説明

塗布方法および塗布装置

【課題】塗布液(例えばレジスト液)の供給量を少なくして薄い塗布膜を形成する場合でも、基板面内の塗布膜厚さのばらつきを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】塗布液を基板の中心部に供給するとともに基板を回転させ、基板の表面の全体を塗布液で覆う塗布液塗布工程と、塗布液塗布工程の後に、塗布液の供給を停止した状態で基板を回転させ、塗布液を乾燥させる乾燥工程と、を備えた塗布方法において、乾燥工程において、基板の裏面側から基板の半径方向の特定の範囲の温度を局所的に調節する。この調整は、例えば、温調ノズルによって基板の裏面の半径方向の特定の範囲に温調流体を吹き付けることによって、あるいは熱線を基板の裏面の半径方向の特定の範囲に照射することにより行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト膜等の塗布膜を基板上に形成するための塗布方法および塗布装置に係り、特に、塗布膜の膜厚の均一性を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィープロセスにおいては、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」という。)上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成するレジスト塗布工程、レジスト膜を所定のパターンに露光する露光工程、露光されたレジスト膜を現像する現像工程などが順次行われ、ウエハ上に所定のレジストパターンが形成されている。
【0003】
レジスト塗布工程では、回転中のウエハ表面の中心部にノズルからレジスト液を供給し、そのレジスト液を遠心力により半径方向外側に拡散させることによってウエハの表面全体をレジスト液で覆うようにする、いわゆるスピン塗布法が多く用いられている。
【0004】
近時の半導体デバイスの回路のさらなる微細化に伴い、レジスト塗布処理におけるレジスト膜の薄膜化が進められている。また、レジスト液は高価であり、使用量を可能な限り減らす必要がある。
【0005】
極く薄いレジスト膜を形成する場合には、より高い面内膜厚均一性が求められる。しかし、レジスト液の供給量を少なくしてゆくと十分な面内膜厚均一性を得るのが困難となる。例えば、12インチウエハに0.5ml以下のレジスト液を供給して約100nmの厚さのレジスト膜を形成するものとする。この場合、塗布条件(ウエハ回転数、レジスト液供給タイミング等)の最適化を行ったとしても、1nm程度の膜厚差がウエハ面内において生じる。この程度の膜厚差は従前の厚いレジスト膜においてはさほど問題のないものであるが、近年求められている極薄のレジスト膜においては無視できないものとなる。レジスト膜厚の不均一があると、露光処理時の露光の光路長の不均一が生じ、面内で均一な露光処理を行うことが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−78743号公報
【特許文献2】特開平10−261579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、塗布液の供給量を少なくして薄い塗布膜を形成する場合でも、基板面内の塗布膜厚さの分布を調整することを可能とし、面内膜厚均一性の高い塗布膜を形成することを可能とする技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点によれば、塗布液を基板の中心部に供給するとともに前記基板を回転させ、前記基板の表面の全体を塗布液で覆う塗布液塗布工程と、前記塗布液塗布工程の後に、前記塗布液の供給を停止した状態で前記基板を回転させ、前記塗布液を乾燥させる乾燥工程と、を備え、前記乾燥工程において、前記基板の裏面側から前記基板の半径方向の特定の範囲の温度を局所的に調節する塗布膜形成方法が提供される。
【0009】
好ましくは、前記温度の局所的な調節は、早くとも前記基板の表面全体が前記塗布液に覆われた後に開始される。
【0010】
好適な一実施形態において、前記塗布膜形成方法は、前記塗布液塗布工程における前記基板の回転速度よりも低い回転速度で基板を回転させることにより前記基板の表面に塗布された前記塗布液を平坦化する平坦化工程をさらに備えており、前記塗布液塗布工程、前記平坦化工程および前記乾燥工程はこの順序で順次実行され、前記平坦化工程から前記乾燥工程の移行は、前記基板の回転速度を上昇させることにより行なわれ、前記温度の局所的な調節は、前記乾燥工程を開始するときまたはその後に開始される。
【0011】
前記温度の局所的な調節は、前記基板の裏面の半径方向の特定の範囲に局所的に温調流体を吹き付けることにより行うことができる。好ましくは、前記温調流体は、空気、不活性ガス等の気体である。温調流体として気体を用いる場合、当該気体の温度は、例えば30℃〜40℃の範囲内とすることができる。温調流体の吹き付けは、基板の裏面の近傍に開口する吐出口を有し、基板の裏面の半径方向の特定の範囲に局所的に温調流体を吹き付ける温調流体ノズルを用いて行うことができる。
【0012】
前記温度の局所的な調節は、前記基板の裏面の半径方向の特定の範囲に局所的に熱線を照射することによっても行うことができる。熱線としては、例えば、赤外LED光、レーザー光などが例示される。
【0013】
本発明の第2の観点によれば、基板を保持して回転させるスピンチャックと、前記スピンチャックにより保持された基板の表面に塗布液を供給する塗布液ノズルと、前記スピンチャックにより保持された基板を囲むように設けられたカップと、前記カップ内を吸引して前記カップ内に気流を形成する排気機構と、前記スピンチャックにより保持された基板の裏面側から基板の半径方向の特定の範囲の温度を局所的に調節することができるように設けられた温度調節手段と、を備えたことを塗布装置が提供される。
【0014】
本発明の第3の観点によれば、基板を保持して回転させるスピンチャックと、前記スピンチャックにより保持された基板に塗布液を供給する塗布液ノズルと、前記スピンチャックにより保持された基板の裏面側から基板の半径方向の特定の範囲の温度を局所的に調節することができるように設けられた温度調節手段と、前記塗布液ノズルに塗布液を供給する塗布液供給機構と、少なくとも前記スピンチャック、前記塗布液供給機構および前記温度調節手段の動作を制御するコンピュータからなる制御部とを備えた塗布装置において、少なくとも前記スピンチャック、前記塗布液供給機構および前記温度調節手段の動作を制御するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記プログラムを前記コンピュータにより実行することにより、前記コンピュータが前記スピンチャック、塗布液供給機構および前記温度調節手段を制御して、前記塗布液ノズルから塗布液を基板の中心部に供給するとともに前記スピンチャックにより前記基板を回転させ、前記基板の表面の全体を塗布液で覆う塗布液塗布工程と、前記塗布液塗布工程の後に、前記塗布液ノズルから前記塗布液の供給を停止した状態で前記スピンチャックにより前記基板を回転させ、前記塗布液を乾燥させる乾燥工程と、を実行させるとともに、前記乾燥工程において、前記温度調節手段による前記局所的な温度調節を行わせる記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、塗布液を乾燥させる乾燥工程において基板の裏面側から基板の半径方向の特定の範囲の温度を局所的に調節することにより、塗布膜の厚さ分布を調整することができる。これにより、塗布膜の厚さの面内均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】塗布現像処理システムの構成の概略を示す平面図である。
【図2】塗布現像処理システムの正面図である。
【図3】塗布現像処理システムの背面図である。
【図4】レジスト塗布装置の構成を示す概略縦断面図である。
【図5】レジスト塗布装置の構成を示す概略横断面図である。
【図6】レジスト塗布処理の主な工程を示すフローチャートである。
【図7】レジスト塗布処理の各工程おけるウエハの回転速度をプリウエット液およびレジスト液の供給タイミング、並びに温調気体の吹き付けタイミングと一緒に示すグラフである。
【図8】実験結果を示すグラフである。
【図9】温調ノズルの変形例を示す概略図である。
【図10】温度調節手段として熱線照射装置を用いた第1の例を示す概略図である。
【図11】温度調節手段として熱線照射装置を用いた第2の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
まず、基板にレジストを塗布するための塗布装置が組み込まれた塗布現像処理システムの全体構成について図1〜図3を参照して説明する。
【0018】
塗布現像処理システム1は、図1に示すように例えば外部から塗布現像処理システム1に対して複数枚のウエハWをカセット単位で搬入出するためのカセットステーション2と、フォトリソグラフィー工程の中で枚葉式に所定の処理を施す複数の各種処理装置を備えた処理ステーション3と、処理ステーション3に隣接する露光装置4との間でウエハWの受け渡しを行うインターフェイスステーション5とを一体に接続した構成を有している。
【0019】
カセットステーション2には、カセット載置台10が設けられ、当該カセット載置台10には、複数のカセットCをX方向(図1中の上下方向)に一列に載置できる。カセットステーション2には、搬送路11上をX方向に沿って移動可能なウエハ搬送装置12が設けられている。ウエハ搬送装置12は、カセットCに収容されたウエハWの配列方向(Z方向;鉛直方向)にも移動自在であり、カセットC内の複数枚のウエハWに対して選択的にアクセスできる。またウエハ搬送装置12は、鉛直方向の軸周り(θ方向)に回転可能であり、後述する処理ステーション3の第3の処理装置群G3の各処理装置に対してアクセスしてウエハWを搬送できる。
【0020】
処理ステーション3は、複数の処理装置が多段に配置された、例えば5つの処理装置群G1〜G5を備えている。処理ステーション3のX方向負方向(図1中の下方向)側には、カセットステーション2側からインターフェイスステーション5側に向けて第1の処理装置群G1と、第2の処理装置群G2が順に配置されている。処理ステーション3のX方向正方向(図1中の上方向)側には、カセットステーション2側からインターフェイスステーション5側に向けて第3の処理装置群G3、第4の処理装置群G4及び第5の処理装置群G5が順に配置されている。第3の処理装置群G3と第4の処理装置群G4の間には、第1の搬送装置20が設けられている。第1の搬送装置20は、第1の処理装置群G1、第3の処理装置群G3及び第4の処理装置群G4内の各装置に対し選択的にアクセスしてウエハWを搬送できる。第4の処理装置群G4と第5の処理装置群G5の間には、第2の搬送装置21が設けられている。第2の搬送装置21は、第2の処理装置群G2、第4の処理装置群G4及び第5の処理装置群G5内の各装置に対して選択的にアクセスしてウエハWを搬送できる。
【0021】
図2に示すように第1の処理装置群G1には、ウエハWに所定の液体を供給して処理を行う液処理装置、例えば塗布装置としてのレジスト塗布装置30、31、32と、露光処理時の光の反射を防止する反射防止膜を形成するボトムコーティング装置33、34が下から順に5段に重ねられている。第2の処理装置群G2には、液処理装置、例えばウエハWに現像液を供給して現像処理する現像処理装置40〜44が下から順に5段に重ねられている。また、第1の処理装置群G1及び第2の処理装置群G2の最下段には、各処理装置群G1、G2内の前記液処理装置に各種処理液を供給するためのケミカル室50、51がそれぞれ設けられている。
【0022】
例えば図3に示すように第3の処理装置群G3には、ウエハWを温調板上に載置してウエハWの温度調節を行う温調装置60、ウエハWの受け渡しを行うためのトランジション装置61、温調装置62〜64及びウエハWを加熱処理する加熱処理装置65〜68が下から順に9段に重ねられている。
【0023】
第4の処理装置群G4には、例えば温調装置70、レジスト塗布処理後にウエハWを加熱処理するプリベーク装置71〜74及び現像処理後にウエハWを加熱処理するポストベーク装置75〜79が下から順に10段に重ねられている。
【0024】
第5の処理装置群G5には、ウエハWを熱処理する複数の熱処理装置、例えば温調装置80〜83、露光後にウエハWを加熱処理する露光後ベーク装置84〜89が下から順に10段に重ねられている。
【0025】
図1に示すように第1の搬送装置20のX方向正方向側には、複数の処理装置が配置されており、例えば図3に示すようにウエハWを疎水化処理するためのアドヒージョン装置90、91が下から順に2段に重ねられている。図1に示すように第2の搬送装置21のX方向正方向側には、例えばウエハWのエッジ部のみを選択的に露光する周辺露光装置92が配置されている。
【0026】
インターフェイスステーション5には、例えば図1に示すようにX方向に延伸する搬送路100上を移動するウエハ搬送装置101と、バッファカセット102が設けられている。ウエハ搬送装置101は、Z方向に移動可能でかつθ方向にも回転可能であり、インターフェイスステーション5に隣接した露光装置4と、バッファカセット102及び第5の処理装置群G5の各装置に対してアクセスしてウエハWを搬送できる。
【0027】
なお、本実施形態における露光装置4は、液浸露光装置であり、ウエハWの表面に液体、例えば純水の液膜を滞留させた状態で、当該純水の液膜を介在してウエハWの表面のレジスト膜を露光することができる。但し、露光装置4は他の方式の露光を行うものであってもよい。
【0028】
次に、レジスト塗布装置30〜32の構成について図4〜図5を参照して説明する。レジスト塗布装置30〜32の構成は互いに実質的に同一であるため、代表してレジスト塗布装置30の構成について説明することとする。
【0029】
レジスト塗布装置30は、図4に示すようにケーシング120を有し、そのケーシング120内の中央部には、ウエハWを保持して回転させる回転保持部としてのスピンチャック122が設けられている。スピンチャック122は、水平な上面122aを有し、当該上面には、例えばウエハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウエハWをスピンチャック122上に吸着保持できる。
【0030】
スピンチャック122は、回転モータ(図示せず)等の回転駆動源を備えたチャック駆動機構124を有し、そのチャック駆動機構124により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動機構124には、エアシリンダなどの昇降駆動源が設けられており、スピンチャック122は上下動可能である。
【0031】
スピンチャック122の周囲には、ウエハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ130が設けられている。カップ130は、内側カップ体131と、中間カップ体132と、外側カップ体133と、内側カップ体131の底部開口を閉塞するように設けられた板状のカップ基体134とを有している。スピンチャック122の回転軸122bはカップ基体134を貫通している。
【0032】
中間カップ体132の底部には環状空間132aが区画されており、この環状空間132aに排気管135が挿入されている。排気管135には、図中で概略的に示されている排気機構(EXH)136が接続されており、環状空間132aを吸引できるようになっている。排気機構136は、吸引流量を可変とするための手段、例えば可変ダンパを備えた管路を、工場の排気ダクトに接続することにより構成することができる。また、環状空間132aを区画する中間カップ体132の底壁に設けられた開口には、排液管137が接続されている。排液管137は、廃液系(DR)138に接続されている。
【0033】
ケーシング120の上部には、ケーシング120内に清浄気体例えばクリーンエアのダウンフローDFを形成するファンフィルタユニット(FFU)126が設けられている。なお、ケーシング120の下部には、ケーシング120内の雰囲気を排気する排気路127が接続されている。
【0034】
排気機構136により環状空間132aを吸引すると、図4右側において矢印で示した気流が生じる。スピンチャック122により支持されて回転するウエハWに処理液を供給すると、その処理液は遠心力により、液滴またはミストの形態で、半径方向外側に飛散する。このような液滴またはミストは、図4右側において矢印で示した気流に乗って、環状空間132aにスムーズに導かれ、ウエハWに再付着しないようになっている。環状空間132aに導入された液体の殆どは、環状空間132aにおいて気流が方向転換する際に気流から離脱し、排液管137を介して排出される。また、環状空間132aに導入されたミストの一部および気体は、排気管135を介して排気される。
【0035】
内側カップ体131の内側傾斜面131a、カップ基体134の上面134aにより、ウエハWの裏面を包囲する空間BSが形成される。ウエハWが回転すると、ウエハW近傍の気体が動かされ、ウエハW中心部からウエハ周縁部に向かうバックフローと呼ばれる比較的弱い気流が空間BS内に生じる。このバックフローBFは、内側カップ体131の上側水平面131bとウエハWの裏面との間の絞られた隙間から流出する。このため、ウエハWが回転している間には、空間BS内に気体、液体(ミスト等)、汚染粒子などが入り込むことは殆ど無い。また、ウエハWが回転していないときでも、排気機構136により環状空間132aは常時吸引されている。このため、吸引により生じるカップ130内に生じる気流、特に内側カップ体131の外側面131cと中間カップ体132の内側面132bとにより挟まれた空間内に生じる気流の影響により、内側カップ体131の上側水平面131bとウエハWの裏面との間の絞られた隙間から空間BS内に気体、液体(ミスト等)、汚染粒子などが入り込むことは殆ど無い。
【0036】
なお、言うまでもなく、カップ130は幾何学的な意味における回転体であるため、気流は周方向に関して実質的に均一に生じる。図4右側のみに気流を示したのは、図面の煩雑化を避けるためである。
【0037】
カップの形状は、上記のものに限定されるものではなく、例えば本件出願人による別の特許出願に係る特許公開公報特開2004−207573号に記載されたカップを用いてもよい。特開2004−207573号に記載されたカップも、内側カップ体の上面とウエハWの裏面との間の絞られた隙間から空間(BS)内に気体、液体(ミスト等)、汚染粒子などが入り込むことが防止されるように構成されている。このような構成は、後述する温調ノズルの設置において、必須ではないが、温調ノズルを温調という目的のみに適合するように設計できる点において好ましい。
【0038】
図5に示すように、カップ130のX方向負方向(図5の下方向)側には、Y方向(図5の左右方向)に沿って延伸するレール140が形成されている。レール140は、例えばカップ130のY方向負方向(図5の左方向)側の外方からY方向正方向(図5の右方向)側の外方まで形成されている。レール140には、2本のアーム141、142が取り付けられている。
【0039】
第1のアーム141には、レジスト液を吐出するレジストノズル143が支持されている。第1のアーム141は、図5に示すノズル駆動部144により、レール140上を移動自在である。これにより、レジストノズル143は、カップ130のY方向正方向側の外方に設置された待機部145からカップ130内のウエハWの中心部上方まで移動でき、さらに当該ウエハWの表面上をウエハWの径方向に移動できる。また、第1のアーム141は、ノズル駆動部144によって昇降自在であり、レジストノズル143の高さを調整できる。第1のアーム141とノズル駆動部144によりレジストノズル移動機構が構成されている。なお、レジストノズル移動機構および待機部145は、図4には図示されていない。
【0040】
図4に示すように、レジストノズル143には、レジスト液供給源(PR)146に連通する供給管147が接続されている。レジスト液供給源146には、ArF液浸露光用のレジスト液が貯留されている。例えば、レジスト液は、薄いレジスト膜例えば150nm以下のレジスト膜を形成するための低粘度(例えば2cp以下)に調整されている。供給管147には、バルブ148が設けられており、バルブ148の開閉により、レジストノズル143からのレジスト液の吐出および吐出停止を行うことができる。レジスト液供給源146、供給管147およびバルブ148により、レジストノズル143にレジスト液を供給するためのレジスト液(塗布液)供給機構が構成されている。
【0041】
第2のアーム142には、プリウエットノズル150が支持されている。第2のアーム142は、図5に示すノズル駆動部151によってレール140上を移動自在であり、プリウエットノズル150を、カップ130のY方向負方向側の外方に設けられた待機部152からカップ130内のウエハWの中心部上方まで移動させることができる。また、ノズル駆動部151によって、第2のアーム142は昇降自在であり、プリウエットノズル150の高さを調節できる。第2のアーム142とノズル駆動部151によりプリウエットノズル移動機構が構成されている。なお、プリウエットノズル移動機構および待機部152は、図4には図示されていない。
【0042】
図4に示すように、プリウエットノズル150には、プリウエット液供給源(PWT)153に連通する供給管154が接続されている。プリウエット液供給源153には、プリウエット液としてレジストの溶剤、例えばOK73(プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の混合溶液、東京応化工業株式会社製)が貯留されている。プリウエット液は、プリウエットシンナーとも呼ばれる。供給管154には、バルブ155が設けられており、バルブ155の開閉により、プリウエットノズル150からのプリウエット液の吐出および吐出停止を行うことができる。プリウエット液供給源153、供給管154およびバルブ155により、プリウエットノズル150にプリウエット液を供給するためのプリウエット液供給機構が構成されている。
【0043】
なお、各ノズルと各アームの関係は図示されたものに限定されるものではない。例えば、レジストノズル143とプリウエットノズル150とを共通アームにより支持することも可能である。
【0044】
カップ基体134には、ウエハWの裏面に温調気体例えばホットエアを吹き付ける複数、本例では2つの(図4では図面の簡略化のためその1つだけを示す)温調ノズル160が取り付けられている。2つの温調ノズル160は、平面視で、スピンチャック122の回転中心を中心とする円周を温調ノズルの数で等分(本例では2等分)した位置に設けられている。2つの温調ノズル160の半径方向位置(スピンチャック122の回転中心からの距離)は同じである。温調ノズル160には、清浄気体例えばクリーンエアの供給源161が、管路162を介して接続されている。管路162には、管路162内を流れるエアを所定温度に加熱するヒータ163と、エアの供給および供給停止を行うバルブ164が設けられている。なお、清浄気体として、窒素ガス等の不活性ガスを用いることも可能である。エアの供給源161、管路162、ヒータ163により、温調ノズル160に温調気体を供給する温調気体供給機構が構成されている。
【0045】
クリーンエアの供給源161は、例えば、フィルタ付きファンユニットから構成することができる。ヒータ163は、例えば、管路162を構成する金属管に巻き付けられたテープヒータとすることができる。バルブ164は単なる開閉弁であってもよいが、流量調節機能を有する弁としてもよい。
【0046】
温調ノズル160は、例えば、矩形開口を有するスリットノズルの形態とすることができる。非限定的な一例としては、スリットノズルの形態の温調ノズル160は、平面視において、その一端がウエハ中心から75mmに位置し、長辺が60mm、短辺が2mmである。温調ノズル160は、前述したバックフローBFの影響を受けることなくウエハWの比較的狭い意図する領域に局所的に温調気体を吹き付けることができるように、温調ノズルの開口端(吐出口)160aとウエハWの裏面との間隔は、例えば2〜30mmとすることが好ましく、3〜10mmとすることがより好ましい。ウエハWの温調対象領域以外が熱影響を受けないように、ウエハWの裏面に概ね垂直に温調気体が衝突することが好ましい。このため、温調ノズル160の開口部の軸線160b(図4参照)とウエハWの裏面の法線とが成す角度は、30度以下とすることが好ましく、10度以下とすることがより好ましい。
【0047】
一つの例示的実施形態においては、温調ノズル160から30℃〜40℃のエアを30〜50l/minの流量でウエハ裏面に向けて吹き付けられるように、クリーンエアの供給源161およびヒータ163の性能が定められている。但し、温調ノズルの半径方向位置、温調ノズル160から吐出されるエアの温度および流量、温調ノズル160の形状、温調ノズルの吐出口160aとウエハ裏面との間の間隔等の各種パラメータの詳細は、実験により決定することが望ましい。
【0048】
上述のチャック駆動機構124によるスピンチャック122の回転動作、ノズル駆動部144によるレジストノズル143の移動動作、バルブ148によるレジストノズル143のレジスト液の吐出動作、ノズル駆動部151によるプリウエットノズル150の移動動作、バルブ155によるプリウエットノズル150のプリウエット液の吐出動作、温調気体の吐出のためのクリーンエア供給源161、ヒータ163およびバルブ164の動作等は、図4に概略的に示される制御部(CNTL)170により制御されている。制御部170は、例えばCPUやメモリなどを備えたコンピュータにより構成され、例えばメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、レジスト塗布装置30におけるレジスト塗布プロセスを実現できる。なお、レジスト塗布装置30におけるレジスト塗布プロセスを実現するための各種プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なCDなどの記憶媒体Mに記憶されていたものであって、その記憶媒体Mから制御部170にインストールされたものが用いられている。
【0049】
次に、以上のように構成されたレジスト塗布装置30で行われる塗布プロセスを、塗布現像処理システム1全体で行われるウエハ処理プロセスと共に説明する。
【0050】
まず図1に示すウエハ搬送装置12によって、カセット載置台10上のカセットC内から未処理のウエハWが一枚ずつ取り出され、処理ステーション3に順次搬送される。ウエハWは、処理ステーション3の第3の処理装置群G3に属する温調装置60に搬送され、所定温度に温度調節される。その後ウエハWは、第1の搬送装置20によって例えばボトムコーティング装置34に搬送されて、反射防止膜が形成される。その後ウエハWは、第1の搬送装置20によって例えば加熱処理装置65、温調装置70に順次搬送され、各処理装置において所定の処理が施される。その後ウエハWは、第1の搬送装置20によって複数のレジスト塗布装置30〜32の一つ、例えばレジスト塗布装置30に搬送される。
【0051】
レジスト塗布装置における塗布処理の一連の工程について、レジスト塗布装置30における塗布処理の主な工程を示すフローチャートである図6、各工程におけるウエハWの回転速度を示すグラフである図7を参照して説明する。
【0052】
まず、ケーシング120に設けられた搬出入口128のシャッター129が開かれ、図示しない搬送アームによりウエハWがレジスト塗布装置30に搬入され、その後、ウエハWは、図4に示すようにスピンチャック122に吸着保持される。
【0053】
次に、第2のアーム142により待機部152にあったプリウエットノズル150がウエハWの中心部の上方まで移動する。
【0054】
ウエハWが停止している状態で、バルブ155が開かれて、プリウエットノズル150からプリウエット液が所定量ウエハの中心部に供給される(図6のプリウエット液吐出工程S1)。その後、図7に示すようにスピンチャック122によりウエハWが例えば500rpm程度の第1の速度V1で回転され、ウエハW上のプリウエット液がウエハWの表面の全面に拡散されて、ウエハWの表面全体がプリウエット液により濡れた状態になる(図6のプリウエット液拡散工程S2)。プリウエット液拡散工程S2の間、プリウエットノズル150はウエハW上から退避し、第1のアーム141により待機部145にあったレジストノズル143がウエハWの中心部の上方まで移動する。
【0055】
その後、バルブ148が開放されて、図7に示すようにレジストノズル143からレジスト液の吐出が開始され、ウエハWの中心部にレジスト液が供給され始める。こうして、レジスト液塗布工程S3が開始される。このレジスト液塗布工程S3では、ウエハWの回転速度が第1の速度V1から、高速の例えば2000〜4000rpm程度の第2の速度V2まで上げられる。レジスト液塗布工程S3の開始前に第1の速度V1であったウエハWの回転は、その後速度が連続的に滑らかに変動するように徐々に加速される。このとき、ウエハWの回転の加速度は、例えば零から次第に増加する。そして、レジスト液塗布工程S3の終了時には、ウエハWの回転の加速度が次第に減少され、ウエハWの回転速度が第2の速度V2に滑らかに収束する。こうして、レジスト液塗布工程S3時においては、ウエハWの回転速度が第1の速度V1から第2の速度V2に、図7のグラフ上でS字状に推移するように変動する。レジスト液塗布工程S3では、ウエハWの中心部に供給されたレジスト液が遠心力によりウエハWの表面の全面に拡散されて、ウエハWの表面にレジスト液が塗布される。
【0056】
なお、レジスト液塗布工程S3におけるレジストノズル143によるレジスト液の吐出を平坦化工程S4の途中まで継続してもよい。またこのとき、レジスト液の吐出を終了させる際に、レジストノズル143を移動させてレジスト液の吐出位置をウエハWの中心部からずらしてもよい。
【0057】
レジスト液塗布工程S3が所定時間継続されそれが終了すると、図7に示すようにウエハWの回転が低速の例えば300rpm程度の第3の速度V3に減速され、ウエハW上のレジスト液が均されて平坦化される(図6の平坦化工程S4)。平坦化工程S4は、例えば1sec程度の間実行される。
【0058】
平坦化工程S4が所定時間継続されそれが終了すると、図7に示すようにウエハWの回転が中速の例えば1500rpm程度の第4の速度V4に加速され、ウエハW上のレジスト液が乾燥される(図6の乾燥工程S5)。乾燥工程S5は、例えば20sec程度の間実行される。こうして、ウエハWの表面上に薄いレジスト膜(フォトレジスト膜)が形成される。乾燥工程S5において、温調ノズル160から、所定温度例えば30℃〜40℃のエアが所定流量例えば30〜50l/minでウエハWの裏面に吹き付けられて、ウエハWの裏面が局所的に加熱される。その結果、乾燥工程S5後に最終的に得られるレジスト膜の厚さが均一化される。
【0059】
ウエハWの乾燥終了後、ウエハWの回転が停止されて、スピンチャック122上からウエハWが搬出されて、一連のレジスト塗布処理が終了する。なお、乾燥工程S5の後、必要に応じてEBR(エッジビードリムーバル)処理及び/又はBR(バックリンス)処理およびこれらEBR/BR処理後の乾燥処理を実行することができるが、これらの処理についての説明は省略する。
【0060】
レジスト塗布処理後、ウエハWは、第1の搬送装置20によって例えばプリベーク装置71に搬送され、プリベークされる。続いてウエハWは、第2の搬送装置21によって周辺露光装置92、温調装置83に順次搬送されて、各装置において所定の処理が施される。その後、ウエハWは、インターフェイスステーション5のウエハ搬送装置101によって露光装置4に搬送され、液浸露光される。その後ウエハWは、ウエハ搬送装置101によって例えば露光後ベーク装置84に搬送され、露光後ベークされ、その後第2の搬送装置21によって温調装置81に搬送されて温度調節される。その後、ウエハWは、現像処理装置40に搬送され、ウエハW上のレジスト膜が現像される。現像後、ウエハWは、第2の搬送装置21によってポストベーキング装置75に搬送されポストベークされる。その後ウエハWは、温調装置63に搬送され温度調節される。そしてウエハWは、第1の搬送装置20によってトランジション装置61に搬送され、ウエハ搬送装置12によってカセットCに戻されて、一連のウエハ処理が終了する。
【0061】
なお、上記の一連の工程S1〜S5におけるレジスト塗布時のウエハ回転速度の変動による省レジスト技術については、本件特許出願と発明者が一部共通し、かつ譲受人(出願人)が共通する特許出願、特願2008−131495号に係る公開特許公報、特開2009−279476号に詳細に記載されている。
【実施例】
【0062】
次に、実験結果を参照して、上記実施形態の利点について説明する。
【0063】
図4および図5に示すレジスト塗布装置を用いて、ウエハW上にレジスト膜の成膜を行った。乾燥工程S5において温調ノズル160から温調気体を吐出したものを実施例とし、温調気体の吐出を行わなかったものを比較例とした。
【0064】
レジスト膜成膜後にレジスト膜の膜厚分布を測定した。その結果を図8のグラフに示す。グラフの縦軸はレジスト膜厚、横軸はウエハ中心からの距離である。黒塗り四角(◆)が比較例、白抜き四角(□)が実施例である。グラフ中の矢印は、温調気体の吹き付け位置(具体的には温調ノズルの中心位置)を示している。グラフより、実施例の方が膜厚分布幅が減少していることは明らかである。また、統計学的なばらつきの指標である膜厚の3σ値は、比較例において1.00nmであったのに対して実施例においては0.55nmである。すなわち膜厚分布幅の大きな改善が認められた。
【0065】
発明者は、比較例と実施例の相違について以下のように考えている。
【0066】
比較例において、膜厚は、ウエハ中央部と周縁部で大きく、中央部と周縁部との間の部分(以下、「中間部」と称する)で小さくなっている。その理由は、以下のように考えられる。スピン塗布法の場合、ウエハ中央部にあるレジスト液に作用する遠心力は小さいため、膜厚は大きめになると考えられる。ウエハ周縁部においては、レジスト液に作用する遠心力は大きい。しかし、その一方で、レジスト液が中央部から周縁部に拡散する過程においてレジスト液中に含まれる溶剤が揮発することにより、周縁部に到達した時点においてレジスト液が高濃度化しているものと考えられる。遠心力の影響よりレジスト液の高濃度化の影響の方が大きいことが、周縁部において膜厚が大きくなる原因の一つではないかと推測される。また、レジスト液塗布工程S3の終盤において高速回転していたウエハが平坦化工程S4の開始とともに急減速されることにより、ウエハ周縁から飛散しようとしていたレジストが半径方向内側に逆流することも一つの原因であると考えられる。その他にも、ウエハとスピンチャックとの接触部における伝熱流動、ウエハ各部における溶剤気化熱分布なども原因として考えられる。膜厚分布は、上記のように様々な要因が絡み合って生じているものと考えられる。
【0067】
実施例においては、乾燥工程S5において、比較例において膜厚が相対的に小さい部位の近傍に温調気体を吹き付けている。これにより温調気体を吹き付けた部位およびその近傍(便宜上、「温調領域」と称する)の膜厚が増えている。その理由は以下のようなことが考えられる。乾燥工程S5においては、平坦化工程S4終了時点でウエハ上に存在するレジスト液の一部が、遠心力によりウエハ外側に振り切られる。すなわち、乾燥工程S5においても遠心力によるレジスト液の半径方向外側の移動が生じている。このとき、温調領域に温調気体を吹き付けると温調領域のウエハ温度が上昇し、その結果、温調領域におけるレジスト液中に含まれる溶剤の揮発が促進され、温調領域のレジスト液の濃度がその他の領域にあるレジスト液の濃度より高くなる。高濃度のレジスト液は粘度が高いため、比較的高回転(乾燥工程S5例えば1500rpm)でウエハが回転していても、半径方向外側に移動し難くなり、このためウエハ中間部における膜厚が増大する。その一方で、ウエハ周縁部においては半径方向から移動してくるレジスト液の移動が減少した状態で、レジスト液が振り切られる。その結果として、ウエハ中間部における膜厚が増大するとともにウエハ周縁部における膜厚が減少するものと考えられる。いずれにせよ、乾燥工程S5において温調気体により局所的な加熱を行うことにより、温調気体が吹き付けられた部位の近傍の膜厚が増大する傾向にあることに変わりはない。
【0068】
なお、温調気体の吹き付けは、ウエハ面内に意図的に温度変化を生じさせて、局所的にレジスト中の溶剤の揮発度合いを調整し、これにより膜厚分布の微調整を行うものである。従って、過度に早期に温調気体の吹き付けを開始すると、むしろ膜厚の不均一を招くおそれがある。よって、温調気体の吹き付けは、早くともレジスト液がウエハ表面全域に拡散した後に行うことが好ましい。また、上記実施形態のように、レジスト液塗布工程S3と乾燥工程S5の間にウエハを低速で回転させることによりレジスト液膜の厚さのより一層の均一化を図る平坦化工程S4を実行する場合には、平坦化工程の終了後、乾燥工程S5の開始と同時または開始後所定時間経過後に温調気体の吹きつけを開始することが好ましい。
【0069】
上記実施形態は様々に改変することができる。
【0070】
例えば、上記実施形態において温調ノズルは2つ設けられていたが、これには限定されず、1つだけ、或いは3つ以上設けても構わない。 温調ノズルの吐出口の形状は矩形に限定されず、真円、楕円、長円、菱形等の他の形状とすることもできる。
【0071】
図9(a)に概略的に示すように、異なる半径方向位置(スピンチャック回転中心からの距離)r1,r2にそれぞれ温調ノズル(160A、160B)を設けてもよい。この場合、温調気体供給機構は、温調ノズル160Aおよび温調ノズル160Bへの温調気体の供給を個別的に制御できるように構成される。なお、図9(a)において符号Weはウエハの周縁、122aeはスピンチャック122の上面122aの周縁、OはウエハWおよびスピンチャックの回転中心をそれぞれ示している。
【0072】
図9(b)に概略的に示すように、複数の小径の温調ノズル(160-1〜160-n)を半径方向の異なる位置に設け、各温調ノズルへの温調気体の供給を制御する弁(164-1〜164-n)を設けてもよい。この場合、開く弁(164-1〜164-n)を選択すること(例えば第1のレジストを塗布する場合には164-1〜164-3を開き、第2のレジストを塗布する場合には164-2〜164-4を開く)により、温調領域を調整することができる。
【0073】
温調ノズルを可動とし、温調ノズルの半径方向位置を変更できるようにしてもよい。例えば、図9(c)に示すように、カップ基体134にガイド166を設け、このガイド166に沿って温調ノズル160’を移動させるリニアアクチュエータ167を設ける。管路162の温調ノズル側端部をフレキシブルチューブ162’により構成することができる。
【0074】
図9(a)〜(c)に示したように温調領域を変更できれば、塗布装置30が多種類の塗布処理をする場合に、温調領域を変更する必要が生じた際に便利である。
【0075】
上記の実施形態においては温調ノズルからウエハWに気体を吹き付けたが、ウエハWに吹き付けるものは気体、液体または気液混合物等の流体であってもよい。また、上記の実施形態においてはウエハWを局所的に加熱したが、冷却してもよい。
【0076】
また、上記の実施形態においては、ウエハWの局所的な温度調節を温調気体の吹き付けにより行ったが、これに限定されるものではなく、ウエハWに熱線を照射することによりウエハWの局所的な温度調節を行うことも可能である。図10には、温調ノズルを設けることに代えて、ウエハ裏面側に熱線照射装置を設けた例を概略的に示している。図10に示す例では、熱線照射装置として、赤外LED200が設けられている。赤外LED200には電源201から給電される。電源201は、図10には図示しない制御部(170)により制御される。ウエハ裏面側空間(BS)側にベベル洗浄ノズル等の液処理ノズルが設けられる場合には、赤外LED200およびこれに接続された電気部品(配線、端子等)は、処理液により腐食しないように適当なシールド202で覆うことが好ましい。なお、シールド202のウエハWの裏面を向いた部分は赤外光透過性のシールド202aを設ければよい。
【0077】
また、赤外LED200に代えて、図11に概略的に示すように、レーザー照射装置を設けても良い。この場合、ウエハ裏面側空間(BS)の外にレーザー光源210を設け、レーザー光源210で発生させたレーザー光、例えば低出力の赤外レーザー光を、光ファイバ211によりウエハW裏面まで導くことができる。
【0078】
図10、図11に示す熱線照射装置を利用する実施形態の場合も、前述した温調ノズルを用いた実施形態と同様に、乾燥工程においてウエハに熱線を照射してウエハWの温度分布を調整することにより、レジスト膜の膜厚分布の調整を行うことができる。熱線照射装置を用いる場合も、温調ノズルを用いる場合と同様に、温調領域を変更可能に構成することができる。例えば、図9(a),(b)に示された温調ノズルと同様に、複数の赤外LED200若しくは複数の光ファイバ211の各投光側端部を半径方向の異なる位置に配置して、選択された赤外LED200若しくは光ファイバ211の投光側端部からウエハW裏面に熱線が照射されるような構成にしてもよい。また、例えば図9(c)に示したものと同様のガイド/リニアアクチュエータを用いて、赤外LED200、或いは光ファイバ211の投光側端部を半径方向に可動とすることができる。
【0079】
なお、熱線照射装置を用いた場合には、ウエハ裏面側空間(BS)の気流の影響を実質的に受けることなくウエハWを加熱することができ、また、パルス制御等により精密出力制御を行うことができるので、ウエハWに与える熱量を精密に調整できる点において有利である。その反面、ウエハ裏面側空間(BS)内の雰囲気によっては光照射部分が汚れる可能性があるため、光照射部分を定期的に洗浄しなければならなくなることも考えられる。この点においては、そのようなおそれがない温調ノズルを用いた実施形態の方が有利である。
【0080】
なお、上記の実施の形態では、塗布液はレジスト液であったが、これに限定されるものではなく、上記の実施形態に係る技術は、レジスト液以外の塗布液、例えば反射防止膜、SOG(Spin On Glass)膜、SOD(Spin On Dielectric)膜を形成するための塗布液の塗布にも適用することができる。また、塗布の対象は、ウエハWに限定されるものではなく、ウエハ以外の例えばFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
上記の実施の形態は、半導体装置製造における様々な塗布処理において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を基板の中心部に供給するとともに前記基板を回転させ、前記基板の表面の全体を塗布液で覆う塗布液塗布工程と、
前記塗布液塗布工程の後に、前記塗布液の供給を停止した状態で前記基板を回転させ、前記塗布液を乾燥させる乾燥工程と、を備え、
前記乾燥工程において、前記基板の裏面側から前記基板の半径方向の特定の範囲の温度を局所的に調節することを特徴とする塗布膜形成方法。
【請求項2】
前記温度の局所的な調節は、早くとも前記基板の表面全体が前記塗布液に覆われた後に開始されることを特徴とする、請求項1に記載の塗布膜形成方法。
【請求項3】
前記塗布液塗布工程における前記基板の回転速度よりも低い回転速度で基板を回転させることにより前記基板の表面に塗布された前記塗布液を平坦化する平坦化工程をさらに備え、
前記塗布液塗布工程、前記平坦化工程および前記乾燥工程はこの順序で順次実行され、前記平坦化工程から前記乾燥工程の移行は、前記基板の回転速度を上昇させることにより行なわれ、
前記温度の局所的な調節は、前記乾燥工程を開始するときまたはその後に開始されることを特徴とする、請求項1または2に記載の塗布膜形成方法。
【請求項4】
前記温度の局所的な調節は、前記基板の裏面の半径方向の特定の範囲に局所的に温調流体を吹き付けることにより行われることを特徴とする、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の塗布膜形成方法。
【請求項5】
前記温調流体が気体であることを特徴とする、請求項4に記載の塗布膜形成方法。
【請求項6】
前記気体の温度が30℃〜40℃の範囲内であることを特徴とする、請求項5に記載の塗布方法。
【請求項7】
前記温度の局所的な調節は、前記基板の裏面の半径方向の特定の範囲に局所的に熱線を照射することにより行われることを特徴とする、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の塗布膜形成方法。
【請求項8】
前記塗布膜形成方法は、前記基板を保持して回転させるスピンチャックと、前記スピンチャックにより保持された前記基板を囲むように設けられたカップとを有する塗布装置により実行され、前記基板の裏面側に、前記スピンチャックにより保持された基板と前記カップの一部とによって包囲された空間が形成され、前記スピンチャックにより保持された前記基板の裏面の周縁部とこれに対向する前記カップの部分との間に隙間が形成され、前記塗布膜形成方法の実行中には、前記隙間を介して前記空間の外部から前記空間内への流体または微小粒子の流入を妨げるような気流が前記カップ内に形成されていることを特徴とする、請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の塗布膜形成方法。
【請求項9】
基板を保持して回転させるスピンチャックと、
前記スピンチャックにより保持された基板の表面に塗布液を供給する塗布液ノズルと、
前記スピンチャックにより保持された基板を囲むように設けられたカップと、
前記カップ内を吸引して前記カップ内に気流を形成する排気機構と、
前記スピンチャックにより保持された基板の裏面側から基板の半径方向の特定の範囲の温度を局所的に調節することができるように設けられた温度調節手段と、
を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項10】
前記温度調節手段は、前記スピンチャックにより保持された基板の裏面の近傍に開口する吐出口を有し、前記基板の裏面の半径方向の特定の範囲に局所的に温調流体を吹き付ける温調流体ノズルからなることを特徴とする請求項9に記載の塗布装置。
【請求項11】
前記温度調節手段は、前記スピンチャックにより保持された基板の裏面の半径方向の特定の範囲に局所的に熱線を照射する熱線照射装置からなることを特徴とする請求項9に記載の塗布装置。
【請求項12】
前記塗布液ノズルに塗布液を供給する塗布液供給機構と、
少なくとも前記スピンチャック、塗布液供給機構および前記温度調節手段の動作を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記塗布液ノズルから塗布液を基板の中心部に供給するとともに前記スピンチャックにより前記基板を回転させ、前記基板の表面の全体を塗布液で覆う塗布液塗布工程と、
前記塗布液塗布工程の後に、前記塗布液ノズルから前記塗布液の供給を停止した状態で前記スピンチャックにより前記基板を回転させ、前記塗布液を乾燥させる乾燥工程と、
が実行され、
前記乾燥工程において、前記温度調節手段による前記局所的な温度調節が行われる
ように制御を実行するように構成されていることを特徴とする請求項9から11のうちのいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項13】
基板を保持して回転させるスピンチャックと、前記スピンチャックにより保持された基板に塗布液を供給する塗布液ノズルと、前記スピンチャックにより保持された基板の裏面側から基板の半径方向の特定の範囲の温度を局所的に調節することができるように設けられた温度調節手段と、前記塗布液ノズルに塗布液を供給する塗布液供給機構と、少なくとも前記スピンチャック、前記塗布液供給機構および前記温度調節手段の動作を制御するコンピュータからなる制御部とを備えた塗布装置において、少なくとも前記スピンチャック、前記塗布液供給機構および前記温度調節手段の動作を制御するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記プログラムを前記コンピュータにより実行することにより、前記コンピュータが前記スピンチャック、塗布液供給機構および前記温度調節手段を制御して、
前記塗布液ノズルから塗布液を基板の中心部に供給するとともに前記スピンチャックにより前記基板を回転させ、前記基板の表面の全体を塗布液で覆う塗布液塗布工程と、
前記塗布液塗布工程の後に、前記塗布液ノズルから前記塗布液の供給を停止した状態で前記スピンチャックにより前記基板を回転させ、前記塗布液を乾燥させる乾燥工程と、
を実行させるとともに、
前記乾燥工程において、前記温度調節手段による前記局所的な温度調節を行わせる
ことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−11279(P2012−11279A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148016(P2010−148016)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】