有する環境において、前記マスク開口を介して、前記光重合性層を化学線に露光する工程と;
iii)工程ii)から得られる要素を処理して、インチ当たり250線以上のスクリーン線数解像度を有する複数の浮出し面を有するレリーフ構造を形成する工程と
を含む工程と;
b)前記複数の浮出し面に前記材料を塗布する工程と;
c)前記材料を前記複数の浮出し面から前記基板に接触させ、それによって前記材料を前記基板に転写する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接触工程が、前記基板上に前記材料の層を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料の層の2つ以上の領域を有するパターンが、前記基板上に形成されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板上の前記材料が、50〜5000オングストロームの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板上の前記材料の層が、約200〜1500オングストロームの厚さを有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記マスクの前記開口が、全画素面積の20〜80%であるドット面積を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記接触工程が、前記材料のグラフィック画像を前記基板上に形成し、前記グラフィック画像は、中間調の図、テキスト、線特徴、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記レリーフ構造の前記複数の浮出し面のスクリーン線数解像度が、前記マスクのスクリーン線数解像度と同一または実質的に同一であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マスク開口の解像度が、250線毎インチ(LPI)、300LPI、350LPI、400LPI、および600LPIからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記浮出し面の解像度が、400線毎インチ以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
各浮出し面が、約10〜約90マイクロメートルの直径を有する上面を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記材料が液晶配列材料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記材料がポリイミドであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記材料が、ワニス、インク、および接着剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記環境における酸素の濃度が、80,000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記不活性ガスが、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
化学線不透過性材料の層が、前記光重合性層上または前記光重合性層に隣接して配置され、工程i)が、前記化学線不透過性層をレーザー放射線で像様露光して、前記in−situマスクを形成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
レーザー放射線での前記像様露光工程が、(a)前記光重合性層から前記化学線不透過性層を選択的に融除する工程、および(b)前記化学線不透過性層の部分を前記光重合性層に選択的に転写する工程からなる群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記処理工程iii)が:
a)工程ii)の要素を、溶剤溶液、水溶液、半水溶液、および水からなる群から選択される少なくとも1種の洗浄溶液で処理する工程;および
b)工程ii)の要素を、領域を溶融、流動、または軟化させるのに十分な温度に加熱し、前記領域を除去する工程
からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する複数の浮出し面を含むレリーフ構造を有するエラストマー層を有する凸版印刷フォームを作製するための方法であって:
a)バインダー、エチレン性不飽和化合物、および光開始剤を含む光重合性材料のエラストマー層を含む感光性要素を提供する工程と;
b)前記光重合性層に隣接し、化学線に対して不透過性の領域を貫く複数の開口を有するin−situマスクを形成する工程であって、前記開口が、250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する工程と;
c)不活性ガスおよび190,000百万分率(ppm)〜100ppmの濃度の酸素を有する環境において、前記マスク開口を介して、前記光重合性層を化学線に露光する工程と;
d)工程c)から得られる要素を処理して、250線毎インチ以上のスクリーン線数解像度を有する複数の浮出し面を有するレリーフ構造を形成する工程と
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−532343(P2012−532343A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517906(P2012−517906)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/040723
【国際公開番号】WO2011/002967
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】