説明

基板形成用組成物およびこれを用いたプリント配線板

【課題】耐熱性、熱膨張係数などの熱特性、および耐吸収性に優れたプリント配線板を、低廉な製造費用で製造することができる手段を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の基板形成用組成物は、溶媒と、熱硬化性芳香族オリゴマーとを含む基板形成用組成物であって、前記熱硬化性芳香族オリゴマーは、主鎖に少なくとも1つの可溶性構造単位を有し、主鎖の両末端の少なくとも一方に熱硬化性官能基を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板形成用組成物およびこれを用いたプリント配線板に関し、詳細には、主鎖に少なくとも1つの可溶性構造単位を有し、主鎖の両末端の少なくとも一方に熱硬化性官能基を有する熱硬化性芳香族オリゴマーを含む基板形成用組成物およびこれを用いたプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信技術の発達により、コンピュータと通信機器とが一体化され、社会はますます高度な情報通信化を遂げている。また、携帯電話、パソコンなどの電子機器が小型化、高性能化されることによって、これらに不可欠な電子デバイスであるプリント配線板の高密度集積化が進んでいる。プリント配線板の高密度集積化は、基板の多層化、薄化、スルーホールの直径および間隔の微小化によって達成されうる。このような背景から、より高性能な基板素材が求められている。
【0003】
コンピュータなどの電子機器では、大量の情報を短時間に処理するために、高い動作周波数が用いられるが、一方で、動作周波数を高くすることによって伝送損失および信号遅延が生じるという問題点があった。この問題を解決するためには、低誘電率および低誘電正接を有する銅張積層板が必要であった。一般的に、プリント配線板における信号遅延は配線周囲の絶縁物の比誘電率の平方根に比例して増加するため、高い伝送速度を要する基板の材料としては、誘電率の低い樹脂組成物を使用することが好ましい。
【0004】
しかしながら、現在、最も汎用されているFR−4 銅張積層板は、4.5〜5.5程度の比較的大きな誘電率を有しているため、伝送損失および信号遅延が大きくなるという問題を有していた。また、このような基板素材は、今後のパッケージング技術で要求されうる優れた機械的物性、高耐熱性、低熱膨張性、低吸湿性を満足することは困難なため、次世代基板に求められる特性を具備した新しい基板素材の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2007−119610号公報
【特許文献2】米国特許第6939940号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、耐熱性、熱膨張係数などの熱特性、および耐吸収性に優れたプリント配線板を、低廉な製造費用で製造することができる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一つの態様は、溶媒と、熱硬化性芳香族オリゴマーとを含む基板形成用組成物であって、前記熱硬化性芳香族オリゴマーは、主鎖に少なくとも1つの可溶性構造単位を有し、主鎖の両末端の少なくとも一方に熱硬化性官能基を有する基板形成用組成物である。
【0007】
前記可溶性構造単位は、C〜C30のアリール−アミン構造を含みうる。また、前記熱硬化性官能基は、好ましくは熱架橋性反応基であり、マレイミド基、ナジミド基、フタルイミド基、エチニル基(R−CC−;Rは、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、もしくはシクロヘキサノールで置換された、または非置換のアリール基を表す)、プロパルギルエーテル基(HCC−CR−O−;Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC〜C40のアルキル基を表す)、ベンゾシクロブテン基、シアネート基またはこれらの置換体もしくは誘導体を含みうる。
【0008】
また、本発明の他の態様は、熱硬化性芳香族オリゴマーおよび溶媒以外に強化剤をさらに含む基板形成用組成物である。
【0009】
また、本発明の別の態様は、前記基板形成用組成物から製造されるプリプレグまたは基板である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、耐熱性、熱膨張係数などの熱特性、および耐吸収性に優れた各種のプリント基板を、低廉な製造費用で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい形態についてより詳細に説明する。
【0012】
本発明の好ましい形態に係る基板形成用組成物は、溶媒と、熱硬化性芳香族オリゴマーとを含み、前記熱硬化性芳香族オリゴマーは、主鎖に少なくとも1つの可溶性構造単位を有し、主鎖の両末端の少なくとも一方に熱硬化性官能基を有する。なお、本発明において、「可溶性」とは、組成物に使用された溶媒に対する溶解度に優れた特性を意味する。
【0013】
一般的に、高分子樹脂を用いて基板を製造する際には、高分子樹脂を溶融させて使用するか、または高分子樹脂を溶媒に溶解させて使用する。しかしながら、溶融液の場合は勿論のこと、溶液の場合であっても基板を製造するには粘度が高すぎるという問題点を有していた。よって、溶液の場合であっても、粘度の増大を防ぐために、固形分含有量を増加させることが難しい。特に、ガラス繊維に含浸させる場合においては、高分子樹脂溶液の粘度が高いと含浸が難しく、逆に、固形分含有量が低い場合には含浸量が足りないために再加工が必要となり、加工費が増大するといった問題点を有していた。これに対して、本形態に係る熱硬化性芳香族オリゴマーは、誘電率、熱膨張係数、耐吸収性などの特性に優れるのに加えて、主鎖に少なくとも1つの可溶性構造単位を有することにより溶媒に対する溶解性にも非常に優れるため、各種基板の素材として応用する場合、製造費用を低減させることができる。
【0014】
熱硬化性芳香族オリゴマーの主鎖に含まれる可溶性構造単位は、C〜C30のアリール−アミン構造であることが好ましい。可溶性構造単位は、より好ましくは、下記化学式(1)で表される構造単位を含む。
【0015】
【化1】

【0016】
化学式(1)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表し;XおよびYは、それぞれ独立して、O、NRまたはCOを表し、かつ、XおよびYのうちの少なくとも1つはNRを表し、ここでRは、それぞれ独立して、水素原子、C〜C20のアルキル基またはC〜C30のアリール基を表す。
【0017】
このような可溶性構造単位は、好ましくは下記化学式(2)で表される構造単位を少なくとも1種含むが、これらに限定されるものではない。
【0018】
【化2】

【0019】
化学式(2)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表す。
【0020】
熱硬化性芳香族オリゴマーを構成する各々の構造単位において、Arは互いに同一であってもよいし異なってもよい。また、Arの芳香環は、アミド基、エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基およびフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されうる。
【0021】
前記Arの具体例としては、下記化学式(3)で表される、置換または非置換のアリーレン基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
【化3】

【0023】
熱硬化性芳香族オリゴマーは、可溶性構造単位を全構造単位に対して5モル%を超えて60モル%以下の含有量で含むことが好ましい。可溶性構造単位の含有量が5モル%以下の場合には、所望の溶解度向上効果が得られない虞があり、一方、可溶性構造単位の含有量が60モル%を超過する場合には、親水性が増加して耐吸湿性が低下する虞がある。熱硬化性芳香族オリゴマー中の可溶性構造単位の含有量は、反応時に添加する可溶性構造を含む単量体の含有量を調節することで、所望の量の可溶性構造単位を熱硬化性芳香族オリゴマーに導入することができる。また、可溶性構造単位の含有量は可溶性構造単位の大きさ、質量、特性および化学的組成によって適宜調整されうる。
【0024】
熱硬化性芳香族オリゴマーは、可溶性構造単位とともに、主鎖に下記化学式(4)で表される構造単位をさらに含みうる。
【0025】
【化4】

【0026】
化学式(4)中、Arは、C〜C30のアリーレン基であり;XおよびYは、それぞれ独立して、OまたはCOを表す。
【0027】
前記化学式(4)で表される構造単位は、好ましくは下記化学式(5)で表される構造単位を少なくとも1種含むが、これらに限定されるものではない。
【0028】
【化5】

【0029】
化学式(5)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表す。
【0030】
熱硬化性芳香族オリゴマーを構成する構成単位のうち、前記化学式(5)で表される構造単位が2種以上含まれる場合には、各々の構造単位においてArは互いに同一であってもよいし異なっても勿論よい。また、Arの芳香環は、アミド基、エステル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基およびフルオロメチル基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されうる。
【0031】
前記Arは、具体例としては、下記化学式(3)で表される、置換または非置換のアリーレン基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
【化6】

【0033】
熱硬化性芳香族オリゴマーは、主鎖の両末端の少なくとも一方に熱硬化性官能基を有する。主鎖の両末端のいずれにも熱硬化性官能基を有する場合は、それぞれの熱硬化性官能基は互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。このような熱硬化性官能基は、プリント配線板などの製造の際の高温硬化処理によって互いに架橋されて堅固な網形態の安定した構造を形成するため、プリント配線板の機械的物性を向上させることができる。
【0034】
熱硬化性官能基は、熱架橋性反応基であることが好ましい。このような熱硬化性官能基としては、例えば、マレイミド基、ナジミド基、フタルイミド基、エチニル基(R−CC−;Rは、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、もしくはシクロヘキサノールで置換された、または非置換のアリール基を表す)、プロパルギルエーテル基(HCC−CR−O−;Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC〜C40のアルキル基を表す)、ベンゾシクロブテン基、シアネート基ならびに置換体および誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、本発明において「置換体」とは、熱架橋性反応基の末端の一部が置換基で置換された構造を意味し、該置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基等が挙げられる。例えば、マレイミド基の場合、二種結合に与る炭素原子に結合した水素原子のうちの1つ以上がメチル基のようなアルキル基などにより置換されたものを含む。また、本発明において「誘導体」とは、上記の熱架橋性反応基に、環が縮合した構造を意味し、該環としては、例えば、芳香族環、ヘテロ芳香族環等が挙げられる。例えば、マレイミド基の場合、マレイミド基にベンゼン環またはナフタレン環が縮合したものを含む。
【0035】
熱硬化性芳香族オリゴマーは、好ましくは下記化学式(6)で表される構造を有する。
【0036】
【化7】

【0037】
化学式(6)中、Rは、下記化学式(2)の中から選択される少なくとも1種の構造単位を表し;Rは、下記化学式(5)の中から選択される少なくとも1種の構造単位を表し;
およびZは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、ヒドロキシ基、マレイミド基、ナジミド基、フタルイミド基、ナフチル基、エチニル基(R−CC−;Rは、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、もしくはシクロヘキサノールで置換された、または非置換のアリール基を表す)、プロパルギルエーテル基(HCC−CR−O−;Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC〜C40のアルキル基を表す)、ベンゾシクロブテン基、シアネート基およびこれらの置換体または誘導体を表し;ZおよびZのうちの少なくとも一方は、マレイミド基、ナジミド基、フタルイミド基、エチニル基(R−CC−;Rは、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、もしくはシクロヘキサノールで置換された、または非置換のアリール基を表す)、プロパルギルエーテル基(HCC−CR−O−;Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC〜C40のアルキル基を表す)、ベンゾシクロブテン基、シアネート基またはこれらの置換体もしくは誘導体を表し;
nおよびmは、それぞれ独立して、正の整数を表し、好ましくはそれぞれ独立して1〜50の整数を表す。
【0038】
【化8】

【0039】
化学式(2)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表し、
【0040】
【化9】

【0041】
化学式(5)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表す。
【0042】
より好ましくは、熱硬化性芳香族オリゴマーは、下記化学式(7)または(8)で表される構造を有する。
【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
化学式(7)および化学式(8)中、ZおよびZは、それぞれ独立して、マレイミド基、ナジミド基、フタルイミド基、エチニル基(R−CC−;Rは、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、もしくはシクロヘキサノールで置換された、または非置換のアリール基を表す)、プロパルギルエーテル基(HCC−CR−O−;Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC〜C40のアルキル基を表す)、ベンゾシクロブテン基、シアネート基またはこれらの置換体もしくは誘導体を表し、;m、m、およびnは、それぞれ独立して、正の整数を表し、好ましくは、m+m=1〜50を満たし、n=1〜50を満たす。
【0046】
また、前記化学式(6)〜(8)で表される構造において、n/(n+m+2)が0.05を超えて0.6以下であることが好ましい。なお、前記化学式(6)において、RまたはRは、それぞれ独立して、1種あるいは2種以上の構造単位を表しうる。RまたはRが複数種の構造単位を含む場合、mは、複数種のRの構造単位の総和に相当し、nは、複数種のRの構造単位の総和に相当する。すなわち、前記化学式(7)および(8)においては、mは、mおよびmの和に相当し、nは、nに相当する。
【0047】
熱硬化性オリゴマーの数平均分子量は、500〜15000であることが好ましい。熱硬化性芳香族オリゴマーの数平均分子量が500未満の場合には、架橋密度が高くなることにより物性が脆弱になる虞があり、一方、数平均分子量が15000を超える場合には、溶液の粘度が高くなってガラス繊維に含浸する際に不利になる虞がある。
【0048】
熱硬化性芳香族オリゴマーの製造方法は、特に制限されないが、例えば、重合を通じて可溶性構造単位を含む芳香族オリゴマーを製造できる化合物と、熱硬化性官能基を導入できる化合物とを反応させて製造する方法がある。
【0049】
可溶性構造単位を含む芳香族オリゴマーを製造できる化合物は、特に制限されないが、例えば、一つ以上の芳香族、芳香族ヘテロ環または脂肪族ジカルボン酸;芳香族、芳香族ヘテロ環または脂肪族ジオール;芳香族、芳香族ヘテロ環または脂肪族ジアミン;アミノフェノール;ヒドロキシ安息香酸;およびアミノ安息香酸からなる群より選択されることができ、芳香族、芳香族ヘテロ環または脂肪族ジオール;アミノフェノール;およびアミノ安息香酸のうちの少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0050】
熱硬化性芳香族オリゴマーの製造方法の一例としては、溶液重合または塊状重合による製造方法が挙げられる。溶融重合または塊状重合は、適した撹拌手段を備えた一つの反応タンク内で行われうる。
【0051】
溶液重合方法について例を挙げて説明すると、まず、イソフタロイルクロライド、アミノフェノール、2,6−ジヒドロキシナフタレンおよびトリエチルアミンを反応器に入れた後、常温で撹拌しながら反応させる。一定時間の経過後、熱硬化性官能基を付加できる化合物(例えば、マレイミド−ベンゾイルクロライドなどのようにマレイミド、ナジミドまたはアセチレンなどを付加できる化合物)をさらに添加して反応させることによって熱硬化性芳香族オリゴマーを合成した後、これを分離精製することで、熱硬化性芳香族オリゴマーを得ることができる。
【0052】
一方、塊状重合により熱硬化性芳香族オリゴマーを製造する場合には、イソフタル酸、アミノフェノール、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸および無水酢酸を反応器に添加して撹拌しながら温度を徐々に150℃まで上げた後、還流させながら一定時間反応させる。次いで副生成物である酢酸および未反応の無水酢酸を除去した後、4−ヒドロキシ安息香酸をさらに添加して320℃まで昇温して反応させる。こうして主鎖の両末端の少なくとも一方にアルコール基を有する芳香族オリゴマーを合成する。この主鎖の両末端の少なくとも一方にアルコール基を有する芳香族オリゴマーが得られた後、該芳香族オリゴマーを溶媒(例えば、DMF)に溶解させた後、熱硬化性官能基を付加できる化合物を添加して反応させると、主鎖の両末端の少なくとも一方に熱硬化性官能基が付加した熱硬化性芳香族オリゴマーを得ることができる。
【0053】
塊状重合により熱硬化性芳香族オリゴマーを製造する他の方法の場合には、イソフタル酸、アミノフェノール、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸および無水酢酸を反応器に添加して撹拌しながら温度を徐々に150℃まで上げた後、還流させながら一定時間反応させる。次いで230℃まで徐々に昇温しながら、副生成物である酢酸および未反応の無水酢酸を除去して芳香族オリゴマーを合成する。次に、ナジミド安息香酸をさらに添加して250℃まで昇温することによって熱硬化性芳香族オリゴマーを得ることができる。
【0054】
本形態に係る基板形成用組成物は、溶媒キャスティング工程に適用可能であり、ガラス繊維などの含浸が容易である。基板形成用組成物に含まれる溶媒は、特に制限されないが、極性非プロトン性溶媒であることが好ましい。例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチルラクトン、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルホスホリックアミドおよびエチルセロソルブアセテート(エチレングリコールモノエチルエーテルアセテ−ト)からなる群より選択されるものを使用することができ、これらのうち2種以上を含む混合溶媒を使用することもできる。基板形成用組成物は、溶媒100質量部に対して熱硬化性芳香族オリゴマーを0.1〜300質量部を含みうる。
【0055】
本発明の他の形態の基板形成用組成物は、熱硬化性芳香族オリゴマーおよび溶媒以外に、強化剤をさらに含みうる。熱硬化性芳香族オリゴマーに強化剤を添加すると、組成物の柔軟性を向上させることができる。強化剤は、芳香族高分子化合物であることが好ましい。芳香族高分子化合物の数平均分子量は、好ましくは、2000〜500000である。このような芳香族高分子化合物としては、例えば、主鎖にエステル、エステル−アミド、エステル−イミド、エステル−エーテルおよびエステル−カーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のメソゲン基を含む芳香族高分子化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、強化剤は、主鎖の両末端の少なくとも一方に熱硬化性官能基を有さない点で、熱硬化性芳香族オリゴマーとは異なる。熱硬化性芳香族オリゴマーおよび強化剤の混合比は、質量比で99.5:0.5〜35:65であることが好ましい。
【0056】
基板形成用組成物中の固形分含有量は、組成物の全質量100質量部に対して、好ましくは5質量部以上100質量部未満であり、より好ましくは5質量部以上95質量部以下であり、このうち下限値は、さらに好ましくは30質量部以上であり、特に好ましくは50質量部以上である。基板形成用組成物は、熱硬化性芳香族オリゴマーの優れた溶解性により、高い固形分含有量を有することができる。
【0057】
本形態の基板形成用組成物は、必要に応じて充填剤、軟化剤、可塑剤、潤滑剤、静電気防止剤、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤およびUV吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含みうる。充填剤の例としては、エポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末およびスチレン樹脂粉末などの有機充填剤;およびシリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、カオリン、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムなどの無機充填剤が挙げられる。
【0058】
本形態に係る基板形成用組成物は、銅箔との接着強度が高く、耐熱性、低膨張性、機械的特性に優れるため、優秀なパッケージング材料として使用されうる。また、基板形成用組成物は、基板に成形されるか、または含浸用もしくはコーティング用ワニスを形成することができる。さらに、基板形成用組成物は、プリント基板、多重層基板の各層、銅被覆積層物(例えば、樹脂付銅箔(resin coated copper:RCC)、銅張積層板(copper clad laminate:CCL))、TABフィルムに適用可能であるが、これらの用途にのみ限定されるものではない。
【0059】
基板形成用組成物を基板などの材料として使用する場合には、熱硬化性芳香族オリゴマーと溶媒とを含む組成物、または強化剤および熱硬化性芳香族オリゴマーと溶媒とを含む組成物を基板上にキャスティングして薄膜を形成した後、高温硬化させることによって、基板などを製造することができる。特に、熱硬化性芳香族オリゴマーに高分子量の強化剤を添加して柔軟性を向上させた組成物は、銅箔積層過程で取り扱いが便利であるという利点を有する。
【0060】
基板形成用組成物を用いてプリプレグを製造することができる。プリプレグは、基板形成用組成物を補強材に含浸させて製造されうる。具体的には、基板形成用組成物を補強材に含浸させた後、硬化させてシート状に製造する方法が挙げられる。補強材は、特に制限されないが、例えば、ガラス繊維織布(glass cloth)、アルミナガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、セルロース不織布、カーボン繊維織布および高分子織物などが挙げられる。補強材を基板形成用組成物に含浸させる方法としては、ディップコーティング法、ロールコーティング法などがあり、その他の当該分野で使用される公知の含浸方法を制限なく使用することができる。
【0061】
また、基板形成用組成物を用いて基板を製造することができる。基板は、特に制限されないが、例えば、多重層基板の各層、金属箔と結合された積層物形態、印刷ボードなどでありうる。また、前記プリプレグが金属箔と結合された形態を含みうる。
【0062】
基板は様々な形態とすることが可能であり、例えばフィルム形態でありうる。フィルムは、基板形成用組成物を薄膜化することによって製造することができる。このようなフィルム形態の基板の製造方法の例としては、押出機で押し出された基板形成用組成物をダイを用いてフィルム状に形成させる押出成形方法;基板形成用組成物をフィルム状になるようにキャスト成形するキャスト成形方法;およびガラスのような無機基板または織物状の基板を基板形成用組成物のワニスに浸した後、基板をフィルム状になるように成形させるディップ成形方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
フィルム形態以外としては、基板は、金属箔と結合された積層物形態でありうる。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔などが使用される。金属箔の厚さは、用途に応じて異なるが、5〜100μmの厚さの金属箔が好適に使用される。金属箔被覆積層板の金属箔に対して回路加工を行うことで、プリント配線板を製作することができる。また、印刷積層板の表面にさらに金属箔被覆積層板を同一に積層して加工して多層プリント配線板を製作することができる。
【0064】
金属箔と結合される積層物は、基板形成用組成物を金属箔(例えば、銅箔)上に塗布または鋳造した後、溶媒を除去してから熱処理を行う方法により製造されうる。溶媒の除去は、好ましくは溶媒を蒸発させることで行われる。溶媒を蒸発させる方法の例としては、減圧下で加熱する方法、換気する方法などが挙げられる。
【0065】
基板形成用組成物を塗布する方法の例としては、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、カーテンコーティング法、スロットコーティング法およびスクリーンコーティング法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。基板形成用組成物は、銅箔上に塗布または鋳造される前にフィルターなどでろ過して溶液中に含まれた微細な不純物を除去することが好ましい。
【0066】
金属箔と結合される積層物は、特に制限されないが、例えば、樹脂付銅箔、銅張積層板などがある。
【0067】
本発明の別の態様は、下記化学式(6)で表される熱硬化性芳香族オリゴマーに関する。
【0068】
【化12】

【0069】
化学式(6)中、Rは、下記化学式(2)の中から選択される少なくとも1種の構造単位を表し;Rは、下記化学式(5)の中から選択される少なくとも1種の構造単位を表し;ZおよびZは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、ヒドロキシ基、マレイミド基、ナジミド基、フタルイミド基、、ナフチル基、エチニル基(R−CC−;Rは、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、もしくはシクロヘキサノールで置換された、または非置換のアリール基を表す)、プロパルギルエーテル基(HCC−CR−O−;Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC〜C40のアルキル基を表す)、ベンゾシクロブテン基、シアネート基およびこれらの置換体または誘導体を表し;ZおよびZのうちの少なくとも一方は、マレイミド基、ナジミド基、フタルイミド基、エチニル基(R−CC−;Rは、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、もしくはシクロヘキサノールで置換された、または非置換のアリール基を表す)、プロパルギルエーテル基(HCC−CR−O−;Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC〜C40のアルキル基を表す)、ベンゾシクロブテン基、シアネート基およびこれらの置換体または誘導体を表し;nおよびmは、それぞれ独立して、1〜50の整数を表し;n/(n+m+2)は、0.05を超えて0.6以下である。
【0070】
【化13】

【0071】
化学式(2)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表し。
【0072】
【化14】

【0073】
化学式(5)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表す。
【0074】
前記化学式(2)および(5)において、Arは、下記化学式(3)からなる群より選択されることが好ましい。
【0075】
【化15】

【0076】
また、前記化学式(6)中、RおよびRは、ブロック形態で反復されるかまたはランダムに反復されうる。例えば、Z・・・RまたはZ・・・RまたはZ・・・RまたはZ・・・Rの形態でありうる。
【0077】
なお、前記化学式(6)において、RまたはRは、それぞれ独立して、1種あるいは2種以上の構造単位を表しうる。RまたはRが複数種の構造単位を含む場合、mは、複数種のRの構造単位の総和に相当し、nは、複数種のRの構造単位の総和に相当する。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により、本発明の実施形態についてより詳しく説明する。
【0079】
[合成例1]4−マレイミド−ベンゾイルクロライドの合成
250mlフラスコにp−アミノ安息香酸41.1g(0.3mol)および酢酸300mlを入れて溶解させた後、無水マレイン酸29.4g(0.3mol)を10℃で徐々に添加して黄色の沈殿物を得た。この沈殿物をDMF/エタノール(50:50、w/w)溶液で再結晶した。再結晶された中間体を酢酸ナトリウムと無水酢酸を使用して85℃で15分間処理した後、常温まで冷却させた後に氷浴中で放置し沈殿物を得た。得られた沈殿物をエチルアセテート/n−ヘキサン(50:50、w/w)溶液で再結晶してN−(p−カルボキシフェニル)マレイミドを得た。
【0080】
得られたN−(p−カルボキシフェニル)マレイミド15g(0.07mol)を80mlのベンゼンに添加した。ここに、オキサリルクロライド21.83g(0.172mol)を徐々に添加し、温度を上げて2時間還流させた。未反応のオキサリルクロライドを除去して常温まで冷却させた後にろ過して、ヘキサンで洗浄して4−マレイミド−ベンゾイルクロライドを得た。
【0081】
[製造例1]熱硬化性芳香族オリゴマーの合成
250mlフラスコに100mlのジメチルホルムアミドを入れた後、4−アミノフェノール3.274g(0.03mol)、4,4−ジヒドロキシビフェニル4.655g(0.025mol)およびトリエチルアミン18mlを添加して溶解させた。そして、該溶液を氷水に浸して冷却させた状態でイソフタロイルクロライド10.151g(0.05mol)を添加して常温で60時間反応させた後、水とエタノールを使用して精製した後に乾燥した。
【0082】
乾燥した試料1gを9gのNMPに溶解させた後、前記合成例1で得られた4−マレイミド−ベンゾイルクロライド0.1gおよびトリエチルアミン10mlを添加して常温で12時間反応させることによって、主鎖の両末端の少なくとも一方にマレイミド反応基を導入し、下記化学式(9)で表される構造の熱硬化性芳香族オリゴマーを得た。
【0083】
【化16】

【0084】
[製造例2]熱硬化性芳香族オリゴマーの合成
4−アミノフェノールおよび4,4−ジヒドロキシビフェニルの添加量を、それぞれ3.820g(0.035mol)および3.724g(0.02mol)に変更したことを除いては、製造例1と同様の方法で熱硬化性芳香族オリゴマーを合成した。
【0085】
[製造例3]熱硬化性芳香族オリゴマーの合成
4−アミノフェノールおよび4,4−ジヒドロキシビフェニルの添加量を、それぞれ4.365g(0.04mol)および2.793g(0.015mol)に変更したことを除いては、製造例1と同様の方法で熱硬化性芳香族オリゴマーを合成した。
【0086】
[合成例2]4−ナジミド安息香酸の合成
1000mlフラスコに5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物32.83g(0.2mol)および氷酢酸400mlを入れて110℃に加熱して溶解させた後、過量の4−アミノ安息香酸41.1g(0.3mol)を投入した。投入後2時間撹拌しながら反応させた後、常温で沈殿させた。この沈殿物を氷酢酸と水でそれぞれ洗浄した後、60℃の真空オーブンで乾燥させて4−ナジミド安息香酸を製造した。この際の収率は95%であった。
【0087】
[製造例4]熱硬化性芳香族オリゴマーの合成
凝縮器と撹拌器を装着した500mlフラスコに、イソフタル酸10.798g(0.065mol)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸47.948g(0.254mol)、4−アミノフェノール14.187g(0.130mol)および無水酢酸58.396g(9.5mol)を入れて、窒素雰囲気下で140℃まで徐々に温度を上げた後、その温度を維持しながら3時間反応させてアセチル化反応を完結した。次いで、合成例2で得られた4−ナジミド安息香酸36.79g(0.130mol)を添加した後、反応副生成物である酢酸と未反応無水酢酸を除去しながら、1〜2℃/分の速度で215℃まで昇温した後、その温度で4時間反応させて主鎖の両末端の少なくとも一方にナジミド基が導入された下記化学式(10)で表される熱硬化性芳香族オリゴマーを得た。
【0088】
【化17】

【0089】
製造例4で合成された熱硬化性芳香族オリゴマーの末端に熱硬化性官能基が導入されたか否かを調べるため、NMR(Bruker NMR、DPX300)を用いて分析した。なお、測定にはDMSO−dを用いた。結果のNMRスペクトルを図1に示す。図1に示すように、ナジミドによるピークが6.2〜6.4ppmの範囲に存在し、熱硬化性芳香族オリゴマーの末端にナジミド基が導入されたことを確認した。
【0090】
また、製造例4で合成された熱硬化性芳香族オリゴマーの反応温度をDSC(TA Instrument DSC 2010)を使用して測定して図2に示した。この際、昇温速度は320℃まで20℃/分とした。図2に示したように、反応性官能基による反応ピークが280〜320℃に確認され、熱硬化性芳香族オリゴマーの末端に導入された熱硬化性官能基による架橋反応が進行することが示された。
【0091】
[製造例5]熱硬化性芳香族オリゴマーの合成
凝縮器と撹拌器を装着した500mlフラスコにイソフタル酸16.613g(0.1mol)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸51.75g(0.276mol)、4−アミノフェノール16.370g(0.150mol)および無水酢酸64.572g(0.633mol)を入れて、窒素雰囲気下で140℃まで徐々に温度を上げた後、その温度を維持しながら3時間反応させてアセチル化反応を完結した。次いで、合成例2で得られた4−ナジミド安息香酸28.3g(0.1mol)を添加した後、反応副生成物である酢酸と未反応無水酢酸を除去しながら、1〜2℃/分の速度で215℃まで昇温した後、その温度で4時間反応させて主鎖の両末端の少なくとも一方にナジミド基が導入された熱硬化性芳香族オリゴマーを得た。
【0092】
[製造例6]熱硬化性芳香族オリゴマーの合成
凝縮器と撹拌器を装着した500mlフラスコにイソフタル酸19.936g(0.12mol)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸53.142g(0.282mol)、4−アミノフェノール17.461g(0.160mol)および無水酢酸67.649g(0.633mol)を入れて、窒素雰囲気下で140℃まで徐々に温度を上げた後、その温度を維持しながら3時間反応させてアセチル化反応を完結した。次いで、合成例2で得られた4−ナジミド安息香酸22.640g(0.08mol)を添加した後、反応副生成物である酢酸と未反応無水酢酸を除去しながら、1〜2℃/分の速度で215℃まで昇温した後、その温度で4時間反応させて主鎖の両末端の少なくとも一方にナジミド基が導入された熱硬化性芳香族オリゴマーを得た。
【0093】
[合成例3]芳香族高分子の合成
凝縮器および撹拌器を装着した500mlフラスコにイソフタル酸8.3g(0.05mol)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸18.8g(0.1mol)、4−アミノフェノール5.5g(0.05mol)および無水酢酸32.7g(0.32mol)を入れて、窒素雰囲気下で150℃まで徐々に温度を上げた後、その温度を維持しながら4時間反応させてアセチル化反応を完結した。次いで、酢酸と未反応無水酢酸を除去しながら、300℃まで昇温した後、1時間反応させて芳香族高分子(ポリアミドエステル)を合成した。
【0094】
(溶解度評価)
NMP(N−メチル−2−ピロリドン)に製造例1〜3で合成した熱硬化性芳香族オリゴマーをそれぞれ入れて160℃でNMPに溶解されるかどうかを肉眼で確認して評価した。具体的には、NMP10gに1gの熱硬化性芳香族オリゴマーを溶解させ、全く溶解されない場合には×とし、部分的に溶解される場合には△とし、完全に溶解される場合には○として溶解度を評価した。結果を表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
(分子量測定)
GPC(GPCmax、VISCOTEK)を使用してポリスチレンを基準として、製造例1〜6で製造された熱硬化性オリゴマーの分子量を測定した。なお、溶媒としては、DMFを使用した。結果を下記表2に示す。なお、下記表2中、Mは数平均分子量を表し、Mは重量平均分子量を表し、PDIは多分散指数(polydispersity index)を表す。
【0097】
【表2】

【0098】
また、製造例4で合成した熱硬化性芳香族オリゴマーをNMPに入れて60℃で加熱しながら固形分含有量が40wt%になるように溶解させて茶色の溶液を得た。このことから熱硬化性芳香族オリゴマーは40wt%まで十分溶解され、優れた溶解度を有することが示された。また、該熱硬化性芳香族オリゴマー溶液の常温での粘度を測定した結果、1500Cpであった。
【0099】
[実施例1]
NMPに製造例1で製造した熱硬化性芳香族オリゴマーをそれぞれ入れて100℃以上で溶解させて基板形成用組成物を製造した。ガラス板上に固定させた電解銅箔上にガラス繊維を載せた後、製造した組成物を用いてガラス繊維組織に均一に含浸させた。そして、常温から300℃まで昇温して、含浸された試片を硬化させた後、電解銅箔を50質量部の硝酸溶液に入れて除去して、きれいな含浸されたガラス繊維の試片を得た。
【0100】
[実施例2]
製造例2で製造した熱硬化性芳香族オリゴマーを使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で試片を得た。
【0101】
[実施例3]
製造例3で製造した熱硬化性芳香族オリゴマーを使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で試片を得た。
【0102】
(ガラス転移温度および熱膨張係数の測定)
実施例1〜3で得られた試片のガラス転移温度(Tg)、熱膨張係数(CTE)をそれぞれ測定した。なお試片の熱膨張係数(CTE)は、TA社(Thermomechanical Analyzer、TA Instruments TMA 2940)製品であるTMA2940を使用して窒素下で測定し、この際、温度は5℃/分で昇温させながら測定した。結果を下記表3に示す。
【0103】
【表3】

【0104】
表3の結果より、可溶性構造単位を含む基板形成用組成物を用いて製造した基板の場合、熱膨張係数(CTE)が極めて低いことが示された。なお、ガラス転移温度は示されなかった。
【0105】
[製造例7〜10]
4−アミノフェノールと4,4−ジヒドロキシビフェニルとの使用モル比を変化させることによって、可溶性構造単位(アミノフェノール基)の含有量を下記表4に示すように変化させたことを除いては、製造例1と同様の方法で熱硬化性芳香族オリゴマーを製造した。得られた熱硬化性芳香族オリゴマーの溶解度を上述の溶解度測定と同様の方法で行った。結果を下記表4に示す。
【0106】
[実施例4〜7]
製造例7〜10で製造した熱硬化性芳香族オリゴマーをそれぞれ使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で試片を製造した。そして、上述のガラス転移温度および熱膨張係数の測定と同様の方法でガラス転移温度(Tg)、熱膨張係数(CTE)を測定した。結果を下記表4に示す。
【0107】
【表4】

【0108】
表4の結果より、本発明の基板形成用組成物は、熱特性(熱膨張係数、ガラス転移温度)および可溶性に優れることが示された。
【0109】
[実施例8]
40gのNMPに製造例1で得られた熱硬化性芳香族オリゴマー3gと合成例3で製造した芳香族高分子(ポリアミドエステル)7gとを添加して混合溶液を製造した。得られた混合溶液に40×40×0.05(mm)の大きさのガラス繊維を含浸させて、この試片を電解銅箔上に載せて高温炉で常温から300℃まで昇温して2時間乾燥させた。得られた試片を50質量部の硝酸溶液で処理してきれいに銅箔を除去してプリプレグを得た。この際、ガラス繊維1質量部に対して含浸した高分子固形分の量は1質量部であった。
【0110】
[実施例9]
製造例2で製造された熱硬化性芳香族オリゴマーを使用したことを除いては、実施例8と同様の方法でプリプレグを製造した。
【0111】
[実施例10]
製造例3で製造された熱硬化性芳香族オリゴマーを使用したことを除いては、実施例8と同様の方法でプリプレグを製造した。
【0112】
得られたプリプレグのガラス転移温度および熱膨張係数を上述と同様の方法を用いて測定した。結果を下記表5に示す。
【0113】
(柔軟性評価)
得られたプリプレグの柔軟性を測定した。柔軟性は、基材を45度曲げた際に壊れる場合を×とし、基材を90度曲げた際に壊れる場合を△とし、基材を90度曲げた際に壊れない場合を○で評価した。
【0114】
結果を下記表5に示す。
【0115】
【表5】

【0116】
表5の結果より、本発明の基板形成用組成物は、プリプレグ製造の際に熱特性(ガラス転移温度および熱膨張係数)に非常に優れ、また、柔軟性にも優れることが示された。
【0117】
[実施例11]
製造例4で得られた熱硬化性芳香族を使用したことを除いては、実施例10と同様の方法でプリプレグを製造した。
【0118】
[実施例12]
製造例5で製造された熱硬化性芳香族オリゴマーを使用したことを除いては、実施例10と同様の方法でプリプレグを製造した。
【0119】
[実施例13]
製造例6で製造された熱硬化性芳香族オリゴマーを使用したことを除いては、実施例10と同様の方法でプリプレグを製造した。
【0120】
実施例11〜13で得られたプリプレグのガラス転移点(Tg)を上述と同様の方法で測定した結果、いずれも280℃付近にガラス転移温度を有することが示された。
【0121】
また、実施例11で得られたプリプレグの熱膨張係数を上述と同様の方法で測定した結果、11ppm/℃であった。
【0122】
以上、本発明の好適な実施形態を実施例を用いて詳細に説明したが、これらの実施例は例示的なものに過ぎず、当業者であれば、各種の変更例または均等な他の実施例に想到し得ることは明らかである。したがって、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって定められるべきであり、上記の形態のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】製造例4で合成された熱硬化性芳香族オリゴマーのNMRスペクトルである。
【図2】製造例4で合成された熱硬化性芳香族オリゴマーの反応温度をDSC(TA Instrument DSC 2010)を使用して測定した結果を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と、熱硬化性芳香族オリゴマーとを含む基板形成用組成物であって、
前記熱硬化性芳香族オリゴマーは、主鎖に少なくとも1つの可溶性構造単位を有し、主鎖の両末端の少なくとも一方に熱硬化性官能基を有する基板形成用組成物。
【請求項2】
前記可溶性構造単位は、C〜C30のアリール−アミン構造を含む、請求項1に記載の基板形成用組成物。
【請求項3】
前記可溶性構造単位は、下記化学式(1)で表される構造単位を含む、請求項1または2に記載の基板形成用組成物;
【化1】

化学式(1)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表し;XおよびYは、それぞれ独立して、O、NRまたはCOを表し、かつ、XおよびYのうちの少なくとも1つはNRを表し、ここでRは、それぞれ独立して、水素原子、C〜C20のアルキル基またはC〜C30のアリール基を表す。
【請求項4】
前記可溶性構造単位は、下記化学式(2)で表される構造単位を少なくとも1種含む、請求項3に記載の基板形成用組成物;
【化2】

化学式(2)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表す。
【請求項5】
前記Arは、下記化学式(3)で表される置換または非置換のアリーレン基である、請求項4に記載の基板形成用組成物。
【化3】

【請求項6】
前記可溶性構造単位は、前記熱硬化性芳香族オリゴマーの全構造単位に対して5モル%を超えて60モル%以下で含まれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の基板形成用組成物。
【請求項7】
前記熱硬化性芳香族オリゴマーは、主鎖に下記化学式(4)で表される構造単位をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の基板形成用組成物;
【化4】

化学式(4)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表し;XおよびYは、それぞれ独立して、OまたはCOを表す。
【請求項8】
前記化学式(4)で表される構造単位は、下記化学式(5)で表される構造単位を少なくとも1種含む、請求項7に記載の基板形成用組成物;
【化5】

化学式(5)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表す。
【請求項9】
前記化学式(5)中、Arは、下記化学式(3)で表される置換または非置換のアリーレン基である、請求項8に記載の基板形成用組成物。
【化6】

【請求項10】
前記熱硬化性官能基は、熱架橋性反応基である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の基板形成用組成物。
【請求項11】
前記熱硬化性官能基は、マレイミド基、ナジミド基、フタルイミド基、エチニル基(R−CC−;Rは、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、もしくはシクロヘキサノールで置換された、または非置換のアリール基を表す)、プロパルギルエーテル基(HCC−CR−O−;Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC〜C40のアルキル基を表す)、ベンゾシクロブテン基、シアネート基またはこれらの置換体もしくは誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の基板形成用組成物。
【請求項12】
前記熱硬化性芳香族オリゴマーは、下記化学式(7)または化学式(8)で表される構造を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の基板形成用組成物;
【化7】

【化8】

前記化学式(7)および化学式(8)中、ZおよびZは、それぞれ独立して、マレイミド基、ナジミド基、フタルイミド基、エチニル基(R−CC−;Rは、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、もしくはシクロヘキサノールで置換された、または非置換のアリール基を表す)、プロパルギルエーテル基(HCC−CR−O−;Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC〜C40のアルキル基を表す)、ベンゾシクロブテン基、シアネート基またはこれらの置換体もしくは誘導体を表し、m、mおよびnは、それぞれ独立して、正の整数を表し、m+m=1〜50、n=1〜50の条件を満たす。
【請求項13】
前記熱硬化性芳香族オリゴマーの数平均分子量は、500〜15000である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の基板形成用組成物。
【請求項14】
前記溶媒は、非プロトン性極性溶媒である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の基板形成用組成物。
【請求項15】
前記非プロトン性極性溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチルラクトン、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項14に記載の基板形成用組成物。
【請求項16】
前記基板成形用組成物は、溶媒100質量部に対して熱硬化性芳香族オリゴマーを0.1〜300質量部含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の基板形成用組成物。
【請求項17】
前記基板形成用組成物が、強化剤をさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の基板形成用組成物。
【請求項18】
前記強化剤は、芳香族高分子化合物である、請求項17に記載の基板形成用組成物。
【請求項19】
前記芳香族高分子化合物の数平均分子量は、2000〜500000である、請求項18に記載の基板形成用組成物。
【請求項20】
前記芳香族高分子化合物は、主鎖にエステル、エステル−アミド、エステル−イミド、エステル−エーテルおよびエステル−カーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のメソゲン基を含む、請求項18または19に記載の基板形成用組成物。
【請求項21】
前記基板形成用組成物に含まれる前記熱硬化性芳香族オリゴマーおよび強化剤の質量比は、99.5:0.5〜35:65である、請求項17〜20のいずれか1項に記載の基板形成用組成物。
【請求項22】
前記基板形成用組成物中の固形分含有量は、組成物の全質量100質量部に対して、5〜95質量部である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の基板形成用組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の基板形成用組成物から製造されるプリプレグ。
【請求項24】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の基板形成用組成物から製造される基板。
【請求項25】
前記基板が、プリント基板または銅被覆積層物である、請求項24に記載の基板。
【請求項26】
前記基板が、銅張積層板またはフレキシブル銅張積層板である、請求項25に記載の基板。
【請求項27】
下記化学式(6)で表される熱硬化性芳香族オリゴマー;
【化9】

化学式(6)中、Rは、下記化学式(2)の中から選択される少なくとも1種の構造単位を表し;Rは、下記化学式(5)の中から選択される少なくとも1種の構造単位を表し;ZおよびZは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、ヒドロキシ基、マレイミド基、ナジミド基、フタルイミド基、エチニル基(R−CC−;Rは、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、もしくはシクロヘキサノールで置換された、または非置換のアリール基を表す)、プロパルギルエーテル基(HCC−CR−O−;Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC〜C40のアルキル基を表す)、ベンゾシクロブテン基、シアネート基またはこれらの置換体もしくは誘導体を表し;ZおよびZのうち少なくとも一方は、マレイミド基、ナジミド基、フタルイミド基、エチニル基(R−CC−;Rは、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、もしくはシクロヘキサノールで置換された、または非置換のアリール基を表す)、プロパルギルエーテル基(HCC−CR−O−;Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC〜C40のアルキル基を表す)、ベンゾシクロブテン基、シアネート基およびこれらの置換体または誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を表し;nおよびmは、それぞれ独立して、1〜50の整数を表し;n/(n+m+2)は、0.05を超えて0.6以下である;
【化10】

化学式(2)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表し、
【化11】

化学式(5)中、Arは、C〜C30のアリーレン基を表す。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−117830(P2009−117830A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282196(P2008−282196)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【出願人】(500323513)三星精密化学株式会社 (22)
【Fターム(参考)】