説明

基板保持装置および検査または処理の装置

【課題】高精度の位置決めと強力な基板の押し付けとが可能な基板保持装置を提供する。
【解決手段】基板5の外周側面51の下側52を支える傾斜面9を有し、基板5の法線を回転軸29として基板5と一体になって回転する回転台4と、回転台4と一体になって回転し、回転に先立って外周側面51の上側53の周上の複数の場所を押して、基板5を回転台4上の所定の位置に拘束する位置拘束手段11と、回転台4と一体になって回転し、回転中に上側53の周上の複数の場所を押して、基板5を傾斜面9に押し付ける押付手段12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の外周側面を支えながら基板と一体になって回転する基板保持装置、および、この基板保持装置を用いる基板の検査または処理の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、薄型ディスプレイ、磁気ディスク等の製品の製造工程では、半導体ウェハ、ガラス基板、ディスク基板等の基板を処理して処理された基板を検査している。基板の処理と検査では、基板を回転させながら行うことが多く、例えば、半導体ウェハの表面に傷等の欠陥や異物があるかを検査する表面検査では、半導体ウェハを回転させながら検査光の照射領域を半径方向に移動させることで、検査光は半導体ウェハの表面をスパイラル状に走査し、短時間に半導体ウェハ全面の欠陥や異物を検出している。
【0003】
また、半導体装置、薄型ディスプレイ、磁気ディスク等の製品では、回路パターン等の微細化に伴い基板の裏面に生じる欠陥や異物も管理し低減して行く傾向にある。このために、製造工程では、表面だけでなく裏面にも非接触な状態で基板を処理し検査する必要がある。
【0004】
そこで、基板の表面と裏面に非接触の状態で基板を回転させられる基板保持装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−253756号公報(段落0024〜0039、図1〜4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の基板保持装置では、基板の回転を円滑にするため、基板の重心を通る基板の法線が、基板保持装置の回転軸に一致するように、基板を基板保持装置上に位置決めしている。そして、回路パターン等は微細化される傾向にあり、処理と検査の再現性を維持するために、位置決めの精度を向上させる必要があると考えられた。例えば、微細化する回路パターンでは、異物がどのパターンにあるかを特定するために、異物の座標精度を向上させる必要がある。
【0006】
また、従来の基板保持装置は、基板の裏面には接触しないかわりに、基板の丸められた外周側面の下側に接触し、基板を支えている。基板は、回転中心に向かう程降下するようになっている基板保持装置の傾斜面に接触している。このため、基板の重心を通る基板の法線が、基板保持装置の回転軸に一致した場合のみ基板は水平になり、少しでもずれると基板は傾いてしまう。検査に光学装置を用いると、1回転の中で基板と光学装置の間隔は変動する。この変動の幅は、微細なパターンに対応して狭くなった光学装置の焦点深度より広くなり、光学装置の感度を低下させると考えられた。
【0007】
また、基板には、製造工程で、熱処理されたり、金属膜が成膜されたりすることにより、反りが生じる場合がある。従来の基板保持装置は、基板の表面と裏面に非接触なので、基板は反ったまま保持される。この反りも基板と光学装置の間隔を変動させるので、この反りを矯正するために、基板の裏面に清浄度の高い気体を吹き付けて、平坦性を改善している。将来、製造工程で熱処理が多用されたり、多数の金属膜が成膜されたりすると、反りは一層大きくなり、矯正するための吹き付けも強力になると考えられる。基板が吹き付けによって浮き上がらないように、基板を支える傾斜面により強力な力で基板を押し付ける必要があると考えられる。
【0008】
以上により、本発明では、前記した問題を解決し、高精度の位置決めと、強力な基板の押し付けとが可能な基板保持装置を提供し、さらに、この基板保持装置を用いた検査または処理の装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明では、基板保持装置が、回転台と、前記回転台と一体になって回転し、回転に先立って基板の外周側面の上側の周上の複数の場所を押して、前記基板を前記回転台上の所定の位置に拘束する位置拘束手段と、前記回転台と一体になって回転し、回転中に前記上側の周上の複数の場所を押して、前記基板を前記傾斜面に押し付ける押付手段とを有することを特徴とする。また、検査または処理の装置がこのような特徴を有する基板保持装置を用いて基板を回転させながら検査または処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高精度の位置決めと、強力な基板の押し付けとが可能な基板保持装置を提供でき、さらに、この基板保持装置を用いた検査または処理の装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0012】
本発明の実施形態に係る検査または処理の装置は、半導体装置、薄型ディスプレイ、磁気ディスク等の製品の製造工程において、半導体ウェハ、ガラス基板、ディスク基板等の基板を、検査または処理する。検査装置としては、基板を回転させながら基板上の欠陥や異物があるかを検査する表面検査装置や、パーティクルカウンタ等に使われ、処理装置としては、基板を回転させながら薬液処理、洗浄、乾燥を行う薬液処理装置や、レジストの塗布、現像、剥離を行うスピンコータ等に使われる。以下の説明では、基板として主に半導体ウェハを想定し、検査または処理の装置として主に表面検査装置を想定して記載する。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る検査装置(表面検査装置)1は、基板(半導体ウェハ)5の検査を直接行う検査部2と、基板搬送ロボット6と、カセット台8とで構成されている。カセット台8には、複数の基板5を収納したカセット7が搬入される。カセット7には、図面奥行き方向に等間隔で複数の基板5が収納されている。なお、検査装置1を、処理装置に置き換える場合は、検査部2を処理を直接行う処理部に置き換えればよい。
【0014】
検査部2には、基板保持装置3が設けられている。基板保持装置3には、回転可能な回転台4が設けられている。基板搬送ロボット6は、基板5を、カセット7から回転台4へ搬送し、回転台4からカセット7へ搬送する。
【0015】
回転台4の上方には、図示しない投光系装置及び受光系装置が配置されている。投光系装置は、レーザ光等の光ビームを、回転台4上に乗せられた基板5の表面ヘ照射する。回転台4により基板5を回転させながら、基板保持装置3を基板5の半径方向に直線的に移動することによって、投光系装置から照射された光ビームが、基板5の表面をスパイラル状に走査する。受光系装置は、基板5の表面からの反射光又は散乱光を検出する。受光系装置の検出信号は、図示しない画像信号処理装置で処理されることにより、基板5の表面に存在する異物が検出される。
【0016】
図2に示すように、基板保持装置3は、基板5と一体になって回転する回転台4と、回転台4の中心から放射状に等間隔、等角度で複数の6つの方向に外周まで伸びるように配置され、回転台4と一体になって回転する位置拘束手段11と、回転台4の位置拘束手段11に挟まれ外周を含む領域に放射状に等間隔、等角度で配置され、回転台4と一体になって回転する複数の6つの押付手段12とを有している。
【0017】
回転台4の外周には、基板5の丸められた外周側面の下側を支持する傾斜面9を有する傾斜台10が設けられている。回転台4には、放射状に溝34と溝44とが形成されており、前記位置拘束手段11は溝34の中に形成され、押付手段12は溝44の中に形成されている。
【0018】
位置拘束手段11は、回転に先立って基板5を回転台4上の所定の位置に拘束することができる。所定の位置としては、基板5の回転を円滑にするため、基板5の重心を通る基板5の法線が、基板保持装置3の回転軸に一致する位置とする。なお、オリフラにより重心の位置が特定しにくいときは、重心に替えて基板5の中心としてもよい。このように基板5を回転台4上の所定の位置に拘束することにより、基板を基板保持装置上に位置決めすることができる。押付手段12は、回転中に基板5を傾斜面9に押し付ける。このように、位置拘束手段11は、位置決めに特化させ、押付手段12は、押し付けに特化させている。なお、位置拘束手段11の中央には、変位手段17が設けられている。変位手段17は基板保持装置3の外部からの操作により変位して、この変位を動力として、位置拘束手段11は位置決めを行っている。
【0019】
以下では、位置拘束手段11と押付手段12について詳細に説明する。まず、位置拘束手段11について説明する。
【0020】
図3(a)に示すように、回転台4は、スピンドル18に取り付けられており、スピンドル18に連結された図示しないモータの回動により回転軸29を軸として回転する。傾斜台10の傾斜面9は、回転軸29の通る回転中心に向かう程下降するようになっている。スピンドル18には、空気通路19が設けられている。図示しないエアポンプ等を用いて、圧縮空気が空気通路19を介して供給又は排気される。
【0021】
図3(a)と図4(a)に示すように、溝34には、回転台4の外周付近に爪39が支点となるピン37により取り付けられている。爪39の力点には、ピン38でシャフト32の一方の端部が接続されている。シャフト32は回転軸29の通る回転中心から放射状に配置されている。シャフト32の他方の端部には拘束可動片15が接続されている。
【0022】
シャフト32は、回転台4に固定されたシャフト受け33によってスライド可能に支持されており、シャフト32に固定された止め輪35とシャフト受け33との間に挿入された拘束弾性体16により、回転台4の回転軸29の回転中心の方向へ付勢されている。拘束弾性体16としてはバネを用いることができるが、このような付勢ができれば、バネの弾性力に限らずゴムの弾性力や磁石の斥力を用いてもよい。
【0023】
拘束可動片15には、貫通穴が形成され、貫通穴にはシャフト32が挿入されている。シャフト32の先端の直径は他のところより一段細くなっていてバネ36が段に引っかかるように挿入されている。シャフト32は、拘束可動片15に固定されたスライダ40によってスライド可能に支持されている。拘束可動片15を爪39に向かう水平方向に変位させると、バネ36は縮み、縮み量に応じた力でシャフト32を爪39の方向に押し出すように付勢することができる。
【0024】
図4(a)に示すように、拘束可動片15には、シャフト32の反対側に、ローラ31が設けられている。ローラ31は、変位手段17で上下に変位する昇降板20のテーパ面20aを、昇降板20の変位に合わせて転がる。このことにより、昇降板20の上下の変位は、拘束可動片15の水平方向の変位に変換される。
【0025】
変位手段17は、図3(a)の空気通路19に連通する空気口23を有するカバー22と、カバー22とで内部を覆うケース21と、圧縮空気の圧力により上下に動くダイヤフラム27と、ダイヤフラム27を止める止め輪28と、ダイヤフラム27と共に上下に動くストッパ25と、ストッパ25が上下にスライド可能なように支持するブッシュ24と、ストッパ25の上昇に伴って圧縮され、ストッパ25を降下させるように付勢することでダイヤフラム27とストッパ25を連動させるバネ26と、ストッパ25に固定されている昇降板20とを有している。
【0026】
基板5の外周は面取りが施されており、基板5の外周側面51は、丸められて、出っ張り、膨出している。傾斜台10の傾斜面9は、基板5の外周側面51の下側52を支持している。
【0027】
図3(a)と図4(a)は、位置拘束手段11の爪39によって、基板5が所定の位置に拘束されていない状態を示している。空気通路19へ圧縮空気が供給されており、圧縮空気に押されて、ダイヤフラム27が上に凸になり、ダイヤフラム27の中央部が上昇している。この上昇に伴って、ストッパ25と昇降板20が上昇している。拘束弾性体16の付勢力により、昇降板20が上昇し空いたスペースにローラ31が転がり込み、拘束可動片15が回転台4の回転軸29の回転中心の方向へ移動している。シャフト32も回転中心の方向に移動している。爪39の下部は回転中心の方向に移動して、爪39の上部は回転中心から離れる方向に移動している。爪39の上部が回転中心から離れることで、爪39がいわゆる開いた状態になり、基板5を未拘束の状態にしている。未拘束の状態では、回転台4を回転させず、基板搬送ロボット6により回転台4に基板5をのせたり、回転台4から基板5を取り出したりすることができる。
【0028】
図3(b)と図4(b)は、位置拘束手段11の爪39によって、基板5が所定の位置に拘束されている状態を示している。空気通路19を介して圧縮空気が排気されており、ダイヤフラム27は平坦になっている。ストッパ25と昇降板20は、バネ26の付勢力により、昇降板20がケース21に当接するところまで、降下している。昇降板20の降下により埋まったスペースからローラ31が転がり出て、拘束可動片15が回転台4の回転軸29の回転中心から離れる方向へ移動している。シャフト32も回転中心から離れる方向に移動している。爪39の下部は回転中心から離れる方向に移動して、爪39の上部は回転中心に向かう方向に移動している。爪39の上部が回転中心に向かうことで、爪39がいわゆる閉じた状態になり、回転に先立って外周側面51の上側53の周上の複数の場所を押す。爪39の外周側面51の上側53に接する接点は、いわゆる作用点であり、外周側面51の上側53の領域の下の方に設定されている。すなわち、爪39の外周側面51の上側53を押す接触面が回転軸29と成す90度以下の角度θ1は、60度以下であり、好ましくは、30度以下になっている。また、爪39の接触面と傾斜台10の傾斜面9とのなす角度θ10は、90度以上に設定されている。
【0029】
このように、爪39が、基板5の外周側面51の上側53に接して押すことにより、爪39で、基板5を傾斜台10に強く押し付けることなく、基板5を回転中心の方向に向かって押すことができる。基板5を傾斜台10に強く押し付けていないので、基板5と傾斜台10との間には大きな静止摩擦力と動摩擦力が生じず、基板5を回転中心の方向に向かって押すことにより、押した分だけ容易にかつ確実に基板5を移動させることができる。この押圧は図2のように回転台4の6方の外周から回転中心に向かって同時に行われるので、基板5を所定に位置に、すなわち、回転中心に基板5の中心を一致させるように、確実に移動でき、高精度な位置合わせが可能になる。この結果、基板5を所定の位置に高い精度で拘束できる。
【0030】
基板5が拘束された状態になれば、回転台4を回転させることにより、基板5も回転台4と一体になって回転させることができる。基板5は、傾斜台10に大きな力で押し付けられていないので、基板5の反りの矯正のための裏面からの気体の吹き付けは、まだ、行わない。また、基板保持装置3は、外部から圧縮空気の供給と排気を行うことにより、基板5の非拘束と拘束とを制御することができている。
【0031】
図4(c)は、位置拘束手段11の爪39によって、基板5が所定の位置に拘束されながら、回転台4と基板5とが高速で回転している状態を示している。高速回転することにより、回転台4と一体になって回転している位置拘束手段11の拘束可動片15には、遠心力が作用し、拘束可動片15は、昇降板20から離れて爪39に向かう方向に移動している。シャフト32も図4(b)に比べて回転中心から離れる方向に移動している。爪39の下部も回転中心から離れる方向に移動して、爪39の上部は図4(b)に比べて回転中心に向かう方向に移動している。爪39の上部が回転中心に向かうことで、爪39は、一層大きな力で、基板5を所定の位置に拘束することができる。この拘束する力は、遠心力に起因するので回転速度に比例して大きくなる。このことによれば、基板5の中心が回転中心からわずかにずれており、高速回転により基板5に遠心力が作用しても、さらには、回転速度が上昇し基板5に作用する遠心力が増加しても、基板5を所定の位置に拘束する力も増加するので、基板5を確実に拘束することができる。
【0032】
なお、基板5は、一般に剛体であるので、図4(b)から図4(c)への変化で示すようには、目に見えて基板5を回転中心の方向に押し縮めることはできない。その替わりに拘束可動片15の中のバネ36が、押し縮められる。この押し縮められたバネ36の付勢力により、シャフト32は回転中心から離れる方向に押され、爪39の下部も回転中心から離れる方向に押され、最終的に、爪39の上部は基板5を回転中心に向かう方向に回転速度に比例する力で押すことができる。
【0033】
ここまでは、位置拘束手段11について詳細に説明してきた。以下では、押付手段12について説明する。
【0034】
図5(a)と図6(a)に示すように、溝44には、回転台4の外周付近に爪49が支点となるピン47により取り付けられている。爪49の力点には、ピン48でシャフト42が接続されている。シャフト42は回転軸29の通る回転中心から放射状に配置されている。シャフト42の他方の端部には押付可動片13が接続されている。
【0035】
シャフト42は、回転台4に固定されたシャフト受け43によってスライド可能に支持されており、シャフト42に固定された止め輪45とシャフト受け43との間に挿入された押付弾性体14により、回転台4の回転軸29の回転中心の方向へ付勢されている。押付弾性体14としてはバネを用いることができるが、このような付勢ができれば、バネの弾性力に限らずゴムの弾性力や磁石の斥力を用いてもよい。
【0036】
押付可動片13には、貫通穴が形成され、貫通穴にはシャフト42が挿入されている。シャフト42の先端の直径は他のところより一段細くなっていてバネ46が段に引っかかるように挿入されている。シャフト42は、押付可動片13に固定されたスライダ50によってスライド可能に支持されている。押付可動片13を爪49に向かう水平方向に変位させると、バネ46は縮み、縮み量に応じた力でシャフト42を爪49の方向に押し出すように付勢することができる。
【0037】
図5(a)と図6(a)は、押付手段12の爪49によって、基板5が傾斜台10に押し付けられていない状態を示している。この状態では、回転台4は、回転を停止しているか、低速で回転している。位置拘束手段11は、基板5を非拘束にした状態であってもよいし、拘束した状態であってもよい。
【0038】
押付弾性体14の付勢力により、押付可動片13が回転台4の回転軸29の回転中心の方向へ移動して、回転台4のステップに圧接されている。シャフト42も回転中心の方向に移動している。爪49の下部は回転中心の方向に移動して、爪49の上部は回転中心から離れる方向に移動している。爪49の上部が回転中心から離れることで、爪49がいわゆる開いた状態になり、基板5を傾斜台10に押し付けられていない状態にしている。未押圧の状態では、回転台4を回転させておらず位置拘束手段11も未拘束の状態であれば、基板搬送ロボット6により回転台4に基板5をのせたり、回転台4から基板5を取り出したりすることができる。また、未押圧の状態でも、位置拘束手段11を拘束の状態にして、回転台4を回転させることができる。
【0039】
図5(b)と図6(b)は、押付手段12の爪49によって、基板5が傾斜台10に押し付けられている状態を示している。押圧の状態では、位置拘束手段11は基板5を拘束の状態にして、基板5と一体に回転台4を高回転速度で回転させている。回転台4は高速で回転しているので、押付手段12の押付可動片13には、遠心力が作用し、押付可動片13は、回転台4のステップを離れて爪49に向かう方向に前進移動している。シャフト42も回転中心から離れる方向に移動している。爪49の下部も回転中心から離れる方向に移動して、爪49の上部は回転中心に向かう方向に移動している。爪49の上部が回転中心に向かうことで、爪49がいわゆる閉じた状態になり、回転中に外周側面51の上側53の周上の複数の場所を押す。爪49の外周側面51の上側53に接する接点は、作用点となり、上側53の領域の上の方に設定され、位置拘束手段11の爪39における接点に比べて高い位置になっている。すなわち、爪49の外周側面51の上側53を押す接触面が回転軸29と成す90度以下の角度θ2は、60度を超えている。また、爪49の接触面と傾斜台10の傾斜面9とのなす角度θ20は、90度未満に設定され、位置拘束手段11の爪39の接触面と傾斜台10の傾斜面9とのなす角度θ10より小さくなっている。
【0040】
このように、爪49が、基板5の外周側面51の上側53に接して押すことにより、爪49で、基板5を傾斜台10に強く押し付けることができる。基板5を傾斜台10に強く押し付けることにより、基板5と傾斜台10との間には大きな静止摩擦力と動摩擦力が生じ、基板5が回転中心の方向に向かって押されても、基板5が傾斜台10の上を擦りながら移動することはなくなる。すなわち、高速回転においても、位置拘束手段11による高精度の位置合わせを保持することができる。また、基板5は傾斜台10に強力に押し付けられているので、基板5の反りの矯正のために、基板5の裏面から気体を吹き付けることができる。この押し付ける力は、回転の遠心力に起因しているので回転速度や、押付可動片13の重さや、押付可動片13の回転中心からの距離に比例して大きくすることができるので、気体の吹き付け強さに応じて設定することができる。
【0041】
押付手段12は、位置拘束手段11に比べて、圧縮空気による外部からの制御機構が無いので、小型化でき、回転台4上の位置拘束手段11を配置した隙間に配置することができる。
【0042】
なお、押付可動片13に作用する遠心力が大きくなると、押付可動片13の中のバネ46が、押し縮められる。この押し縮められたバネ46の付勢力により、シャフト42は回転中心から離れる方向に押され、爪49の下部も回転中心から離れる方向に押され、最終的に、爪49の上部は基板5を回転中心に向かう方向に回転速度に比例する力で押すことができる。
【0043】
こうして、位置拘束手段11で基板5を拘束して位置出しを行い、基板5と一体に回転台4を回転させて、この回転の遠心力により押付手段12で基板5を回転台4に押し付け、裏面から気体を吹き付けて基板5を矯正して、検査部2で基板5の検査を行う。検査が終了すると、矯正のための気体の吹き付けを停止し、回転を停止する。回転の停止により、位置拘束手段11は、図4の(c)の状態から(b)の状態になり、押付手段12は、図5の(b)の状態から(a)の状態になる。遠心力が作用しなくなるので、押付弾性体14は押付可動片13を後退させ基板5の押し付けを解除する。最後に、圧縮空気を変位手段17に供給することにより、位置拘束手段11は、図3の(b)の状態から(a)の状態になり、拘束弾性体16は拘束可動片15を後退させ基板5の所定の位置からの拘束を解除する。基板5は、基板搬送ロボット6により回転台4からカセット7まで搬送可能になる。
【0044】
実施形態によれば、基板保持装置3は、基板5の表面と裏面には接触せず、外周側面にのみ接するので、基板5の汚染を低減することができる。そして、高精度の位置決めと、強力な基板の押し付けとができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施形態に係る検査装置の構成図である。
【図2】実施形態に係る基板保持装置の平面図である。
【図3】(a)は未拘束の際の図2のA−A方向の断面図であり、(b)は拘束の際の図2のA−A方向の断面図である。
【図4】(a)は未拘束の際の基板保持装置の位置拘束手段の断面図であり、(b)は、拘束の際の位置拘束手段の断面図であり、(c)は、拘束かつ高速回転の際の位置拘束手段の断面図である。
【図5】(a)は未押し付けの際の図2のB−B方向の断面図であり、(b)は押し付けの際の図2のB−B方向の断面図である。
【図6】(a)は未押し付けの際の基板保持装置の押付手段の断面図であり、(b)は、押し付けの際の押付手段の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 検査装置
3 基板保持装置
4 回転台
5 基板
9 傾斜面
10 傾斜台
11 位置拘束手段
12 押付手段
13 押付可動片
14 押付弾性体(バネ)
15 拘束可動片
16 拘束弾性体(バネ)
17 変位手段
20 昇降板
20a テーパ面
27 ダイヤフラム
29 回転軸
32 シャフト
39 爪
42 シャフト
49 爪
51 外周側面
52 外周側面下側
53 外周側面上側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の外周側面の下側を支える傾斜面を有し、前記基板の法線を回転軸として前記基板と一体になって回転する回転台と、
前記回転台と一体になって回転し、回転に先立って前記外周側面の上側の周上の複数の場所を押して、前記基板を前記回転台上の所定の位置に拘束する位置拘束手段と、
前記回転台と一体になって回転し、回転中に前記上側の周上の複数の場所を押して、前記基板を前記傾斜面に押し付ける押付手段とを有することを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記位置拘束手段が押す前記上側の位置は、前記押付手段が押す前記上側の位置より下であることを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記位置拘束手段の前記上側を押す接触面が前記回転軸と成す90度以下の角度は、前記押付手段の前記上側を押す接触面が前記回転軸と成す90度以下の角度より小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記位置拘束手段の前記上側を押す複数の場所が前記周上で等間隔に設けられ、
前記押付手段の前記上側を押す複数の場所が前記周上で等間隔に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記押付手段は、回転に伴って生じる遠心力で動く押付可動片を有し、前記押付可動片が動くことにより、前記基板を前記傾斜面に押し付けることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の基板保持装置。
【請求項6】
前記押付手段は、押付弾性体を有し、
前記回転の開始により、前記押付弾性体に抗して前記押付可動片を前記遠心力で前進させ前記基板を前記傾斜面に押し付け、
前記回転の停止により、前記押付弾性体は前記押付可動片を後退させ前記基板の押し付けを解除することを特徴とする請求項5に記載の基板保持装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の基板保持装置を用いて前記基板を回転させながら、前記基板の検査または処理を行うことを特徴とする検査または処理の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−60277(P2008−60277A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234631(P2006−234631)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】