説明

基板処理装置

【課題】排気手段内部への生成物の付着を防止しながら、スループットを向上できる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、ウェハを処理する処理室内に、トリメチルアルミニウムを含む第1の処理ガスと、酸素(O)を含む第2の処理ガスとを交互に供給するガス供給系と、排気系250とを有し、ウェハ上に酸化アルミニウムの薄膜を形成する。排気系250は、処理室側の雰囲気を吸気する吸気口22および吸気した雰囲気を排気する排気口23を有する筐体21と、筐体21内であって吸気口22と排気口23との間に設けられ吸気口22側の雰囲気を排気口23側へ移送する移送手段とを有する真空ポンプと、真空ポンプの排気口23付近の筐体21内に室温の不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の処理ガスを処理室内に交互に供給して、基板に成膜等の処理を行なう基板処理装置に係り、特に処理室内の雰囲気を排気する排気系の改善を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置、例えば半導体製造装置は、半導体基板を処理する処理室を内部に形成する反応容器と、複数の処理ガスを処理室内に供給するガス供給系と、処理室内の雰囲気を排気する排気系と、処理室内の基板を加熱するヒータとを備えている。前記排気系は、排気管と排気手段である真空ポンプとから構成される。
【0003】
排気系に生成物が付着すると、排気系を構成する真空ポンプ及び排気管のメンテナンス頻度が増加し、メンテナンス費用が増加するばかりでなく、装置稼働率が低下するため、これを回避する必要がある。
【0004】
CVD法を採用した半導体製造装置(以下、CVD装置)では、基板処理方法が、複数のガスを同時に供給する処理法であるため、処理室から排気管、真空ポンプに至る部分で複数のガスが共存することになり、これらの部分に生成物が付着するのが避けられない。特に、真空ポンプ内部に生成物が付着すると、真空ポンプに大きな負荷がかかり、最悪の場合、真空ポンプが停止してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、CVD装置では、処理室から排気管全体、及び全ての真空ポンプ内(吸気口側、排気口側を含む)に、温度低下防止用の不活性ガスを導入し、生成物の付着を防止している。
しかし、所定の真空度を達成するために排気手段の背圧がある程度の真空度を有している必要があるが、排気手段の吸気口側にガスを導入すると、排気手段の背圧が上がって排気能力が低下してしまう。このため、生成物の付着は防止できるものの、排気速度の低下によるスループットの低下という新たな問題が生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板処理法には、CVD法の他に、複数のガスを交互に供給する処理方法、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法がある。このALD法では、CVD法とは異なり、複数のガスが排気系で共存することがないので、本来排気系に生成物が付着しないはずである。しかし、排気手段の排気口側は、排気作用が弱く、第1の処理ガスと第2の処理ガスとが混合し易い領域になり、この領域での温度がいずれかの処理ガスの分解温度付近にあると、第1の処理ガスと第2の処理ガスとの反応が促進され、生成物が排気手段内に付着しやすくなる。特に、処理ガスに、トリメチルアルミニウム(TMA)と、酸化種例えば水(H2O)や酸素(O)、オゾン(O3)を使用する場合、アルミニウム酸化膜が付着するので問題となる。
【0007】
そこで、これを回避するために、ALD法を用いた半導体製造装置(以下、ALD装置)に、前述したCVD装置で採用されている従来の排気系をそのまま適用して、生成物の付着を抑制することが考えられる。すなわち、処理室から排気管全体、及び全ての排気手段内に、不活性ガスを導入して、生成物の付着を防止する方法である。
しかしながら、そうすると、CVD装置の排気系で問題となっているスループットの低下が生じるため、好ましくない。特にALD法では、処理室内を一旦排気してから処理ガスを供給するサイクルを何回も繰り返して基板を処理するため、スループットが大幅にダウンすることになる。
【0008】
本発明の課題は、トリメチルアルミニウム(TMA)を含む第1の処理ガスと、酸素(O)を含む第2の処理ガスとを交互に供給して基板を処理する基板処理装置において、上述した従来技術の問題点を解消して、生成物の排気手段への付着を有効に防止しながら、スループットを向上することが可能な基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、基板を処理する処理室内に、トリメチルアルミニウム(TMA)を含む第1の処理ガスと、酸素(O)を含む第2の処理ガスとを交互に供給するガス供給系と、排気系とを有し、前記基板上に酸化アルミニウムの薄膜を形成する基板処理装置であって、前記排気系は、前記処理室側の雰囲気を吸気する吸気口および吸気した雰囲気を排気する排気口を有する筐体と、前記筐体内であって前記吸気口と前記排気口との間に設けられ吸気口側の雰囲気を排気口側へ移送する移送手段とを有する排気手段と、前記排気手段の排気口付近の前記筐体内に室温の不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを備えたことを特徴とする基板処理装置である。
【0010】
本発明によれば、室温の不活性ガスを排気手段の筐体内に供給して、排気手段の温度を下げているので、TMAと酸素(O)との反応を抑制し、生成物が排気手段の筐体内に付着するのを防止できる。また、不活性ガスを筐体内の排気口付近に供給しているので、排気手段の排気能力が低下するのを防止できる。したがって、生成物の排気手段への付着を有効に防止しながら、スループットを向上することができる。
なお、室温ではなく高温に加熱した不活性ガスを供給することも可能であるが、室温の不活性ガスを供給するようにすると、加熱手段を必要としない。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、不活性ガス供給手段から供給する室温の不活性ガスの流量は、TMAの分解温度よりも高くならない流量以上であって、前記排気口側の温度が該排気口側の圧力におけるTMAの沸点よりも低くならない流量以下とすることを特徴とする基板処理装置である。
【0012】
不活性ガスの流量が少ないと、排気口付近の温度がTMAの分解温度よりも高くなり、TMAと酸素(O)との反応が促進され、生成物が筐体内に付着しやすくなるという虞があるが、本発明によれば、TMAの分解温度よりも高くならないように、不活性ガス流量の下限を抑えているので、そのような虞がなくなる。
【0013】
一方、不活性ガスを室温の状態で供給しているので、不活性ガスの流量が多すぎると、筐体内の低温化を招き、TMAが液化して筐体内に生成物として付着するという虞があるが、本発明によれば、排気口付近の温度が、排気口側の圧力下におけるTMAの沸点よりも低くならないように、不活性ガス流量の上限を抑えているので、そのような虞もなくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排気手段内部への生成物付着を有効に防止しつつ、スループットを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図3、図4において本発明が適用される基板処理装置の一例である半導体製造装置についての概略を説明する。
半導体製造装置は、シリコン等のウェハよりIC等の半導体デバイスを製造する。
【0017】
筐体101内部の前面側には、図示しない外部搬送装置との間で基板収納容器としてのカセット100の授受を行う保持具授受部材としてのカセットステージ105が設けられ、該カセットステージ105の後側には昇降手段としてのカセットエレベータ115が設けられ、該カセットエレベータ115には搬送手段としてのカセット移載機114が取りつけられている。又、前記カセットエレベータ115の後側には、前記カセット100の載置手段としてのカセット棚109が設けられると共に前記カセットステージ105の上方にも予備カセット棚110が設けられている。前記予備カセット棚110の上方にはクリーンユニット118が設けられクリーンエアを前記筐体101の内部を流通させるように構成されている。
【0018】
前記筐体101の後部上方には、処理炉202が設けられ、該処理炉202の下方には基板としてのウェハ200を水平姿勢で多段に保持する基板保持手段としてのボート217を該処理炉202に昇降させる昇降手段としてのボートエレベータ121が設けられ、該ボートエレベータ121に取りつけられた昇降部材122の先端部には蓋体としてのシールキャップ219が取りつけられ該ボート217を垂直に支持している。前記ボートエレベータ121と前記カセット棚109との間には昇降手段としての移載エレベータ113が設けられ、該移載エレベータ113には搬送手段としてのウェハ移載機112が取りつけられている。又、前記ボートエレベータ121の横には、開閉機構を持ち前記処理炉202の下面を塞ぐ遮蔽部材としての炉口シャッタ116が設けられている。
【0019】
前記ウェハ200が装填された前記カセット100は、図示しない外部搬送装置から前記カセットステージ105に該ウェハ200が上向き姿勢で搬入され、該ウェハ200が水平姿勢となるよう該カセットステージ105で90°回転させられる。更に、前記カセット100は、前記カセットエレベータ115の昇降動作、横行動作及び前記カセット移載機114の進退動作、回転動作の協働により前記カセットステージ105から前記カセット棚109又は前記予備カセット棚110に搬送される。
【0020】
前記カセット棚109には前記ウェハ移載機112の搬送対象となる前記カセット100が収納される移載棚123があり、前記ウェハ200が移載に供される該カセット100は前記カセットエレベータ115、前記カセット移載機114により該移載棚123に移載される。
【0021】
前記カセット100が前記移載棚123に移載されると、前記ウェハ移載機112の進退動作、回転動作及び前記移載エレベータ113の昇降動作の協働により該移載棚123から降下状態の前記ボート217に前記ウェハ200を移載する。
【0022】
前記ボート217に所定枚数の前記ウェハ200が移載されると前記ボートエレベータ121により該ボート217が前記処理炉202に挿入され、前記シールキャップ219により前記処理炉202が気密に閉塞される。気密に閉塞された前記処理炉202内では前記ウェハ200が加熱されると共に処理ガスが該処理炉202内に供給され、前記ウェハ200に処理がなされる。
【0023】
前記ウェハ200への処理が完了すると、該ウェハ200は上記した作動の逆の手順により、前記ボート217から前記移載棚123の前記カセット100に移載され、該カセット100は前記カセット移載機114により該移載棚123から前記カセットステージ105に移載され、図示しない外部搬送装置により前記筐体101の外部に搬出される。尚、前記炉口シャッタ116は、前記ボート217が降下状態の際に前記処理炉202の下面を塞ぎ、外気が該処理炉202内に巻き込まれるのを防止している。前記カセット移載機114等の搬送動作は、搬送制御手段124により制御される。
【0024】
図1は、本実施の形態にかかる半導体製造装置を構成する縦型の減圧処理炉の概略図であり、処理炉部分を縦断面で示したものである。加熱手段であるヒータ207の内側に、基板であるウェハ200を処理する反応容器としての反応管203が設けられる。反応管203は炉口フランジ230上に気密部材であるOリング220を介して気密に支持される。この炉口フランジ230の下端開口は蓋体であるシールキャップ219により気密部材であるOリング220を介して気密に閉塞される。
シールキャップ219にはボート受台218を介して基板保持手段であるボート217が立設されている。そして、ボート217は反応管203内に挿入される。ボート217にはバッチ処理される複数のウェハ200が水平姿勢で管軸方向に多段に積載される。このボート217は図中省略のボートエレベータ機構により反応管203内に出入りできるようになっている。また処理の均一性を向上する為にボート217を回転するための回転手段であるボート回転機構267が設けられており、ボート回転機構267を回転することにより、ボート受台218に保持されたボート217を回転するようになっている。前記ヒータ207は処理炉202内に挿入されたウェハ200を所定の温度に加熱する。
上述した少なくともヒータ207、反応管203により処理炉202が構成される。
【0025】
そして、処理炉202に、処理室201内に処理ガスを供給するガス供給系240が設けられる。ガス供給系240は、複数種類、ここでは2種類のガスを供給する2本のガス供給ライン232a、232bから構成される。第1のガス供給ライン232aからは処理炉202内に第1の処理ガスを供給し、第2のガス供給ライン232bからは処理炉202内に第2の処理ガスを供給するようになっている。2本のガス供給ライン232a、232bは反応管203の内部で1本のノズル233に共通接続される。このノズル233は、反応管203の下部より上部にわたりウェハ200の積載方向に沿って配設されている。そしてノズル233には複数のガスを供給する供給孔が設けられ、積載された各ウェハ200に処理ガスを均等に供給できるようになっている。
【0026】
また、処理炉202に、処理室201内の雰囲気を排気する排気系250が設けられる。排気系250は、炉口フランジ230に接続された排気管231と、排気管231に設けられた排気手段としての真空ポンプ246と、真空ポンプ246内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段30とから構成される。
真空ポンプ246は、処理室201側の雰囲気を吸気する吸気口241および吸気した雰囲気を排気する排気口242を有する筐体247と、筐体247内であって吸気口241と排気口242との間に設けられ吸気口241側の雰囲気を排気口242側へ移送する移送手段としてのロータ248とを有する。
また、不活性ガス供給手段30は、不活性ガス供給路としてのガス供給配管32と、ガス供給配管32につながる図示しない不活性ガス源とを有し、この不活性ガス源から室温の不活性ガス、例えば室温のN2ガスを真空ポンプ246内に供給するようになっている。
以上述べたように実施の形態の基板処理装置が構成される。
【0027】
次に上述した基板処理装置を用いて半導体装置を製造する工程の一工程として基板を処理する方法を説明する。ここでは、シリコンウェハにアルミニウム酸化膜(Al23膜)の成膜を行うプロセスを例にとって説明する。成膜方法には、第1処理ガスと第2処理ガスとを交互に供給して、膜を堆積させるALD法を用いる。また、第1処理ガスには水分又は酸素と反応する、室温で液体のTMAを用い、第2処理ガスには酸化種としてオゾン(O3)を用いる。
【0028】
まず成膜しようとする所定枚数のウェハ200をウェハ移載機112(図3、図4参照)により移載棚123からボート217に移載し、ボートエレベータ121(図3参照)により処理炉202内に搬入する。ヒータ207によりウェハ200を一定時間加熱する。処理室201内を真空ポンプ246で真空引きし、処理室201内を所定の圧力に制御する。ウェハ200が所定温度に加熱され、圧力が安定したら、ウェハ200上への成膜を開始する。
成膜は次の4つの工程からなり、4つの工程を1サイクルとして、所望厚さの膜が形成されるまで複数サイクル繰り返される。ALD法に使用する複数のガスは、それぞれ単独ではウェハ以外(処理室内壁や排気管内、ポンプ内)には吸着又は成膜しないが、複数の処理ガスが混合すると成膜するという性質を持っている。従って、処理室201内に第1の処理ガスを供給したあとは、処理室201内を真空排気及びN2ガスでパージして、処理室から第1の処理ガスを完全に排出した後、第2の処理ガスを処理室201内に供給するようにしている。
【0029】
工程1では、液体原料TMAから気化された第1の処理ガスとしてのTMAガスが、第1のガス供給ライン232aからノズル233を介して処理室201内に供給される。TMAガスを希釈する場合は、さらにN2(Ar)ガスを第1のガス供給ライン232aに流してTMAガスと混合する。TMAガスはノズル233を介してウェハ200上に供給されて、その表面にTMAを吸着する。余剰ガスは排気管231から排気される。
【0030】
工程2では、第1のガス供給ライン232aからのTMAガスの供給を停止する。N2(Ar)ガスを第1のガス供給ライン232aからノズル233を介して処理室201内に供給し、第1のガス供給ライン232a及び、処理室201内に残留しているTMAガスをN2(Ar)ガスで置換し、排気管231から排気する。
【0031】
工程3では、O3が第2のガス供給ライン232bからノズル233を介して処理室201内に供給される。O3ガスを希釈する場合は、キャリアガスN2(Ar)ガスを水供給ライン5に流してO3と混合する。ウェハ200上には、工程1で吸着したTMAとO3とが反応し、Al23膜が形成される。余剰ガスは、排気管231から排気される。
【0032】
工程4では、第2のガス供給ライン232bからのO3の供給を停止する。N2(Ar)ガスを第2のガス供給ライン232bからノズル233を介して処理室201内に供給し、第2のガス供給ライン232b、及び処理室201内に残留しているO3をN2(Ar)ガスで置換し、排気管231から排気する。
【0033】
この4つの工程を1サイクルとして、これを複数回繰り返して、所望の膜厚を有するAl23膜をウェハ200上に成膜する。成膜終了後、ボートエレベータ121(図3参照)により処理炉202からボート217を搬出し、成膜処理後のウェハ200をウェハ移載機121(図3、図4参照)によりボート217から移載棚123に移載する。
【0034】
図2は実施の形態における排気手段を概略断面で示した構成図である。ここでの排気手段は、上流側真空ポンプと下流側真空ポンプとの二段構成になっている。
【0035】
上流側真空ポンプには、例えばロータリ式のメカニカルブースタポンプ10が使用される。メカニカルブースタポンプ10は、排気口13と、処理室側に接続される吸気口12とを含む筐体11と、筐体11内であって、吸気口12と排気口13との間に設けられ、吸気口12側の雰囲気を排気口13側へ移送する移送手段14とから構成される。移送手段14は、高速回転する一対のロータ15から構成されて、その表面に衝突した気体分子に運動量を与え、一対のロータ15間の雰囲気を順次排気口13側に輸送することで、吸気口12側の雰囲気を排気するようになっている。
【0036】
下流側真空ポンプには、例えばドライポンプ20が使用される。これは処理室内への油(ポンプ内機構の密閉用、潤滑用の油)の逆拡散を防止するためである。ドライポンプ20は、スクリューロータ式のポンプであって、排気口23と、処理室側の雰囲気に接続される吸気口22とを含む筐体21と、筐体21内であって、吸気口22と排気口23との間に設けられ吸気口22側の雰囲気を排気口23側へ移送する移送手段24とから構成される。ここで移送手段24は、高速回転する一対のスクリューロータ25から構成され、その表面に衝突した気体分子に運動量を与え、一対のスクリューロータ25間の雰囲気を順次排気口13側に輸送することで、吸気口12側の雰囲気を排気するようになっている。
【0037】
不活性ガス供給手段30は、ドライポンプ20の排気口23付近の筐体21に接続されて、室温の不活性ガスが、排気口23付近の筐体21内に供給されるようになっている。ここで、排気口23付近とは、ドライポンプ20の排気能力の低下しない領域をいう。この領域は、一対のスクリューロータ25の軸方向の中央から下流側の領域が好ましく、一対のスクリューロータ25の出口(後段26)と排気口23との間の領域がより好ましい。
【0038】
CVD法と同様にALD法でも、ウェハ200への不純物の混入を避けるため、処理室201を真空にしてウェハ処理を行っているが、真空を得るためには、客先の排気ライン(排気管)231から、処理室201に向かって、順次圧力Pを下げる方式を採用している(P1<P2<P3(≒大気圧))。
このため、処理室201からドライポンプ20の吸気口22側ないしポンプ前段27までの区間の雰囲気は、メカニカルブースタポンプ10及びドライポンプ20による排気作用(真空ポンプ及びN2ガスでのパージによる排出作用)が有効に働いているため、前の処理で使用した処理ガスが残留しにくく、それゆえ、ALD処理では、この区間に生成物が付着する虞はない。
しかし、ドライポンプ20の排気口23側及びその下流の排気管231内については、排気管231に通じる客先の排気手段に引かれているにもかかわらず、その排気口23側の圧力P3は大気圧より若干陰圧になっている程度であり、排気作用が弱い。したがって、排気口23側及びその下流の排気管231内には、前の処理で使用した処理ガスが残留し、次のガスと混合する虞がある。従って、ALD処理であっても、ドライポンプ20の後段26及びその下流の排気管231内には、生成物が付着し易くなる。
【0039】
この点で、実施の形態では、ドライポンプ20の排気口23付近に室温のN2ガスを供給して、ドライポンプ20の排気口23及びその下流の排気管231内のTMAの濃度を低下しているので、排気口23側の筐体21内での生成物の付着を低減することができる。また、実施の形態では、ドライポンプ20の吸気口22ではなく、排気口23付近にガスを導入させるので、ドライポンプ20の背圧が上がらず、ドライポンプ20の排気能力の低下を防止できるので、排気能力の低下による到達圧力の低下が生じない。したがって、上述した工程1〜4に要する時間も短縮することも可能となり、生成物の付着を低減しながら、スループットの向上をはかることができる。
【0040】
なお、ドライポンプ20の排気口23付近ではなく、ドライポンプ20の下流にある排気管231へ室温のN2ガスを供給した場合には、ドライポンプ20の後段26の筐体21内及びその付近の排気管231内のTMAの濃度は低下しないので、ドライポンプ20の後段の筐体21内及びその付近の排気管231内に生成物が付着してしまうことになる。したがって、ドライポンプ20の排気口23付近のみにN2ガスを導入させることが重要である。
【0041】
2ガスをドライポンプ20の排気口23付近に供給するとき、N2ガスの流量が少ないと、ドライポンプ20の排気口23付近の温度がTMAの分解温度よりも高くなり、TMAと酸素(O)との反応が促進され、生成物がドライポンプ20の筐体21内に付着しやすくなるという虞がある。そこで、N2ガス流量については、TMAの分解温度よりも高くならないようにN2ガス流量の下限を定める必要があり、それ以上の大量のN2ガスを流して、排気口23付近の温度がTMAの分解温度よりも低くなるようにする。
【0042】
一方、室温の状態でN2ガスをドライポンプ20内に供給しているため、N2ガスを大量に流し過ぎると、ドライポンプ20の筐体内の低温化を招き、TMAが液化してドライポンプ20自体の内部に生成物が付着するという虞がある。そこで、ドライポンプ20の排気口23付近の筐体21内温度が、排気口23付近の筐体21内の圧力下におけるTMAの沸点よりも低くならないように、N2ガス流量の上限を抑えるようにする。具体的には、図5のTMA蒸気圧曲線からも分かるように、真空ポンプの排気口側の圧力が大気圧(101,080Pa(760Torr))程度とすると、沸点が127℃なので、TMAの排気ガスが当該温度よりも低くならないように、少なくともN2ガス流量の上限を維持する必要がある。
【0043】
本実施の形態においては、ドライポンプ20内の雰囲気は、吸気口22から排気口23へ向かう一方向の流れのみでなく、排気口23側の雰囲気の一部が吸気口22側に戻る循環流れが生じている。通常、真空ポンプ内では、かき出される大量の分子と逆流する分子とが存在する。この総和が排気量となる。また、分子の逆流が、排気口側の雰囲気の一部が吸気口側に戻る循環流れとなる。この逆流する分子の循環流れが形成されるので、真空ポンプの吸気口側もTMA濃度を低下させることが可能になる。
ドライポンプ20内には、このような循環流が生じているので、ドライポンプ20の排気口23付近の筐体21内部に室温のN2ガスを導入すれば、N2ガスの一部が循環流れ(矢印R)に乗って、ドライポンプ20全体に行き渡る。従って、本来ならば、ドライポンプ20の筐体21内で排気作用が徐々に低下することが原因で、筐体21内にガスが残留する可能性が大きくなり、その結果、複数のガスが共存し、生成物が発生しやすくなるが、前述した循環流れを利用して筐体21内のTMA濃度を低下させることができるので、筐体21内の生成物の付着を有効に抑えることができる。
【0044】
本実施の形態の基板処理装置の処理炉にて、基板を処理する成膜条件としては、例えば、Al23膜を1〜50nmの膜厚に成膜する場合、ウェハ温度は100〜500℃(例えば400℃)、処理室内圧力は13.3〜133Pa(0.1〜1.0Torr)(例えば、50Pa)、TMA流量0.1〜0.5slm(例えば0.35slm)、キャリアN2ガス流量0.5〜4.0slm(例えば4.0slm)である。また、O3流量0.5〜5.0l(例えば5.0l)、キャリアN2ガス流量0.5〜2.0l(例えば2.0l)である。
また、ドライポンプ20内のスクリューロータ25の軸パージと排気ガスの希釈としてN2ガスを30slm程度流す。スクリューロータ25と筐体21との隙間に流す温度低下防止用のN2ガスの流量は、好ましくは20slm以上150slm未満であり、より好ましくは100slmである。
【0045】
実施の形態によれば、室温のN2ガスを真空ポンプ内部に供給したことにより、真空ポンプ及びそれより下流の排気管のメンテナン頻度を低減することが可能となり、メンテナンス費用を低減できるはかりでなく、装置稼働率向上にも寄与することができる。なお、室温ではなく高温に加熱したN2ガスを供給することも可能であるが、室温のN2ガスを供給するようにしたので、N2ガスを高温にするための加熱手段を必要とせず、構造の簡素化を図ることができる。
【0046】
なお、実施の形態では、下流側の真空ポンプ内に室温のN2ガスを供給するようにしたが、排気能力が低下しない程度の流量であれば、ドライポンプ20に代えて、またはドライポンプ20に加えてメカニカルブースタポンプ10の排気口13付近の筐体11内に室温のN2ガスを供給するようにしてもよい。
【0047】
また、実施の形態では、酸素を含む第2の処理ガスとしてO3の場合を例示したが、本発明は、その他、水(H2O)、や酸素(O)を使用した場合にも適用できる。
また、排気手段は、ドライポンプの他に油回転真空ポンプを使用した場合にも適用可能である。
【0048】
また、実施の形態では、ALD法について述べたが、本発明は、複数の処理ガスを交互に供給する方法として、数原子層のMOCVD成膜と活性酸素の導入とを繰り返すサイクリックMOCVD法にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態における縦型の処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面で示した図である。
【図2】実施の形態における排気手段を具体的に示した概略断面図である。
【図3】実施の形態における基板処理装置を示す斜視図である。
【図4】実施の形態における基板処理装置を示す断面図である。
【図5】TMAの蒸気圧の温度特性図である。
【符号の説明】
【0050】
21 筐体
30 不活性ガス供給手段
200 ウェハ(基板)
201 処理室
240 ガス供給系
241 吸気口
242 排気口
246 真空ポンプ(排気手段)
247 筐体
248 ロータ(移送手段)
250 排気系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室内に、トリメチルアルミニウムを含む第1の処理ガスと、酸素を含む第2の処理ガスとを交互に供給するガス供給系と、排気系とを有し、前記基板上に酸化アルミニウムの薄膜を形成する基板処理装置であって、
前記排気系は、
前記処理室側の雰囲気を吸気する吸気口および吸気した雰囲気を排気する排気口を有する筐体と、前記筐体内であって前記吸気口と前記排気口との間に設けられ吸気口側の雰囲気を排気口側へ移送する移送手段とを有する排気手段と、
前記排気手段の排気口付近の前記筐体内に室温の不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と
を備えたことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−5407(P2007−5407A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181141(P2005−181141)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】