説明

基板搬送用容器および底上げ部材

【課題】液晶基盤のような基盤材料を安全に搬送する容器の提供および容器内部に用いる底上げ装置の提供。
【解決手段】本発明の基板搬送用容器は、発泡樹脂製の有底角筒状体であり、該有底角筒状体の対峙する内周壁に基板支持溝16が形成された容器本体部12と、容器本体部の開口を覆うように着脱自在に装着される発泡樹脂製の蓋体部45と、容器本体部12の少なくとも該基板支持溝16が形成された対峙する内周壁面に、該内周壁面に僅かな空隙を形成して配置された、該内周壁面と略同一の表面形状に賦形された壁面基板支持用樹脂シート22a、22bと、好適には、表面に基板支持溝36が形成された発泡樹脂製の板状体であり前記容器本体部12に収容本体部の底部に収納されて、容器本体の配収壁に形成された基板支持溝と共同して基板を保持すると共に、上記壁面基板支持用樹脂シート22a、22bの倒れ込みを防止する底上げ部材30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略矩形状の液晶用ガラス基板などの基板を多数収納して運搬するのに好適な基板搬送用容器およびこの基板搬送用容器に好適に使用される底上げ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶用ガラス基板などの基板を製造工程等の都合で他の場所に移す場合には、基板同士を互いに接触させないように、また汚染を防止し安全に運搬できるように、多数枚収容した状態で蓋が密に被嵌される基板搬送用容器が使用されている。
【0003】
このような基板搬送用容器の中には、略直方体形状の容器本体と、容器本体の開口部に装着される蓋体とが、ともに発泡合成樹脂から形成され、さらに、その内部に、樹脂シート製の中容器が介在されたものがある。例えば、特許文献1(特開平7−132986号公報)の請求項1には、「発泡倍率3〜45倍の発泡体でできたボックス(1)の内部に、
基板支持用の溝(2a)を有する箱上の溝付き内挿部材(2)を配置してなる基板搬送用ボック
ス。」の発明が開示されている。そして、この内挿部材(2)に関しては、例えば段落〔0
050〕に、「溝付き内挿部材(2)として、樹脂シート(ABS樹脂シート等)を金型にセットし、加熱下に真空吸引して一挙に箱状に成形した圧空成形体を用いる。」と記載されており、この溝付き内挿部材(2)は、特許文献1の図3に付番2で示されるように、発泡樹
脂製ボックス(1)の内装壁面および底面に対応する5面を有する一面が開口された6面体
(ボックス(2))である。このような一面が開口された6面体を発泡樹脂製ボックス(1)内に配置しようとしても、発泡樹脂製ボックス(1)と略同一の形状を有する箱体であり、内
挿部材(2)を発泡樹脂製ボックス(1)内へ挿入する作業が非常に煩雑になる。また、このように内挿部材(2)を箱状に形成してしまうと、基板支持用の溝(2a)溝が箱状内挿部材(2)の各面が当接して形成される辺によって固定されてしまい、このように固定された基板支持用の溝(2a)は、緩衝性は示さない。
【0004】
また、特許文献2(特開平7−257861号公報)の請求項1には、「発泡倍率3〜45倍の発泡体でできたボックス(1)の内面に、基板支持用の溝(2a)を有する板状または
箱状の溝付の内挿部材(2)を配置してなる基板搬送用ボックス。」の発明が開示されてい
る。この特許文献2において、内挿部材(2)は、発泡体でできた板状または箱状の発泡成
形体であるか、樹脂シートを圧空成形して得た板状または箱状の圧空成形体であるか、樹脂を溶融成形して得た板状または箱状の成形体であるか、板体を機械加工して得た板状または箱状の機械加工品であると記載されている。また、段落〔0022〕には、ボックス(1)の本体部(11)の相対する一対の面の内面側に係合用の凸条(11a)を形成し、板状の溝付き内挿部材(2),(2)の裏面側に上記凸条(11a)に係合する条溝(2b)を形成すると、ボックス(1)に対する板状の溝付け内挿部材(2)の取り付けおよび取り外しをより円滑に行うことができると記載されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載されている内挿部材(2)がボックス状である場合
には、このボックス状内挿部材(2)を発泡樹脂製ボックス(1)内に挿入する作業が非常に煩雑になり、また係合用の条溝を有するような厚さを有する内挿部材は、緩衝性を示さない。
【0006】
従って、特許文献1および2に開示されている基板搬送用ボックスにおいては、外部からの衝撃は、発泡樹脂製のボックスによって吸収されるが、ボックス内に収容されている基板が振動することによって生ずる衝撃は、基板を支持する溝付き内挿部材が緩衝性に乏しいことから、このボックス内で吸収することはできない。
【0007】
また、特許文献1および2に記載されている基板搬送用ボックスは、画一的な大きさであり、このような基板搬送用ボックスで安定に搬送可能な基板の大きさは一種類である。
なお、特許文献3(実開昭57-91272号公報)には、六面体の一面に開口を有し
、発泡性合成樹脂材料で形成された箱体と、該箱体の前記開口に隣り合う四側面のうち互いに対向する一対の側面のうち面に取り付けられ、前記一面から前記一面に対向する底面方向に延びる所定間隔で配列された複数の溝を有し、前記箱体より硬い合成樹脂材料で形成された内張部材とより成り、前記対向する溝に板状部材の両端部を挿着することを特徴とする板状部材の収納装置が開示されている。上記のような収納装置には、箱体の対向する一対の側面に溝が形成され、この溝は箱体に形成された溝の表面に合成樹脂製の内張部材を密着させた構造を有しており、この溝自体には緩衝性はない。
【特許文献1】特開平7−132986号公報
【特許文献2】特開平7−257861号公報
【特許文献3】実開昭57-91272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、液晶基板のような基板あるいは基板材料を安全に搬送するための搬送用容器を提供することを目的としている。
また、本発明は、上記のような搬送用の容器に用いることにより、基板あるいは基板材料をより安全に搬送するための底上げ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の基板搬送用容器は、一方向が開口した発泡樹脂製の有底角筒状体であり、該有底角筒状体の対峙する内周壁に基板支持溝が形成された容器本体部と、
上記容器本体部の開口を覆うように着脱自在に装着される発泡樹脂製の蓋体部と、
上記容器本体部の少なくとも該基板支持溝が形成された対峙する内周壁面に、該内周壁面に僅かな空隙を形成して配置された、該内周壁面と略同一の表面形状に賦形された壁面基板支持用樹脂シートとを有し、
該壁面基板支持用樹脂シートが、倒れ込み防止手段によって該内周壁面に保持されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の第2の基板搬送用容器は、一方向が開口した発泡樹脂製の有底角筒状体であり、該有底角筒状体の対峙する内周壁に基板支持溝が形成された容器本体部と、
上記容器本体部の開口を覆うように着脱自在に装着される発泡樹脂製の蓋体部と、
上記容器本体部の少なくとも該基板支持溝が形成された対峙する内周壁面に、該内周壁面に僅かな空隙を形成して配置された、該内周壁面と略同一の表面形状に賦形された壁面基板支持用樹脂シートと、
表面に基板支持溝が形成された発泡樹脂製の板状体であり、前記容器本体部に収容本体部の底部に収納されて、容器本体の配収壁に形成された基板支持溝と共同して基板を保持すると共に、上記壁面基板支持用樹脂シートの倒れ込みを防止する底上げ部材とを有することを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明の基板搬送用容器の底上げ部材は、好適には、上記のような第1の基板搬送用容器あるいは第2の基板搬送用容器と共に用いられる底上げ部材であって、発泡樹脂製の容器本体部内に収納されて、該容器本体部内の収納深さを調製すると共に、該容器本体内の対峙する壁面に僅かな空隙を形成して配置される壁面基板支持用樹脂シートと共同して、該容器本体部に収納される基板を保持する保持溝が表面に形成されている発泡樹脂製の板状体であることを特徴としている。
【0012】
本発明の基板搬送用容器には、発泡樹脂製から形成された容器本体部の対峙する一対の側壁面に、収納される基板を保持するための保持溝が形成されており、さらにこの側壁面の表面には、この側壁面の表面形状と略同一の表面形状に賦形された壁面基板支持用樹脂シートが、側壁面と僅かな空隙を形成して配置されている。このように壁面基板支持用樹脂シートを、側壁面に対して固定せずに僅かな空隙が形成されるように配置することにより、容器本体部と壁面基板支持用樹脂シートとの間に、格納された基板により生ずる振動を吸収する緩衝空間が形成される。
【0013】
一般に、発泡樹脂からなる筐体を有する基板搬送用容器を用いることにより、外部からの衝撃などは発泡樹脂からなる筐体部で吸収され、格納された基板は安全に保たれるが、このような基板搬送容器では、内部に格納された基板は、筐体内壁面に形成された保持溝によって固定されるために、収納されている基板自体によって生ずる振動に対しては緩和手段を有していない。
【0014】
本発明の基板搬送用容器では、発泡樹脂からなる容器本体部の基板を保持する保持溝が形成された内壁面に、この内周壁面の表面形状と略同一の形状に賦形された壁面基板支持用樹脂シートが配置されているので、外部からの衝撃は勿論、容器内に収納された基板によって生ずる振動は、この壁面基板支持用樹脂シートと保持溝が形成された内壁面との間に形成された緩衝空隙によって吸収され、隣接して格納された基板をより安定した状態で保管あるいは移動させることができる。即ち、例えば液晶用のガラス基板は非常に薄いものであり、非常に僅かな応力によっても撓むことがある。発泡樹脂から形成された基板搬送用の容器を用いることにより、外部から加えられる応力の大部分はこの発泡樹脂製の筐体部によって吸収されるが、格納された基板が撓むことなどによって生ずる内部応力を筐体の内壁面に形成された保持溝だけで吸収することは難しい。液晶基板などの基板材料あるいは基板を取り扱う際に、収納されている基板材料あるいは基板が破損しないように慎重に取り扱われており、基板材料あるいは基板の破損は、取り扱い不注意による破損よりも、基板材料あるいは基板に生ずる内部応力による破損の方が高い発生頻度で発生する。特に液晶が大型化するに従ってこうした傾向は高くなる。このような内部応力による基板材料あるいは基板の破損は、これらの自重が保持部分に係ることにより生ずることが多い。
【0015】
本発明の基板搬送用容器においては、格納される基板材料あるいは基板を保持する部分である容器本体部の対峙する一対の側壁に形成された保持溝の表面に、僅かな空隙を形成して壁面基板支持用樹脂シートが配置されており、容器本体部に形成された保持溝に対して壁面基板支持用樹脂シートの保持溝は固定されておらず、しかしながら、壁面基板支持用樹脂シートの保持溝が過度に変形するのは容器本体部に形成された保持溝によって阻止されている。即ち、格納される基板材料あるいは基板は、ある程度の可撓性を有しており、この可撓性の範囲内で基板材料あるいは基板が動く分には、この基板材料あるいは基板は破損しない。基板材料あるいは基板を輸送する際には、基板材料あるいは基板を固定しなければならないが、基板を固定すると、この固定された部分(具体的には保持溝によって挟持された基板材料あるいは基板の両端部)に応力が集中する。従って、搬送中における基板材料あるいは基板の破損は、落下などの取り扱い不注意による破損を除くと、この基板材料あるいは基板の破損は、上記のようにして挟持されている両端部に端を発したと思われる破損が多くなる。
【0016】
本発明の基板搬送用容器では、容器本体部に形成された保持溝と壁面基板支持用樹脂シートの保持溝との間に僅かな空隙が形成されており、壁面基板支持用樹脂シートは、容器本体部の壁面には固定されておらず、この空隙が、格納されている基板材料あるいは基板の有する可撓性の範囲内における変形を容認する緩衝空間として作用する。従って、本発明の基板搬送用容器を用いることにより、格納されている基板材料あるいは基板の両端部
からの破損を防止することができる。ところが、このような壁面基板支持用樹脂シートを、容器本体部の側壁に配置しても、この壁面基板支持用樹脂シートは容器本体の側壁に固定されていないので、基板材料あるいは基板を格納する前に、この壁面基板支持用樹脂シートが容器内に倒れてしまうことがある。この基板搬送用容器は、基板材料あるいは基板を取り扱う基板メーカー等が使用するものであり、この基板搬送用容器の製造者から基板メーカー等に到達する過程で壁面基板支持用樹脂シートが容器内に倒れ込んでしまったのでは、上記のように優れた特性を有する基板搬送用容器を安定して供給することができない。殊に、基板メーカー等においては、自動装置などにより、基板材料あるいは基板を、この基板搬送用容器に格納して搬送することが多く、本発明の基板搬送用容器のように、基板材料あるいは基板を保持する保持溝が形成された発泡樹脂製の筐体の側壁形状と、この表面に配置する壁面基板支持用樹脂シートの表面形状とが略同一である場合には、機械的に壁面基板支持用樹脂シートの有無を認識しにくいことがある。
【0017】
そこで、本発明の基板搬送用容器においては、容器本体部の保持溝が形成された側面に配置される壁面基板支持用樹脂シートが倒れ込まないように、この壁面基板支持用樹脂シートの倒れ込み防止手段が形成されている。
【0018】
このように壁面基板支持用樹脂シートの倒れ込み防止手段を形成することにより、本発明の基板搬送用容器の有する優れた破損防止機能を有効に活用することができるのである。
【0019】
また、上記のように格納された基板材料あるいは基板は、容器本体部の底部において、必然的に容器本体部の底部と接触するが、本発明の基板搬送用容器では、容器本体部に底上げ部材を配置することが好ましい。この底上げ部材に表面には、容器本体部の内側面に形成された保持溝と共同して格納される基板材料あるいは基板を保持する保持溝が形成されている。そして、この底上げ部材の表面形状と略同一の形状を有する底部基板支持用樹脂シートを配置することが好ましく、この底部基板支持用樹脂シートは、発泡樹脂性の底面基板支持用樹脂シートが僅かな空隙を形成して配置されていることが好ましく、このように形成された空隙は、格納される基板材料あるいは基板の底部と接触し、しかも底面基板支持用樹脂シートは、発泡樹脂を用いて形成されている底上げ部材には固定されていないので、格納される基材材料および基板をタイトに保持することがなく、従って、この底面基板支持用樹脂シートに保持される基板材料および基板は、この基板材料あるいは基板の有する可撓性の範囲内において変形してもその応力が基板等の底部に集中しないようにすることができる。そして、このような底上げ部材は、壁面基材支持用樹脂シートに対する非常に良好な倒れ込み防止手段ともなる。また、この底上げ部材は、種々の厚さの底上げ部材を形成しておくことにより、この基板搬送用容器に格納深さを調整することができ、底上げ部材の厚さを適宜選定することにより、あるいは、複数の異なる底上げ部材を適宜組み合わせて使用することにより、一種類の容器で底上げ部材により深さを調整することができるので異なるサイズの基板材料あるいは基板を安定に搬送することができる。このように基板材料および基板の保持部分が対向する一対の側壁および低部に配置された底上げ部材(あるいは、底部基板支持用樹脂シートの保持溝)の三箇所になり、より安全に基板材料あるいは基板を保持、搬送することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の基板搬送用容器は、基板搬送用容器は、基板を保持する容器本体部の壁面に、この壁面の表面形状と略同一の形状を有する壁面基板支持用樹脂シートが、この壁面に対して僅かな空隙を形成して配置されており、且つこの壁面基板支持用樹脂シートが容器内に倒れ込むのを防止する手段が講じられている。このように壁面基板支持用樹脂シートを僅かな空隙を介して壁面に配置することにより、この容器内に格納される基板自体によって生ずる応力をこの空隙によって吸収することができ、格納基板の保持部に端を発する基
板の損傷を発生を著しく低減することができる。即ち、容器の側面と壁面基板支持用樹脂シートとの間に形成される僅かな空隙が、格納される基板自体の撓みなどによって生ずる内部応力の緩衝空間として機能する。
【0021】
このように本発明の基板搬送用容器では、基板の保持溝が形成された容器の側面に、この表面に配置される壁面基板支持用樹脂シートが密着していないにも拘わらず、この壁面基板支持用樹脂シートの倒れ込み防止手段が講じられているので、壁面基板支持用樹脂シートを壁面に対して一定の空隙を形成して安定に保持することができる。
【0022】
さらに、本発明の基板搬送用容器の第2の態様においては、格納される基板と常に接触する底部に、基板の保持溝が形成された底上げ部材が配置されており、好適には、この底上げ部材の表面形状と略同一の形状を有する底部基板支持用樹脂シートが、底上げ部材の表面に僅かな空隙を形成して配置されているので、格納された基板に生ずる撓みなどの変形の発生を低減することができると共に、この底上げ部材と底部基板支持用樹脂シートとの間に形成されている僅かな空隙を、基板自体に生ずる内部応力の緩衝空間として作用させることができ、格納基板の破損の発生を著しく低減することができる。
【0023】
さらに、この底上げ部材を使用することにより、格納する基板にあわせて容器内の格納空間の深さを調整することができ、さらに蓋部の内部にも、上記と同様にして緩衝空隙を有する支持溝を形成することにより、より安全に基板を格納することができる。
【0024】
本発明の基板搬送用容器によれば、発泡樹脂で形成されていることから外部からの衝撃に対して格納基板を保護することは勿論、格納されている基板の自重あるいはこれらの撓みなどにより生ずる基板内部の応力をも吸収して基板の破損を防止することができる。
【0025】
また、上記のように壁面基板支持用樹脂シートなどは、開口部が形成された六面体(ボックス状)のような形状で発泡樹脂製の容器本体部に挿入したのでは、支持溝の可撓性が損なわれ、壁面と壁面基板支持用樹脂シートとの間に空隙を形成したとしても、この空隙が格納基板に対する緩衝空隙としては機能しない。さらに、ボックス状にして容器本体部に挿入しようとすると、ボックスの挿入が著しく困難であり、非常に作業効率が悪くなる。そこで、本発明では、基本的には、容器本体部の壁面に形成された支持溝と略同一の形状に賦形された壁面基板支持用樹脂シートの支持溝の可撓性が保持されるように(即ち、蛇腹状に形成された多数の支持溝が伸縮可能なように)、例えば各壁面ごとに独立した複数の壁面基板支持用樹脂シートを壁面に配置することにより、発泡樹脂製の容器本体部内部の壁面に壁面基板支持用樹脂シートを容易に配置することができる。しかも、本発明の基板搬送用容器は、倒れ込み防止手段を備えているので、配置された壁面基板支持用樹脂シートを各側面に安定した状態で配置することができる。
【0026】
さらに、底上げ部材を用いることにより、格納基板を側面だけではなく底面でも保持することができ、しかもこの底上げ部材が基板の内部応力の緩衝性を有しているので、より安全に基板を搬送することができる。また、容器の格納深さを調整することができるので、単一の基板搬送用容器を多種類の基板の搬送に適用することが可能となる。さらに、この底上げ部材は、容器本体部の側壁に配置された側壁基板保持用樹脂シートに対して大変良好な倒れ込み防止手段となる。またさらに、容器内の余剰空間を少なくすることで、基板の搬送安全性も高くなる。
【0027】
なお、本発明の基板搬送用容器は、発泡樹脂製であり、外部からの衝撃に対して格納基板を保護することができ、また外部との温度差などにより発生することがある結露などを防止することができるのは勿論である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次の本発明の基板搬送用容器および底上げ部材について図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明の第1の基板搬送用容器の分解斜視図であり、図2は本発明の第2の基
板搬送用容器の分解斜視図であり、図3は本発明の底上げ部材の一例を示す分解斜視図である。なお、以下に示す説明および図面においては、同一の部材には同一の付番を賦してある。
【0029】
本発明の第1の基板搬送用容器10は、発泡樹脂製の容器本体部12と、この容器本体部12
の開口部14に開閉自在に装着される発泡合成樹脂製の蓋体45とを有している。
発泡樹脂製の容器本体部12は、基板材料あるいは基板(以下本発明では「基板」と記載する)60を格納できるように、一方向が開口した有低筒状の形態を有している。そして、この容器本体部12の内周壁面の対峙する一対の壁面13a,13bには、基板60を保持するため
の基板支持溝16が形成されている。この基板支持溝16は、容器本体部12の開口部14から底部17方向に向かって形成されたが溝である。この両壁面に形成された基板支持溝16,16に、基板60の両端部を挿入することにより、基板60を起立させて格納することができる。この基板支持溝16は、一の基板搬送用容器10に1〜45枚、好ましくは2〜20枚程度格納できるように形成されている。従って、容器本体部12の対峙する一対の壁面13a,13bには、それぞれ、1〜45本、好ましくは2〜20本の基板支持溝16が形成されている。
【0030】
図4に拡大して示すように、この基板支持溝16の形成ピッチ、即ち、ある基板支持溝16の中心線から隣接する基板支持溝16の中心線までの距離は、適宜設定することができるが、格納される複数の基材60が接触しないように、通常は3〜20mm程度、好ましくは5〜15mm程度にする。このピッチを3mmよりも狭く形成することも可能であるが、この容器本体部12は、金型を用いた発泡樹脂成形により製造されることから、ピッチ幅が狭くなると、基板支持溝16を画成する支持凸条16aの形状安定性が低くなることがある。
【0031】
また、この基板支持溝16の深さは、格納される基板60を安定に保持できる深さであればよく、通常は5〜45mm程度、好ましくは7〜25mm程度である。
このような基板支持溝16および支持凸条16aは、それぞれ、壁面13aあるいは壁面13bに
対して直角に形成することもできるし、また、基板支持溝16の先端部が基端部よりも広くなるようにテーパーをつけて形成することもできる。
【0032】
上記のような基板支持体溝16は、容器本体部12と一体にして形成することもできるし、また、この基板支持体溝16を有する発泡樹脂発泡樹脂板を、容器本体部12とは別に形成し、この基板支持体溝付き発泡樹脂板を容器本体部12の該当壁面に嵌め込むことにより形成することもできる。この場合に、基板支持溝付き発泡樹脂板の両側端部と容器本体部との間に、後述するシート挟み込みスリット18を形成するように樹脂板を嵌め込むことが望ましい。
【0033】
このように基板支持溝付き発泡樹脂板を、容器本体部とは別体として成形することにより、容器本体部の内周面の構造が単純化されるので、容器本体部12を成形した後、型抜き作業が容易になるとの利点がある。
【0034】
本発明の第1の基板搬送用容器10の上記のような基材支持溝16が形成された対峙する一
対の壁面13a,13bの、隣接する他の一対の壁面23a,23bとの当接部分には、樹脂シートを
挟み込むためのシート挟み込みスリット18が形成されていることが好ましい。
【0035】
本発明の第1の基板搬送用容器10において、上記のような基板支持溝16が形成された対峙する一対の壁面13a,13bの表面には、壁面基板支持用樹脂シート22a,22bが配置されて
いる。この壁面基板支持用樹脂シート22a、22bは、上記容器本体部12の対峙する一対
の壁面13a,13bの表面の形状と略同一の形状に賦形されている。即ち、この壁面基板支持用樹脂シート22a,22bには、対峙する一対の壁面13a,13bに形成されている基板支持溝16
に対応するシート面支持溝26およびシート面支持凸条26aが形成されており、このシート
面支持溝26およびシート面支持凸条26aは、対峙する一対の壁面13a,13bに形成された基
板支持溝16および支持凸条16aと略同一の形状を有している。このような壁面基板支持用
樹脂シート22a,22bを、壁面13a,13bの表面に配置すると、壁面基板支持用樹脂シート22a,22bと壁面13a,13bとの間に僅かな空隙19が形成される。即ち、この、壁面基板支持用樹脂シート22a,22bの端部を、例えば壁面13a,13bと隣接する他の一対の壁面23a,23b
との当接部分に形成されたシート挟み込みスリット18に挟持させることにより、壁面13a,13bの表面に配置すると、壁面13a,13bに形成された基板支持溝16付近では、この壁面基板支持用樹脂シート22a,22bは、基板支持溝16の形態に追随して配置されるが、壁面13a,13bには固定されずに、両者の間には、僅かな空隙19が形成される。
【0036】
本発明の基板搬送用容器10において、この壁面13a,13bと、壁面基板支持用樹脂シート22a、22bとの間に形成される僅かな空隙19は、基板60自体に生じた内部応力などに
よる基板60の変形などを吸収する緩衝空間として作用して格納基板60の破損を有効に防止することができる。この空隙19は、非常に僅かであればよく、例えば基板60を格納したときに、壁面とシートとが通常は0.01〜1mm程度、好ましくは0.01〜0.7mm程度、特に好ましくは0.01〜0.5mm程度の範囲内で離間可能に配置されている。即ち、壁面13a,13bに形成されている基板支持溝16とシート面支持溝26とで基板60を保持したと
きに、この基板60に生ずる歪あるいは撓みなどによる基板60の変動がこの空隙19によって吸収されればよく、僅かな空隙19の幅は、基板60は通常はガラスなどで形成されていることから、これら基板の撓み量に対応する変動幅と略同等にすればよい。
【0037】
このように壁面基板支持用樹脂シート22a,22bを、基板支持溝16が形成された対峙する一対の壁面13a,13bの表面に、上述のように僅かな空隙が形成されるように配置すること
により、基板60自体に生じた撓みあるいは歪などによる応力に起因する基板60の損傷を有効に防止することができるが、このような壁面基板支持用樹脂シート22a,22bは、基板60を収納する前には容器内に倒れ込んでしまうことが多い。殊に、本発明では壁面基板支持用樹脂シート22a,22bは、他の壁面を覆う樹脂シートとは連接されていない独立したシートとして容器本体部10に配置することにより、非常に効率よく配置することができるが、この壁面基板支持用樹脂シート22a,22bの配置が容易であるほど、シートの倒れ込みが発生し易い。
【0038】
本発明の基板搬送用容器10には、上記のような壁面基板支持用樹脂シート22a,22bの倒れ込みを防止するために、倒れ込み防止手段が形成されている。上記のように基材支持溝16が形成された対峙する一対の壁面13a,13bと隣接する他の一対の壁面23a,23bとの当接
部分に形成されたシート挟み込みスリット18も倒れ込み防止手段として機能するが、本発明ではさらに基材支持溝16が形成された対峙する一対の壁面13a,13bと隣接する他の一
対の壁面23a,23bに倒れ込み防止手段を形成することが望ましい。
【0039】
この倒れ込み防止手段としては、図5に示すように、容器本体部12の基板支持溝16が形成されていない対峙する一対の他の壁面23a,23bに形成した突起25aを挙げることができる。このように形成された突起25aは、壁面基板支持用樹脂シート22a,22bの倒れ込みが、両端部が突起29によって引っ掛かって止まるように形成されている。図5には、突起25aと
して、対峙する一対の他の壁面23a,23bに渕部を残して台形状の凸部が形成され態様が示
されている。さらに、本発明では、この突起25aは、上記のような台形状の凸部とし、こ
の凸部内を格子状にして後述する表面保護用樹脂シートとの間に空隙を形成するようにすることもできる。また、このような倒れ込み防止手段は、対峙する一対の他の壁面23a、2
3bの表面に配置される表面保護用樹脂シート24a,24bの表面に形成されていてもよい。図
5には、表面保護用樹脂シート24a,24bの表面の両側縁部近傍に、容器本体部12の内側に
突出して縦方向に凸条25bの倒れ込み防止手段が形成された態様が示されている。
【0040】
このような基板支持溝基板支持溝16が形成されていない他の一対の壁面23a、23bあ
るいは壁面に配置される表面保護用樹脂シート24a,24bに倒れ込み防止のための突起25aあるいは凸条25bは、表面から通常は2〜10mm、好ましくは3〜8mm程度突出していれば
よい。
【0041】
即ち、上記のように本発明の容器本体部12の基板支持溝16が形成されていない対峙する一対の他の壁面23a,23bは、格納される基板60と接触することはないが、この他の壁面23a,23bに、たとえば図5に示すように、表面を突出させることにより、壁面基板支持用樹脂シート22a,22bの倒れ込みを防止することができ、また、この他の壁面23a,23bの表面に表面保護用樹脂シート24a,24bを配置する場合には、この表面保護用樹脂シート24a,24bの両側端部近傍に、倒れ込み防止手段として凸条25aを形成することにより、基板60を収納
する前における壁面基板支持用樹脂シート22a,22bの倒れ込みを有効に防止することがで
きる。さらに、このように配置される表面保護用樹脂シート24a,24bは、通常は、このシ
ートが配置される他の側面23a,23bの表面形状と略同一の形状に賦形されている。さらに
、この表面保護用樹脂シート24a,24bは、側面23a,23bの表面に僅かな空隙を形成して配置されていることが好ましい。この表面保護用樹脂シート24a,24bは、基板60と直接接触す
ることはないが、この表面保護用樹脂シート24a,24bを配置することにより、容器本体部
12を形成する毛羽立ち易い発泡樹脂と格納基板60とが直接接触することがなく、また、表面保護用樹脂シート24a,24bを、側面23a,23bの表面に僅かな空隙を形成して配置することにより、この僅かな空隙が外部からの衝撃に対して衝撃吸収帯となることもあり、また、断熱性も高くなる。
【0042】
このような表面保護用樹脂シート24a,24bは、他の側面23a,23bに貼着することもできるが、例えば表面保護用樹脂シート24a,24bのそれぞれの両端部を、シート挟みこみスリッ
トに挿入することにより、他の側面23a,23bの表面に配置することができる。
【0043】
本発明の基板搬送用容器10の基板60を格納するための空間の底部27は、発泡樹脂で形成することもできるが、底部基板支持用樹脂シート28を配置することが好ましい。
本発明の第1の基板搬送用容器10は、上記のような構成を有しているが、本発明の第2の基板搬送用容器11は、図2に示すように、上記のような構成を有する第1の基板搬送用容
器10の底部に底上げ部材30を配置してなる。この底上げ部材30は、発泡樹脂から形成されており、その表面には、容器本体部12の対峙する一対の壁面13a,13bに形成された基板支
持溝16と共同して格納基板60を保持するための底部支持溝36が形成されている。この底部支持溝36の深さは、格納される基板60を安定に保持できる深さであればよく、通常は5〜45mm程度、好ましくは7〜25mm程度である。
【0044】
この底上げ部材30の表面に配置される底部基板支持用樹脂シート28は、図2および図3に示すように、底上げ部材30の表面形状と略同一の形状に賦形されている。このような形状に賦形された底部基板支持用樹脂シート28を、発泡樹脂からなる底上げ部材30の表面に配置する。この底部基板支持用樹脂シート28と底上げ部材30との間には、僅かな空隙31が形成されており、この僅かな空隙31を形成することにより、格納させている基板60の振動などによる内部応力を吸収することができ、基板60の破損が著しく低減される。
【0045】
図2に示すように、上記のような形態を有する底上げ部材30を本発明の基板搬送用容器10の底部17に配置することにより、この底上げ部材30に形成された底部支持溝36が、壁面13a,13bに形成された基板支持溝16と共同して、格納される基板60を安定に保管すること
ができると共に、この底上げ部材30は、壁面基板支持用樹脂シート22a,22bに対して、非
常に良好な倒れ込み防止手段となる。このような底上げ部材30は、また、本発明の基板搬送用容器10,11に形成される基板60の収容深さを好適な深さに変更することができる。こ
の底上げ部材30は、容器本体部12内に複数配置してもよい。即ち、この容器に格納される基板のサイズには、多種多様なものがあり、この容器に格納可能なサイズであれば、容器の深さに拘わりなく収納することができる。しかしながら、収納される基板60に対して容器が深すぎると、容器内における基板60の安定性が悪くなる。従って、基板60を収納する容器の深さは、格納しようとする基板に対応した深さであることが望ましい。本発明の基板搬送用容器においては、底上げ部材30を配置して容器の底上げを行うことにより容器内の余剰の空間を減少させて、格納される基板60をより安定に保管・輸送することができる。
【0046】
本発明において、複数の底上げ材を使用する場合、少なくとも最も上面に位置する底上げ部材30の表面に位置する底上げ部材の表面に底部支持溝36が形成されていればよく、さらに少なくとも最も上面に位置する底上げ部座30の表面に低部支持体溝36に対応する表面形状を有する底部基板支持用樹脂シート28が配置されていればよい。即ち、このように複数の底上げ部材を配置する場合に、下部に配置する底上げ部材30には、底部支持溝36が形成されていてもよいし、このような底上げ部材30の表面に底部基板支持用樹脂シート28が配置されていてもよいし、また樹脂シートが配位されていない発泡樹脂製の板状体であってもよい。上記のように底上げ部材は、基板60の収容する深さを調整するものであり、種々の厚さの発泡樹脂製の板を用意しておいて、格納される基板60に対応して使用する底上げ部材30の種類を適宜選定して使用することができる。
【0047】
特に格納される基板60の上端部が蓋体45の内側に配置される蓋体基板支持用樹脂シート47に形成されている蓋体支持溝48によって、基板60の上端部が保持されるような深さを調整されていることが好ましい。
【0048】
本発明の第1および第2の基板搬送用容器10,11の容器本体部12に形成されている開口部14を覆うように発泡樹脂製の蓋体45が形成されており、この蓋体45を容器本体部12に嵌合して開口部14に塞ぐことにより、本発明の基板搬送用容器を密閉状態に保つことができる。
【0049】
即ち、上記のような本発明の第1および第2の基板搬送用容器10,11の容器本体部12の開口部14が形成されている上端部と、蓋体45の下端部とは、相互に嵌合して、基板60を格納する内部空間を気密状態に保持できるようにされている。例えば容器本体部12の嵌合部に凸部15を形成し、蓋部45の嵌合部に凹部を形成して両者が嵌合するように嵌合部を形成することにより、より高い気密状態を形成することができる。
【0050】
上記のような蓋部45の内側には蓋体基板支持用樹脂シート47が配置されておりには、好適には、格納される基板60の上端部がこの蓋体基板支持用樹脂シート47に形成された蓋体支持溝48によって保持されるようにされている。
【0051】
なお、この蓋体基板支持用樹脂シート47は、蓋体45に対して僅かな空隙を形成して蓋体45の表面に配置されていることが好ましい。
上記のような本発明の容器本体部12および蓋体45、さらには底上げ部材30は、発泡樹脂から形成されており、このような発泡樹脂に特に制限はないが、ポリスチレン:ポリオレフィン:ポリウレタンなど、通常樹脂発泡体として使用されている発泡性樹脂を用いて形成することができる。また、これらの樹脂発泡体を形成する原料は、単独の発泡性樹脂原料である必要はなく、例えば耐衝撃性を向上させるために、発泡性のポリスチレンにゴム成分が配合された樹脂組成物などの複数の樹脂を含有する組成物を使用することができる
。上記のようなポリスチレンにゴム成分を配合した組成物は、ハイインパクトポリスチレンなどとして供給されている。このような樹脂発泡体原料を使用して、例えば、10〜60倍、好ましくは、20倍〜50倍程度の発泡倍率になるように、例えば型内発泡することにより、得られる発泡体は、良好な耐衝撃性、断熱性など、基板搬送用の容器として必要な特性が発現する。即ち、上記のような発泡樹脂からなる容器本体をおよび蓋体を形成することにより、この基板保持用容器は0.26kcal/m・hr・℃程度あるいはそれ以下
になり、外部の温度変化によっても基板搬送用容器内の温度が急速に変化することを防止することができる。さらに、このような発泡倍率で樹脂発泡体を形成することにより、形成される発泡体の表面にはスキン層が形成され、このようなスキン層は、発泡樹脂の厚さ方向の中止部近傍にある発泡体よりも緻密な層を形成する。このようなスキン層を形成することにより、発泡樹脂表面から塵埃などが発生しにくくなると共に、発泡体の強度が向上し、耐水性、耐透湿性にも優れ、さらに耐磨耗性が向上する。このようなスキン層は発泡体の表面から1mm程度の深さで形成される。このようなスキン層は、発泡樹脂を形成する際に金型と発泡樹脂とが接触することにより形成することができる。
【0052】
また、本発明で、壁面基板支持用樹脂シート22a,22b、表面保護用樹脂シート24a,24b、底部基板支持用樹脂シート28、蓋体基板支持用樹脂シート47などは、合成樹脂シートから形成することができる。ここで使用する合成樹脂シートの例としては、ポリエチレン、LLDPE、ポリプロピレン、ポリブチレンなどのα-オレフィンからなるシート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミドのような熱可塑性樹脂からなるシートなどを挙げることができる。本発明において上記のような所定の形態が賦与された樹脂シートは、真空成形、圧縮成形、押し出し成形などの種々の成形方法で製造することが好ましく、このような成形方法を採用して本発明で使用する特定の形状に賦形された樹脂シートを製造する場合には、熱溶融製樹脂を用いることが好ましい。また、このような樹脂シートには、各種の添加剤を配合されて入れもよい。このような添加剤の例としては、帯電防止剤、導電性充填剤、着色剤、酸化防止剤などを挙げることができる。特に本発明では帯電防止剤および/または導電性充填剤を配合することが好ましい。即ち、この基板搬送用容器には、半導体が組み込まれた基板を格納することがあり、このような場合には、摩擦などによって生ずる電位を速やかに放電除去させる必要があり、従って、帯電防止剤および/または導電性充填剤を配合することが好ましい。このような帯電防止剤および導電性充填剤の例としては、導電性カーボン、導電性金属、導電性界面活性剤などを挙げることができる。このような帯電防止剤および/または導電性充填剤を配合する場合には、これらの成分が樹脂シート表面から離脱して格納される基板を汚染しないような量で使用され、通常は樹脂シートを形成する樹脂成分100重量部に対して0.1〜100重量部の範囲内の量で使用される。このように帯電防止剤および/または導電性充填剤を配合することにより、この樹脂シートは通常は103〜1012Ω・cm程度の体積固有抵抗値を有するようにな
り、電子部品が実装された基板であっても静電気などによって、その電気的特性が損なわれることがなくなる。
【0053】
このような樹脂からなる樹脂シートは、上述のように例えば真空成形などによって形成することができ、通常の場合、この樹脂シートが配置される容器本体部の壁面の表面形状と略同一の形状に賦形される。このように容器本体部の配置壁面ごとに樹脂シートを形成することにより、形成される樹脂シートの可撓性が損なわれることなく、格納される基板60内部に生ずる内部応力を非常に効率よく吸収することができる。従って、本発明で使用される樹脂シートは、各配置壁面ごとに製造することが望ましいが、例えばシート面支持溝26が形成されたシートと、これに隣接する支持溝が形成されていないシートとを一体に形成したL字型シートを用いても、シート面支持溝26が形成された壁面基板支持用樹脂シート22a,22bの蛇腹状のシート面支持溝26の可撓性は損なわれることがないので、上記の
ようなL字型に形成した樹脂シートを用いることもできる。また、同様に底部が形成され
ていない筒状の樹脂シートにおいても蛇腹状のシート面支持溝26の可撓性は損なわれることがないので、このように樹脂シートを角筒状にしてもよい。このように角筒状に樹脂シートを形成しても、底部がないので容器本体部へのシートの挿入が特に困難になるということはない。
【0054】
しかしながら、角筒状のシートに底部をつけてしまうと、この有低角筒状のシート複合ボックスは、容器本体部への挿入が著しく困難になると共に、収納基板の応力を吸収する蛇腹状の支持溝が底部の縁部で固定されてしまい、その可撓性が損なわれるので、本発明の基板搬送用容器におけるような、基板自体に生ずる内部応力に起因する基板の損傷の発生を低減することができない。
【0055】
本発明の基板搬送用容器は、上記のような構成を有しており、この容器内に基板を格納して安全に基板を搬送することができる。即ち、本発明の基板搬送用容器は、耐衝撃性および断熱性に優れた発泡樹脂で容器本体部および蓋体が形成されているので、外部からの衝撃および外部の温度変化などから基板を保護することができるのは勿論、格納された基板によって生ずる内部応力(主として基板の自重によって生ずる応力)に対しても、容器内の該当壁面などに僅かな空隙を形成して配置された樹脂シートの可撓性によって吸収することができ、格納基板をより安全に搬送あるいは保管することができる。さらに、本発明の基板搬送用容器内部に配置されている樹脂シートは、該当壁面に固定されておらず、僅かな空隙を形成して配置されているが、この樹脂シートが容器内に倒れ込むのを防止する手段が形成されており、この樹脂シートは所定に位置に確実に配置されているので、本発明の基板搬送用容器を実際に使用する基板メーカー等において、樹脂シートが所定の位置に正確に配置されているかどうかを確認する必要はない。さらに、本発明のように基本的には樹脂シートを、壁面に対して個別独立に配置することにより、樹脂シートの装着が非常に簡単になる。
【0056】
また、底上げ部材を用いることにより、搬送しようとする基板に対応させて容器の深さを調整することができ、容器内に余分な空間が形成されないようにすることができるので、より安全に基板を搬送することができる。
【0057】
本発明の基板搬送用容器は、上記のような構成を有するが、本発明の目的を損なわない範囲内で種々改変することができる。
例えば、本発明の基板搬送用容器に気体交換口を形成して、この基板搬送用容器内の空気を、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスで置換することもできる。
【0058】
また、本発明の基板搬送用容器の外周部にバンドかけ凹部を形成して、この基板搬送用容器の密閉性を向上させ、さらに不注意などによる蓋体の脱落を防止するためのバンドかけを容易に行えるようにすることができる。
【0059】
本発明の基板搬送用容器は、通常の場合、格納されている基板が起立するように使用されるが、このような基板搬送用容器の積み込み方向を明確にするために、容器に積み込み方向を明示する印を賦すこともできる。
【0060】
本発明の基板搬送用容器は、基板の移動の際に好適に使用することができるが、移動時だけに限らず、保管時などにも使用することができるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の基板搬送用容器を構成する容器本体部および蓋体、さらには底上げ部材は、耐衝撃性および断熱性に優れた樹脂発泡体で形成されているので、外部からの衝撃および外部の環境の変化に対しても非常に良好に格納基板を保護することができることは勿論、収
納されている基板自体の自重などによって基板自体に生ずる内部応力も、容器本体などの壁面に形成された基板の保持溝と略同一形状に賦形された樹脂シートを、壁面に対して固定せずに、僅かな空隙を形成して配置することにより、この僅かな空隙によって吸収され、格納基板の破損を防止することができる。
【0062】
このように樹脂シートは、該当する壁面に固定されずに配置されているだけであるけれども、これらの樹脂フィルムの倒れ込みが有効に防止されているので、本発明の基板搬送用容器を安定した状態で供給することができる。
【0063】
さらに、従来のように内張り材をボックスのような形態で容器本体部に挿入しておらす、基本的にはシートの状態で当接壁面等の表面に配置しているので、本発明の基板搬送用容器は、非常に容易に製造することができる。
【0064】
しかも、底上げ部材を使用することにより、本発明の基板搬送用容器内に余剰に空間をなくすることができると共に、この底上げ部材が、壁面に配置した樹脂シートに対する非常に良好な倒れ込み防止手段となり、底上げ部材を用いることにより、本発明の基板搬送用容器は、非常に安定した状態を維持することができる。
【0065】
さらに、樹脂シートに帯電防止剤などを配合することにより、基板などに生ずる電位を効率的に除去することができるので、この基板にICなどの電子部品が実装されている場合であっても、実装されている電子部品が帯電電圧によって損傷を受けることを防止することができる。
【0066】
このように本発明の基板搬送用容器を用いることにより、搬送時あるいは保管時などにおいて、基板を損傷させずに保持することができる。
このような基板搬送用容器は、液晶基板、液晶用ガラス基板、配線基板、回路基板などの基板を安全に移送、保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の第1の基板搬送用容器の分解斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第2の基板搬送用容器の分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の底上げ部材の一例を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、この基板支持溝の状態を拡大して示す拡大説明図である。
【図5】図5は、他の壁面23a,23bの表面を突出させて、壁面基板支持用樹脂シート22a,22bの倒れ込みを防止する態様の例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
10・・・(第1の)基板搬送用容器
11・・・(第2の)基板搬送用容器
12・・・容器本体部
13a,13b・・・対峙する一対の壁面
14・・・開口部
15・・・凸部
16・・・基板支持溝
16a・・・支持凸条
17・・・底部
18・・・シート挟みこみスリット
19・・・僅かな空隙
22a,22b・・・壁面基板支持用樹脂シート
23a,23b・・・他の一対の壁面
24a,24b・・・表面保護用樹脂シート
25a・・・凸条
25b・・・突起
26・・・シート面支持溝
26a・・・シート面凸条
27・・・底部
28・・・底部基板支持用樹脂シート
30・・・底上げ部材
31・・・僅かな空隙
36・・・低部支持体溝
45・・・蓋体
47・・・蓋体基板支持用樹脂シート
48・・・蓋体支持溝
60・・・基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向が開口した発泡樹脂製の有底角筒状体であり、該有底角筒状体の対峙する内周壁に基板支持溝が形成された容器本体部と、
上記容器本体部の開口を覆うように着脱自在に装着される発泡樹脂製の蓋体部と、
上記容器本体部の少なくとも該基板支持溝が形成された対峙する内周壁面に、該内周壁面に僅かな空隙を形成して配置された、該内周壁面と略同一の表面形状に賦形された壁面基板支持用樹脂シートとを有し、
該壁面基板支持用樹脂シートが、倒れ込み防止手段によって該内周壁面に保持されていることを特徴とする基板搬送用容器。
【請求項2】
上記倒れ込み防止手段が、容器本体部の基板支持体溝が形成されていない内周壁面に形成された凸部であることを特徴とする請求項第1項記載の基板搬送用容器。
【請求項3】
上記容器本体部の基板支持体溝が形成されていない内周壁面に表面保護用樹脂シートが配置されており、該基板支持体溝が形成されていない内周壁面に配置された表面保護用樹脂シートに、基板支持溝が形成された対峙する内周壁面に配置された壁面基板支持用樹脂シートの倒れ込み防止手段が形成されていることを特徴とする請求項第1項記載の基板搬
送用容器。
【請求項4】
上記容器本体部の底面および/または蓋体部の内周壁面に、表面保護用樹脂シートが配置されていることを特徴とする請求項第1項記載の基板搬送用容器。
【請求項5】
上記容器本体部の底面および/または蓋体部の内周壁面に配置された表面保護用樹脂シートに基板支持溝が形成されていることを特徴とする請求項第4項記載の基板搬送用容器

【請求項6】
上記容器本体部の底面、基板支持体溝が形成されている内周壁面、基板支持体溝が形成されていない内周壁面、および、蓋体部の内周壁面に配置される樹脂シートが、それぞれ配置される面の表面形状と略同一の表面形状を有するように賦形されており、それぞれの樹脂シートが、発泡樹脂からなる当接面の表面に対して僅かな空隙を形成して配置されていることを特徴とする請求項第5項記載の基板搬送用容器。
【請求項7】
一方向が開口した発泡樹脂製の有底角筒状体であり、該有底角筒状体の対峙する内周壁に基板支持溝が形成された容器本体部と、
上記容器本体部の開口を覆うように着脱自在に装着される発泡樹脂製の蓋体部と、
上記容器本体部の少なくとも該基板支持溝が形成された対峙する内周壁面に、該内周壁面に僅かな空隙を形成して配置された、該内周壁面と略同一の表面形状に賦形された壁面基板支持用樹脂シートと、
表面に基板支持溝が形成された発泡樹脂製の板状体であり、前記容器本体部に収容本体部の底部に収納されて、容器本体の配収壁に形成された基板支持溝と共同して基板を保持すると共に、上記壁面基板支持用樹脂シートの倒れ込みを防止する底上げ部材とを有することを特徴とする基板搬送用容器。
【請求項8】
上記底上げ部材の表面形状と略同一の表面形状に賦形された底部基板支持用樹脂シートが、該底上げ部材の表面に僅かな空隙を形成して配置されていることを特徴とする請求項第7項記載の基板搬送用容器。
【請求項9】
上記底上げ部材が、壁面基材支持用樹脂シートの倒れ込み防止手段であることを特徴とする請求項第7項または第8項記載の基板搬送用容器。
【請求項10】
上記壁面基材支持用樹脂シートの倒れ込み防止手段として、上記底上げ部材のほかに、容器本体部の基板支持体溝が形成されていない内周壁面に凸部を形成することを特徴とする請求項第7項または第9項記載の基板搬送用容器。
【請求項11】
上記容器本体部の基板支持体溝が形成されていない内周壁面に表面保護用樹脂シートが配置されており、該基板支持体溝が形成されていない内周壁面に配置された表面保護用樹脂シートに、基板支持溝が形成された対峙する内周壁面に配置された壁面基板支持用樹脂シートの倒れ込み防止手段が形成されていることを特徴とする請求項第7項または第9項記載の基板搬送用容器。
【請求項12】
上記蓋体部の内周壁面に、表面保護用樹脂シートが配置されていることを特徴とする請求項第7項記載の基板搬送用容器。
【請求項13】
上記蓋体部の内周壁面に配置された表面保護用樹脂シートに基板支持溝が形成されていることを特徴とする請求項第4項記載の基板搬送用容器。
【請求項14】
上記基板搬送用容器が、複数の底上げ部材を収納して該基材搬送用容器の収納深さを調整可能にされていることを特徴とする請求項第7項記載の基板搬送用容器。
【請求項15】
発泡樹脂製の容器本体部内に収納されて、該容器本体部内の収納深さを調製すると共に、該容器本体内の対峙する壁面に僅かな空隙を形成して配置される面壁面基板支持用樹脂シートと共同して、該容器本体部に収納される基板を保持する保持溝が表面に形成されている発泡樹脂製の板状体であることを特徴とする基板搬送用容器の底上げ部材。
【請求項16】
上記底上げ部材が、発泡樹脂製の板状体と、該発泡樹脂製の板状体の表面の形状と略同一の形状に賦形された底部基板支持用樹脂シートとからなり、板状体の表面に僅かな空隙して該底部基板支持用樹脂シートが配置されてなることを特徴とする請求項第15項記載の底上げ部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−103748(P2006−103748A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292458(P2004−292458)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(504373303)
【Fターム(参考)】