説明

基板処理ユニットおよび基板処理装置

【課題】処理に用いられた処理ガスがユニット外部へ流出することを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】密着強化処理を行う密着強化処理ユニット1において、密閉された処理空間Vを形成するチャンバ10と、処理空間Vに所定の処理ガス(気化した密着強化剤)を供給する処理ガス供給部50と、処理空間V内に配置され、基板Wを載置するプレート20とを備える。プレート20には挿通孔22が形成され、挿通孔22には昇降移動して基板Wの裏面を突き上げ支持する支持ピン30が挿通されている。この挿通孔22と支持ピン30との間隙を封止部80により封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板等(以下、単に「基板」という)に対して処理を行う基板処理ユニットおよび基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、半導体や液晶ディスプレイなどの製品は、上記基板に対して洗浄、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、層間絶縁膜の形成、熱処理、ダイシングなどの一連の諸処理を施すことにより製造されている。
【0003】
ところで従来より、露光、現像、エッチング等の処理においてレジスト膜が基板表面から剥離することが問題となっており、これを回避すべく、基板表面とレジスト膜との密着性を高める処理(密着強化処理)が行われている。密着強化処理は、レジスト膜が形成される前の基板表面を疎水化する処理であり、具体的には、密着強化剤(例えば、HMDS(ヘキサメチルジシラサン))を蒸気状にして基板表面に塗布することによって行われる。密着強化処理を行う処理ユニットの従来構成については、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
図13には、密着強化処理を行う処理ユニットの従来構成が例示されている。従来の密着強化処理ユニット9は、密閉された処理空間Vを形成可能な処理チャンバ91と、処理空間V内で基板Wを載置するプレート92と、処理空間V内に密着強化剤の蒸気を導入する導入口93と、排気ラインに接続された排気口94とを備えている。また、プレート92には、基板Wの裏面を支持する支持ピン95が複数個(例えば、3個)配設されている。また、支持ピン95には、これを支持位置(その先端がプレート92の基板載置面よりも上側に突出した位置(図13(c)の位置))と、待避位置(その先端が基板載置面と同一面上またはそれよりも下側に埋没した位置(図13(a)(b)の位置))との間で移動させる駆動機構96が接続されている。
【0005】
密着強化処理ユニット9にて実行される処理の流れは次の通りである。処理チャンバ91内に搬入された基板Wがプレート92上に載置されると、処理空間Vは密閉空間とされ、その内部に導入口92より気化した密着強化剤が封入される(図13(a))。処理空間Vに導入された密着強化剤は基板W表面で液化し、これにより基板Wの表面に密着強化剤が塗布される。続いて、排気口94より処理空間V内に充満した密着強化剤が排気される(図13(b))。続いて、処理チャンバ91が開放され、支持ピン95が待避位置から支持位置に移動される。これにより基板Wは、プレート92上に載置された状態から、支持ピン95により点支持された状態となる(図13(c))。この状態で、図示しない外部搬送機構が基板Wを処理チャンバ91内から搬出する。
【0006】
このように、密着強化処理は密閉された処理空間V内で行われる。その理由の1つは、密着強化剤として一般的に用いられるHMDSが人体に有害な薬液であり、これが処理チャンバ91の外部に漏れることが許されないからである。また別の理由として、HMDSがアンモニア系の薬液であり、これが外部に流出すると後続のリソグラフィプロセスに悪影響を与えてしまうとの事情がある。アンモニア系のガスが感光剤に吸着してしまうと、その感光特性が消えてしまい、現像処理が適正に行われなくなってしまうのである。わずか1ppb程度のHMDSですら感光剤に影響を及ぼしてしまうことが判明している。これらの理由から密着強化処理は密閉空間で行う必要があり、特に、処理が終了して処理空間を開放した際に、処理に用いた密着強化剤を外部に流出させることなく確実に回収しなければならない。
【0007】
【特許文献1】特開2000−150368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来の密着強化処理ユニットにおいては、密着強化剤の回収が不完全であり、その外部への漏れ出しを抑えることが難しかった。その理由の1つとして考えられるのが、処理ユニット内に形成される密着強化剤の滞留空間である。図13に例示されるように、支持ピン95の駆動機構96は、支持ピン95を外界(処理チャンバ91の外部)から隔離させつつこれを昇降移動させなければならない。このために、例えば図13の構成例のように、支持ピン95の周囲を蛇腹配管97で覆い、これを伸縮させることによって支持ピン95を外界から隔離しつつ昇降移動させていた。ところが、この蛇腹配管97内部の密着強化剤は排気されにくく、この内部は密着強化剤の滞留空間となりやすい。このような滞留空間に残存していた密着強化剤が、処理チャンバ91が開放された際に外部に流出してしまうと考えられるのである(図13(c)に示される状態)。
【0009】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、処理空間に供給された処理ガスの処理空間外部への流出を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、基板処理ユニットであって、密閉された処理空間を形成するチャンバと、前記処理空間内に所定の処理ガスを供給する供給手段と、前記処理空間内に配置され、被処理基板を載置するプレートと、前記プレートに形成された挿通孔内に挿通され、その先端が前記プレートの載置面よりも上側に突出した基板支持位置と、その先端が前記載置面と同一面上またはそれよりも下側に埋没した待避位置との間で移動可能な棒状の支持ピンと、前記待避位置におかれた前記支持ピンと前記挿通孔との間隙を封止する封止手段と、を備える。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の基板処理ユニットにおいて、前記封止手段が、前記支持ピンの上端部に形成されている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の基板処理ユニットにおいて、前記封止手段が、前記支持ピンに周設された環状の外周部材と、前記挿通貫通孔の内壁に、前記支持ピンが待避位置におかれた状態において前記外周部材の底面と係合する段差を形成する係合部と、前記外周部材の底面と前記係合部との間を密封する密封部材と、を備える。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の基板処理ユニットにおいて、排気口に負圧を形成して前記排気口から前記処理空間内の前記処理ガスを吸引する排気手段と、前記排気口に形成される負圧を、前記プレートの全周に分散させる圧分散手段と、を備える。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4に記載の基板処理ユニットであって、前記圧分散手段が、前記プレートの周囲に配設された排気溝と、前記排気溝と前記排気口との間に形成されるバッファ空間と、前記バッファ空間に配置された1以上のラビリンスリングと、を備える。
【0015】
請求項6の発明は、請求項4に記載の基板処理ユニットであって、前記圧分散手段が、前記プレートの周囲に配設された排気溝と、前記排気溝と前記排気口との間に形成されるバッファ空間と、前記バッファ空間に配置された多孔を有するバッフル板と、を備える。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の基板処理ユニットにおいて、前記所定の処理ガスが、気化した密着強化剤である。
【0017】
請求項8の発明は、所定の外部装置に隣接して配置され、基板に対する一連の処理を行う基板処理装置であって、それぞれが基板に対する所定の処理を行う1以上の処理ユニットと、前記1以上の処理ユニットに所定の順序で基板を搬送していく主搬送機構とを備える処理部と、前記処理部と前記外部装置との間で基板を搬送するインターフェイス搬送機構と、を備え、前記1以上の処理ユニットのいずれかが、密閉された処理空間を形成するチャンバと、前記処理空間内に所定の処理ガスを供給する供給手段と、前記処理空間内に配置され、被処理基板を載置するプレートと、前記プレートに形成された挿通孔内に挿通され、その先端が前記プレートの載置面よりも上側に突出した基板支持位置と、その先端が前記載置面と同一面上またはそれよりも下側に埋没した待避位置との間で移動可能な支持ピンと、前記支持ピンが前記待避位置にある状態において前記支持ピンと前記挿通孔との間隙を封止する封止手段と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によると、支持ピンが待避位置におかれた状態において、封止手段によって支持ピンと挿通孔との間が封止される。この構成によると、支持ピンを処理空間の外部から隔離するための部材(密包部材)が不要となるので、密包部材の内部に処理ガスの滞留空間が形成されるといった事態が生じない。すなわち、処理空間内に処理ガスが残存しにくくなる。これによって、処理空間に供給された処理ガスの処理空間外部への流出を抑制できる。
【0019】
請求項2の発明によると、封止手段が支持ピンの上端部に取り付けられているので、支持ピンが待避位置におかれた状態において、挿通孔の内部であって支持ピンの上側に形成される滞留空間を最小にすることができる。これによって、処理空間内に処理ガスがさらに残存しにくくなり、処理ガスの処理空間外部への流出をさらに効果的に抑制できる。
【0020】
請求項4〜6の発明によると、排気口に形成される負圧をプレートの全周に分散させてプレート周縁の排気圧を均一にすることができる。すなわち、処理空間を均一に排気することが可能となり、処理ガスを確実に回収することができる。これによって、処理ガスが処理空間の外部へ流出する可能性をさらに低くすることができる。
【0021】
請求項7の発明によると、気化した密着強化剤が処理空間の外部へ流出することを防止することができるので、安全である。また、例えばリソグラフィプロセス処理を行う処理ユニットが周囲に配置されている場合であっても、密着強化剤がこれら処理ユニットに影響を与えることがない。したがって、これら隣接処理ユニットで適正な処理を行うことができる。
【0022】
請求項8の発明によると、いずれかの処理ユニットにおいて処理空間に供給された処理ガスが処理空間の外部へ流出することがない。したがって、処理ユニット間でのコンタミネーションが生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〈1.密着強化処理ユニット〉
〈1−1.構成〉
この発明の実施の形態に係る基板処理ユニットである密着強化処理ユニット1の全体構成について図1を参照しながら説明する。図1は、密着強化処理ユニット1の側断面図である。
【0024】
密着強化処理ユニット1は、基板Wに対して密着強化処理(レジスト膜と基板Wとの密着性を向上させるために密着強化剤の蒸気雰囲気で基板Wを加熱する処理)を行う。
【0025】
密着強化処理ユニット1は、その内部に密閉された処理空間Vを形成するチャンバ10と、チャンバ10内にて被処理基板Wを水平姿勢にて載置するプレート20と、プレート20上に載置された基板Wを突き上げて支持する複数本(この実施の形態においては、3本)の支持ピン30と、プレート20を所定の温度に加熱する加熱部40と、処理空間Vに所定の処理ガス(ここでは、気化した密着強化剤)を供給する処理ガス供給部50と、処理空間Vに供給された処理ガスを排気する排気部60とを備える。また、これら各部の動作を制御する制御部90を備える。
【0026】
〈チャンバ10〉
チャンバ10は、例えば、ステンレススチール等の金属材料を用いて構成される筐体であり、その内部に密閉された処理空間Vを形成する。チャンバ10は、プレート20の周囲に着設された周壁11を備える。周壁11の上部開口は、蓋12により開閉自在とされている。
【0027】
蓋12は、蓋駆動機構13と接続されている。蓋駆動機構13は、蓋12を密閉位置(蓋12が周壁11の上面に固定されたシール部材14(例えば、Oリング)に摺接する位置)と開放位置(密閉位置より上方の位置)との間で昇降移動させる。蓋駆動機構13は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの制御に応じて蓋12の位置を密閉位置と開放位置との間で切り換える。蓋12が密閉位置におかれると、蓋12と周壁11との間に形成される処理空間Vが外部雰囲気から遮断された密閉空間となる。また、蓋12が開放位置におかれると、外部搬送機構が処理空間Vに基板Wを搬出入することが可能な状態となる(図4(c)の状態)。
【0028】
蓋12には、処理空間V内に処理ガスを導入する導入孔121が形成されている。導入孔121の一端は処理ガスを導くライン54と接続され、他端は蓋12の下面中央に開口している。これにより、プレート20に保持された基板Wの中央付近に処理ガスを導入することができる。
【0029】
〈プレート20〉
プレート20の上面には、セラミックス製のプロキシミティボール21が例えば3個埋設されている。被処理基板Wはプロキシミティボール21を介して所定のギャップ(例えば、0.1mm)を隔ててプレート20に載置される。
【0030】
プレート20には、複数本の支持ピン30のそれぞれを挿通させるべく、上下方向に形成された複数個の貫通孔(挿通孔22)が形成されている。
【0031】
〈支持ピン30〉
複数本の支持ピン30は、それぞれがプレート20に形成された挿通孔22に挿通され、その先端でプレート20に載置された基板Wを突き上げ支持する棒状の部材である。
【0032】
複数本の支持ピン30のそれぞれは、プレート20の下方に配置された支持ピン駆動機構31と接続されている。支持ピン駆動機構31は、例えばはエアシリンダにより構成され、このエアシリンダによって複数本の支持ピン30が一斉に昇降される。
【0033】
支持ピン駆動機構31は、支持ピン30を支持位置(その先端部がプレート20の載置面から上方に突出する位置)と待避位置(その先端部がプレート20の載置面と同一面上またはそれよりも下側に埋没する位置)との間で昇降移動させる。支持ピン駆動機構31は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの制御に応じて支持ピン30の位置を支持位置と待避位置との間で切り換える。支持ピン30が支持位置におかれると、プレート20に載置されていた基板Wは、プレート20から持ち上げられてその裏面を支持ピン30の先端で点支持される状態となる(図4(c)の状態)。また、支持ピン30が待避位置におかれると、基板Wはプレート20に載置された状態となる(図1、図4(a)(b)の状態)。
【0034】
支持ピン30とそれが挿通される挿通孔22との間には、支持ピン30が待避位置にある状態において支持ピン30と挿通孔22との間隙を封止する封止部80が設けられている。封止部80については後に説明する。
【0035】
〈加熱部40〉
加熱部40は、プレート20に内蔵され、プレート20を所定の温度まで加熱するヒータである。加熱部40は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの制御に応じてプレート20を所定の設定温度に温調する。
【0036】
〈処理ガス供給部50〉
処理ガス供給部50は、密着強化剤供給源51と、密着強化剤供給源51から供給された密着強化剤を気化させる気化処理装置52とを備える。密着強化剤供給源51から供給され、気化処理装置52にて気化された密着強化剤は、バルブ53が介挿されたライン54を通じて導入孔121に導かれる。バルブ53は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90の制御に応じて開閉制御される。
【0037】
気化処理装置52は、密着強化剤を貯留する液留容器521を備える。液留容器521は、バルブ522が介挿された供給管523を介して、密着強化剤供給源51に接続されている。密着強化剤としては、例えば、HMDS(ヘキサメチルジシラサン)等を用いることができる。また、液留容器521は、レギュレータ524が介挿された供給管525を介して、不活性ガス供給源526に接続されている。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス(N2)やアルゴンガス(Ar)を用いることができる。さらに、液留容器521の下部には、熱交換コイル527が取り付けられている。図示しない電流供給源から熱交換コイル527に電流を供給すると、熱交換コイル527の温度が上昇する。これによって、液留容器521内に貯留した密着強化剤が気化される。液留容器521は、ライン54と接続されており、液留容器521内で気化した密着強化剤はライン54を通じて導入孔121に導かれる。バルブ522、レギュレータ524の各部は制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの制御に応じて制御される。
【0038】
制御部90は、レギュレータ524およびバルブ522を制御して、液留容器521に不活性ガスおよび密着強化剤を貯留するとともに、熱交換コイル527の温度を上昇させて、液留容器521内に貯留された密着強化剤を気化させる。そして、バルブ53を制御して、液留容器521内にて気化した密着強化剤をライン54に導く。これにより、処理ガス供給部50から導入孔121へ気化した密着強化剤が供給されることになる。
【0039】
〈排気部60〉
排気部60は、プレート20の全周に渡って形成された排気溝61と、これと接続された1個の排気口63とを備える。
【0040】
排気口63は、回収ライン631を通じてドレインタンク632と接続されている。回収ライン631にはポンプPが介挿されており、これにより排気口63に負圧(排気圧)を形成することができる。排気口63に負圧を形成すると処理空間V内の処理ガスが排気溝61から排気口63を通じてドレインタンク632へ導かれ、処理空間Vが排気される。ポンプPは、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの制御に応じて排気口63の圧力を調整する。
【0041】
例えば、排気口63を排気溝61と直接に接続しても、排気口63に負圧を形成することによって排気溝61から処理空間V内の処理ガスを排気することができる。しかしながらこの構成によると、排気溝61の全体(すなわち、処理部20の全周)のうち、排気口63の接続位置付近では大きな負圧でもって急速に排気を行うことができる半面、これから離れた領域では負圧が小さくほとんど排気ができない。すなわち、排気溝61の全体のうちで排気圧の偏りが生じてしまう。こうなると、処理空間Vの一部領域に処理ガスが残存する可能性が高くなってくる。これを回避する方法としては、排気口63を複数個、好ましくはなるべく多数設けることが考えられる。しかしながら排気口63の個数を増やすと、回収ライン631の本数も増え、ユニット寸法を圧迫することになる。また、製造コストの面からみても好ましくない。
【0042】
そこで、この実施の形態においては、排気口61に形成される排気圧を排気溝61の全体(すなわち、プレート20の全周)に分散させる機能部(バッファ62)を設ける。
【0043】
バッファ62は、排気溝61と排気口63との間に形成されたバッファ空間621と、バッファ空間621に配置された複数のラビリンスリング622とを備える。ラビリンスリング622としては、例えば、互いに幅の異なる円環板を用いることができる。円環板には、切断領域や、切り欠き領域等が形成されていてもよい。これら複数のラビリンスリング622を、その切断領域や切り欠き領域が互い違いとなるように、排気方向(排気溝61から排気口63へ向かう方向)に沿って多段に配置する。これによって、バッファ空間621にラビリンス構造が形成される。
【0044】
ラビリンス構造が形成されたバッファ空間621を排気溝61と排気口63との間に設けることによって、排気口63に形成される排気圧を排気溝61の全域に渡って(すなわち、プレート20の全周に渡って)均一に分散させることができる。したがって、排気溝61の全体(すなわち、プレート20の全周)から均一に処理ガスを排気することが可能となり、処理空間V内の一部領域に処理ガスが残存するといった事態の発生を防止することができる。なお、この構成によると、排気口63およびそれに接続される回収ライン631を複数組設ける必要はなく、1組の排気口63および回収ライン631によってプレート20の全周に渡る均一な排気圧を形成することが可能となる。
【0045】
〈封止部80〉
封止部80の構成について、図2を参照しながら具体的に説明する。図2は、封止部80の構成を示す図である。上述の通り、封止部80は、支持ピン30が待避位置にある状態において支持ピン30と挿通孔22との間隙を封止する機能部であり、支持ピン30とそれが挿通される挿通孔22との間に設けられる。
【0046】
封止部80は、リング81と、凹部82と、シール部83とを備える。
【0047】
リング81は、支持ピン30に周設された円環板状の部材である。リング81の内周面に支持ピン30の外周面が接合され、これにより、リング81と支持ピン30とがすき間なく一体に接合される。リング81の下面は、支持ピン30の外縁に段差(係止突起部811)を形成することになる。
【0048】
凹部82は、プレート20の表面であって、挿通孔22と同心となる位置に形成される断面円形状の凹みである。凹部82の径は、挿通孔22の径よりも大きく、またさらに、リング81の外径よりも大きく設定される。凹部82の底面は、挿通孔22の内壁に、支持ピン30が待避位置におかれた状態においてリング81の底面(係止突起部811)と係合する段差(係止段部821)を形成する。すなわち、支持ピン30が待機位置におかれた状態において、係止突起部811は係止段部821に係止されることになる。
【0049】
シール部83は、係止突起部811と係止段部821との間を密封するシール部材であり、例えば、Oリングや面タッチシール等により構成される。すなわち、支持ピン30が待機位置におかれた状態において、係止段部821とこれに係止される係止突起部811との間がシール部83によって密封される。これにより、支持ピン30と挿通孔22との間が密封される。
【0050】
ここで、リング81と凹部82との間隙空間はなるべく小さいことが望ましい。間隙空間が小さくなれば、そこに滞留する処理ガスの量が少なくなるため、処理空間V内に処理ガスが残存しにくくなり、排気部60により処理空間V内部の処理ガスを完全に排気することができるからである。
【0051】
間隙空間を小さくするためには、封止部80を、支持ピン30の上端になるべく近い位置に形成することが望ましい。より具体的には、リング81を支持ピン30の上端になるべく近い位置に取り付けることが望ましく、リング81の上側面(円環板の上側面)を支持ピン30の先端面(棒の先端面)と面一にすることが最も望ましい。特に、支持ピン30の待避位置がその先端がプレート20の基板載置面と同一面上である場合、リング81の上側面を支持ピン30の先端面と面一としておけば、支持ピン30が待機位置におかれた状態においてリング81の上側に間隙空間が形成されないからである(図2に示される状態)。
【0052】
なお、リング81の上側面と支持ピン30の先端面とを面一にする場合、支持ピン30が支持位置におかれた状態において(支持ピン30の待避位置が、その先端が基板載置面と同一面上にある位置の場合は、支持ピン30が待避位置におかれた状態においても)、基板Wはリング81の上面で支持されることとなる。そこで、この場合においては、リング81の上面にセラミックス製のプロキシミティボール8111を埋設しておいてもよい。また、リング81の上側面と支持ピン30の先端とが一体となって滑らかな円錐面を形成するように成型し、支持ピン30が支持位置におかれた状態において基板Wが円錐の先端で点支持される構成としてもよい。
【0053】
また、間隙空間を小さくするためには凹部82の内周面とリング81の外周面との離間距離が小さいことが望ましい。すなわち、この離間距離を最低限の余裕幅(リング81の外周面と凹部82の内周面とが、支持ピン30の昇降移動において互いに接触しない程度の余裕幅)に設定することが望ましい。
【0054】
また、間隙空間の総容積を少なくするためには、凹部82の容積はなるべく小さいことが望ましい。すなわち、凹部82の径および深さはなるべく小さいことが望ましい。凹部82の径を小さくするためには、リング81の外径を小さくすればよい(例えば、10〜20mm程度)。すなわち、係止段部821の段差幅を、シール部83を配置可能な最小の値に設定すればよい。凹部82の深さを小さくするためには、リング81の厚みをなるべく薄く成型することが望ましい。
【0055】
〈1−2.処理の流れ〉
密着強化処理ユニット1において実行される処理を、図3および図4を参照しながら説明する。図3は、密着強化処理ユニット1にて実行される処理の流れを示す図である。図4は、各処理段階における密着強化処理ユニット1の様子を模式的に示す図である。以下の処理は、制御部90が密着強化処理ユニット1の各構成部を制御することによって行われる。
【0056】
まず、図示しない外部搬送機構(例えば、後述するメインロボットT21)が、被処理基板Wを密着強化処理ユニット1内に搬入し、プレート20から突出した支持ピン30上に載置する(ステップS1)。外部搬送機構の搬送アームが装置から退避すると、制御部90は、支持ピン駆動機構31を制御して、支持ピン30を支持位置から待避位置に移動させる。これにより、搬入された基板Wがプレート20上に載置される。
【0057】
続いて、制御部90は、蓋駆動機構13を制御して蓋12を密閉位置におく(ステップS2)。これにより処理空間Vが外部雰囲気から遮断された密閉空間となる。
【0058】
続いて、密着強化処理を行う(ステップS3)(図4(a))。すなわち、制御部90は、加熱部40を制御してプレート20を所定温度に加熱する。これにより、プレート20上に載置された基板Wが所定温度に加熱される。また、これとともに処理ガス供給部50を制御して処理空間Vに処理ガス(気化した密着強化剤)を供給させる。またその一方で、排気部60を制御して処理空間V内の処理ガスを排気させる。これにより、処理空間V内に処理ガスの流れ(導入孔121から下方に向かい(すなわち、基板Wの中央に向かい)、さらに基板Wの周縁に向かう流れ)が形成される。処理ガスである密着強化剤の蒸気は、基板Wの上面を流れながらその表面で液化し、これにより基板Wの表面に密着強化剤が塗布される。なお、上述の通り、排気部60にはバッファ62が設けられているので、ここでは排気溝61の全体(すなわち、プレート20の全周)に渡って均一な排気圧が形成されている。これにより、導入孔121から吐出された処理ガスが基板Wの周縁に向けて均等に放射状に流れ、密着強化剤が基板Wの表面に均一に塗布される。
【0059】
所定量の密着強化剤が基板Wに供給されると、制御部90は、供給部50を制御して密着強化剤を供給を停止させるとともに、図示しない不活性ガス供給源より処理空間V内に不活性ガス(例えば、例えば、窒素ガス(N2)やアルゴンガス(Ar))を供給する(ステップS4)(図4(b))。これにより、処理空間V内の処理ガスが排気されて不活性ガスに置換される。
【0060】
続いて、制御部90は、蓋駆動機構13を制御して蓋12を開放位置におく(ステップS5)。
【0061】
続いて、制御部90は、支持ピン駆動機構31を制御して支持ピン30を待避位置から支持位置に移動させる(図4(c))。これにより、プレート20上に載置された基板Wが支持ピン30により突き上げ支持される。この状態で、図示しない外部搬送機構(例えば、後述するメインロボットT21)がその搬送アームを基板Wとプレート20との間に挿入して基板Wを保持し、基板Wを密着強化処理ユニット1内から搬出する(ステップS6)。
【0062】
〈2.基板処理装置〉
上述した密着強化処理ユニットP−AHPは、例えば、基板Wに塗布処理、熱処理、現像処理等の各処理を行う処理ユニットを所定の位置に配置した基板処理装置100に搭載される。密着強化処理ユニット1が搭載された基板処理装置100について、図5〜図11を参照しながら説明する。図5は、基板処理装置100の全体構成を模式的に示す平面図である。図6、図7、図8および図9は、基板処理装置100を、図1に示す矢印Q1方向、矢印Q2方向、矢印Q3方向および矢印Q4方向からそれぞれみた縦断面図である。図10は、基板処理装置100の制御ブロック図である。図11は、基板処理装置100の備える搬送機構のそれぞれが反復して行う動作の流れを示す図である。
【0063】
〈2−1.制御系〉
まず、基板処理装置100の制御系について図10を参照しながら説明する。基板処理装置100は、後述する各構成部110,120,130の動作を制御する制御部(第1〜第4コントローラ191〜194およびメインコントローラ199)、および、ユーザインターフェイスである操作部および表示部(いずれも図示省略)を備えている。制御部は、図示しないLAN回線等を通じて基板処理装置100と隣接して配置された露光装置EXPとも接続されている。
【0064】
第1コントローラ191〜第4コントローラ194およびメインコントローラ199のそれぞれは、各種の処理を実行するCPU、演算処理の作業領域となるRAM、予め設定された(または操作部、表示部等のユーザインターフェイスを介してオペレータより入力された)処理レシピ(処理プログラム)等の各種情報を記憶する記憶媒体(例えば、固定ディスク)等により実現されている。
【0065】
第1コントローラ191〜第4コントローラ194は、後述する各構成部を互いに独立して制御する。第1コントローラ191はID部10の搬送機構(IDロボットT10)を制御する。第2コントローラ192は、上段の基板処理列201の搬送機構(メインロボットT21)および上段の基板処理列201が備える処理ユニット(ただし、PEB処理ユニット列211dの備える処理ユニットを除く)を制御する。第3コントローラ193は、下段の基板処理列201の搬送機構(メインロボットT21)および下段の基板処理列201が備える処理ユニット(ただし、PEB処理ユニット列211dが備える処理ユニットを除く)を制御する。第4コントローラ194は、IF部30の搬送機構(PEBロボットT31およびIFロボットT32)およびPEB処理ユニット列211dが備える処理ユニット(熱処理ユニットP−HP)を制御する。
【0066】
なお、第2コントローラ192および第3コントローラ193のそれぞれは、基板処理列201の備える密着強化処理ユニット1を制御する。すなわち、基板処理装置100においてはこれらのコントローラ192,193それぞれが上述した制御部90に相当する。
【0067】
メインコントローラ199は、4個のコントローラ191〜194を統括的に制御する。すなわち、基板処理装置100の備える複数の搬送機構T10,T21,T22,T31,T32の連携を制御する。例えば、各搬送機構が所定の載置部や処理ユニット等にアクセスするタイミング等を調整する。また、メインコントローラ199は、基板Wが、キャリアCから搬出されたのと同じ順序で各処理ユニットや露光装置EXPに搬入されるように各搬送機構を制御する。
【0068】
〈2−2.各部の構成および動作〉
基板処理装置100は、露光処理の前後において、基板Wに塗布処理、熱処理、現像処理等の一連の処理を行うための装置である。基板処理装置100は、主として、インデクサ部(ID部)110、処理部120およびインターフェイス(IF部)130を備え、これら各部110,120,130をこの順に並設した構成となっている。また、IF部130の−Y側には、基板処理装置100とは別体の露光装置EXPが接続される。
【0069】
〈ID部110〉
ID部110は、複数枚の基板Wを収容するキャリアCに対する基板Wの受け渡しを行う。ID部110は、複数個(この実施の形態においては4個)のキャリアCを、1列に並べて載置するキャリア載置台111と、基板Wを搬送する機構(IDロボット)T10とを備える。なお、キャリアCの形態としては、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)の他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納基板Wを外気にさらすOC(open cassette)であってもよい。IDロボットT10は、キャリア載置台111に載置されたキャリアCと、PASS1a,1bとの間で基板Wを搬送する。
【0070】
ID部110と処理部120との間(より具体的には、ID部110と後述する各基板処理列201との間)には、メインロボットT21とIDロボットT10との間での基板Wの受け渡しに用いられる載置部(PASS1a,PASS1b)が積層して配置される(図5、図7参照)。
【0071】
図11を参照する。IDロボットT10は、キャリアCに収容された未処理基板を次々とPASS1aに搬送していく。この未処理基板Wは、PASS1aを介してメインロボットT21に受け取られることになる。また、IDロボットT10は、メインロボットT21によってPASS1bに載置された処理済基板を受け取ってキャリアCに収容する。
【0072】
なお、図11においては図示を省略しているが、この実施の形態のように複数個(ここでは2個)の基板処理列201が積層配置されている構成においては(図7参照)、IDロボットT10は各基板処理列201について設けられたPASS1a,PASS1bに順番にアクセスしていく。
【0073】
〈処理部120〉
処理部120は、積層配置された複数(この実施の形態においては2つ)の基板処理列201を備える。基板処理列201は、ID部110とIF部130との間を結ぶ処理列を構成する。基板処理列201は、基板Wを搬送する機構(メインロボットT21)と、メインロボットT21の搬送スペースAを挟んで互いに対向配置された、2つの処理ブロック(主として基板Wに対する熱処理を行う熱処理ブロック21および主として基板Wに所定の処理液を供給する液処理を行う液処理ブロック22)を備える。
【0074】
熱処理ブロック21について、図5および図6を参照しながら説明する。熱処理ブロック21は、隣接配置された複数のユニット列211を備える。
【0075】
最もID部110に近い側に配置されたユニット列211(第1ユニット列211a)は、積層配置された複数個(この実施の形態においては、5個)の処理ユニット(より具体的には、1個の熱処理ユニットP−HP、2個の密着強化処理ユニット1および2個の冷却ユニットCP)を備える。
【0076】
密着強化処理ユニット1の構成およびここで実行される処理の流れについては上述した通りである。
【0077】
熱処理ユニットP−HPは、基板Wを一時的に載置するための仮置部251と、基板Wを加熱処理するホットプレート252と、仮置部251とホットプレート252との間で基板Wを搬送するローカル搬送機構253とを備える処理ユニットである。ここで実行される処理の流れは次の通りである。メインロボットT21が基板Wを仮置部251に載置すると、ローカル搬送機構253が当該基板Wを仮置部251からホットプレート252に移載する。すると、ホットプレート252が昇温して載置された基板Wを加熱処理する。加熱処理が終了すると再びローカル搬送機構253が基板Wをホットプレートから仮置部251に移載し、仮置部251に載置された基板WがメインロボットT21により取り出される。なお、仮置部251は、そこに載置された基板Wを冷却する機能を備えるものであってもよい。
【0078】
冷却ユニットCPは、基板Wを冷却処理するコールドプレートを備える処理ユニットである。メインロボットT21が基板Wを所定の冷却温度に温調されたコールドプレートに載置すると、基板Wからコールドプレートに熱が流れ、これにより基板Wが冷却される。冷却処理が終了するとコールドプレートに載置された基板WがメインロボットT21により取り出される。
【0079】
第1ユニット列211aのIF部130側に隣接配置されたユニット列211(第2ユニット列211b)は、積層配置された複数個(この実施の形態においては、5個)の熱処理ユニットP−HPを備える。
【0080】
第2ユニット列211bのIF部130側に配置されたユニット列211(第3ユニット列211c)は、基板Wの周縁部を露光するエッジ露光部EEWを備える。その下側に、積層配置された複数個のバッファ(送りバッファBF)を設けてもよい。
【0081】
第3ユニット列211cのIF部130側に配置されたユニット列211(PEB処理ユニット列211d)は、積層配置された複数個(この実施の形態においては、3個)の熱処理ユニットP−HPを備える。このユニット列211dに配置された熱処理ユニットP−HPでは、露光に引き続いて行われる熱処理(PEB(post-exposure-bake)処理)が実行される。また、PEB処理ユニット列211dの上方には、メインロボットT21とPEBロボットT31との間での基板Wの受け渡しに用いられる載置部(送りPASS・戻りPASS)が配置される。
【0082】
液処理ブロック22について、図5および図8を参照しながら説明する。液処理ブロック22は、積層配置された複数のユニット列221を備える。
【0083】
最上段に配置されたユニット列221(現像ユニット列221a)は、隣接配置された複数個(この実施の形態においては、2個)の現像処理ユニットDEVを備える。
【0084】
現像処理ユニットDEVは、主として、基板Wを回転可能に保持する回転保持部261と、回転保持部261に保持された基板Wに現像液を供給する現像ノズル262とリンス液を供給するリンスノズル263とを備える処理ユニットである。ここで実行される処理の流れは次の通りである。メインロボットT21が基板Wを回転保持部261に載置すると、回転保持部261が載置された基板Wを保持する。続いて、現像液ノズル262が基板Wの表面に現像液を供給する。例えば、その下側面に基板Wの直径相当の長さのスリットが形成されたスリットノズルが、そのスリットから現像液を吐出しながら回転保持部261に保持された基板Wの上方を走査することによって、基板Wの表面に現像液を帯状に供給する。これによって基板Wが現像処理される。続いて、リンスノズル263が基板Wの表面にリンス液を供給して現像処理を停止させる。さらに続いて、回転保持部261が保持した被処理基板Wを回転させて基板表面のリンス液を遠心力により飛散させる。これによって基板Wが乾燥処理される。乾燥処理が終了すると、メインロボットT21が基板Wを現像処理ユニットDEVから搬出する。
【0085】
現像ユニット列221aの下側に配置されたユニット列221(レジストユニット列221b)は、隣接配置された複数個(この実施の形態においては、2個)のレジスト塗布処理ユニットRESを備える。
【0086】
レジスト塗布処理ユニットRESは、主として、基板Wを回転可能に保持する回転保持部(図示省略)と、回転保持部に保持された基板Wに所定のレジスト膜材料を供給するノズル(図示省略)と基板Wの周縁部にリンス液を供給するエッジリンスノズル(図示省略)とを備える処理ユニットである。ここで実行される処理の流れは次の通りである。メインロボットT21が基板Wを回転保持部に載置すると、回転保持部が載置された基板Wを保持する。続いて、レジスト膜材料を供給するノズルが基板Wの表面にレジスト膜材料を供給する。これによって基板Wの上面にレジスト膜が塗布形成される。続いて、エッジリンスノズルが基板Wの周縁部表面にリンス液を供給する。これによって、基板Wの周縁部から所定幅の領域に形成されたレジスト膜が除去される。以上の処理が終了すると、メインロボットT21が基板Wをレジスト塗布処理ユニットRESから搬出する。
【0087】
図11を参照する。メインロボットT21は、PASS1aを介してIDロボットT10から受け取った未処理基板Wを、搬送スペースAに沿って移動しながらこれに面して配置された熱処理ブロック21および液処理ブロック22の備える各処理ユニットに所定の順序で搬送していく。例えば、冷却ユニットCP、密着強化処理ユニット1、レジスト塗布処理ユニットRES、熱処理ユニットP−HP、冷却ユニットCP、エッジ露光部EEW、の順に搬送していく。これにより、基板Wに対して、冷却処理、密着強化処理、レジスト膜の塗布形成処理、加熱処理、冷却処理およびエッジ露光処理との一連の処理がこの順で行われていくことになる(前処理)。
【0088】
メインロボットT21は、エッジ露光部EEWから取り出した基板W(前処理後の基板)を送りPASSに載置する。この基板Wは、送りPASSを介してPEBロボットT31に受け取られることになる。
【0089】
また、メインロボットT21は、戻りPASSを介してPEBロボットT31から受け取った基板W(PEB処理後の基板)を、搬送スペースAに沿って移動しながら熱処理ブロック21および液処理ブロック22の備える各処理ユニットに再び所定の順序で搬送していく。例えば、現像処理ユニットDEV、熱処理ユニットP−HP、冷却ユニットCP、の順に搬送していく。これにより、基板Wに対して、現像処理、加熱処理および冷却処理との一連の処理がこの順で行われていくことになる(後処理)。
【0090】
メインロボットT21は、冷却ユニットCPから取り出した基板W(後処理後の基板)をPASS1bに載置する。この基板Wは、PASS1bを介してIDロボットT10に受け取られることになる。
【0091】
〈IF部130〉
再び図5を参照する。IF部130は、処理部120と露光装置EXPとの間での基板Wの受け渡しを行う。IF部130は、インターフェイス搬送機構として、2つの搬送機構(PEBロボットT31、IFロボットT32)とを備える。
【0092】
PEBロボットT31とIFロボットT32との間には、これら2つの搬送機構の間での基板Wの受け渡しに用いられる載置部(IF送りPASS、IF戻りPASS)が積層して配置される(図9参照)。また、図9に示すように、IF送りPASSおよびIF戻りPASSの下側(または上側)には、複数個のバッファBFが配置される。バッファBFは、装置内で基板Wを一時的に収納する処理ユニットであり、複数枚の基板Wを収納することができる。
【0093】
図11を参照する。PEBロボットT31は、送りPASSを介してメインロボットT21から受け取った基板W(前処理後の基板)をIF送りPASSに載置する。ただし、IF送りPASSに基板Wを載置できない場合(例えば、露光装置EXPの処理速度が処理部120の処理速度に追いつかず、前処理された基板Wを露光装置EXPに搬入できなくなった場合)、PEBロボットT31は受け取った基板WをバッファBFに一時的に収納し、再びIF送りPASSに基板Wを載置可能となった後にバッファBFに収納した基板WをIF送りPASSに載置していく。
【0094】
一方、IFロボットT32は、IF送りPASSに載置された基板Wを受け取って、露光装置EXPの受渡部に載置する。露光装置EXPの受渡部に載置された前処理後の基板Wは、露光装置EXPにて露光処理され、再び受渡部に戻される。
【0095】
IFロボットT32は、露光装置EXPの受渡部に載置された基板W(露光処理後の基板)を受け取ってIF戻りPASSに載置する。
【0096】
一方、PEBロボットT31は、IF戻りPASSに載置された基板Wを受け取って、PEB処理ユニット列211dに配置された熱処理ユニットP−HPに搬入する。より具体的には、熱処理ユニットP−HPの仮置部251に載置する。仮置部251に載置された基板Wはローカル搬送機構253によりホットプレート252上に移載され、ここで加熱処理(PEB処理)を施される。処理が終了した基板Wは再びローカル搬送機構253により仮置部251上に移載される。これにより、基板Wに対して露光処理およびPEB処理の一連の処理がこの順で行われていくことになる。
【0097】
PEBロボットT31は、PEB処理ユニット列211dに配置された熱処理ユニットP−HPの仮置部251に載置された基板W(PEB処理後の基板)を取り出して戻りPASSに載置する。この基板Wは、戻りPASSを介してメインロボットT21に受け取られて後処理を行われることになる。ただし、戻りPASSに基板Wを載置できない場合(例えば、現像処理ユニットDEVにトラブルが発生して当該ユニットが基板Wを受け入れられなくなった場合)、PEBロボットT31は取り出した基板WをバッファBFに一時的に収納し、再び戻りPASSに基板Wを載置可能となった後にバッファBFに収納した基板Wを戻りPASSに載置していく。
【0098】
以上の構成および動作によって、露光処理の前後における塗布処理、熱処理、現像処理等の一連の処理が行われる。
【0099】
〈3.効果〉
上記の実施の形態に係る密着強化処理ユニット1においては、支持ピン30が待避位置におかれた状態において、封止部80によって支持ピン30と挿通孔22との間が封止される。この構成によると、支持ピン30を処理空間Vの外部から隔離するための密包部材(例えば、図13に示される蛇腹配管97のような部材)が不要となり、密包部材の内部に処理ガスの滞留空間が形成されるといった事態が生じない。すなわち、処理空間V内に処理ガスが残存しにくくなり、排気部60により処理空間V内部の処理ガスを完全に排気することができる。これによって、処理空間Vに供給された処理ガスが処理空間の外部へ流出することを防止することができる。
【0100】
なお、蛇腹配管97のような支持ピン30を処理空間Vの外部から隔離するための部材(密包部材)を設けると、プレート下部の構造が複雑化・大型化する(例えば、通常のホットプレートの1.5倍程度のサイズとなる)。これにより、製造コストの増大や、ユニットサイズの大型化を招くことになる。また、支持ピンを昇降させるためにはこの密包部材を伸縮させなければならないため、昇降駆動機構が大がかりになってしまう。これも、ユニットサイズの大型化や製造コストの増大を招く一因となる。一方、上記の構成によると、このような密包部材が不要となるため、プレート下部の構造を単純化・小型化することができる。特に、ユニットの高さ寸法を小さくすることができる。また、製造コストも削減できる。さらに、支持ピンの昇降駆動機構として小型のものを採用すること可能となり、これもまた、ユニットの小型化、製造コストの低減に資する。
【0101】
また、リング81が支持ピン30の上端部に取り付けられているので、支持ピン30が待避位置におかれた状態において、挿通孔22の内部において支持ピン30の上側に形成される滞留空間を最小にすることができる。特に、支持ピン30の待避位置がその先端がプレート20の基板載置面と同一面上である場合、この構成によると、支持ピン30が待機位置におかれた状態においてリング81の上側に間隙空間が形成されない。これによって、処理空間内に処理ガスがさらに残存しにくくなり、処理ガスの処理空間外部への流出をさらに効果的に抑制できる。
【0102】
また、バッファ62が形成されることによって、排気口63に形成される負圧を排気溝61の全体(すなわち、プレートの全周)に分散させてプレート周縁の排気圧を均一にすることができる。すなわち、処理空間を均一に排気することが可能となり、処理ガスを確実に回収することができる。これによって、処理ガスが処理空間Vの外部へ流出する可能性をさらに低くすることができる。
【0103】
なお、バッファ62を設けることによって、少ない個数(上記の実施の形態においては、1個)の排気ラインで均一な排気を実現することができるので、ユニットの小型化、製造コストの低減にも資する。
【0104】
また、上記の実施の形態に係る密着強化処理ユニット1においては、処理ガスとして気化した密着強化剤を用いている。密着強化剤として用いられているHMDSは、人体に有害であるとともに、リソグラフィプロセスにも悪影響を及ぼすものであるが、密着強化処理ユニット1においては、上述の通り、処理ガスが処理空間Vの外部へ流出することを防止することができるので、安全である。また、例えばリソグラフィプロセス処理を行う処理ユニットが周囲に配置されている場合であっても、密着強化剤がこれら処理ユニットに影響を与えることがない。したがって、これら隣接処理ユニットで適正な処理を行うことができる。
【0105】
また、上記の実施の形態に係る基板処理装置100によると、処理部20が密着強化処理ユニット1を備える。密着強化処理ユニット1においては、上述の通り、処理ガスが処理空間Vの外部へ流出することを防止することができるので、密着強化処理ユニット1で処理に用いられた処理ガスがユニット外部に漏れ出すことがない。したがって、搬送スペースAを挟んで密着強化処理ユニット1と対向して配置された現像処理ユニットDEVとの間でコンタミネーションが生じることがない。すなわち、現像処理ユニットDEVにおいて用いられる感光剤に密着強化剤が吸着するといった事態が生じることがない。したがって、現像処理ユニットDEVにおいても適正な現像処理を行うことができる。
【0106】
また、上述の通り、密着強化処理ユニット1の小型化が実現されるので、基板処理装置100に搭載できるユニット個数を増やすことが可能となる。これによりスループットを向上させることができる。
【0107】
また、上述の通り、密着強化処理ユニット1の製造コスト低減が実現されるので、基板処理装置100の製造コストも抑えることができる。
【0108】
〈4.変形例〉
上記の実施の形態に係る密着強化処理ユニット1においては、封止部80を、リング81、凹部82およびシール部83により構成したが、封止部80の構成はこれに限らず、少なくとも支持ピン30が待機位置におかれた状態において、支持ピン30と挿通孔22との間を封止する機構であればどのようなものであってもよい。例えば、接触シール(所謂、メカニカルシール)によって構成してもよい。
【0109】
また、上記の実施の形態においてはリング81は円環状とし、凹部82は断面円形状としたが、リング81および凹部82の各形状はこれに限らない。ただし、リング81と凹部82との間隙空間を小さくするためには、凹部82の断面形状とリング81の外周縁の形状とを相似形状とすることが望ましい。
【0110】
また、上記の実施の形態に係る密着強化処理ユニット1においては、バッファ62は、バッファ空間621に配置された複数のラビリンスリング622を備える構成としたが、バッファ62の構成はこれに限らない。例えば、図12に示すように、バッファ空間621内に多孔質材料(ポーラス)により形成されたバッフル板623を設ける構成としてもよい。バッフル板は機械加工により多孔を形成したものであってもよい。
【0111】
また、上記の実施の形態に係る密着強化処理ユニット1は、気化した密着強化剤を処理ガスとして用いて密着強化処理を実行する処理部であるとしたが、処理ガスとして用いられる薬品はこれに限らない。すなわち、本発明は、密着強化処理以外の処理を実行する処理部に適用することができる。特に、外部への流出が許されない有毒な処理ガスを用いた各種処理を行う処理部に有効である。
【0112】
また、上記の実施の形態に係る密着強化処理ユニット1では、処理空間V内に配置される各構成部(周壁11、蓋12、プレート20、支持ピン30、排気溝61、バッファ62、排気口63、封止部80等)は高温下におかれるとともに処理ガスにさらされる。したがって、これら各構成部は耐熱性と耐薬性との両方を兼ね備えた材料により形成することが望ましい。
【0113】
また、上記の実施の形態に係る密着強化処理ユニット1においては、上述した各構成に加えて、プレート20に載置されて密着強化処理を行われる前後の基板Wを一時的に載置する仮置部と、仮置部とプレート20との間で基板Wを搬送するローカル搬送機構とを設けるユニット構成としてもよい。
【0114】
また、上記の実施の形態に係る基板処理装置100が備える熱処理ブロック21や液処理ブロック22のユニット構成や配置は上記のものに限らない。また、熱処理ブロック21が備える密着強化処理ユニット1の個数も2個に限らない。
【0115】
また、上記の実施の形態においては、基板処理装置100に隣接配置されるのは露光装置EXPであるとしたが、その他の各種の装置が隣接配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】密着強化処理ユニットの側断面図である。
【図2】封止部の構成を示す図である。
【図3】密着強化処理ユニットにて実行される処理の流れを示す図である。
【図4】各処理段階における密着強化処理ユニットの様子を模式的に示す図である。
【図5】基板処理装置100の全体構成を模式的に示す平面図である。
【図6】基板処理装置を矢印Q1方向からみた縦断面図である。
【図7】基板処理装置を矢印Q2方向からみた縦断面図である。
【図8】基板処理装置を矢印Q3方向からみた縦断面図である。
【図9】基板処理装置を矢印Q4方向からみた縦断面図である。
【図10】基板処理装置の制御ブロック図である。
【図11】各搬送機構が反復して行う動作の流れを示す図である。
【図12】変形例に係る密着強化処理ユニットの側断面図である。
【図13】従来の密着強化処理ユニットの構成を例示する図である。
【符号の説明】
【0117】
1 密着強化処理ユニット
10 チャンバ
12 蓋
121 導入孔
13 蓋駆動機構
20 プレート
22 挿通孔
30 支持ピン
31 支持ピン駆動機構
40 加熱部
50 処理ガス供給部
60 排気部
80 封止部
81 リング
82 凹部
83 シール部
811 係止突起部
821 係止段部
100 基板処理装置
110 ID部
120 処理部
130 IF部
T10 IDロボット
T21,T22 メインロボット
T31 PEBロボット
T32 IFロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理ユニットであって、
密閉された処理空間を形成するチャンバと、
前記処理空間内に所定の処理ガスを供給する供給手段と、
前記処理空間内に配置され、被処理基板を載置するプレートと、
前記プレートに形成された挿通孔内に挿通され、その先端が前記プレートの載置面よりも上側に突出した基板支持位置と、その先端が前記載置面と同一面上またはそれよりも下側に埋没した待避位置との間で移動可能な棒状の支持ピンと、
前記待避位置におかれた前記支持ピンと前記挿通孔との間隙を封止する封止手段と、
を備えることを特徴とする基板処理ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理ユニットにおいて、
前記封止手段が、前記支持ピンの上端部に形成されていることを特徴とする基板処理ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理ユニットにおいて、
前記封止手段が、
前記支持ピンに周設された環状の外周部材と、
前記挿通孔の内壁に、前記支持ピンが待避位置におかれた状態において前記外周部材の底面と係合する段差を形成する係合部と、
前記外周部材の底面と前記係合部との間を密封する密封部材と、
を備えることを特徴とする基板処理ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の基板処理ユニットにおいて、
排気口に負圧を形成して前記排気口から前記処理空間内の前記処理ガスを吸引する排気手段と、
前記排気口に形成される負圧を、前記プレートの全周に分散させる圧分散手段と、
を備えることを特徴とする基板処理ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理ユニットであって、
前記圧分散手段が、
前記プレートの周囲に配設された排気溝と、
前記排気溝と前記排気口との間に形成されるバッファ空間と、
前記バッファ空間に配置された1以上のラビリンスリングと、
を備えることを特徴とする基板処理ユニット。
【請求項6】
請求項4に記載の基板処理ユニットであって、
前記圧分散手段が、
前記プレートの周囲に配設された排気溝と、
前記排気溝と前記排気口との間に形成されるバッファ空間と、
前記バッファ空間に配置された多孔を有するバッフル板と、
を備えることを特徴とする基板処理ユニット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の基板処理ユニットにおいて、
前記所定の処理ガスが、気化した密着強化剤であることを特徴とする基板処理ユニット。
【請求項8】
所定の外部装置に隣接して配置され、基板に対する一連の処理を行う基板処理装置であって、
それぞれが基板に対する所定の処理を行う1以上の処理ユニットと、前記1以上の処理ユニットに所定の順序で基板を搬送していく主搬送機構とを備える処理部と、
前記処理部と前記外部装置との間で基板を搬送するインターフェイス搬送機構と、
を備え、
前記1以上の処理ユニットのいずれかが、
密閉された処理空間を形成するチャンバと、
前記処理空間内に所定の処理ガスを供給する供給手段と、
前記処理空間内に配置され、被処理基板を載置するプレートと、
前記プレートに形成された挿通孔内に挿通され、その先端が前記プレートの載置面よりも上側に突出した基板支持位置と、その先端が前記載置面と同一面上またはそれよりも下側に埋没した待避位置との間で移動可能な支持ピンと、
前記支持ピンが前記待避位置にある状態において前記支持ピンと前記挿通孔との間隙を封止する封止手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−260022(P2009−260022A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106961(P2008−106961)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(506322684)株式会社SOKUDO (158)
【Fターム(参考)】