説明

基板処理システム及び該基板処理システムにおける熱再利用方法

【課題】各構成装置の配置の自由度が低下するのを防止することができる基板処理システムを提供する。
【解決手段】半導体デバイス製造システム10は、高温でウエハWを処理する熱処理装置12と、低温でウエハWを処理する洗浄装置13と、熱処理装置12及び洗浄装置13と着脱自在であり、熱処理装置12と接続された場合に高温の冷却ガスが供給され、洗浄装置13と接続された場合に低温の加熱ガスが供給される蓄熱モジュール14とを備え、蓄熱モジュール14は相変化材料57が含浸された蓄熱材52を内蔵し、供給される高温の冷却ガスの温度が相変化材料57の温度よりも高い場合には、相変化材料57が高温の冷却ガスから熱エネルギーを受け取って蓄積し、供給される低温の加熱ガスの温度が相変化材料57の温度よりも低い場合には、相変化材料57が低温の加熱ガスへ蓄積された熱エネルギーを受け渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の高温で基板を処理する第1の基板処理装置及び所定の高温よりも低温で基板を処理する第2の基板処理装置を少なくとも備える基板処理システム、及び該基板処理システムにおける熱再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、基板としてのウエハからチップ等の半導体デバイスを製造する半導体デバイス製造システムは、複数のウエハへ高温、例えば、300℃以上で熱酸化処理を施す熱処理装置や、常温よりも高く且つ熱処理装置における処理温度よりも低い温度でウエハへ洗浄処理を施す洗浄装置を備える。
【0003】
熱処理装置や洗浄装置へは熱エネルギーとして電力が供給されるが、熱処理装置では熱酸化処理後にウエハの温度を常温、若しくはその近傍まで下げる必要があり、装置内の熱エネルギーを、ガスや水を熱媒体として用いて排出している。洗浄装置でも、同様に、洗浄処理のためにウエハへ噴出する超純水を熱媒体によって加熱する洗浄処理後に熱エネルギーを排出している。これらの装置においてはエネルギーの供給と排出が独立して行われているため、排出された熱エネルギーは利用されることなく、そのまま半導体デバイス製造システムの外へ放出されている。
【0004】
そこで、半導体デバイス製造システムにおけるエネルギー消費量を低減すべく、図8に示すように、熱処理装置としての加熱炉100から排出された高温、例えば、80℃の冷却水Cを洗浄装置101へ供給する排熱利用システムが本出願人によって提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この排熱利用システムでは、超純水加熱装置102が、供給された80℃の冷却水Cとの熱交換によって洗浄用の超純水Pを60℃まで加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−246359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図8の排熱利用システムでは、加熱炉100及び洗浄装置101を冷却水C用の配管によって接続する必要があるため、加熱炉100や洗浄装置101の配置の自由度が低下するという問題がある。また、加熱炉100からの排熱タイミングと超純水加熱装置102による超純水の加熱タイミングとが異なった場合、冷却水Cを大量に貯めるためのタンク等の設置が必要になるため、やはり、排熱利用システムにおける各構成装置の配置の自由度が低下するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、各構成装置の配置の自由度が低下するのを防止することができる基板処理システム及び該基板処理システムにおける熱再利用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の基板処理システムは、所定の高温で基板を処理する第1の基板処理装置と、前記所定の高温よりも低温で基板を処理する第2の基板処理装置とを備える基板処理システムにおいて、前記第1の基板処理装置及び前記第2の基板処理装置と着脱自在であり、前記第1の基板処理装置又は前記第2の基板処理装置から熱媒体が流入し、若しくは、前記第1の基板処理装置又は前記第2の基板処理装置へ前記熱媒体を流出させる移動体を備え、前記移動体は蓄熱材を内蔵し、前記熱媒体の温度が前記蓄熱材の温度よりも高い場合には、前記蓄熱材が前記熱媒体から熱エネルギーを受け取って蓄積し、前記熱媒体の温度が前記蓄熱材の温度よりも低い場合には、前記蓄熱材が前記熱媒体へ蓄積された熱エネルギーを受け渡すことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の基板処理システムは、請求項1記載の基板処理システムにおいて、前記蓄熱材は温度によって液相又は固相へ変化する相変化材料を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の基板処理システムは、請求項1又は2記載の基板処理システムにおいて、前記移動体は、断熱材からなる断熱容器と、前記熱媒体を前記断熱容器の内部へ導入する導入口と、該導入口とは異なる、前記熱媒体を前記断熱容器の内部から排出する排出口とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の基板処理システムは、請求項3記載の基板処理システムにおいて、前記蓄熱材は前記断熱容器の内部に配された多孔質材からなる基部と、該基部へ含浸された前記相変化材料とからなることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の基板処理システムは、請求項3記載の基板処理システムにおいて、前記移動体は前記断熱容器の内部に配された複数の密閉体を有し、前記密閉体は伝熱材からなる表皮部と、該表皮部によって画成される内部とを有し、前記内部に前記蓄熱材が充填されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の基板処理システムは、請求項3記載の基板処理システムにおいて、前記移動体は、前記断熱容器の内部に配され且つ前記熱媒体が流れる配管を有し、該配管は前記断熱容器の内部において前記蓄熱材と接触することを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の基板処理システムは、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基板処理システムにおいて、前記第1の基板処理装置は、同時に少なくとも2つの前記移動体と接続され、前記少なくとも2つの移動体の各々に前記熱媒体を供給することを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の基板処理システムは、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の基板処理システムにおいて、前記第2の基板処理装置は、同時に少なくとも2つの前記移動体と接続され、前記少なくとも2つの移動体の各々から前記熱媒体が流入されることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項9記載の基板処理システムにおける熱再利用方法は、所定の高温で基板を処理する第1の基板処理装置と、前記所定の高温よりも低温で基板を処理する第2の基板処理装置と、前記第1の基板処理装置及び前記第2の基板処理装置と着脱自在である移動体とを備え、前記移動体は蓄熱材を内蔵する基板処理システムにおける熱再利用方法であって、前記移動体と前記第1の基板処理装置を接続して前記第1の基板処理装置から前記移動体へ前記蓄熱材の温度よりも高い温度の第1の熱媒体を供給し、前記第1の熱媒体の熱エネルギーを前記蓄熱材で受け取って蓄積する蓄熱ステップと、前記第1の熱媒体の熱エネルギーを前記蓄熱材に蓄積した前記移動体を前記第1の基板処理装置から離脱させて前記第2の基板処理装置へ移動させ、さらに前記第2の基板処理装置へ接続する移動ステップと、前記移動体を前記第2の基板処理装置を接続し、前記第1の熱媒体の熱エネルギーを蓄積した蓄熱材の温度よりも低い温度の第2の熱媒体を前記移動体へ供給し、前記蓄熱材の熱エネルギーを前記第2の熱媒体へ受け渡し、前記熱エネルギーが受け渡された第2の熱媒体を前記第2の基板処理装置へ流入させる放熱ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、移動体は蓄熱材によって熱エネルギーを蓄積することができるとともに、第1の基板処理装置又は第2の基板処理装置の熱媒体と熱エネルギーの授受を行うことができるので、移動体は熱媒体を介して第1の基板処理装置の熱エネルギーを受け取ることができ、且つ第2の基板処理装置へ熱エネルギーを供給することができる。また、移動体は第1の基板処理装置及び第2の基板処理装置と着脱自在なので、第1の基板処理装置及び第2の基板処理装置の間において移動体を介して熱エネルギーの受け渡しを行うことができる。その結果、第1の基板処理装置及び第2の基板処理装置を配管で接続する必要を無くすことができ、さらに、第1の基板処理装置が排出する熱媒体を大量に貯めるタンクを設置する必要を無くすことができるため、基板処理システムにおける各構成装置の配置の自由度が低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理システムとしての半導体デバイス製造システムの構成を概略的に示す図である。
【図2】図1における熱処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図3】図1における洗浄装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図4】図1における蓄熱モジュールの構成を概略的に示す断面図であり、図4(A)は本実施の形態に係る蓄熱モジュールを示し、図4(B)は第1の変形例に係る蓄熱モジュールを示し、図4(C)は第2の変形例に係る蓄熱モジュールを示す。
【図5】第3の変形例に係る蓄熱モジュールの構成を概略的に示す図であり、図5(A)は蓄熱モジュールの縦断面図であり、図5(B)は蓄熱モジュールの水平断面図であり、図5(C)は蓄熱モジュールにおける蓄熱ユニットの拡大断面図である。
【図6】第4の変形例に係る蓄熱モジュールの構成を概略的に示す図であり、図6(A)は蓄熱モジュールの縦断面図であり、図6(B)は蓄熱モジュールの水平断面図であり、図6(C)は蓄熱モジュールにおける蓄熱ユニットの拡大断面図である。
【図7】冷却ガスや加熱ガスが蓄熱材に直接接触しない蓄熱モジュールの構成を概略的に示す図であり、図7(A)は第5の変形例に係る蓄熱モジュールを示し、図7(B)は第6の変形例に係る蓄熱モジュールを示す。
【図8】従来の排熱利用システムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る基板処理システムとしての半導体デバイス製造システムの構成の例を概略的に示す図である。
【0022】
図1において、半導体デバイス製造システム10は、クリーンルーム(図示しない)内に配されたCVD(Chemical Vapor Deposition)処理装置11と、熱処理装置12(第1の基板処理装置)と、洗浄装置13(第2の基板処理装置)と、熱処理装置12及び洗浄装置13に対して着脱自在であり、熱処理装置12及び洗浄装置13を移動可能な蓄熱モジュール14(移動体)とを備え、CVD処理装置11、熱処理装置12及び洗浄装置13は各装置の動作を制御するサーバ(図示しない)と信号線15を介して接続される。なお、図1に示していないが、半導体デバイス製造システム10は、当該システムの使用目的や規模に応じてさらにエッチング装置やアッシング装置、露光装置等の他の処理装置を備えてもよい。
【0023】
CVD処理装置11は半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)を収容して該ウエハの表面へ所望の膜を形成するCVD処理を実行し、熱処理装置12はウエハを収容して該ウエハの表面に熱酸化膜を形成する熱酸化処理を実行し、洗浄装置13はウエハを収容して該ウエハの表面から異物等を除去する洗浄処理を実行する。熱処理装置12における熱酸化処理ではウエハが300℃〜800℃に加熱され、洗浄装置13における洗浄処理ではウエハへ向けて約60℃の超純水が噴出される。したがって、洗浄装置13では、熱処理装置12における処理温度よりも低温でウエハに処理が施される。
【0024】
図2は、図1における熱処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0025】
図2において、熱処理装置12は、反応炉16と、該反応炉16に接続された蓄熱モジュール受入部17とを備える。反応炉16は、図中上下方向に沿って立設された略円筒状の反応管18と、該反応管18を取り囲む筐体状の断熱容器19と、反応管18の下方に配された筒状のマニホールド20とを有する。反応管18は、上下部が開放された内管21と、該内管21を囲む有天井の外管22とから構成される二重管構造を有し、耐熱材料、例えば、石英によって形成される。また、内管21の内部には複数のウエハWの表面を暴露させつつ該複数のウエハWを図中上下方向に沿って重ねて収容可能なウエハボード23が配置されている。
【0026】
マニホールド20は上部が内管21の下端と気密に接続され、内部へ処理ガス供給管24が連通される。処理ガスは処理ガス供給管24からマニホールド20を介して内管21の内部へ供給される。
【0027】
断熱容器19の内壁面には、例えば、抵抗発熱体からなるヒータ25が配置され、該ヒータ25は反応管18の内部、特に、内管21の内部を所定の温度、例えば、300℃〜800℃へ昇温させる。その結果、各ウエハWが、例えば、300℃〜800℃まで加熱され、各ウエハWの表面が処理ガスと反応して熱酸化膜が各ウエハWの表面に形成される。
【0028】
上記熱酸化膜の形成の後、300℃〜800℃まで加熱された各ウエハWを冷却するために、処理ガス供給管24からマニホールド20を介して内管21の内部へ熱媒体として冷却ガス、例えば、窒素ガスや空気が導入される。内管21の内部へ導入された冷却ガスは各ウエハWから熱エネルギーを受け取ることによって各ウエハWを冷却する。熱エネルギーを受け取った冷却ガスは、高温、例えば、100℃〜200℃となるが、該高温の冷却ガスは外管22に接続された排気管26を介して反応管18から排出される。
【0029】
蓄熱モジュール受入部17は、蓄熱モジュール14を収容するバスタブ状の受入体27と、該受入体27の内部に配されたガス流路28とを有する。受入体27は、収容した蓄熱モジュール14が備える後述の第1の熱媒体導入・排出口53及び第2の熱媒体導入・排出口54に対応する位置においてそれぞれ熱媒体供給口29及び熱媒体受入口30を有する。蓄熱モジュール14が受入体27へ収容された際、熱媒体供給口29は第1の熱媒体導入・排出口53に接続され、且つ熱媒体受入口30は第2の熱媒体導入・排出口54に接続される。
【0030】
ガス流路28は途中で2つに分岐し、分岐配管28aは媒体供給口29へ接続され、分岐配管28bは受入体27の下部を通って該受入体27の外部へ導かれる。媒体受入口30及び分岐配管28bの間には、媒体受入口30に接続され且つガス流路28の分岐部よりも下流で分岐配管28bと合流する分岐配管28cが配される。
【0031】
また、ガス流路28は、分岐配管28aに配された開閉バルブとしてのダンパー31と、分岐配管28bに配された開閉バルブとしてのダンパー32とを備え、ダンパー31,32はそれぞれ分岐配管28a,28bを流れるガスの流量を調整する。前述の通り、各ウエハWを冷却して高温となった冷却ガス(熱媒体)は、排気管26から供給されて分岐配管28bのみ、及び/又は分岐配管28a、蓄熱モジュール14、分岐配管28c及び分岐配管28bを経由して受入体27の外部へ排出される。
【0032】
図3は、図1における洗浄装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0033】
図3において、洗浄装置13は、洗浄部33と、該洗浄部33に接続された蓄熱モジュール受入部34とを備える。洗浄部33は、筐体状の洗浄室35と、該洗浄室35に隣接する配管室36とを有する。洗浄室35はウエハホルダ37と、該ウエハホルダ37と相対するように配されたシャワーヘッド38とを有する。ウエハホルダ37は、複数のウエハWの表面をシャワーヘッド38へ対向させつつ、該複数のウエハWを図中上下方向に沿って重ねて収容する。
【0034】
シャワーヘッド38には加熱ガス供給管39と、超純水供給管40と、加熱ガス排出管39aとが接続され、シャワーヘッド38の内部において、加熱ガス供給管39から供給された加熱ガスの熱エネルギーが超純水供給管40から供給された超純水に受け渡されて超純水が所定の温度、例えば、60℃まで加熱される。シャワーヘッド38は加熱された超純水Pをウエハホルダ37に収容された各ウエハWに向けて噴出し、各ウエハWの表面を洗浄する。熱エネルギーを超純水に受け渡した加熱ガスは加熱ガス排出管39aを経由して洗浄部33の外部へ排出される。
【0035】
配管室36は外部から内部へ導かれ、且つ該内部を経由して加熱ガス供給管39へ接続される加熱ガス導入管41と、該加熱ガス導入管41の途中に配された熱交換器42とを有する。加熱ガス導入管41は、例えば、80℃〜150℃の加熱ガスを外部から導入する。熱交換器42は、例えば、加熱ガス導入管41に巻回された抵抗発熱体からなるヒータ(図示しない)を有し、加熱ガス導入管41を流れる加熱ガスが所定の温度に満たない場合、加熱ガスを所定の温度、例えば、80℃まで加熱する。また、熱交換器42の手前で加熱ガス導入管41から分岐配管41aが分岐し、分岐配管41aは配管室36の外部へ導かれる。分岐配管41aには開閉バルブとしてのダンパー43が配される。
【0036】
蓄熱モジュール受入部34は、蓄熱モジュール14を収容するバスタブ状の受入体44と、該受入体44の内部に配されたガス流路45とを有する。受入体44は、収容した蓄熱モジュール14が備える後述の第2の熱媒体導入・排出口54及び第1の熱媒体導入・排出口53に対応する位置においてそれぞれ熱媒体供給口46及び熱媒体受入口47を有する。蓄熱モジュール14が受入体44へ収容された際、熱媒体供給口46は第2の熱媒体導入・排出口54に接続され、且つ熱媒体受入口47は第1の熱媒体導入・排出口53に接続される。
【0037】
ガス流路45は加熱ガス導入管41から分岐した配管からなり、熱媒体供給口46へ接続される。また、熱媒体受入口47及び加熱ガス導入管41の間には、熱媒体受入口47に接続され且つガス流路45の分岐部よりも下流で加熱ガス導入管41と合流する分岐配管45aが配される。
【0038】
ガス流路45は開閉バルブとしてのダンパー48を備え、分岐配管45aは開閉バルブとしてのダンパー49を備える。ダンパー48,49は協働してガス流路45を流れるガスの流量を調整する。また、加熱ガス導入管41は、ガス流路45への分岐部及び分岐配管45aとの合流部の間に配された開閉バルブとしてのダンパー50を備える。
【0039】
ダンパー48,49が開放され、且つダンパー50が閉鎖されている場合、加熱ガス導入管41を流れる加熱ガス(熱媒体)は、ガス流路45、蓄熱モジュール14及び分岐配管45aを経由して加熱ガス導入管41へ戻り、その後、熱交換器及び加熱ガス供給管39を経由してシャワーヘッド38へ供給される。
【0040】
図4は、図1における蓄熱モジュールの構成を概略的に示す断面図であり、図4(A)は本実施の形態に係る蓄熱モジュールを示し、図4(B)は第1の変形例に係る蓄熱モジュールを示し、図4(C)は第2の変形例に係る蓄熱モジュールを示す。
【0041】
まず、図4(A)において、蓄熱モジュール14は、筐体状の断熱材からなる断熱容器51と、該断熱容器51の内部へ部分的に充填された蓄熱材52と、互いに断熱容器51の内部を挟んで対向するように断熱容器51の側壁へ設けられる第1の熱媒体導入・排出口53及び第2の熱媒体導入・排出口54とを備える。
【0042】
蓄熱材52は断熱容器51の内部へ部分的に充填されるため、断熱容器51の内部には空間55が存在し、第1の熱媒体導入・排出口53及び第2の熱媒体導入・排出口54は外部と空間55を連通させる。
【0043】
蓄熱材52は、伝熱性の多孔質材(ポーラス材)からなる基部56と、該基部56に含浸された、例えば、パラフィンからなる相変化材料57とによって構成される。基部56に含浸された相変化材料57は、基部56内に存在する各ポーラス(空孔)に貯蔵される。
【0044】
相変化材料57は、温度が低い場合には固相を呈し、温度が高い場合には液相を呈する。通常、温度に応じて相変化する物質(相変化材料)は、固相から液相へ相変化する場合に大量の熱エネルギーを吸収し、液相から固相へ相変化する場合に大量の熱エネルギーを放出するという性質を有する。また、相変化材料では、相変化の過程において吸収若しくは放出される熱エネルギーが相変化に費やされるために温度変化に寄与せず、そのため相変化を起こしている間の相変化材料の温度は相変化温度でほぼ一定となる。
【0045】
本実施の形態では、上述した相変化材料の性質を利用する。例えば、相変化材料57が固相を呈する場合、蓄熱モジュール14を熱処理装置12の蓄熱モジュール受入部17へ収容し、反応管18において各ウエハWを冷却した高温の冷却ガスを、排気管26、分岐配管28a、熱媒体供給口29及び第1の熱媒体導入・排出口53を介して空間55へ導入し、断熱容器51の内部において高温の冷却ガスと基部56に含浸された相変化材料57とを接触させることにより、相変化材料57を固相から液相へ変化させて相変化材料57に高温の冷却ガスの熱エネルギーを吸収させる。その結果、相変化材料57は熱エネルギーを蓄積する。ここで、相変化材料57に高温の冷却ガスの熱エネルギーを吸収させるためには、相変化材料57の温度が高温の冷却ガスの温度よりも低いことが必要である。
【0046】
このとき、前述したように、相変化材料57の温度は相変化の間、一定の相変化温度に留まるため、高温の冷却ガスとの間で熱平衡が保たれれば、蓄熱モジュール14に熱エネルギーが蓄積され続けている間において冷却ガスの温度は一定となる。なお、熱エネルギーが吸収された冷却ガスは、第2の熱媒体導入・排出口54、熱媒体受入口30、分岐配管28c及び分岐配管28bを介して熱処理装置12の外部へ排出される。
【0047】
また、相変化材料57が液相を呈する場合、蓄熱モジュール14を洗浄装置13の蓄熱モジュール受入部34へ収容し、外部から洗浄装置13の加熱ガス導入管41によって供給された低温の加熱ガスをガス流路45、熱媒体供給口46及び第2の熱媒体導入・排出口54を介して空間55へ導入し、断熱容器51の内部において低温の加熱ガスと基部56に含浸された相変化材料57とを接触させることにより、相変化材料57を液相から固相へ変化させて相変化材料57から熱エネルギーを放出させ、該熱エネルギーを加熱ガスに受け渡す。その結果、加熱ガスは加熱される。ここで、加熱ガスに相変化材料57の熱エネルギーを受け渡すためには、相変化材料57の温度が低温の加熱ガスの温度よりも高いことが必要である。前述の熱エネルギーの蓄積の場合と同様、熱エネルギーの放出の場合においても、相変化の過程において相変化材料57の温度は相変化温度でほぼ一定に留まるため、加熱ガスとの間で熱平衡が保たれれば、蓄熱モジュール14から熱エネルギーの放出が続いている間、加熱ガスは一定の温度を保つ。なお、加熱された加熱ガスは、第1の熱媒体導入・排出口53、熱媒体受入口47及び分岐配管45aを介して加熱ガス導入管41へ復帰し、その後、熱交換器42及び加熱ガス供給管39を介してシャワーヘッド38へ供給される。
【0048】
すなわち、本実施の形態では、相変化材料57の相変化を利用することにより、蓄熱モジュール14は熱処理装置12において生じた熱エネルギーを冷却ガスを介して蓄積し、蓄積した熱エネルギーを加熱ガスを介して洗浄装置13へ供給することができるので、熱処理装置12及び洗浄装置13の間で熱エネルギーの受け渡しを行うことができる。
【0049】
上述した図4(A)における蓄熱モジュール14では、高温の冷却ガスや低温の加熱ガスが蓄熱材52と直接接触するが、蓄熱材52の下部における相変化材料57には高温の冷却ガスや低温の加熱ガスが接触し難いため、蓄熱材52の下部における相変化材料57の熱エネルギーの授受を効率よく行うことができない。したがって、高温の冷却ガスや低温の加熱ガスが流れる空間55から蓄熱材52の下部へ到達する伝熱手段を設けるのが好ましい。具体的には、蓄熱材52を相変化材料のみで構成し、熱伝導率の高い繊維の束やメッシュで形成された伝熱シート58を蓄熱材52の下部まで埋め込み、該伝熱シート58の一部を空間55へ露出させるか(図4(B))、蓄熱材52を同様に相変化材料のみで構成し、該蓄熱材52へ熱伝導率の高い材料からなる複数の棒体59を蓄熱材52の下部まで埋め込み、各棒体59の上端を空間55へ露出させる(図4(C))のが好ましい。これにより、蓄熱材52の下部と空間55における加熱ガスや冷却ガスとの熱エネルギーの授受を効率よく行うことができる。
【0050】
相変化材料は構成材質によって固相・液相の相変化温度が変わるため、相変化材料は、上述したパラフィンに限られず、蓄熱モジュール14が蓄積、放出すべき熱エネルギーの量や、それぞれの装置において制御すべき温度に応じて適切なものを選択すればよい。また、蓄熱モジュール14の大きさ、蓄熱量に特に制限はないが、熱処理装置12では、通常、150枚のウエハWが一度に300℃〜800℃で熱処理されるため、熱処理装置12で発生する熱エネルギーの量は凡そ3MJ(メガジュール)〜10MJである。したがって、蓄熱材52が蓄積可能な熱エネルギーの量を少なくとも10MJ以上となるように、相変化材料の量を設定すればよく、これにより、1つの蓄熱モジュール14で熱処理装置12における発生熱エネルギーの全てを蓄積することができ、熱処理装置12及び洗浄装置13の間における熱エネルギーの受け渡しの効率を向上することができる。
【0051】
上述した図4(A)〜図4(C)の蓄熱モジュール14では、高温の冷却ガスや低温の加熱ガスが蓄熱材52と直接接触するが、冷却ガスや加熱ガスの種類によっては蓄熱材52と接触すると、有害物質等を生じたり、蓄熱材52が劣化する場合がある。このような場合には、冷却ガスや加熱ガスを蓄熱材52に直接接触させることなく、相変化材料の熱エネルギーの授受を行うのが好ましい。以下、冷却ガスや加熱ガスを蓄熱材52に直接接触させることなく相変化材料の熱エネルギーの授受を行うことができる蓄熱モジュール14について説明する。
【0052】
図5は、第3の変形例に係る蓄熱モジュールの構成を概略的に示す図であり、図5(A)は蓄熱モジュールの縦断面図であり、図5(B)は蓄熱モジュールの水平断面図であり、図5(C)は蓄熱モジュールにおける蓄熱ユニットの拡大断面図である。第3の変形例に係る蓄熱モジュールは、その構成、作用が上述した図4(A)〜図4(C)の蓄熱モジュール14と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0053】
図5(A)及び図5(B)において、蓄熱モジュール14は、断熱容器51の内部に配された多数の棒状の蓄熱ユニット60(密閉体)を備える。蓄熱ユニット60は、上下端が封止された伝熱性の管状の本体61(表皮部)と、該本体61の内部に充填された相変化材料62(蓄熱材)とからなる(図5(C))。各蓄熱ユニット60は断熱容器51の内部において上下方向に沿って立設され、隣接する2つの蓄熱ユニット60には所定の間隔が保たれているので、空間55へ導入された冷却ガスや加熱ガスが各蓄熱ユニット60と満遍なく接触することができる。
【0054】
各蓄熱ユニット60における本体61の壁部の厚さは、例えば、0.2mm〜0.5mmなので、本体61に接触した高温の冷却ガスの熱エネルギーを相変化材料62へ効率よく伝達することができるとともに、相変化材料62の熱エネルギーを本体61に接触した低温の加熱ガスへ効率よく伝達することができる。したがって、冷却ガスや加熱ガスが相変化材料62と直接接触していなくても、冷却ガスや加熱ガスと、相変化材料62との熱エネルギーの授受を効率よく行うことができる。
【0055】
なお、各蓄熱ユニット60は断熱容器51の内部において上下方向に沿って立設されたが、各蓄熱ユニット60の両端あるいは一端が断熱容器51の側内壁に接するように各蓄熱ユニット60を水平且つ互いに並列に設置してもよく、各蓄熱ユニット60を斜め方向に且つ互いに並列に設置してもよく、或いは、各蓄熱ユニット60を互いに交差させて配置してもよい。すなわち、冷却ガスや加熱ガスが各蓄熱ユニット60と満遍なく接触する限り、各蓄熱ユニット60はどのように配置してもよい。
【0056】
図6は、第4の変形例に係る蓄熱モジュールの構成を概略的に示す図であり、図6(A)は蓄熱モジュールの縦断面図であり、図6(B)は蓄熱モジュールの水平断面図であり、図6(C)は蓄熱モジュールにおける蓄熱ユニットの拡大断面図である。第4の変形例に係る蓄熱モジュールも、その構成、作用が上述した図4(A)〜図4(C)の蓄熱モジュール14と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0057】
図6(A)及び図6(B)において、蓄熱モジュール14は、断熱容器51の内部に配された多数の球状の蓄熱ユニット63(密閉体)を備える。蓄熱ユニット63は、伝熱性の球状の本体64(表皮部)と、該本体64の内部に充填された相変化材料65(蓄熱材)とからなる(図6(C))。各蓄熱ユニット63は球状を呈するため、ある蓄熱ユニット63が隣接する蓄熱ユニット63と接触しても、必ず該2つの蓄熱ユニット63の間には隙間が生じ、該隙間に冷却ガスや加熱ガスが進入することができ、もって、各蓄熱ユニット63は冷却ガスや加熱ガスと確実に接触することができる。
【0058】
各蓄熱ユニット63における本体64の壁部の厚さは、例えば、0.2mm〜0.5mmなので、蓄熱ユニット60と同様に、冷却ガスや加熱ガスが相変化材料65と直接接触していなくても、冷却ガスや加熱ガスと、相変化材料65との熱エネルギーの授受を効率よく行うことができる。
【0059】
図7は、冷却ガスや加熱ガスが蓄熱材に直接接触しない蓄熱モジュールの構成を概略的に示す図であり、図7(A)は第5の変形例に係る蓄熱モジュールを示し、図7(B)は第6の変形例に係る蓄熱モジュールを示す。第5の変形例、及び第6の変形例に係る蓄熱モジュールも、その構成、作用が上述した図4(A)〜図4(C)の蓄熱モジュール14と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0060】
図7(A)において、蓄熱モジュール14は、第1の熱媒体導入・排出口53及び第2の熱媒体導入・排出口54と気密に連通し、断熱容器51の内部に配された伝熱ユニット66と、断熱容器51の内部へ部分的に充填された相変化材料のみからなる蓄熱材67とを有する。伝熱ユニット66は、第1の熱媒体導入・排出口53及び第2の熱媒体導入・排出口54の間に介在する管状体68と、該管状体68から蓄熱材67へ向けて突出して一部が該蓄熱材67と接触する管状の複数の突出部69とからなり、各突出部69の先端は封止されている。伝熱ユニット66は第1の熱媒体導入・排出口53及び第2の熱媒体導入・排出口54と気密に連通し、且つ管状体68及び突出部69がともに管状を呈するため、管状体68及び突出部69の内部を第1の熱媒体導入・排出口53や第2の熱媒体導入・排出口54から導入された冷却ガスや加熱ガスが流れる。特に、各突出部69の内部を流れる冷却ガスや加熱ガスは突出部69の壁面を介して蓄熱材67との熱エネルギーの授受を行う。なお、各突出部69の壁面の厚さも、例えば、0.2mm〜0.5mmなので、冷却ガスや加熱ガスと、蓄熱材67との熱エネルギーの授受を効率よく行うことができる。
【0061】
また、突出部69内部を冷却ガスが循環しやすくするために、突出部69の内部において突出部69の中心軸に沿って棒状あるいは板状の挿入部材を挿入し、突出部69の側壁面と挿入部材の間に冷却ガスが流通する空間を形成してもよい。更に、管状体68内に、突出部69へ冷却ガスの流れを誘導する遮蔽板を突出部69との接合部へ部分的に設置してもよい。
【0062】
図7(B)において、蓄熱モジュール14は、第1の熱媒体導入・排出口53及び第2の熱媒体導入・排出口54と気密に連通し、断熱容器51の内部に配された伝熱ユニット70と、断熱容器51の内部へ部分的に充填された相変化材料のみからなる蓄熱材71とを有する。伝熱ユニット70は、第1の熱媒体導入・排出口53及び第2の熱媒体導入・排出口54の間に介在する管状体72と、細径の複数の配管が網目状に配されて構成され且つ管状体72から蓄熱材71へ向けて突出して大半が蓄熱材71へ埋没する網目配管部73とからなる。網目配管部73は蓄熱材71から封止されている。伝熱ユニット70は第1の熱媒体導入・排出口53及び第2の熱媒体導入・排出口54と気密に連通し、且つ管状体72及び網目配管部73の各部がともに管状を呈するため、管状体72及び網目配管部73の内部を第1の熱媒体導入・排出口53や第2の熱媒体導入・排出口54から導入された冷却ガスや加熱ガスが流れる。特に、各網目配管部73の内部を流れる冷却ガスや加熱ガスは網目配管部73の壁面を介して蓄熱材71との熱エネルギーの授受を行う。なお、各網目配管部73の壁面の厚さも、例えば、0.2mm〜0.5mmなので、冷却ガスや加熱ガスと、蓄熱材71との熱エネルギーの授受を効率よく行うことができる。また、管状体72内に、網目配管73へ冷却ガスの流れを誘導する遮蔽板を網目配管73との接合部へ部分的に設置してもよい。
【0063】
次に、本発明の実施の形態に係る基板処理システムにおける熱再利用方法について説明する。以下の熱再利用方法においては、図4(A)に示す蓄熱モジュール14が用いられるものとする。
【0064】
まず、熱処理装置12において各ウエハWの熱酸化膜の形成後、蓄熱モジュール14を熱処理装置12の蓄熱モジュール受入部17へ収容する。このとき、蓄熱モジュール14の第1の熱媒体導入・排出口53は蓄熱モジュール受入部17の熱媒体供給口29に接続され、第2の熱媒体導入・排出口54は熱媒体受入口30に接続される。なお、蓄熱モジュール14は予め蓄熱モジュール受入部17へ収容しておいてもよい。
【0065】
その後、ダンパー32を閉鎖するとともにダンパー31を開放して排気管26を介して反応管18から排出される高温の冷却ガス(第1の媒体)を分岐配管28aへ流入させる。
【0066】
分岐配管28aへ流入した高温の冷却ガスは蓄熱モジュール14の内部へ導入され、高温の冷却ガスの温度が蓄熱モジュール14の蓄熱材52における相変化材料57の温度よりも高い場合、高温の冷却ガスは熱エネルギーを相変化材料57へ受け渡す。このとき、熱エネルギーを受け取った相変化材料57の一部が固相から液相へ相変化し、熱エネルギーを蓄積する(蓄熱ステップ)。相変化が起きている間は相変化材料57の温度は相変化温度で一定に保たれるため、熱エネルギーを受け渡している冷却ガスも一定の温度を保つ。
【0067】
次いで、全ての相変化材料57が液相へ相変化した場合、若しくは、熱エネルギーを蓄熱モジュール14に受け渡した後の冷却ガスの温度が上昇した場合は、蓄熱モジュール14に蓄積された熱エネルギーが満杯となっている場合に他ならないため、ダンパー31を閉鎖するとともにダンパー32を開放して冷却ガスを分岐配管28bへ流して熱処理装置12の外部へ排出する。その後、蓄熱モジュール受入部17から蓄熱モジュール14を離脱させる。なお、ウエハWの温度が目標温度まで冷却された時点において相変化材料が完全に液相へ相変化し終わっていない場合は、さらに次の熱酸化処理後のウエハWの冷却の際、同じ蓄熱モジュール14を引き続き使用してもよい。
【0068】
次いで、熱エネルギーを蓄積する相変化材料57を内包する蓄熱モジュール14を洗浄装置13へ移動させ、該洗浄装置13の蓄熱モジュール受入部34へ収容する(移動ステップ)。このとき、蓄熱モジュール14の第1の熱媒体導入・排出口53は蓄熱モジュール受入部34の熱媒体受入口47に接続され、第2の熱媒体導入・排出口54は熱媒体供給口46に接続される。
【0069】
その後、ダンパー50を閉鎖するとともに、ダンパー48,49を開放して加熱ガス導入管41から供給される低温の加熱ガス(第2の媒体)をガス流路45へ流入させる。ガス流路45へ流入した低温の加熱ガスは蓄熱モジュール14の内部へ導入され、蓄熱モジュール14の蓄熱材52における相変化材料57の温度よりも低温の加熱ガスの温度が低い場合、相変化材料57の一部が液相から固相へ相変化して熱エネルギーを放出し、該熱エネルギーを低温の加熱ガスへ受け渡す(放熱ステップ)。その結果、加熱ガスは加熱され、該加熱された加熱ガスは分岐配管45aを介して加熱ガス導入管41へ復帰し、その後、熱交換器42及び加熱ガス供給管39を介してシャワーヘッド38へ供給される。相変化が起きている間は相変化材料57の温度は相変化温度で一定に保たれるため、熱エネルギーを受け渡されている加熱ガスも一定の温度を保つ。このとき、加熱ガス導入管41を流れる加熱ガスの流量に応じてダンパー43を開放してシャワーヘッド38へ供給する加熱ガスの流量を調整する。また、加熱された加熱ガスの温度が超純水の加熱に必要な温度、例えば、80℃に達していない場合、熱交換器42が加熱ガスへ補足的に熱エネルギーを加える。
【0070】
次いで、全ての相変化材料57が固相へ相変化した場合、若しくは、熱エネルギーを蓄熱モジュール14から受け渡された後の加熱ガスの温度が低下した場合は、蓄熱モジュール14が熱エネルギーを全て放出した場合に他ならないため、ダンパー48,49を閉鎖するとともにダンパー50を開放して加熱ガスをガス流路45へ流入させることなくそのまま熱交換器42へ到達させ、熱交換器42で熱エネルギーを加えた後、加熱ガス供給管39を介してシャワーヘッド38へ供給する。
【0071】
その後、蓄熱モジュール受入部34から蓄熱モジュール14を離脱させ、本処理を終了する。
【0072】
本処理の終了後、離脱した蓄熱モジュール14を熱処理装置12へ移動させ、再度蓄熱モジュール受入部17へ収容させ、上述した蓄熱ステップ、移動ステップ及び放熱ステップを繰り返してもよい。
【0073】
上述した熱再利用方法においては図4(A)に示す蓄熱モジュール14が用いられたが、上述した熱再利用方法は図4(B),図4(C),図5,図6,図7(A)及び図7(B)の蓄熱モジュール14にも適用することができる。
【0074】
本実施の形態に係る基板処理システムとしての半導体デバイス製造システム10によれば、蓄熱モジュール14は熱エネルギーを蓄積することができるとともに、冷却ガスや加熱ガスとの間において熱エネルギーの授受を行うことができるので、蓄熱モジュール14は高温の冷却ガスを介して熱処理装置12の熱エネルギーを受け取ることができ、且つ低温の加熱ガスを介して洗浄装置13へ熱エネルギーを供給することができる。また、蓄熱モジュール14は熱処理装置12の蓄熱モジュール受入部17及び洗浄装置13の蓄熱モジュール受入部34と着脱自在なので、熱処理装置12及び洗浄装置13の間において熱エネルギーの受け渡しを行うことができる。その結果、熱処理装置12及び洗浄装置13を配管で接続する必要を無くすことができ、さらに、熱処理装置12が排出する冷却ガスを大量に貯めるタンクの必要を無くすことができるため、半導体デバイス製造システム10における各構成装置の配置の自由度が低下するのを防止することができる。
【0075】
上述した半導体デバイス製造システム10では、蓄熱モジュール14における蓄熱材は温度によって液相又は固相へ変化する相変化材料を含む。相変化材料は相が変化する際に大量の熱エネルギーを吸収又は放出する。したがって、蓄熱モジュール14は大量の熱エネルギーを熱処理装置12及び洗浄装置13の間において受け渡すことができる。
【0076】
また、上述した半導体デバイス製造システム10では、蓄熱モジュール14は第1の熱媒体導入・排出口53と該第1の熱媒体導入・排出口53とは異なる第2の熱媒体導入・排出口54とを有するので、冷却ガスや加熱ガスを断熱容器51の内部を通過させながら、冷却ガスや加熱ガス及び蓄熱材52の熱エネルギーの授受を行うことができ、もって、蓄熱モジュール14の蓄熱及び放熱を円滑に行うことができる。
【0077】
上述した図4(A)の蓄熱モジュール14では、相変化材料57が多孔質材からなる基部56へ含浸されているので、相変化材料57を安定的に保持することができるとともに、基部56が断熱容器51の内部に配されるので、断熱容器51の内部へ導入された冷却ガスや加熱ガスが蓄熱材52に直接接触することができる。その結果、冷却ガスや加熱ガス及び蓄熱材52の熱エネルギーの授受を安定的且つ効率的に行うことができる。
【0078】
上述した図5や図6の蓄熱モジュール14では、複数の密閉された蓄熱ユニット60,63が断熱容器51の内部に配され、各蓄熱ユニット60,63の内部に相変化材料62,65が充填されているので、冷却ガスや加熱ガスと相変化材料62,65が直接接触することがなく、もって、相変化材料62,65の化学反応による劣化や冷却ガスや加熱ガスへの不要成分の混入を防止することができる。また、相変化材料62,65が蓄熱モジュール14から流出するのを防止することができる。
【0079】
上述した図7(A)及び図7(B)の蓄熱モジュール14では、内部を冷却ガスや加熱ガスが流れる管状部材からなる伝熱ユニット66,70が冷却ガスや加熱ガスと接触するので、冷却ガスや加熱ガスと蓄熱材67,71が直接接触することがなく、もって、蓄熱材67,71の化学反応による劣化や冷却ガスや加熱ガスへの不要成分の混入を防止することができるとともに、冷却ガスや加熱ガス及び蓄熱材67,71の熱エネルギーの授受を効率的に行うことができる。
【0080】
上述した本実施の形態及び各変形例においては、熱媒体として気体を用いる例について説明したが、熱媒体は液体であってもよく、例えば、水を用いることができる。液体は気体に比べて比熱が大きいため、気体を熱媒体として用いる場合よりも低い温度で大きな熱エネルギーを蓄熱モジュールに供給することができる。
【0081】
上述した熱処理装置12は1つの蓄熱モジュール受入部17を備え、洗浄装置13は1つの蓄熱モジュール受入部34を備えるが、熱処理装置が2つ以上の蓄熱モジュール受入部を備えてもよく、また、洗浄装置が2つ以上の蓄熱モジュール受入部を備えてもよい。これにより、同時に複数の蓄熱モジュール14を用いることができ、もって、熱処理装置及び洗浄装置の間における熱エネルギーの受け渡しをより効率よく行うことができる。
【0082】
上述した半導体デバイス製造システム10において、蓄熱モジュール14は熱処理装置12から熱エネルギーを受け取ったが、CVD装置等の比較的高温でウエハWを処理する装置から熱エネルギーを受け取ってもよい。また、蓄熱モジュール14は洗浄装置13へ熱エネルギーを受け渡したが、スピンコータ等の比較的低温且つ長時間定温でウエハWを処理する装置へ熱エネルギーを受け渡してもよい。
【0083】
本発明の目的は、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを記録した記憶媒体を、コンピュータ等に供給し、コンピュータのCPUが記憶媒体に格納されたプログラムを読み出して実行することによっても達成される。
【0084】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、プログラム及びそのプログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0085】
また、プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、RAM、NV−RAM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等の上記プログラムを記憶できるものであればよい。或いは、上記プログラムは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることによりコンピュータに供給されてもよい。
【0086】
また、コンピュータのCPUが読み出したプログラムを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、CPU上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0087】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0088】
上記プログラムの形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態から成ってもよい。
【符号の説明】
【0089】
W ウエハ
10 半導体デバイス製造システム
12 熱処理装置
13 洗浄装置
14 蓄熱モジュール
51 断熱容器
52 蓄熱材
57,62,65 相変化材料
60,63 蓄熱ユニット
61,64 本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高温で基板を処理する第1の基板処理装置と、前記所定の高温よりも低温で基板を処理する第2の基板処理装置とを備える基板処理システムにおいて、
前記第1の基板処理装置及び前記第2の基板処理装置と着脱自在であり、前記第1の基板処理装置又は前記第2の基板処理装置から熱媒体が流入し、若しくは、前記第1の基板処理装置又は前記第2の基板処理装置へ前記熱媒体を流出させる移動体を備え、
前記移動体は蓄熱材を内蔵し、前記熱媒体の温度が前記蓄熱材の温度よりも高い場合には、前記蓄熱材が前記熱媒体から熱エネルギーを受け取って蓄積し、前記熱 媒体の温度が前記蓄熱材の温度よりも低い場合には、前記蓄熱材が前記熱 媒体へ蓄積された熱エネルギーを受け渡すことを特徴とする基板処理システム。
【請求項2】
前記蓄熱材は温度によって液相又は固相へ変化する相変化材料を含むことを特徴とする請求項1記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記移動体は、断熱材からなる断熱容器と、前記熱媒体を前記断熱容器の内部へ導入する導入口と、該導入口とは異なる、前記熱媒体を前記断熱容器の内部から排出する排出口とを有することを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記蓄熱材は前記断熱容器の内部に配された多孔質材からなる基部と、該基部へ含浸された前記相変化材料とからなることを特徴とする請求項3記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記移動体は前記断熱容器の内部に配された複数の密閉体を有し、前記密閉体は伝熱材からなる表皮部と、該表皮部によって画成される内部とを有し、
前記内部に前記蓄熱材が充填されていることを特徴とする請求項3記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記移動体は、前記断熱容器の内部に配され且つ前記熱媒体が流れる配管を有し、該配管は前記断熱容器の内部において前記蓄熱材と接触することを特徴とする請求項3記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記第1の基板処理装置は、同時に少なくとも2つの前記移動体と接続され、前記少なくとも2つの移動体の各々に前記熱媒体を供給することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記第2の基板処理装置は、同時に少なくとも2つの前記移動体と接続され、前記少なくとも2つの移動体の各々から前記熱媒体が流入されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項9】
所定の高温で基板を処理する第1の基板処理装置と、前記所定の高温よりも低温で基板を処理する第2の基板処理装置と、前記第1の基板処理装置及び前記第2の基板処理装置と着脱自在である移動体とを備え、前記移動体は蓄熱材を内蔵する基板処理システムにおける熱再利用方法であって、
前記移動体と前記第1の基板処理装置を接続して前記第1の基板処理装置から前記移動体へ前記蓄熱材の温度よりも高い温度の第1の熱媒体を供給し、前記第1の熱媒体の熱エネルギーを前記蓄熱材で受け取って蓄積する蓄熱ステップと、
前記第1の熱媒体の熱エネルギーを前記蓄熱材に蓄積した前記移動体を前記第1の基板処理装置から離脱させて前記第2の基板処理装置へ移動させ、さらに前記第2の基板処理装置へ接続する移動ステップと、
前記移動体を前記第2の基板処理装置を接続し、前記第1の熱媒体の熱エネルギーを蓄積した蓄熱材の温度よりも低い温度の第2の熱媒体を前記移動体へ供給し、前記蓄熱材の熱エネルギーを前記第2の熱媒体へ受け渡し、前記熱エネルギーが受け渡された第2の熱媒体を前記第2の基板処理装置へ流入させる放熱ステップとを有することを特徴とする熱再利用方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−204649(P2012−204649A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68472(P2011−68472)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】