説明

塗工装置および塗工方法

【課題】 2層のカーテン塗工装置において塗工量のばらつきを減少させる。
【解決手段】 塗料をそれぞれ下方に向け噴出させる2個のカーテンヘッド1a、1bと、前記2個のカーテンヘッド1a、1bから噴出される塗料を、順番に積層して2層の塗料層を形成し、カーテンガイド2b部から該塗料層を塗料カーテンとしてウェブw面上に移行させるガイドシート2とを備えてなる塗工装置において、ウェブwの蛇行を検出する蛇行検出センサー6とウェブwへの塗工量を検出する厚み計7とを備え、カーテンヘッド1aは蛇行検出センサー6からの信号でウェブwの蛇行に合わせてウェブwの幅方向の位置が制御されるようになっており、カーテンヘッド1bは、両方のカーテンヘッド1a、1bからの塗工量の合計のばらつきが最小になるように厚み計7からの信号でカーテンヘッド1aとの相対的なウェブwの幅方向の位置が制御されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置および塗工方法に係り、特に2層のカーテン塗工を行う塗工装置および塗工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カタログなどに用いられる印刷用紙、感圧紙、感熱紙などの塗工紙はコータによって原紙であるウェブ(基材)上に塗料を塗布後、乾燥して生産される。このように塗料の塗布を行う機械を塗工機と称している。従来このような塗工機は、ウェブ上に過剰な塗料を一度塗った後に、ブレードや小径のロッドなどで掻き落したり、エアナイフによって吹き飛ばしたりして計量(メータリング)するポストメータリング方式を採用したブレードコータ、ロッドコータ、エアナイフコータなどが主流であった。しかしこのようなポストメータリング方式による塗工では、塗料をウェブに塗布するときの液圧やブレードなどの押付力などにより、塗料がウェブに多く浸透することや、ブレードやロッドなどの磨耗によるメンテナンス費用が高いということなどの問題がある。
そこで近年、走行するウェブ上にカーテンヘッド(塗料のカーテン膜を作るノズル付チャンバー)から塗料のカーテン膜を噴出しウェブ上に塗工するカーテンコータが広く採用されるようになってきた。カーテンコータは写真の印画紙などの分野では古くから用いられてきたが、高速時の空気の巻き込み、塗料に混入した泡、機械的精度不足による塗料カーテン膜の不安定さ等により塗工が安定しなかったため製紙業界では利用されていなかった。
本願出願人はこれらの問題を解決しカーテン塗工技術を安定技術として開発し、既に多数のカーテン塗工機を全世界に供給している。カーテン塗工機は従来のポストメータリング方式の塗工機と異なり、ブレードやロッドなどの消耗品が無いのでメンテナンスが楽である、塗工量を容易に精度高く調節できる、操作性がよい、輪郭塗工(Contour Coat)のため表面性改善の効果が高い、などの特長がある。
このようなカーテン塗工技術を用いて2層以上の塗料をウェブ上に塗工することが求められることがある。図6はかかる2層式カーテンコータの要部断面図である。図に示すように、矢印方向に搬送されるウェブwに対して、上方のカーテンヘッドa、bから塗料ta、tbを噴出し塗料カーテンca、cbを形成し、ウェブw面上に2層の塗工層sa、sbを形成する。
ところでこのようなカーテン式の塗工装置においては、ウェブwの搬送される速度が低速(たとえば、120m/min)である写真のフィルムなどの場合には、塗料カーテンca、cbの落下速度とフィルムの搬送速度に大差が無いため、塗工層saはフィルム面上に第1層として正常に形成され、塗工層sbは第1層の塗工層sa面上に第2層として正常に形成される。
しかしながら、このカーテン式の塗工装置を、紙材であるウェブwに適用した場合には、ウェブwの搬送速度が、300〜1800m/minと高速であり、塗料カーテンca、cbの落下速度は180m/min程度であるため大きな速度差がある。この場合、塗料カーテンcaはウェブw面上にウエット オン ドライ状態で到達するので、その間の摩擦係数が十分大きく、ウェブw面上に一様に引き伸ばされ、ムラのない一様な塗工層saが第1層として正常に形成される。一方、塗料カーテンcbは第1層の塗工層sa面上にウエット オン ウエット状態で到達するので、その間の摩擦係数が小さく、すべりが発生し、第1層の塗工層sa面上でうまく引き伸ばされずにムラを生じ、第2層の塗工層sbは正常に形成されない場合がある。
2層以上の塗料をウェブ上に塗工する他の方法が知られている。図7は特許文献1に開示された2層式の塗工装置の断面図である。図に示すように、2層式のカーテンヘッドcから塗料ta、tbを噴出し、重なり合った2層の塗料カーテンca、cbを形成し、図6と同様に走行するウェブw面上に2層の塗工層sa、sbを形成する。この場合に2層の塗料カーテンca、cbはウェブw面上にウエット オン ドライ状態で到達するので、その間の摩擦係数が十分大きく、ウェブw面上に一様に引き伸ばされ、ムラのない一様な塗工層sa、sbを形成する。
特許文献1によれば、2つの塗料ta、tbの組成が異なる場合、塗料カーテンの1つの層caの幅はウェブwの幅よりも広く、塗料カーテンの他の層cbの幅はウェブwの幅よりも狭くウェブwを溢れ出ない幅になっている。これにより、ウェブwの縁から溢れ出る液膜(塗料カーテン)caは単一層であるため、この溢れ出る塗料taを回収し、同一組成の層の液供給原料中に再循環することができる。なお、塗料カーテンは自由落下中に表面張力によって幅が縮小する。このためウェブwへ塗工する場合、カーテンの幅がウェブの幅と同等あるいはウェブの幅より狭い場合、ウェブの表面に塗工された塗工層の厚さは幅方向端部において厚くなる傾向があり、塗工層の厚さの均一性が保てない。そのため、カーテンの幅をウェブの幅より広くして、カーテンの一部をウェブから溢れさせ塗工層の厚さの均一性を保つようにする。
以上説明した特許文献1に開示された塗工装置において、ウェブwへの塗工中には塗料の回収にはなんら問題ない。しかし、運転開始の準備段階に問題が発生する。すなわち、一般に、塗工を始める前には、安定した塗料カーテンを形成するまで、ウェブを走行させないで、カーテンヘッドに塗料を供給し、しばらくの間塗料を噴出させておく。この間2つの塗料が混じり合うため、塗料を回収することができない。一方、図6に示す塗工装置においてはこのような問題はない。
本願出願人は上記2つの2層式カーテンコータの問題点を解決し、かつ、それぞれの長所を生かすため、鋭意研究をして新たな塗工装置を開発し、先に特許出願を行った(特願2005−71218(未公開))。
図8および図9は上記出願に開示された図面であり、図8(A)は上記塗工装置の部分側断面図、図8(B)は図8(A)のB矢視図である。図9(A)は上記塗工装置の操業中の部分側面図、図9(B)は運転準備中の部分側面図である。これらの図において、図6を用いて説明した2層式カーテンコータと同様の部分には同一の符号を付している。図8
(A)に示すように、上記出願発明の2層式カーテンコータは塗料ta、tbをそれぞれ下方に向け噴出させる2個のカーテンヘッド1a、1bと、前記2個のカーテンヘッド1a、1bからそれぞれ順次斜面2aに向かって噴出される塗料ta、tbを、該斜面2a上を移動させるに伴い順番に積層して2層の塗料層を形成し、該斜面2aの下端部の下向きのカーテンガイド部2bから該塗料層を塗料カーテンca、cbとしてウェブw面上に移行させるガイドシート2とを有している。このようにして走行するウェブw面上に2層の塗工層sa、sbを形成する。図8(B)に示すように、塗料カーテンcaの幅はウェブwの幅よりも狭く、塗料カーテンcbの幅はウェブwの幅よりも広い。3者の幅の関係がこのようになっているので、塗料taと塗料tbが異なる場合にも塗料の循環が問題なく行われる。また、ガイドシート2の幅は塗料カーテンcbの幅よりも広い。3はウェブwの両端から溢れた部分の塗料カーテンcbを受けて、循環させるカラーパンである。
このような2層式カーテンコータにおいて、塗工を始める前に安定した塗料カーテンを形成させるために、通紙しない状態でそれぞれのカーテンヘッドからしばらくの間塗料を噴出させておく。また、塗工が完了した後、カーテンヘッド内や塗料の循環系統内を洗浄するため水廻しをする。それらのやり方について図9を用いて説明する。図9(A)は塗工の操業中の塗工装置の部分側面図、図9(B)は塗工を始める前に塗料を噴出させている状態、または、塗工が完了した後水廻しをしている状態を示す塗工装置の部分側面図である。なお、図9(A)は図8とほぼ同じなので説明を省略する。これらの図において、4aはカーテンヘッド1aの塗料噴出幅よりも広い幅を有し、カーテンヘッド1aから噴出する塗料または水の全量を回収するカラーパンである。4bはカーテンヘッド1bの塗料噴出幅よりも広い幅を有し、カーテンヘッド1bから噴出する塗料または水の全量を回収するカラーパンである。図9(B)に示すように、塗工を始める前または塗工が完了した後にはカーテンヘッド1aおよびカーテンヘッド1bはそれぞれ矢印に示す方向に移動し、塗料カーテンca、cbまたは水カーテンをカラーパン4a、4bで受けるようにする。なお、この例ではカーテンヘッド1aおよびカーテンヘッド1bを移動しているが、カラーパン4a、4bを移動するようにしてもよい。
【特許文献1】特公昭62−47075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上説明した先の出願の2層式カーテンコータにおいて次のような問題がある。
(1)紙(ウェブ)の蛇行の問題がある。アンワインダに掛けられた紙の巻き取りロールから繰り出された紙に、繰り出した直後に塗工する場合にはほとんど蛇行の問題はない。しかし、紙の巻き取りロールから繰り出された紙に塗工し、それを一旦乾燥した後に、その上に塗工し、さらに乾燥させるような場合には、塗工した面が乾く前に固体を接触させることはできないので、紙に熱風を吹き付けて浮かせた状態で走行しつつ乾燥させるエアドライヤを使用することになるが、2度目の塗工のときには、紙は30mm程度蛇行しながら走行する場合がある。その場合紙の端部が塗工されない状態で通過してしまうことになりかねない。
(2)塗工量のばらつきの問題がある。カーテンヘッド1a、1bから噴出する塗料カーテンca、cbの流速や厚さには幅方向にある程度のばらつきがある。塗料カーテンca、cbのばらつきは塗工層sa、sbのばらつきになって現れてしまう。このばらつきは塗工条件(粘度や流量)が一定の状態では比較的安定している。そして塗料カーテンcaのばらつきと塗料カーテンcbのばらつきの山と山、谷と谷が一致してしまうと、ばらつきは増幅されることになるし、山と谷が一致すればばらつきは減少する。
本発明は先の出願の発明のかかる問題点を解決し、改良するために案出されたものであり、紙の蛇行に対応するとともに塗工層のばらつきを減少させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明の塗工装置は搬送されるウェブ面上に塗料を2層に塗布する塗工装置であって、任意の間隔をもって配設され、塗料をそれぞれ下方に向け噴出させる2個のカーテンヘッドと、前記2個のカーテンヘッドからそれぞれ順次斜面に向かって噴出される塗料を、該斜面上を移動させるに伴い順番に積層して2層の塗料層を形成し、該斜面の下端部の下向きのカーテンガイド部から該塗料層を塗料カーテンとしてウェブ面上に移行させるガイドシートと、ウェブへの塗工前にそれぞれのカーテンヘッドから噴出される全部の塗料を受けてそれぞれ別々に回収する塗料回収手段とを備えてなる塗工装置において、それぞれのカーテンヘッドはウェブの幅方向にシフト可能になっているとともに、カーテンヘッドからの塗料の噴出幅はともにウェブの幅よりも大きくなっており、ウェブの蛇行を検出する蛇行検出センサーとウェブへの塗工量を検出する厚み計とを備え、いずれか一方のカーテンヘッドは蛇行検出センサーからの信号でウェブの蛇行に合わせて幅方向の位置が制御されるようになっており、他方のカーテンヘッドは、両方のカーテンヘッドからの塗工量の合計のばらつきが最小になるように厚み計からの信号で一方のカーテンヘッドとの相対的な幅方向の位置が制御されるようになっている。
また、本発明の塗工方法は搬送されるウェブ面上に塗料を2層に塗布する塗工装置であって、任意の間隔をもって配設され、塗料をそれぞれ下方に向け噴出させる2個のカーテンヘッドと、前記2個のカーテンヘッドからそれぞれ順次斜面に向かって噴出される塗料を、該斜面上を移動させるに伴い順番に積層して2層の塗料層を形成し、該斜面の下端部の下向きのカーテンガイド部から該塗料層を塗料カーテンとしてウェブ面上に移行させるガイドシートと、ウェブへの塗工前にそれぞれのカーテンヘッドから噴出される全部の塗料を受けてそれぞれ別々に回収する塗料回収手段とを備えてなり、それぞれのカーテンヘッドはウェブの幅方向にシフト可能になっているとともに、カーテンヘッドからの塗料の噴出幅はともにウェブの幅よりも大きくなっており、ウェブの蛇行を検出する蛇行検出センサーとウェブへの塗工量を検出する厚み計とを備えてなる塗工装置において、蛇行検出センサーからの信号でウェブの蛇行に合わせていずれか一方のカーテンヘッドの幅方向の位置を制御し、両方のカーテンヘッドからの塗工量の合計のばらつきが最小になるように厚み計からの信号で他方のカーテンヘッドはの方のカーテンヘッドとの相対的な幅方向の位置を制御するものである。
つぎに本発明の塗工装置および塗工方法についてその作用を説明する。(1)それぞれのカーテンヘッドはウェブの幅方向にシフト可能になっていて、蛇行検出センサーからの信号でウェブの蛇行に合わせて幅方向の位置を制御しているので、塗料カーテンとウェブの幅方向の相対的な位置は常に一定に保たれていて、紙の端部が塗工されない状態で通過してしまうようなことは起こらない。(2)一方のカーテンヘッドに対して他方のカーテンヘッドをウェブの幅方向に相対的に少しずつ動かして厚み計で検出される塗工量の合計のばらつき量が最も少なくなる変位量を見出す。なお、ばらつき量が最も少ないという意味は、塗工量の最大値と最小値の差が最小であってもよいし、統計的に平均値に対する標準偏差が最も少ないということであってもよい。塗工量の厚み計は塗工前と塗工後ウェブの重量の差を検出するものであってもよく、検出ヘッドがウェブの幅方向にスキャニングしつつその位置の塗工量を検出するものが好ましい。検出ヘッドは放射線の投光器と受光器がセットになっていて、放射線がウェブを通過するときの減衰量を検知するものであってもよい。(3)2つのカーテンヘッドは別体になっており、それぞれのカーテンヘッドから噴出される全部の塗料を受けてそれぞれ別々に回収する塗料回収手段を有しているので、塗工前と塗工後の塗料の回収と水回しを問題なく行える。
【発明の効果】
【0005】
以上説明したように本発明の塗工装置および塗工方法は、紙が蛇行しても問題なく塗工できる、塗工量のばらつきを少なくできる、塗工前と塗工後の塗料の回収と水回しを問題なく行えるなどの優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下本発明の1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の塗工装置の側面図、図2は同じく平面図である。図3(A)は塗工の操業中の塗工装置の部分側面図、図3(B)は塗工を始める前に塗料を噴出させている状態、または、塗工が完了した後水廻しをしている状態を示す塗工装置の部分側面図である。これらの図において、従来技術の説明のために使用した図6ないし図9で示されたものと同様の部分については同一の符号を使用している。
これらの図に示すように、本発明の塗工装置は搬送されるウェブw面上に塗料を2層に塗布する塗工装置である。任意の間隔をもって配設され、塗料をそれぞれ下方に向け噴出させる2個のカーテンヘッド1a、1bを有している。2はガイドシートであって、前記2個のカーテンヘッド1a、1bからそれぞれ順次斜面2aに向かって噴出される塗料を、該斜面2a上を移動させるに伴い順番に積層して2層の塗料層を形成し、該斜面2aの下端部の下向きのカーテンガイド部2bから該塗料層を塗料カーテンca、cbとしてウェブw面上に移行させている。
塗料taと塗料tbは同じであり、塗料カーテンca、cbはともにウェブwよりも広い幅を有しており、図3(A)に示すようにウェブwの両端から溢れ出た部分の塗料カーテンca、cbはカラーパン3によって回収する。図3(B)に示すように、ウェブwへの塗工前には、それぞれのカーテンヘッド1a、1bから噴出される全部の塗料を受けてそれぞれ別々に回収する塗料回収手段を備えている。塗料回収手段はカーテンヘッド1aの塗料噴出幅よりも広い幅を有し、カーテンヘッド1aから噴出する塗料または水の全量を回収するカラーパン4aと、カーテンヘッド1bの塗料噴出幅よりも広い幅を有し、カーテンヘッド1bから噴出する塗料または水の全量を回収するカラーパン4bとを有してなり、カラーパン4a、4bで回収された塗料は図示しないポンプによってそれぞれの原料供給系統に戻される。図9(B)では運転準備段階の状態から運転段階に移るときにカーテンヘッド1a、1bをそれぞれ移動するものとして説明したが、図3(B)ではガイドシート2のみを移動することにした。
それぞれのカーテンヘッド1a、1bはウェブwの幅方向にシフト可能になっている。すなわち、カーテンヘッド1a、1bはシフト部5を有している。シフト部5はレール5aとレール5aと係合する吊持部5bとを有し、アクチュエータ11によって駆動される。アクチュエータ11は油圧シリンダや電動シリンダなどがよい。6はウェブwの蛇行を検出する蛇行検出センサーである。蛇行検出センサー6はたとえばCCDカメラを用いてウェブの一端の位置を検出するものであってもよい。
7はウェブwへの塗工量を検出する厚み計である。塗工量の厚み計7は塗工前のウェブwの重量を検出する厚み計7aと塗工後のウェブwの重量を検出する厚み計7bと、それらの差を計算する演算器8とからなり、演算器8の出力が塗工量を表している。厚み計7は検出ヘッドがウェブの幅方向にスキャニングしつつその位置の塗工量を検出するものである。検出ヘッドは放射線の投光器と受光器がセットになっていて、放射線がウェブを通過するときの減衰量を検知することによってウェブの重量を検出する。
蛇行検出センサー6からの信号はコントローラ10に送られ、そこからの制御信号がカーテンヘッド1a、1bのアクチュエータ11a、11bに送られ、カーテンヘッド1a、1bをウェブの蛇行に合わせて幅方向の位置を制御するようになっている。
演算器8の出力はコントローラ9に送られ、そこからの制御信号がカーテンヘッド1bのアクチュエータ11bに送られる。すなわち、アクチュエータ11bはコントローラ10からの制御信号とコントローラ9からの制御信号の両方を受けて、カーテンヘッド1bをカーテンヘッド1aに対して相対的に位置を変位させる。この変位量は両方のカーテンヘッド1a、1bからの塗工量の合計のばらつきが最小になるように制御される。
塗工量の合計のばらつきが最小になるように制御するには、一方のカーテンヘッドに対して他方のカーテンヘッドをウェブの幅方向に相対的に少しずつ動かして厚み計で検出される塗工量の合計のばらつき量が最も少なくなる変位量を見出すようなプログラムをコントローラ9に組み込んでおき、このプログラムに演算器8からの信号を入力し、それにたいしてプログラムがコントローラ9の出力を決める。また、両方のカーテンヘッド1a、1bの一方を止めて、それぞれ別々に塗工を行って、それぞれのばらつきの状態を検出し、計算によって最適の変位量を算出するようにしてもよい。
図2において、ウェブwの中立位置は実線で示され、蛇行位置が点線で示されており、xは中立位置と蛇行位置との間の距離である。また、カーテンヘッド1aの中立位置は実線で示され、アクチュエータ11aによって移動した状態は点線で示されている。この移動量はxに等しい。カーテンヘッド1bの中立位置は実線で示され、アクチュエータ11bによって移動した状態は点線で示されている。アクチュエータ11bにはコントローラ9からとコントローラ10からの両方の信号が送られ、カーテンヘッド1bはカーテンヘッド1aに対して相対的にyだけずれている。カーテンヘッド1bの塗料の噴出幅はウェブwの幅よりの十分大きいのでyだけずれていても、塗料カーテンcbの端部がウェブwの端部の内側になってしまい塗り残しが出るようなことはない。
次に本実施形態の作用を説明する。(1)それぞれのカーテンヘッド1a、1bはウェブwの幅方向にシフト可能になっていて、蛇行検出センサー6からの信号でウェブの蛇行に合わせてウェブwの幅方向の位置を制御しているので、塗料カーテンca、cbとウェブwの幅方向の相対的な位置は常に一定に保たれていて、紙の端部が塗工されない状態で通過してしまうようなことは起こらない。(2)カーテンヘッド1aに対してカーテンヘッド1bをウェブwの幅方向に相対的に少しずつ動かして厚み計7で検出される塗工量の合計のばらつき量が最も少なくなる変位量を見出す。(3)2つのカーテンヘッド1a、1bは別体になっており、それぞれのカーテンヘッド1a、1bから噴出される全部の塗料を受けてそれぞれ別々に回収する塗料回収手段4a、4bを有しているので、塗工前と塗工後の塗料の回収と水回しを問題なく行える。
塗工量のばらつきについて具体的に説明する。図4は塗工量のばらつきを示すグラフである。(A)は第1層saの塗工量のばらつき、(B)は第2層sbの塗工量のばらつきをそれぞれ示している。(C)はカーテンヘッド1aとカーテンヘッド1bをシフトしないで重ね合わせた状態を示しており、(D)はカーテンヘッド1bをカーテンヘッド1aに対して左にシフトさせた状態で重ね合わせた状態を示している。(D)のほうが(C)よりも山と谷が重なり合う割合が多く、合計の塗工量のばらつきは(D)のほうが小さい。図5は塗工量のばらつきを数値的に示した表である。図において上部枠内の数値は第1層saの塗工量、下部枠内の数値は第2層sbの塗工量、枠の下方の数値は合計の塗工量をそれぞれ示している。また、点線はウェブwの位置を示している。(A)はカーテンヘッド1aとカーテンヘッド1bをシフトしないで重ね合わせた状態を示しており、(B)はカーテンヘッド1bをカーテンヘッド1aに対して右にシフトさせた状態で重ね合わせた状態を示しており、(C)はカーテンヘッド1bをカーテンヘッド1aに対して左にシフトさせた状態で重ね合わせた状態を示している。この例では(A)と(C)は合計の塗工量の最大値と最小値の差は0.3であるのに対し、(B)は合計の塗工量の最大値と最小値の差は0.2であり、(B)が最もよいことが分かる。
本発明は、以上述べた実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。たとえば、塗工量の合計を計測する厚み計として塗工前と塗工後ウェブの重量の差を検出するものについて説明したが、塗料中の特定の成分の量を検出するタイプのものを使用すれば、塗工後に1台使用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の塗工装置の側面図である。
【図2】本発明の塗工装置の平面図である。
【図3】本発明の塗工装置の部分側面であり、(A)は塗工の操業中の状態を示し、(B)は塗工の準備中の状態を示している。
【図4】塗工量のばらつきを示すグラフである。
【図5】塗工量のばらつきを数値的に表した表である。
【図6】従来の2層式カーテンコータの要部断面図である。
【図7】従来の2層式カーテンコータのカーテンヘッドの断面図である。
【図8】先の出願の2層式カーテンコータの図面で、(A)は要部断面図であり、(B)は(A)のB矢視図である。
【図9】先の出願の塗工装置の部分側面であり、(A)は塗工の操業中の状態を示し、(B)は塗工の準備中の状態を示している。
【符号の説明】
【0008】
1a カーテンヘッド
1b カーテンヘッド
2 ガイドシート
4a 塗料回収手段(カラーパン)
4b 塗料回収手段(カラーパン)
5 シフト部
6 蛇行検出センサー
7 厚み計
w ウェブ(紙)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるウェブ面上に塗料を2層に塗布する塗工装置であって、任意の間隔をもって配設され、塗料をそれぞれ下方に向け噴出させる2個のカーテンヘッドと、前記2個のカーテンヘッドからそれぞれ順次斜面に向かって噴出される塗料を、該斜面上を移動させるに伴い順番に積層して2層の塗料層を形成し、該斜面の下端部の下向きのカーテンガイド部から該塗料層を塗料カーテンとしてウェブ面上に移行させるガイドシートと、ウェブへの塗工前にそれぞれのカーテンヘッドから噴出される全部の塗料を受けてそれぞれ別々に回収する塗料回収手段とを備えてなる塗工装置において、それぞれのカーテンヘッドはウェブの幅方向にシフト可能になっているとともに、カーテンヘッドからの塗料の噴出幅はともにウェブの幅よりも大きくなっており、ウェブの蛇行を検出する蛇行検出センサーとウェブへの塗工量を検出する厚み計とを備え、いずれか一方のカーテンヘッドは蛇行検出センサーからの信号でウェブの蛇行に合わせて幅方向の位置が制御されるようになっており、他方のカーテンヘッドは、両方のカーテンヘッドからの塗工量の合計のばらつきが最小になるように厚み計からの信号で一方のカーテンヘッドとの相対的な幅方向の位置が制御されるようになっていることを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
搬送されるウェブ面上に塗料を2層に塗布する塗工装置であって、任意の間隔をもって配設され、塗料をそれぞれ下方に向け噴出させる2個のカーテンヘッドと、前記2個のカーテンヘッドからそれぞれ順次斜面に向かって噴出される塗料を、該斜面上を移動させるに伴い順番に積層して2層の塗料層を形成し、該斜面の下端部の下向きのカーテンガイド部から該塗料層を塗料カーテンとしてウェブ面上に移行させるガイドシートと、ウェブへの塗工前にそれぞれのカーテンヘッドから噴出される全部の塗料を受けてそれぞれ別々に回収する塗料回収手段とを備えてなり、それぞれのカーテンヘッドはウェブの幅方向にシフト可能になっているとともに、カーテンヘッドからの塗料の噴出幅はともにウェブの幅よりも大きくなっており、ウェブの蛇行を検出する蛇行検出センサーとウェブへの塗工量を検出する厚み計とを備えてなる塗工装置において、蛇行検出センサーからの信号でウェブの蛇行に合わせていずれか一方のカーテンヘッドの幅方向の位置を制御し、両方のカーテンヘッドからの塗工量の合計のばらつきが最小になるように厚み計からの信号で他方のカーテンヘッドの一方のカーテンヘッドとの相対的な幅方向の位置を制御することを特徴とする塗工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−125463(P2007−125463A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318581(P2005−318581)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(300080412)ボイス ペ−パ− パテント ゲ−エムベ−ハ− (25)
【Fターム(参考)】