説明

基板表面加工装置

【課題】ウェハの研削装置においても、ウェハ表面に形成される水膜を良好に除去することにより、非接触式厚みセンサを使用して精度良くウェハの厚みを測定できるようにする。
【解決手段】第1、第2エアノズル15、17は、ウェハ5の回転中心を中心として形成される、測定点23が属する円周上のウェハ5の回転方向上流側に配置され、構成が同一である。ライン状の複数個の小径の円形孔を持ち、エア供給装置から所定圧力で供給されるクリーンエアを、一方向に回転するウェハ5表面の上記円周を含む領域に向けて各円形孔から噴出する。第2エアノズル17は上記各円形孔が、上記円周の接線方向に沿うように配置される。第1エアノズル15はライン状の複数個の小径の円形孔が、上記円周の接線に対して直角でも平行でもない状態、例えば45°前後の角度をなすように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面加工装置に関し、特に半導体ウェハ(以下、「ウェハ」と略記する)表面を研削するための研削装置に好適な技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハ表面の研削を高精度で実施するには、ウェハの厚みを測定しながら研削加工を行うことが必要不可欠である。従来、ウェハの厚みを測定するための手段として、接触式の厚みセンサが採用されている。
【0003】
しかし、接触式厚みセンサでウェハの厚みを測定する場合、該センサをウェハ表面に接触させる必要があるので、例えばウェハの削り屑が、接触式厚みセンサの接触子とウェハ表面との間に挟まると、ウェハ表面にダメージ(傷)を与える虞がある。特に、ウェハの表面にIC回路等を形成した後、該ウェハの裏面に、例えば該ウェハの厚みを50μm程度に研削する作業を行う場合、接触子による傷に沿ってウェハが割れる可能性がある。更に、最近では、研削加工工程において、ウェハを非常に薄くなるまで研削したいという技術的要求が出てきており、それによって、接触式厚みセンサがウェハに与える傷がより大きな問題になってきている。
【0004】
そこで、上記に鑑みて、例えば光学式センサ等の非接触式厚みセンサを採用してウェハ表面の研削加工を実施したいとの技術的要求が高まってきている。しかし、研削加工中に、ウェハ表面にかける洗浄/冷却水によってウェハ表面に形成される水膜が、上記非接触式厚みセンサによるセンシングの障害になるので、研削加工中に、センシングポイントから上記水膜を除去する必要があり、そのための技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−223192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に係るウェハの研磨装置では、細長い1本のエアノズルからウェハ表面に向けてエアを噴射することにより、ウェハ表面に形成された水膜を除去するように構成されている。しかし、この水膜除去の技術は、あくまでウェハの研磨装置に係わるものであり、ウェハの研磨装置とは動作環境や技術的な条件が異なるウェハの研削装置に対し、上記水膜除去の技術をそのまま適用することはできない。
【0007】
例えば、ウェハの研削装置では、ウェハ表面を研削するためのホイール砥石の回転速度が2000〜3000RPM、ウェハを真空吸着したチャックテーブルの回転速度が200〜300RPMと比較的高速であるのに対し、ウェハの研磨装置では、ウェハ表面を研磨するためのポリッシャは回転しないが、ウェハを保持する研磨定盤の回転速度は60〜100RPMと比較的低速である。また、ウェハの研削装置では、ホイール砥石上のウェハから剥離した研削粉を洗浄したりホイール砥石を冷却したりするためにホイール砥石にかける水の量が、少なくとも3〜15l/min必要であるのに対し、ウェハの研磨装置では、上記水の量は多くても2l/min程度であり、場合によっては1l/min未満で済むこともある。
【0008】
本発明者が、上記特許文献1に開示されている1本のエアノズルをウェハの研削装置に転用して実験を行った結果、研削装置と研磨装置とで、上述したように駆動機構部分の回転速度、及び必要とする水量が違い過ぎるために、研削工程においてウェハ表面から水膜を除去することができなかった。
【0009】
また、ウェハ表面の研削工程では、ウェハ表面に研削痕として細かい凹凸が形成され、親水性が良いために、凹部に上記水が溜まってしまい、この溜まった水の除去は、上述した1本のエアノズルからエアを噴射する程度では到底不可能である。
【0010】
上記のような事情から、特許文献1に開示されている方法では、ウェハ表面の研削工程において、ウェハ表面に形成される水膜の除去は、実際には殆ど不可能である。
【0011】
従って本発明の目的は、基板表面加工装置、即ち、ウェハの研削装置においても、ウェハ表面に形成される水膜を良好に除去することによって、非接触式厚みセンサを使用して精度良くウェハの厚みを測定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に従う基板表面加工装置は、基板(5)を回転自在に保持すると共に、上記基板(5)の表面に所定の加工を施すもので、上記基板(5)の表面を洗浄・冷却するための洗浄・冷却液を供給する洗浄・冷却液供給機構(9、11)と、上記基板(5)に対し非接触で、加工中の上記基板(5)の厚みを測定する厚み測定手段(13)と、上記厚み測定手段(13)の設置位置より上記基板(5)の回転方向上流側に設置され、上記洗浄・冷却液供給機構(9、11)からの上記洗浄・冷却液によって上記基板(5)の表面に形成される液膜(19)を除去するための液膜除去機構(17)と、を備え、上記液膜除去機構(17)が、上記基板(5)の回転中心を中心とする円周であって、上記基板表面における上記厚み測定手段(13)の測定点(23)が属する円周の接線方向に沿ってライン状に気体を噴出す気体噴出孔を持つノズルである。
【0013】
本発明に係る好適な実施形態では、上記液膜除去機構(17)の設置位置より上記基板(5)の回転方向上流側に設置され、上記洗浄・冷却液供給機構(9、11)からの上記洗浄・冷却液によって上記基板(5)の表面に形成される液膜(19)の厚みを所定の厚みにまで薄化する液膜薄化機構(15)、を更に備え、上記液膜薄化機構(15)が、上記基板(5)の回転中心を中心とする円周であって、上記基板(5)表面における上記厚み測定手段(13)の測定点(23)が属する円周の接線と直角でも平行でもない角度をなす直線に沿ってライン状に気体を噴出す気体噴出孔を持つノズルである。
【0014】
上記とは別の実施形態では、上記円周の接線と上記直線とのなす角度が略45°若しくはその近傍値である。
【0015】
また、上記とは別の実施形態では、上記液膜除去機構(17)と上記液膜薄化機構(15)とは、構成が同一のノズルである。
【0016】
また、上記とは別の実施形態では、上記気体噴出孔が、ライン状に並設される複数の小径の円形孔である。
【0017】
また、上記とは別の実施形態では、上記気体噴出孔が、ライン状に並設される複数の小径の矩形状を呈する孔である。
【0018】
また、上記とは別の実施形態では、上記気体噴出孔が、スリット状を呈する1個の小径
の孔である。
【0019】
更に、上記とは別の実施形態では、上記気体噴出孔が、上記基板(5)表面に対し、略垂直に設定されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基板表面加工装置、即ち、ウェハの研削装置においても、ウェハ表面に形成される水膜を良好に除去することによって、非接触式厚みセンサを使用して精度良くウェハの厚みを測定できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面により詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るウェハの研削装置の、垂直方向から見たときの要部の構成を示す説明図、図2は、本発明の一実施形態に係るウェハの研削装置の、上方から見たときの要部の構成を示す説明図である。
【0023】
上記研削装置は、図1に示すように、正/逆方向に回転自在で、且つ上/下方向に移動自在なスピンドル(図示しない)の下端に取付固定されるマウンタ1と、マウンタ1の底面に装着される研削ホイールと、研削ホイールの下端に突設される研削砥石(以下、研削ホイール及び研削砥石を「ホイール砥石3」と表記する)と、を備える。上記研削装置は、また、ホイール砥石3により研削加工されるウェハ5が真空吸着される、時計方向(/反時計方向)に回転自在なチャックテーブル7と、ウェハ5表面を洗浄/冷却するための水(研削水)を生成する研削水生成装置9(図2で示す)と、研削水生成装置9からの研削水を、ウェハ5表面に供給する研削水配管11、をも備える。
【0024】
上記研削装置は、更に、研削加工中のウェハ5の厚みを測定する非接触式厚みセンサ13と、図2に記載するように、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転方向上流側に符号15で示すエアノズル(以下、「第1エアノズル15」と表記する)を、下流側、即ち、非接触式厚みセンサ13の近傍位置に符号17で示すエアノズル(以下、「第2エアノズル17」と表記する)を、夫々備える。非接触式厚みセンサ13、第1エアノズル15、及び第2エアノズル17は、研削装置におけるウェハ5の上方の、ホイール砥石3と衝突することがない領域に夫々配置されている(図1、及び図2参照)。
【0025】
非接触式厚みセンサ13には、例えばウェハ5表面にレーザ光を投下するレーザ光生成部と、ウェハ5表面において反射したレーザ光を受光するCCDと、を備え、CCDによる上記反射したレーザ光の受光位置に応じてウェハ5の高さ寸法(厚み)を測定する方式のレーザセンサが採用される。上記レーザセンサは、パージボックス(図示しない)内に収納されている。このパージボックスにはクリーンエアが供給され、先端ノズルから該パージボックス内のエアが排出される。
【0026】
また、上記レーザ光の上記パージボックスからの出口には、テーパ状に形成された孔を有するノズルが取付けられており、このノズルによって上記レーザ光のための光路を妨害しない範囲で、外部からの上記パージボックス内への研削屑の流入を防止している。そのため、パージボックスの周囲が、汚染された環境であったとしても、研削屑がパージボックス内に流入することを防止できるので、安定した計測を行える。なお、上記パージボックスは、本実施形態に係る研削装置におけるスペースの関係から、上記レーザ光の光路をミラーにより90°曲げることで、高さ方向の寸法を小さく設定していると共に、剛性のあるアームにより研削装置本体に取付固定されている。
【0027】
図2に示すように、第1エアノズル15、及び第2エアノズル17は、何れもウェハ5(チャックテーブル7)の回転中心を中心として形成される、測定点、即ち、非接触式厚みセンサ13によるウェハ5の厚みのセンシングポイントが属する円周上であって、且つウェハ5(チャックテーブル7)の回転方向(本実施形態では時計方向)上流側に、ウェハ5表面から所定の間隔を置いて配置されている。本実施形態では、第1エアノズル15、第2エアノズル17には、構成が同一のものが用いられる。
【0028】
即ち、第1エアノズル15、第2エアノズル17は、何れもライン状に並んでいる複数個の小径の円形孔(以下、「エア噴出し部」と表記することもある)を持ち、エアクリーナのような浄化機構(図示しない)を介してエア供給装置(図示しない)から所定圧力で供給されるクリーンエアを受ける。そして、該クリーンエアを、チャックテーブル7により一方向(時計方向)に回転するウェハ5表面上の上記円周を含む領域に向けて、上記各々の円形孔から噴出する。
【0029】
第2エアノズル17は、ライン状に並んでいる複数個の小径の円形孔が、上記円周の接線方向に沿うように配置される。一方、第1エアノズル15は、ライン状に並んでいる複数個の小径の円形孔が、上記円周の接線に対して直角でも平行でもない状態で、即ち、上記円周の接線との間で90°未満の角度、好ましくは45°前後の角度をなすように配置される。なお、第1エアノズル15、第2エアノズル17に、上記構成のものに代えて、矩形状を呈する小さな複数個の孔がライン状に配列されたエア噴出し部を有するものや、ライン状にエアを噴出するよう、例えばスリット形状を呈する1つの孔が形成されたエア噴出し部を有するもの等を用いても差支えない。また、チャックテーブル7については、1台若しくは複数台がターンテーブル(図示しない)上に回転自在に軸支されているものとする。
【0030】
図3は、研削水配管11を通じて研削水生成装置9からウェハ5表面に供給される研削水によってウェハ5表面上に形成される水膜19の平面形状と、第1エアノズル15と、第2エアノズル17と、非接触式厚みセンサ13との配置関係を示す説明図である。
【0031】
上述したように、第1エアノズル15(のライン状に並んでいる複数個の小径の円形孔を持つエア噴出し部)の長手方向が、上記円周の接線に対して45°前後の角度をなすように配置する理由、及び第2エアノズル17(のエア噴出し部)の長手方向が、上記円周の接線方向に沿うように配置する理由は、以下のようである。即ち、ウェハ5がチャックテーブル7によって図3の太線矢印方向(即ち、時計方向)に回転している状態で、ホイール砥石3がウェハ5表面に接触する前などに、研削水配管11を通じて研削水生成装置9から研削水がウェハ5表面に供給されると、その研削水がホイール砥石3に当らずにそのまま非接触式厚みセンサ13方に流入することがある。
【0032】
その結果として、ウェハ5表面に符号21で示すような形状の水膜19の領域(以下、単に「領域21」と表記する)が形成される。領域21のような形状を呈する水膜19がウェハ5表面に形成されると、第2エアノズル17だけで、非接触式厚みセンサ13の測定点23が属する上述した円周領域から、少なくとも非接触式厚みセンサ13によるウェハ5の厚みの測定が可能になる程度にまで、水膜19を除去し尽すことは困難な場合がある。また、研削加工工程において、例えばチャックテーブル7の回転数を変更したことにより、ウェハ5表面上に形成される水膜19が波打つこともあるが、この波打った状態の水膜19を、第2エアノズル17だけで、非接触式厚みセンサ13によるウェハ5の厚みの測定が可能になる程度にまで除去し尽すことは困難な場合がある。
【0033】
そこで、本発明者等は上記に鑑みて、ウェハ5表面の上方空間における非接触式厚みセンサ13の設置位置よりもウェハ5(チャックテーブル7)の回転方向上流側の位置に、構成が同一の2つの第1エアノズル15、第2エアノズル17を配置することを想到した。即ち、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転方向上流側に位置する第1エアノズル15については、水膜19の厚みを薄くする水膜薄化機構としての機能を持たせることとした。一方、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転方向下流側に位置する第2エアノズル17については、水膜薄化機構としての第1エアノズル15により薄くされた部分の水膜19を除去する、本来の水膜除去機構としての機能を持たせることとした。
【0034】
既に説明した内容から明らかなように、第1エアノズル15については、図3に示すように、その(エア噴出し部の)長手方向が、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転中心を中心として形成される、非接触式厚みセンサ13の測定点23の属する円周の接線に対し、略45°前後の角度を成すように配置されている。第1エアノズル15(のエア噴出し部)の長手方向を、上記接線に対し角度を付けて配置した理由は、水膜除去機構としての第2エアノズル17からのエアの噴出し幅よりも数倍の噴出し幅でエアを第1エアノズル15から水膜19に当てないと、第2エアノズル17の配置位置に対応するウェハ5表面の部位における水膜19の厚みを薄くすることができないからである。
【0035】
上記水膜19の厚みが一定値以上であると、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転によって生じる遠心力により、ウェハ5表面の中心側の水膜19が測定点23側へ移動することがある。そのため、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転に起因する遠心力によって、上記水膜19の移動が生じない程度の厚みにまで、水膜19の厚みを薄くする必要がある。本発明者等が実験を行った結果、第1エアノズル15を、その(エア噴出し部の)長手方向が、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転中心を中心として形成される、非接触式厚みセンサ13の測定点23の属する円周の接線に対し、略45°の角度、若しくは45°前後の角度を成すように配置するのが水膜19の薄化に最も効果的であることが確認された。
【0036】
第1エアノズル15を上記態様で配置することにより、第2エアノズル17による水膜19の除去が行われる前に、上記所定領域の水膜19の厚みを所定値以下にまで薄化することが可能になる。そのため、第2エアノズル17による、その後の水膜19の除去が容易になるから、非接触式厚みセンサ13によるウェハ5の厚みの測定が安定化する。
【0037】
一方、第2エアノズル17については、既に説明した内容から明らかなように、その(エア噴出し部の)長手方向が、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転中心を中心として形成される、非接触式厚みセンサ13の測定点23の属する円周の接線方向に沿うように配置されている。これは、第2エアノズル17を上記のように配置することで、第2エアノズル17のエア噴出し部(のライン状に並んでいる複数個の小径の円形孔)がウェハ5(チャックテーブル7)の回転方向に沿うようになるので、少量のエア噴出し量で、水膜19の無い帯状の領域を形成することが可能になるからである。換言すれば、第2エアノズル17のエア噴出し部が、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転方向に沿うように第2エアノズル7を配置することで、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転中心を中心として形成される、非接触式厚みセンサ13の測定点23の属する円周部分及びその近傍領域の水膜19のみを、効率的に除去することが可能になるからである。
【0038】
図4は、上述した第1エアノズル15、第2エアノズル17として用いられるエアノズルの正面若しくは背面から見た説明図、図5は、図4で示したエアノズルの側面から見た説明図である。
【0039】
図4に示すように、第1エアノズル15、第2エアノズル17として用いられるエアノズルは、上述したように、ライン状に並んでいる複数個の小径の円形孔(若しくは、矩形状を呈する小さな複数個の孔)からウェハ5表面(上の上記円周を含む領域)に向けてエアを噴出するよう、構成されている。上記エアノズルは、また、図5に示すように、ウェハ5表面に対し、略垂直にエアが噴出されるよう、エア噴出角度が設定されている。第1、第2エアノズル(15、17)からのエア噴出角度を、ウェハ5表面に対して所謂寝かした角度に設定すると、噴出されたエアの、ウェハ表面5に形成される水膜19に対する打撃力が低下し、それによって水膜19の除去力も低下する。
【0040】
しかし、第1、第2エアノズル(15、17)からのエア噴出角度を、ウェハ5表面に対して略垂直に設定すれば、ウェハ5表面における噴出されたエアが当る部分の水膜19は、図5に示すように、効果的に除去することが可能である。なお、第1エアノズル15、第2エアノズル17に、小径の円形孔、若しくは矩形状の孔が1個だけのエア噴出し部を有するものを用いた場合には、本実施形態におけるように、ライン状に並んでいる複数個の小径の円形孔(若しくは、矩形状を呈する小さな複数個の孔)を有するエア噴出し部を備えるものを用いる場合と比較して、大量のエアを必要とし、非効率である。
【0041】
図6は、ウェハ5表面における、非接触式厚みセンサ13の測定点23と、水膜除去機構として機能する第2エアノズル17のエア噴出部と、水膜除去領域との間の位置関係を示す説明図である。
【0042】
図6に示すように、ウェハ5がチャックテーブル7によって太線矢印方向に回転することで、ウェハ5表面には、第2エアノズル17のエア噴出部から噴出されるエアにより、白抜きで示す形状を呈する水膜除去領域25が形成される。この水膜除去領域25中には、既に説明したように、非接触式厚みセンサ13の測定点23が含まれている。
【0043】
上記構成において、ホイール砥石3は、スピンドル(図示しない)により正/逆方向に回転しながら下方に移動することで、ウェハ5表面に接触してウェハ5表面に研削加工を施す(この研削加工を、「インフィード加工」という)。この研削加工においてウェハ5表面に貯まった研削屑は、該研削屑の洗浄(除去)、及びウェハ5表面に生じる加工熱を冷却するために研削水配管9から供給される研削水によって除去される。研削水がウェハ5表面に供給されることにより、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転に起因する遠心力の作用により、ウェハ5表面には図2、及び図3に示した態様で水膜19が形成される。
【0044】
領域21に亘って形成される水膜19中の、ウェハ5(チャックテーブル7)の回転中心を中心として形成される、非接触式厚みセンサ13の測定点23の属する円周部分及びその近傍領域の水膜19については、まず、第1エアノズル15から噴出されるエアにより、所定の厚みにまで薄化される。次いで、この薄化された領域の水膜19が、第2エアノズル17から噴出されるエアにより、略完全に除去される。
【0045】
よって、非接触式厚みセンサ13による研削加工中のウェハ5の厚みの測定が、ウェハ5表面に形成される水膜19により妨害されることはなく、非接触式厚みセンサ13を使用して精度良くウェハ5の厚みを測定することが可能である。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るウェハの研削装置の、垂直方向から見たときの全体構成を示す説明図。
【図2】本発明の一実施形態に係るウェハの研削装置の、上方から見たときの全体構成を示す説明図。
【図3】研削水生成装置からウェハ表面に供給される研削水によってウェハ表面上に形成される水膜の平面形状と、各エアノズルと、非接触式厚みセンサとの配置関係を示す説明図。
【図4】第1、第2エアノズル(15、17)として用いられるエアノズルの正面若しくは背面から見た説明図。
【図5】図4で示したエアノズルの側面から見た説明図。
【図6】ウェハ表面における、非接触式厚みセンサの測定点と、水膜除去機構として機能する第2エアノズルのエア噴出部と、水膜除去領域との間の位置関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0048】
1 マウンタ
3 ホイール砥石
5 ウェハ
7 チャックテーブル
9 研削水生成装置
11 研削水配管
13 非接触式厚みセンサ
15 第1エアノズル
17 第2エアノズル
19 水膜
21 ウェハ表面に形成される水膜の領域
23 非接触式厚みセンサの測定点
25 水膜除去領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(5)を回転自在に保持すると共に、前記基板(5)の表面に所定の加工を施す基板表面加工装置において、
前記基板(5)の表面を洗浄・冷却するための洗浄・冷却液を供給する洗浄・冷却液供給機構(9、11)と、
前記基板(5)に対し非接触で、加工中の前記基板(5)の厚みを測定する厚み測定手段(13)と、
前記厚み測定手段(13)の設置位置より前記基板(5)の回転方向上流側に設置され、前記洗浄・冷却液供給機構(9、11)からの前記洗浄・冷却液によって前記基板(5)の表面に形成される液膜(19)を除去するための液膜除去機構(17)と、
を備え、
前記液膜除去機構(17)が、前記基板(5)の回転中心を中心とする円周であって、前記基板表面における前記厚み測定手段(13)の測定点(23)が属する円周の接線方向に沿ってライン状に気体を噴出す気体噴出孔を持つノズルである基板表面加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板表面加工装置において、
前記液膜除去機構(17)の設置位置より前記基板(5)の回転方向上流側に設置され、前記洗浄・冷却液供給機構(9、11)からの前記洗浄・冷却液によって前記基板(5)の表面に形成される液膜(19)の厚みを所定の厚みにまで薄化する液膜薄化機構(15)、
を更に備え、
前記液膜薄化機構(15)が、前記基板(5)の回転中心を中心とする円周であって、前記基板(5)表面における前記厚み測定手段(13)の測定点(23)が属する円周の接線と直角でも平行でもない角度をなす直線に沿ってライン状に気体を噴出す気体噴出孔を持つノズルである基板表面加工装置。
【請求項3】
請求項2記載の基板表面加工装置において、
前記円周の接線と前記直線とのなす角度が略45°若しくはその近傍値である基板表面加工装置。
【請求項4】
請求項1記載の基板表面加工装置において、
前記液膜除去機構(17)と前記液膜薄化機構(15)とは、構成が同一のノズルである基板表面加工装置。
【請求項5】
請求項1記載の基板表面加工装置において、
前記気体噴出孔が、ライン状に並設される複数の小径の円形孔である基板表面加工装置。
【請求項6】
請求項1記載の基板表面加工装置において、
前記気体噴出孔が、ライン状に並設される複数の小径の矩形状を呈する孔である基板表面加工装置。
【請求項7】
請求項1記載の基板表面加工装置において、
前記気体噴出孔が、スリット状を呈する1個の小径の孔である基板表面加工装置。
【請求項8】
請求項1記載の基板表面加工装置において、
前記気体噴出孔が、前記基板(5)表面に対し、略垂直に設定されている基板表面加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−237363(P2007−237363A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65730(P2006−65730)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(394018524)コマツ工機株式会社 (27)
【Fターム(参考)】