説明

基板搬送方法

【課題】板を搬送し膜厚測定器との間で基板の受渡しを行う搬送用ロボットの待機時間を削除または減少させるように搬送用ロボットの基板搬送動作を制御することで、装置全体としてのスループットを向上させる。
【解決手段】基板の膜厚を測定する膜厚測定器との間で基板の受渡しを行いながら搬送用ロボットで基板を搬送する基板搬送方法において、膜厚測定器は、内部に搬入された基板に対する膜厚測定が終了する所定時間前に事前終了予告信号を出力し、膜厚測定器から出力された事前終了予告信号を受けて基板搬送動作を開始するように搬送用ロボットを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ、PDP用ガラス基板、磁気ディスク用基板、またはフォトマスク用基板等の基板の膜厚を測定する膜厚測定器と、基板を搬送する搬送用ロボットとを備え、膜厚測定器と搬送用ロボットとの間で基板の受け渡しを行いながら搬送用ロボットで基板を搬送する基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板表面を研磨する研磨装置にあっては、基板表面の研磨の前後で基板の膜厚を測定する膜厚測定器と、例えば膜厚測定器とカセットとの間、及び膜厚測定器と基板を次の処理部に搬送するための載置台との間を走行して基板を搬送する搬送用ロボットとを備え、膜厚測定器と搬送用ロボットとの間で基板の受渡しを行いながら基板の搬送を行うようにした基板搬送系を備えたものが知られている。
【0003】
例えばITM等の膜厚測定器は、一般に高価であり、このため、研磨装置には、通常1台の膜厚測定器が備えられている。そして、膜厚測定器は、一般に内部に搬入された基板に対する膜厚測定を終了した時点で膜厚測定終了信号を出力し、搬送用ロボットは、膜厚測定器から出力される膜厚測定終了信号を受けて搬送動作を開始するように制御される。つまり、搬送用ロボットは、膜厚測定器から膜厚測定終了信号が出力されるまで膜厚測定器から離れた場所で待機している。このため、搬送用ロボットの待機時間を削除または減少させれば、研磨装置全体のスループットを向上させることができる。
【0004】
未処理基板を予めカセット内から搬出してチャンバの前で待機させておき、処理終了後に未処理基板をチャンバ内にセットした後、処理済み基板をチャンバから搬出してカセット内に収納するように搬送装置を制御することにより、基板処理と基板交換を部分的に並列的に行って、処理タクトを短くすることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3174691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、1台の膜厚測定器を備えた研磨装置において、未研磨基板を搬送用ロボットでカセットから取り出し、研磨済み基板を搬送用ロボットでカセットに戻すまでの間に、未研磨基板の膜厚測定と研磨済み基板の膜厚測定の合計2回の膜厚測定を膜厚測定器で行うと、基板搬送は、研磨後の基板の膜厚測定時に律速されることになる。ここに、前述のように、膜厚測定器から出力される膜厚測定終了信号を受けて搬送動作を開始するように搬送用ロボットを制御すると、搬送用ロボットに待機時間といった無駄な時間が発生する。このため、研磨装置全体としてのスループットが膜厚測定器を含まない研磨装置に比べて低くなる。
【0007】
なお、特許文献1に記載の発明は、未処理基板を予めカセット内から搬出してチャンバの前で待機させるように搬送装置を制御しているが、チャンバ内での基板の処理時間に関係なく搬送装置の動作を制御するようにしており、このため、基板の処理状況に応じて搬送装置の動作を制御するようにしたものではない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、基板を搬送し膜厚測定器との間で基板の受渡しを行う搬送用ロボットの待機時間を削除または減少させるように搬送用ロボットの基板搬送動作を制御することで、装置全体としてのスループットを向上させることができるようにした基板搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基板の膜厚を測定する膜厚測定器との間で基板の受渡しを行いながら搬送用ロボットで基板を搬送する基板搬送方法において、前記膜厚測定器は、内部に搬入された基板に対する膜厚測定が終了する所定時間前に事前終了予告信号を出力し、前記膜厚測定器から出力された事前終了予告信号を受けて基板搬送動作を開始するように前記搬送用ロボットを制御することを特徴とする基板搬送方法である。
【0010】
膜厚測定器の内部に搬入された基板に対する膜厚測定が終了する所定時間前(事前)に膜厚測定器から出力された事前終了予告信号を受けて基板搬送動作を開始するように搬送用ロボットを制御することで、内部に搬入された基板に対する膜厚測定器による膜厚測定が終了する前に、例えば次に膜厚測定を行う膜厚未測定基板を搬送用ロボットで受け取って膜厚測定器に引き渡す直前まで搬送し、膜厚測定器による基板の膜厚測定が終了した時点で、膜厚未測定基板を膜厚測定器に引き渡して、膜厚測定済み基板を膜厚測定器から受け取ることができる。これにより、搬送用ロボットの無駄な待機時間を削除または減少させて装置全体のスループットを向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記膜厚測定器は、一枚の基板に対して膜厚測定器で膜厚測定を行う測定ポイント総数から、内部に搬入された基板に対して膜厚測定器で実際に膜厚測定を行った測定ポイント数を差し引いた未測定の測定ポイント数が予め指定した測定ポイント数に達した時点で、前記事前終了予告信号を出力することを特徴とする請求項1記載の基板搬送方法である。
【0012】
未測定の測定ポイント数が予め指定した測定ポイント数に達した時点で膜厚測定器から事前終了予告信号を出力することで、膜厚測定器から事前終了予告信号を出力するタイミングを任意に指定することができる。これにより、膜厚測定器による膜厚測定時間が膜厚測定条件(レシピ)によって変動することにも柔軟に対応させ、その膜厚測定条件での最適なタイミングで膜厚測定器から事前終了予告信号を出力することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記膜厚測定器は、モニタリングして求めた、以前に処理した基板に対する膜厚測定時間と搬送用ロボットが基板を膜厚測定器まで搬送するのに要したロボット搬送時間とを基にして、前記事前終了予告信号を出力することを特徴とする請求項1記載の基板搬送方法である。
【0014】
基板の膜厚測定時間と搬送用ロボットが基板を膜厚測定器まで搬送するのに要するロボット搬送時間とを常にモニタリングし、この膜厚測定時間とロボット搬送時間とを基に、膜厚測定器から事前終了予告信号を出力することで、プロセスが変わったかどうかを知ることができ、しかも、基板の膜厚測定時間の変化に応じて、膜厚測定器から事前終了予告信号を出力するタイミングを自動で調整することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、膜厚測定器内に搬入された基板に対する膜厚測定が終了する所定時間前に膜厚測定器から出力された事前終了予告信号を受けて基板搬送動作を開始するように搬送用ロボットを制御することで、基板を搬送し膜厚測定器との間で基板の受渡しを行う搬送用ロボットの無駄な待機時間を削除または減少させて、装置全体のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の基板搬送方法が適用される研磨装置を示す全体配置図である。
【図2】図1の研磨装置の研磨部を拡大して示す概要図である。
【図3】図1の研磨装置の制御ブロック図である。
【図4】ロートポート、ITM、載置台及び洗浄機の相互間における基板の搬送を行う搬送用ロボットの従来の一般的な制御例及び本発明の制御例の説明に付する図である。
【図5】ロートポート、ITM、載置台及び洗浄機の相互間における基板の搬送を行う搬送用ロボットの従来の一般的な制御例及び本発明の制御例の説明に付する図である。
【図6】(a)は、従来の制御例におけるITMによる膜厚測定と搬送用ロボットによる基板搬送動作との関係を示す図で、(b)は、本発明の制御例におけるITMによる膜厚測定と搬送用ロボットによる基板搬送動作との関係を示す図である。
【図7】ITMが事前終了予告信号を出力するタイミングが早すぎた場合におけるITMによる膜厚測定と搬送用ロボットによる基板搬送動作との関係を示す図である。
【図8】ITMが膜厚測定に要する膜厚測定時間と搬送用ロボットがITMからの膜厚測定終了信号または事前終了予告信号を受けて基板をITMに受け渡すまでのロボット搬送時間とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の例では、半導体ウェーハ等の基板の表面を平坦に研磨する研磨装置に本発明の基板搬送方法を適用した例を示す。
【0018】
図1は、本発明の基板搬送方法が適用される基板搬送系を備えた研磨装置の全体配置図を示す。図1に示すように、この研磨装置は、内部に多数の半導体ウェーハ等の基板を収納したカセット204をそれぞれ載置する4つのロードポート203a〜203dを備えている。このロードポート203a〜203dに沿って走行レール200が設けられており、この走行レール200の上には、2つのハンドを有する搬送用ロボット202が走行自在に配置されている。走行レール200に隣接して、後述するITM(膜厚測定器)224が配置され、走行レール200を挟んでロードポート203a〜203dの反対側には、載置台206が配置されている。搬送用ロボット202のハンドは、ロードステージ203a〜203d上の各カセット204、ITM224及び載置台206にアクセス可能となっている。
【0019】
載置台206とロータリトランスポータ210との間に位置して、搬送用ロボット208が配置されている。そして、ロータリトランスポータ210上の基板を、後述するトップリング1に保持させつつ研磨テーブル100上に位置させることにより、複数枚の基板を連続して研磨処理することができるようになっている。
【0020】
研磨装置には、研磨後の基板を洗浄し乾燥させる第1洗浄機214a,214b及び第2洗浄機212a,212b、基板表面の研磨を行う研磨テーブル100,216、研磨テーブル100,216のドレッシングを行うドレッサ218,220、及びドレッサ218を洗浄する水桶222が備えられている。なお、複数の研磨液や複数の研磨条件(研磨レシピ)を切替ることにより、1台の研磨テーブル100で2段研磨やそれ以上の複数段研磨を行うことも可能になっている。
【0021】
研磨装置は、研磨前、あるいは研磨後に洗浄及び乾燥処理を経た基板表面における被研磨膜の膜厚を測定する膜厚測定器としてのITM(In-line Thickness Monitor)224を備えている。この例では、図1に示すように、走行レール200の延長線上に、搬送用ロボット202が研磨後の基板(研磨済み基板)をカセット204内に収納する前、若しくは搬送用ロボット202が研磨前の基板(未研磨基板)をカセット204から取り出した後(In-line)に、光学的手段により基板表面へ入射し反射した光学信号により、半導体ウェーハ等の基板表面における酸化膜等の絶縁膜の膜厚、導電性膜の銅膜やバリア膜等の研磨状態を測定するITM(膜厚測定器)224が配置されている。
【0022】
研磨装置は、基板の研磨中及び/または研磨後に、基板表面の導電性膜が配線部などの必要な領域を除いて除去され、または絶縁膜が除去されることをセンサ信号や計測値を監視することにより検出して、多段研磨プロセスにおける各段の研磨条件や、研磨処理工程の終点を決定し、適切な研磨処理を繰返すことができるようになっている。ITM224は、基板の膜厚を測定することができ、これにより、基板の特定の箇所における研磨結果や、基板の全体的な研磨結果について調べることができる。
【0023】
研磨装置の研磨部は、基板を保持して研磨テーブル上の研磨面に押圧し、これによって、基板の表面を平坦に研磨する。図2は、図1に示す研磨装置の研磨部の詳細を示す。図2に示すように、トップリング1の下方には、上面に研磨パッド(研磨布)101を貼付した研磨テーブル100が設置されている。研磨テーブル100の上方には、研磨液供給ノズル102が設置されており、この研磨液供給ノズル102によって研磨テーブル100上の研磨パッド101上に研磨液(スラリ)Qが供給される。また、トップリング1は、上面に研磨パッド(研磨テーブル)217を貼着した研磨テーブル216(図1参照)の直上方位置にも移動できようになっている。この研磨テーブル216は、いわゆるスクロール運転するように構成され、研磨テーブル216の内部には、研磨パッド217の上に研磨液を供給する研磨液供給部(図示せず)が設けられている。
【0024】
図1に示す研磨装置では、トップリング1で基板Wを保持したまま、研磨テーブル100で基板Wに対する1段目の研磨を、研磨テーブル216で基板Wに対する2段目の研磨を行うようにしている。このため、研磨テーブル100の研磨パッド101には、例えば酸化膜等の基板Wの最上層に形成された被研磨膜の表面に対する段差解消特性は低いが、該被研磨膜に対する研磨レートの高い研磨液(スラリ)Qが供給される。研磨テーブル216の研磨パッド217には、酸化膜等の基板Wの最上層に形成された被研磨膜に対する研磨レートは低いが、該被研磨膜の表面に対する段差解消能力の高い研磨液(スラリ)が供給される。
【0025】
市場で入手できる研磨パッド101,217としては種々のものがあり、例えば、ロデール社製のSUBA800、IC−1000、IC−1000/SUBA400(二層クロス)、フジミインコーポレイテッド社製のSurfin xxx−5、Surfin 000等がある。SUBA800、Surfin xxx−5、Surfin 000は、繊維をウレタン樹脂で固めた不織布であり、IC−1000は、硬質の発泡ポリウレタン(単層)である。発泡ポリウレタンは、ポーラス(多孔質状)になっており、その表面に多数の微細な凹みまたは孔を有している。研磨パッド101,217は、基本的には消耗部材であり、基板の表面を研磨することによりすり減っていく。実際の研磨プロセスにおいては、研磨パッド101,217が所定の厚さになるか、または研磨速度が低下した時に、新しい研磨パッド101,217への張り替えを行っている。
【0026】
図2に示すように、トップリング1は、自在継手部10を介してトップリング駆動軸11に接続されており、トップリング駆動軸11は、トップリングヘッド110に固定されたトップリング用エアシリンダ111に連結されている。トップリング用エアシリンダ111によってトップリング駆動軸11は上下動し、トップリング1の全体を昇降させるとともに、トップリング本体2の下端に固定されたリテーナリング3を研磨テーブル100,216に押圧する。トップリング用エアシリンダ111は、圧縮空気源120に接続されており、トップリング用エアシリンダ111に供給される加圧空気の空気圧等の流体圧力を調整することができる。これにより、リテーナリング3で保持した基板Wで研磨パッド101,217を押圧する押圧力を調整することができる。
【0027】
トップリング駆動軸11は、キー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。回転筒112は、その外周部にタイミングプーリ113を備えている。トップリングヘッド110には、回転駆動部としてのトップリング用モータ114が固定されており、タイミングプーリ113は、タイミングベルト115を介してトップリング用モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。従って、トップリング用モータ114を回転駆動することによって、タイミングプーリ116、タイミングベルト115及びタイミングプーリ113を介して回転筒112及びトップリング駆動軸11が一体に回転し、トップリング1が回転する。トップリングヘッド110は、フレーム(図示せず)に固定支持されたトップリングヘッドシャフト117によって支持されている。
【0028】
ITM224からの出力信号は、図1に示すように、制御部400に入力される。制御部400は、図3に示すように、操作パネルなどのマン−マシン・インターフェイス等の入力部401からの入力や、各種データ処理を行うホストコンピュータ402からの入力に基づいて、所望形状などの目標プロフィールになるように基板を目標研磨レート(研磨量)で研磨するように研磨装置を制御する。制御部400は、図1に示すように、搬送用ロボット202の動作も制御する。
【0029】
図1に示す研磨装置において、各ロードポート203a〜203dに載置されたカセット204に収容された基板を搬送用ロボット202,208によって、順次ロータリトランスポート210に搬送し、トップリング1で保持する。そして、このトップリング1で保持した基板Wに対して、研磨テーブル100による1段目の研磨と、研磨テーブル216による2段目の研磨を行う。そして、研磨後の基板を第1洗浄機214aまたは214b及び第2洗浄機212aまたは212bで洗浄し乾燥させてカセット204に戻す。
【0030】
この研磨処理に先立って、カセット204内の研磨前の基板(未研磨基板)を搬送用ロボット202でカセット204からITM224に搬送し、このITM224で未研磨基板の最上層に形成された被研磨膜である酸化膜等の膜厚を測定する。そして、膜厚が測定された未研磨基板を搬送用ロボット202でITM224から載置台206に搬送する。
【0031】
載置台206に搬送された未研磨基板を、搬送用ロボット208でロータリトランスポータ210に搬送し、トップリング1で保持する。そして、先ず、研磨テーブル100を使用し、予め設定した研磨条件で基板Wに対する1段目の研磨を行う。つまり、図2に示すように、トップリング1で保持した基板Wを、研磨テーブル100の研磨パッド101に所定の押圧力で押圧しつつ、研磨テーブル100及びトップリング1を回転させ、同時に、研磨液供給ノズル102から研磨テーブル100の研磨パッド101に研磨液Qを供給する。そして、例えば、酸化膜等を完全に除去することなく、酸化膜等が僅かに残った状態で、1段目の研磨を終了する。
【0032】
次に、この1段目の研磨が終了した基板Wを、トップリング1で保持したまま研磨テーブル216の直上方まで移動させ、この研磨テーブル216を使用して、予め設定した研磨条件で基板Wに対する2段目の研磨を行う。つまり、トップリング1で保持した基板Wを、研磨テーブル216の研磨パッド217に所定の押圧力で押圧しつつ、研磨テーブル216及びトップリング1を回転させ、同時に、研磨テーブル216に形成した研磨液供給部を通して研磨テーブル216の研磨パッド217に研磨液を供給する。この第2の研磨では、例えばバリア膜上の酸化膜を完全に研磨し、更に、バリア膜を研磨目標まで研磨する。
【0033】
搬送用ロボット208は、2段目の研磨が終了した基板(研磨済み基板)をロータリトランスポータ210から第1洗浄機214aまたは214b、更には第2洗浄機212aまたは212bに順次搬送し、ここで基板を洗浄し乾燥させる。搬送用ロボット202は、第2洗浄機212aまたは212bから研磨後の研磨済み基板を受け取ってITM224に搬送し、このITM224で研磨済み基板表面のバリア膜等の膜厚を測定する。搬送用ロボット202は、膜厚測定後の研磨済み基板をITM224から受け取ってカセット204に戻す。
【0034】
次に、図4及び図5を参照して、ロートポート203c、ITM224、載置台206及び第2洗浄機212a,212bの相互間における基板の搬送を行う搬送用ロボット202の従来の一般的な制御例について説明する。
【0035】
先ず、搬送用ロボット202によって、研磨済み基板が第2洗浄機212aまたは212bからITM224内に搬入され、ITM224内で研磨済み基板の膜厚測定を行っている時、搬送用ロボット202は、未研磨基板をITM224から受け取って載置台206に搬送した後であるため、図4に実線で示すように、載置台206とアクセス可能な位置Aで待機している。
【0036】
そして、ITM224が基板の膜厚測定を終了しITM224から膜厚測定終了信号が出力されて制御部400に入力されると、制御部400は、搬送用ロボット202に動作開始信号を出力する。搬送用ロボット202は、制御部400からの動作開始信号を受けて、先ず図4に矢印(1)で示すように、ロードポート203cとアクセス可能な位置Bに移動して、ロードポート203cのカセット204(図1参照)から未研磨基板を受け取り、しかる後、図4に矢印(2)で示すように、ITM224とアクセス可能な位置Cに移動する。搬送用ロボット202は、この位置Cで未研磨基板をITM224に引き渡し、膜厚測定が終了した研磨済み基板をITM224から受け取る。
【0037】
次に、搬送用ロボット202は、図4に矢印(3)で示すように、ロードポート203cのカセット204とアクセス可能な位置Bに移動し、ITM224から受け取った膜厚測定が終了した研磨済み基板をロードポート203cのカセット204に戻す。そして、搬送用ロボット202は、この位置Bで次の動作開始信号を入力するまで待機する。
【0038】
搬送用ロボット202によって、未研磨基板がロードポート203cのカセット204からITM224内に搬入され、ITM224内で未研磨基板の膜厚測定を行っている時、搬送用ロボット202は、膜厚測定が終了した研磨済み基板をITM224から受け取ってロードポート203cのカセット204に搬送した後であるため、図5に実線で示すように、ロードポート203cのカセット204とアクセス可能な位置Bで待機している。
【0039】
そして、ITM224が基板の膜厚測定を終了しITM224から膜厚測定終了信号が出力されて制御部400に入力されると、制御部400は、搬送用ロボット202に動作開始信号を出力する。搬送用ロボット202は、制御部400からの動作開始信号を受けて、先ず図5に矢印(1)で示すように、第2洗浄機212a(または第2洗浄機212b)とアクセス可能な位置Dに移動して、第2洗浄機212a(または第2洗浄機212b)から乾燥後の研磨済み基板を受け取り、しかる後、図5に矢印(2)で示すように、ITM224とアクセス可能な位置Cに移動する。搬送用ロボット202は、この位置Cで、乾燥後の研磨済み基板をITM224に引き渡し、膜厚測定を終了した未研磨基板をITM224から受け取る。
【0040】
次に、搬送用ロボット202は、図5に矢印(3)で示すように、載置台206とアクセス可能な位置Aに移動し、ITM224から受け取った膜厚測定を終了した未研磨基板を載置台206に引き渡す。そして、搬送用ロボット202は、この位置Aで次の動作開始信号を入力するまで待機する。
【0041】
上記の従来の制御例を纏めると、搬送用ロボット202は、図6(a)に示すように、ITM224が前の基板に対する膜厚測定を終了した後、次に基板に対する膜厚測定を開始するまでの間に、(1)膜厚未研磨基板をITM224とアクセス可能な位置Cまで搬送する、(2)位置CでITM224に膜厚未測定基板を引き渡す、(3)位置CでITM224から基板を引き取る、の3つの動作を行う。
【0042】
次に、図4及び図5を参照して、ロートポート203c、ITM224、載置台206及び第2洗浄機212a,212bの相互間における基板の搬送を行う搬送用ロボット202の本発明の制御例について説明する。
【0043】
先ず、搬送用ロボット202によって、研磨済み基板が第2洗浄機212aまたは212bからITM224内に搬入され、ITM224内で研磨済み基板の膜厚測定を行っている時、搬送用ロボット202は、未研磨基板をITM224から受け取って載置台206に搬送した後であるため、図4に実線で示すように、載置台206とアクセス可能な位置Aで待機している。
【0044】
そして、ITM224が基板の膜厚測定を終了する所定時間前(事前)にITM224から事前終了予告信号が出力されて制御部400に入力されると、制御部400は、搬送用ロボット202に動作開始信号を出力する。搬送用ロボット202は、制御部400からの動作開始信号を受けて、先ず図4に矢印(1)で示すように、ロードポート203cとアクセス可能な位置Bに移動して、ロードポート203cのカセット204(図1参照)から未研磨基板を受け取り、しかる後、図4に矢印(2)で示すように、ITM224とアクセス可能な位置Cに移動する。
【0045】
そして、ITM224が基板の膜厚測定を終了しITM224から膜厚測定終了信号が出力されて制御部400に入力されると、搬送用ロボット202は、この位置Cで未研磨基板をITM224に引き渡し、しかる後、膜厚測定が終了した研磨済み基板をITM224から受け取る。次に、搬送用ロボット202は、図4に矢印(3)で示すように、ロードポート203cのカセット204とアクセス可能な位置Bに移動し、ITM224から受け取った膜厚測定が終了した研磨済み基板をロードポート203cのカセット204に戻す。そして、搬送用ロボット202は、この位置Bで次の動作開始信号を入力するまで待機する。
【0046】
搬送用ロボット202によって、未研磨基板がロードポート203cのカセット204からITM224内に搬入され、ITM224内で未研磨基板の膜厚測定を行っている時、搬送用ロボット202は、膜厚測定が終了した研磨済み基板をITM224から受け取ってロードポート203cのカセット204に搬送した後であるため、図5に実線で示すように、ロードポート203cのカセット204とアクセス可能な位置Bで待機している。
【0047】
そして、ITM224が基板の膜厚測定を終了する所定時間前(事前)にITM224から事前終了予告信号が出力されて制御部400に入力されると、制御部400は、搬送用ロボット202に動作開始信号を出力する。搬送用ロボット202は、制御部400からの動作開始信号を受けて、先ず図5に矢印(1)で示すように、第2洗浄機212a(または第2洗浄機212b)とアクセス可能な位置Dに移動して、第2洗浄機212a(または第2洗浄機212b)から乾燥後の研磨済み基板を受け取り、しかる後、図5に矢印(2)で示すように、ITM224とアクセス可能な位置Cに移動する。
【0048】
そして、ITM224が基板の膜厚測定を終了しITM224から膜厚測定終了信号が出力されて制御部400に入力されると、搬送用ロボット202は、この位置Cで、乾燥後の研磨済み基板をITM224に引き渡し、膜厚測定を終了した未研磨基板をITM224から受け取る。次に、搬送用ロボット202は、図5に矢印(3)で示すように、載置台206とアクセス可能な位置Aに移動し、ITM224から受け取った膜厚測定を終了した未研磨基板を載置台206に引き渡す。そして、搬送用ロボット202は、この位置Aで次の動作開始信号を入力するまで待機する。
【0049】
上記の本発明の制御例を纏めると、搬送用ロボット202は、図6(b)に示すように、(1)膜厚未研磨基板をITM224とアクセス可能な位置Cまで搬送する動作をITM224が前の基板に対する膜厚測定を終了する前に行う。このため、ITM224が前の基板に対する膜厚測定を終了した後、次に基板に対する膜厚測定を開始するまでの間に、搬送用ロボット202は、(2)位置CでITM224に膜厚未測定基板を引き渡す、(3)位置CでITM224から基板を引き取る、の2つの動作を行う。つまり、図6(a)に示す従来の制御例と比較すると、(1)の動作の分だけスループットを向上させることができる。
【0050】
この例では、ITM224が内部に搬入された基板の膜厚測定を行う測定ポイント数の総数(測定ポイント総数)に対して、残り測定ポイント数を指定することで、ITM224が事前終了予告信号を制御部400に出力するタイミングを決定するようにしている。例えば、ITM224内に搬入された1枚の基板に対して10箇所の測定ポイントが設定されている、測定ポイント総数が10の場合に、残り測定ポイント数を5に指定する。この場合、ITM224が内部に搬入された基板の5つの測定ポイントで基板の膜厚を測定し、まだ測定していない未測定ポイント数が5に達した時点で、つまり5番目の測定ポイントの膜厚測定が終了した時点で、ITM224から事前終了予告信号が出力されて制御部400に入力される。
【0051】
ここで、1枚の基板の膜厚測定ポイント総数が10に設定された基板に対して、残りの測定ポイント数を5に指定した時、ITM224から膜厚測定終了の5秒前に事前終了予告信号が出力されて制御部400に入力され、搬送用ロボット202が基板搬送動作を開始すると仮定する。この場合、タクトタイムが基板2枚分の実測値で平均170.5秒であったとすると、5秒の搬送時間が4回分(2枚の未研磨基板の膜厚測定と2枚の研磨済み基板の膜厚測定)が短縮される。
【0052】
従って、この場合の研磨装置のスループットは、
{3600/(170.5−5×4)}×2=47.8(枚/h)
となる。
【0053】
これに対して、従来の制御例、つまり膜厚測定が終了した時点でITM224から膜厚測定終了信号が出力されて制御部400に入力され、搬送用ロボット202が基板搬送動作を開始する場合に、タクトタイムが基板2枚分の実測値で平均170.5秒であったとすると、この場合の研磨装置のスループットは、
{3600/170.5}×2=42.2(枚/h)
となる。
【0054】
このように、ITM224から膜厚測定終了の、例えば5秒前に事前終了予告信号が出力されて制御部400に入力され、搬送用ロボット202が基板搬送動作を開始するようにすることで、研磨装置のスループットを5.6(=47.8−42.2)(枚/h)だけ向上させることができる。
【0055】
この例では、未測定の測定ポイント数が予め指定した測定ポイント数に達した時点でITM224から事前終了予告信号を出力するようにすることで、ITM224から事前終了予告信号を出力するタイミングを任意に指定することができる。これにより、ITM224による膜厚測定時間が膜厚測定条件(レシピ)によって変動することにも柔軟に対応させ、その膜厚測定条件での最適なタイミングでITM224から事前終了予告信号を出力することができる。
【0056】
また、ITM224が事前終了予告信号を出力するタイミングを任意に変更可能にするようにしても良く、これにより、基板搬送方法を変更した場合でも、最適なスループットが得られるようにすることができる。つまり、ITM224が事前終了予告信号を出力するタイミングを決定した後に、研磨装置側で基板の研磨時間または洗浄時間を変更すれば、搬送用ロボット202の動きが変わるため、ITM224が事前終了予告信号を出力するタイミングが最適ではなくなる。
【0057】
つまり、このタイミングが早すぎれば、図7に示すように、ITM224で膜厚測定を終了するまでの待ち時間αが発生してしまい、タイミングが遅すぎれば、前述の図6(a)に示す「従来の制御方法」と同じになる。このため、ITM224が事前終了予告信号を出力するタイミングを任意に変更可能であれば、搬送方法の変更にも柔軟に対応できる。
【0058】
以下、研磨装置で各部の動作時間をモニタリングして、ITM224が事前終了予告信号を出力するタイミングを決定する方法について説明する。
【0059】
図8に示すように、ITM224が実際に基板の膜厚測定に要した膜厚測定時間をTi1,Ti2…、搬送用ロボット202が実際にITM224から膜厚測定終了信号または事前終了予告信号を受けてから基板をITM224に受け渡すまでのロボット搬送時間をTR1,TR2…とする。
【0060】
先ず、ITM224が事前終了予告信号を最初に出力するタイミングを決定する時には、ITM224から事前終了予告信号を出力することなく、n枚の基板に対する膜厚測定を行った後、平均膜厚測定時間Ti(AVE)と平均ロボット搬送時間TR(AVE)を下記の式で求める。
i(AVE)=(Ti1+Ti2+…Tin)/n
R(AVE)=(TR1+TR2+…TRn)/n
【0061】
そして、Ti(AVE)>TR(AVE)の場合は、ITM224で基板の膜厚測定を開始した後から〔Ti(AVE)−TR(AVE)〕秒後に、ITM224が事前終了予告信号を出力するようにする。一方、Ti(AVE)≦TR(AVE)の場合は、ITM224で基板の膜厚測定を開始するのと同時に、ITM224が事前終了予告信号を出力するようにする。
【0062】
前述のようにして、ITM224が事前終了予告信号を最初に出力するタイミングを決定した後も、膜厚測定時間及びロボット搬送時間をモニタリングし続け、n枚の基板に対する膜厚測定が終了する毎に膜厚測定時間及びロボット搬送時間の平均値を求め、その時の最適なITM224が事前終了予告信号を出力するタイミングを決定する。このn値は、研磨装置のホストコンピュータ402で任意に決定され、n枚の基板に対する膜厚測定が終了する毎に、ITM224から事前終了予告信号を出力し続ける。
【0063】
これによって、ITM224が事前終了予告信号を出力するタイミングが任意に変更可能となる。
なお、n枚の基板に対する膜厚測定が終了する毎に、ITM224から事前終了予告信号を出力し続ける以外に、1枚の基板に対する膜厚測定が終了する毎に、n枚前までの基板に対する膜厚測定時間及びロボット測定時間の平均値を求めて、ITM224から事前終了予告信号を出力するようにしてもよい。
【0064】
例えば、CuプロセスやWプロセス等のプロセスの種類によって、ITMの膜厚測定時間が決まる。通常、半導体ウェーハ等の基板を研磨する時は、処理する基板1枚1枚が異なるプロセスである場合は殆どなく、ロット単位等、ある程度の枚数の基板を同じプロセスで連続して研磨する。
【0065】
従って、前述のように、より以前に処理された基板の膜厚測定時間をモニタリングすることで、プロセスが変わったかどうかを知ることができ、また膜厚測定時間の変化に応じて、ITMから事前終了予告出力を出力するタイミングを自動で調整することができる。
【0066】
特に、n枚の基板毎に更新を行うことで、ITMから事前終了予告出力を出力するタイミングを最適に絞り込むことができ、しかも、例えばレシピが変更されて、研磨時間や洗浄時間等が変化した場合にも、ITMから事前終了予告出力を出力するタイミングを最適に設定し直すことができる。
【0067】
以上により、ITM224及び搬送用ロボット202の待機時間を削減させ、基板搬送全体のスループットを向上させることができる。
【0068】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0069】
1 トップリング
100,216 研磨テーブル
101 研磨パッド
200 走行レール
202,208 搬送用ロボット
203a〜203d ロードポート
204 カセット
206 載置台
210 ロータリトランスポータ
212a,212b 第2洗浄機
214a,214b 第1洗浄機
224 ITM(膜厚測定器)
400 制御部
402 ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の膜厚を測定する膜厚測定器との間で基板の受渡しを行いながら搬送用ロボットで基板を搬送する基板搬送方法において、
前記膜厚測定器は、内部に搬入された基板に対する膜厚測定が終了する所定時間前に事前終了予告信号を出力し、
前記膜厚測定器から出力された事前終了予告信号を受けて基板搬送動作を開始するように前記搬送用ロボットを制御することを特徴とする基板搬送方法。
【請求項2】
前記膜厚測定器は、一枚の基板に対して膜厚測定器で膜厚測定を行う測定ポイント総数から、内部に搬入された基板に対して膜厚測定器で実際に膜厚測定を行った測定ポイント数を差し引いた未測定の測定ポイント数が予め指定した測定ポイント数に達した時点で、前記事前終了予告信号を出力することを特徴とする請求項1記載の基板搬送方法。
【請求項3】
前記膜厚測定器は、モニタリングして求めた、以前に処理した基板に対する膜厚測定時間と搬送用ロボットが基板を膜厚測定器まで搬送するのに要したロボット搬送時間とを基にして、前記事前終了予告信号を出力することを特徴とする請求項1記載の基板搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−243911(P2011−243911A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117125(P2010−117125)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】