説明

基板実装型電気コネクタ

【課題】 基板実装型電気コネクタにおいて、基板を多層基板にすることなく信号パターンを容易に形成することが出来、また、伝送特性に優れ、電気コネクタ内の伝送信号の特性インピーダンスを整合させる。
【解決手段】 信号コンタクト4aと、接地コンタクト4bと、信号コンタクト4aおよび接地コンタクト4bを保持する絶縁ハウジング6とを備え、絶縁ハウジング6の嵌合部において少なくとも1対の信号コンタクト4aおよび1対の信号コンタクト4aに対応する接地コンタクト4bが2列に配置されるとともに、基板に実装される信号コンタクト4aおよび接地コンタクト4bの脚部5が絶縁ハウジング6の嵌合面に最も近い位置から最も遠い位置まで3列に配置された基板実装型電気コネクタ1において、接地コンタクト4bの脚部5bは、嵌合面に最も近い第1列に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に取り付けられる基板実装型電気コネクタに関し、特に、例えば、デジタル放送を受信するテレビ等のデジタル家電等に用いられる基板実装型電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の基板実装型電気コネクタとしては、複数対の差動伝送信号コンタクトおよびこれらの差動伝送信号コンタクトの各対に隣接して接地コンタクトが嵌合部側で2列に配置され、基板に実装される側のコンタクトの脚部が3列に配置された基板実装型電気コネクタが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、他の従来技術として、基板に取り付けられる擬似同軸型構造のコネクタが知られている(特許文献2)。このコネクタのコンタクトは、複数の信号用コンタクトと、この信号用コンタクトを囲むように配置された複数のグランド用コンタクトからなる。また、コネクタの絶縁ハウジングから基板に至るコンタクトの金属部分は、斜めに配置された方向変換部となっている。この方向変換部には絶縁材が配置されて、特性インピーダンスを調整するようになっている。
【特許文献1】特開2002−334748号公報(図4)
【特許文献2】特開平8−138799号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された基板実装型電気コネクタの脚部は、第2列に接地コンタクトが配置され、嵌合面に最も近い第1列および、嵌合面から最も遠い第3列に信号コンタクトが各々配置されているので、電気コネクタが実装される基板上で、第1列から延びる信号パターン即ち導電トレースは、第2列の接地パターン間および第3列の信号パターン間を通過するように配置する必要がある。脚部が高密度の場合、事実上これらの信号パターンを基板の同一層に形成することは不可能である。基板を多層基板として、接地パターンを多層基板の内層に形成すれば信号パターンの形成は可能であるが、多層基板は高コストとなり、最終製品製造メーカーにその負担を強いることになる。また、多層基板を使用する場合、信号パターンの形成に2層必要なので、基板設計の自由度が低下してしまう。
【0005】
また、特許文献2に記載された従来技術の場合は、基板上のコンタクトの配置は、各信号用コンタクトの周りにグランド用コンタクトが配置されて1組となったコンタクトの組が、二次元的に複数配置されている。従って、基板上に形成された信号用の導電トレースは周囲の接地パターン間および信号パターン間を通過させることが必要になり、基板の同一層に形成することが困難である。また、特性インピーダンスを調整するために、コンタクトの方向変換部に絶縁体をインサートモールドにより一体的に形成するか、あるいは各コンタクトの組の信号用コンタクトに絶縁体が個別に装着される。インサートモールドの場合は、追加の工程が必要であり、絶縁体を個別に装着する場合は、部品点数が増加し、組立ての工数も増加する。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、電気コネクタが実装される基板上の信号パターンを同一層に容易に形成することが出来る基板実装型電気コネクタを提供することを目的とするものである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、伝送特性に優れた基板実装型電気コネクタを提供することにある。
【0008】
また、本発明の別の目的は、電気コネクタ内の伝送信号の特性インピーダンスを簡単な構成で容易に整合させることが出来る基板実装型電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基板実装型電気コネクタは、信号コンタクトと、接地コンタクトと、信号コンタクトおよび接地コンタクトを保持する絶縁ハウジングとを備え、絶縁ハウジングの嵌合部において少なくとも1対の信号コンタクトおよび1対の信号コンタクトに対応する接地コンタクトが2列に配置されるとともに、基板に実装される信号コンタクトおよび接地コンタクトの脚部が絶縁ハウジングの嵌合面に最も近い位置から最も遠い位置まで3列に配置された基板実装型電気コネクタにおいて、接地コンタクトの脚部は、嵌合面に最も近い第1列に配置されてなることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、列とは、コンタクトが複数の場合の他、1つのみの場合も含むものとする。
【0011】
また、3列の脚部のうち、対となる信号コンタクトの一方の脚部が第2列に、他方の脚部が第3列に互いに近接させて配置されていることが好ましい。
【0012】
また、各脚部を収容する絶縁性の脚部整列ブロックをさらに備え、脚部整列ブロックは、各脚部を受容する収容部に前記脚部の長手方向に沿った壁面を有するこが好ましい。
【0013】
また、信号コンタクトは、差動伝送信号コンタクトとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明によれば、絶縁ハウジングの嵌合部において少なくとも1対の信号コンタクトおよび1対の信号コンタクトに対応する接地コンタクトが2列に配置されるとともに、基板に実装される信号コンタクトおよび接地コンタクトの脚部が絶縁ハウジングの嵌合面に最も近い位置から最も遠い位置まで3列に配置された基板実装型電気コネクタにおいて、接地コンタクトの脚部は、嵌合面に最も近い第1列に配置されているので、次の効果を奏する。
【0015】
即ち、第2列の信号コンタクトの導電トレース(信号パターン)を、接地コンタクトのランド間を通過させずに、第3列の信号コンタクトのランド間のみ通過させればよいので、信号パターンを基板の片面に容易に形成することができるとともに、コネクタが実装される基板を高価な多層基板にすることなく安価なものとすることが出来る。多層基板を使用する場合は、信号パターンを同一層に形成することができるので、基板設計の自由度を向上させることができる。その結果、信号パターンが必要とする占有面積を減少させて他の電気部品を基板上に載置することが可能になり、或いは基板を小型化してコストを低減することが可能になる。
【0016】
また、請求項2に係る本発明によれば、3列の脚部のうち、対となる信号コンタクトの一方の脚部が第2列に、他方の脚部が第3列に互いに近接させて配置されている場合は、対となった信号パターンを近接配置することが出来るので伝送特性に優れた基板実装型電気コネクタとすることができる。
【0017】
また、請求項3に係る本発明によれば、各脚部を収容する絶縁性の脚部整列ブロックをさらに備え、脚部整列ブロックは、各脚部を受容する収容部に脚部の長手方向に沿った壁面を有する場合は、脚部の周囲を誘電体である脚部整列ブロックで囲むことにより、差動伝送信号間の特性インピーダンスを簡単な構成で容易に整合させることが出来る。
【0018】
また、信号コンタクトが、差動伝送信号コンタクトである場合は、良好な信号伝送特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明による基板実装型電気コネクタの実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態の基板実装型電気コネクタ(以下、単にコネクタという)の正面図を示し、図2は、図1のコネクタの平面図、図3は底面図、図4は右側面図、図5は背面図、図6は、図1の6−6線に沿う縦断面図を夫々示す。
【0020】
以下、図1〜図6を参照して、コネクタ1について説明する。このコネクタ1は、図示しない相手方のコネクタと接続される嵌合部2の形状がHDMI(High Definition Multimedia Interface)規格によって決められている。コネクタ1は、複数のコンタクト4(差動伝送信号コンタクト(信号コンタクト)4a、接地コンタクト4b)と、これらのコンタクト4を保持する絶縁ハウジング(以下、単にハウジングという)6と、ハウジング6を覆う金属製のシェル8とを有する。
【0021】
ハウジング6は、ブロック状の本体10と、この本体10から嵌合部2の嵌合凹部2a(図6)の略中央に突出する平板部12を有する。平板部12の上面12aおよび下面12bには、所定の間隔で複数のコンタクト収容溝14がコネクタ同士の挿抜方向16(図4)に沿って形成されている。これらのコンタクト収容溝14にはコンタクト4が配置される。このコンタクト4の配置の状態については後述する。図3に示すように、ハウジング6の底壁18には、同じ突出量の突出部18a、18bが形成されている。突出部18aは、嵌合部2近傍のコネクタ1の中心軸線20上にT字状に形成され、突出部18bは、ハウジング6の後端左右に互いに離隔して矩形状に形成されている。これらの突出部18a、18bは、コネクタ1が基板22に載置されたとき基板22に当接する。即ち、スタンドオフとなる。突出部18aには、周囲にリブ19aを有する円筒形のボス19が下向きに一体に形成されている。このボス19は、コネクタ1を基板22に配置するときに基板22の位置決め孔76に挿入されて、コネクタ1の位置決めがなされる(図9)。
【0022】
シェル8は、1枚の金属板から打ち抜き、折り曲げにより形成されたものであり、矩形平板状の上壁24と、この上壁24の両側から下方に折り曲げられた側壁26と、側壁26からさらに内方に折り曲げられた底壁28と、上壁24の後部で下方に折り曲げられた後壁34を有する。図6に示すように、シェル8の内側に前述のハウジング6が収容される。シェル8の上壁24には、相手方のコネクタと接地接続される1対の接地舌片24aが形成されている。また、上壁24には、嵌合部2側から上方に直角に延出するブラケット30が一体に形成されている。このブラケット30には、例えば図示しない筐体にねじ止めするための取付孔32が形成されている。
【0023】
シェル8の各側壁26には、接地舌片24aと同様な接地舌片26aが形成されている。側壁26の嵌合部2側には、下方に垂下して、基板22の対応する取付孔74(図9)に挿入されて固定される取付脚36が形成されている。また、側壁26の後部には矩形の係合口27が形成されている。両側から延出する底壁28は、その前部かつハウジング6の底壁18の内側で互いに突き合わされて、ありとあり溝の関係に互いに係止されている。また、図6に示すように、シェル8の底壁28の前部には、嵌合した相手方のコネクタと相互に係合してロックする片持ち梁状のロック片38が形成されている。
【0024】
このようにして形成されたコネクタ1を後部下方から見た斜視図を図7に示す。なお、図7では、コンタクト4の脚部5を明瞭に示すため、後壁34の一部が除去されている。図1および図7を参照して、コンタクト4の配置について詳細に説明する。図1に示すコンタクト4には、便宜上1から19まで連続番号を付してある。位置1、3、4、6、7、9、10、12は、差動伝送信号コンタクト4aを示し、位置2、5、8、11は接地コンタクト4bを示す。位置1と3に配置された1対の差動伝送信号コンタクト4aと、これに対応して位置2に配置された接地コンタクト4bで1組のコンタクト群が形成される。本発明のコネクタ1では、嵌合部2を前方から見て、位置1から12までにこれらのコンタクト群が互い違いに4つ形成されている。これらが差動伝送信号用のコンタクトとなる。また、位置13、15、16、18に配置された信号コンタクト4aは低速コンタクトであり、位置14のコンタクトは、どこへも接続されず独立している。位置17に配置されているのは接地コンタクト4bである。また、位置19には電源用コンタクトが配置されている。
【0025】
図7に示すように、ハウジング6には、前述の信号コンタクト4aおよび接地コンタクト4bが挿通されるコンタクトキャビティ40が上下2段に形成されている。そして、これらのコンタクトキャビティ40からコンタクト4の脚部5(5a、5b、5c)が延出して基板22側に直角に折り曲げられている。この状態は、図3、図7に明瞭に示されている。即ち脚部5は、嵌合部2に最も近い第1列と、最も遠い第3列と、その中間の第2列の3列に配置されている。この位置の変換は、ハウジング6から後方に突出する脚部5の水平部7の長さを変えることによってなされる。
【0026】
すなわち、図7において、位置1に位置する最も左側の信号コンタクト4aの脚部5aは、中間の長さの水平部7を有して2列目に位置し、脚部5aに隣接する接地コンタクト4bの脚部5bは、水平部7が最も短く、1列目に位置する。そしてこの脚部5bに隣接する脚部5cは、水平部7が最も長く3列目に位置する。
【0027】
この配置の状態を図9に示す、図9は、コンタクト4の脚部5が接続される基板22上のランド44、46のレイアウトを示す平面図である。基板22上に配置されるコネクタ1の外形を仮想線で示す。基板22にはコンタクト4の脚部5が挿入される貫通孔42が3列に配置されている。即ち、コネクタ1の嵌合部2の嵌合面2bに最も近い側に配置される第1列目、この第1列目から遠ざかるように第2列目、第3列目が配置されている。各貫通孔42には、図1中に示した位置の番号に対応する番号が示されている。
【0028】
図9から判るように接地コンタクト4bの脚部5bは、第1列目に配置され、信号コンタクト4aの脚部5a、5cは、第2列目および第3列目にそれぞれ配置されている。接地コンタクト4bに接続されるランド44は、基板22の裏面即ち図9において紙面と直交する方向の向こう側に形成されており、裏面の全面に形成された接地領域45に連続している。そして、2列目および3列目の信号コンタクト4a用のランド46は、基板22の表面即ち紙面の手前の面に形成されている。これらのランド46からは導電トレース48がコネクタ1の後方に延出している。2列目の位置1、4、7、10のランド46から延びる導電トレース48は、3列目の位置3、6、9、12のランド46の間を通って3列目の導電トレース48にそれぞれ近接して延出している。これによって、差動伝送信号の伝送特性を良好なものにしている。
【0029】
脚部5は、このように3列に配置されるように構成されているが、これらの脚部5は、脚部整列ブロック(以下、単に整列ブロックという)50によって互いの位置関係が保持されている。次に、この整列ブロック50について説明する。図8は、コネクタ1に使用される整列ブロック50を前方から見た斜視図を示す。整列ブロック50は、ハウジング6の後部に配置されるものであり、全体が略直方体である。図8の整列ブロック50は、手前がハウジング6側に位置し、反対側がコネクタ1の後端に位置する。整列ブロック50の長手方向両端部には上下方向に延びる溝52が形成されており、これらの溝52内には片持ち梁状のラッチアーム54が上方に延びるように形成されている。ラッチアーム54の先端には上向きのテーパ56aを有する突起56が形成されている。この突起56は、シェル8の係合口27に係合してコネクタ1に取り付けられる。
【0030】
整列ブロック50には、整列ブロック50の前面58に、第1列目の脚部5bを受容する整列溝(収容部)60が脚部5bに対応させて上下方向に形成されている。整列溝60の内部形状は、脚部5bの外形形状と略相補的形状になっている。そして整列溝60の左右に隣接して、2列目および3列目の脚部5a、5c用の整列溝62、64が、夫々整列ブロック50の上面70および前面58から切り欠かれて形成されている。これらの整列溝62、64は、脚部5の水平部7の部分が配置される底部62a、64aを夫々有する。そして底部62a、64aに連続して整列ブロック50の後面72近傍に下方に貫通する整列孔62b、64bが形成されている。これらの整列孔62b、64bには、脚部5の垂直部分が挿入される。これらの整列溝62,64は下段に配置された信号コンタクト4a用のものであり、上段に配置された信号コンタクト4a用には上段に対応した高さに、2列目用および3列目用として、整列溝66、68が形成されている。これらの整列溝66、68にも同様に底部66a、68aおよび整列孔66b、68bが形成されている。なお、図8には、図1および図9の位置番号1から19に対応させて、便宜上番号を付してある。
【0031】
コンタクト4の脚部5が、このように整列溝60、62、64、66、68に配置されることにより、脚部5の長手方向に沿って整列ブロック50の壁面即ち、整列溝60の内面、底部62a、64a、66a、68aおよび整列孔62b、64b、66b、68bの内面が位置することになる。従って、脚部5の周囲が整列ブロック50の誘電体によってある程度、囲まれることになるため、ハウジング6に保持されたコンタクト4の部分と特性インピーダンスが整合される。換言すると、ハウジング6から突出した高密度で配置された細い脚部5の部分でインピーダンスが上昇する。この上昇するインピーダンスは、脚部5の周囲を誘電体である脚部整列ブロック50の壁面で囲むことにより、低下させて差動伝送信号の特性インピーダンスを整合させることができる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態のコネクタ100について、図10〜図12を参照して説明する。図10は、コネクタ100の正面図、図11は、図10における11−11線に沿うコネクタ100の縦断面図、図12は図10のコネクタ100の底面図である。図10〜図12に示すように、コネクタ100は、絶縁性のハウジング106、このハウジング106の外側に配置されたシールド用のシェル108、ハウジング106内に保持されたコンタクト104(104a、104b、104c、104d)(図11)および誘電体の整列ブロック200を有する。ハウジング106は、図10の正面図に示すように、各々がガイド穴106aを有する延長壁106b(図11)を左右に有する。ガイド穴106aは、コネクタ同士の嵌合時に図示しない相手方のコネクタの一部が挿入されて、互いに案内されつつ円滑に嵌合するためのものである。シェル108は、ハウジング106の外周に沿ってハウジング106を覆うように形成されている。
【0033】
ハウジング106の正面の中央部分には、上下に平行に離隔した2枚の平板部112が嵌合部102に向けて突設されている。各平板部112の両面すなわち上面112aおよび下面112b(図10)には、所定の間隔で平板部112の長手方向に沿って配列されたコンタクト収容溝114が形成されている。各コンタクト収容溝114には、コンタクト104の接触部140が係止されている(図11)。コンタクト104は、接触部140から後方に、基板222と略平行に延出する水平部107(107a、107b、107c、107d)と、水平部107から略直角に基板222に折り曲げられた略垂直な脚部105(105a、105b、105c、105d)とをさらに有する(図11)。平板部112の上下は、コネクタ100の正面から見て横長の空間142a、142b(図11)となっている。嵌合部102には、この空間142a、142bを覆うように絶縁性の面板144が配置されている。この面板144には、平板部112に対応する逃げのための開口144a(図11)が形成されている。さらに、空間142aの上下に位置する空間142bには、面板144を弾性的に支持するコイルばね146が配置されている。面板144は、コネクタ同士の嵌合時に相手方コネクタに押圧されて、コネクタ100の内部に移動するようになっている。
【0034】
前述の整列ブロック200は、コンタクト104の各脚部105の長さに対応して複数の高さを有するように階段状に整列部201(201a、201b、201c、201d)が、一体に形成されている。例えば、図11において高さの低い(長さの短い)脚部105aに対しては、高さの低い整列部201aが形成されている。脚部105の高さが高くなるにつれて、対応して高さの高い整列部201b、201c、201dが順次位置する。各整列部201a〜200dは、図11において紙面と直交する方向に延びる上面202a、202b、202c、202dをそれぞれ有する。なお、これらの上面202a、202b、202c、202dを総括して上面202という。上面202には、脚部105を挿通する貫通孔204(204a、204b、204c、204d)が、隣接する高さの高い整列部201(例えば貫通孔204aに対しては、整列部201b)に近接して形成されている。貫通孔204の上端は円錐形に形成されており、コンタクト104の脚部105を円滑に挿入することができる。なお、整列ブロック200はLCP(Liquid Crystal polymer、液晶ポリマー)から成形され、1MHzにおける比誘電率は約3.8である。
【0035】
貫通孔204と、その中に配置されるコンタクト104の脚部105との間隙は、例えば、約0.2mmの狭さに設定されている。このように脚部105の周囲は、空気ではなく誘電体により密接状態に囲まれているので、脚部105の静電容量が増大し、特性インピーダンスを低減することができる。従って、接触部140と基板222の間の空間内に、コンタクト104の水平部107と脚部105が位置することによる、特性インピーダンスの不整合をこの整列ブロック200を配置することにより調整することができる。従って、特性インピーダンスの不整合による伝送信号の反射や、信号波形の乱れを改善することができ、良好な高速伝送特性が得られる。なお、図10〜図12に示すコネクタ100の構成における特性インピーダンスは、目標を100Ωとした場合に、空気のみの場合は252Ωであるが、整列ブロック200を用いると122Ωに低減することができる。この122Ωという値は、目標の100Ωに対し許容できるものである。
【0036】
整列ブロック200は、図12から判るように両側に矩形の凹み206を有する。他方ハウジング106は、この凹み206と組み合う、凹み206と相補的な形状の凸部106cを有する。なお、図12では、ハウジング106の凸部106cは、凸部106cと相補的な形状のシェル108の折曲部108aで覆われている。シェル108は、図11に示すように、基板222に接地接続される接地脚109(109a、109b)を有する。また、コンタクト104の脚部105の配置は、信号用をSとし、グランド用をGとすると、図12に示す如く、差動伝送を行うように配置される。全部のコンタクト104が、このように差動伝送を行うように配置されなくともよいが、このような配置を基本パターンとする。換言すると、コネクタ100は、コンタクト104がこの差動伝送を行うパターンに従って配置される領域を有する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる基板実装型電気コネクタの正面図
【図2】図1の基板実装型電気コネクタの平面図
【図3】図1の基板実装型電気コネクタの底面図
【図4】図1の基板実装型電気コネクタの右側面図
【図5】図1の基板実装型電気コネクタの背面図
【図6】図1の6−6線に沿う基板実装型電気コネクタの縦断面図
【図7】脚部整列ブロックを外した状態の、図1の基板実装型電気コネクタを後部下方から見た斜視図
【図8】図1の基板実装型電気コネクタに使用される脚部整列ブロックの前方から見た斜視図
【図9】コンタクトの脚部が接続される基板上のランドのレイアウトを示す平面図
【図10】本発明の第2の実施形態に係わる基板実装型電気コネクタの正面図
【図11】図10における11−11線に沿う基板実装型電気コネクタの縦断面図
【図12】図10の基板実装型コネクタの底面図
【符号の説明】
【0038】
1、100 基板実装型電気コネクタ
2、102 嵌合部
2b 嵌合面
4a 差動伝送信号コンタクト
4b 接地コンタクト
5、105 脚部
6、106 絶縁ハウジング
22、222 基板
50、200 脚部整列ブロック
60、62、64、66、68 収容部(整列溝)
104 コンタクト
204 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号コンタクトと、接地コンタクトと、前記信号コンタクトおよび前記接地コンタクトを保持する絶縁ハウジングとを備え、前記絶縁ハウジングの嵌合部において前記少なくとも1対の前記信号コンタクトおよび該1対の信号コンタクトに対応する前記接地コンタクトが2列に配置されるとともに、基板に実装される前記信号コンタクトおよび接地コンタクトの脚部が前記絶縁ハウジングの嵌合面に最も近い位置から最も遠い位置まで3列に配置された基板実装型電気コネクタにおいて、
前記接地コンタクトの脚部は、前記嵌合面に最も近い第1列に配置されてなることを特徴とする基板実装型電気コネクタ。
【請求項2】
前記3列の脚部のうち、対となる前記信号コンタクトの一方の脚部が第2列に、他方の脚部が第3列に互いに近接させて配置されてなることを特徴とする請求項1記載の基板実装型電気コネクタ。
【請求項3】
前記各脚部を収容する絶縁性の脚部整列ブロックをさらに備え、該脚部整列ブロックは、前記各脚部を受容する収容部に前記脚部の長手方向に沿った壁面を有することを特徴とする請求項1または2記載の基板実装型電気コネクタ。
【請求項4】
前記信号コンタクトは、差動伝送信号コンタクトであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の基板実装型電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−19256(P2006−19256A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162297(P2005−162297)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスアンプ株式会社 (340)
【Fターム(参考)】