塗布、現像装置、塗布、現像方法及び記憶媒体
【課題】基板に化学増幅型のレジストを塗布し、その基板に液浸露光が行われた後で現像処理を行い、良好な形状のレジストパターンを得ること。
【解決手段】化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する塗布モジュールと、液浸露光により前記レジスト膜が露光された後、前記基板に酸を供給するための処理ガスを吐出するガス吐出部と、基板に吐出された余剰な前記処理ガスを除去するための排気部と、を備えたガス処理モジュールと、前記レジスト中に発生した酸により触媒反応を起こして露光領域の現像液に対する溶解性を変化させるために前記処理ガスが供給された基板を加熱する加熱モジュールと、前記加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成するための現像モジュールと、を備えるように塗布、現像装置を構成し、基板に残留した液体に酸を補充する。
【解決手段】化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する塗布モジュールと、液浸露光により前記レジスト膜が露光された後、前記基板に酸を供給するための処理ガスを吐出するガス吐出部と、基板に吐出された余剰な前記処理ガスを除去するための排気部と、を備えたガス処理モジュールと、前記レジスト中に発生した酸により触媒反応を起こして露光領域の現像液に対する溶解性を変化させるために前記処理ガスが供給された基板を加熱する加熱モジュールと、前記加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成するための現像モジュールと、を備えるように塗布、現像装置を構成し、基板に残留した液体に酸を補充する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に化学増幅型のレジストを塗布し、液浸露光後そのレジストに現像を行う塗布、現像装置、塗布、現像方法及び記憶媒体に関する。
【0002】
半導体製造工程の一つであるフォトレジスト工程においては、半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面にレジストを塗布し、このレジストを所定のパターンで露光した後に現像してレジストパターンを形成している。このような処理は、一般にレジストの塗布、現像を行う塗布、現像装置に、露光装置を接続したシステムを用いて行われる。
【0003】
また、前記レジストとしては溶解抑止基が結合することで現像液に不溶に構成された樹脂及び光酸発生剤(PAG)を含む化学増幅型のポジレジストが主流として用いられている。このレジストは露光されることで光酸発生剤(PAG)から酸(H+)を生じ、さらにPEBと呼ばれる加熱処理を受けることにより、その酸が熱拡散して酸触媒反応が起こり、連鎖的に樹脂から溶解抑止基を外す(脱保護)。それによって当該レジストにおいて露光されてない領域が現像液に対して不溶領域として維持される一方で、露光された領域が現像液に可溶となる。また、露光された領域に光酸発生剤から酸が発生して、酸触媒反応によって前記ポジレジストとは逆に露光された領域を現像液の可溶領域から不溶領域へと変化させる化学増幅型のネガ型レジストが用いられる場合もある。
【0004】
近年は上記レジストパターンの線幅の微細化が進み、例えば45nmの線幅のパターンを形成することが目標となっており、それを実現するためのリソグラフィ技術として例えば液浸露光プロセスの開発が進められている。液浸露光について簡単に説明すると、図10(a)に示すように露光手段1の露光レンズ11とウエハWとの間に例えば純水からなる液膜12を形成し、そして図10(b)に示すように露光手段1を横方向に移動させて次の転写領域(ショット領域)11Aに対応する位置に当該露光手段1を配置し、光を照射する動作を繰り返すことにより、レジスト膜14に所定の回路パターンを転写する露光方式である。図中13A,13Bは、夫々液膜12を形成するための液供給路、排液路である。また、転写領域11Aは実際よりも大きく示している。
【0005】
液浸露光はレジスト膜表面にトップコート(TC)と呼ばれる撥水性の保護膜を形成して行われる場合もあるが、スループット向上を図るためにこの保護膜を形成しなくても液浸露光を適用できるレジストの導入が検討されている。しかし液浸露光後にウエハW表面上には液膜12の形成に用いた液滴10が残留する場合があり、図11(a)に示すように前記化学増幅型のポジ型のレジスト膜14の表面に液滴10が残ると、その液滴10を構成する液体がレジスト膜14に浸透すると共にレジスト膜14の極表面に含まれる酸、添加剤、ソルベント及びPAGなどが当該液滴10中に溶出し、その結果として液滴10下のレジスト膜の表層領域にウォータマークと呼ばれる染みとなる領域15が出現する(図11(b))。
【0006】
このようにウォータマークが形成された表層領域15は、PEB前に液滴10が除去されても、PEB処理時における酸濃度が低く、上述の酸触媒反応が、他の領域に比べて相対的に起こり難い不活性領域として残る(図11(c))。なお図中14A、14Bは夫々レジスト膜14の露光部分、未露光部分である。
【0007】
上記のように酸触媒反応が不活性な表層領域15が形成されたウエハWがPEB処理を受けると、この表層領域15においては上述した樹脂の脱保護反応率が他の領域に比べて低くなるため、図11(d)に示すように、表層領域15以外の領域においてはPEBにより露光部分14A、未露光部分14Bが夫々現像液に対する可溶領域16A、不溶領域16Bとなるように潜像が形成されるが、表層領域15においては露光部分14Aであっても現像液に対する不溶領域16Bとして潜像が形成されることになる。
【0008】
その結果として図11(e)に示すように現像後、表層領域15は未解像となり、ウエハWの極表面に現像欠陥18が発生する。観察される現像欠陥18としては、液滴10の形をそのままレジスト膜14に投影した大きな円形のものから、パターン17上部に形成される非常に小さなラインブリッジまで多種多様であるが、傾向としてクリーンルーム雰囲気中のアミンなどがレジストに作用した場合に発生するような、パターン17間の壁部の上部が横方向に張り出したT−topと呼ばれる形状や、図11(e)に示すように前記壁部の上部同士がつながるような形状のものが発生しやすい。ポジ型レジストについて説明してきたが、ネガ型レジストについても現像により本来現像液に不溶となる領域が可溶のまま残り、パターンが正常に形成されないおそれがある。
【0009】
特許文献1にはこのような現像欠陥の発生を防ぐために液浸露光後にウエハに残留した液滴に酸をスプレーすることが記載されている。そのスプレーを行う手法について具体的な記載は示されていないが、普通に液滴に向けてスプレーを行えば液滴の周囲もスプレーされてしまうことが避けられず、従って液滴が付着した以外の箇所にも酸が供給されてしまうと考えられる。そうなるとレジスト膜において酸が過剰になる領域が発生し、レジスト膜が変質してPEB及び現像処理を行ったときにパターンが正常に形成できなくなるおそれがある。
【0010】
【特許文献1】特開2007−102180(段落0031)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、基板に化学増幅型のレジストを塗布し、その基板に液浸露光が行われた後で現像処理を行い、良好な形状のレジストパターンを得ることができる塗布、現像装置、塗布、現像方法及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表面露光装置は、露光されることにより酸発生剤から酸を生じる化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する塗布モジュールと、
前記レジスト膜が基板表面に光を透過する液膜を形成した状態で露光される液浸露光により露光された後、前記基板に酸を供給するための処理ガスを吐出するガス吐出部と、基板に吐出された余剰な前記処理ガスを除去するための排気部と、を備えたガス処理モジュールと、
前記レジスト中に発生した酸により触媒反応を起こして露光領域の現像液に対する溶解性を変化させるために前記処理ガスが供給された基板を加熱する加熱モジュールと、
前記加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成するための現像モジュールと、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
前記レジストは例えば露光された領域が現像液に溶解されるポジ型のレジストであり、また加熱モジュールにて加熱処理を行う前に、前記ガス処理モジュールにより処理された基板表面に洗浄液を供給して、前記液浸露光により残留した液体を除去するための洗浄部が設けられていてもよく、その場合前記ガス処理モジュールは、筐体を備え、その筐体内に前記洗浄部が設けられていてもよい。
【0014】
本発明の塗布、現像方法によれば、塗布モジュールにより露光されることにより酸発生剤から酸を生じる化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する工程と、
ガス処理モジュールのガス吐出部により前記レジスト膜が基板表面に光を透過する液膜を形成した状態で露光される液浸露光により露光された後、前記基板に酸を供給するための処理ガスを吐出する工程と、
ガス処理モジュールの排気部により基板に吐出された余剰な前記処理ガスを除去する工程と、
加熱モジュールにより前記レジスト中に発生した酸により触媒反応を起こして露光領域の現像液に対する溶解性を変化させるために前記処理ガスが供給された基板を加熱する工程と、
現像モジュールにより前記加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の記憶媒体は、露光された領域に含まれる酸発生剤から酸を生じ、露光後加熱されることで前記酸がその露光された領域の現像液に対する溶解性を変化させる触媒反応を起こす化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する塗布モジュールと、前記酸触媒反応を起こすための加熱モジュールと、その加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成するための現像モジュールと、を備えた塗布、現像装置に用いられるコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上述の表面露光方法を実施するためのものであることを特徴とする記憶媒体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、化学増幅型のレジスト膜が形成され、そのレジスト膜が液浸露光された後の基板表面に酸を供給するための処理ガスを吐出するガス吐出部と、基板表面の余剰な処理ガスを除去するための排気部と、を備えているため、基板に表面に液体が付着し、その液体下のレジスト表面にウォータマークが形成され、当該ウォータマークが形成された領域が酸の濃度が低い不活性領域となっていても、処理ガスにより基板表面に付着した液体に酸が供給されることでその液体中の酸の濃度が上昇する。そして液体の酸性度が高くなる結果として、その液体からその液体下のレジスト膜の表面領域に酸が浸出し、前記不活性領域に選択的に酸が補填され、当該不活性領域が消滅する。それによって液浸露光後の加熱処理時に前記表面領域の酸の濃度がレジスト膜の他の領域に比べて低くなることが抑えられる。従ってウォータマークが形成された領域で酸触媒反応が不活性となることが抑えられ、現像欠陥の発生を抑えることができる。
また、この手法によれば液浸露光後、基板に残留した液体に酸をスプレーするような手法と異なり、レジスト膜において酸濃度が低くなった前記液体下の表面領域以外の領域に酸が供給されることが抑えられるので、過剰に酸が供給される領域が発生することが抑えられる。この点からも良好なレジストパターンの形状を得ることができると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る塗布・現像装置に露光装置を接続したシステムの全体構成について図1及び図2を参照しながら簡単に説明する。図1及び図2中B1は基板例えば25枚密閉収納されたキャリアCを搬入出するためのキャリアブロックであり、キャリアCを複数個並べて載置可能な載置部21を備えたキャリア搬入部22と、載置部21から見て前方の壁面に設けられる開閉部23と、開閉部23を介してキャリアCからウエハWを取り出すための搬送手段A1とが設けられている。
【0018】
キャリアブロックB1の奥側には筐体24にて周囲を囲まれる処理ブロックB2が接続されており、この処理ブロックB2には手前側から順に加熱・冷却系のモジュールを多段化した棚ユニットU1,U2,U3と、後述する処理モジュール間のウエハWの受け渡しを行う主搬送手段A2,A3と、が交互に配列して設けられている。即ち、棚ユニットU1,U2,U3及び主搬送手段A2,A3はキャリアブロックB1側から見て前後一列に配列されると共に、各々の接続部位には図示しないウエハ搬送用の開口部が形成されており、ウエハWは処理ブロックB2内を一端側の棚ユニットU1から他端側の棚ユニットU3まで自由に移動できるようになっている。
【0019】
また主搬送手段A2,A3は、キャリアブロックB1から見て前後方向に配置される棚ユニットU1,U2,U3側の一面部と、後述する例えば右側の液処理モジュールU4,U5側の一面部と、左側の一面をなす背面部とで構成される区画壁25により囲まれる空間内に置かれており、予め設定された一連のモジュールの間を順番にサイクリックに移動するサイクル搬送を行い、これによりウエハが順番に移動していくことになる。また図中26、27は各モジュールで用いられる処理液の温度調節装置や温湿度調節用のダクト等を備えた温湿度調節モジュールである。
【0020】
液処理モジュールU4,U5は、例えば図2に示すように塗布液(レジスト液)や現像液といった薬液供給用のスペースをなす収納部28の上に、塗布モジュールCOT、現像モジュールDEV及び反射防止膜形成モジュールBARC等を複数段例えば5段に積層した構成とされている。塗布モジュールCOTは背景技術の欄で説明したようにPAGなどを含む化学増幅型のポジレジスト(以下単にレジストと呼ぶ)をウエハWに塗布するモジュールである。反射防止膜形成モジュールBARCは反射防止膜を形成する薬液をウエハWに塗布する。現像モジュールDEVは現像液をウエハWに供給して現像処理を行う。
【0021】
また上述の棚ユニットU1,U2,U3は、液処理モジュールU4,U5にて行われる処理の前処理及び後処理を行うための各種モジュールを複数段例えば10段に積層した構成とされており、ウエハWを加熱(ベーク)する加熱モジュール、ウエハWを冷却する冷却モジュール等を含んでいる。また、棚ユニットU1にはキャリアブロックB1と処理ブロックB2との間でウエハWを受け渡すための不図示の受け渡しモジュール及びウエハWに疎水化処理を行うための疎水化処理モジュールが、棚ユニットU3には処理ブロックB2とインターフェイスブロックB3との間でウエハWの受け渡しを行うための受け渡しモジュール29及びPEBが夫々複数含まれている。
【0022】
PEBは背景技術の欄で説明したように露光後のウエハWを加熱する加熱モジュールであり、ウエハWに形成されたレジスト膜において後述の露光装置B4で露光された領域において液浸露光によりレジストの酸発生剤から産生した酸を熱拡散させ、その酸によって酸触媒反応を引き起こし、前記露光領域を現像液に対して可溶にする。
【0023】
前記処理ブロックB2における棚ユニットU3の奥側には、インターフェイスブロックB3を介して露光装置B4が接続されている。以下、インターフェイスブロックB3について図3を参照しながら説明する。インターフェイスブロックB3は、処理ブロックB2と露光装置B4との間の前後に設けられる第1の搬送室31、第2の搬送室32により構成されており、夫々にウエハ搬送手段A4及びウエハ搬送手段A5が設けられている。ウエハ搬送手段A4、A5は鉛直軸回りに回転自在、昇降自在且つ進退自在に構成されており、ウエハ搬送手段A4はさらにガイド33に沿って横方向に移動自在構成されている。
【0024】
第1の搬送室31にはウエハ搬送手段A4を挟んでキャリアブロックB1側から見た左側には、ウエハWの周縁部のみを選択的に露光するための周縁露光部(WEE)34と、後述するガス処理モジュール4にて洗浄及び乾燥処理したウエハWを待機させておくための待機モジュール35と、露光装置B4に搬送するまでのウエハWを一時的に収納して待機させるためのバッファモジュール(BM)とが、例えば上下に設けられている。同じく右側には受け渡しモジュール36と、例えば冷却プレートを有する高精度温度調整モジュール(ICPL)とが上下に積層されて構成された棚ユニットU6が設けられている。第2の搬送室32において、キャリアブロックB1側から見ての左側には、液浸露光後にウエハWの表面を洗浄するガス処理モジュール4が設けられている。ガス処理モジュール4の構成については後述する。
【0025】
露光装置B4はインターフェイスブロックB3から搬入されたウエハWが載置される搬入ステージ38と、インターフェイスブロックB3へ払い出されるウエハWが載置される搬出ステージ39と、を備えており、搬入ステージ38に載置されたウエハWは露光装置B4内の所定の場所で背景技術の欄で説明した液浸露光処理を受け、その後搬出ステージ39に載置される。
【0026】
搬送手段A4は棚ユニットU3の各モジュールと、棚ユニットU6の各モジュールと、WEE34と、待機モジュール35と、バッファモジュールBMとの間でウエハWの受け渡しを行うことができるように構成されており、また搬送手段A5は、棚ユニットU6の各モジュールと、高精度温度調整モジュールICPLと、露光装置B4の搬入ステージ38と、搬出ステージ39との間でウエハWを受け渡すことができるように構成されている。
【0027】
続いてガス処理モジュール4について図5及び図6を参照しながら説明する。図5、図6は夫々当該モジュール4の縦断側面図、横断平面図である。図中41は筐体であり、筐体41の側壁にはシャッタ42により開閉自在な搬送口43が設けられている。図中44は基板保持部をなすスピンチャックであり、真空吸着によりウエハWを水平に保持するように構成されている。このスピンチャック44は駆動部45により鉛直軸回りに回転でき、且つ搬送手段A5との間でウエハを受け渡すために昇降できるようになっている。
【0028】
また、スピンチャック44の周囲にはウエハWからスピンチャック44に跨る側方部分を囲むカップ45が設けられている。カップ45の底部は互いに連通する外側部46A、内側部46Bに区画されており、外側部46Aの底面には排液を行うためのドレイン管47が接続されている。内側部46Bの底面には環状に排気口48が開口し、排気口48には排気管49の一端が接続されている。この排気口48及び排気管49はウエハWに供給された余剰な処理ガスを除去するための排気部を構成する。
【0029】
ガス処理モジュール4は、後述する処理ガスをウエハWに吐出するガス吐出ノズル51Aと、ウエハWに付着した液滴を除去するための洗浄液例えば純水をウエハWに吐出する洗浄液吐出ノズル51Bと、を備えている。ガス吐出ノズル51A、洗浄液吐出ノズル51Bは夫々鉛直下方に開口したガス供給口52A、液供給口52Bを夫々備えている。ガス吐出ノズル51A、洗浄液吐出ノズル51Bには夫々ガス供給管53Aの一端、液供給管53Bの一端が接続されている。ガス供給管53Aの他端はバルブやマスフローコントローラなどを含んだガス供給機器系54Aを介して処理ガスが貯留されたガス供給源55Aに接続されている。液供給管53Bの他端はバルブやマスフローコントローラなどを含んだ液供給機器系54Bを介して洗浄液が貯留された洗浄液供給源55Bに接続されている。
【0030】
ガス供給系54A、液供給系54Bが後述の制御部100からの制御信号を受けることにより、夫々ガス吐出ノズル51A、洗浄液吐出ノズル51BからウエハWへの処理ガス、洗浄液の給断が制御される。前記処理ガスは酸(H+)を含んでおり、塗布、現像装置の作用で説明するようにレジスト膜に付着した液滴に溶解して、液滴中のH+の濃度を高めることで、レジスト膜におけるその液滴下の表面領域に、当該液滴に溶出することで減少した酸を補填する。
【0031】
図5に示すようにガス吐出ノズル51A、洗浄液吐出ノズル51Bは夫々アーム55A、55Bを介して駆動部56A、56Bに接続されており、駆動部56A、56Bは横方向に水平に伸びたガイドレール57に係止され、このガイドレール57に沿って移動する。駆動部56A、56Bの移動に従ってガス吐出ノズル51A、洗浄液吐出ノズル51Bは、カップ45の外側に設けられたガス吐出ノズル51A及び洗浄液吐出ノズル51Bの待機領域58からスピンチャック44に載置されたウエハWの中心上に移動し、そのウエハW中心に夫々処理ガス、洗浄液を供給することができるようになっている。
【0032】
続いて制御部100について説明する。制御部100は、例えばコンピュータからなり、不図示のプログラム格納部を有している。このプログラム格納部には、後述の作用で説明する塗布、現像処理が行われるように命令が組まれた例えばソフトウエアからなるプログラムが格納され、このプログラムが制御部100に読み出されることで、制御部100は後述するように各搬送手段の動作、液処理モジュールにおけるウエハWへの処理液の供給、加熱、冷却モジュールにおけるウエハWの加熱、冷却処理などを制御する。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカードなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
【0033】
続いて上述の塗布、現像装置における作用について図6のフローチャートを参照しながら説明する。先ず外部からウエハWが収納されたキャリアCが載置部21に載置されると、開閉部23と共にキャリアCの蓋体が外されてキャリアブロックB1の搬送手段A1によりウエハWが取り出される。そしてウエハWは棚ユニットU1の受け渡しモジュール(図示せず)を介して処理ブロックB2の主搬送手段A2へと受け渡され、その主搬送手段A2により棚ユニットU1の疎水化処理モジュールに搬送されて疎水化処理を受けた後、棚ユニットU1またはU2の一の棚をなす冷却モジュールに搬送されて冷却され、続いて塗布モジュールCOTに搬送され、レジストの塗布処理を受けてレジスト膜Rが形成される(ステップS1)。なお、レジスト塗布処理の前処理として、疎水化処理モジュールによる疎水化処理を行う代わりに反射防止膜形成モジュールBARCにて反射防止膜形成処理を行う場合もある。
【0034】
レジスト膜Rが形成されたウエハWは棚ユニットU1〜U3の一の棚をなす加熱モジュールで加熱処理され、更に棚ユニットU1〜U3の一の棚をなす冷却モジュールで冷却された後、棚ユニットU3の受け渡しモジュール29を経由してインターフェイスブロックB3へと搬入される。このインターフェイスブロックB3においてウエハWは搬送手段A4によってバッファモジュールBM→高精度温度調整ユニットICPLと搬送され、ICPLにて温度調整されたウエハWは搬送手段A5によって露光装置B4の搬入ステージ38に搬送される。その後、ウエハWは露光装置B4内の所定の場所へ搬送され、背景技術の欄で説明したようにレジスト膜R上に例えば純水の液層が形成されて、当該レジスト膜Rがその液層を介して所定のパターンに沿って液浸露光を受ける(ステップS2)。
【0035】
液浸露光が終わったウエハWは搬出ステージ39に載置され、搬送手段A5によりガス処理モジュール4内に搬送される。以下、このガス処理モジュール4における処理工程を示した図7及びレジスト膜Rの様子を示した図8及び図9も参照しながら説明する。図8(a)に示すように液浸露光終了後レジスト膜R上には、液浸露光を行うために用いた液体例えば純水の液滴Dが残留している。そして、その液滴Dの下方のレジスト膜R表面からは、そこに含まれるH+が液滴Dへと溶出し、図8(b)に示すようにその表面は酸触媒反応が起こり難い不活性領域63となっている。図中61、62は夫々レジスト膜Rの露光領域、未露光領域である。
【0036】
ガス処理モジュール4にウエハWが搬送されると、スピンチャック44が上昇してそのウエハWの裏面中央部を保持し、ウエハWを保持したままスピンチャック44が下降して、ウエハWがカップ45内に収まる。続いてガス吐出ノズル51AがウエハWの中心部上に移動し(図7(a))、処理ガスがウエハWの中心部に供給される。ウエハWに供給された処理ガスはカップ45内の排気口48からの排気により図7(b)に矢印で示すようにウエハWの中心部からその周縁部へと向かって流れる気流を形成する(ステップS3)。ウエハWのレジスト膜R上に残った液滴Dがその気流に曝されると、処理ガス中に含まれるH+が液滴Dに溶解し、液滴D内のH+の濃度が上昇する(図8(c))。液滴D内のH+の濃度が上昇すると、図8(d)に示すように濃度勾配によりH+が前記酸触媒反応の不活性領域63へと浸透し、この不活性領域63におけるH+の濃度が上昇して、当該不活性領域63が消滅する(図8(e))。
【0037】
処理ガスの供給から所定の時間が経過すると、処理ガスの供給が停止し、処理ガス吐出ノズル51AがウエハWの中心部上からその周縁部上へ移動すると共に洗浄液吐出ノズル51BがウエハWの中心部上へ移動する。続いてスピンチャック44を介してウエハWが鉛直軸回りに回転すると共に洗浄液LがウエハWの中心部に供給され、その洗浄液Lは遠心力によりウエハWの周縁部へと広がり、その洗浄液Lにより液滴Dが押し流されて除去され、レジスト膜R表面が洗浄される(図7(d))。洗浄液Lの供給から所定の時間経過後、洗浄液Lの供給が停止し、ノズル51A及び51Bが待機領域58へと退避すると共にウエハWが回転を続け、図7(e)に示すように遠心力により洗浄液Lが振り切られて除去され、図8(f)に示すようにウエハWが乾燥される(ステップS4)。
【0038】
乾燥処理後、ウエハWは搬送手段A5により、受け渡しモジュール36へと搬送され、次に搬送手段A4により受け渡しモジュール36→待機モジュール35→周縁露光モジュールWEEへ搬送され、WEEで周縁露光処理を受けた後、PEBに搬送されて加熱処理を受ける。加熱されたウエハWのレジスト膜Rの露光領域61において、既述のようにH+が熱拡散すると共にその拡散したH+により酸触媒反応が起こることでレジスト膜を構成する樹脂の脱保護反応が起こり、図9(g)に示すようにウエハWの露光領域61が現像液に対する可溶領域61Aとなる。その一方で未露光領域62は現像液に対する不溶領域として残る(ステップS5)。
【0039】
PEBでの処理後、ウエハWは搬送手段A3により現像モジュールDEVに搬送されて現像処理を受け、前記可溶領域61Aが現像液に溶解し、図9(h)に示すようにレジストパターン64が形成される(ステップS6)。現像処理後、ウエハWは主搬送手段A2,A3及び棚ユニットU1、U2の受け渡しモジュールを介して搬送手段A1に受け渡され、搬送手段A1により載置台21上の元のキャリアCへと戻される。
【0040】
上述の塗布、現像装置によればガス処理モジュール4において、ウエハWに形成された化学増幅型のレジストによるレジスト膜R表面に残留した液滴Dに、ガス吐出ノズル51Aから酸を含む処理ガスを吐出すると共にカップ45の排気口48から排気を行い、ウエハW表面に処理ガスの気流を形成している。処理ガスが液滴Dに溶解し、液滴Dに酸が供給されることで液滴D中の酸の濃度が上昇し、その液滴Dからレジスト膜Rにおいて液滴D下の酸触媒反応が不活性となっている領域へと酸が浸出する。その結果として、その領域がPEB処理時に前記酸触媒反応が不活性となることが抑えられる。従って現像欠陥の発生を抑えることができる。
【0041】
また上記のガス処理モジュール4は洗浄液吐出ノズル51Bを備え、液滴Dに処理ガス供給後、液滴Dを除去している。従ってウエハWをPEBに搬送するまでに、その搬送中の衝撃により処理ガスにより酸濃度が上昇した液滴Dが移動し、移動した液滴Dから酸がレジスト膜に浸出して、当該レジスト膜において酸濃度が過剰になる領域が発生することが抑えられる。従って、より良好な形状を有するレジストパターンを得ることができる。
【0042】
また、洗浄液吐出ノズル51Bから吐出される洗浄液を酸性液として構成し、ウエハWの洗浄を行う際に酸をウエハW表面に補填してもよい。
【0043】
本発明はレジスト膜R上に例えば撥水性の保護膜や反射防止膜などが形成されていても、これらの膜上に液滴Dが残留したときに、当該膜を介して液滴Dへとレジスト膜R中の酸が溶出する場合は、効果的に用いることができる。
【0044】
ガス処理モジュール4において、処理ガスをウエハWに供給するにあたっては液滴Dに処理ガスが供給されればよいため、上述の方法に限られるものではなく、例えばウエハWの径と同じ長さのスリット状の吐出口を備えたガスノズルを用いてウエハWの径に沿って処理ガスを供給してもよい。その際にスピンチャック22を介してウエハWを回転させながら処理ガスを吐出することでウエハW表面全体に処理ガスを供給してもよい。
【0045】
上述の実施形態では酸触媒反応により露光領域が現像液に対して可溶になるポジ型のレジストを用いた場合について説明しているが、酸触媒反応により露光領域が現像液に対して不溶になるネガ型のレジストを用いてレジスト膜を形成する場合にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗布、現像装置の平面図である。
【図2】前記塗布、現像装置の斜視図である。
【図3】前記塗布、現像装置に含まれるインターフェイスブロックの斜視図である。
【図4】前記インターフェイスブロックに含まれるガス処理モジュールの縦断側面図である。
【図5】前記ガス処理モジュールの横断平面図である。
【図6】前記塗布、現像装置による塗布、現像処理のフローチャートである。
【図7】前記ガス処理モジュールによる洗浄処理工程を示した工程図である。
【図8】液浸露光後、塗布、現像装置により処理されるウエハの表面の様子を示した説明図である。
【図9】液浸露光後、塗布、現像装置により処理されるウエハの表面の様子を示した説明図である。
【図10】液浸露光についての説明図である。
【図11】液浸露光後、ウエハ表面に残留した液滴によりウォータマークが形成される様子を示した工程図である。
【符号の説明】
【0047】
COT レジスト塗布モジュール
DEV 現像モジュール
D 液滴
L 洗浄液
R レジスト膜
W ウエハ
100 制御部
22 スピンチャック
4 ガス処理モジュール
51A ガス吐出ノズル
51B 洗浄液吐出ノズル
61 露光領域
62 未露光領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に化学増幅型のレジストを塗布し、液浸露光後そのレジストに現像を行う塗布、現像装置、塗布、現像方法及び記憶媒体に関する。
【0002】
半導体製造工程の一つであるフォトレジスト工程においては、半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面にレジストを塗布し、このレジストを所定のパターンで露光した後に現像してレジストパターンを形成している。このような処理は、一般にレジストの塗布、現像を行う塗布、現像装置に、露光装置を接続したシステムを用いて行われる。
【0003】
また、前記レジストとしては溶解抑止基が結合することで現像液に不溶に構成された樹脂及び光酸発生剤(PAG)を含む化学増幅型のポジレジストが主流として用いられている。このレジストは露光されることで光酸発生剤(PAG)から酸(H+)を生じ、さらにPEBと呼ばれる加熱処理を受けることにより、その酸が熱拡散して酸触媒反応が起こり、連鎖的に樹脂から溶解抑止基を外す(脱保護)。それによって当該レジストにおいて露光されてない領域が現像液に対して不溶領域として維持される一方で、露光された領域が現像液に可溶となる。また、露光された領域に光酸発生剤から酸が発生して、酸触媒反応によって前記ポジレジストとは逆に露光された領域を現像液の可溶領域から不溶領域へと変化させる化学増幅型のネガ型レジストが用いられる場合もある。
【0004】
近年は上記レジストパターンの線幅の微細化が進み、例えば45nmの線幅のパターンを形成することが目標となっており、それを実現するためのリソグラフィ技術として例えば液浸露光プロセスの開発が進められている。液浸露光について簡単に説明すると、図10(a)に示すように露光手段1の露光レンズ11とウエハWとの間に例えば純水からなる液膜12を形成し、そして図10(b)に示すように露光手段1を横方向に移動させて次の転写領域(ショット領域)11Aに対応する位置に当該露光手段1を配置し、光を照射する動作を繰り返すことにより、レジスト膜14に所定の回路パターンを転写する露光方式である。図中13A,13Bは、夫々液膜12を形成するための液供給路、排液路である。また、転写領域11Aは実際よりも大きく示している。
【0005】
液浸露光はレジスト膜表面にトップコート(TC)と呼ばれる撥水性の保護膜を形成して行われる場合もあるが、スループット向上を図るためにこの保護膜を形成しなくても液浸露光を適用できるレジストの導入が検討されている。しかし液浸露光後にウエハW表面上には液膜12の形成に用いた液滴10が残留する場合があり、図11(a)に示すように前記化学増幅型のポジ型のレジスト膜14の表面に液滴10が残ると、その液滴10を構成する液体がレジスト膜14に浸透すると共にレジスト膜14の極表面に含まれる酸、添加剤、ソルベント及びPAGなどが当該液滴10中に溶出し、その結果として液滴10下のレジスト膜の表層領域にウォータマークと呼ばれる染みとなる領域15が出現する(図11(b))。
【0006】
このようにウォータマークが形成された表層領域15は、PEB前に液滴10が除去されても、PEB処理時における酸濃度が低く、上述の酸触媒反応が、他の領域に比べて相対的に起こり難い不活性領域として残る(図11(c))。なお図中14A、14Bは夫々レジスト膜14の露光部分、未露光部分である。
【0007】
上記のように酸触媒反応が不活性な表層領域15が形成されたウエハWがPEB処理を受けると、この表層領域15においては上述した樹脂の脱保護反応率が他の領域に比べて低くなるため、図11(d)に示すように、表層領域15以外の領域においてはPEBにより露光部分14A、未露光部分14Bが夫々現像液に対する可溶領域16A、不溶領域16Bとなるように潜像が形成されるが、表層領域15においては露光部分14Aであっても現像液に対する不溶領域16Bとして潜像が形成されることになる。
【0008】
その結果として図11(e)に示すように現像後、表層領域15は未解像となり、ウエハWの極表面に現像欠陥18が発生する。観察される現像欠陥18としては、液滴10の形をそのままレジスト膜14に投影した大きな円形のものから、パターン17上部に形成される非常に小さなラインブリッジまで多種多様であるが、傾向としてクリーンルーム雰囲気中のアミンなどがレジストに作用した場合に発生するような、パターン17間の壁部の上部が横方向に張り出したT−topと呼ばれる形状や、図11(e)に示すように前記壁部の上部同士がつながるような形状のものが発生しやすい。ポジ型レジストについて説明してきたが、ネガ型レジストについても現像により本来現像液に不溶となる領域が可溶のまま残り、パターンが正常に形成されないおそれがある。
【0009】
特許文献1にはこのような現像欠陥の発生を防ぐために液浸露光後にウエハに残留した液滴に酸をスプレーすることが記載されている。そのスプレーを行う手法について具体的な記載は示されていないが、普通に液滴に向けてスプレーを行えば液滴の周囲もスプレーされてしまうことが避けられず、従って液滴が付着した以外の箇所にも酸が供給されてしまうと考えられる。そうなるとレジスト膜において酸が過剰になる領域が発生し、レジスト膜が変質してPEB及び現像処理を行ったときにパターンが正常に形成できなくなるおそれがある。
【0010】
【特許文献1】特開2007−102180(段落0031)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、基板に化学増幅型のレジストを塗布し、その基板に液浸露光が行われた後で現像処理を行い、良好な形状のレジストパターンを得ることができる塗布、現像装置、塗布、現像方法及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表面露光装置は、露光されることにより酸発生剤から酸を生じる化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する塗布モジュールと、
前記レジスト膜が基板表面に光を透過する液膜を形成した状態で露光される液浸露光により露光された後、前記基板に酸を供給するための処理ガスを吐出するガス吐出部と、基板に吐出された余剰な前記処理ガスを除去するための排気部と、を備えたガス処理モジュールと、
前記レジスト中に発生した酸により触媒反応を起こして露光領域の現像液に対する溶解性を変化させるために前記処理ガスが供給された基板を加熱する加熱モジュールと、
前記加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成するための現像モジュールと、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
前記レジストは例えば露光された領域が現像液に溶解されるポジ型のレジストであり、また加熱モジュールにて加熱処理を行う前に、前記ガス処理モジュールにより処理された基板表面に洗浄液を供給して、前記液浸露光により残留した液体を除去するための洗浄部が設けられていてもよく、その場合前記ガス処理モジュールは、筐体を備え、その筐体内に前記洗浄部が設けられていてもよい。
【0014】
本発明の塗布、現像方法によれば、塗布モジュールにより露光されることにより酸発生剤から酸を生じる化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する工程と、
ガス処理モジュールのガス吐出部により前記レジスト膜が基板表面に光を透過する液膜を形成した状態で露光される液浸露光により露光された後、前記基板に酸を供給するための処理ガスを吐出する工程と、
ガス処理モジュールの排気部により基板に吐出された余剰な前記処理ガスを除去する工程と、
加熱モジュールにより前記レジスト中に発生した酸により触媒反応を起こして露光領域の現像液に対する溶解性を変化させるために前記処理ガスが供給された基板を加熱する工程と、
現像モジュールにより前記加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の記憶媒体は、露光された領域に含まれる酸発生剤から酸を生じ、露光後加熱されることで前記酸がその露光された領域の現像液に対する溶解性を変化させる触媒反応を起こす化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する塗布モジュールと、前記酸触媒反応を起こすための加熱モジュールと、その加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成するための現像モジュールと、を備えた塗布、現像装置に用いられるコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上述の表面露光方法を実施するためのものであることを特徴とする記憶媒体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、化学増幅型のレジスト膜が形成され、そのレジスト膜が液浸露光された後の基板表面に酸を供給するための処理ガスを吐出するガス吐出部と、基板表面の余剰な処理ガスを除去するための排気部と、を備えているため、基板に表面に液体が付着し、その液体下のレジスト表面にウォータマークが形成され、当該ウォータマークが形成された領域が酸の濃度が低い不活性領域となっていても、処理ガスにより基板表面に付着した液体に酸が供給されることでその液体中の酸の濃度が上昇する。そして液体の酸性度が高くなる結果として、その液体からその液体下のレジスト膜の表面領域に酸が浸出し、前記不活性領域に選択的に酸が補填され、当該不活性領域が消滅する。それによって液浸露光後の加熱処理時に前記表面領域の酸の濃度がレジスト膜の他の領域に比べて低くなることが抑えられる。従ってウォータマークが形成された領域で酸触媒反応が不活性となることが抑えられ、現像欠陥の発生を抑えることができる。
また、この手法によれば液浸露光後、基板に残留した液体に酸をスプレーするような手法と異なり、レジスト膜において酸濃度が低くなった前記液体下の表面領域以外の領域に酸が供給されることが抑えられるので、過剰に酸が供給される領域が発生することが抑えられる。この点からも良好なレジストパターンの形状を得ることができると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る塗布・現像装置に露光装置を接続したシステムの全体構成について図1及び図2を参照しながら簡単に説明する。図1及び図2中B1は基板例えば25枚密閉収納されたキャリアCを搬入出するためのキャリアブロックであり、キャリアCを複数個並べて載置可能な載置部21を備えたキャリア搬入部22と、載置部21から見て前方の壁面に設けられる開閉部23と、開閉部23を介してキャリアCからウエハWを取り出すための搬送手段A1とが設けられている。
【0018】
キャリアブロックB1の奥側には筐体24にて周囲を囲まれる処理ブロックB2が接続されており、この処理ブロックB2には手前側から順に加熱・冷却系のモジュールを多段化した棚ユニットU1,U2,U3と、後述する処理モジュール間のウエハWの受け渡しを行う主搬送手段A2,A3と、が交互に配列して設けられている。即ち、棚ユニットU1,U2,U3及び主搬送手段A2,A3はキャリアブロックB1側から見て前後一列に配列されると共に、各々の接続部位には図示しないウエハ搬送用の開口部が形成されており、ウエハWは処理ブロックB2内を一端側の棚ユニットU1から他端側の棚ユニットU3まで自由に移動できるようになっている。
【0019】
また主搬送手段A2,A3は、キャリアブロックB1から見て前後方向に配置される棚ユニットU1,U2,U3側の一面部と、後述する例えば右側の液処理モジュールU4,U5側の一面部と、左側の一面をなす背面部とで構成される区画壁25により囲まれる空間内に置かれており、予め設定された一連のモジュールの間を順番にサイクリックに移動するサイクル搬送を行い、これによりウエハが順番に移動していくことになる。また図中26、27は各モジュールで用いられる処理液の温度調節装置や温湿度調節用のダクト等を備えた温湿度調節モジュールである。
【0020】
液処理モジュールU4,U5は、例えば図2に示すように塗布液(レジスト液)や現像液といった薬液供給用のスペースをなす収納部28の上に、塗布モジュールCOT、現像モジュールDEV及び反射防止膜形成モジュールBARC等を複数段例えば5段に積層した構成とされている。塗布モジュールCOTは背景技術の欄で説明したようにPAGなどを含む化学増幅型のポジレジスト(以下単にレジストと呼ぶ)をウエハWに塗布するモジュールである。反射防止膜形成モジュールBARCは反射防止膜を形成する薬液をウエハWに塗布する。現像モジュールDEVは現像液をウエハWに供給して現像処理を行う。
【0021】
また上述の棚ユニットU1,U2,U3は、液処理モジュールU4,U5にて行われる処理の前処理及び後処理を行うための各種モジュールを複数段例えば10段に積層した構成とされており、ウエハWを加熱(ベーク)する加熱モジュール、ウエハWを冷却する冷却モジュール等を含んでいる。また、棚ユニットU1にはキャリアブロックB1と処理ブロックB2との間でウエハWを受け渡すための不図示の受け渡しモジュール及びウエハWに疎水化処理を行うための疎水化処理モジュールが、棚ユニットU3には処理ブロックB2とインターフェイスブロックB3との間でウエハWの受け渡しを行うための受け渡しモジュール29及びPEBが夫々複数含まれている。
【0022】
PEBは背景技術の欄で説明したように露光後のウエハWを加熱する加熱モジュールであり、ウエハWに形成されたレジスト膜において後述の露光装置B4で露光された領域において液浸露光によりレジストの酸発生剤から産生した酸を熱拡散させ、その酸によって酸触媒反応を引き起こし、前記露光領域を現像液に対して可溶にする。
【0023】
前記処理ブロックB2における棚ユニットU3の奥側には、インターフェイスブロックB3を介して露光装置B4が接続されている。以下、インターフェイスブロックB3について図3を参照しながら説明する。インターフェイスブロックB3は、処理ブロックB2と露光装置B4との間の前後に設けられる第1の搬送室31、第2の搬送室32により構成されており、夫々にウエハ搬送手段A4及びウエハ搬送手段A5が設けられている。ウエハ搬送手段A4、A5は鉛直軸回りに回転自在、昇降自在且つ進退自在に構成されており、ウエハ搬送手段A4はさらにガイド33に沿って横方向に移動自在構成されている。
【0024】
第1の搬送室31にはウエハ搬送手段A4を挟んでキャリアブロックB1側から見た左側には、ウエハWの周縁部のみを選択的に露光するための周縁露光部(WEE)34と、後述するガス処理モジュール4にて洗浄及び乾燥処理したウエハWを待機させておくための待機モジュール35と、露光装置B4に搬送するまでのウエハWを一時的に収納して待機させるためのバッファモジュール(BM)とが、例えば上下に設けられている。同じく右側には受け渡しモジュール36と、例えば冷却プレートを有する高精度温度調整モジュール(ICPL)とが上下に積層されて構成された棚ユニットU6が設けられている。第2の搬送室32において、キャリアブロックB1側から見ての左側には、液浸露光後にウエハWの表面を洗浄するガス処理モジュール4が設けられている。ガス処理モジュール4の構成については後述する。
【0025】
露光装置B4はインターフェイスブロックB3から搬入されたウエハWが載置される搬入ステージ38と、インターフェイスブロックB3へ払い出されるウエハWが載置される搬出ステージ39と、を備えており、搬入ステージ38に載置されたウエハWは露光装置B4内の所定の場所で背景技術の欄で説明した液浸露光処理を受け、その後搬出ステージ39に載置される。
【0026】
搬送手段A4は棚ユニットU3の各モジュールと、棚ユニットU6の各モジュールと、WEE34と、待機モジュール35と、バッファモジュールBMとの間でウエハWの受け渡しを行うことができるように構成されており、また搬送手段A5は、棚ユニットU6の各モジュールと、高精度温度調整モジュールICPLと、露光装置B4の搬入ステージ38と、搬出ステージ39との間でウエハWを受け渡すことができるように構成されている。
【0027】
続いてガス処理モジュール4について図5及び図6を参照しながら説明する。図5、図6は夫々当該モジュール4の縦断側面図、横断平面図である。図中41は筐体であり、筐体41の側壁にはシャッタ42により開閉自在な搬送口43が設けられている。図中44は基板保持部をなすスピンチャックであり、真空吸着によりウエハWを水平に保持するように構成されている。このスピンチャック44は駆動部45により鉛直軸回りに回転でき、且つ搬送手段A5との間でウエハを受け渡すために昇降できるようになっている。
【0028】
また、スピンチャック44の周囲にはウエハWからスピンチャック44に跨る側方部分を囲むカップ45が設けられている。カップ45の底部は互いに連通する外側部46A、内側部46Bに区画されており、外側部46Aの底面には排液を行うためのドレイン管47が接続されている。内側部46Bの底面には環状に排気口48が開口し、排気口48には排気管49の一端が接続されている。この排気口48及び排気管49はウエハWに供給された余剰な処理ガスを除去するための排気部を構成する。
【0029】
ガス処理モジュール4は、後述する処理ガスをウエハWに吐出するガス吐出ノズル51Aと、ウエハWに付着した液滴を除去するための洗浄液例えば純水をウエハWに吐出する洗浄液吐出ノズル51Bと、を備えている。ガス吐出ノズル51A、洗浄液吐出ノズル51Bは夫々鉛直下方に開口したガス供給口52A、液供給口52Bを夫々備えている。ガス吐出ノズル51A、洗浄液吐出ノズル51Bには夫々ガス供給管53Aの一端、液供給管53Bの一端が接続されている。ガス供給管53Aの他端はバルブやマスフローコントローラなどを含んだガス供給機器系54Aを介して処理ガスが貯留されたガス供給源55Aに接続されている。液供給管53Bの他端はバルブやマスフローコントローラなどを含んだ液供給機器系54Bを介して洗浄液が貯留された洗浄液供給源55Bに接続されている。
【0030】
ガス供給系54A、液供給系54Bが後述の制御部100からの制御信号を受けることにより、夫々ガス吐出ノズル51A、洗浄液吐出ノズル51BからウエハWへの処理ガス、洗浄液の給断が制御される。前記処理ガスは酸(H+)を含んでおり、塗布、現像装置の作用で説明するようにレジスト膜に付着した液滴に溶解して、液滴中のH+の濃度を高めることで、レジスト膜におけるその液滴下の表面領域に、当該液滴に溶出することで減少した酸を補填する。
【0031】
図5に示すようにガス吐出ノズル51A、洗浄液吐出ノズル51Bは夫々アーム55A、55Bを介して駆動部56A、56Bに接続されており、駆動部56A、56Bは横方向に水平に伸びたガイドレール57に係止され、このガイドレール57に沿って移動する。駆動部56A、56Bの移動に従ってガス吐出ノズル51A、洗浄液吐出ノズル51Bは、カップ45の外側に設けられたガス吐出ノズル51A及び洗浄液吐出ノズル51Bの待機領域58からスピンチャック44に載置されたウエハWの中心上に移動し、そのウエハW中心に夫々処理ガス、洗浄液を供給することができるようになっている。
【0032】
続いて制御部100について説明する。制御部100は、例えばコンピュータからなり、不図示のプログラム格納部を有している。このプログラム格納部には、後述の作用で説明する塗布、現像処理が行われるように命令が組まれた例えばソフトウエアからなるプログラムが格納され、このプログラムが制御部100に読み出されることで、制御部100は後述するように各搬送手段の動作、液処理モジュールにおけるウエハWへの処理液の供給、加熱、冷却モジュールにおけるウエハWの加熱、冷却処理などを制御する。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカードなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
【0033】
続いて上述の塗布、現像装置における作用について図6のフローチャートを参照しながら説明する。先ず外部からウエハWが収納されたキャリアCが載置部21に載置されると、開閉部23と共にキャリアCの蓋体が外されてキャリアブロックB1の搬送手段A1によりウエハWが取り出される。そしてウエハWは棚ユニットU1の受け渡しモジュール(図示せず)を介して処理ブロックB2の主搬送手段A2へと受け渡され、その主搬送手段A2により棚ユニットU1の疎水化処理モジュールに搬送されて疎水化処理を受けた後、棚ユニットU1またはU2の一の棚をなす冷却モジュールに搬送されて冷却され、続いて塗布モジュールCOTに搬送され、レジストの塗布処理を受けてレジスト膜Rが形成される(ステップS1)。なお、レジスト塗布処理の前処理として、疎水化処理モジュールによる疎水化処理を行う代わりに反射防止膜形成モジュールBARCにて反射防止膜形成処理を行う場合もある。
【0034】
レジスト膜Rが形成されたウエハWは棚ユニットU1〜U3の一の棚をなす加熱モジュールで加熱処理され、更に棚ユニットU1〜U3の一の棚をなす冷却モジュールで冷却された後、棚ユニットU3の受け渡しモジュール29を経由してインターフェイスブロックB3へと搬入される。このインターフェイスブロックB3においてウエハWは搬送手段A4によってバッファモジュールBM→高精度温度調整ユニットICPLと搬送され、ICPLにて温度調整されたウエハWは搬送手段A5によって露光装置B4の搬入ステージ38に搬送される。その後、ウエハWは露光装置B4内の所定の場所へ搬送され、背景技術の欄で説明したようにレジスト膜R上に例えば純水の液層が形成されて、当該レジスト膜Rがその液層を介して所定のパターンに沿って液浸露光を受ける(ステップS2)。
【0035】
液浸露光が終わったウエハWは搬出ステージ39に載置され、搬送手段A5によりガス処理モジュール4内に搬送される。以下、このガス処理モジュール4における処理工程を示した図7及びレジスト膜Rの様子を示した図8及び図9も参照しながら説明する。図8(a)に示すように液浸露光終了後レジスト膜R上には、液浸露光を行うために用いた液体例えば純水の液滴Dが残留している。そして、その液滴Dの下方のレジスト膜R表面からは、そこに含まれるH+が液滴Dへと溶出し、図8(b)に示すようにその表面は酸触媒反応が起こり難い不活性領域63となっている。図中61、62は夫々レジスト膜Rの露光領域、未露光領域である。
【0036】
ガス処理モジュール4にウエハWが搬送されると、スピンチャック44が上昇してそのウエハWの裏面中央部を保持し、ウエハWを保持したままスピンチャック44が下降して、ウエハWがカップ45内に収まる。続いてガス吐出ノズル51AがウエハWの中心部上に移動し(図7(a))、処理ガスがウエハWの中心部に供給される。ウエハWに供給された処理ガスはカップ45内の排気口48からの排気により図7(b)に矢印で示すようにウエハWの中心部からその周縁部へと向かって流れる気流を形成する(ステップS3)。ウエハWのレジスト膜R上に残った液滴Dがその気流に曝されると、処理ガス中に含まれるH+が液滴Dに溶解し、液滴D内のH+の濃度が上昇する(図8(c))。液滴D内のH+の濃度が上昇すると、図8(d)に示すように濃度勾配によりH+が前記酸触媒反応の不活性領域63へと浸透し、この不活性領域63におけるH+の濃度が上昇して、当該不活性領域63が消滅する(図8(e))。
【0037】
処理ガスの供給から所定の時間が経過すると、処理ガスの供給が停止し、処理ガス吐出ノズル51AがウエハWの中心部上からその周縁部上へ移動すると共に洗浄液吐出ノズル51BがウエハWの中心部上へ移動する。続いてスピンチャック44を介してウエハWが鉛直軸回りに回転すると共に洗浄液LがウエハWの中心部に供給され、その洗浄液Lは遠心力によりウエハWの周縁部へと広がり、その洗浄液Lにより液滴Dが押し流されて除去され、レジスト膜R表面が洗浄される(図7(d))。洗浄液Lの供給から所定の時間経過後、洗浄液Lの供給が停止し、ノズル51A及び51Bが待機領域58へと退避すると共にウエハWが回転を続け、図7(e)に示すように遠心力により洗浄液Lが振り切られて除去され、図8(f)に示すようにウエハWが乾燥される(ステップS4)。
【0038】
乾燥処理後、ウエハWは搬送手段A5により、受け渡しモジュール36へと搬送され、次に搬送手段A4により受け渡しモジュール36→待機モジュール35→周縁露光モジュールWEEへ搬送され、WEEで周縁露光処理を受けた後、PEBに搬送されて加熱処理を受ける。加熱されたウエハWのレジスト膜Rの露光領域61において、既述のようにH+が熱拡散すると共にその拡散したH+により酸触媒反応が起こることでレジスト膜を構成する樹脂の脱保護反応が起こり、図9(g)に示すようにウエハWの露光領域61が現像液に対する可溶領域61Aとなる。その一方で未露光領域62は現像液に対する不溶領域として残る(ステップS5)。
【0039】
PEBでの処理後、ウエハWは搬送手段A3により現像モジュールDEVに搬送されて現像処理を受け、前記可溶領域61Aが現像液に溶解し、図9(h)に示すようにレジストパターン64が形成される(ステップS6)。現像処理後、ウエハWは主搬送手段A2,A3及び棚ユニットU1、U2の受け渡しモジュールを介して搬送手段A1に受け渡され、搬送手段A1により載置台21上の元のキャリアCへと戻される。
【0040】
上述の塗布、現像装置によればガス処理モジュール4において、ウエハWに形成された化学増幅型のレジストによるレジスト膜R表面に残留した液滴Dに、ガス吐出ノズル51Aから酸を含む処理ガスを吐出すると共にカップ45の排気口48から排気を行い、ウエハW表面に処理ガスの気流を形成している。処理ガスが液滴Dに溶解し、液滴Dに酸が供給されることで液滴D中の酸の濃度が上昇し、その液滴Dからレジスト膜Rにおいて液滴D下の酸触媒反応が不活性となっている領域へと酸が浸出する。その結果として、その領域がPEB処理時に前記酸触媒反応が不活性となることが抑えられる。従って現像欠陥の発生を抑えることができる。
【0041】
また上記のガス処理モジュール4は洗浄液吐出ノズル51Bを備え、液滴Dに処理ガス供給後、液滴Dを除去している。従ってウエハWをPEBに搬送するまでに、その搬送中の衝撃により処理ガスにより酸濃度が上昇した液滴Dが移動し、移動した液滴Dから酸がレジスト膜に浸出して、当該レジスト膜において酸濃度が過剰になる領域が発生することが抑えられる。従って、より良好な形状を有するレジストパターンを得ることができる。
【0042】
また、洗浄液吐出ノズル51Bから吐出される洗浄液を酸性液として構成し、ウエハWの洗浄を行う際に酸をウエハW表面に補填してもよい。
【0043】
本発明はレジスト膜R上に例えば撥水性の保護膜や反射防止膜などが形成されていても、これらの膜上に液滴Dが残留したときに、当該膜を介して液滴Dへとレジスト膜R中の酸が溶出する場合は、効果的に用いることができる。
【0044】
ガス処理モジュール4において、処理ガスをウエハWに供給するにあたっては液滴Dに処理ガスが供給されればよいため、上述の方法に限られるものではなく、例えばウエハWの径と同じ長さのスリット状の吐出口を備えたガスノズルを用いてウエハWの径に沿って処理ガスを供給してもよい。その際にスピンチャック22を介してウエハWを回転させながら処理ガスを吐出することでウエハW表面全体に処理ガスを供給してもよい。
【0045】
上述の実施形態では酸触媒反応により露光領域が現像液に対して可溶になるポジ型のレジストを用いた場合について説明しているが、酸触媒反応により露光領域が現像液に対して不溶になるネガ型のレジストを用いてレジスト膜を形成する場合にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗布、現像装置の平面図である。
【図2】前記塗布、現像装置の斜視図である。
【図3】前記塗布、現像装置に含まれるインターフェイスブロックの斜視図である。
【図4】前記インターフェイスブロックに含まれるガス処理モジュールの縦断側面図である。
【図5】前記ガス処理モジュールの横断平面図である。
【図6】前記塗布、現像装置による塗布、現像処理のフローチャートである。
【図7】前記ガス処理モジュールによる洗浄処理工程を示した工程図である。
【図8】液浸露光後、塗布、現像装置により処理されるウエハの表面の様子を示した説明図である。
【図9】液浸露光後、塗布、現像装置により処理されるウエハの表面の様子を示した説明図である。
【図10】液浸露光についての説明図である。
【図11】液浸露光後、ウエハ表面に残留した液滴によりウォータマークが形成される様子を示した工程図である。
【符号の説明】
【0047】
COT レジスト塗布モジュール
DEV 現像モジュール
D 液滴
L 洗浄液
R レジスト膜
W ウエハ
100 制御部
22 スピンチャック
4 ガス処理モジュール
51A ガス吐出ノズル
51B 洗浄液吐出ノズル
61 露光領域
62 未露光領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光されることにより酸発生剤から酸を生じる化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する塗布モジュールと、
前記レジスト膜が基板表面に光を透過する液膜を形成した状態で露光される液浸露光により露光された後、前記基板に酸を供給するための処理ガスを吐出するガス吐出部と、基板に吐出された余剰な前記処理ガスを除去するための排気部と、を備えたガス処理モジュールと、
前記レジスト中に発生した酸により触媒反応を起こして露光領域の現像液に対する溶解性を変化させるために前記処理ガスが供給された基板を加熱する加熱モジュールと、
前記加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成するための現像モジュールと、
を備えたことを特徴とする塗布、現像装置。
【請求項2】
前記レジストは露光された領域が現像液に溶解されるポジ型のレジストであることを特徴とする請求項1記載の塗布、現像装置。
【請求項3】
加熱モジュールにて加熱処理を行う前に、前記ガス処理モジュールにより処理された基板表面に洗浄液を供給して、前記液浸露光により残留した液体を除去するための洗浄部が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布、現像装置。
【請求項4】
前記ガス処理モジュールは、筐体を備え、その筐体内に前記洗浄部が設けられていることを特徴とする請求項3記載の塗布、現像装置。
【請求項5】
塗布モジュールにより露光されることにより酸発生剤から酸を生じる化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する工程と、
ガス処理モジュールのガス吐出部により前記レジスト膜が基板表面に光を透過する液膜を形成した状態で露光される液浸露光により露光された後、前記基板に酸を供給するための処理ガスを吐出する工程と、
ガス処理モジュールの排気部により基板に吐出された余剰な前記処理ガスを除去する工程と、
加熱モジュールにより前記レジスト中に発生した酸により触媒反応を起こして露光領域の現像液に対する溶解性を変化させるために前記処理ガスが供給された基板を加熱する工程と、
現像モジュールにより前記加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成する工程と、
を備えたことを特徴とする塗布、現像方法。
【請求項6】
露光された領域に含まれる酸発生剤から酸を生じ、露光後加熱されることで前記酸がその露光された領域の現像液に対する溶解性を変化させる触媒反応を起こす化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する塗布モジュールと、前記酸触媒反応を起こすための加熱モジュールと、その加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成するための現像モジュールと、を備えた塗布、現像装置に用いられるコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項5に記載の表面露光方法を実施するためのものであることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
露光されることにより酸発生剤から酸を生じる化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する塗布モジュールと、
前記レジスト膜が基板表面に光を透過する液膜を形成した状態で露光される液浸露光により露光された後、前記基板に酸を供給するための処理ガスを吐出するガス吐出部と、基板に吐出された余剰な前記処理ガスを除去するための排気部と、を備えたガス処理モジュールと、
前記レジスト中に発生した酸により触媒反応を起こして露光領域の現像液に対する溶解性を変化させるために前記処理ガスが供給された基板を加熱する加熱モジュールと、
前記加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成するための現像モジュールと、
を備えたことを特徴とする塗布、現像装置。
【請求項2】
前記レジストは露光された領域が現像液に溶解されるポジ型のレジストであることを特徴とする請求項1記載の塗布、現像装置。
【請求項3】
加熱モジュールにて加熱処理を行う前に、前記ガス処理モジュールにより処理された基板表面に洗浄液を供給して、前記液浸露光により残留した液体を除去するための洗浄部が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布、現像装置。
【請求項4】
前記ガス処理モジュールは、筐体を備え、その筐体内に前記洗浄部が設けられていることを特徴とする請求項3記載の塗布、現像装置。
【請求項5】
塗布モジュールにより露光されることにより酸発生剤から酸を生じる化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する工程と、
ガス処理モジュールのガス吐出部により前記レジスト膜が基板表面に光を透過する液膜を形成した状態で露光される液浸露光により露光された後、前記基板に酸を供給するための処理ガスを吐出する工程と、
ガス処理モジュールの排気部により基板に吐出された余剰な前記処理ガスを除去する工程と、
加熱モジュールにより前記レジスト中に発生した酸により触媒反応を起こして露光領域の現像液に対する溶解性を変化させるために前記処理ガスが供給された基板を加熱する工程と、
現像モジュールにより前記加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成する工程と、
を備えたことを特徴とする塗布、現像方法。
【請求項6】
露光された領域に含まれる酸発生剤から酸を生じ、露光後加熱されることで前記酸がその露光された領域の現像液に対する溶解性を変化させる触媒反応を起こす化学増幅型のレジストを基板表面に塗布してレジスト膜を形成する塗布モジュールと、前記酸触媒反応を起こすための加熱モジュールと、その加熱モジュールにて加熱された基板を現像して前記レジスト膜にパターンを形成するための現像モジュールと、を備えた塗布、現像装置に用いられるコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項5に記載の表面露光方法を実施するためのものであることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−94398(P2009−94398A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265487(P2007−265487)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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